近年、微細な標本を高倍率かつ高解像度で観察可能な顕微鏡の必要性が高まっており、その一つとして、紫外光を照明光として使用することにより高解像度化を実現した紫外線顕微鏡が利用されている。紫外線顕微鏡で使用される紫外光の波長域は、近紫外(NUV)域から深紫外(DUV)域に及ぶ。通常、紫外線顕微鏡で使用される対物レンズ等の光学素子は、所定の紫外波長(例えば248nm)を中心とした狭い波長域幅(例えば248±10nm)に対して良好な性能が確保されている。このため、紫外線顕微鏡では、光源が発した広帯域の光の中から前述の対物レンズに対応した所定の紫外波長域の光を抽出し、これを照明光として射出する光源装置が必要となる。
広帯域の光の中から所定波長域の光を抽出する技術として、透過型もしくは反射型の波長選択フィルタを用いることが一般に知られている。通常、透過型波長選択フィルタは、所定の波長域の光を透過させて抽出することが可能である。しかしながら、透過型波長選択フィルタに対する光の透過率は、その用途や仕様などフィルタの設計値によって異なり、例えば80〜90%程度であるとする。さらに、波長選択性を高めて、可能な限り所定の波長域のみの光を抽出する必要がある場合、この透過型波長選択フィルタを数枚併用することが考えられる。しかし、透過型波長選択フィルタは、例えば透過率が80%の透過型波長選択フィルタを2つ使用した場合、その透過率が64%となってしまうなど、紫外線顕微鏡の光源として十分な光量を確保できないという問題が生じてしまう。このような透過型波長選択フィルタでは、フィルタ基材そのものの吸収により減光されてしまうため、後述する反射型波長選択フィルタに対して不利である。この場合、明るい観察像を得ることが難しく、高感度カメラ等の高価な装備が必要となる。
一方、反射型波長選択フィルタは、そのフィルタの設計値により、所定の波長域の光を90数%以上の反射率で反射させることが可能であるが、この所定波長域以外の光も数%反射させてしまうため、厳密に所望する波長域の光のみを抽出するという点で十分な波長選択性が得られない。そこで、従来、例えば図6および図7に示す構成において、光源からの光を反射型波長選択フィルタによって複数回反射させることで、波長選択性を高めるとともに波長フィルタにおける光量ロスを抑制するようにして、所望する波長域の光を抽出することが一般に行われている。
図6に示す構成では、光源91が発した光は、ハーフミラー92を透過し、レンズ93によって平行光束とされた後、ダイクロイックミラー94Aに入射する。ダイクロイックミラー94Aは、平行光束中の所定の第1波長域の光を選択的に反射し、この第1波長域以外の光を透過させる。ダイクロイックミラー94Aで反射された反射光束は、シャッター95Aを介してミラー96Aで反射され、来た光路を逆にたどり、ダイクロイックミラー94Aで再び反射された後、レンズ93によってハーフミラー92の反射光路上に光源91の光源像97Aとして結像される。この光源像97Aは、第1波長域の光に対する2次光源となる。
一方、ダイクロイックミラー94Aの透過光路上に配置されたダイクロイックミラー94Bは、ダイクロイックミラー94Aを透過した平行光束中の所定の第2波長域の光を選択的に反射し、この第2波長域以外の光を透過させる。ダイクロイックミラー94Bで反射された反射光束は、シャッター95Bを介してミラー96Bで反射された後、第1波長域の光と同様に来た光路を逆にたどり、レンズ93によって光源像97Aと同じ位置に光源像97Bとして結像される。この光源像97Bは、第2波長域の光に対する2次光源となる。
さらに、ダイクロイックミラー94Bの透過光路上に配置されたダイクロイックミラー94Cは、ダイクロイックミラー94Bを透過した平行光束中の所定の第3波長域の光を選択的に反射し、この第3波長域以外の光を透過させる。ダイクロイックミラー94Cで反射された反射光束は、シャッター95Cを介してミラー96Cで反射された後、第1および第2波長域の光と同様に来た光路を逆にたどり、レンズ93によって光源像97A,97Bと同じ位置に光源像97Cとして結像される。この光源像97Cは、第3波長域の光に対する2次光源となる。
このように、図6に示す構成では、所定の第1〜第3波長域の光は、それぞれダイクロイックミラー94A〜94Cによって2回ずつ反射されることで、波長選択フィルタにおける光量ロスを抑制しつつ、高い波長選択性をもって抽出される。具体的には、例えば各ダイクロイックミラー94A〜94Cにおける所定波長域の光の反射率を90%、所定波長域外の光の反射率を10%とすると、反射光束における所定波長域外の光の光量割合は、1回目の反射後には10%であるが、2回目の反射後には約1%にまで低減される。
