JP4859224B2 - 圧縮試験方法及び圧縮試験機、並びにプログラム - Google Patents

圧縮試験方法及び圧縮試験機、並びにプログラム Download PDF

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Description

本発明は、耐火物に代表されるセラミックスなどの固体の供試体の弾性率を測定する圧縮試験方法及び圧縮試験機に関する。
従来から、固体の圧縮静弾性率の測定は、一般に三点曲げ法(非特許文献3,4参照)や圧縮法(非特許文献1,2,5参照)等の加圧法が用いられている。固体の供試体に加える応力をσ、それに対する供試体のひずみをεとする。このとき、供試体の弾性率(縦弾性率)Eは、フックの法則によって式(1)により定義される。
Figure 0004859224
ここで、ΔLは応力σにより生じる供試体の変位、Lは供試体の長さである。
圧縮法による圧縮静弾性率の測定においては、ピストン変位法が多く用いられている(非特許文献1,2,5,特許文献1〜4参照)。ピストン変位法では、供試体を高速度鋼製のハイスシリンダに入れ、圧縮高度が大きく縮み変形の小さい超硬合金(タングステンカーバイト等)製の超硬ピストンにより、圧縮しながら供試体のひずみを読み取る。尚、軟固体の場合、一般には、図10に示したように、超硬ピストンの先端に軟鉄又は黄銅製のパッキンリングを取り付け、ピストンとシリンダとの僅かな隙間より供試体が圧出することを防止している。
供試体のひずみの読み取りには、一般に、ひずみゲージを供試体に貼り付けるなどして、電気信号として精度よくひずみを検出する手法が採用される。
一方、耐火物に代表されるセラミックスは、耐熱スポーリング性の評価などにおいて、熱間での弾性率が重要となる。しかし、熱間においては、供試体にひずみゲージを貼るなどして直接供試体のひずみを検出することはできない。そこで、従来は、加圧中に、ラムピストンなどの加圧治具の変位を測定し、これを供試体の変位として代用し、弾性率の算出を行ってきた(特許文献1,2,非特許文献5参照)。
図11は、特許文献1記載の高温圧縮試験機を示す図である。この高温圧縮試験機100は、セラミックス供試体TPに加圧してその変位を測定する装置である。高温圧縮試験機100は、真空槽101内に高温炉102が設置されている。高温炉102の内部は、ヒータ103により加熱される。
供試体TPは、高温炉102内に設置される。供試体TPは、ロードセル104及び継手105を介してクロスヘッド106に接続された下部加圧治具107と、クロスヨーク108に接続された上部加圧治具109との間に挟入されている。
上部加圧治具109は、ステンレス製の分割部材110,インコネル製の分割部材111,窒化珪素Si3N4製の分割部材112,炭化珪素SiC製の分割部材113,並びに炭化珪素SiC製の上圧盤114及び補助圧盤115を備えている。分割部材110,111,112,113,及び上圧盤114の中心部には、縦方向に温度勾配を緩和するための空洞116が形成されており、この空洞116内には、供試体の変位を検出するための黒鉛製の検出棒117が挿入されている。検出棒117の下端は補助圧盤115の上面に当接し、その上端はクロスヨーク108の上方まで延出している。
一方、下治具107は、接続部120、ステンレス製の分割部材121、インコネル製の分割部材122、窒化珪素Si3N4製の分割部材123、炭化珪素SiC製の分割部材124、炭化珪素SiC製の下圧盤125及び試料受台126、並びに保護カバー127を備えている。最上段の分割部材124の上面は球状凹面の球座が形成され、この球座上に下圧盤125が保持されている。また、下圧盤125の上面に保持された試料受台126は、フランジ状に形成されており、このフランジ部分の上面に3本の黒鉛製の検出棒128が当接している。検出棒128の上端はクロスヨーク108の上方まで延出しており、磁気変位計などの変位計と連結されている。
圧縮静弾性率を測定する場合には、まず、温度センサ130により高温炉102内の温度を計測しながら、ヒータ103により高温炉102内を目的の温度まで加熱する。次に、クロスヘッド106を上昇させて供試体TPの加圧を行う。加圧力は、ロードセル104により検出される。各圧力において、試料受台126のフランジ上面に接する3本の検出棒128の変位を変位計で検出し、その平均値から供試体TPの下面位置の変位を求める。また、補助圧盤115の上面に接する1本の検出棒117の変位を変位計で検出し、供試体TPの上面位置の変位を求める。そして、得られた加圧力と供試体TPの変位との関係のデータから、弾性率を計算する。
実公平6−42196号公報 特開昭54−102186号公報 特公平6−90123号公報 特開平2−108942号公報 社団法人日本化学学会編,「第4版 実験化学講座4 熱・圧縮」,丸善株式会社,平成4年2月5日,pp.414-416. 山名式雄,矢澤健三,「材料試験入門」,工学図書株式会社,昭和63年10月10日,pp.66-71. 駿河俊博,保木井利之,浅野敬輔,「MgO-C質耐火物の熱間静弾性率特性」,耐火材料,黒崎播磨株式会社,2001年12月20日,No.149, pp.62-67. 朝倉秀夫, 南園広志, 中務正幸,「熱間静弾性率測定装置の開発」,品川技報,品川白煉瓦株式会社,2000年03月20日,No.43, pp.83-90. 大野卓, 若狭勉, 鈴木敦, 小長谷幸弘,「高炉炉底カーボンブロックの熱間ヤング率,クリープ特性」,鉄と鋼,社団法人日本鉄鋼協会,1983年09月,Vol.69, No.12, p.136.
