図1は、本発明の実施例1に係るブレーキ油圧制御装置の概略図である。同図に示すブレーキ油圧制御装置1は、当該ブレーキ油圧制御装置1を備える車両(図示省略)の室内に、走行中の車両を制動させる操作、即ち制動操作に用いる操作部材であるブレーキペダル5が設けられている。このブレーキペダル5は、車両の運転者が足で制動操作力である踏力を入力する部分である踏面部6を有しており、踏面部6に踏力を入力した際に、回動軸7を中心として回動可能に設けられている。
また、ブレーキペダル5にはブレーキロッド10が接続されており、ブレーキロッド10におけるブレーキペダル5に接続されている側に端部の反対側の端部は、公知のバキュームブースタ30に接続されている。また、このバキュームブースタ30は、ブレーキペダル5に踏力を入力させた際に油圧を発生させることのできるマスタシリンダ35が接続されている。また、バキュームブースタ30には、車両が搭載するエンジン(図示省略)の運転時に発生する負圧が伝達可能な負圧経路31が接続されている。
このように設けられるバキュームブースタ30は、ブレーキペダル5に踏力が入力された際に踏力をマスタシリンダ35に伝達可能に設けられており、その際に、エンジンから伝達される負圧と大気圧との差により、踏力を増力してマスタシリンダ35に伝達可能に設けられている。つまり、バキュームブースタ30は、ブレーキペダル5を制動操作した際の踏力を負圧によって増力させることにより、マスタシリンダ35への入力を踏力に対して増力させることができる倍力手段として設けられている。
また、マスタシリンダ35には、当該マスタシリンダ35で発生した油圧を伝達可能な油路40が接続されている。これらのマスタシリンダ35及び油路40内には、作動油として用いられるブレーキフルード(図示省略)が満たされており、マスタシリンダ35は、このブレーキフルードの圧力である油圧の増減が可能に設けられている。また、マスタシリンダ35に接続される油路40は、2系統に分かれて構成されており、2系統の油路40である第1油路41と第2油路45とが、それぞれ独立してマスタシリンダ35に接続されている。
これらの第1油路41と第2油路45とは、共にそれぞれ分岐しており、第1油路41は、第1油路第1分岐経路42と第1油路第2分岐経路43とに分岐している。同様に、第2油路45は、第2油路第1分岐経路46と第2油路第2分岐経路47とに分岐している。第1油路41及び第2油路45には、このように分岐している部分の端部に、ブレーキ油圧制御装置1を備える車両が有する車輪(図示省略)の近傍に設けられるホイールシリンダ50が接続されている。
このホイールシリンダ50は、車輪の回転時に車輪と一体となって回転するブレーキディスク(図示省略)と組みになって設けられている。また、ホイールシリンダ50は、作動時にブレーキディスクの回転を減速可能に設けられており、このブレーキディスクの減速を介して、車輪の回転を減速可能に設けられている。
第1油路41と第2油路45との分岐している部分の端部には、このようにホイールシリンダ50が接続されている。構成を詳しく説明すると、まず、車両の進行方向に向かって左側に位置する前輪と後輪とを、それぞれ左前輪、左後輪とし、右側に位置する前輪と後輪とを、それぞれ右前輪、右後輪とする。この場合に、第1油路第1分岐経路42には、左前輪近傍に設けられるホイールシリンダ50である左前輪ホイールシリンダ51が接続されており、第1油路第2分岐経路43には、右後輪近傍に設けられるホイールシリンダ50である右後輪ホイールシリンダ54が接続されている。また、第2油路第1分岐経路46には、右前輪近傍に設けられるホイールシリンダ50である右前輪ホイールシリンダ52が接続されており、第2油路第2分岐経路47には、左後輪近傍に設けられるホイールシリンダ50である左後輪ホイールシリンダ53が接続されている。
また、この第1油路41及び第2油路45には、それぞれ複数の電磁弁装置60が設けられている。この電磁弁装置60は、常開の電磁開閉弁である増圧弁61と、常閉の電磁開閉弁である減圧弁62とを有しており、増圧弁61及び減圧弁62は、第1油路第1分岐経路42、第1油路第2分岐経路43、第2油路第1分岐経路46、第2油路第2分岐経路47のそれぞれに配設されている。実施例1に係るブレーキ油圧制御装置1は、これら増圧弁61及び減圧弁62の開閉の組み合わせにより、ホイールシリンダ50に作用させる油圧の増大、減少、保持を切り替え可能に設けられている。
また、第1油路41及び第2油路45には、共にリザーバ65が接続されており、第1油路41及び第2油路45に設けられる各減圧弁62は、リザーバ65に接続されている。さらに、第1油路41及び第2油路45には、それぞれに油路40内のブレーキフルードに対して所定方向の流れを与えることのできるポンプ70が設けられている。これらのポンプ70は、当該ポンプ70を作動可能なポンプモータ71に接続されている。
また、これらの油路40のうち、第2油路45には、マスタシリンダ35の油圧であるマスタシリンダ油圧を検出可能なマスタシリンダ油圧センサ75が接続されている。さらに、マスタシリンダ35には、実施例1に係るブレーキ油圧制御装置1において作動油として用いられるブレーキフルードを貯留可能なリザーバタンク38が接続されている。
また、ブレーキペダル5には、踏力センサ15が設けられている。この踏力センサ15は、ブレーキペダル5を制動操作した際の制動操作力である踏力に応じて作動する操作力センサとして設けられている。詳しくは、この踏力センサ15は、ケーシング17と、当該ケーシング17から突出すると共に外力を与えることによって突出量を変化させることのできる作動子16とを有しており、ケーシング17がブレーキペダル5に固定されることにより、踏力センサ15はブレーキペダル5に設けられている。その向きは、ブレーキペダル5を制動操作した際に、ブレーキペダル5が回動する方向に作動子16が突出する向きとなっている。
