JP4858803B2 - 抗mrd(微少残存白血病)薬 - Google Patents

抗mrd(微少残存白血病)薬 Download PDF

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Description

本発明は、アポトーシス活性増強剤、抗白血病活性増強剤、抗白血病薬、白血病細胞除去剤、白血病の併用療法、及び白血病細胞の除去方法に関する。
従来、抗白血病組成物としては、ダウノルビシン、シタラビン(cytosine arabinoside: Ara-C)、6-MP(メルカプトプリン)、プレドニゾン、ハイドロキシカルバミド、ビンクリスチン、メルファラン、アドリアマイシン、デキサメサゾン、レチノイン酸、カンプトテシン等を有効成分としたものが知られている。しかしながら、抗白血病組成物によっては重篤な副作用を起こすため、近年、副作用を軽減するとともに抗白血病組成物の抗白血病活性を増強する化学物質の開発、及びこれらの化学物質を用いた併用療法によって白血病の治療が試みられてきた。このような化学物質としては、レチノイン酸の生理活性を増強することができるディファラニゾールA(特許文献1参照)や、抗白血病組成物のアポトーシス誘導活性を増強することができる抗VLA-4抗体(非特許文献1参照)などが開発されている。
特開平11−302194号公報 Nat Med. 2003, 9(9), 1158-1165
本発明は、抗白血病組成物の抗白血病活性、特にアポトーシス活性を増強することができる、新規の抗白血病活性増強剤又はアポトーシス活性増強剤、並びにそれを用いた抗白血病薬、白血病細胞除去剤、白血病の併用療法、及び白血病細胞の除去方法を提供することを目的とする。
従来、化学療法剤(例えば、ドキソルビシン、ビンクリスチン、アクチノマイシンD等)の抗癌活性を増強する物質として、フィブロネクチン由来のペプチドであるFNIII14が知られており、このペプチドと化学療法剤との併用により、悪性黒色腫由来のA375細胞、肝臓癌由来のACHN細胞、神経膠肉腫由来のGI-1細胞、胃癌由来のGT3TKB細胞、前立腺癌由来のPC-3細胞等の固形癌由来の癌細胞に対してアポトーシスを効率的に誘導できることが報告されている(国際公開第01/8698号パンフレット参照)。
しかしながら、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド(以下、「FNIII14」と称する。)が抗白血病組成物の白血病細胞に対するアポトーシス誘導活性を増強する作用を有するかどうかは明らかではなかった。そこで、本発明者らは、国際公開第01/8698号パンフレットに記載の方法と同様に、FNIII14が抗白血病組成物の白血病細胞に対するアポトーシス誘導活性を増強する作用を有するかどうかを調べた(実施例1参照)。その結果、FNIII14は、抗白血病組成物の白血病細胞に対するアポトーシス誘導活性を増強しないことが明らかになった。
しかしながら、本発明者らは、鋭意努力の結果、ストローマ細胞又はフィブロネクチンでコーティングした容器中で、FNIII14が抗白血病組成物AraCの白血病細胞に対するアポトーシス誘導活性を増強することができることを明らかにした。
次に、本発明者らは、白血病に罹患する脊椎動物に対してFNIII14と抗白血病組成物との併用療法が有用であるかどうかを調べるため、急性骨髄性白血病(AML)モデルマウスにFNIII14と抗白血病組成物とを腹腔内投与により投与し、該モデルマウスに対するFNIII14と抗白血病組成物との併用効果を調べたが、抗白血病組成物の単独使用に比べて生存期間の有意な延長はみられなかった(実施例3参照)。FNIII14を腹腔内に投与すると、生体内の何らかのペプチダーゼによってFNIII14が分解され、FNIII14の効果が得られないのではないかと考え、以下の実験においては、FNIII14を静脈内投与で行うこととした。
ところで、抗白血病組成物や支持療法の進歩によりAMLの完全寛容(CR)率は約80%まで向上しているが、再発が多く長期生存率は30〜40%程度で、長期生存率のさらなる向上のために、再発防止法の開発が必要とされている。この再発はCR期の骨髄に微量に残存したAML細胞(微小残存白血病(minimal residual disease:MRD))が原因であるとされている。本発明者らは、FNIII14と抗白血病組成物との併用療法が、CR期の骨髄において残存したAML細胞を絶滅させるのに有効かどうかを調べるため、ヒト白血病細胞であるU937細胞を用いてMRDモデルマウスを作製し(実施例4:図4B参照)、腹腔内に抗白血病組成物AraCを、FNIII14を静脈内にそれぞれ投与し、MRDモデルマウスに対するAraCとFNIII14との併用効果を調べた。その結果、FNIII14は、AraCとの併用投与により、AraCの効果を増強し、MRDモデルマウスの生存期間を有意に延長させることが明らかになった(実施例5参照)。このことから、FNIII14は、抗白血病組成物と併用するための非常に有効な白血病治療薬としての用途が示された。