しかしながら、加圧治具の変位には、供試体と加圧治具の接触面との間の微妙な凹凸や、接触状態、供試体内のキャビテーションの圧潰、加圧治具の圧力によるひずみ、加圧装置の剛性などの多くのファクターが含まれているため、真の変位を求めることは困難である。また、これらのファクターの値は、測定の度に微妙に変わることが予想されるため、簡単に補正することはできない。
一方、耐火物等のセラミックスでは、供試体に加える圧力に対する供試体の変位の値は小さい。従って、供試体の変位以外のファクターの値が小さいとしても、供試体の変位の誤差としての比率は大きなものとなる。一般に、従来手法で測定される変位を基に弾性率を計算すると、多くの場合、その値は実際よりも低くなる傾向がある。
このように、従来のピストン変位法による圧縮弾性率測定装置では、供試体の変位そのものを精度よく検出することが困難であったために、弾性率を正確に測定することができないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、加圧法による応力ひずみ変位の測定に際して、供試体と治具との接触、装置の剛性などの誤差となるファクターを除去し、真の供試体の変位を求め、精度の高い圧縮変位の測定結果を得ることが可能な圧縮試験方法及び弾性率測定装置を提供することにある。
〔1〕本発明における圧縮試験方法の原理
〔1−1〕理想的な測定系
図10に示したようなピストン変位法による圧縮試験機を考える。供試体は円柱状に成形されている。供試体の軸方向の長さをL、供試体の軸に垂直な断面の断面積をSとする。ピストンにより供試体に加えられる応力をσ、そのときの供試体の変位をΔL、供試体のひずみをεとする。供試体が線形弾性を示すとすれば、フックの法則が成り立ち、供試体の弾性率Eとの間には式(1)が成り立つ。ここで、ピストンに加えられる荷重をFとした場合、応力σは次式で表される。
Figure 0004859224
応力σに対する供試体の変位ΔLは、式(1)より次のようになる。
Figure 0004859224
ピストンの剛性が供試体の剛性に比べて十分に大きい場合、上下のピストンの外端間の変位ΔL(図10において、ダイヤルゲージ(リニアゲージ)により計測される変位)を測定すれば、供試体の変位ΔLが十分な精度で求められる。しかし、実際には、ピストンに力を加えた場合、ピストン自体も変位を生じるために、上下のピストンの外端間の変位ΔLは供試体の変位ΔLとは一般に異なってくる。
そこで、まず供試体を理想的な線形弾性体であると仮定して、圧縮試験機による測定系を、まず図1に示すような単純なモデルにより表す。図1(a)はモデル化した測定系の概念図であり、図1(b)は図1(a)のモデルを更に抽象的に記号化したものである。
図1において、供試体の上下のピストンは、等価的に線形弾性を示す円柱形の弾性体であると仮定する。上側及び下側のピストンの長さをLp1,Lp2、断面積をSp1,Sp2とおく。このとき、測定系は、図1(b)のように3つのバネが直列に接続されているものとみなされる。
ピストンに圧縮力Fを加えた場合、測定される変位ΔLは次式のようになる。
Figure 0004859224
ここで、σpi(i=1,2)はピストンに働く応力、Epiはピストンの弾性率である。また、Gは供試体に対するピストンの剛性を表す定数である。
式(4)は、未知変数としてEの他にGも含むため、式(4)のみから直接Eを求めることはできない。そこで、断面積がSで長さがL,Lの同じ材質で構成された2つの供試体を用意し、それぞれの供試体に対して同様の圧縮試験を行う。各供試体の変位は次式のようになる。
Figure 0004859224
式(6),(7)よりGを消去することにより、供試体の弾性率Eが次式のように求まる。
Figure 0004859224
尚、ここでは、ピストンの形状は円柱状であると仮定しているが、以下では、一般にピストンの形状にかかわらず、近似的に式(4)のように表されるものと仮定する。
〔1−2〕実際の測定系
上述の理想的な測定系では、式(4)により、供試体の変位は、供試体に加えられる応力に対して直線となる。また、昇圧過程と降圧過程で供試体の変位は可逆的になる。しかしながら、耐火物の供試体に対し実際にピストン変位法により供試体に加える応力と変位の関係を測定すると、図2に示したような非可逆的な曲線が得られる。
図2は、耐火物の供試体に対してピストン変位法により供試体に加える荷重と変位の関係を測定した結果の一例を表す図である。
図2によると、供試体に加える荷重と変位の関係は非線形である。また、最初に供試体に荷重を加えていった場合の曲線と、2回目以降に応力を加えた場合の曲線とは大きく異なっている。一方、2回目以降の昇降圧試験で得られる各曲線は、完全には一致していないが、近い曲線を描く。これは、最初の昇圧過程では、供試体とピストンとの間やその他加圧機器内に存在するクリアランス(遊び)が押潰されたり、供試体表面の凹凸が潰れたり、供試体内部に存在するキャビテーションが圧潰されたりするなど、様々な非可逆的な変化が重畳していると推測される。
また、図2によると、1回目の降圧過程における下降曲線と、2回目の昇圧過程における上昇曲線が一致せず、2回目の昇圧過程の上昇曲線が1回目の降圧過程の下降曲線よりも左側(変位が小さい側)にある。このことから、供試体は瞬時弾性成分のほかに遅延弾性成分を含んでいると考えられる。
また、2回目以降の昇降圧試験で得られる各曲線は、試験回数を重ねるごとに圧力0における変位が徐々に右側(残留変位が大きい方向)にシフトする。これは、圧縮試験によって供試体に塑性変形(永久ひずみ)が発生するためであると考えられる。そこで、供試体のこのような複合的な振る舞いを記述するため、ここでは最も簡単なモデルとして、1つのマックスウェル要素(Maxwell element)と1つのフォークト要素(Voigt element)とを直列に結合した4要素粘弾性モデル(four-element viscoelastic model)を用いる。図3に4要素粘弾性モデルを示す。
図3のマックスウェル要素は、バネ(spring)Eとダッシュポット(dashpot)ηpとが直列に接続されたモデルである。ここで、ダッシュポットは、ねばい液中を抵抗の大きい板が上下するモデルである。一方、フォークト要素は、バネEとダッシュポットηとが並列に結合したモデルである。バネ(E)は瞬時弾性要素を表す。ダッシュポット(ηp)は塑性変形要素を表す。また、フォークト要素(E,η)は遅延弾性要素を表す。
瞬時弾性要素では、フックの法則により、応力σと瞬時弾性ひずみεとの間には次式(9)の関係が成り立つ。
Figure 0004859224
従って、応力の微小変化dσに対する瞬時弾性ひずみの微小変化dεは次式(10)のように表される。
Figure 0004859224
塑性変形要素では、ひずみの時間変化(ひずみ速度)は応力に比例する。塑性変形の粘性係数をηとすると、応力σと塑性変形ひずみεとの間には、次式(11)の関係が成り立つ。
Figure 0004859224
従って、微小時間dtにおける塑性変形ひずみの微小変化dεは次のように表される。
Figure 0004859224