つぎに、図7に示す構成では、光源91が発した光は、レンズ93によって平行光束とされた後、ダイクロイックミラー94Aに入射する。ダイクロイックミラー94A〜94Cは、図6の場合と同様に、それぞれ平行光束中の所定の第1〜第3波長域の光を選択的に反射するとともに反射する波長域以外の光を透過させる。ダイクロイックミラー94A〜94Bで反射された各反射光束は、それぞれシャッター95A〜95Cを介してダイクロイックミラー94A’〜94C’で反射された後、レンズ93’によって集光され、光源91の光源像97A’〜97C’として同じ位置に結像される。この光源像97A’〜97C’は、各々第1〜第3波長域の光に対する2次光源となる。
ここで、ダイクロイックミラー94A’〜94C’がそれぞれダイクロイックミラー94A〜94Cと同等の反射特性を有するものであれば、所定の第1〜第3波長域の光は、各々ダイクロイックミラー94A〜94Cによって2回ずつ反射されることと等価となる。すなわち、図7に示す構成においても、図6に示す構成と同様に、各波長域の光は、波長選択フィルタにおける光量ロスを抑制しつつ、高い波長選択性をもって抽出されることとなる。
なお、図6および図7に示す構成において、所望する第1〜第3波長域の光を2次光源から選択的に取り出すには、シャッター95A〜95Cを個別に開閉操作し、所望する波長域の光のみを選択的に透過させるようにすればよい。また、抽出する波長域を増やすには、ダイクロイックミラー94Cの透過光路上に、第1〜第3波長域と異なる波長域の光を反射するダイクロイックミラーを順次配置して、第1〜第3波長域に対する光路と同様の反射光路を設ければよい。
また、特許文献1には、図7に示した構成におけるダイクロイックミラー94A’〜94C’の反射方向を図上左右方向に逆転した場合に相当する構成が開示されている。この場合、2次光源としての光源像は、レンズ93’の光軸上で光源91から遠ざかる方向(図7における右方向に相当)に形成される。
一方、特許文献2には、光源からの光を2つの光路に分岐した後、再び合成する構成であって、分岐した各光路に、各々異なる所定波長域の光を抽出する波長選択素子と、シャッターとを備えるとともに、分岐した2光路にまたがって各光路に同時に作用するシャッターを備えた構成を有する光源装置が開示されている。この光源装置では、2光路にまたがったシャッターを回転駆動することによって、各光路で抽出した光を交互に、かつ高速に切り換えて射出することができる。また、各光路に設けたシャッターの一方のみ開放することによって、開放した光路で抽出した光のみ射出することができる。
特表平8−512137号公報
特開平6−18406号公報
以下、添付図面を参照して、本発明にかかる光源装置および顕微鏡装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
(実施の形態)
図1は、本実施の形態にかかる顕微鏡装置としての紫外線顕微鏡装置100の全体構成を示す図である。図1に示すように、紫外線顕微鏡装置100は、顕微鏡本体101と、光源装置102とを備える。顕微鏡本体101は、標本1が載置されるステージ2と、標本1の上部に配置される対物レンズ3と、レボルバ4を介して対物レンズ3を保持するとともに焦準機構5を介してステージ2を支持する架台6と、架台6の上部に載置された投光管7と、鏡筒8を介して投光管7上に搭載された接眼ユニット9と、を備える。
光源装置102は、内部に光源を備え、この光源が発した光の中から所定波長域の紫外光を抽出する波長選択ユニット11と、波長選択ユニット11が抽出した紫外光を受光して顕微鏡本体101へ導入する光ファイバ12と、波長選択ユニット11の処理および動作を制御する制御ユニット13と、を備える。制御ユニット13は、ケーブル14を介して波長選択ユニット11に電気的に接続されている。
顕微鏡本体101において、対物レンズ3は、他の対物レンズとともに交換自在にレボルバ4に取り付けられ、レボルバ4の回転動作に応じて標本1の上部に選択的に配置される。ステージ2は、焦準機構5によって昇降移動されることで、標本1と対物レンズ3との相対距離を変化させて焦点合わせを行う。また、ステージ2は、図示しない平面駆動機構によって対物レンズ3の光軸に直交した面内で移動されることで、対物レンズ3による標本1の観察位置を変化させる。
