近年、情報機器または映像音響機器等で処理される情報量の増大に伴い、データアクセスが容易で、大容量データを蓄積可能で、かつ機器の小型化に対応可能な光ディスクなどの、光情報媒体が注目されている。また、このような光情報媒体について情報の高密度記録化が検討されており、高密度記録可能な光情報媒体として、例えば、波長が約405nmのレーザ光源と開口数(NA:Numerical Aperture)が0.85の集光レンズとを含む光学ピックアップを備えた記録再生装置を用いて、情報が記録再生される光情報媒体が提案されている(Blu-ray Disc規格)。
Blu-ray Disc規格等の、高NAの光学系においては、記録再生光を従来の基板側からではなく、0.1mm程度の厚さに設定された光透過層(記録再生光から見て、最手前の情報層に設けられた光透過層は、一般的にカバー層と呼ばれる)を通して照射するように設計されている。これは、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差が、NAが大きいほど、また、光透過層(カバー層)が厚いほど大きくなるためである。すなわち、高NA化に伴い、チルト角により発生する収差が大きくなったので、光透過層(カバー層)で発生する収差を極力低減するために、光透過層(カバー層)の厚さを薄くしている。
Blu-ray Discに代表される高NAの光学系を用いた記録再生可能な光情報媒体においては、信号面を複数設け、これを積層化することで容量を増やした多層型の光情報媒体が実現できる。例えば、Blu-ray Disc規格では、単一の記録層について25GB程度、二層の記録層について50GB程度の容量のデータを蓄積可能である。
このように、Blu-ray Discに代表される高NAの光学系を用いた記録再生可能な光情報媒体においては、大容量データを蓄積可能であるという特徴があるが、光透過層(カバー層)の形成方法の問題点や、多層化の問題点などもあり、これらについて順番に詳説する。
最初に、光透過層(カバー層)の形成方法の問題点について説明する。
上述したBlu-ray Disc規格等の、0.1mm程度の厚さに設定された光透過層(カバー層)を通して記録再生が行われる光情報媒体や、記録再生は従来通り0.6mm程度の厚さの基板を通して行われるが、記録層が光透過層を介して複数積層された多層型の光情報媒体では、光透過層の形成方法が非常に重要である。
光透過層は、記録層上、或いは記録層上に設けたれた複数層から構成されても構わない保護層上等に、光透過性シートの接着、或いはスピンコート法による樹脂コーティング等の手段により極めて薄い層(最大でも300μm程度)として形成される。しかし、透明シートを接着する方法は、シート自体の光学特性や厚み精度に厳しいものが要求されるために製造コストが高くなり易い。又、透明シートの厚み精度が良好であっても、接着剤の厚みむら、塗りむらによって光学特性が変化しディスク特性が悪化してしまうこともある。従って接着剤の塗布に関しても高い精度が要求され、現状では、課題が多い方法である。 一方、スピンコート法を用いて樹脂を塗布することによって薄い光透過層を形成する方法は、コーティング膜表面の平坦性の維持が難しく、特に外周部付近において塗布液の偏り(盛り上がり)が発生しやすいという問題がある。この盛り上がりは、従来のCDやDVDのように、レーザ光学系とディスクとの間に比較的大きな間隔があったときにはそれ程大きな問題とはならなかったが、高NA化によりレーザ光学系とディスクとの間の隙間が小さい状況においては、無視できない問題となっている。とりわけ比較的厚めにコーティング層を形成した場合には(例えば100μm)、当該盛り上り部の厚み、或いは半径方向の幅が非常に大きくなって情報記録領域にまで入り込んでくることがあるため、情報信号の記録・再生にも支障を来す恐れがある。又、場合によっては、レーザ光学系がディスクと衝突してしまう原因ともなる。このような盛り上がり部の処理やコーティング表面の平坦性の維持については、種々の技術が提案されているが、これらの技術では、製造工程の煩雑化とコストの増大化を招くという問題がある(例えば、特許文献1、2、3参照)。 現在までカバー層の形成方法については、多くの検討がなされてきたが、記録再生特性、保存信頼性、生産コストの点から、スピンコート法で行われることが好ましいとの判断に至っている。しかし、上述したように、スピンコート法では、光情報媒体の全面にわたって、その膜厚を均一に形成することが困難である上に、製造ラインで連続してカバー層を形成する場合、製造装置の環境(特に周囲温度)によって、カバー層を形成する樹脂の粘度が変化し、カバー層の膜厚やその均一性が大きく変化するという問題がある。そのため、製造装置の周囲温度が均一になるまで、生産したメディアを破棄しなければならず、また製造装置にトラブルが発生した場合も、製造を再開する際には、周囲温度が規定の温度に安定するまで、生産したメディアを破棄しなければならないため、生産性が非常に悪いという問題がある。
また、均一なカバー層を形成できたとしても、スピンコート法によるカバー層の形成方法では、その性質上、塗布欠陥が発生しやすい。また、カバー層の場合は、記録層を水分、酸素、或いは他のガスから記録層等を保護する役割を担わなければいけないが、スピンコート法によるカバー層の形成方法では、膜質の均一性や低欠陥と、保存信頼性とを両立させることが困難な場合が多い。更に、スピンコート法によるカバー層の形成方法では、上述したように、膜厚均一性が十分でない場合が多く、このカバー層膜厚の不均一性は、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号の残留エラーを著しく増大させ、ドライブやレーコーダーにおいて、記録や再生不良を起こすという重大な問題になる恐れがある。 また、カバー層は比較的硬度が弱いため、カバー層上に更にスピンコート法によりハードコート層が形成される場合がある。この場合、材料の異なる樹脂を2度スピンコート法により形成しなければいけないので、膜質の均一性が更に悪化したり、欠陥が増大するなどして、生産性が非常に悪くなることが容易に推測される。
次に、多層化(2P法による中間層の形成)の問題点について説明する。
図6は二層型光情報媒体(Blu-ray Disc規格)の例を示す断面模式図である。図6の光情報媒体は、中心部に、図示しないセンタホールを有した略円盤形状をしており、プラスチック基板1上に、第一情報層2、中間層(第一中間層)3、第二情報層4およびカバー層(第二透過層)30を形成した断面構造を有する。情報の記録再生は、光情報媒体をセンタホール部で、図示していないドライブ駆動装置にクランプし、一定線速または一定回転速度で回転駆動させながら、光情報媒体中の各情報層に対して、例えば波長405nmのレーザ光を、例えば開口数0.85の対物レンズを通して、カバー層(第二透過層)30側から照射することで行われる。40は、第一情報層2、第二情報層4に記録再生光であるレーザ光が照射される様子を模式的に示している。もちろん、第一情報層2と第二情報層4に同時にレーザ光が照射されるわけではない。
図6に例示した光情報媒体の構造は以下の通りである。まず、支持基板となるプラスチック基板1は厚さが約1.1mmで、ポリカーボネートなどを射出成形することにより作製され、一方の面に公知のピット及び/又は案内溝が設けられた構造を有している。このピット及び/又は案内溝は、光情報媒体で一般的な射出成形法(またはインジェクションモールディング)やプレスモールディング、紫外線硬化樹脂を使うフォトポリマー法(以下、適宜2P法と略す)、半硬化型の紫外線硬化型アシスト粘着フィルムを用いたエンボス転写法等を用いて形成することができる。プラスチック基板1の溝表面には、第一情報層2が形成されている。ピット及び/又は案内溝形状は、レーザ光の案内溝であるとともに、第一情報層2への記録再生を行うためのトラックサーボ信号を発生させるためや、第一情報層2のアドレス等の情報を記憶させるために用いられる。
第一情報層2が相変化記録層を有する書換型光情報媒体の場合は、レーザ光40の入射側から、下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層などがこの順番で積層されている。一般に、これらの層は公知のスパッタリング法によって形成される。なお、上述のように、下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層という層構成によって、相変化記録層に情報を記録できるようになるため、本明細書、特許請求の範囲、図面等(以下、本明細書等という)では、下部保護層と、相変化記録層と、上部保護層と、反射層とをまとめて情報層と呼ぶ。すなわち、ある記録層に記録を行うために必要な層をまとめて情報層と呼ぶ。
第一情報層2が無機材料からなる記録層を有する追記型光情報媒体の場合は、レーザ光40の入射側から、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層などがこの順番で積層されている。一般に、これらの層は公知のスパッタリング法によって形成される。第一情報層2が、有機材料からなる記録層を有する追記型光情報媒体の場合は、レーザ光の入射側から、保護層、記録層、反射層などがこの順番で積層されている。この場合、記録層は公知のスピンコーティング法で形成され、保護層や反射層は、公知のスパッタリング法によって形成される。その他、記録層としては、光磁気膜、ホログラム膜なども使用可能であり、その形成方法も一般的手法である真空蒸着法、スパッタリング法、スピンコーティング、ダイコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティングなど、所望の形状と光学的に十分な表面の平滑性を付与しうる方法であれば、いずれも使用することができる。上述の層構成や層数は、記録材料の種類や設計によって異なる。なお、第一情報層2は、図6の場合、レーザ光40から見て最奥の層となるため、記録再生品質を向上させるため、反射率が高くなるように設計されている(第一情報層2は、反射率が高くなる材料や膜厚に設定されている)。
第一情報層2の上(図6では下側、すなわちレーザ光40の入射側)には、中間層(第1中間層)3が形成されている。中間層(第1中間層)3は、第一情報層2と第二情報層4とをフォーカスサーボ信号によって分離可能とするために設けられ、二層型Blu-ray Discの場合は、25μm程度の厚さである。中間層(第1中間層)3の表面には、紫外線硬化樹脂を用いた2P転写法、半硬化型の紫外線硬化型アシスト粘着フィルムを用いたエンボス転写法、マスク露光およびエッチングによるフォトリソグラフィー法等により、基板と同様にピット及び/又は案内溝が形成される。
そして、その上(図6では下側、すなわちレーザ光40の入射側)に第二情報層4が設けられている。中間層(第1中間層)3の表面に設けられたピット及び/又は案内溝は、第二情報層4への記録再生を行うためのトラックサーボ信号を発生させるためや、第二情報層4のアドレス等の情報を記憶させるために用いられる。第二情報層4が、相変化記録層を有する書換型光情報媒体の場合は、レーザ光40の入射側から、下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層などがこの順番で積層されている。一般に、これらの層は公知のスパッタリング法によって形成される。
第二情報層4が、無機材料からなる記録層を有する追記型光情報媒体の場合は、レーザ光40の入射側から、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層などがこの順番で積層されている。一般に、これらの層は公知のスパッタリング法によって形成される。第二情報層4が、有機材料からなる記録層を有する追記型光情報媒体の場合は、レーザ光40の入射側から、保護層、記録層、反射層などがこの順番で積層されている。この場合、記録層は公知のスピンコーティング法で形成され、保護層や反射層は、公知のスパッタリング法によって形成される。その他、記録層としては、光磁気膜、ホログラム膜なども使用可能であり、その形成方法も一般的手法である真空蒸着法、スパッタリング法、スピンコーティング、ダイコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティングなど、所望の形状と光学的に十分な表面の平滑性を付与しうる方法であれば、いずれも使用することができる。