遅延弾性要素では、バネ(E)とダッシュポット(η)の変形(ひずみ)は等しく、応力は両者における値の和で与えられる。従って、次式(13)の関係が成立する。
Figure 0004859224
ここで、Eは遅延弾性の弾性率、ηは遅延弾性の粘性係数、τ=η/Eは遅延時間を表す。この遅延弾性要素によって、図2に見られるヒステリシス、すなわちクリープ挙動が生じる。
式(13)をεについて解くことにより、遅延弾性ひずみεは次式(14)のように表される。
Figure 0004859224
従って、微小時間dtにおける遅延弾性ひずみの微小変化dεは次のように表される。
Figure 0004859224
図3より、供試体全体のひずみの微小変化dεは、瞬時弾性要素のひずみの微小変化dε、塑性弾性要素のひずみの微小変化dε、及び遅延弾性要素のひずみの微小変化dεの和で表される。
Figure 0004859224
また、作用・反作用の法則により、供試体に応力σが加わった場合、瞬時弾性要素、塑性弾性要素、及び遅延弾性要素のそれぞれに応力σが加わる。式(10),(12),(15)を式(16)に代入することにより、供試体全体のひずみの微小変化dεは、次式(17)のようになる。
Figure 0004859224
供試体に加えられるσが一定の場合には、クリープ・コンプライアンスJ(t)は、式(17)を積分することにより、次式(18)のようになる。
Figure 0004859224
式(18)の右辺第1項は瞬時弾性成分、第2項は塑性弾性成分、第3項は遅延弾性成分を表している。
式(18)より、1/E>>1/Eの場合には、遅延弾性成分については無視することができる。遅延弾性成分が無視できる場合には、式(17)より、供試体全体のひずみの微小変化dεは次式(19)のようになる。
Figure 0004859224
さらに、供試体に加圧を行うピストンの弾性変形まで考慮すると、実際に測定される測定歪みの微小変化dεは次式(20)のようになる。
Figure 0004859224
昇圧過程において、時刻t=0から時刻t=Tまでの間に供試体に加わる応力がσからσ(σ<σ)に関数σ(t)に従って変化したとすると、この間に生じる測定ひずみの変化Δε(up)は次式(21)のようになる。
Figure 0004859224
式(21)において、右辺第1項は瞬時弾性成分、第2項が塑性変形成分を表している。
一方、降圧過程において、時刻t=0から時刻t=Tまでの間に供試体に加わる応力がσからσに関数σ(T−t)に従って変化したとすると、この間に生じる測定ひずみの変化Δε(down)は次式(22)のようになる。
Figure 0004859224
ここで、右辺第2項の積分は、変数変換t’=T−tを行った。
そこで、塑性変形成分の影響を取り除くために、昇圧過程における測定歪みの変化と降圧過程における測定ひずみの変化との絶対値平均をとり、これを平均ひずみΔεとする。平均ひずみΔεは次式のようになる。
Figure 0004859224
ここでΔεは対数ひずみであるが、L>>ΔLの場合には近似的にΔL/Lとしてもよい。従って、平均変位ΔL=LΔε=(|ΔL (up)|+|ΔL (down)|)/2=(|LΔε(up)|+|LΔε(down)|)/2は、次式のようになる。
Figure 0004859224
同一の物質から作られた同一断面積で長さが異なる2本の柱状の供試体について、上記平均変位ΔLを測定し、それぞれΔL,ΔLとする。この平均変位ΔL,ΔLを式(8)に代入することによって、ピストンのひずみや塑性変形の影響を取り除いて、供試体を構成する物質の弾性率Eを正確に求めることができる。
〔2〕本発明の構成及び作用
本発明に係る圧縮試験方法の第1の構成は、柱状の供試体を加圧しその変位を加圧ピストンの変位を計測することによって測定することで当該供試体の材料の圧縮静弾性率を測定する圧縮試験方法であって、
同一の材料で作られた長さの異なる第1及び第2の供試体のそれぞれに対し、当該供試体に加える応力に対する変位の関係を測定する変位測定ステップと、
前記第1の供試体の長さLと前記第2の供試体の長さLの差(L−L)に応力差Δσを乗じた値Δσ(L−L)を、前記第1の供試体の応力差Δσに対する変位ΔLと前記第2の供試体の前記応力差Δσに対する変位ΔLとの変位差(ΔL−ΔL)で除した値を、当該供試体の材料の圧縮静弾性率として算出する弾性率算出ステップと、を有することを特徴とする。
このように、同一の材料で作られた長さの異なる2つの供試体について測定変位ΔL,ΔLを測定し、この変位の差(ΔL−ΔL)、応力差Δσ、及び供試体の長さの差(L−L)から、E=(L−L)Δσ/(ΔL−ΔL)により圧縮静弾性率Eの算出を行うことで、上述の式(8)で説明したように、実際の測定変位ΔL,ΔLに含まれるピストンの変位に起因する成分(Δσ/G)が除かれ、より正確に圧縮静弾性率Eを算出することが可能となる。
ここで、供試体の形状は柱状であればよくその断面形状は問わないが、供試体内部の応力をできるだけ均等にするためには、円柱形とするのが好ましい。供試体の材料に関しても、ここでは特に限定しない。
また、供試体に加える応力の範囲については、フックの法則が十分な精度で成り立つ範囲であればよい。
本発明に係る圧縮試験方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記変位測定ステップにおいて、前記第1の供試体に対して加える2つの異なる応力σs1,σs2(σs1<σs2)の間での当該供試体の変位ΔLと、前記第2の供試体に対して加える前記応力σs1,σs2の間での当該供試体の変位ΔLとを測定し、
前記弾性率算出ステップにおいては、変位差(L−L)に応力差Δσ=(σs2−σs1)を乗じた値Δσ(L−L)を、変位差(ΔL−ΔL)で除した値を、当該供試体の材料の圧縮静弾性率として算出することを特徴とする。
ここで、σs1,σs2については、必要な測定範囲に応じて任意に設定することができるが、低圧値σs1は0[Pa]以上、σs2は供試体の破壊応力よりも小さい値とする。σs1=0[Pa]とすると、圧縮機器内のクリアランスが発生したり、供試体内のキャビティが復元したり、供試体の遅延弾性成分の影響が大きくなったりするため、低圧値σs1については、0[Pa]よりも大きい値に設定することが好ましい。
本発明に係る圧縮試験方法の第3の構成は、前記第1又は2の構成において、前記供試体に加える応力を、前記供試体の圧縮強度以下の所定の圧力まで昇圧させた後減圧させる昇降圧過程を少なくとも1回以上行う誤差除去ステップを有し、
前記誤差除去ステップを行った後に、前記変位測定ステップ及び前記弾性率算出ステップを実行することを特徴とする。
このように、変位測定ステップ及び弾性率算出ステップを実行する前に、誤差除去ステップを行うことによって、供試体とピストンとの間やその他加圧機器内に存在するクリアランス(遊び)が押潰されたり、供試体表面の凹凸が潰れたり、供試体内部に存在するキャビテーションが圧潰されたりするなど、様々な非可逆的な変化が重畳して現れる誤差要因が除去される。従って、精度の高い弾性率の測定が可能となる。