また、本発明者らは、抗白血病組成物とFNIII14との併用により生存期間が有意に延長されたマウスを用いて、各臓器においてU937細胞由来のヒトAlu配列が存在するかどうかをPCR法により調べたが、これらの臓器においては、U937細胞由来のヒトAlu配列が検出されなかった(実施例4:図4C参照)。このことから、FNIII14はAraCとの併用投与により、AraCの効果を助長させ、AMLマウスの生存期間を有意に延長させるだけでなく、白血病細胞を絶滅させてMRDを含む白血病を治療することができることが示唆された。このようにして、本発明者らは本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る抗MRD(微少残存白血病)薬は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドと、シタラビン(cytosine arabinoside:Ara−C)、又はエノシタビンとを組み合わせてなる。
上記ペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
上記ペプチドは、静脈による投与経路により投与されてもよい。
また、上記抗MRD(微少残存白血病)薬が配合剤であってもよい。
本発明によれば、抗白血病組成物の抗白血病活性、特にアポトーシス活性を増強することができる、新規の抗白血病活性増強剤又はアポトーシス活性増強剤、並びにそれを用いた抗白血病薬、白血病細胞除去剤、白血病の併用療法、及び白血病細胞の除去方法を提供することができる。
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
==配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドの薬理作用==
配列番号1に示されるアミノ酸配列(TEATITGLEPGTEYTIYVIAL)からなるペプチドの作用を増強させるために、2つのペプチドがジスルフィド結合で結合できるように、ペプチドのC末端にCysを付加したFNIII14(配列番号2:TEATITGLEPGTEYTIYVIALC)は、上述のように、ストローマ細胞やフィブロネクチンなどの細胞外マトリックスでコーティングした容器中で培養した白血病細胞に対する、抗白血病組成物のアポトーシス誘導活性を増強する作用を有する。従って、配列番号1及び2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドは、抗白血病組成物のアポトーシス誘導に起因する抗白血病活性を増強する抗白血病活性増強剤として有用であるといえる。
さらに、ストローマ細胞やフィブロネクチンなどの細胞外マトリックスでコーティングした容器中で培養した白血病細胞に、FNIII14と抗白血病組成物とを作用させると白血病細胞にアポトーシスを効率的に誘導させることができることから、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドと抗白血病組成物とは血液中の白血病細胞の除去に有用であると考えられる。これにより、輸血用に採取された血液中の白血病細胞を除去することができるので、白血病の血液感染を防止することができ、安全性を確保した輸血用の血液を提供することが可能となる。また、生体内から抽出した血液中の白血病細胞を除去することができるので、処理した血液を生体に戻すことが可能となる。
また、上述のように、FNIII14を白血病モデル動物に対して静脈投与することにより、投与された抗白血病組成物の抗白血病活性を増強することが示された。その一方、FNIII14と抗白血病組成物を白血病モデル動物に対して腹腔投与しても抗白血病組成物の抗白血病活性を増強しないことが明らかになった。従って、FNIII14を直接静脈内に投与したり、FNIII14と高分子キャリア(例えば、KLH、BSA、MAPコア、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポロタミン、キトサン、合成ペプチド、デンドリマー等の公知のキャリア)とのコンジュゲートを投与したり、FNIII14を封入したリポソームを投与したりすることなどにより、FNIII14の効果を得ることができると考えられる。従って、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを有効成分として含有する薬剤は、生体内において抗白血病組成物の抗白血病活性を増強する抗白血病活性増強剤として有用であり、当該ペプチドと抗白血病組成物との組み合わせは抗白血病薬、特に抗MRD薬として有用である。
本実施の形態において、前記白血病としては、白血病細胞に起因する白血病であれば特に制限されるものではないが、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)等の、VLA-4陽性の白血病細胞に起因する白血病であることが好ましい。