上述の層構成や層数は、記録材料の種類や設計によって異なる。なお、第二情報層4は、レーザ光40から見て奥側の第一情報層2への記録再生を可能とするために、光を半透過するような層構成となっており、通常、反射層は、その膜厚を非常に薄くし、半透過層として使用される。あるいは、奥側の情報層への透過率を向上させるため、反射層を除くことも可能である。
第二情報層4の上には、保護層として紫外線硬化樹脂等からなるカバー層(第二透過層)30が形成される。カバー層(第二透過層)30は、その最表面にハードコート層等を備えた多層構造でもよく、二層型Blu-ray Discの場合、合計の厚さが75μm程度となるように形成される。
なお、本明細書等において、数十μm〜0.1mm程度の薄い膜として、光透過層、カバー層、中間層、接着層という表現を使用するが、それぞれの定義は下記の通りである。光透過層とは、光を透過させる、数十μm〜0.1mm程度の薄い層を全般的に指す。カバー層とは、光透過層の一種であって、記録再生光から見て、最手前の情報層に設けられた光透過層を指し、情報層をピックアップヘッドとの衝突や、ゴミ、埃、指紋等の付着による記録再生機能の不良発生から保護する役目を担う層である。中間層とは、光透過層の一種であって、光を透過させる、数十μm〜0.1mm程度の薄い層であって、その表面に直接スタンパの押し当て等により、ピットや溝が転写された層を指す。接着層とは、単に異なる情報層や基板等を貼りあわせるために設けられた層を指す。接着層中に記録再生光の光路が存在すれば(接着層を介して情報の記録再生が行われていることを指す)、接着層も光透過層の一種である。一方、DVD系光情報媒体のように、単に強度確保のために2枚の基板同士を貼り合わせた場合は、接着層中には記録再生光の光路が存在しないため、光透過層とは呼ばれない。尚、接着層の中で、紫外線硬化樹脂等の樹脂からなる層を特に樹脂層とも呼ぶ。また、カバー層、中間層、(光が透過する)接着層などの光透過層と、(光が透過しない)接着層とを含めて、分離層と呼ぶ。すなわち、分離層は、カバー層、中間層、接着層の何れか一つ又はそれらの組み合わせからなる。分離層は、例えば、紫外線硬化型などの樹脂やプラスチック製基板など、又はこれらの組み合わせにより形成される。
また、本明細書等では、カバー層表面から第一情報層までのトータルの層を第一光透過層、カバー層表面から第二情報層までのトータルの層を第二光透過層と定義する。すなわち、図6の場合、第一光透過層は、カバー層30と第二情報層4、および中間層(第1中間層)3とを合わせた層であり、第二光透過層はカバー層30と同一となる。カバー層30や中間層3の膜厚分布がばらつくと、第一光透過層50および第二光透過層30の膜厚が変化し、光学収差の差となって記録再生特性に悪影響を及ぼすので、これらの膜厚分布は非常に均一であることが要求される。すなわち、カバー層30や中間層3に許容される膜厚分布は、これらの層に対しては直接規定されず、第一光透過層50および第二光透過層30の膜厚分布に対して規定される。
例えば、Blu-ray Disc規格では、第一光透過層50の膜厚は95〜105μm(光透過層の屈折率を1.6としたとき)、第二光透過層30の膜厚は70〜80μm(光透過層の屈折率を1.6としたとき)であり、許容される膜厚分布はいずれも±2μmである。
図7は四層型光情報媒体の例を示す断面模式図である。同図中、図6と同一部分については同一符号を付し、その説明は省略する。図7の四層型光情報媒体は、図6の第二情報層4とカバー層30の間に、第二中間層5、第三情報層6、第三中間層7、第四情報層8が形成された構成となっている。図7の場合、第一光透過層は、カバー層30から第一中間層3までの層であり、第二光透過層は、カバー層30から第二中間層5までの層であり、第三光透過層は、カバー層30から第三中間層7までの層であり、第四光透過層はカバー層30と同一となる。例えば、図7のように、情報層が四層になると、第一〜第四光透過層に対して膜厚分布が規定され、記録再生光から見て奥側の情報層ほど手前側の中間層の膜厚分布が重畳されることになるため、製造上要求される中間層の膜厚分布は、多層化するほどより高い均一性が求められるようになる。なお、図7の光情報媒体を記録再生するには、カバー層側からレーザ光を入射し、対物レンズの光情報媒体からの距離や収差を調整して、いずれかの情報層に焦点を合わせることにより、各層に選択的に記録再生を行う。
上述の中間層(第1中間層)3へのピット及び/又は案内溝の形成方法について、現在主流となっている2P法について、もう少し詳しく説明する。まず、第一情報層2上等に、紫外線硬化型樹脂を塗布し、Ni等の金属製スタンパを押し当てることによって、中間層(第1中間層)3へピット及び/又は案内溝を転写する。この状態で、紫外線を照射することで、紫外線硬化型樹脂を硬化させるが、支持基板であるプラスチック製基板1側には、一般的に、(レーザ光40から見て反射率が高くなるように設計されているため)透過性の悪い第一情報層2が存在するため、プラスチック基板1側から紫外線を照射することが出来ない場合がある(紫外線が第一情報層2によって遮断されてしまう)。
金属製スタンパ側から紫外線を照射するとしても、従来のNiスタンパでは、紫外線がNiスタンパにより遮断され、紫外線硬化型樹脂を硬化させることが出来ない。そこで、Niスタンパの替わりに、プラスチック製の樹脂スタンパを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
図8は数十μm〜0.1mm程度の厚さのカバー層(第二透過層)30を通して記録再生が行われる二層型光情報媒体を、2P法により製造する方法の例を示す図であり、各工程の説明は下記の通りである。
(a)支持基板であるプラスチック製基板1上に第一情報層2を形成する。
(b)第一情報層2上に紫外線硬化型樹脂10を塗布する。
(c)紫外線硬化型樹脂10上にスタンパ11を押し当て、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂10を硬化させる。この際、第一情報層2が紫外線を十分透過すれば、紫外線はプラスチック製基板1側から照射できるため、スタンパ11の材質に制限はなく、通常のNiスタンパが使用できる。一方、第一情報層2が紫外線を十分透過させない場合は(第一情報層2に金属や合金からなる反射層が含まる場合等)、スタンパ11側から紫外線を照射しなければならないため、スタンパ11は樹脂製を使用する。
(d)スタンパ11の剥離を開始する。
(e)スタンパ11を完全に剥離し、溝が転写された中間層(第一中間層)3を得る。
(f)中間層(第一中間層)3上に第二情報層4を形成する。
(g)第二情報層4上に、紫外線硬化型樹脂12を塗布し、スピンコーティング法により所望の膜厚に調整し、紫外線を照射して硬化させ、カバー層(第二透過層)30を得る。
(h)カバー層(第二透過層)30側からレーザ光40が照射され、記録再生が行われる二層型光情報媒体が完成する。
図9は従来通り0.6mm等の厚い基板を通して記録再生が行われる二層型光情報媒体を2P法により製造する方法の例を示す図であり、各工程の説明は下記の通りである。
(a)支持基板であるプラスチック製基板1上に第一情報層2を形成する。
(b)第一情報層2上に紫外線硬化型樹脂10を塗布する。
(c)紫外線硬化型樹脂10上にスタンパ11を押し当て、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂10を硬化させる。この際、第一情報層2が紫外線を十分透過すれば、紫外線はプラスチック製基板1側から照射できるため、スタンパ11の材質に制限はなく、通常のNiスタンパが使用できる。一方、第一情報層2が紫外線を十分透過させない場合は(第一情報層2に金属や合金からなる反射層が含まる場合等)、スタンパ11側から紫外線を照射しなければならないため、スタンパ11は樹脂製を使用する。
(d)スタンパ11の剥離を開始する。
(e)スタンパ11を完全に剥離し、溝が転写された中間層(第一中間層)3を得る。
(f)中間層(第一中間層)3上に第二情報層4を形成する。
(g)第二情報層4上に、紫外線硬化型樹脂12を塗布し、スピンコーティング法により所望の膜厚に調整し、接着層31を形成する。なお、工程(c)で使用したスタンパ11の材質によって、下記の2通りの方法で貼り合わせが行われる。
(h)別途用意した貼り合せ基板60を上記紫外線硬化型樹脂12で貼り合わせ、プラスチック製基板1側からレーザ光40が照射され、記録再生が行われる二層型光情報媒体が完成する。
(i)工程(c)で樹脂スタンパを使用した場合は、使用済みの樹脂スタンパを上記紫外線硬化型樹脂12で貼り合わせ、プラスチック製基板1側からレーザ光40が照射され、記録再生が行われる二層型光情報媒体が完成する。
上述した、樹脂スタンパを使用する2P法では、樹脂スタンパの耐久性が悪いため、樹脂スタンパは1回の溝転写にしか使用できなく、毎回破棄しなければならない。また、HD DVD系の光情報媒体では、使用済みの樹脂スタンパを貼りあわせ基板として使用することが可能であるが(図9参照)、Blu-ray Discの場合は、貼りあわせ基板が不要であることから、樹脂スタンパを再利用することができない。更に、スタンパの溝形状を紫外線硬化樹脂に転写した後、スタンパを紫外線硬化樹脂との界面で剥離しなければいけないが、スタンパと紫外線硬化型樹脂との離型性が悪いという問題がある。
即ち、スタンパ11を紫外線硬化樹脂10との界面で剥離するには、図8(d)のように、通常、スタンパ11と紫外線硬化樹脂10を剥離する起点を作り、そこから全体を剥離する必要がある。つまり、紫外線硬化型樹脂10に対して、スタンパ11を傾けて剥離する必要があるため、せっかく転写した溝を変形させたり、膜均一性を悪化させたりする可能性が高い。この溝の変形は、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号の残留エラーを著しく増大させ、ドライブやレーコーダーにおいて、記録や再生不良を起こすという重大な問題になる恐れがある。スタンパ11を紫外線硬化型樹脂10に対して、垂直に剥離するには、非常に大きな力を必要とするし、垂直に剥離するために基板に特殊な形状加工が必要であり、生産性の良い方法とは言えない。なお、スタンパの離型性をスムーズに行うために、あらかじめスタンパ表面に適当な表面処理を施しておくこともできる。
紫外線硬化樹脂との離型性を良好にする表面処理方法としては、スタンパ最表面にフッ素基を有するシラン化合物等の有機物を化学吸着させる方法や、ダイヤモンドライクカーボンやシリコンカーバイドなどの無機物からなる薄膜層を表面に形成する方法、白金などの表面不活性な金属薄膜を表面に形成する方法などがある。しかし、これらの方法ではコストアップにつながり、コストの安い樹脂スタンパを使用する意味がなくなってしまうという問題がある。更に、2P法は、中間層形成のために、塗布された紫外線硬化型樹脂にスタンパを押し当てる際、気泡が入りやすく、欠陥が発生し易い製造方法である。
以上のように、2P法の場合、中間層に溝を転写するためには、Ni等の金属製スタンパであろうが、樹脂製スタンパであろうが、スタンパが必要である。樹脂スタンパの場合、1度きりの溝転写にしか使用できず、特殊な場合を除き(DVD系や、HD DVD系の光情報媒体の場合、貼りあわせ基板として利用できる場合がある)、破棄しなければならない。したがって、生産性が低くなるし(コストが高くなるし)、何よりも、廃棄物を増やすことになり地球環境に優しい製造プロセスとは言えない。
また、Niスタンパを用いる場合も、射出成形による基板成形とは違い、Niスタンパの寿命が非常に短い。これは、紫外線効果型樹脂とNiスタンパの剥離性が悪いためである。従って、樹脂よりも遥かに高価であるNiスタンパを用いる方法は、生産性が悪くなる(コストが高くなる)可能性が高い。また、Niスタンパを多量に使用すること、又は、Niスタンパの寿命によりNiスタンパの洗浄を行うことは、より多くの廃棄物を出すことになり、地球環境に優しい製造プロセスとは言えない。更に、2P法では、完成している第iの情報層(iは1以上の整数)に、第(i+1)の情報層を積層するが、第(i+1)の情報層は第iの情報層上に作製してみないと、第(i+1)の情報層の品質の良否を判断できないため、第iの情報層までは良好な品質を有する多層型光情報媒体が完成していても、第(i+1)の情報層の作製に失敗すると、全ての層が使用できなくなり、生産性が非常に悪い。また、層数が増えるほど生産性は急激に悪化し、より多くの廃棄物を出すことになる。