本発明に係る圧縮試験方法の第4の構成は、前記第1乃至3の何れか一の構成において、前記変位測定ステップにおいては、前記第1及び第2の供試体のそれぞれに対して、
(1)当該供試体に対し加える応力をσs1からσs2(σs1<σs2)に、時間区間[0,T]の所定の時間関数σ(t)に従って時間Tで昇圧させるとともに、各応力σs1及びσs2において当該供試体の変位δL (up) (σ s1 ),δL (up) (σ s2 を測定し、その差(δL (up) (σ s2 )−δL (up) (σ s1 ))を応力σs1,σs2の間での昇圧変位ΔL(up)として算出する昇圧過程測定ステップ;
(2)当該供試体に対し加える応力をσs2からσs1に、前記時間関数σ(t)を時間反転させた関数σ(T−t)に従って時間Tで降圧させるとともに、各応力σs2及びσs1において当該供試体の変位δL (down) (σ s2 ),δL (down) (σ s1 を測定し、その差(δL (down) (σ s2 )−δL (down) (σ s1 ))を応力σs1,σs2の間での降圧変位ΔL(down)として算出する降圧過程測定ステップ;
(3)及び、前記昇圧変位ΔL(up)と前記降圧変位ΔL(down)との平均値を、応力σs1,σs2の間での当該供試体の変位ΔLとして算出する平均変位算出ステップ;
の各ステップを実行することにより、第1の供試体の変位ΔL及び第2の供試体の変位ΔLを算出することを特徴とする。
このように、第1及び第2の供試体について、昇圧過程では応力σを時間関数σ(t)に従って時間Tで昇圧させ、降圧過程では応力σをその時間反転関数σ(T−t)に従って時間Tで降圧させ、昇圧変位と降圧変位の平均値ΔL,ΔLを算出し、この平均値を用いてE=(L−L)Δσ/(ΔL−ΔL)により圧縮静弾性率Eの算出を行うことで、上記式(21)〜(24)で説明したとおり、塑性変形の影響をキャンセルさせることができる。また、供試体の遅延弾性成分の影響は、昇圧変位と降圧変位の平均値をとることにより小さくなる。従って、より精度の高い弾性率の測定が可能となる。
ここで、応力変化の時間関数σ(t)の選び方は任意であるが、データ処理や制御を容易にするために、応力の変化が一定の線形関数とするのが好ましい。
本発明に係る圧縮試験方法の第5の構成は、前記第1乃至4の何れか一の構成において、前記変位測定ステップの前に、前記供試体に加える応力を、前記供試体の圧縮強度以下の所定の圧力まで昇圧させた後減圧させる昇降圧過程を少なくとも1回以上行う誤差除去ステップを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、装置誤差除去ステップにおいて、昇降圧過程を少なくとも1回以上行うことにより、供試体と加圧治具の接触面との間の微妙な凹凸や、接触状態、加圧治具の圧力によるひずみ、加圧装置の剛性などの影響による供試体に加える圧力と変位との関係曲線(以下「圧力・変位曲線」という。)の不可逆的な変位要素として現れる装置誤差が軽減乃至は除去される。そして、圧力・変位曲線の装置誤差要素を除去した後に変位測定ステップにおいて供試体に加えた圧力及び供試体の変位を、ピストン等の加圧治具を介して間接的に測定することにより、供試体の圧力と変位の関係を精度よく求めることが可能となる。
本発明に係る圧縮試験機の第1の構成は、加圧ピストンにより柱状の供試体の軸方向に加圧するとともに、加圧中に、当該供試体に加えた加圧力を検出するとともに、加圧ピストンの変位を検出することによって当該供試体の変位を測定する加圧測定装置と、
前記加圧測定装置の加圧制御、並びに加圧力及び供試体の変位の測定の制御を行う制御装置と、を備えた圧縮試験機において、
前記制御装置は、
加圧試験を行う第1及び第2の供試体の長さL,L、及び加圧試験を行う応力差Δσの値を設定する測定条件設定手段と、
前記加圧測定装置のピストンに第1又は第2の供試体が挟扼された状態において、当該供試体に加える応力に対する変位の関係を測定する変位測定手段と、
前記第1の供試体の長さLと前記第2の供試体の長さLの差(L−L)に応力差Δσを乗じた値Δσ(L−L)を、前記第1の供試体の応力差Δσに対する変位ΔLと前記第2の供試体の前記応力差Δσに対する変位ΔLとの変位差(ΔL−ΔL)で除した値を、当該供試体の材料の圧縮静弾性率として算出する弾性率算出手段と、
を備えたことを特徴とする。
本発明に係る圧縮試験機の第2の構成は、前記第1の構成において、前記測定条件設定手段は、供試体に対して加える2つの異なる応力σs1,σs2(σs1<σs2)を設定するものであり、
前記変位測定手段は、前記加圧測定装置のピストンに第1又は第2の供試体が挟扼された状態において、当該供試体に対して前記応力σs1,σs2の間での当該供試体の変位ΔL(i=1,2)を測定するものであり、
前記弾性率算出手段は、変位差(L−L)に応力差Δσ=(σs2−σs1)を乗じた値Δσ(L−L)を、変位差(ΔL−ΔL)で除した値を、当該供試体の材料の圧縮静弾性率として算出することを特徴とする。
本発明に係る圧縮試験機の第3の構成は、前記第1又は2の構成において、前記加圧測定装置のピストンに挟扼された供試体の加圧試験を行うに先立ち、当該供試体に加える応力を、当該供試体の圧縮強度以下の所定の圧力まで昇圧させた後減圧させる昇降圧過程を少なくとも1回以上行う誤差除去手段を備えていることを特徴とする。
本発明に係る圧縮試験機の第4の構成は、前記第1乃至3の何れか一の構成において、前記変位測定手段は、
前記加圧測定装置のピストンに挟扼された供試体に対し加える応力をσs1からσs2に、時間区間[0,T]の所定の時間関数σ(t)に従って時間Tで昇圧させるとともに、各応力σs1及びσs2において当該供試体の変位δL (up) (σ s1 ),δL (up) (σ s2 を測定し、その差(δL (up) (σ s2 )−δL (up) (σ s1 ))を応力σs1,σs2の間での昇圧変位ΔL(up)として算出する昇圧過程測定手段;
当該供試体に対し加える応力をσs2からσs1に、前記時間関数σ(t)を時間反転させた関数σ(T−t)に従って時間Tで降圧させるとともに、各応力σs2及びσs1において当該供試体の変位δL (down) (σ s2 ),δL (down) (σ s1 を測定し、その差(δL (down) (σ s2 )−δL (down) (σ s1 ))を応力σs1,σs2の間での降圧変位ΔL(down)として算出する降圧過程測定手段;
及び、前記昇圧変位ΔL(up)と前記降圧変位ΔL(down)との平均値を、応力σs1,σs2の間での当該供試体の変位ΔLとして算出する平均変位算出手段;
を備えていることを特徴とする。
本発明に係る圧縮試験機の第5の構成は、前記第1乃至4の何れか一の構成において、
前記制御装置は、前記加圧測定装置のピストンに挟扼された供試体の加圧試験を行うに先立ち、当該供試体に加える応力を、当該供試体の圧縮強度以下の所定の圧力まで昇圧させた後減圧させる昇降圧過程を少なくとも1回以上行う誤差除去手段を備えていることを特徴とする。