また、ブレーキペダル5には、ブレーキペダル5に対して回動可能な作動レバー20が接続されており、ブレーキロッド10は、接続部材11によって、この作動レバー20に接続されている。即ち、ブレーキロッド10は、作動レバー20を介してブレーキペダル5に接続されている。この作動レバー20は、当該作動レバー20の両端部のうち、一方の端部がブレーキペダル5に回動可能に接続されており、他方の端部付近が踏力センサ15の作動子に、ブレーキペダル5に踏力を入力した際にブレーキペダル5が回動する方向側から接触している。つまり、作動レバー20は、一方の端部が作動レバー回動軸21によってブレーキペダル5に対して回動可能に接続されている。
さらに、このようにブレーキペダル5に対して回動可能に接続される作動レバー20と、作動レバー20における踏力センサ15の作動子に接触している部分の近傍には、弾性部材であるスプリング(図示省略)が配設されている。このスプリングは、踏力センサ15のケーシング17と作動レバー20とが離れる方向に、双方に対して付勢力を与えて配設されている。
また、ブレーキロッド10は、作動レバー20における作動レバー回動軸21が位置している側の端部と、踏力センサ15の作動子16に接触している側の端部との間に接続されている。このように作動レバー20に接続されたブレーキロッド10は、ブレーキペダル5に踏力を入力した際にブレーキペダル5が回動する方向に向かって配設されている。これにより、ブレーキペダル5に踏力を入力した際には、ブレーキロッド10には圧縮方向の力が作用し、踏力はブレーキロッド10を介してバキュームブースタ30に入力される。
また、これらのように設けられる踏力センサ15やマスタシリンダ油圧センサ75、ポンプモータ71は、実施例1に係るブレーキ油圧制御装置1を備える車両が有し、車両の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)80に接続されており、ECU80によって制御可能に設けられている。
図2は、図1に示すブレーキ油圧制御装置の要部構成図である。ECU80には、処理部81、記憶部95及び入出力部96が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU80に接続されている踏力センサ15やマスタシリンダ油圧センサ75、ポンプモータ71は、入出力部96に接続されており、入出力部96は、これらの踏力センサ15等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部95には、本発明に係るブレーキ油圧制御装置1を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部95は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、処理部81は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、マスタシリンダ油圧を取得可能な油圧取得手段である油圧取得部82と、ブレーキペダル5への操作力の大きさである制動操作力として、ブレーキペダル5に入力する踏力を取得可能な制動操作力取得手段である踏力取得部83と、マスタシリンダ油圧の変化の度合いである油圧勾配を取得可能な油圧勾配取得手段である油圧勾配取得部84と、制動操作力の変化の度合いである制動操作力勾配、即ち、踏力の変化の度合いである踏力勾配を取得可能な制動操作力勾配取得手段である踏力勾配取得部85と、を有している。
また、処理部81は、バキュームブースタ30で踏力の増力に用いる負圧の推定が完了したかを示すフラグである負圧推定完了フラグの状態を変化させる負圧推定完了演算手段である負圧推定完了フラグ演算部86と、負圧推定完了フラグの状態を判定可能な負圧推定完了判定手段である負圧推定完了フラグ判定部87と、を有している。
また、処理部81は、踏力が所定の状態であるかを判定可能な踏力判定手段である踏力判定部88と、負圧を推定する際の演算を行なう負圧推定演算手段である負圧推定演算部89と、油圧取得部82で取得したマスタシリンダ油圧と踏力取得部83で取得した踏力とに基づいて、バキュームブースタ30で用いる負圧を推定可能な負圧推定手段である負圧推定部90と、を有している。
また、処理部81は、油路40に設けられているポンプ70を制御するポンプ制御手段であるポンプ制御部91と、油路40に設けられている電磁弁装置60を制御する電磁弁装置制御手段である電磁弁装置制御部92と、を有している。
ECU80によって制御されるブレーキ油圧制御装置1の制御は、例えば、踏力センサ15などよる検出結果に基づいて、処理部81が前記コンピュータプログラムを当該処理部81に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じてポンプモータ71などを作動させることにより制御する。その際に処理部81は、適宜記憶部95へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このようにブレーキ油圧制御装置1を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU80とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