これに対して、二層型光情報媒体に関しては、逆積法(IS法)という製造方法がある。IS法は、基板の上に情報層を順方向(例えば、色素を記録層とする光情報媒体では、記録層、反射層が順次積層される)に成膜したディスクと、逆方向に成膜したディスクを作り(例えば、色素を記録層とする光情報媒体では、反射層、記録層が順次積層される)、順方向に成膜した情報層の上に、逆方向に成膜した情報層を積み上げ貼り合わせるような形で製造される。図10はIS法により二層型光情報媒体を製造する方法の例を示す断面模式図である。各工程の説明は下記の通りである。
(a)第一のプラスチック製基板13上に第一情報層2を形成する。
(b)第二のプラスチック製基板14上に第二情報層4を形成する。
(c)第一情報層2上に紫外線硬化型樹脂12を塗布する。紫外線硬化型樹脂12はスピンコーティング法によって、所定の膜厚に調整されても構わない。
(d)第二情報層4上に紫外線硬化型樹脂12を塗布する。紫外線硬化型樹脂12はスピンコーティング法によって、所定の膜厚に調整されても構わない。
(e)それぞれ個別の情報層を有する第一のプラスチック製基板13と第二のプラスチック製基板14を、互いの基板が外側になるように貼り合せ、紫外線を照射することにより、紫外線硬化型樹脂12からなる接着層31を硬化させる。
このように、IS法は、Niスタンパや樹脂スタンパを用いて、中間層を形成する工程(例えば、図9の工程(e))が必要ないため、スタンパを押し当てる際に気泡が入り易く、欠陥が発生し易いという欠点や、スタンパを剥離する際に溝を変形させたり、膜均一性を悪化させたりするという欠点がない。また、二層型光情報媒体を作製する場合、第一情報層2と第二情報層4は、個別にその品質を検査することができるため、欠陥のある層を貼りあわせることがない。従って、生産性が高く、廃棄物(使用済みのスタンパや欠陥のある層)を少なくすることができる地球環境に優しい製造方法である。
このように、IS法は大変優れた方法であるが、次のような欠点もある。すなわち、例えば0.1mm程度の非常に薄いカバー層と呼ばれる層を通して記録再生が行われるBlu-ray Discの製造には適用できない。何故なら0.1mmという非常に薄い基板では、機械的に非常に弱いため、そのハンドリングができないからである。また、IS法で作製できるのは二層構造までで、三層以上の多層構造を作製することはできない。何故なら、IS法では、層数が増えると、基板の板厚分が加算されるため、記録再生のためのレーザ光を所望の層に集光することが出来なくなるからである。
係るIS法の欠点を改善すべく、数十μm〜0.1mm程度の厚さの光透過層を通して記録再生が行われる光情報媒体にも、IS法を適用する方法として、PCフィルム上に情報層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献5参照)。数十μm〜0.1mm程度の厚さの薄いPCフィルム上に情報層が形成できれば、通常の厚さを有する(例えば1.1mm)基板上に情報層を設けた媒体とを、図10のような状態で貼り合せることで二層型光情報媒体を作製することができる。しかし、この方法には以下のような問題がある。
第1に、80μm以下の薄いフィルム基板に中間層や情報層を積層していくために、中間層の硬化収縮や情報記録層の成膜応力によってフィルム基板に様々な反りが生じてしまい、製造装置内での搬送や、樹脂塗布時あるいはスパッタ成膜時の基板固定がうまくできなかったりする不具合がある。特に、樹脂塗布時のフィルム基板の平面保持性が悪いと、樹脂の塗布ムラを生じて中間層の膜厚分布を悪化させてしまい、膜厚均一性を高めることができず、多層型の光情報媒体の品質を著しく悪化させてしまう問題がある。
第2に、フィルム基板が薄く熱容量が小さいため、スパッタ時の熱により基板が熱変形を起こしたり、最悪の場合は溶融してしまったりして、不良となることが多い。これを防ぐには、スパッタ時の成膜レートを落として、フィルム基板への入熱量を減らしたり、フィルム基板の冷却機構をスパッタ装置に設けるなどの方法が有効であるが、生産タクトが著しく長くなったり、装置コストが高くなったりして、生産性の高い製造方法で安価な光情報媒体を提供する上で問題がある。
第3に、二層よりもさらに多層の光情報媒体を作製する場合、中間層膜厚を薄くしながら、カバー層となるフィルム基板の厚さも薄くする必要があるため、上記の問題点がより顕在化し、スループットと歩留まりが更に悪化して、安価な多層光情報媒体を提供することが困難である。
特開平11−203724号公報
特開平11−086355号公報
特開平11−086356号公報
特開2003−067990号公報
特開2003−242694号公報
本発明の光情報媒体及びその製造方法は、光透過層を均一性良く成膜し、成膜の際に機械特性を悪化させることがなく、更に光透過層を形成した媒体を容易に搬送できるようにするため、全ての光透過層や情報層は、ある程度の厚みを有する支持基板となるプラスチック製基板上に成膜し、成膜及び/又は光情報媒体が完了した後に、該支持基板となるプラスチック製基板を所定の厚さまで薄くすることを特徴とする。
本発明で言う情報層とは、情報を記録し、その情報を長期保持するために構成された1つ以上の層から構成された積層体を意味する。例えば、支持基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層が積層された光情報媒体の場合、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層からなる4層積層体が1つの情報層を形成しているとみなすことができる。また、例えば、第一の支持基板上に、第一の下部保護層、第一の記録層、第一の上部保護層、第一の反射層が積層され、その上に中間層(スペース層)を介して、更に、第二の下部保護層、第二の記録層、第二の上部保護層、第二の反射層、第二の支持基板上が積層された多層型光情報媒体の場合、第一の下部保護層、第一の記録層、第一の上部保護層、第一の反射層からなる4層積層体が第一の情報層を形成し、第二の下部保護層、第二の記録層、第二の上部保護層、第二の反射層からなる4層積層体が第二の情報層を形成しているとみなすことができる。
本発明の情報層は、例えば、下記のような構成とすることが好ましい。但し、これに限定される訳ではない。
(a) 記録層/上部保護層/反射層
(b) 下部保護層/記録層/上部保護層
(c) 下部保護層/記録層/上部保護層/反射層
また、下部保護層、上部保護層を、複数の層で構成しても構わない。上部保護層は、主に記録感度、反射率の制御を行う機能を担う。下部保護層は、主に、記録層の保存信頼性を確保するために用いられる。すなわち、下部保護層は、基板やカバー層を透過してくる酸素、水分、その他のガスから、記録層を守る働きをする。但し、記録再生光が入射する方向や、情報層が積層される順番によって、上部保護層と下部保護層の役割は入れ替わる場合がある。
本発明の光情報媒体で使用される上部保護層、及び下部保護層に用いることができる材料は、B2O5、Sm2O3、Ce2O3、Al2O3、MgO、BeO、ZrO2、UO2、ThO2などの単純酸化物系の酸化物;SiO2、2MgO・SiO2、MgO・SiO2、CaO・SiO3、ZrO2・SiO2、3Al2O3・2SiO2、2MgO・2Al2O3・5SiO2、Li2O・Al2O3・4SiO2などのケイ酸塩系の酸化物;Al2TiO5、MgAl2O4、Ca10(PO4)6(OH)2、BaTiO3、LiNbO3、PZT〔Pb(Zr、Ti)O3〕、PLZT〔(Pb、La)(Zr、Ti)O3〕、フェライトなどの複酸化物系の酸化物;Si3N4、AlN、BN、TiNなどの窒化物系の非酸化物;SiC、B4C、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物;LaB6、TiB2、ZrB2などのホウ化物系の非酸化物;ZnS、CdS、MoS2などの硫化物系の非酸化物;MoSi2などのケイ化物系の非酸化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイアモンド等の炭素系の非酸化物等を用いることが可能である。
また、上部保護層、及び下部保護層には、色素や樹脂などの有機材料を使用することも可能である。色素としては、ポリメチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系、アゾ系、ホルマザン系各色素、及びこれらの金属錯体化合物などが挙げられる。
樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等を用いることができ、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
有機材料層の形成は、蒸着、スパッタリング、CVD、溶剤塗布などの通常の手段によって行なうことができる。塗布法を用いる場合には、上記有機材料などを有機溶剤に溶解して、スプレー、ローラーコーティング、ディッピング、スピンコーティングなどの慣用のコーティング法で行なうことができる。
用いられる有機溶剤としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N、N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類;ベンゼン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族類;メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセロソルブ類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などが挙げられる。
本発明の光情報媒体に使用できる反射層は、蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティングにより基板上に形成することができる。中でも、反射層はスパッタリングにより形成されることが好ましい。
基板の素材としては、基板を通して記録再生が行われる場合には光透過特性にも優れたものであれば、特別な制限はない。具体例としては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、非晶質ポリオレフィン、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられるが、ポリカーボネートや非晶質ポリオレフィンが好ましい。基板の厚さは用途により異なり、特に制限はない。
なお、軟化する温度以上の加熱、又は加熱圧縮により、基板の厚さが所定の厚さまで薄くされる基板は、その薄膜化が容易に行えるようにするため、予め核支持基板(延伸等の加工が行われない基板を指す)の厚さよりも薄くしておくこと、或いは、核支持基板の軟化する温度又は融点よりも軟化する温度又は融点が低い材料から構成しておくことが好ましい。軟化する温度以上に加熱、又は加熱圧縮されたプラスチック製支持基板の、平面方向に所定の大きさ以上に拡大した部分は切除することが必要である。
軟化する温度以上の加熱、又は加熱圧縮が行われる案内溝を有するプラスチック製支持基板上に設けられ、軟化する温度以上の加熱、又は加熱圧縮による該案内溝の変形を抑制する変形抑制層としては、上述した上部保護層、及び下部保護層に用いることができる材料を使用することができる。
カバー層表面には、擦り傷防止や皮脂等の汚れの拭き取り性を改善するためのハードコート層を設けることができる。
なお、本発明の技術は、下記に適用できる。
1)記録再生光を従来の基板側からではなく、例えば0.1mm程度の厚さの光透過層を通して記録再生が行われる光情報媒体におけるカバー層の形成。
2)記録再生光を従来の基板側からではなく、例えば0.1mm程度の厚さの光透過層を通して記録再生が行われる光情報媒体における中間層や接着層などの光透過層の形成(多層化)。
3)記録再生光が従来通り基板側から行われる光情報媒体における中間層や接着層などの光透過層の形成(多層化)。
また、本発明の情報層のタイプは、ROM型であっても、追記型であっても、書換型であっても構わない。情報層が多層化される場合は、全ての情報層のタイプが全て同一であるだけでなく、上記の情報層のタイプを組み合わせて使用することが可能である。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
〈実施例1〉
図1は本発明の実施例1の二層型光情報媒体の製造方法の例を示す断面模式図である。