この構成によれば、装置誤差除去手段により、昇降圧過程を少なくとも1回以上行うことにより、上述したような圧縮試験機の加圧機構に起因する圧力・変位曲線の不可逆的な変位要素として現れる装置誤差が軽減乃至は除去される。そして、圧力・変位曲線の装置誤差要素を除去した後に変位測定手段により供試体に加えた圧力及び供試体の変位を、治具を介して間接的に測定することで、供試体の圧力と変位の関係が精度よく求めることが可能となる。
本発明に係る圧縮試験機のプログラムは、加圧ピストンにより柱状の供試体の軸方向に加圧するとともに、加圧中に、当該供試体に加えた加圧力と当該供試体の変位とを検出する加圧測定装置と、前記加圧測定装置の加圧制御、並びに加圧力及び供試体の変位の測定の制御を行うコンピュータと、を備えた圧縮試験システムにおいて、前記コンピュータに読み込んで実行することで、前記コンピュータを上記第1乃至5の何れか一の構成の圧縮試験機の制御装置として機能させることを特徴とする。
このプログラムによれば、コンピュータで実行することで、圧縮試験機を、先に述べた本発明に係る圧縮試験機として機能させることができる。
以上のように、本発明に係る圧縮試験方法及び圧縮試験機によれば、同一の材料で作られた長さの異なる2つの供試体について測定変位ΔL,ΔLを測定し、この変位の差(ΔL−ΔL)、応力差Δσ、及び供試体の長さの差(L−L)から圧縮静弾性率Eの算出を行うことで、実際の測定変位ΔL,ΔLに含まれるピストンの変位に起因する成分が除かれ、より正確に圧縮静弾性率Eを算出することが可能となる。
また、加圧治具を介して間接的に変位を測定した場合に、装置の機構に起因する圧力・変位曲線の不可逆的な変位要素として現れる装置誤差要素を誤差除去ステップにおいて除去した後に、変位測定ステップにおいて圧力・変位曲線の測定を行う。故に、供試体の変位を直接計測するのではなく加圧治具を介して間接的に測定する場合であっても、供試体の圧力と変位の関係を精度よく測定することができる。これにより、例えば、熱間における供試体の圧縮試験のように、供試体に変位検出センサを直接取り付けられない場合であっても、供試体の圧力・変位関係を精度よく行うことが可能となる。
また、昇圧過程では応力σを時間関数σ(t)に従って時間Tで昇圧させ、降圧過程では応力σをその時間反転関数σ(T−t)に従って時間Tで降圧させ、昇圧変位と降圧変位の平均値ΔL,ΔLを算出し、この平均値を用いて圧縮静弾性率Eの算出を行うことで、塑性変形の影響をキャンセルさせることができる。また、供試体の遅延弾性成分の影響は、昇圧変位と降圧変位の平均値をとることにより小さくなる。従って、より精度の高い弾性率の測定が可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図4は、本発明の実施例1に記載の圧縮試験機1の全体構成を表す図である。圧縮試験機1は、実際に試料に加圧を行い試料の変位を測定する機械的構成部分2と、測定の制御を行う制御構成部分3とから構成されている。尚、圧縮試験機1の機械的構成部分2に関しては、従来の圧縮試験機と同様に構成することができる。図4には、その一例が示されている。
機械的構成部分2は、プレス下板4、プレス上板5、支柱6、載荷台7、油圧ラムシリンダ8、油圧ラムピストン9、下部加圧ロッド10、上部加圧ロッド11、ロードセル12、変位検出計13、断熱気密容器14、ヒータ15、及び温度センサ16を備えている。
プレス下板4は床面に圧縮試験機1を固定する土台部分を成す。プレス上板5は、圧縮試験機1の天井部分を成す。プレス下板4とプレス上板5とは、その左右側方で支柱6,6により強固に連結されている。
プレス下板4の上面中央部には、載荷台7が設置されている。一方、プレス上板5の下面中央部には、油圧ラムシリンダ8と油圧ラムピストン9が強固に固定されている。油圧ラムシリンダ8及び油圧ラムピストン9は、供試体TPを加圧する押圧力を発生させる装置である。油圧ラムピストン9は、油圧ラムシリンダ8のバレル内を上下に移動する。また、油圧ラムシリンダ8のバレル上部とバレル下部には、作動液体に圧力を伝達するための加圧管9a,9bが連通されている。各加圧管9a,9bには、作動液体を加圧する加圧装置9c,9dが設けられている。加圧装置9c,9dが、それぞれ、バレル内上部及びバレル内下部の作動液体に圧力P,Pを加えることで、油圧ラムピストン9に加圧力を発生させる。
載荷台7の上面中央には下部加圧ロッド10が立設されている。また、下部加圧ロッド10に対向して、油圧ラムピストン9の下面にはロードセル12を介して上部加圧ロッド11が設けられている。下部加圧ロッド10の上面と上部加圧ロッド11の下面と間には、円柱状の供試体TPが挟扼される。また、下部加圧ロッド10及び上部加圧ロッド11は、窒化珪素及び炭化珪素の硬度の高い耐火部材で構成されている。
供試体TPの上面は、上部加圧ロッド11を介して油圧ラムピストン9により加圧される。また、供試体TPの下面は、下部加圧ロッド10を介して載荷台7で抑えられており、供試体TPの下面には加圧力と同じ反力が加えられる。ロードセル12は、油圧ラムピストン9により加えられる加圧力を検出する。
油圧ラムピストン9の底面と載荷台7の上面には、水平方向の延出部材13a,13bが延設されている。そして。この延出部材13a,13bの先端の間には、変位検出計13が設置されている。変位検出計13は、延出部材13a,13bの間隔を測定するゲージであり、ここではリニアゲージを使用している。これにより、上部加圧ロッド11の上端と下部加圧ロッド10の下端との距離の変位を精密に測定することができる。
上部加圧ロッド11の下部と下部加圧ロッド10の上部は、断熱気密容器14で囲繞されており、断熱気密容器14内は半気密状態とされている。この断熱気密容器14には、給気管14aと排気管14bが連通されている。給気管14aからは、アルゴン等の不活性ガスや窒素ガスなどが断熱気密容器14内に送気される。また、断熱気密容器14内の余分な気体は、排気管14bから排出される。これにより、断熱気密容器14内は常に不活性雰囲気に保つことが可能である。
また、断熱気密容器14内には、供試体TPの側面全体を取り囲むように、ヒータ15が設けられている。また、供試体TPの近傍の雰囲気温度を測定する温度センサ16が設けられている。ヒータ15は、供試体TPの周囲の空気を加熱して、供試体TPを過熱状態とする。これにより、供試体TPを高温に加熱した状態での圧縮試験が可能となる。
一方、制御構成部分3は、制御ボード21及びコンピュータ22により構成されている。制御ボード21は、加圧装置9c,9dの加圧出力の制御、ロードセル12による応力検出、変位検出計13による変位検出、ヒータ15による加熱制御、温度センサ16による供試体TP近傍の温度検出などの制御を行う回路が搭載されている。また、コンピュータ22は、プログラムに従って、制御ボード21により各制御や測定の制御を実行する。
図5は、本発明の実施例1の圧縮試験機1の機能構成を表すブロック図である。図5において、機械的構成部分2及び制御構成部分3、並びに、ヒータ15,ロードセル12,温度センサ16,加圧装置9c,9d,及び変位検出計13は、図4の同符号の構成部分に対応している。
制御構成部分3は、機能的には、入力装置31,測定条件設定手段32,測定条件記憶手段33,加熱制御手段34,誤差除去手段35,変位測定手段36,測定結果記憶手段37,弾性率算出手段38,出力制御手段39,及びディスプレイ40を備えている。