投光管7は、光ファイバ12を介して波長選択ユニット11から導入される紫外光を照明光として標本1に投射するとともに、標本1で反射される紫外光を観察光として受光して観察像を形成する。図2−1および図2−2は、投光管7の内部構成を示す図である。図2−1は平面図であり、図2−2は図2−1におけるII−II断面を示す断面図である。図2−1および図2−2に示すように、投光管7は、瞳投影レンズ71、全反射ミラー72、ハーフミラー73、ダイクロイックミラー74、結像レンズ75、全反射ミラー76、カメラ77およびファイバコネクタ78を備える。
瞳投影レンズ71は、光ファイバ12から射出される紫外光を平行光束に変換し、全反射ミラー72、ハーフミラー73およびダイクロイックミラー74を介して対物レンズ3の瞳面上に、光ファイバ12の射出端面12aの像を結像する。この射出端面12aの像からの紫外光は、対物レンズ3を介して標本1に投射され、これによって標本1はケーラー照明される。光ファイバ12は、その射出端面12aが瞳投影レンズ71に対して所定位置に設置されるように、ファイバコネクタ78を用いて投光管7に取り付けられている。
結像レンズ75は、標本1が反射した紫外光を対物レンズ3、ダイクロイックミラー74およびハーフミラー73を介して集光し、全反射ミラー76の反射光路上に配置されたカメラ77の撮像面77a上に、標本1の観察像を結像する。カメラ77は、撮像した観察像を、図示しない表示装置等に出力する。
なお、ダイクロイックミラー74は、照明光としての紫外光を反射するとともに、この紫外光以外の光を透過させる。これによって、例えばステージ2の下部に配置される図示しない照明装置から標本1に照射される可視光は、対物レンズ3およびダイクロイックミラー74を透過し、鏡筒8を介して接眼ユニット9で観察される。
つづいて、光源装置102が備える波長選択ユニット11について説明する。図3は、波長選択ユニット11の内部構成を示す図である。図3に示すように、波長選択ユニット11は、ランプ21、リレーレンズ22,23、コレクタレンズ25、選択反射光学系26、折返光学系27A〜27D、シャッター機構28A〜28Dおよび全反射ミラー29を備える。
ランプ21は、水銀ランプ、水銀キセノンアークランプ、メタルハライドランプ等、近紫外域から深紫外域の紫外光を含んだ光を発するランプである。リレーレンズ22,23は、ランプ21の発光部である光源21aが発した光をリレーして、光源21aの1次光源像24を結像する。この1次光源像24は、コレクタレンズ25の前側焦平面上であって、コレクタレンズ25の光軸20から外れた位置(図3では、光軸20から下方向に外れた位置)に結像されている。なお、リレーレンズ22,23の光軸20’は、光軸20と略平行に設定されている。
コレクタレンズ25は、1次光源像24から発せられる光を集光し、光軸20に対して傾斜した平行光束PFを射出する。射出された平行光束PFは、コレクタレンズ25の射出瞳EPを通過し、波長選択フィルタとしての選択反射光学系26に入射する。なお、平行光束PFは、厳密に平行な光束に限定されるものではなく、略平行な光束を含むものである。これに応じて、1次光源像24の結像位置は、厳密にコレクタレンズ25の前側焦平面上に限定されるものではなく、前側焦平面の近傍であればよい。また、コレクタレンズ25は、図3では単レンズとして示されているが、複数のレンズもしくはレンズ群を用いて構成することもできる。
選択反射光学系26は、光軸20上に直列に配設されたダイクロイックミラー26A〜26Dを用いて構成されている。このダイクロイックミラー26A〜26Dは、それぞれ平行光束PF中の異なる所定波長域の紫外光を反射するとともに、反射する波長域以外の光を透過させる。具体的には、例えばダイクロイックミラー26Aは、185〜240nmの波長域(第1波長域)の紫外光を反射し、この波長域以外の光を透過させる。同様にダイクロイックミラー26B〜26Dは、それぞれ240〜290nmの波長域(第2波長域)、290〜330nmの波長域(第3波長域)、330〜385nmの波長域(第4波長域)の紫外光を反射し、この反射する波長域以外の光を透過させる。ただし、実際には、ダイクロイックミラー26A〜26Dは、それぞれ第1〜第4波長域の紫外光を高反射率で反射するとともに、第1〜第4波長域以外の光も低反射率で反射させる。
折返光学系27A〜27Dは、それぞれダイクロイックミラー26A〜26Dの反射光軸20A〜20D上に配置され、ダイクロイックミラー26A〜26Dが各々反射した第1〜第4波長域の反射光束RFA〜RFDを受光するとともに、この受光した反射光束RFA〜RFDを各々反射光軸20A〜20Dに対して対称に折り返して射出する。なお、反射光軸20A〜20Dは、それぞれダイクロイックミラー26A〜26Dによって光軸20が偏向された光軸に相当する。