図1(a)は本発明の実施例1の二層型光情報媒体の製造方法の工程(a)の例を示す断面模式図である。工程(a)では、案内溝及び/又はピットが形成された第一のプラスチック製基板21(核支持基板)上に、第一情報層2を形成する。なお、第一のプラスチック製基板21は、二層型光情報媒体の完成時に、光情報媒体の剛性を確保する役目を担うが、本発明の実施例1の製造方法では、第一のプラスチック製基板21の加工は行わないため、本発明では、第一のプラスチック製基板21を核支持基板とも呼ぶ。
第一情報層2としては、結晶状態と非晶質(アモルファス)状態の可逆的相変化を利用した、いわゆる相変化型記録膜を含むものや、光吸収により非可逆的な光学特性(吸収係数や屈折率)の変化を起こす色素材料や無機材料からなる追記型記録膜を含むものが好適である。第一情報層2が相変化型記録層または無機系追記型記録層を含有する場合、例えば、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層等で、第一情報層2が構成される。
第一情報層2は、レーザ光40から見て、最奥側の情報層になるため、情報層の透過率を気にする必要がなく、例えば、記録特性の改善を図るため、反射層の膜厚を厚く設計することができる。なお、第一情報層2を構成する膜の材料や層構成、層数などは、記録材料の種類や設計によって異なる。
第一情報層2を構成する膜の成膜は、公知のスパッタリング法により、単物質のスパッタリングあるいは反応性ガス雰囲気下での反応性スパッタリングで行うことができる。相変化型記録膜としては、Gete−Sb2Te3擬似2元系組成を有していて、Ge2Sb2Te5などの化合物組成に代表されるGe−Sb−Te系3元合金材料や、Sb70−Te30共晶組成近傍を主成分とし、Ag−In−Sb−Teに代表されるSbTe共晶系材料、その他、Ge−Sb系材料、Ga−Sb系材料、In−Sb系材料等が好適である。無機系追記型記録膜としては、Te−O−Pd等の酸化テルル系材料、Bi−B−O等の酸化ビスマス系材料等が好適である。また、案内溝を有する第一のプラスチック製基板21の代わりに、記録データに対応する長さのピット配列が形成されたスタンパを用い、第一情報層2の替わりに銀合金やアルミニウムなどの反射膜を成膜することにより、再生専用(ROM)型の光情報媒体とすることもできる。
図1(b)は本発明の実施例1の二層型光情報媒体の製造方法の工程(b)の例を示す断面模式図である。工程(b)では、案内溝及び/又はピットが形成された第二のプラスチック製基板22上に、第二情報層4を形成する。第二情報層4としては、結晶状態と非晶質(アモルファス)状態の可逆的相変化を利用したいわゆる相変化型記録膜を含むものや、光吸収により非可逆的な光学特性(吸収係数や屈折率)の変化を起こす色素材料や無機材料からなる追記型記録膜を含むものが好適である。第二情報層4が相変化型記録層または無機系追記型記録層を含有する場合、例えば、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層等で、第二情報層4が構成される。
第二情報層4は、レーザ光40から見て手前側の情報層になるため、奥に配置される第一情報層2の記録再生を可能とするために、通常、透過率が30〜60%となるように設計される。例えば、第二情報層4に金属または合金からなる反射層を利用する場合、第二情報層4の透過率を高くするために、反射層の膜厚を5〜10nm程度に設定することが好ましい。なお、第二情報層4を構成する膜の材料や層構成、層数などは、記録材料の種類や設計によって異なる。
第二情報層4を構成する膜の成膜は、公知のスパッタリング法により、単物質のスパッタリングあるいは反応性ガス雰囲気下での反応性スパッタリングで行うことができる。相変化型記録膜としては、Gete−Sb2Te3擬似2元系組成を有していて、Ge2Sb2Te5などの化合物組成に代表されるGe−Sb−Te系3元合金材料や、Sb70−Te30共晶組成近傍を主成分とし、Ag−In−Sb−Teに代表されるSbTe共晶系材料、その他、Ge−Sb系材料、Ga−Sb系材料、In−Sb系材料等が好適である。無機系追記型記録膜としては、Te−O−Pd等の酸化テルル系材料、Bi−B−O等の酸化ビスマス系材料等が好適である。また、案内溝を有する第二のプラスチック製基板22の代わりに、記録データに対応する長さのピット配列が形成されたスタンパを用い、第二情報層4の替わりに銀合金やアルミニウムなどの反射膜を成膜することにより、再生専用(ROM)型の光情報媒体とすることもできる。
図1(c)は本発明の実施例1の二層型光情報媒体の製造方法の工程(c)の例を示す断面模式図である。工程(c)では、工程(a)で作製した媒体と、工程(b)で作製した媒体とを貼り合せるため、工程(a)で作製した媒体を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って、第一情報層2上に紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第一のプラスチック製基板21は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。
図1(d)は本発明の実施例1の二層型光情報媒体の製造方法の工程(d)の例を示す断面模式図である。工程(d)では、工程(a)で作製した媒体と、工程(b)で作製した媒体とを貼り合せるため、工程(b)で作製した媒体を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って、第二情報層4上に紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第二のプラスチック製基板22は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。
工程(c)〜工程(d)では、それぞれの基板(第一のプラスチック製基板21及び第二のプラスチック製基板22)上の回転中心付近に紫外線硬化性樹脂12を供給し延伸するので、均一な膜厚分布の接着層31が得られる。なお、ここで用いられる紫外線硬化樹脂12は、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及び/又はポリエステル(メタ)アクリレート等からなるラジカル重合性オリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーからなる反応性希釈剤および光重合開始剤等を含むものである。このうち、エポキシ(メタ)アクリレートは、硬化物の硬度や硬化速度を向上させる機能があるため、ウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリエステル(メタ)アクリレートと併用して用いるのがよい。
上記反応性希釈剤としては、一分子中に(メタ)アクリロイル基を少なくとも一個有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの成分としては、(メタ)アクリロイル基を一つだけ有する単官能化合物と二つ以上有する多官能化合物の何れの化合物を用いてもよく、樹脂の粘度や反応性の調整あるいは硬化物の弾性率やガラス転移温度などの物理特性を制御する目的で、適当な比率で併用してもよい。
上記光重合開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2、2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−クロロチオキサントン、2、4−ジメチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2、4、6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの物質は、単独で用いても良いし、数種類をブレンドして用いても良い。
図1(e)は本発明の実施例1の二層型光情報媒体の製造方法の工程(e)の例を示す断面模式図である。工程(e)では、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とが、紫外線硬化型樹脂12が向き合うように接着される。工程(e)においては、紫外線硬化樹脂層同士を密着させる際に、気泡等の混入を防ぐために、雰囲気を減圧下に保持して行うことが好ましい。また、所望の膜厚や均一性を確保するために、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とを貼りあわせた後に加圧しても構わない。Blu-ray Disc規格に対応した二層型光情報媒体の場合、接着層31の膜厚としては25±1μmが望ましい。尚、接着層31は、紫外線硬化樹脂からなるが、このように、紫外線硬化樹脂等の樹脂からなる層を樹脂層とも呼ぶ。
その後、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とを貼りあわせるための、分離層の一種である接着層31を形成する紫外線硬化型樹脂12を硬化させるために、紫外線を照射する。紫外線は、第一のプラスチック製基板21側及び/又は第二のプラスチック製基板22側から照射することが可能であるが、通常は、第二情報層4は、レーザ光40から見て手前側の情報層になり、奥に配置される第一情報層2の記録再生を可能とするために、透過率が高いため、第二のプラスチック製基板22側から紫外線を照射することが好ましい。
一般的には、反射層を確保する点から、最奥の層となる第一情報層2の反射率は高めに設定されるため、第一情報層2の透過率は低いが、第一情報層2の透過率が高い場合は(高く設計できる場合は)、第一のプラスチック製基板21側から紫外線を照射することができる。紫外線光源としては、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等が用いられ、例えば、波長365nmで100〜2000mJ/cm2程度のエネルギー量を照射することができる。
図1(f)は本発明の実施例1の二層型光情報媒体の製造方法の工程(f)の例を示す断面模式図である。工程(f)では、第二のプラスチック製基板22を軟化する温度以上に加熱する、又は加熱圧縮をすることで延伸し、所定の厚さまで薄くされた第二のプラスチック製基板22aを得る。所定の厚さは、光情報媒体の仕様により規定される値である。尚、加熱は、第二のプラスチック製基板22側から行われることが好ましいが、通常、プラスチックの軟化する温度が100〜200℃程度であるのに対し、各情報層を形成する材料の融点は300〜1000℃程度であるため、第一情報層2や第二情報層4へ影響を与えることはない。更に、加熱や加熱圧縮により第二のプラスチック製基板22が延伸される際、第二のプラスチック製基板22に設けられた案内溝及び/又はピットが大きく変形しないようにするため、工程(b)等において、第二のプラスチック製基板22上には変形抑制層が設けられることが好ましい。
この変形抑制層は、反射率の制御、熱伝導率の制御、第二のプラスチック製基板22側から侵入してくる水分、酸素、その他のガスから記録層を保護する機能を兼用することができる。変形抑制層として用いることのできる材料は、B2O5、Sm2O3、Ce2O3、Al2O3、MgO、BeO、ZrO2、UO2、ThO2などの単純酸化物系の酸化物;SiO2、2MgO・SiO2、MgO・SiO2、CaO・SiO3、ZrO2・SiO2、3Al2O3・2SiO2、2MgO・2Al2O3・5SiO2、Li2O・Al2O3・4SiO2などのケイ酸塩系の酸化物;Al2TiO5、MgAl2O4、Ca10(PO4)6(OH)2、BaTiO3、LiNbO3、PZT〔Pb(Zr、Ti)O3〕、PLZT〔(Pb、La)(Zr、Ti)O3〕、フェライトなどの複酸化物系の酸化物;Si3N4、AlN、BN、TiNなどの窒化物系の非酸化物;SiC、B4C、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物;LaB6、TiB2、ZrB2などのホウ化物系の非酸化物;ZnS、CdS、MoS2などの硫化物系の非酸化物;MoSi2などのケイ化物系の非酸化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイアモンド等の炭素系の非酸化物等が利用可能である。これらの材料は第二のプラスチック製基板22の材料である高分子化合物よりも十分硬度が高く、かつ、高分子化合物よりも融点や分解温度が十分高いため、第二のプラスチック製基板22の延伸による案内溝変形を十分抑制できる。