入力装置31は、使用者がコンピュータ22に指示を入力する装置であり、キーボードやマウス等で構成される。
測定条件設定手段32は、ディスプレイ40に入力画面を表示して使用者に対し加圧試験の測定条件の入力を促すと共に、入力装置31から入力された測定条件を測定条件記憶手段33に格納する。測定条件記憶手段33は、測定条件を一時的に記憶する部分であり、RAMやハードディスクなどにより構成される。
ここで、「測定条件」には、加圧試験における供試体TPの加熱温度Θ、最大加圧時の圧力(以下「最大加圧力」という。)σs2、低圧における変位測定を行うときの圧力(以下「低圧測定点圧力」という。)σs1、加圧力を低圧にするときの最小加圧力σs0、装置誤差除去操作の繰り返し回数N、測定する2つの供試体TPの長さL,L及びその断面積Aなどのパラメータが含まれる。
加熱制御手段34は、測定条件記憶手段33に格納された加圧試験における加熱温度Θに従って、温度センサ16の検出温度を参照してヒータ15を制御することにより、供試体TPの加熱制御を行う。
誤差除去手段35は、ロードセル12の検出する圧力を参照して加圧装置9c,9dを制御することにより、供試体TPに加える圧力を、最大加圧力σs2まで昇圧させた後、最小加圧力σs0まで減圧させる昇降圧過程を、N回実行する。ここで、Nは1以上の整数であり、適当な値に設定することができる。
変位測定手段36は、供試体TPを加圧しながら、圧力とそれに対する供試体TPの変位を、ロードセル12及び変位検出計13で測定する制御を行う。
測定結果記憶手段37は、変位測定手段36により検出される測定データ及び圧縮静弾性率データを記憶する。
弾性率算出手段38は、変位測定手段36が出力する圧力及び変位のデータに基づき、供試体TPの圧縮静弾性率を算出し、測定結果記憶手段37に格納する。
出力制御手段39は、弾性率算出手段38により算出された圧縮静弾性率データを、ディスプレイ40に出力する。
以上のように構成された本実施例に係る圧縮試験機1について、以下それによる圧縮試験方法について説明する。
図6は、圧縮試験方法の全体の流れを表すフローチャートである。ここでは、長さの異なる2つの供試体TP1,TP2に対する加圧試験を行うことにより、材料の圧縮静弾性率の測定を行う。
ステップS1において、測定条件設定手段32は、ディスプレイ40に測定条件設定画面を表示する。使用者は、この画面に従って、入力装置31により圧縮試験の測定条件を設定する。測定条件が入力されると、測定条件設定手段32は、それらの測定条件を測定条件記憶手段33に保存する。
ここで、最大加圧力σs2は、供試体TPの圧縮強度以下とする。供試体TPの圧縮強度については、あらかじめ別途破壊試験などを行って測定しておく。
そして、下部加圧ロッド10と上部加圧ロッド11の間に、長さLの供試体TP1を設置する。
ステップS2において、加熱制御手段34は、測定条件記憶手段33に保存された加熱温度Θに従って、ヒータ15の通電制御を行う。これにより、供試体TP1は、温度Θに加熱された状態となる。
ステップS3において、誤差除去手段35は、加圧装置9c,9dにより、供試体TP1に加える圧力を徐々に昇圧させる。そして、ロードセル12により検出される圧力がσs2となった時点で昇圧を止める。次いで、ステップS4において、誤差除去手段35は、加圧装置9c,9dにより、供試体TP1に加える圧力を徐々に降圧させる。そして、ロードセル12により検出される圧力がσs0となった時点で降圧を止める。このステップS3,S4の昇降圧過程を、以下「誤差除去処理」という。
ステップS5において、誤差除去処理の繰り返し回数がN回に達していない場合は、再びステップS3に戻り、N回に達した場合には、次のステップS5に移行する。これにより、誤差除去処理は、最初に設定された繰り返し回数Nだけ反復して実行される。
ステップS6において、変位測定手段36は、加圧装置9c,9dにより、ロードセル12により検出される圧力がσs1となるまで、供試体TP1に加える圧力を一定の昇圧速度k=(σs2−σs1)/Tで昇圧させる。ステップS7において、変位測定手段36は、変位検出計13が検出する圧力σs1における供試体TP1の変位δL (up)(σs1)を取り込み、測定結果記憶手段37に保存する。ステップS8において、変位測定手段36は、加圧装置9c,9dにより、ロードセル12により検出される圧力がσs2となるまで、さらに継続して一定の昇圧速度kで供試体TPに加える圧力を昇圧させる。そして、ロードセル12により検出される圧力がσs2となった時点で昇圧を止め、降圧に移る。ステップS9において、変位測定手段36は、変位検出計13が検出する圧力σs2における供試体TP1の変位δL(σs2)を取り込み、測定結果記憶手段37に保存する。以上のステップS6〜S9の過程を以下「昇圧測定過程」という。
ステップS10において、変位測定手段36は、加圧装置9c,9dにより、ロードセル12により検出される圧力がσs1となるまで、一定の降圧速度−kで供試体TPに加える圧力を徐々に降圧させる。ステップS11において、変位測定手段36は、変位検出計13が検出する圧力σs1における供試体TPの変位δL (down)(σs1)を取り込み、測定結果記憶手段37に保存する。ステップS12において、変位測定手段36は、加圧装置9c,9dにより、ロードセル12により検出される圧力がσs0となるまで、さらに継続して一定の降圧速度−kで供試体TPに加える圧力を降圧させる。そして、ロードセル12により検出される圧力がσs0となった時点で降圧を止める。以上のステップS10〜S12の過程を以下「降圧測定過程」という。
既に説明したように、一般に、同じ圧力σs1における供試体TPの変位であっても、昇圧測定過程で測定される変位δL (up)(σs1)と降圧測定過程で測定される変位δL (down)(σs1)とは、同じ値にはならない。そこで、弾性率算出手段38は、圧力σs1と圧力σs2との間の供試体TP1の平均変位ΔLを、次式により計算し、その結果を測定結果記憶手段37に格納する。
Figure 0004859224
ステップS13において、供試体TPの交換のために、加熱制御手段34はヒータ15への通電を遮断し、断熱気密容器14内の温度を降温させる。また、弾性率算出手段38は、ディスプレイ40上に供試体TPの交換を促す表示を行う。
使用者は、断熱気密容器14内の温度が十分に下がった後、供試体TP1を供試体TP2に取り替える。そして、圧縮試験機1は、今度は供試体TP2について、上記ステップS2〜S12の操作を実行し、供試体TP2の平均変位ΔLを式(25)と同様に計算する。
ステップS14において、弾性率算出手段38は、測定結果記憶手段37に保存されたΔL,ΔLに基づいて、次式により供試体TPの圧縮静弾性率Eを算出し、測定結果記憶手段37に保存する。
Figure 0004859224
最後に、ステップS15において、出力制御手段39は、算出された圧縮静弾性率を、ディスプレイ40に表示するし、加圧試験処理を終了する。