この実施例1に係るブレーキ油圧制御装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両の走行中にブレーキをかける際には、ブレーキペダル5に踏力を入力する。ブレーキペダル5に踏力を入力する場合には、運転者は足でブレーキペダル5の踏面部6に対して入力する。これによりブレーキペダル5は、回動軸7を中心に、踏力の大きさに応じて回動する。
ブレーキペダル5に踏力が入力されてブレーキペダル5が回動した場合、作動レバー20を介してブレーキペダル5に接続されたブレーキロッド10は、バキュームブースタ30の方向に押され、バキュームブースタ30に対して入力される。
ここで、このバキュームブースタ30には負圧経路31が接続されており、バキュームブースタ30にはエンジンの運転時における吸気行程で発生する負圧が伝達可能に設けられている。このため、踏力がバキュームブースタ30に対して入力された場合、バキュームブースタ30はこの負圧と大気圧との差圧により、踏力を増力させてマスタシリンダ35に入力する。踏力に対して増力した力が入力されたマスタシリンダ35は、入力された力に応じてブレーキフルードに対して圧力を与え、マスタシリンダ油圧を上昇させる。
マスタシリンダ油圧が上昇した場合、第1油路41及び第2油路45内のブレーキフルードの圧力も上昇し、油路40内の油圧はマスタシリンダ油圧になる。さらに、このように油路40内の油圧が上昇した場合、この油圧はホイールシリンダ50にも伝達され、伝達された油圧により作動する。即ち、ホイールシリンダ50は、マスタシリンダ油圧で作動する。ホイールシリンダ50が作動した場合、ホイールシリンダ50は車輪と一体となって回転するブレーキディスクの回転を低下させる。これにより、車輪の回転も低下するため、車両は減速する。
また、このようにブレーキペダル5の踏面部6に踏力が入力されてブレーキペダル5が回動する場合、ブレーキロッド10は作動レバー20を介してブレーキペダル5に接続されているため、ブレーキロッド10に対しては、作動レバー20から踏力を伝達する。ここで、作動レバー20は、一端が作動レバー回動軸21によってブレーキペダル5に対して回動可能に接続されており、他端は踏力センサ15のケーシング17に対して、スプリングによって離れる方向の付勢力が与えられつつ、作動子16に接触している。
また、ブレーキロッド10は、作動レバー20の両端の間に接続され、ブレーキペダル5に踏力が入力された場合における回動方向に向かって形成されているため、ブレーキペダル5が踏力によって回動軸7を中心に回動する場合、作動レバー20は、ブレーキロッド10に伝達する力の反力の方向に回動する。このため、作動レバー20は、作動レバー回動軸21を中心としてブレーキロッド10に押される方向、つまり、踏力センサ15の作動子16に接触している側の端部が踏力センサ15のケーシング17に近付く方向に回動する。これにより、踏力センサ15の作動子16は、作動レバー20に押されてケーシング17からの突出量が小さくなる。
また、作動レバー20は、ブレーキペダル5に入力する踏力が大きくなるに従って、踏力センサ15のケーシング17に近付く方向に回動する。これにより、踏力センサ15の作動子16は、ブレーキペダル5に入力する踏力が大きくなるに従って大きな力で作動レバー20に押され、突出量が小さくなる。即ち、踏力センサ15の作動子16の突出量は、ブレーキペダル5に入力する踏力の大きさに応じて変化する。
踏力センサ15は、このようにブレーキペダル5に踏力が入力されることにより作動子16の突出量が変化するが、この踏力センサ15は、ECU80の処理部81が有する踏力取得部83に対して、作動子16の突出量の状態を、電気信号により伝達する。作動子16の突出量は、ブレーキペダル5に入力する踏力が大きくなるに従って変化するため、踏力取得部83は、作動子16の突出量の状態を取得することを介して、ブレーキペダル5に入力された踏力を取得する。
踏力取得部83は、このように踏力センサ15より取得した踏力を、ECU80の処理部81が有する踏力勾配取得部85に伝達する。制動操作を行なう際には、ブレーキペダル5に入力する踏力は時間によって変化する場合が多いが、踏力勾配取得部85は、このように踏力取得部83から踏力を経時的に受け取ることにより、踏力の変化の度合いを導出し、この踏力の変化の度合いである踏力勾配を取得する。
また、ブレーキペダル5に踏力を入力することによりマスタシリンダ油圧は上昇するが、このマスタシリンダ油圧は、第2油路45に接続されたマスタシリンダ油圧センサ75が検出する。マスタシリンダ油圧を検出したマスタシリンダ油圧センサ75は、ECU80の処理部81が有する油圧取得部82に検出結果を伝達する。マスタシリンダ油圧センサ75の検出結果が伝達された油圧取得部82は、伝達された検出結果より、マスタシリンダ油圧を取得する。
油圧取得部82は、このようにマスタシリンダ油圧センサ75の検出結果より取得したマスタシリンダ油圧を、ECU80の処理部81が有する油圧勾配取得部84に伝達する。制動操作を行なう際には、ブレーキペダル5に入力する踏力は時間によって変化する場合が多く、それに伴いマスタシリンダ油圧も時間によって変化する場合が多くなっている。このため、油圧取得部82は、油圧勾配取得部84に対してマスタシリンダ油圧を伝達し続ける。油圧勾配取得部84は、このように油圧取得部82からマスタシリンダ油圧を経時的に受け取ることにより、マスタシリンダ油圧の変化の度合いを導出し、このマスタシリンダ油圧の変化の度合いである油圧勾配を取得する。
図3は、踏力とマスタシリンダ油圧との関係を示す説明図である。ブレーキペダル5に踏力Fを入力した場合、踏力Fはバキュームブースタ30で負圧と大気圧との差圧を利用して増力してマスタシリンダ35に入力される。このため、マスタシリンダ35への入力は、負圧の大きさによって変化する。具体的には、負圧が大きい場合、つまり、エンジンからバキュームブースタ30に伝達される負圧と大気圧との差圧が大きい場合には、バキュームブースタ30はブレーキペダル5に入力された踏力Fを差圧によって確実に増力する。このため、この場合には、踏力Fに対するマスタシリンダ油圧Pmcは大きくなる。