変形抑制層の膜厚は、第二のプラスチック製基板22の延伸による案内溝変形を抑制できる膜厚に設定することが好ましく、30nm以上の膜厚であることが好ましい。この膜厚の上限は特にないが、生産性の観点から言えば、100nm以下であることが好ましい。第二のプラスチック製基板22は、その延伸を効率良く行うため、予めその基板厚さを薄くしておくことが好ましい(延伸を行わない第一のプラスチック製基板21、すなわち核支持基板の厚さよりも薄くしておくことが好ましい)。第二のプラスチック製基板22の厚さを予め薄くしておくことで、第二のプラスチック製基板22の延伸がより容易になる。
延伸前の第二のプラスチック製基板22の厚さは、第二情報層4を形成する時に、第二のプラスチック製基板22が固定できるような厚さであることが好ましい。
第二情報層4をスピンコーティング法により形成する場合は、第二のプラスチック製基板22を高速回転させて剛性を確保することができるので、第二のプラスチック製基板22の厚さは非常に薄くできる。そのため、第二のプラスチック製基板22の成形や、スピンコーティング時の搬送に支障をきたさない厚さに第二のプラスチック製基板22の厚さを設定することが好ましい。
第二情報層4をスパッタリング法等の真空プロセスにより形成する場合は、各情報層を積層する際に、各情報層の硬化収縮や成膜応力によって薄い第二のプラスチック製基板22に様々な反りが生じないように、また、製造装置内での搬送や、スパッタ成膜時の基板固定がうまくできるように、更には、スパッタ時の熱により第二のプラスチック製基板22が熱変形を起こしたり、最悪の場合は溶融してしまわないように、第二のプラスチック製基板22の厚さを設定することが好ましい。上述の条件を満足していれば、延伸前の第二のプラスチック製基板22の厚さに制限はないが、0.2〜0.4mm程度が好ましい。
第二のプラスチック製基板22の材料の軟化する温度は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第一のプラスチック製基板(核支持基板)21の材料の軟化する温度よりも低い温度であることが好ましい。第二のプラスチック製基板22の材料の軟化する温度を第一のプラスチック製基板(核支持基板)21の材料の軟化する温度よりも低くするには、材料を変えることでも可能であるが、高分子材料の重合度を変えることも好ましい。また、第二のプラスチック製基板22の材料は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第一のプラスチック製基板(核支持基板)21に使用される材料よりも延伸性が良い材料を用いることが好ましい。
図1(g)は本発明の実施例1の二層型光情報媒体の製造方法の工程(g)の例を示す断面模式図である。工程(g)では、工程(f)により延伸され、規格のサイズ(最終的に得られる光情報媒体の大きさ)よりも大きくなった第二のプラスチック製基板22aの外周部分を切断し、カバー層となる第二のプラスチック製基板22bを得る。これでカバー層(光透過層)である第二のプラスチック製基板22b側からレーザ光40を照射し、記録及び/又は再生が行われる二層型光情報媒体が完成する。
尚、図1(g)においては、接着層31が、第一情報層2と第二情報層4を分離する分離層である。また、カバー層である第二のプラスチック製基板22bが、第二情報層4と外気等を分離する分離層である。
尚、第二のプラスチック製基板22bは、第二のプラスチック製基板22aの外周部分を、例えば、ダイシングやレーザ光照射などの方法で切除することで得られるので、第二のプラスチック製基板22bの外周側面部分には、切除された痕跡が残る。
このように、本発明によれば、スタンパ(例えば、使い捨てとなる樹脂スタンパ)が不要であるという、従来のIS法の特徴を維持しつつ、スピンコート法や2P法を用いずに、一層又は多層の光情報媒体を構成する光透過層であるカバー層及び/又は中間層を形成することができる。その結果、膜厚均一性が高く、欠陥の発生が少ない光透過層を有する記録再生品質の優れた光情報媒体を低コストで提供することができる。また、係る光情報媒体の、生産性が高い製造方法を提供することができる。
〈実施例2〉
図2は本発明の実施例2の三層型光情報媒体の製造方法の例を示す断面模式図である。
図2(a)は本発明の実施例2の三層型光情報媒体の製造方法の工程(a)の例を示す断面模式図である。工程(a)の二層型構造体は、実施例1の図1における工程(e)までの方法で作製される。
図2(b)は本発明の実施例2の三層型光情報媒体の製造方法の工程(b)の例を示す断面模式図である。工程(b)は、実施例1の図1における工程(f)と同様である。
図2(c)は本発明の実施例2の三層型光情報媒体の製造方法の工程(c)の例を示す断面模式図である。工程(c)では、図2における工程(b)で作製した媒体と、実施例1の図1における工程(b)と同様の方法で作製した媒体(案内溝及び/又はピットが形成された第三のプラスチック製基板23上に、第三情報層6が形成された媒体)とを貼り合せるため、図2における工程(b)で作製した媒体を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って、薄膜化された第二のプラスチック製基板22a上に紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第一のプラスチック製基板21は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。
図2(d)は本発明の実施例2の三層型光情報媒体の製造方法の工程(d)の例を示す断面模式図である。工程(d)では、実施例1の図1における工程(b)と同様の方法で、案内溝及び/又はピットが形成された、第三のプラスチック製基板23上に第三情報層6が形成された媒体と、図2における工程(b)で作製した媒体とを貼り合せるため、実施例1の図1における工程(b)と同様の方法で作製した媒体(第三のプラスチック製基板23上に第三情報層6が形成された媒体)を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って、第三情報層6上に紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第三のプラスチック製基板23は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。なお、工程(d)の媒体は、実施例1の図1における(b)と同様な方法により作製されるが、第三情報層6としては、結晶状態と非晶質(アモルファス)状態の可逆的相変化を利用したいわゆる相変化型記録膜を含むものや、光吸収により非可逆的な光学特性(吸収係数や屈折率)の変化を起こす色素材料や無機材料からなる追記型記録膜を含むものが好適である。
第三情報層6が相変化型記録層または無機系追記型記録層を含有する場合、例えば、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層等で、第三情報層6が構成される。第三情報層6は、レーザ光40から見て手前側の情報層になるため、奥に配置される第一情報層2、及び第二情報層4の記録再生を可能とするために、通常、透過率が30〜70%となるように設計される。例えば、第三情報層6に金属または合金からなる反射層を利用する場合、第三情報層6の透過率を高くするために、反射層の膜厚を5〜10nm程度に設定することが好ましい。なお、第三情報層6を構成する膜の材料や層構成、層数などは、記録材料の種類や設計によって異なる。
第三情報層6の記録層としては、実施例1で、第一情報層2や第二情報層4用として挙げた記録層を使用することができる。また、案内溝を有する第一のプラスチック製基板21〜第三のプラスチック製基板23の代わりに、記録データに対応する長さのピット配列が形成されたスタンパを用い、情報層の替わりに銀合金やアルミニウムなどの反射膜を成膜することにより、再生専用(ROM)型の光情報媒体とすることもできる。
更に、第一のプラスチック製基板21〜第三のプラスチック製基板23のうちいずれか一つ又は二つの基板を再生専用(ROM)型の光情報媒体とすることもできる。
工程(c)〜工程(d)では、それぞれの基板上の回転中心付近に紫外線硬化性樹脂12を供給し延伸するので、均一な膜厚分布の接着層が得られる。なお、ここで用いられる紫外線硬化樹脂12は、実施例1と同様である。
図2(e)は本発明の実施例2の三層型光情報媒体の製造方法の工程(e)の例を示す断面模式図である。工程(e)では、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とが、紫外線硬化型樹脂12が向き合うように接着される。工程(e)においては、紫外線硬化樹脂層同士を密着させる際に、気泡等の混入を防ぐために、雰囲気を減圧下に保持して行うことが好ましい。また所望の膜厚や均一性を確保するために、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とを貼りあわせた後に加圧しても構わない。
その後、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とを貼りあわせるための、分離層の一種である接着層32を形成する紫外線硬化型樹脂12を硬化させるために、紫外線を照射する。紫外線は、第一のプラスチック製基板21側、及び/又は第三のプラスチック製基板23側から照射することが可能であるが、通常は、第三情報層6は、レーザ光40から見て手前側の情報層になるため、奥に配置される第一情報層2や第二情報層4の記録再生を可能とするために、通常、透過率が高くなるように設計されているので、第三のプラスチック製基板23側から紫外線を照射することが好ましい。
一般的には、反射層を確保する点から、最奥の層となる第一情報層2の反射率は高めに設定されるため、第一情報層2の透過率は低いが、第一情報層2の透過率が高い場合は(透過率を高く設計できる場合は)、第一のプラスチック製基板21側から紫外線を照射することができる。紫外線光源としては、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等が用いられ、例えば、波長365nmで100〜2000mJ/cm2程度のエネルギー量を照射することができる。
図2(f)は本発明の実施例2の三層型光情報媒体の製造方法の工程(f)の例を示す断面模式図である。工程(f)では、第三のプラスチック製基板23を軟化する温度以上に加熱する、又は加熱圧縮をすることで延伸し、所定の厚さまで薄くされた第三のプラスチック製基板23aを得る。尚、加熱は、第三のプラスチック製基板23側から行われることが好ましいが、通常、プラスチックの軟化する温度が100〜200℃程度であるのに対し、各情報層を形成する材料の融点は300〜1000℃程度であるため、第一情報層2、第二情報層4及び第三情報層6へ影響を与えることはない。更に、加熱や加熱圧縮により第三のプラスチック製基板23が延伸される際、第三のプラスチック製基板23に設けられた案内溝及び/又はピットが大きく変形しないようにするため、工程(d)等において、第三のプラスチック製基板23上には変形抑制層が設けられることが好ましい。この変形抑制層は、反射率の制御、熱伝導率の制御、第三のプラスチック製基板23側から侵入してくる水分、酸素、その他のガスから記録層を保護する機能を兼用することができる。この変形抑制層として用いることのできる材料は、実施例1と同様である。
第三のプラスチック製基板23は、その延伸を効率良く行うため、予めその基板厚さを薄くしておくことが好ましい(延伸を行わない第一のプラスチック製基板21、すなわち核支持基板の厚さよりも薄くしておくことが好ましい)。第三のプラスチック製基板23の厚さを予め薄くしておくことで、第三のプラスチック製基板23の延伸がより容易になる。延伸前の第三のプラスチック製基板23の厚さは、情報層を形成する時に、第三のプラスチック製基板23が固定できるような厚さであることが好ましい。情報層をスピンコーティング法により形成する場合は、第三のプラスチック製基板23を高速回転させて剛性を確保することができるので、第三のプラスチック製基板23の厚さは非常に薄くできる。そのため、第三のプラスチック製基板23の成形や、スピンコーティング時の搬送に支障をきたさない厚さに第三のプラスチック製基板23の厚さを設定することが好ましい。