また、前記抗白血病組成物としては、例えば、クロラムブシル、ダウノルビシン(DNR)、ハイドロキシカルバミド、シタラビン(AraC)、カンプトテシン、エトポシド(VP-16)、6-MP(メルカプトプリン)、ビンクリスチン(VCR)、エノシタビン(behenoyl AraC, BHAC)、シタラビン・オクフォスフェート(YNK-01)、メソトレキセート(MTX)、イダルビシン(IDR)、ドキソルビシン(DXR)、アクラルビシン(ACR)、サイクロフォスファミド(CY)、ブサルファン、ナイムスチン(ACNU)、ラニムスチン(MCNU)、ビンデシン(VDS)、副腎皮質ホルモン(例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメサゾンなど)、ミトザントロン(MIT)、ソブゾキサン(MST-16)、フルダラビン、ペントスタチン、L-アスパラギナーゼ、レチノイン酸(ATRA)、トミバロン(Am80)、亜砒酸、イマチニブ(STI571)、インターフェロンα(IFN)等の従来白血病治療剤として使用されている物質若しくは白血病治療剤として有用な物質、又はそれらのうち2以上の組み合わせからなる混合物を有効成分として含有するものを挙げることができる。
配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドは、当該アミノ酸配列を含んでいればよく、他の部分の配列はなんでもよい。例えば、このようなペプチドとして、FNIII14、フィブロネクチン(GenBank Accession number AB191261参照)の全部又は一部、及び、タグ(例えば、Hisタグ、GSTタグなど)が結合したFNIII14又はフィブロネクチンを挙げることができる。
なお、上述においては、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを用いる場合について説明したが、本発明においては、当該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター、この発現ベクターを含有し、前記ペプチドを分泌する細胞、及び、細胞に感染して前記ペプチドを細胞外に分泌させるための細菌またはウイルスなども、抗白血病活性増強剤や抗白血病薬において前記ペプチドの代わりに用いることができる。
また、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを発現することができるプラスミドと、高分子キャリアとの複合体も、標的組織にプラスミドを運び、そこで薬物を遊離することが可能であることから、前記ペプチドの代わりに当該複合体を用いることができる。なお、この場合において用いる高分子キャリアとしては、例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポロタミン、キトサン、合成ペプチド、デンドリマーなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に、標的組織特異的に発現する表面抗原に対する抗体と、ポリリジンとの結合体は、効率よく標的組織にプラスミドを運び、標的細胞内にプラスミドを送ることができる(特開平7−216000号公報参照)。
その他、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを発現することができるプラスミドを封入したリポソームも、標的組織にプラスミドを運び、そこで薬物を遊離することが可能であることから、前記ペプチドの代わりに当該リポソームを用いることができる。この場合、Trans IT In Vivo Gene Delivery System(TaKaRaの商品名)などを用いることにより、目的の臓器や組織に、当該ポリヌクレオチドを導入することができる。また、高分子ミセルも薬物キャリアとして優れた特性を有することから、前記ペプチドやポリヌクレオチドなどを内包した高分子ミセルも前記ペプチドの代わりに当該高分子ミセルを用いることができる。
==配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチド等の作製方法==
配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドは、その配列情報に基づいて有機化学的に合成することができる。また、適切なエンハンサー/プロモーターをもつ発現ベクターに、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドを挿入し、この組換えベクターを大腸菌、サルモネラ菌等の菌や、イースト、動物細胞などに導入し、発現させてもよい。また、この組換えベクターをin vitroで転写させて得られたmRNAを、ウサギ網状赤血球抽出液、大腸菌S30抽出液、麦芽抽出液、小麦胚抽出液などを用いたインビトロ翻訳システムにより翻訳させてもよい。