一方、負圧が低下している場合、つまり、エンジンからバキュームブースタ30に伝達される負圧と大気圧との差圧が小さい場合には、バキュームブースタ30はブレーキペダル5に入力された踏力Fを差圧によって増力するのが困難になる。このため、この場合には、踏力Fに対するマスタシリンダ油圧Pmcは小さくなる。従って、バキュームブースタ30に伝達される負圧が低下している場合には、図3に示すように、通常負圧時101よりも、負圧低下時103の方が、踏力Fに対するマスタシリンダ油圧Pmcの大きさが小さくなる。
また、踏力Fとマスタシリンダ油圧Pmcとの関係は、ブレーキペダル5に踏力Fを入力する速度でも変化する。つまり、ブレーキペダル5を早踏みした場合には、踏力Fの増加に対してバキュームブースタ30による増力が追いつかず、マスタシリンダ35への入力の増加が、ブレーキペダル5をゆっくり踏み込んだ場合と比較して緩やかになる。このため、マスタシリンダ油圧Pmcの増加も緩やかになるため、踏力Fの増加の割合に対するマスタシリンダ油圧Pmcの増加は緩やかになる。従って、ブレーキペダル5を早踏みした場合には、図3に示すように、通常負圧時101よりも、通常負圧×早踏み時102の方が、踏力Fの増加の割合に対するマスタシリンダ油圧Pmcの増加の割合が小さくなる。
ECU80の処理部81が有する負圧推定部90は、マスタシリンダ油圧Pmcと踏力Fとに基づいて負圧を推定可能に設けられているが、踏力Fやマスタシリンダ油圧Pmcや負圧は、これらのようにそれぞれの兼ね合いで変化するため、負圧を推定する際には、基準を設けて推定する。具体的には、踏力Fが規定の踏力である規定踏力Fthの場合におけるマスタシリンダ油圧Pmcの変化の度合いである油圧勾配dPと、踏力Fが規定踏力Fthの場合における踏力Fの変化の度合いである踏力勾配dFとに基づいて、負圧を推定する。このうち、踏力が規定踏力Fthの場合における油圧勾配dPは、ECU80の処理部81が有する油圧勾配取得部84で取得し、踏力Fが規定踏力Fthの場合における踏力勾配dFは、ECU80の処理部81が有する踏力勾配取得部85で取得する。
負圧推定部90は、このように制動操作力が所定の操作力である規定操作力の場合、つまり、踏力Fが規定踏力Fthの場合における油圧勾配dPと制動操作力勾配である踏力勾配dFとに基づいて負圧を推定する。
図4は、踏力勾配と油圧勾配と負圧との関係を示す説明図である。このように、踏力Fが規定踏力Fthの場合における油圧勾配dPと踏力勾配dFとを取得したら、負圧推定部90は、踏力勾配dFと油圧勾配dPとを、予め記憶部95に記憶された踏力勾配dFと油圧勾配dPと負圧との関係を示すマップに当てはめ、このマップより負圧を推定する。つまり、油圧勾配dPと踏力勾配dFとの関係は、所定の範囲内では踏力勾配dFが大きくなるに従って油圧勾配dPも大きくなるが、その割合は、負圧が大きくなるに従って大きくなる。
具体的には、図4に示すように、負圧が10kPaの場合における油圧勾配dPと踏力勾配dFとの関係を示す10kPa負圧線111と、負圧が30kPaの場合における油圧勾配dPと踏力勾配dFとの関係を示す30kPa負圧線112と、負圧が60kPaの場合における油圧勾配dPと踏力勾配dFとの関係を示す60kPa負圧線113とを並べて比較すると、負圧が大きくなる程、踏力勾配dFが増加するに従って油圧勾配dPが増加する割合も大きくなる。踏力勾配dFと油圧勾配dPと負圧とは、このような関係になっているため、踏力勾配dFと油圧勾配dPとが分かれば、負圧を推定することができる。
このため、負圧推定部90は、油圧勾配取得部84で取得した油圧勾配dPと、踏力勾配取得部85で取得した踏力勾配dFとを、記憶部95に記憶されている踏力勾配dFと油圧勾配dPと負圧との関係を示すマップに当てはめ、その位置における負圧を読み取ることにより負圧を推定する。
このように負圧を推定することにより、現在の負圧の状態においてバキュームブースタ30で負圧によって踏力Fを増力する割合を推定することができる。ブレーキペダル5に踏力Fを入力した際に、この踏力Fを増力する負圧は、このように推定することができるが、負圧による踏力Fの増力は、限界点である助勢限界点を有している。このため、ブレーキペダル5に対して踏力Fを入力した場合において助勢限界点に達した場合には、ECU80の処理部81が有するポンプ制御部91は、ポンプモータ71を作動させる。
ポンプモータ71が作動した場合には、油路40に設けられるポンプ70も作動する。このポンプ70は、油路40内のブレーキフルードに対して所定の方向の流れを与える機能を有している。このため、ポンプ制御部91でポンプモータ71を作動させることにより、ポンプ70が作動した場合、油路40内のブレーキフルードには流れが発生し、この流れにより油路40内の圧力は高くなる。即ち、ポンプ70は、ポンプモータ71によって作動することにより油路40内のブレーキフルードに対して加圧し、マスタシリンダ油圧Pmcを高くする。
このため、ポンプ制御部91は、車両制動時においてバキュームブースタ30の助勢限界点に達した場合に、踏力取得部83で取得した踏力に応じてポンプモータ71を作動させることによりポンプ70を作動させ、マスタシリンダ油圧Pmcを高めてホイールシリンダ50を作動させる。これにより、ホイールシリンダ50はブレーキディスクの回転を低下させることを介して車輪の回転を低下させるため、車両は減速する。