ここで、折返光学系27A〜27Dの構成について具体的に説明する。図4は、折返光学系27Aの構成を拡大して示す図である。この図に示すように、折返光学系27Aは、結像レンズ31Aと凹面鏡32Aとを組み合わせて構成されている。結像レンズ31Aは、第1波長域の紫外光に対して収差補正され、所定の焦点距離を有したレンズであり、反射光軸20A上であって、コレクタレンズ25の射出瞳EPから光軸に沿ってその所定の焦点距離以上に離れた位置に配置されている。この結像レンズ31Aは、反射光束RFAを集光し、光源21aの第1中間像としての中間像MIA1を後側焦平面上に結像する。
凹面鏡32Aは、所定の曲率半径で形成された球面の反射面32Aaを有し、反射光軸20A上で、中間像MIA1から反射光軸20A方向にその所定の曲率半径と等しい距離だけ離れた位置に配置されている。この配置位置は、結像レンズ31Aによる射出瞳EPの共役位置に相当する。凹面鏡32Aは、中間像MIA1から発せられる光束を集光し、反射光軸20Aに対して中間像MIA1と対称な位置に第2中間像としての中間像MIA2を結像する。
より具体的には、例えば、結像レンズ31Aの焦点距離を50mmとした場合、この結像レンズ31Aは、反射光軸20A上で射出瞳EPから50mm以上離れた位置に配置される。その配置位置を射出瞳EPから100mmとすると、結像レンズ31Aによる射出瞳EPの共役位置は、結像レンズ31Aから100mmの位置となり、この位置に凹面鏡32Aが配置される。このとき、中間像MIA1は結像レンズ31Aから50mmの位置に結像されるため、凹面鏡32Aの曲率半径は、この中間像MIA1からの距離に等しく50(=100−50)mmとされる。この場合、中間像MIA2は、結像レンズ31Aから50mmの位置で、かつ反射光軸20Aに対して中間像MIA1と対称な位置に結像される。
このように構成された折返光学系27Aにおいて、結像レンズ31Aは、中間像MIA2から発せられる光束を集光し、反射光軸20Aに対して反射光束RFAと対称な平行光束としての折返光束TFAを射出する。
折返光学系27B〜27Dは、折返光学系27Aと同様に、それぞれ結像レンズ31B〜31Dと凹面鏡32B〜32Dとを組み合わせて構成されている。すなわち、結像レンズ31B〜31Dは、それぞれ第2〜第4波長域の紫外光に対して収差補正され、所定の焦点距離を有したレンズであり、反射光軸20B〜20D上であって、コレクタレンズ25の射出瞳EPから光軸に沿って各々所定の焦点距離以上に離れた位置に配置されている。この結像レンズ31B〜31Dは、それぞれ反射光束RFB〜RFDを集光し、光源21aの第1中間像としての中間像MIB1,MIC1,MID1を後側焦平面上に結像する。
凹面鏡32B〜32Dは、それぞれ所定の曲率半径で形成された球面の反射面32Ba,32Ca,32Daを有し、反射光軸20B〜20D上で、中間像MIB1,MIC1,MID1から反射光軸20B〜20D方向に各々所定の曲率半径と等しい距離だけ離れた位置に配置されている。この凹面鏡32B〜32Dは、それぞれ中間像MIB1,MIC1,MID1から発せられる光束を集光し、反射光軸20B〜20Dに対して中間像MIB1,MIC1,MID1と対称な位置に第2中間像としての中間像MIB2,MIC2,MID2を結像する。
そして、結像レンズ31B〜31Dは、それぞれ中間像MIB2,MIC2,MID2から発せられる光束を集光し、反射光軸20B〜20Dに対して反射光束RFB〜RFDと対称な平行光束としての折返光束TFB〜TFDを射出する。
なお、折返光学系27A〜27Dは、例えば結像レンズ31A〜31Dを第1〜第4波長域の紫外光に対して良好に収差補正された同仕様のレンズとした場合、コレクタレンズ25から折返光学系27A〜27Dに至る各光路長が等しくなるように配置される。つまり、射出瞳EPから結像レンズ31Aに至る光路長と、射出瞳EPから結像レンズ31B〜32Dに至る各光路長とが等しくなるように配置される。
また、折返光学系27A〜27Dで用いた凹面鏡32A〜32Dは、それぞれ上述したように中間像MIA2,MIB2,MIC2,MID2を結像するものであれば、球面鏡に限定されず、放物面鏡等の任意の反射結像素子を用いることができる。さらに、単独の反射結像素子に限定されず、任意の複数の光学素子を組み合わせて構成した結像光学系としてもよい。なお、結像レンズ31A〜31Dは、図3では単レンズとして示されているが、複数のレンズもしくはレンズ群を用いて構成することもできる。