ここで、発現ベクターを作製する際、Hisタグ、GSTタグなどのタグをコードするポリヌクレオチドと、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドとを融合した融合ポリヌクレオチドをベクターに挿入し、融合タンパク質として発現させるのがより好ましい。タグを利用して、目的のペプチドを容易に精製することが可能になるからである。なお、タグは、最終段階で除去し、HPLC(high-performance(-speed) liquid chromatography)などで配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドだけを精製することもできる。
なお、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを細胞外に分泌させるため、シグナルペプチドを付加した当該ペプチドを発現することのできる組換えベクターは、上述のように、適切なエンハンサー/プロモーターをもつ発現ベクターに、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドを挿入することで作製することができる。また、前記組換えベクターを含有する細胞(組換え細胞)、生体内の細胞に感染して前記ペプチドを細胞外に分泌させるための細菌またはウイルスなどは、以下のようにして製造することができる。例えば、動物細胞、細菌、またはウイルスに、前記組換えベクターをエレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法、アデノウイルス、レトロウイルス等のウイルスベクターなどを用いたウイルス感染法、又はカルシウムを用いたトランスフェクション法等によって導入することにより作製できる。なお、細菌やウイルスを用いる場合には、毒性や副作用の生じないようにするために、細菌やウイルスをあらかじめ無害化しておくことが好ましい。その例として、感染はするが、複製しないように改変されたレトロウイルスやアデノウイルスなどを挙げることができる。
==配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチド等の投与==
上述の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを有効成分として含有する薬剤や、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドと当該ペプチドで抗白血病活性が増強される抗白血病組成物とを含む配合剤を、白血病を発症したヒト又はヒト以外の脊椎動物に対して投与する場合には、導入対象の患部の近傍に直接投与してもよいが、経口又は静脈内、腹腔内等の非経口に投与してもよい。なお、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをヒト又はヒト以外の脊椎動物に対して投与する場合には、静脈内に投与することが好ましい。また、抗白血病薬として用いる抗白血病組成物は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドと同じ部位又は異なる部位に投与することとしてもよい。
上述の薬剤や組成物を経口投与する場合には、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などの製剤にしてもよく、腹腔内又は静脈内に投与する場合には、注射剤、点滴剤などの製剤にしてもよい。なお、前記製剤は、従来使用されている製剤添加物(例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、溶剤、安定剤など)を用いて、常法により製造することができる。
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。
[実施例1]
文献(J Biol Chem. 266, 8807-13, 1991)に記載の方法に従って、96ウェルプレートの各ウェルをヒト由来血漿性フィブロネクチン 5μg/mlの濃度でコーティングし、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)でブロッキングした。その後、血清を含んでいない培養液(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)とHam F12培地とを1:1の容積比で混合した培養液(日水社製);以下、「DMEM/Ham培地」と称する。)に懸濁したマウスメラノーマ細胞株B16-BL6(2×104cell)又はヒト白血病細胞株K562(1.5×104cell)を各ウェルに添加し、37℃,5% CO2のインキュベーター中で2時間培養した。