また、車両の制動時には、マスタシリンダ油圧Pmcや、車輪と路面との摩擦力などの兼ね合いにより、車輪がロックする虞があるが、実施例1に係るブレーキ油圧制御装置1では、ABS(Antilock Brake System)が備えられており、ABSが作動することにより、車輪のロックが抑制される。このようにABSが作動する場合には、ECU80の処理部81が有する電磁弁装置制御部92が電磁弁装置60に対して制御信号を送信し、電磁弁装置60を作動させる。また、減圧弁62が開弁した場合には、減圧弁62の近傍で減圧弁62の上流側に位置するブレーキフルードは、リザーバ65に流れ、一時的に貯留される。リザーバ65に貯留されたブレーキフルードは、ポンプ70が作動することにより油路40内に流れ出る。
図5は、本発明の実施例1に係るブレーキ油圧制御装置の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例1に係るブレーキ油圧制御装置1の制御方法、つまり、ブレーキ油圧制御装置1の処理手順について説明する。また、以下の説明では、ブレーキ油圧制御装置1で負圧を推定する場合の処理手順について説明する。実施例1に係るブレーキ油圧制御装置1で負圧を推定する場合の処理手順では、まず、踏力F(n)及びマスタシリンダ油圧Pmc(n)を取得する(ステップST101)。このうち、今回の処理手順における踏力Fである踏力F(n)の取得は、ブレーキペダル5が踏まれた際における踏力F(n)を踏力センサ15で検知し、踏力センサ15で検知した踏力F(n)がECU80の処理部81が有する踏力取得部83に伝達され、踏力取得部83で取得する。
また、今回の処理手順におけるマスタシリンダ油圧Pmcであるマスタシリンダ油圧Pmc(n)の取得は、マスタシリンダ油圧Pmc(n)をマスタシリンダ油圧センサ75で検出し、マスタシリンダ油圧センサ75で検出したマスタシリンダ油圧Pmc(n)がECU80の処理部81が有する油圧取得部82に伝達され、油圧取得部82で取得する。
次に、踏力勾配dF(n)を取得する(ステップST102)。この取得は、まず、踏力取得部83で取得した踏力F(n)が、ECU80の処理部81が有する踏力勾配取得部85に伝達され、踏力勾配取得部85で、所定の時間における踏力F(n)の変化の度合いを踏力勾配dF(n)として導出する。即ち、踏力勾配dF(n)は、踏力F(n)の微分値になっている。踏力勾配取得部85は、このようにして導出した踏力勾配dF(n)を取得する。
次に、油圧勾配dPmc(n)を取得する(ステップST103)。この取得は、まず、油圧取得部82で取得したマスタシリンダ油圧Pmc(n)が、ECU80の処理部81が有する油圧勾配取得部84に伝達され、油圧勾配取得部84で、所定の時間におけるマスタシリンダ油圧Pmc(n)の変化の度合いを油圧勾配dPmc(n)として導出する。即ち、油圧勾配dPmc(n)は、マスタシリンダ油圧Pmc(n)の微分値になっている。油圧勾配取得部84は、このようにして導出した油圧勾配dPmc(n)を取得する。
次に、F(n)<F0であるかを判定する(ステップST104)。この判定は、踏力取得部83で取得したF(n)が、ECU80の処理部81が有する踏力判定部88に伝達され、踏力判定部88で判定する。踏力判定部88では、踏力取得部83から伝達された踏力F(n)と、制動操作を行なう前の踏力であるF0(図3参照)、即ち、制動操作を行なう前に踏力センサ15から踏力取得部83に伝達され、踏力取得部83で取得した踏力Fの初期状態である初期踏力F0とを比較する。踏力判定部88は、踏力取得部83から伝達されたF(n)とF0との関係が、F(n)<F0であるか、つまり、踏力F(n)が初期踏力F0未満であるかを判定する。
踏力判定部88での判定により、踏力F(n)は初期踏力F0未満ではないと判定された場合には、次に、負圧推定完了フラグはOFFであるかを判定する(ステップST105)。この判定は、ECU80の処理部81が有する負圧推定完了フラグ判定部87で行なう。この判定に用いる負圧推定完了フラグとは、バキュームブースタ30で踏力Fの増力に用いる負圧の推定が完了しているかを示すフラグであり、ECU80の記憶部95に記憶されている。また、この負圧推定完了フラグは、負圧の推定が完了している場合はONになり、負圧の推定が完了していない場合はOFFになる。負圧推定完了フラグ判定部87は、記憶部95に記憶されている負圧推定完了フラグがOFFであるかを判定する。
負圧推定完了フラグ判定部87での判定により、負圧推定完了フラグがOFFであると判定された場合には、次に、F(n−1)<Fthになっているかを判定する(ステップST106)。この判定は踏力判定部88で行ない、1つ前の処理手順における踏力Fである踏力F(n−1)が、予め記憶部95に記憶された規定の踏力Fである規定踏力Fth未満であるかを、踏力判定部88で判定する。
踏力判定部88での判定により、踏力F(n−1)は踏力Fth未満であると判定された場合には、次に、F(n)≧Fthになっているかを判定する(ステップST107)。この判定は踏力判定部88で行ない、踏力F(n)が、記憶部95に記憶された規定踏力Fth以上であるかを、踏力判定部88で判定する。
踏力判定部88での判定により、踏力F(n)は踏力Fth以上であると判定された場合には、次に、dP1にdPmc(n)を代入し、dF1にdF(n)を代入する(ステップST108)。この演算は、油圧勾配取得部84で取得したdPmc(n)、及び踏力勾配取得部85で取得したdF(n)が、ECU80の処理部81が有する負圧推定演算部89に伝達され、負圧推定演算部89で行なう。なお、この演算で用いるdP1、dF1は、負圧の推定に用いる変数となっている。負圧推定演算部89は、dP1=dPmc(n)、dF1=dF(n)の演算を行ない、dP1にdPmc(n)を代入し、dF1にdF(n)を代入する。