情報層をスパッタリング法等の真空プロセスにより形成する場合は、各情報層を積層する際に、各情報層の硬化収縮や成膜応力によって薄い第三のプラスチック製基板23に様々な反りが生じないように、また、製造装置内での搬送や、スパッタ成膜時の基板固定がうまくできるように、更には、スパッタ時の熱により第三のプラスチック製基板23が熱変形を起こしたり、最悪の場合は溶融してしまわないように、第三のプラスチック製基板23の厚さを設定することが好ましい。上述の条件を満足していれば、延伸前の第三のプラスチック製基板23の厚さに制限はないが、0.2〜0.4mm程度が好ましい。
第三のプラスチック製基板23の材料の軟化する温度は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第一のプラスチック製基板(核支持基板)21に使用される材料の軟化する温度よりも低い温度であることが好ましい。第三のプラスチック製基板23の材料の軟化する温度を第一のプラスチック製基板(核支持基板)21の材料の軟化する温度よりも低くするには、材料を変えることも可能であるが、高分子材料の重合度を変えることも好ましい。また、第三のプラスチック製基板23の材料は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第一のプラスチック製基板(核支持基板)21の材料よりも延伸性が良い材料を用いることが好ましい。
図2(g)は本発明の実施例2の三層型光情報媒体の製造方法の工程(g)の例を示す断面模式図である。工程(g)では、工程(b)と工程(f)により延伸され、規格のサイズ(最終的に得られる光情報媒体の大きさ)よりも大きくなった第二のプラスチック製基板22a及び第三のプラスチック製基板23aの外周部分を切断し、第二のプラスチック製基板22b及びカバー層となる第三のプラスチック製基板23bを得る。これでカバー層(光透過層)である第三のプラスチック製基板23b側からレーザ光40を照射し、記録及び/又は再生が行われる三層型光情報媒体が完成する。
尚、図2(g)においては、接着層31が、第一情報層2と第二情報層4を分離する分離層である。また、中間層である第二のプラスチック製基板22bと接着層32を合わせたものが、第二情報層4と第三情報層6を分離する分離層である。また、カバー層である第三のプラスチック製基板23bが、第三情報層6と外気等を分離する分離層である。
また、第二のプラスチック製基板22b及び第三のプラスチック製基板23bは、第二のプラスチック製基板22a及び第三のプラスチック製基板23aの外周部分を、例えば、ダイシングやレーザ光照射などの方法で切除することで得られるので、第二のプラスチック製基板22b及び第三のプラスチック製基板23bの外周側面部分には、切除された痕跡が残る。
このように、本発明によれば、スタンパ(例えば、使い捨てとなる樹脂スタンパ)が不要であるという、従来のIS法の特徴を維持しつつ、スピンコート法や2P法を用いずに、一層又は多層の光情報媒体を構成する光透過層であるカバー層及び/又は中間層を形成することができる。その結果、膜厚均一性が高く、欠陥の発生が少ない光透過層を有する記録再生品質の優れた光情報媒体を低コストで提供することができる。また、係る光情報媒体の、生産性が高い製造方法を提供することができる。
〈実施例3〉
図3は本発明の実施例3の三層型光情報媒体の製造方法の例を示す断面模式図である。図2の三層型光情報媒体の製造方法とは異なる製造方法の例である。
図3(a)は本発明の実施例3の三層型光情報媒体の製造方法の工程(a)の例を示す断面模式図である。工程(a)の二層型構造体は、実施例1の図1における工程(e)までの方法で作製される。
図3(b)は本発明の実施例3の三層型光情報媒体の製造方法の工程(b)の例を示す断面模式図である。工程(b)は、実施例1の図1における工程(f)と同様である。
図3(c)は本発明の実施例3の三層型光情報媒体の製造方法の工程(c)の例を示す断面模式図である。工程(c)では、図3における工程(b)により延伸され、規格のサイズ(最終的に得られる光情報媒体の大きさ)よりも大きくなった第二のプラスチック製基板22aの外周部分を切断し、第二のプラスチック製基板22bを得る。
尚、第二のプラスチック製基板22bは、第二のプラスチック製基板22aの外周部分を、例えば、ダイシングやレーザ光照射などの方法で切除することで得られるので、第二のプラスチック製基板22bの外周側面部分には、切除された痕跡が残る。
図3(d)は本発明の実施例3の三層型光情報媒体の製造方法の工程(d)の例を示す断面模式図である。工程(d)では、工程(c)で作製した媒体と、実施例1の図1における工程(b)と同様の方法で作製した媒体(案内溝及び/又はピットが形成された第三のプラスチック製基板23上に、第三情報層6が形成された媒体)とを貼り合せるため、工程(c)で作製した媒体を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って、薄膜化された第二のプラスチック製基板22b上に紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第一のプラスチック製基板21は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。
図3(e)は本発明の実施例3の三層型光情報媒体の製造方法の工程(e)の例を示す断面模式図である。工程(e)では、実施例1の図1における工程(b)と同様の方法で、案内溝及び/又はピットが形成された第三のプラスチック製基板23上に、第三情報層6が形成された媒体と、工程(c)で作製した媒体とを貼り合せるため、実施例1の図1における工程(b)と同様の方法で作製した媒体(第三のプラスチック製基板23上に第三情報層6が形成された媒体)を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って、第三情報層6上に紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第三のプラスチック製基板23は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。なお、工程(e)の媒体は、実施例1の図1における(b)と同様な方法により作製されるが、第三情報層6としては、結晶状態と非晶質(アモルファス)状態の可逆的相変化を利用したいわゆる相変化型記録膜を含むものや、光吸収により非可逆的な光学特性(吸収係数や屈折率)の変化を起こす色素材料や無機材料からなる追記型記録膜を含むものが好適である。
第三情報層6が相変化型記録層または無機系追記型記録層を含有する場合、例えば、下部保護層、記録層、上部保護層層、反射層等で、第三情報層6が構成される。第三情報層6は、レーザ光40から見て手前側の情報層になるため、奥に配置される第一情報層2、及び第二情報層4の記録再生を可能とするために、通常、透過率が30〜70%となるように設計される。例えば、第三情報層6に金属または合金からなる反射層を利用する場合、第三情報層6の透過率を高くするために、反射層の膜厚を5〜10nm程度に設定することが好ましい。なお、第三情報層6を構成する膜の材料や層構成、層数などは、記録材料の種類や設計によって異なる。
第三情報層6の記録層としては、実施例1で、第一情報層2や第二情報層4用として挙げた記録層を使用することができる。また、案内溝を有する第一のプラスチック製基板21〜第三のプラスチック製基板23の代わりに、記録データに対応する長さのピット配列が形成されたスタンパを用い、情報層の替わりに銀合金やアルミニウムなどの反射膜を成膜することにより、再生専用(ROM)型の光情報媒体とすることもできる。更に、第一のプラスチック製基板21〜第三のプラスチック製基板23のうちいずれか一つ又は二つの基板を再生専用(ROM)型の光情報媒体とすることもできる。
工程(d)〜工程(e)では、それぞれの基板上の回転中心付近に紫外線硬化性樹脂12を供給し延伸するので、均一な膜厚分布の接着層が得られる。なお、ここで用いられる紫外線硬化樹脂12は、実施例1と同様である。
図3(f)は本発明の実施例3の三層型光情報媒体の製造方法の工程(f)の例を示す断面模式図である。工程(f)では、工程(d)で作製した媒体と、工程(e)で作製した媒体とが、紫外線硬化型樹脂12が向き合うように接着される。工程(f)においては、紫外線硬化樹脂層同士を密着させる際に、気泡等の混入を防ぐために、雰囲気を減圧下に保持して行うことが好ましい。また所望の膜厚や均一性を確保するために、工程(d)で作製した媒体と、工程(e)で作製した媒体とを貼りあわせた後に加圧しても構わない。
その後、工程(d)で作製した媒体と、工程(e)で作製した媒体とを貼りあわせるための、分離層の一種である接着層32を形成する紫外線硬化型樹脂12を硬化させるために、紫外線を照射する。紫外線は、第一のプラスチック製基板21側、及び/又は第三のプラスチック製基板23側から照射することが可能であるが、通常は、第三情報層6は、レーザ光40から見て手前側の情報層になるため、奥に配置される第一情報層2や第二情報層4の記録再生を可能とするために、通常、透過率が高くなるように設計されているので、第三のプラスチック製基板23側から紫外線を照射することが好ましい。
一般的には、反射層を確保する点から、最奥の層となる第一情報層2の反射率は高めに設定されるため、第一情報層2の透過率は低いが、第一情報層2の透過率が高い場合は(高く設計できる場合)、第一のプラスチック製基板21側から紫外線を照射することができる。紫外線光源としては、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等が用いられ、例えば、波長365nmで100〜2000mJ/cm2程度のエネルギー量を照射することができる。
尚、第三のプラスチック製基板23は、第三情報層6を第二のプラスチック製基板22bの反対側に向けて接着することも可能である。但し、次の工程(g)で行う加熱は、第三情報層6側から行う必要がある。また、第二のプラスチック製基板22bと接着層32と第三のプラスチック製基板23から構成される分離層が、所定の厚さでなければならない。
図3(g)は本発明の実施例3の三層型光情報媒体の製造方法の工程(g)の例を示す断面模式図である。工程(g)では、第三のプラスチック製基板23を軟化する温度以上に加熱する、又は加熱圧縮をすることで延伸し、所定の厚さまで薄くされた第三のプラスチック製基板23aを得る。尚、加熱は、第三のプラスチック製基板23側から行われることが好ましいが、通常、プラスチックの軟化する温度が100〜200℃程度であるのに対し、各情報層を形成する材料の融点は300〜1000℃程度であるため、第一情報層2、第二情報層4及び第三情報層6へ影響を与えることはない。更に、加熱や加熱圧縮により第三のプラスチック製基板23が延伸される際、第三のプラスチック製基板23に設けられた案内溝及び/又はピットが大きく変形しないようにするため、工程(e)等において、第三のプラスチック製基板23上には変形抑制層が設けられることが好ましい。この変形抑制層は、反射率の制御、熱伝導率の制御、第三のプラスチック製基板23側から侵入してくる水分、酸素、その他のガスから記録層を保護する機能を兼用することができる。この変形抑制層として用いることのできる材料は、実施例1と同様である。
第三のプラスチック製基板23は、その延伸を効率良く行うため、予めその基板厚さを薄くしておくことが好ましい(延伸を行わない第一のプラスチック製基板21、すなわち核支持基板の厚さよりも薄くすることが好ましい)。第三のプラスチック製基板23の厚さを予め薄くしておくことで、第三のプラスチック製基板23の延伸がより容易になる。延伸前の第三のプラスチック製基板23の厚さは、情報層を形成する時に、第三のプラスチック製基板23が固定できるような厚さであることが好ましい。
情報層をスピンコーティング法により形成する場合は、第三のプラスチック製基板23を高速回転させて剛性を確保することができるので、第三のプラスチック製基板23の厚さは非常に薄くできる。そのため、第三のプラスチック製基板23の成形や、スピンコーティング時の搬送に支障をきたさない厚さに第三のプラスチック製基板23の厚さを設定することが好ましい。
情報層をスパッタリング法等の真空プロセスにより形成する場合は、各情報層を積層する際に、各情報層の硬化収縮や成膜応力によって薄い第三のプラスチック製基板23に様々な反りが生じないように、また、製造装置内での搬送や、スパッタ成膜時の基板固定がうまくできるように、更には、スパッタ時の熱により第三のプラスチック製基板23が熱変形を起こしたり、最悪の場合は溶融してしまわないように、第三のプラスチック製基板23の厚さを設定することが好ましい。上述の条件を満足していれば、延伸前の第三のプラスチック製基板23の厚さに制限はないが、0.2〜0.4mm程度が好ましい。