このように折返光学系27A〜27Dから射出された折返光束TFA〜TFDは、それぞれダイクロイックミラー26A〜26Dで再反射される。この結果、平行光束PF中に含まれる第1〜第4波長域の紫外光は、それぞれダイクロイックミラー26A〜26Dによって往復で2回選択的に反射され、高い波長選択性をもって抽出される。
ダイクロイックミラー26A〜26Dで再反射された各再反射光束は、同軸に合成される。この合成された光束としての戻り光束BFは、光軸20に対して平行光束PFと対称に、かつ逆向きに射出瞳EPを通過し、コレクタレンズ25によって集光される。コレクタレンズ25は、第1〜第4波長域の紫外光に対して良好に収差補正されており、戻り光束BF中の第1〜第4波長域の紫外光を、全反射ミラー29を介して同じ位置に収束するとともに、光源像30A〜30D(図4参照)をテレセントリックに結像する。この光源像30A〜30Dは、それぞれ第1〜第4波長域の紫外光に対する2次光源となる。
なお、コレクタレンズ25は、図4に示すように、全反射ミラー29を介さなければ、光軸20に対して1次光源像24と対称な位置に戻り光束BFを収束させ、光源像30’を結像する。全反射ミラー29の配置位置は、この光源像30’とコレクタレンズ25との間の光路上であって、光源像30’の結像光束と1次光源像24からの有効光束とが空間的に干渉しない位置であればよい。
光源像30A〜30Dを統合した光源像としての光源像30は、折返光学系27A〜27Dごとに設けられたシャッター機構28A〜28Dによる光路の遮断および開放動作応じて、第1〜第4波長域の紫外光を選択的に発する2次光源として作用する。すなわち、光源像30は、シャッター機構28A〜28Dのうち開放されたものに対応する波長域の紫外光を発するとともに、第1〜第4波長域の任意の組み合わせによる紫外光を発する2次光源となる。
光ファイバ12は、その入射端面12bが光源像30の結像位置に配置されており、光源像30から発せられる紫外光を入射端面12bから受光するとともに、投光管7に取り付けられた射出端面12aから射出する。これによって、本実施の形態にかかる光源装置102は、第1〜第4波長域の任意の組み合わせによる紫外光を射出端面12aから射出することができる。
ここで、シャッター機構28A〜28Dについて具体的に説明する。図5−1および図5−2は、シャッター機構28Aの構成を示す図である。図5−1は、シャッター機構28Aの側面を示し、図5−2は、正面(図5−1における右側面)を示している。図5−1に示すように、シャッター機構28Aは、回転軸34Aを軸中心に回転駆動するパルスモータ35Aと、中心部が回転軸34Aに接続され、パルスモータ35Aによる回転駆動に応じて周方向に回転される円盤状の光路遮断部材33Aと、を用いて構成されている。
光路遮断部材33Aは、図5−2に示すように、歯車状に周方向に所定の中心間隔で複数の開口部33Aaが形成され、各開口部33Aaに挟まれた部位が遮断部33Abとして形成されている。かかる光路遮断部材33Aは、例えば真円状の基盤をプレス加工して形成される。あるいは、レーザ光によって基盤から切り出すレーザカット加工や、エッチング成型によって製作することもできる。なお、基盤の材質、厚さ等は、光路遮断部材33Aの加工性、パルスモータ35Aによる駆動性等を考慮して適当に選択される。
光路遮断部材33Aでは、各開口部33Aaの中心間隔に対応する中心角は、パルスモータ35Aによる2パルス分の回転駆動量に応じた回転軸34Aの回転角に等しく設定されている。つまり、開口部33Aaと遮断部33Abとの中心間隔に対応する中心角Pは、パルスモータ35Aが回転軸34Aを1パルス分回転させるときの回転角に等しく設定されている。
パルスモータ35Aは、制御ユニット13に電気的に接続され、制御ユニット13が備えるシャッター制御部13a(図3参照)からの指示に基づいて、回転軸34Aおよび光路遮断部材33Aを回転駆動する。具体的には、パルスモータ35Aは、シャッター制御部13aから入力されるパルス信号に応じて光路遮断部材33Aをその周方向に回転させる。例えば、パルスモータ35Aは、シャッター制御部13aから1パルスのパルス信号を受信した場合、中心角Pだけ光路遮断部材33Aを回転させ、開口部33Aaと遮断部33Abとの位置を入れ換える。なお、パルスモータ35Aは、シャッター制御部13aからのパルス信号に応じて、光路遮断部材33Aを連続的にも間欠的にも回転させることができる。