培養後、上清を除去し、ビンブラスチン(和光純薬社製)を最終濃度で図1に示すような種々の濃度になるように、また、FNIII14(配列番号1参照)を最終濃度で50μg/mlになるように添加し、さらに19時間培養した。なお、コントロールとして、ビンブラスチンのみを添加して培養したものを準備した。その後、培養液を10% ウシ胎児血清(URH BIOSCIENCES社製)を含むDMEM/Ham培地に交換してさらに一晩培養し、細胞を5% ホルムアルデヒド(和光純薬社製)で固定した後、アポトーシスを起こした細胞をPBSで洗浄除去した。プレートに接着した生存細胞を0.5% クリスタルバイオレット液で染色し、水洗後、1% SDSで細胞を溶解して染料を抽出し、マイクロプレートリーダー(スペクトラレインボーサーモ、和光純薬社製)で吸光度(OD595nm)を測定して生存細胞の割合を算出した。その結果を図1に示す。
図1に示すように、FNIII14の使用により、ビンクリスチンのB16-BL6細胞に対するアポトーシス誘導活性は顕著に増強するが、K562細胞に対しては顕著な効果がみられなかった。
[実施例2]
ストローマ細胞又は細胞外マトリックスであるフィブロネクチンをコーティングした容器中で培養した白血病細胞に対する抗白血病組成物とFNIII14との影響を調べた。
ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株U937(5×106cell;American Type Culture Collection)を、10% FCSを含むRPMI 1640培地が入った、フィブロネクチンでコートされた6ウェル プレート(Becton Dickinson Labware社製)に添加して、37℃,5% CO2のインキュベーター中で24時間培養し、細胞をフィブロネクチンに接着させた。その後、50又は100μg/mL FNIII14、10μg/mL 抗VLA-4抗体(VLA-4 Ab)等を添加して1時間培養し、10-6M AraC(シタラビン)を添加して24時間培養した(なお、コントロールとして、FNIII14、VLA-4 Ab、AraC等を添加しないで培養したものを準備した。)。培養後、トリパンブルー細胞外排出試験法により細胞生存率を測定した。その結果を図2に示す。
図2に示すように、FNIII14はVLA-4 Abと同様に、AraCのU936細胞に対するアポトーシス誘導活性を増強することが明らかになった。従って、FNIII14は、ストローマ細胞又はフィブロネクチンなどの細胞外マトリックスでコーティングした容器中で培養した白血病細胞に対する、抗白血病組成物のアポトーシス誘導活性を増強し得ることが示された。
[実施例3]
次に、白血病を罹患する脊椎動物に対してFNIII14と抗白血病組成物との併用療法が有用であるかどうかを調べるため、急性骨髄性白血病(AML)モデルマウスを作製し、該モデルマウスに対するFNIII14と抗白血病組成物との併用効果を調べた。
全身放射線照射(4Gy)を施した6-10週齢のSCID(C.B-17/lcrCrj-scid/scid)マウス(Charles River Japan Laboratories)に尾静脈からU937細胞(5×106cell)を注射して移植し、約3週間で下肢部の麻痺などの急性白血病の症状を呈するAMLモデルマウスを作製した。このAMLモデルマウスに、AraC(20mg)、FNIII14(1mg)、VLA-4 Ab(1mg)等を溶解した PBS1.0mL を腹腔内投与し、各投与群の平均生存期間を測定した(なお、コントロール群として、AraC、FNIII14、VLA-4 Ab等を投与しないものを準備した。)。その結果を図3に示す。
図3に示すように、AraC投与群はコントロール群に比べて生存期間が有意に延長された。また、AraCに加えてVLA-4 Abをさらに投与すると生存期間がさらに延長された(AraC+VLA-4 Ab投与群)。しかしながら、FNIII14をAraCに加えてさらに投与した群(AraC+FNIII14投与群、及びAraC+FNIII14+VLA-4 Ab投与群)は、AraC投与群に比べて生存期間の有意な差はみられなかった。
[実施例4]
本実施例では、ヒトAML細胞を移植することによりMRDモデルマウスを作製し、抗白血病組成物とFNIII14との投与によりヒトAML細胞が絶滅するかどうか、ヒトAlu配列の存在を指標にして調べた。
<MRDモデルマウスの作製>
実施例3に記載の方法と同様に、SCIDマウスの尾静脈にU937細胞を注射して移植した。移植7日目及び14日目にマウスの各臓器にU937細胞が浸潤しているかどうかを調べるため、ヒトALU配列をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅させた。なお、ヒトALU配列のPCRは、5’-CACCTGTAATCCCAGCAGTTT-3’(FP1:配列番号3)及び5’-CGCGATCTCGGCTCACTGCA-3’(RP1:配列番号4)をプライマーとして用い、94℃×1分間(変性)、60℃×45秒間(アニーリング)、及び72℃×1分間(伸長)で25サイクル行った。