第三のプラスチック製基板23の材料の軟化する温度は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第一のプラスチック製基板(核支持基板)21に使用される材料の軟化する温度よりも低い温度であることが好ましい。第三のプラスチック製基板23の材料の軟化する温度を第一のプラスチック製基板(核支持基板)21の材料の軟化する温度よりも低くするには、材料を変えることも可能であるが、高分子材料の重合度を変えることも好ましい。また、第三のプラスチック製基板23の材料は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第一のプラスチック製基板(核支持基板)21の材料よりも延伸性が良い材料を用いることが好ましい。
図3(h)は本発明の実施例3の三層型光情報媒体の製造方法の工程(h)の例を示す断面模式図である。工程(h)では、工程(g)により延伸され、規格のサイズ(最終的に得られる光情報媒体の大きさ)よりも大きくなった第三のプラスチック製基板23aの外周部分を切断し、カバー層となる第三のプラスチック製基板23bを得る。これでカバー層(光透過層)である第三のプラスチック製基板23b側からレーザ光40を照射し、記録及び/又は再生が行われる三層型光情報媒体が完成する。
尚、図3(h)においては、接着層31が、第一情報層2と第二情報層4を分離する分離層である。また、中間層である第二のプラスチック製基板22bと接着層32を合わせたものが、第二情報層4と第三情報層6を分離する分離層である。また、カバー層である第三のプラスチック製基板23bが、第三情報層6と外気等を分離する分離層である。
また、第三のプラスチック製基板23bは、第三のプラスチック製基板23aの外周部分を、例えば、ダイシングやレーザ光照射などの方法で切除することで得られるので、第三のプラスチック製基板23bの外周側面部分には、切除された痕跡が残る。
このように、本発明によれば、スタンパ(例えば、使い捨てとなる樹脂スタンパ)が不要であるという、従来のIS法の特徴を維持しつつ、スピンコート法や2P法を用いずに、一層又は多層の光情報媒体を構成する光透過層であるカバー層及び/又は中間層を形成することができる。その結果、膜厚均一性が高く、欠陥の発生が少ない光透過層を有する記録再生品質の優れた光情報媒体を低コストで提供することができる。また、係る光情報媒体の、生産性が高い製造方法を提供することができる。
〈実施例4〉
図4は本発明の実施例4の一層型光情報媒体(Blu-ray Disc規格の光情報媒体)の製造方法の例を示す断面模式図である。
図4(a)は本発明の実施例4の一層型光情報媒体の製造方法の工程(a)の例を示す断面模式図である。工程(a)では、案内溝及び/又はピットが形成された第一のプラスチック製基板21上に、第一情報層2を形成する。第一情報層2としては、結晶状態と非晶質(アモルファス)状態の可逆的相変化を利用したいわゆる相変化型記録膜を含むものや、光吸収により非可逆的な光学特性(吸収係数や屈折率)の変化を起こす色素材料や無機材料からなる追記型記録膜を含むものが好適である。
第一情報層2が相変化型記録層または無機系追記型記録層を含有する場合、例えば、下部保護層、記録層、上部保護体層、反射層等で、第一情報層2が構成される。実施例4の光情報媒体では、情報層は一層しか存在しないため、第一情報層2の反射率や透過率を気にする必要がなく、各層の膜厚を設計することができる。なお、第一情報層2を構成する膜の材料や層構成、層数などは、記録材料の種類や設計によって異なる。
第一情報層2を構成する膜の成膜は、公知のスパッタリング法により、単物質のスパッタリングあるいは反応性ガス雰囲気下での反応性スパッタリングで行うことができる。相変化型記録膜としては、Gete−Sb2Te3擬似2元系組成を有していて、Ge2Sb2Te5などの化合物組成に代表されるGe−Sb−Te系3元合金材料や、Sb70−Te30共晶組成近傍を主成分とし、Ag−In−Sb−Teに代表されるSbTe共晶系材料、その他、Ge−Sb系材料、Ga−Sb系材料、In−Sb系材料等が好適である。無機系追記型記録膜としては、Te−O−Pd等の酸化テルル系材料、Bi−B−O等の酸化ビスマス系材料等が好適である。
また、案内溝を有する第一のプラスチック製基板21の代わりに、記録データに対応する長さのピット配列が形成されたスタンパを用い、第一情報層2の替わりに銀合金やアルミニウムなどの反射膜を成膜することにより、再生専用(ROM)型の光情報媒体とすることもできる。
図4(b)は本発明の実施例4の一層型光情報媒体の製造方法の工程(b)の例を示す断面模式図である。工程(b)では、案内溝及び/又はピットを有さない第二のプラスチック製基板20が準備される。実施例4の第二のプラスチック製基板20は、光情報媒体の剛性を確保する役目を担い、実施例4の製造方法では、第二のプラスチック製基板20の加工(延伸)は行われないため、核支持基板と呼ぶ。
図4(c)は本発明の実施例4の一層型光情報媒体の製造方法の工程(c)の例を示す断面模式図である。工程(c)では、工程(a)で作製した媒体と、工程(b)の第二のプラスチック製基板20とを貼り合せるため、工程(a)で作製した媒体を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って、第一情報層2上に、紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第一のプラスチック製基板21は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。
図4(d)は本発明の実施例4の一層型光情報媒体の製造方法の工程(d)の例を示す断面模式図である。工程(d)では、工程(a)で作製した媒体と、工程(b)の第二のプラスチック製基板20とを貼り合せるため、工程(b)の第二のプラスチック製基板20を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第二のプラスチック製基板20は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。
工程(c)〜工程(d)では、それぞれの基板上の回転中心付近に紫外線硬化性樹脂12を供給し延伸するので、均一な膜厚分布の接着層が得られる。なお、ここで用いられる紫外線硬化樹脂12は、実施例1と同様である。
図4(e)は本発明の実施例4の一層型光情報媒体の製造方法の工程(e)の例を示す断面模式図である。工程(e)では、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とを、紫外線硬化型樹脂12が向き合うように接着される。工程(e)においては、紫外線硬化樹脂層同士を密着させる際に、気泡等の混入を防ぐために、雰囲気を減圧下に保持して行うことが好ましい。また所望の膜厚や均一性を確保するために、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とを貼りあわせた後に加圧しても構わない。
その後、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とを貼りあわせるための、分離層の一種である接着層31を形成する紫外線硬化型樹脂12を硬化させるために、紫外線を照射する。紫外線は、第一のプラスチック製基板21側、及び/又は第二のプラスチック製基板20側から照射することが可能であるが、通常は、第一情報層2は、紫外線に対して透過率が十分高いとは言えない場合があるため、第二のプラスチック製基板20側から紫外線を照射することが好ましい。
一般的には、反射層を確保する点から、第一情報層2の反射率は高めに設定されるため、第一情報層2の透過率は低いが、第一情報層2の透過率が高い場合は(透過率を高く設計できる場合)、第一のプラスチック製基板21側から紫外線を照射することができる。紫外線光源としては、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等が用いられ、例えば、波長365nmで100〜2000mJ/cm2程度のエネルギー量を照射することができる。
図4(f)は本発明の実施例4の一層型光情報媒体の製造方法の工程(f)の例を示す断面模式図である。工程(f)では、第一のプラスチック製基板21を軟化する温度以上に加熱する、又は加熱圧縮をすることで延伸し、所定の厚さまで薄くされた第一のプラスチック製基板21aを得る。尚、加熱は、第一のプラスチック製基板21側から行われることが好ましいが、通常、プラスチックの軟化する温度が100〜200℃程度であるのに対し、各情報層を形成する材料の融点は300〜1000℃程度であるため、第一情報層2へ影響を与えることはない。更に、加熱や加熱圧縮により第一のプラスチック製基板21が延伸される際、第一のプラスチック製基板21に設けられた案内溝及び/又はピットが大きく変形しないようにするため、工程(a)等において、第一のプラスチック製基板21上には変形抑制層が設けられることが好ましい。この変形抑制層は、反射率の制御、熱伝導率の制御、第一のプラスチック製基板21側から侵入してくる水分、酸素、その他のガスから記録層を保護する機能を兼用することができる。この変形抑制層として用いることのできる材料は、実施例1と同様である。
第一のプラスチック製基板21は、その延伸を効率良く行うため、予めその基板厚さを薄くしておくことが好ましい(延伸を行わない第二のプラスチック製基板20、すなわち核支持基板の厚さよりも薄くすることが好ましい)。第一のプラスチック製基板21の厚さを予め薄くしておくことで、第一のプラスチック製基板21の延伸がより容易になる。延伸前の第一のプラスチック製基板21の厚さは、第一情報層2を形成する時に、第一のプラスチック製基板21が固定できるような厚さであることが好ましい。第一情報層2をスピンコーティング法により形成する場合は、第一のプラスチック製基板21を高速回転させて剛性を確保することができるので、第一のプラスチック製基板21の厚さは非常に薄くできる。そのため、第一のプラスチック製基板21の成形や、スピンコーティング時の搬送に支障をきたさない厚さに第一のプラスチック製基板21の厚さを設定することが好ましい。
第一情報層2をスパッタリング法等の真空プロセスにより形成する場合は、第一情報層2の硬化収縮や成膜応力によって薄い第一のプラスチック製基板21に様々な反りが生じないように、また、製造装置内での搬送や、スパッタ成膜時の基板固定がうまくできるように、更には、スパッタ時の熱により第一のプラスチック製基板21が熱変形を起こしたり、最悪の場合は溶融してしまわないように、第一のプラスチック製基板21の厚さを設定することが好ましい。上述の条件を満足していれば、延伸前の第一のプラスチック製基板21の厚さに制限はないが、0.2〜0.4mm程度が好ましい。
第一のプラスチック製基板21の材料の軟化する温度は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第二のプラスチック製基板(核支持基板)20に使用される材料の軟化する温度又は融点よりも低い温度であることが好ましい。第一のプラスチック製基板21の材料の軟化する温度又は融点を第二のプラスチック製基板(核支持基板)20の材料の軟化する温度又は融点よりも低くするには、材料を変えることも可能であるが、高分子材料の重合度を変えることも好ましい。また、第一のプラスチック製基板21の材料は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第二のプラスチック製基板(核支持基板)20に使用される材料よりも延伸性が良い材料を用いることが好ましい。
図4(g)は本発明の実施例4の一層型光情報媒体の製造方法の工程(g)の例を示す断面模式図である。工程(g)では、工程(f)により延伸され、規格のサイズ(最終的に得られる光情報媒体の大きさ)よりも大きくなった第一のプラスチック製基板21aの外周部分を切断し、カバー層となる第一のプラスチック製基板21bを得る。これでカバー層(光透過層)である第一のプラスチック製基板21b側からレーザ光40を照射し、記録及び/又は再生が行われる一層型光情報媒体(Blu-ray Disc規格の光情報媒体)が完成する。
尚、図4(g)においては、接着層31が、第一情報層2と第二のプラスチック製基板20とを分離する分離層である。また、カバー層である第一のプラスチック製基板21bが、第一情報層2と外気等を分離する分離層である。