以上の処理により、上部加圧ロッド11,下部加圧ロッド10の加圧による弾性変形の影響を除去し、供試体の塑性変形の影響も除去して、供試体を構成する物質の圧縮静弾性率Eを測定することができる。
最後に、本発明に係る圧縮試験方法の精度検証を行うため、実際に耐火物材料を用いて圧縮静弾性率Eを測定した実験結果について説明する。
(実験例)
精度検証試験には、供試体の材料として耐火物試料Aを使用した。この耐火物試料Aを成形し、長さ100mm,半径15mm(断面積7cm)の円柱状の供試体TP1と、長さ150mm,半径15mm(断面積7cm)の円柱状の供試体TP2とを作成し、これらの供試体に対して常温において圧縮試験を行った。
圧縮試験は、上記実施例1で説明した方法を用いて供試体に加える応力と供試体の変位との関係を測定するとともに、図7に示すように、供試体TPの側面にひずみゲージ50を貼着し、供試体TPのひずみを直接測定した。
図8は、実施例1の実施例1のピストン変位法により測定されたピストン荷重に対する変位検出計13が検出する変位の関係である。図8(a)は長さ100mmの供試体TP1に対する測定結果を表し、図8(b)は供試体TP2に対する測定結果を表す。図8(a),(b)において、横軸はピストンに加えた荷重、縦軸は変位検出計13で測定される変位である。また、図9は、ひずみゲージにより測定されたピストン荷重に対する変位の関係である。図8(b)と図9の測定は、同じ供試体TP2に対して同時に測定したものである。尚、ひずみゲージの測定結果については、測定限界0.5mm以下のデータのみが示されている。
図8から分かるように、最初、無加圧状態(荷重0kgf)から最大荷重F(=700kgf)まで供試体TPに荷重を一定の加圧速度10kgf/secで加えていくと大きな変位が生じる。これは、下部加圧ロッド10や上部加圧ロッド11のクリアランスの圧潰、供試体TPの下部加圧ロッド10,上部加圧ロッド11との接触面の凹凸の潰れのほか、供試体TP内に存在するキャビティの圧潰などにより生じる塑性変形によるものと考えられる。最初の加圧時の大きな塑性変形は、図9に示したひずみゲージによる測定においても同様に見られる。
尚、図9と図8(b)とを比較すると、明らかにひずみゲージにより測定された変位のほうが、ピストン変位法により測定された変位に比べて小さい。これは、上述した下部加圧ロッド10や上部加圧ロッド11の影響によるものである。
次に、最大荷重Fまで昇圧後、最小荷重F(=35kgf)まで一定の降圧速度−10kgf/secで降圧する。弾性により供試体TPは降圧と共に伸長する。最小荷重Fまで降圧後、再び最大荷重Fまで一定の加圧速度10kgf/secで昇圧する。試験では、この昇降圧過程を3回行った。
図8,図9より、1回目の降圧過程以降の昇降圧過程では、各昇圧過程はほぼ同じ軌跡を描き、各降圧過程はほぼ同じ軌跡を描く。これは、最初の昇圧過程で誤差要因となる塑性変形分が除去されたことによる。また、昇圧過程の軌跡に比べて降圧過程の軌跡は変位が大きい側となり(昇降圧過程にヒステリシスを有し)、各昇降圧過程の軌跡は、直線とはならず上に凸の曲線となる。これは、先に説明したように、供試体TPに遅延弾性要素が含まれていることを表している。また、昇降圧過程を1回行う毎に、軌跡は変位が大きい側に僅かずつシフトしている。これは、供試体に塑性変形要素が含まれていることを表している。
図8のピストン変位法により測定された測定値から、弾性率を計算するにあたり、低圧側荷重をF=500kgf,高圧側荷重をF=700kgfとする。このとき、定圧側応力はσ=500/(1.5π)=70.7[kgf/cm],高圧側応力はσ=700/(1.5π)=99.0[kgf/cm]となる。
2回目の昇降圧過程において、ピストン変位法により各供試体について測定された変位と、変位から算出された圧縮静弾性率を(表1)に示す。
Figure 0004859224
2回目の昇降圧過程において、ひずみゲージ法により各供試体について測定された変位と、変位から算出された圧縮静弾性率を(表2)に示す。図9の測定においては、荷重F=700kgf,700kgfのデータがとれていないため、代わりに、F’=195kgf,F’=395kgfのデータを用いた。
Figure 0004859224
上記測定結果から、各方法により得られる圧縮静弾性率は、ほぼ一致することが分かる。
弾性体モデルでモデル化した測定系の概念図である。 耐火物の供試体に対してピストン変位法により供試体に加える荷重と変位の関係を測定した結果の一例を表す図である。 4要素粘弾性モデルを示す図である。 本発明の実施例1に記載の圧縮試験機1の全体構成を表す図である。 本発明の実施例1の圧縮試験機1の機能構成を表すブロック図である。 圧縮試験方法の全体の流れを表すフローチャートである。 供試体TPへひずみゲージを取り付けた状態を表す図である。 実施例1の実施例1のピストン変位法により測定されたピストン荷重に対する変位検出計13が検出する変位の関係である。 ひずみゲージにより測定されたピストン荷重に対する変位の関係である。 ピストン変位法による圧縮静弾性率の測定を説明する図である。 特許文献1記載の高温圧縮試験機を示す図である。
符号の説明
1 圧縮試験機
2 機械的構成部分
3 制御構成部分
4 プレス下板
5 プレス上板
6 支柱
7 載荷台
8 油圧ラムシリンダ
9 油圧ラムピストン
9a,9b 加圧管
9c,9d 加圧装置
10 下部加圧ロッド
11 上部加圧ロッド
12 ロードセル
13 変位検出計
13a,13b 延出部材
14 断熱気密容器
14a 給気管
14b 排気管
15 ヒータ
16 温度センサ
21 制御ボード
22 コンピュータ
31 入力装置
32 測定条件設定手段
33 測定条件記憶手段
34 加熱制御手段
35 誤差除去手段
36 変位測定手段
37 測定結果記憶手段
38 弾性率算出手段
39 出力制御手段
40 ディスプレイ
TP 供試体
100 高温圧縮試験機
101 真空槽
102 高温炉
103 ヒータ
104 ロードセル
105 継手
106 クロスヘッド
107 下部加圧治具
108 クロスヨーク
109 上部加圧治具
110,111,112,113 分割部材
114 上圧盤
115 補助圧盤
116 空洞
117 検出棒
120 接続部
121,122,123,124 分割部材
125 下圧盤
126 試料受台
127 保護カバー
128 検出棒
130 温度センサ

Claims (11)

  1. 柱状の供試体を加圧しその変位を加圧ピストンの変位を計測することによって当該供試体の材料の圧縮静弾性率を測定する圧縮試験方法であって、
    同一の材料で作られた長さの異なる第1及び第2の供試体のそれぞれに対し、当該供試体に加える応力に対する変位の関係を測定する変位測定ステップと、
    前記第1の供試体の長さLと前記第2の供試体の長さLの差(L−L)に応力差Δσを乗じた値Δσ(L−L)を、前記第1の供試体の応力差Δσに対する変位ΔLと前記第2の供試体の前記応力差Δσに対する変位ΔLとの変位差(ΔL−ΔL)で除した値を、当該材料の圧縮静弾性率として算出する弾性率算出ステップと、
    を有する圧縮試験方法。