このように構成されたシャッター機構28Aは、図4に示すように、折返光学系27Aに隣接して配置されている。具体的には、シャッター機構28Aは、光路遮断部材33Aの周縁部が中間像MIA2を含むその近傍の光路上に設けられるように配置されている。これによって、シャッター機構28Aは、パルスモータ35Aによる回転駆動に応じて光路遮断部材33Aをその周方向に回転させ、中間像MIA2近傍の光路上に遮断部33Abおよび開口部33Aaを順次挿脱して、折返光学系27Aの光路の遮断および開放を選択的に行うことができる。
なお、シャッター機構28Aは、中間像MIA2を結像する結像光束の主光線CRA2に対して光路遮断部材33Aが所定角度傾いた状態で配置されている。このため、折返光学系27Aの光路を遮断した場合に遮断部33Abの表面で生じる反射光は、凹面鏡32Aおよび結像レンズ31Aを介してダイクロイックミラー26Aに戻ることはない。これによって、遮断部33Abの表面は、反射防止膜等の特別な処理をする必要がなくなっている。
また、シャッター機構28Aは、光路遮断部材33Aの周縁部が中間像MIA2近傍の光路上に配置されているため、小型かつ安価に構成することが可能となっている。すなわち、折返光学系27Aの光路中で最も光束が絞られる場所である中間像MIA2近傍の光路上に、開口部33Aaおよび遮断部33Abを挿脱するようにしているため、他の光路上に挿脱する場合に比べて、その必要径(有効径)を小さくすることができる。これにともなって、光路遮光部材33Aの全体径を小さくすることができるとともに、パルスモータ35Aの駆動力を小さく抑え、小型化することができる。
なお、ここでは光路遮断部材33Aの周縁部が中間像MIA2近傍の光路上に設けられるものとしたが、中間像MIA1近傍の光路上に設けられるようにしてもよい。また、中間像MIA1近傍および中間像MIA2近傍の両光路をまたぐように設けてもよい。あるいは、中間像MIA1,MIA2近傍以外の光路上に設けることもできる。ただし、シャッター機構28Aの小型化等の観点から、中間像MIA1近傍または中間像MIA2近傍の光路上に設けることが好ましい。
シャッター機構28Aの近傍には、シャッター機構28Aが折返光学系27Aの光路を遮断したか否かを検知する遮断検知センサ36Aが配設されている。この遮断検知センサ36Aは、制御ユニット13に電気的に接続されており、シャッター制御部13aに対して検知結果を出力する。シャッター制御部13aは、この検知結果をもとに、シャッター機構28Aによる光路の遮断および開放動作を確実に制御することができる。
かかる遮断検知センサ36Aは、例えば、折返光学系27Aの光路上とは異なる所定の検知位置に、光路遮断部材33Aの周縁部を挟み込むように設けられるフォトインタラプタによって実現される。この場合、遮断検知センサ36Aは、開口部33Aaまたは遮断部33Abの有無を検知することで、光路遮断部材33Aが折返光学系27Aの光路を遮断したか否かを検知することができる。
一方、シャッター機構28B〜28Dは、それぞれ光路遮断部材33B〜33D、回転軸34B〜34Dおよびパルスモータ35B〜35Dを用いて、シャッター機構28Aと同様に構成されている。すなわち、光路遮断部材33B〜33Dは、光路遮断部材33Aと等しく形成され、各々回転軸34B〜34Dを介してパルスモータ35B〜35Dによって回転される。パルスモータ35B〜35Dは、それぞれ制御ユニット13に電気的に接続されており、シャッター制御部13aから入力されるパルス信号に応じて光路遮断部材33B〜33Dをその周方向に回転させる。
シャッター機構28B〜28Dは、それぞれ折返光学系27B〜27Dの近傍に配置され、光路遮断部材33B〜33Dの各周縁部は、対応する折返光学系27B〜27D内に結像される光源21aの中間像近傍の光路上に設けられる。これによって、シャッター機構28B〜28Dは、各々対応する折返光学系27B〜27Dの光路の遮断および開放を選択的に行うことができる。なお、図3に示す例では、光路遮断部材33B〜33Dは、それぞれ中間像MIB1,MIC1,MID2近傍の光路上に設けられているが、各々他方の中間像MIB2,MIC2,MID1近傍の光路上に設けてもよい。
また、シャッター機構28B〜28Dは、それぞれ遮断する光路近傍の中間像を結像する結像光束の主光線に対して光路遮断部材33B〜33Dが所定角度傾いた状態で配置される。このため、各々光路を遮断した場合に光路遮断部材33B〜33Dの表面で生じる反射光は、ダイクロイックミラー26B〜26Dに戻ることはない。これによって、光路遮断部材33B〜33Dの表面は、反射防止膜等の特別な処理をする必要がなくなっている。