PCR反応後、増幅したDNAを3% アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色し、Alu配列の存在を調べた。なお、House keeping geneとして、マウスエリスロポエチンレセプター(EPO-R)を用い、そのPCRは、5’-TTGGCCTCAAAGCCCAGGCCA-3’(FP2:配列番号5)及び5’-CACATAGCCGGGATGCAGAGG-3’(RP2:配列番号6)をプライマーとして用い、94℃×1分間(変性)、65℃×2分間(アニーリング)、及び72℃×4分間(伸長)で27サイクル行った。移植14日目のマウスの各臓器におけるヒトALU配列の検出結果を図4Aに、移植7日目のマウスの各臓器におけるヒトALU配列の検出結果を図4Bにそれぞれ示す。
図4Aに示すように、移植14日目のマウスの各臓器においてヒトALU配列が検出されたことから、これらの臓器にU937細胞が浸潤していることがわかった。これに対して、図4Bに示すように、移植7日目のマウスではヒトALU配列が骨髄のみに検出されたことから、U937細胞が骨髄のみに存在することが明らかになった。このことから、移植7日目のマウスは骨髄のMRDのモデルとして有用であることが明らかになった。
<MRDに対する抗白血病組成物とFNIII14との併用による効果>
上記移植7日目のマウス(MRDモデルマウス)に、FNIII14(1mg)を溶解したPBS200μLを静脈投与する他は、実施例3に記載の方法と同様に実験を行い、MRDに対する抗白血病組成物とFNIII14との併用による効果を調べた。なお、FNIII14を投与しない場合にはPBSのみを静脈投与した。その結果を図5に示す。
図5に示すように、PBS(静脈内投与)+AraC(腹腔内投与)投与群は、PBS(静脈内投与)+生理食塩水(腹腔内投与)投与群や、FNIII14(静脈内投与)+生理食塩水(腹腔内投与)投与群に比べて生存期間が有意に延長され、さらに、FNIII14(静脈内投与)+AraC(腹腔内投与)投与群は、PBS(静脈内投与)+AraC(腹腔内投与)投与群に比べてさらに生存期間が延長され、投与後62日目の時点でも全マウスが生存していた。そこで、投与後62日目に生存していたマウスの各臓器において、ヒトALU配列の有無を確認するため、上述の方法と同様にPCR法を実施した。その結果を図4Cに示す。
図4Cに示すように、静脈内にFNIII14を、腹腔内にAraCをそれぞれ投与することにより、骨髄を含めて調査した全ての臓器においてヒトALU配列のDNAが検出されなかった。以上のことから、FNIII14は静脈内投与により、併用投与したAraCの効果を増強し、AMLマウスの生存期間を有意に延長させるだけでなく、VLA4陽性の白血病細胞に起因する白血病やMRDに対する治療薬として有用であることが示唆された。
本発明の一実施例において、FNIII14が、ビンクリスチンのB16-BL6細胞又はK562細胞に対するアポトーシス誘導活性に与える影響を調べた結果を示す図である。 本発明の一実施例において、フィブロネクチンでコーティングした6ウェルプレート中で培養した白血病細胞に対するAraCのアポトーシス誘導活性にFNIII14が与える影響を調べた結果を示す図である。 本発明の一実施例において、AraC、FNIII14、VLA-4 Ab等が白血病モデルマウスの生存に与える効果を調べた結果を示す図である。 本発明の一実施例において、マウスにヒト白血病細胞を移植してから7日目(A)及び14日目(B)に、あるいは、MRDモデルマウスにAraCとFNIII14とを併用投与してから62日目(C)に、各臓器におけるヒトALU配列の存在をPCR法により調べた結果を示す図である。 本発明の一実施例において、AraC、FNIII14等がMRDモデルマウスの生存に与える効果を調べた結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドと、シタラビン(cytosine arabinoside:Ara−C)、又はエノシタビンとを組み合わせてなる抗MRD(微少残存白血病)薬。
  2. 前記ペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項1に記載の抗MRD(微少残存白血病)薬。
  3. 前記ペプチドが静脈による投与経路により投与されることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗MRD(微少残存白血病)薬。
  4. 前記抗MRD(微少残存白血病)薬が配合剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗MRD(微少残存白血病)薬。
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