  2. 前記変位測定ステップにおいて、前記第1の供試体に対して加える2つの異なる応力σs1,σs2(σs1<σs2)の間での当該供試体の変位ΔLと、前記第2の供試体に対して加える前記応力σs1,σs2の間での当該供試体の変位ΔLとを測定し、
    前記弾性率算出ステップにおいては、変位差(L−L)に応力差Δσ=(σs2−σs1)を乗じた値Δσ(L−L)を、変位差(ΔL−ΔL)で除した値を、当該材料の圧縮静弾性率として算出することを特徴とする請求項1記載の圧縮試験方法。
  3. 前記供試体に加える応力を、前記供試体の圧縮強度以下の所定の圧力まで昇圧させた後減圧させる昇降圧過程を少なくとも1回以上行う誤差除去ステップを有し、
    前記誤差除去ステップを行った後に、前記変位測定ステップ及び前記弾性率算出ステップを実行することを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮試験方法。
  4. 前記変位測定ステップにおいては、前記第1及び第2の供試体のそれぞれに対して、
    (1)当該供試体に対し加える応力をσs1からσs2(σs1<σs2)に、時間区間[0,T]の所定の時間関数σ(t)に従って時間Tで昇圧させるとともに、各応力σs1及びσs2において当該供試体の変位δL (up) (σ s1 ),δL (up) (σ s2 を測定し、その差(δL (up) (σ s2 )−δL (up) (σ s1 ))を応力σs1,σs2の間での昇圧変位ΔL(up)として算出する昇圧過程測定ステップ;
    (2)当該供試体に対し加える応力をσs2からσs1に、前記時間関数σ(t)を時間反転させた関数σ(T−t)に従って時間Tで降圧させるとともに、各応力σs2及びσs1において当該供試体の変位δL (down) (σ s2 ),δL (down) (σ s1 を測定し、その差(δL (down) (σ s2 )−δL (down) (σ s1 ))を応力σs1,σs2の間での降圧変位ΔL(down)として算出する降圧過程測定ステップ;
    (3)及び、前記昇圧変位ΔL(up)と前記降圧変位ΔL(down)との平均値を、応力σs1,σs2の間での当該供試体の変位ΔLとして算出する平均変位算出ステップ;
    の各ステップを実行することにより、第1の供試体の変位ΔL及び第2の供試体の変位ΔLを算出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の圧縮試験方法。
  5. 前記変位測定ステップの前に、前記供試体に加える応力を、前記供試体の圧縮強度以下の所定の圧力まで昇圧させた後減圧させる昇降圧過程を少なくとも1回以上行う誤差除去ステップを備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の圧縮試験方法。
  6. 加圧ピストンにより柱状の供試体の軸方向に加圧するとともに、加圧中に、当該供試体に加えた加圧力を検出するとともに、加圧ピストンの変位を検出することによって当該供試体の変位を測定する加圧測定装置と、
    前記加圧測定装置の加圧制御、並びに加圧力及び供試体の変位の測定の制御を行う制御装置と、を備えた圧縮試験機において、
    前記制御装置は、
    加圧試験を行う第1及び第2の供試体の長さL,L、及び加圧試験を行う応力差Δσの値を設定する測定条件設定手段と、
    前記加圧測定装置のピストンに第1又は第2の供試体が挟扼された状態において、当該供試体に加える応力に対する変位の関係を測定する変位測定手段と、
    前記第1の供試体の長さLと前記第2の供試体の長さLの差(L−L)に応力差Δσを乗じた値Δσ(L−L)を、前記第1の供試体の応力差Δσに対する変位ΔLと前記第2の供試体の前記応力差Δσに対する変位ΔLとの変位差(ΔL−ΔL)で除した値を、当該材料の圧縮静弾性率として算出する弾性率算出手段と、
    を備えたことを特徴とする圧縮試験機。
  7. 前記測定条件設定手段は、供試体に対して加える2つの異なる応力σs1,σs2(σs1<σs2)を設定するものであり、
    前記変位測定手段は、前記加圧測定装置のピストンに第1又は第2の供試体が挟扼された状態において、当該供試体に対して前記応力σs1,σs2の間での当該供試体の変位ΔL(i=1,2)を測定するものであり、
    前記弾性率算出手段は、変位差(L−L)に応力差Δσ=(σs2−σs1)を乗じた値Δσ(L−L)を、変位差(ΔL−ΔL)で除した値を、当該材料の圧縮静弾性率として算出することを特徴とする請求項6記載の圧縮試験機。
  8. 前記加圧測定装置のピストンに挟扼された供試体の加圧試験を行うに先立ち、当該供試体に加える応力を、当該供試体の圧縮強度以下の所定の圧力まで昇圧させた後減圧させる昇降圧過程を少なくとも1回以上行う誤差除去手段を備えていることを特徴とする請求項6又は7記載の圧縮試験機。
  9. 前記変位測定手段は、
    前記加圧測定装置のピストンに挟扼された供試体に対し加える応力をσs1からσs2に、時間区間[0,T]の所定の時間関数σ(t)に従って時間Tで昇圧させるとともに、各応力σs1及びσs2において当該供試体の変位δL (up) (σ s1 ),δL (up) (σ s2 を測定し、その差(δL (up) (σ s2 )−δL (up) (σ s1 ))を応力σs1,σs2の間での昇圧変位ΔL(up)として算出する昇圧過程測定手段;
    当該供試体に対し加える応力をσs2からσs1に、前記時間関数σ(t)を時間反転させた関数σ(T−t)に従って時間Tで降圧させるとともに、各応力σs2及びσs1において当該供試体の変位δL (down) (σ s2 ),δL (down) (σ s1 を測定し、その差(δL (down) (σ s2 )−δL (down) (σ s1 ))を応力σs1,σs2の間での降圧変位ΔL(down)として算出する降圧過程測定手段;
    及び、前記昇圧変位ΔL(up)と前記降圧変位ΔL(down)との平均値を、応力σs1,σs2の間での当該供試体の変位ΔLとして算出する平均変位算出手段;
    を備えていることを特徴とする請求項6乃至8の何れか一に記載の圧縮試験機。
  10. 前記制御装置は、前記加圧測定装置のピストンに挟扼された供試体の加圧試験を行うに先立ち、当該供試体に加える応力を、当該供試体の圧縮強度以下の所定の圧力まで昇圧させた後減圧させる昇降圧過程を少なくとも1回以上行う誤差除去手段を備えていることを特徴とする請求項6乃至9の何れか一に記載の圧縮試験機。
  11. 加圧ピストンにより柱状の供試体の軸方向に加圧するとともに、加圧中に、当該供試体に加えた加圧力と当該供試体の変位とを検出する加圧測定装置と、
    前記加圧測定装置の加圧制御、並びに加圧力及び供試体の変位の測定の制御を行うコンピュータと、を備えた圧縮試験システムにおいて、
    前記コンピュータに読み込んで実行することで、前記コンピュータを請求項6乃至10の何れか一に記載の圧縮試験機の制御装置として機能させることを特徴とするプログラム。
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