尚、第一のプラスチック製基板21bは、第一のプラスチック製基板21aの外周部分を、例えば、ダイシングやレーザ光照射などの方法で切除することで得られるので、第一のプラスチック製基板21bの外周側面部分には、切除された痕跡が残る。
このように、本発明によれば、スタンパ(例えば、使い捨てとなる樹脂スタンパ)が不要であるという、従来のIS法の特徴を維持しつつ、スピンコート法や2P法を用いずに、一層又は多層の光情報媒体を構成する光透過層であるカバー層及び/又は中間層を形成することができる。その結果、膜厚均一性が高く、欠陥の発生が少ない光透過層を有する記録再生品質の優れた光情報媒体を低コストで提供することができる。また、係る光情報媒体の、生産性が高い製造方法を提供することができる。
〈実施例5〉
図5は本発明の実施例5の一層型光情報媒体(Blu-ray Disc規格の光情報媒体)の製造方法の例を示す断面模式図である。図4の一層型光情報媒体(Blu-ray Disc規格の光情報媒体)の製造方法とは異なる製造方法の例である。
図5(a)は本発明の実施例5の一層型光情報媒体の製造方法の工程(a)の例を示す断面模式図である。工程(a)では、案内溝及び/又はピットが形成された第一のプラスチック製基板(核支持基板)21上に、第一情報層2を形成する。実施例5の第一のプラスチック製基板21は、光情報媒体の剛性を確保する役目を担い、実施例5の製造方法では第一のプラスチック製基板21の加工(延伸)は行われないため、核支持基板と呼ぶ。
第一情報層2としては、結晶状態と非晶質(アモルファス)状態の可逆的相変化を利用したいわゆる相変化型記録膜を含むものや、光吸収により非可逆的な光学特性(吸収係数や屈折率)の変化を起こす色素材料や無機材料からなる追記型記録膜を含むものが好適である。
第一情報層2が相変化型記録層または無機系追記型記録層を含有する場合、例えば、下部保護層、記録層、上部保護体層、反射層等で、第一情報層2が構成される。実施例5の光情報媒体では、情報層は一層しか存在しないため、第一情報層2の反射率や透過率を気にする必要がなく、各層の膜厚を設計することができる。なお、第一情報層2を構成する膜の材料や層構成、層数などは、記録材料の種類や設計によって異なる。
第一情報層2を構成する膜の成膜は、公知のスパッタリング法により、単物質のスパッタリングあるいは反応性ガス雰囲気下での反応性スパッタリングで行うことができる。相変化型記録膜としては、Gete−Sb2Te3擬似2元系組成を有していて、Ge2Sb2Te5などの化合物組成に代表されるGe−Sb−Te系3元合金材料や、Sb70−Te30共晶組成近傍を主成分とし、Ag−In−Sb−Teに代表されるSbTe共晶系材料、その他、Ge−Sb系材料、Ga−Sb系材料、In−Sb系材料等が好適である。無機系追記型記録膜としては、Te−O−Pd等の酸化テルル系材料、Bi−B−O等の酸化ビスマス系材料等が好適である。
また、案内溝を有する第一のプラスチック製基板21の代わりに、記録データに対応する長さのピット配列が形成されたスタンパを用い、第一情報層2の替わりに銀合金やアルミニウムなどの反射膜を成膜することにより、再生専用(ROM)型の光情報媒体とすることもできる。
図5(b)は本発明の実施例5の一層型光情報媒体の製造方法の工程(b)の例を示す断面模式図である。工程(b)では、案内溝及び/又はピットを有さない第二のプラスチック製基板20が準備される。
図5(c)は本発明の実施例5の一層型光情報媒体の製造方法の工程(c)の例を示す断面模式図である。工程(c)では、工程(a)で作製した媒体と、工程(b)の第二のプラスチック製基板20とを貼り合せるため、工程(a)で作製した媒体を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って、第一情報層21上に、紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第一のプラスチック製基板21は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。
図5(d)は本発明の実施例5の一層型光情報媒体の製造方法の工程(d)の例を示す断面模式図である。工程(d)では、工程(a)で作製した媒体と、工程(b)の第二のプラスチック製基板20とを貼り合せるため、工程(b)の第二のプラスチック製基板20を、図示しない回転ステージに固定し、ほぼその回転中心を狙って紫外線硬化型樹脂12を塗布する。第二のプラスチック製基板20は、図示しない真空吸着機構等により、回転ステージに固定されており、所定の膜厚を狙って紫外線硬化樹脂12がスピン塗布される。
工程(c)〜工程(d)では、それぞれの基板上の回転中心付近に紫外線硬化性樹脂12を供給し延伸するので、均一な膜厚分布の接着層が得られる。なお、ここで用いられる紫外線硬化樹脂12は、実施例1と同様である。
図5(e)は本発明の実施例5の一層型光情報媒体の製造方法の工程(e)の例を示す断面模式図である。工程(e)では、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とが、紫外線硬化型樹脂12が向き合うように接着される。工程(e)においては、紫外線硬化樹脂層同士を密着させる際に、気泡等の混入を防ぐために、雰囲気を減圧下に保持して行うことが好ましい。また、所望の膜厚や均一性を確保するために、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とを貼りあわせた後に加圧しても構わない。
その後、工程(c)で作製した媒体と、工程(d)で作製した媒体とを貼りあわせるための、分離層の一種である接着層31を形成する紫外線硬化型樹脂12を硬化させるために、紫外線を照射する。紫外線は、第一のプラスチック製基板21側、及び/又は第二のプラスチック製基板20側から照射することが可能であるが、通常は、第一情報層2は、紫外線に対して透過率が十分高いとは言えない場合があるため、第二のプラスチック製基板20側から紫外線を照射することが好ましい。
一般的には、反射層を確保する点から、第一情報層2の反射率は高めに設定されるため、第一情報層2の透過率は低いが、第一情報層2の透過率が高い場合は(透過率が高く設計できる場合)、第一のプラスチック製基板21側から紫外線を照射することができる。紫外線光源としては、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等が用いられ、例えば、波長365nmで100〜2000mJ/cm2程度のエネルギー量を照射することができる。
図5(f)は本発明の実施例5の一層型光情報媒体の製造方法の工程(f)の例を示す断面模式図である。工程(f)では、第二のプラスチック製基板20を軟化する温度以上に加熱する、又は加熱圧縮をすることで延伸し、第二のプラスチック製基板20aを得る。尚、加熱は、第二のプラスチック製基板20側から行われることが好ましいが、通常、プラスチックの軟化する温度が100〜200℃程度であるのに対し、各情報層を形成する材料の融点は300〜1000℃程度であるため、第一情報層2へ影響を与えることはない。
加熱や加熱圧縮により第二のプラスチック製基板20が延伸されるが、第二のプラスチック製基板20は案内溝及び/又はピットが存在しないため、第二のプラスチック製基板20上には変形抑制層は必要ない。但し、第二のプラスチック製基板20の加熱又は加熱圧縮による薄膜化の精度向上や作業性向上のために、実施例1で変形抑制層として挙げられた材料を、第二のプラスチック製基板20上に予め設けておくことも可能である。
第二のプラスチック製基板20は、その延伸を効率良く行うため、予めその基板厚さを薄くしておくことが好ましい(延伸を行わない第一のプラスチック製基板21、すなわち核支持基板の厚さよりも薄くすることが好ましい)。第二のプラスチック製基板20の厚さを予め薄くしておくことで、第二のプラスチック製基板20の延伸がより容易になる。延伸前の第二のプラスチック製基板20の厚さは、上述の変形抑制層が設けられる場合は、第二のプラスチック製基板20が固定できるような厚さであることが好ましい。
変形抑制層をスピンコーティング法により形成する場合は、第二のプラスチック製基板20を高速回転させて剛性を確保することができるので、第二のプラスチック製基板20の厚さは非常に薄くできる。そのため、第二のプラスチック製基板20の成形や、スピンコーティング時の搬送に支障をきたさない厚さに第二のプラスチック製基板20の厚さを設定することが好ましい。
変形抑制層をスパッタリング法等の真空プロセスにより形成する場合は、変形抑制層の硬化収縮や成膜応力によって、薄い第二のプラスチック製基板20に様々な反りが生じないように、また、製造装置内での搬送や、スパッタ成膜時の基板固定がうまくできるように、更には、スパッタ時の熱により第二のプラスチック製基板20が熱変形を起こしたり、最悪の場合は溶融してしまわないように、第二のプラスチック製基板20の厚さを設定することが好ましい。上述の条件を満足していれば、延伸前の第二のプラスチック製基板20の厚さに制限はないが、0.2〜0.4mm程度が好ましい。
第二のプラスチック製基板20の材料の軟化する温度は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第一のプラスチック製基板(核支持基板)21に使用される材料の軟化する温度又は融点よりも低くすることが好ましい。第二のプラスチック製基板20の材料の軟化する温度又は融点を第一のプラスチック製基板(核支持基板)21の材料の軟化する温度又は融点よりも低くするには、材料を変えることも可能であるが、高分子材料の重合度を変えることも好ましい。また、第二のプラスチック製基板20の材料は、延伸しやすいようにするため、延伸しない第一のプラスチック製基板(核支持基板)21に使用される材料よりも延伸性が良い材料を用いることが好ましい。
図5(g)は本発明の実施例5の一層型光情報媒体の製造方法の工程(g)の例を示す断面模式図である。工程(g)では、工程(f)により延伸され、規格のサイズ(最終的に得られる光情報媒体の大きさ)よりも大きくなった第二のプラスチック製基板20aの外周部分を切断し、カバー層となる第二のプラスチック製基板20bを得る。これでカバー層(光透過層)である第二のプラスチック製基板20b側からレーザ光40を照射し、記録及び/又は再生が行われる一層型光情報媒体(Blu-ray Disc規格の光情報媒体)が完成する。
尚、図5(g)においては、接着層31とカバー層である第二のプラスチック製基板20bを合わせたものが、第一情報層2と外気等を分離する分離層である。
尚、第二のプラスチック製基板20bは、第二のプラスチック製基板20aの外周部分を、例えば、ダイシングやレーザ光照射などの方法で切除することで得られるので、第二のプラスチック製基板20bの外周側面部分には、切除された痕跡が残る。
このように、本発明によれば、スタンパ(例えば、使い捨てとなる樹脂スタンパ)が不要であるという、従来のIS法の特徴を維持しつつ、スピンコート法や2P法を用いずに、一層又は多層の光情報媒体を構成する光透過層であるカバー層及び/又は中間層を形成することができる。その結果、膜厚均一性が高く、欠陥の発生が少ない光透過層を有する記録再生品質の優れた光情報媒体を低コストで提供することができる。また、係る光情報媒体の、生産性が高い製造方法を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、本発明の各実施例では、一層〜三層の光情報媒体の製造方法の例について説明したが、本発明は、四層以上の光情報媒体を製造する場合にも適用することができる。
また、本発明の各実施例では、所定の厚さまで薄くされたプラスチック製基板を得る方法として、プラスチック製基板を軟化する温度以上に加熱する、又は加熱圧縮をすることで延伸する方法について説明したが、これ以外の方法を用いても構わない。例えば、プラスチック製基板を上向きにして、プラスチック製基板の上に、例えばテトラヒドロフラン(THF)などの溶剤を滴下し、プラスチック製基板を溶かすことで所定の厚さまで薄くする方法でも構わない。このときに、プラスチック製基板を回転させても構わない。
また、本発明の各実施例では、全ての基板にプラスチック製基板を用いる例について説明したが、延伸する基板以外は、必ずしもプラスチック製基板でなくても構わない。
また、本発明を多層の光情報媒体に適用する場合において、必ずしも全ての層を本発明の方法で製造する必要はなく、例えば、所定の1層のみについて本発明の方法で製造することも可能である。