シャッター機構28B〜28Dの近傍には、それぞれシャッター機構28B〜28Dが折返光学系27B〜27Dの光路を遮断したか否かを検知する遮断検知センサ36B〜36Dが配設されている。この各遮断検知センサ36B〜36Dは、制御ユニット13に電気的に接続されており、シャッター制御部13aに対して検知結果を出力する。シャッター制御部13aは、この各検知結果をもとに、各々対応するシャッター機構28B〜28Dによる光路の遮断および開放動作を確実に制御することができる。なお、遮断検知センサ36B〜36Dは、遮断検知センサ36Aと等しく構成されている。
シャッター制御部13aは、全体として、遮断検知センサ36A〜36Dの検知結果を取得し、この検知結果に基づいて、シャッター機構28A〜28Dによる折返光学系27A〜27Dの光路の遮断および開閉動作を包括的に制御する。すなわち、シャッター制御部13aは、遮断検知センサ36A〜36Dの検知結果をもとに、シャッター機構28A〜28Dによって折返光学系27A〜27Dの光路を適宜遮断および開放し、これによって光源像30から、第1〜第4波長域の任意の組み合わせによる紫外光が発せられるように制御を行う。
具体的には、例えば折返光学系27A〜27Dのいずれかの光路のみ開放して、第1〜第4波長域のいずれかの紫外光のみ選択的に発せられるようにする。また、例えば折返光学系27A〜27Dの光路を順次開放し、第1〜第4波長域の紫外光を順次選択的に発せられるようにすることもできる。この開放する順番は、適宜変更することもできる。さらに、例えば折返光学系27A〜27Dの光路を任意数開放して、第1〜第4波長域の紫外光を適宜合成して発せられるようにすることもできる。
以上説明したように、本実施の形態にかかる光源装置102では、光源21aが発した光を集光して光軸20に対して傾斜した平行光束PFを射出するコレクタレンズ25と、この平行光束PF中の第1〜第4波長域の紫外光を選択的に反射するダイクロイックミラー26A〜26Dを用いて構成された選択反射光学系26と、この選択反射光学系26が反射した反射光束RFA〜RFDを各々対応する反射光軸20A〜20Dに対して対称に折り返して射出する折返光学系27A〜27Dと、折返光学系27A〜27Dの光路の遮断および開放を選択的に行うシャッター機構28A〜28Dと、を備え、選択反射光学系26は、折返光学系27A〜27Dが射出した折返光束TFA〜TFDを再反射し、コレクタレンズ25は、選択反射光学系26が再反射した再反射光束としての戻り光束BFを集光して光源21aの光源像30を結像するようにしている。このため、光路中にハーフミラーを用いる場合のように光量を低下させることなく第1〜第4波長域の紫外光を抽出することができるとともに、各波長域の紫外光に対する2次光源としての光源像30A〜30Dをすべてテレセントリックに結像させ、光源21aの配向特性を保持させることができる。
また、光源装置102では、折返光学系27A〜27Dごとにシャッター機構28A〜28Dを備え、シャッター制御部13aがシャッター機構28A〜28Dによる折返光学系27A〜27Dの光路の遮断および開閉動作を包括的に制御するようにしているため、第1〜第4波長域の任意の組み合わせによる紫外光を射出することができる。
さらに、光源装置102では、シャッター機構28A〜28Dによって、折返光学系27A〜27Dの光路中で最も光束が絞られる場所である中間像近傍の光路の遮断および開放を行うようにしているため、シャッター機構28A〜28Dを小型かつ安価に構成することができる。
また、光源装置102では、シャッター機構28A〜28Dは、シャッター制御部13aから入力されるパルス信号の1パルスごとに中心角Pだけ光路遮断部材33A〜33Dを各々回転させ、光路の遮断と開放とを切り換えるようにしているため、その遮断および開放動作を高速に行うことができ、高い回転静止安定性をもって光路遮断部材33A〜33Dを回転駆動することができるとともに、シャッター制御部13aによる回転制御を容易に実現することができる。
なお、光路の遮断と開放とを切り換えるための光路遮断部材33A〜33Dの回転角としての中心角Pは、1パルス分の回転角に限定されるものではなく、2パルス以上のパルス数に対応する回転角としてもよい。これによって、光路の遮断と開放とを切り換える速さを適宜変更することができる。この場合、光路遮断部材33A〜33Dの回転静止安定性や回転駆動の制御性等の観点から、中心角Pは、整数のパルス数に対応する回転角とすることが好ましい。ただし、1パルス分の回転角を分割してパルスモータの回転分解能を向上させるマイクロステップ駆動を利用し、分割したパルスによって台形制御を行うようにすればこの限りではなく、高い回転静止安定性を得ることもできる。