次に、dP1及びdF1より、負圧Vbを推定する(ステップST109)。この推定は、まず、負圧推定演算部89で算出したdP1及びdF1が、ECU80の処理部81が有する負圧推定部90に伝達される。dP1及びdF1が伝達された負圧推定部90は、このdP1とdF1とを、予め記憶部95に記憶されている踏力勾配dFと油圧勾配dPと負圧との関係を示すマップ(図4参照)に照らし合わせ、このマップより負圧Vbを読み取ることにより、負圧を推定する。詳しくは、記憶部95に記憶されたマップは、負圧の大きさごとに踏力勾配dFと油圧勾配dPとの関係が示されているため、このマップに、負圧推定演算部89で算出した油圧勾配dP1と踏力勾配dF1とを照らし合わせて双方の関係を満たす負圧を導出することにより、負圧を推定する。即ち、負圧推定部90は、Vb=MAP(dP1、dF1)を演算することによって、負圧Vbを推定する。
この負圧Vbの推定方法としては、例えば、図4の場合では、dF1とdP1との交点は、30kPa負圧線112と60kPa負圧線113との間に位置しているため、30kPaと60kPaとの間で線形補完をして負圧Vbを求めて推定する。
負圧推定部90で負圧を推定した後は、次に、負圧推定完了フラグをONにする(ステップST110)。このように負圧推定完了フラグの状態を変化させる場合には、ECU80の処理部81が有する負圧推定完了フラグ演算部86で、記憶部95に記憶されている負圧推定完了フラグを変化させ、負圧推定部90で負圧を推定した後は、負圧推定完了フラグをONにする。負圧推定完了フラグ演算部86で負圧推定完了フラグをONにした後は、この処理手順から抜け出る。
また、踏力判定部88による判定でF(n)<F0であると判定された場合(ステップST104)、または、負圧推定完了フラグ判定部87による判定で負圧推定完了フラグはOFFではないと判定された場合(ステップST105)、または、踏力判定部88による判定でF(n−1)<Fthではないと判定された場合(ステップST106)、または、踏力判定部88による判定でF(n)≧Fthではないと判定された場合(ステップST107)は、負圧推定完了フラグ演算部86で、負圧推定完了フラグをOFFにする(ステップST111)。負圧推定完了フラグをOFFにした後は、この処理手順から抜け出る。
以上のブレーキ油圧制御装置1は、油圧取得部82で取得したマスタシリンダ油圧Pmcと、踏力取得部83で取得した踏力Fとに基づいて、負圧推定部90によって負圧を推定している。つまり、マスタシリンダ油圧Pmcは、ブレーキペダル5へ踏力Fを入力することにより、踏力Fがバキュームブースタ30で増力され、さらにこの力がマスタシリンダ35に入力されることにより変化する。また、バキュームブースタ30で踏力Fを増力させる際に用いる負圧は、当該ブレーキ油圧制御装置1を搭載する車両の運転状態により変化するが、負圧は実質的な大きさのみでなく、ブレーキペダル5への踏力Fの入力状態によっても変化する。また、このように負圧が変化した場合には、踏力Fに対するマスタシリンダ油圧Pmcも変化する。このように、負圧は踏力Fの入力状態によって変化し、また、マスタシリンダ油圧Pmcは負圧が変化することにより変化するため、これらの踏力Fとマスタシリンダ油圧Pmcとに基づいて負圧を推定することにより、より正確に推定することができる。この結果、精度よく負圧を取得することができる。
また、負圧を推定する際に、油圧勾配dPと踏力勾配dFとを取得し、この油圧勾配dPと踏力勾配dFとに基づいて負圧を推定しているので、より正確に負圧を推定することができる。つまり、負圧は踏力Fの入力状態によって変化するが、油圧勾配dPと踏力勾配dFと取得することにより、より確実に踏力Fの入力状態を認識することができる。これにより、この入力状態を含めて負圧を推定することができるので、より正確に負圧を推定することができる。この結果、より確実に精度よく負圧を取得することができる。
また、負圧を推定する際に、油圧勾配dPと踏力勾配dFと負圧との関係を示すマップより負圧を推定しているため、容易に負圧を推定することができる。この結果、より確実に、且つ、容易に精度よく負圧を取得することができる。
また、このように精度よく負圧を推定することにより、バキュームブースタ30での踏力Fの増力が助勢限界点に達してポンプ70による増力に切り替える際に、的確なタイミングで切り替えることができる。従って、制動時にバキュームブースタ30による踏力の増力からポンプ70による増力に切り替える際に、踏力F、マスタシリンダ油圧Pmc及び制動力の段付きを除去し、連続的に切り替えることができる。特に、エンジンの冷間時には、負圧は大きくなり難いが、このような状況でも負圧を精度よく取得することにより、より効果的にバキュームブースタ30とポンプ70とを併用することができる。この結果、ブレーキフィーリングの向上を図ることができる。
また、バキュームブースタ30で用いる負圧を取得する際に、マスタシリンダ油圧Pmcと踏力Fとに基づいて推定しているため、負圧センサを設けることなく、負圧を取得することができる。この結果、構造の簡略化を図ることができ、製造コストの低減を図ることができる。
実施例2に係るブレーキ油圧制御装置は、実施例1に係るブレーキ油圧制御装置と略同様の構成であるが、マスタシリンダ油圧が規定油圧の場合における踏力に基づいて負圧を推定している点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図6は、本発明の実施例2に係るブレーキ油圧制御装置の要部構成図である。同図に示すブレーキ油圧制御装置120は、実施例1に係るブレーキ油圧制御装置1と同様にECU130に踏力センサ15、マスタシリンダ油圧センサ75、ポンプモータ71、電磁弁装置60が接続されている。さらに、このECU130には、ブレーキペダル5(図1参照)の近傍に設けられ、ブレーキ油圧制御装置120を搭載する車両に備えられるブレーキランプ(図示省略)のスイッチであるストップスイッチ125が接続されている。
また、この実施例2に係るブレーキ油圧制御装置120が有するECU130は、実施例1に係るブレーキ油圧制御装置1と同様に処理部81と記憶部95と入出力部96とを有している。このうち、処理部81は、少なくとも油圧取得部82と、踏力取得部83と、負圧推定完了フラグ演算部86と、負圧推定完了フラグ判定部87と、負圧推定演算部89と、負圧推定部90と、ポンプ制御部91と、電磁弁装置制御部92とを有している。
さらに、この処理部81は、ストップスイッチ125の状態を取得可能なストップスイッチ状態取得手段であるストップスイッチ状態取得部131と、ストップスイッチ125の状態を判定可能なストップスイッチ状態判定手段であるストップスイッチ状態判定部132と、マスタシリンダ油圧が所定の大きさであるかを判定可能な油圧判定手段である油圧判定部133とを有している。
この実施例2に係るブレーキ油圧制御装置120は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。ブレーキペダル5に踏力を入力する場合、バキュームブースタ30(図1参照)で用いる負圧により、踏力の初期荷重は変動する。詳しくは、バキュームブースタ30で用いる負圧が大きい場合には、踏力の初期荷重は軽くなり、負圧が低い場合には初期荷重が重くなる。このため、この実施例2に係るブレーキ油圧制御装置120では、ブレーキペダル5の踏み始めの段階でマスタシリンダ油圧が所定の油圧に到達した場合における踏力より、負圧を推定する。
図7は、踏力とマスタシリンダ油圧との関係を示す説明図である。ブレーキペダル5に踏力を入力する初期段階では、初期荷重、即ち踏力Fは負圧に応じて変動する。つまり、図7に示すように、踏力Fとマスタシリンダ油圧Pmcとの関係を示す線である踏力−油圧線141は、負圧の大きさに応じて踏力Fが変動する。このため、この踏力Fに基づいて負圧を算出するために、ブレーキペダル5に踏力Fを入力する初期段階において、マスタシリンダ油圧Pmcが所定の油圧である規定油圧Pthに達した場合における踏力Fを取得し、この踏力Fより負圧を推定する。このため、ECU120の踏力取得部83は、ブレーキペダル5に踏力Fを入力する初期段階において、マスタシリンダ油圧Pmcが規定油圧Pthに達した場合における踏力Fを取得する。
図8は、踏力と負圧との関係を示す説明図である。このように、マスタシリンダ油圧Pmcが規定油圧Pthに達した場合の踏力Fを取得したら、負圧推定部90は、取得した踏力Fを、予め記憶部95に記憶された、マスタシリンダ油圧Pmcが規定油圧Pthの場合における踏力FであるFpthと負圧との関係を示すマップに当てはめ、このマップより負圧を推定する。
具体的には、図8の踏力−負圧線145に示すように、踏力Fpthと負圧との関係は、負圧が大きくなるに従って、入力初期の踏力Fpthは小さくなり、負圧が小さくなるに従って、入力初期の踏力Fpthは大きくなる。換言すると、マスタシリンダ油圧Pmcが規定油圧Pthに達した場合の踏力Fである踏力Fpthが小さい場合には、負圧は大きくなっており、この踏力Fpthが大きい場合には、負圧は小さくなっている。
このため、負圧推定部90は、マスタシリンダ油圧Pmcが規定油圧Pthに達した場合の踏力Fである踏力Fpthを、記憶部95に記憶されている踏力Fpthと負圧との関係を示すマップに当てはめ、その位置における負圧を読み取ることにより負圧を推定する。つまり、負圧推定部90は、マスタシリンダ油圧Pmcが規定油圧Pthの場合における踏力Fに基づいて負圧を推定する。
図9は、本発明の実施例2に係るブレーキ油圧制御装置の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例2に係るブレーキ油圧制御装置120の制御方法、つまり、ブレーキ油圧制御装置120の処理手順について説明する。また、以下の説明では、ブレーキ油圧制御装置120で負圧を推定する場合の処理手順について説明する。実施例2に係るブレーキ油圧制御装置120で負圧を推定する場合の処理手順では、まず、ECU130の処理部81が有する踏力取得部83で、踏力F(n)を取得する(ステップST201)。次に、ECU130の処理部81が有する油圧取得部82で、マスタシリンダ油圧Pmc(n)を取得する(ステップST202)。
次に、ストップスイッチ状態を取得する(ステップST203)。この取得は、ストップスイッチ125の状態がECU130の処理部81が有するストップスイッチ状態取得部131に伝達され、このストップスイッチ状態取得部131で取得する。
ここで、このストップスイッチ125は、ブレーキランプを点灯させるか消灯させるかを切り替えるスイッチであるため、ONとOFFとに切り替え可能になっている。また、このストップスイッチ125は、ブレーキペダル5の近傍に設けられており、ブレーキペダル5が踏み込まれておらず、ブレーキペダル5への踏力Fの入力が0の場合には、ストップスイッチ125はOFFになる。これに対し、ブレーキペダル5が少しでも踏み込まれ、ブレーキペダル5に対して少しでも踏力Fが入力された場合には、ストップスイッチ125はONになる。ストップスイッチ状態取得部131には、このように切り替えられるストップスイッチ125の状態が伝達され、ストップスイッチ125の状態は、このストップスイッチ状態取得部131で取得する。