また、光源装置102では、例えばダイクロイックミラー26A〜26Dから結像レンズ31A〜31Dに至る各光路中に全反射ミラー等を配設し、この各光路を適宜折り曲げた引き回しとした上で折返光学系27A〜27Dを配置してもよく、これによって、波長選択ユニット11の全体をコンパクトに構成することができる。
さらに、光源装置102の波長選択ユニット11が備える光学系では、紫外光が収束されてエネルギーが集中する位置に光学素子を配置する必要がないため、一般に紫外光から受ける各光学素子のダメージを軽減させることができ、長寿命化を実現できる。さらに、各光学素子の表面に紫外光を収束させる必要がないため、表面に付着したゴミやキズ等による散乱などに起因する光量の低下を低減することができる。
ここまで、本発明を実施する最良の形態を実施の形態として説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
例えば、上述した実施の形態では、コレクタレンズ25から各折返光学系27A〜27Dに至る光路中、ダイクロイックミラー26A〜26Dによって第1〜第4波長域の紫外光をそれぞれ1回反射するようにしていたが、1回に限定されず、2回以上反射するようにしてもよい。これによって、各波長域の紫外光を往復で4回以上反射することができ、一層高い波長選択性をもって第1〜第4波長域の紫外光を抽出することができる。
また、上述した実施の形態では、ダイクロイックミラー26A〜26Dは、同一面内(図3における紙面内)で平行光束PFを反射するようにしていたが、ダイクロイックミラー26A〜26Dごとに、その反射方向を異ならせるようにしてもよい。具体的には、例えば一部のダイクロイックミラーの反射方向を他のダイクロイックミラーの反射方向と直交させることもできる。
さらに、上述した実施の形態では、コレクタレンズ25は、1次光源像24を介して光源21aが発した光を集光するようにしていたが、1次光源像24の位置に光源21aを配置し、光源21aが発した光を直接集光するようにしてもよい。なお、上述した実施の形態のように、リレーレンズ22,23等を用いて光源21aの1次光源像24を形成し、コレクタレンズ25から光源21aを離隔させた場合、波長選択ユニット全体を収容する筐体内から熱源としてのランプ21を分離し、ランプハウス等に収容することもできる。この場合、ランプハウス内で廃熱処理等を効率的に行うことができるとともに、消耗品として交換が必要なランプ21を容易に交換可能とすることができる。
また、上述した実施の形態では、コレクタレンズ25と光源像30との間の光路中に光路折り曲げ用の全反射ミラー29を用いるものとして説明したが、この全反射ミラー29は、光ファイバ12等の配置の都合に応じて用いるものであるため、必要に応じて取り除いてもよい。これとは逆に、光源21aからコレクタレンズ25までの光路中に、光路折り曲げ用の全反射ミラーを設けてもよい。なお、このような光路折り曲げ用の反射素子には、全反射ミラーに限定されず、全反射プリズム等を用いることもできる。
さらに、上述した実施の形態では、光源21aが発する光の配向角度が所定範囲に制限されているものとして説明したが、リレーレンズ22の射出瞳(リレーレンズ23の入射瞳)またはコレクタレンズ25の射出瞳EPに開口絞りを設け、光源21aからの有効な配向角度を規定するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、光源装置102は、第1〜第4波長域の紫外光を抽出するものとして説明したが、抽出する波長域を4つに限定して解釈する必要はなく、3つ以下あるいは5つ以上の波長域の紫外光を抽出するようにしてもよい。さらに、紫外光に限定して解釈する必要はなく、任意の波長域の可視光や赤外光を抽出するようにしてもよい。
なお、上述した実施の形態では、光源21aが発した光を集光し、平行光束PFを射出する集光光学系としてコレクタレンズ25を用いるものとして説明したが、集光光学系はレンズ系(屈折系)に限定されず、例えば放物面鏡等を用いた反射系としてもよく、あるいは、レンズ系と反射結像系とを用いて構成した反射屈折系としてもよい。
また、上述した実施の形態では、顕微鏡本体101が、標本の上部から照明および観察を行う正立顕微鏡であるものとして説明したが、標本の下部から照明および観察を行う倒立顕微鏡とすることもできる。