次に、ストップスイッチ125の状態はOFFであるかを判定する(ステップST204)。この判定は、ECU130の処理部81が有するストップスイッチ状態判定部132で行なう。ストップスイッチ状態判定部132には、ストップスイッチ状態取得部131で取得したストップスイッチ125の状態が伝達され、ストップスイッチ125がOFFであるかを判定する。
ストップスイッチ状態判定部132での判定により、ストップスイッチ125はOFFではないと判定された場合には、次に、ECU130の処理部81が有する負圧推定完了フラグ判定部87で、負圧推定完了フラグはOFFであるかを判定する(ステップST205)。
負圧推定完了フラグ判定部87での判定により、負圧推定完了フラグがOFFであると判定された場合には、次に、Pmc(n−1)<Pthであるかを判定する(ステップST206)。この判定は、油圧取得部82で取得したマスタシリンダ油圧Pmcが、ECU130の処理部81が有する油圧判定部133に伝達され、油圧判定部133で判定する。油圧判定部133では、1つ前の処理手順におけるマスタシリンダ油圧Pmcであるマスタシリンダ油圧Pmc(n−1)が、予め記憶部95に記憶された規定のマスタシリンダ油圧Pmcである規定油圧Pth未満であるかを判定する。
油圧判定部133での判定により、マスタシリンダ油圧Pmc(n−1)は、規定油圧Pth未満であると判定された場合には、次に、Pmc(n)≧Pthであるかを判定する(ステップST207)。この判定は油圧判定部133で行ない、Pmc(n)が、記憶部95に記憶された規定油圧Pthであるかを、油圧判定部133で判定する。
油圧判定部133での判定により、マスタシリンダ油圧Pmc(n)は規定油圧Pth以上であると判定された場合には、次に、FpthにF(n)を代入する(ステップST208)。この演算は、踏力取得部83で取得した踏力F(n)が、ECU130の処理部81が有する負圧推定演算部89に伝達され、負圧推定演算部89で行なう。なお、この演算で用いる踏力Fpthは、負圧の推定に用いる変数となっており、ブレーキペダル5に踏力Fを入力し、マスタシリンダ油圧Pmcが規定油圧Pth以上になった場合における踏力Fを示している。負圧推定演算部89は、Fpth=F(n)の演算を行ない、踏力Fpthに踏力F(n)を代入する。
次に、踏力Fpthより、負圧Vbを推定する(ステップST209)。この推定は、まず、負圧推定演算部89で算出した踏力Fpthが、ECU130の処理部81が有する負圧推定部90に伝達される。踏力Fpthが伝達された負圧推定部90は、この踏力Fpthを、予め記憶部95に記憶されている踏力Fpthと負圧Vbとの関係を示すマップ(図8参照)に照らし合わせ、このマップから負圧Vbを読み取ることにより、負圧を推定する。
詳しくは、記憶部95に記憶されたマップは、踏力Fの入力開始時における踏力Fと負圧との関係を示す関数f(F0)により作成されている。このため、このマップに、負圧推定演算部89で算出した踏力Fpthを照らし合わせることにより、負圧を推定することができる。即ち、負圧推定部90は、Vb=f(F0)に踏力Fpthを代入して演算することにより、負圧Vbを推定する。
負圧推定部90で負圧を推定した後は、次に、ECU130の処理部81が有する負圧推定完了フラグ演算部86で、記憶部95に記憶されている負圧推定完了フラグをONにする(ステップST210)。負圧推定完了フラグ演算部86で負圧推定完了フラグをONにした後は、この処理手順から抜け出る。
また、ストップスイッチ状態判定部132による判定でストップスイッチ125はOFFであると判定された場合(ステップST204)、または、負圧推定完了フラグ判定部87による判定で負圧推定完了フラグはOFFではないと判定された場合(ステップST205)、または、油圧判定部133による判定でPmc(n−1)<Pthではないと判定された場合(ステップST206)、または、油圧判定部133による判定でPmc(n)≧Pthではないと判定された場合(ステップST207)は、負圧推定完了フラグ演算部86で、負圧推定完了フラグをOFFにする(ステップST211)。負圧推定完了フラグをOFFにした後は、この処理手順から抜け出る。
以上のブレーキ油圧制御装置120は、マスタシリンダ油圧Pmcが規定油圧Pthの場合における踏力Fに基づいて負圧を推定しているので、より正確に負圧を推定することができる。つまり、踏力Fはバキュームブースタ30で負圧によって増力するため、負圧が大きい場合にはブレーキペダル5を操作する際の踏力Fは小さくなり、負圧が低い場合には踏力Fは大きくなる。このため、マスタシリンダ油圧Pmcが規定油圧Pthの場合における踏力Fは、負圧の大きさによって変化するため、この踏力Fに基づいて負圧を推定することにより、より正確に負圧を推定することができる。この結果、より確実に精度よく負圧を取得することができる。
また、負圧を推定する際に、踏力Fpthと負圧Vbとの関係を示すマップより負圧を推定しているため、容易に負圧を推定することができる。この結果、より確実に、且つ、容易に精度よく負圧を取得することができる。
なお、上述した実施例1、2に係るブレーキ油圧制御装置1、130では、負圧を推定する際に記憶部95に記憶されたマップにより負圧を推定しているが、負圧はマップ以外の手段で推定してもよい、例えば、予め定められた所定の関数により負圧を推定してもよい。
また、ブレーキペダル5に入力された踏力Fの検出は、上述した踏力センサ15以外の形態でもよい。また、マスタシリンダ油圧センサ75は第2油路45にのみ設けられているが、マスタシリンダ油圧センサ75は第1油路41に設けてもよく、またはマスタシリンダ35に接続して設けてもよい。