以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
セルロースエステル中に含有する不純物、特に酢酸の除去について、粉粒状セルロースエステルを水または貧溶媒により洗浄する方法が特開平8−134101号公報に開示されているが、200ppmまでしか除去できないのが現状であり、これらのセルロースエステルを用いたフィルムの光学特性、機械特性は不十分でクリアしなければならない課題という現状である。
本発明のセルロースエステルフィルムは、界面活性剤存在下、水中でセルロースエステルを懸濁洗浄し、セルロースエステル中に含有される遊離酸の含有量が50ppm以下の固体状セルロースエステルを溶融製膜に用いることを特徴とする。更に、前記セルロースエステル中に含有される遊離酸の含有量が1〜20ppmの範囲であることが好ましいことを見出したものである。
更に本発明者らは、本発明の目的である正面コントラストを高くするためには、偏光膜と液晶セルの間に配置されるフィルムを構成するポリマーの歪みをなるべく少なくすることが重要であることを見出した。
セルロースエステルフィルムの製法の1つである溶液流延法は、セルロースエステルを溶媒に溶解した溶液を流延し、溶媒を蒸発、乾燥することによって製膜するものであり、この方法はフィルム内部に残存する溶媒を除去しなければならないため、乾燥ライン、乾燥エネルギー、及び蒸発した溶媒の回収及び再生装置等、製造ラインへの設備投資及び製造コストが膨大になっており、これらを削減することが重要な課題となっている。
これに対し、溶融流延法による製膜では溶液流延としてセルロースエステルの溶液を調整するための溶媒を用いないため、前述の乾燥負荷、設備負荷が生じないという利点がある。
しかしながら、セルロースセステルはその製造の過程でアルキルカルボン酸、硫酸等の酸がセルロースエステル中に残留することにより、該セルロースエステルを用いて溶融流延法で製膜すると着色や粘度低下を生ずるため、ヘイズ、透過率、リタデーション等の光学物性や機械特性が劣化するという問題がある。
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、セルロースエステルを界面活性剤存在下、水中で懸濁洗浄し、セルロースエステル中に含有する遊離酸の含有量が50ppm以下にした固体状セルロースエステルを用いて溶融流延すると、リタデーションの幅手方向のムラが少なくコントラスト等の光学特性が向上できることを見出したものである。
セルロースエステルの洗浄に関しては、下記先行例がある。
特開昭58−22510号公報には、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、もしくはこれらの混合物に塩化リチウムを混合した溶媒によるラクチドを用いたエステル化が記載されており、特表平6−504010号公報には炭酸マグネシウム、炭酸カリウム及びクエン酸、硫酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、酢酸、プロピオン酸を用いたアセチル基、プロピオニル基の導入法が記載されている。また、特開平10−45804号公報には、硫酸を触媒とした酢酸または無水酢酸及び炭素原子数が3以上の有機酸またはその無水物とのエステル化反応が記載されており、特開2003−252901号公報には、硫酸を触媒とした酢酸または無水酢酸によるアセチル化が記載されているが、いずれもエステル化反応後に本発明のような洗浄は行われていない。特公昭53−15165号公報には、酢酸セルロースのアセトン溶液を沈殿させて得た繊維状の酢酸セルローススラリーを表面積35〜55m2/gとなるようにせん断し、せん断したスラリーを多孔性支持体上に連続的に沈積、濾過した後に、酢酸セルロースの非溶媒で洗浄してアセトンを除去する方法が提案されている。また、特開平10−298201号公報には、有機酸を含むセルロースエステル溶液をノズルから沈殿剤中に押出し、せん断力を作用させてフィブリル状セルロースエステルを生成させ、離解または解砕処理した後に洗浄し、フィブリル状セルロースエステルをアルカリ処理する方法が提案されている。いずれも紛体のセルロースエステルの洗浄ではなく溶液を用いた洗浄方法であり、本発明の要件とは異なる。
更に、セルロースエステルフィルムを前述の溶液流延法で作製する場合に対して、溶融流延法にて作製した場合にコントラストが向上することも明らかになった。
本発明における溶融流延とは、溶媒を用いずセルロースエステルを流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを流延することを溶融流延として定義する。加熱溶融する成形法は、更に詳細には溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れる光学フィルムを得るためには、溶融押出し法が優れている。ここでフィルム組成物が加熱されて、その流動性を発現させた後、ドラムまたはエンドレスベルト上に押出し製膜することが溶融流延製膜法として本発明の光学フィルムの製造方法に含まれる。
(セルロースエステルの懸濁洗浄)
本発明に係るセルロースエステルの洗浄においては、セルロースエステルを界面活性剤存在下、水中で懸濁洗浄することが好ましい。
本発明に用いられる懸濁洗浄は、界面活性剤を用いることで固体状セルロースエステルに対する界面張力(接触角)を小さくし、ぬれ性を向上させる洗浄を表す。洗浄方法には特に限定はないが、水と適当な界面活性剤種、界面活性剤量において、懸濁状態で攪拌した後、セルロースエステルを濾取し、乾燥することが好ましい。水は純水、軟水及び硬水のいずれでもよいが、好ましくは純水である。また、固体状セルロースエステルとは粉体あるいはペレットを表し、好ましくは粉体である。洗浄する容器、攪拌機には特に制限はなく、ステンレス製の容器、市販の攪拌機が好ましく用いられる。
本発明に用いられる懸濁洗浄に使用される水使用量は、セルロースエステルに対し1〜30質量部が好ましく、より好ましくは更に好ましくは3〜20質量部であり、更に好ましくは5〜10質量部である。
本発明に用いられる懸濁洗浄に使用される界面活性剤使用量はセルロースエステルに対し0.01〜20質量部が好ましく、より好ましくは更に好ましくは0.05〜1質量部であり、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
攪拌温度は10〜100℃が好ましく、より好ましくは20〜80℃であり、更に好ましくは30〜60℃である。攪拌時間は0.1〜24時間が好ましく、より好ましくは0.5〜12時間であり、更に好ましくは1〜5時間である。乾燥温度は10〜150℃が好ましく、より好ましくは20〜120℃であり、更に好ましくは30〜100℃である。圧力は減圧下でも常圧下でもよく、好ましくは常圧下である。
本発明に用いられる懸濁洗浄溶液中に酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、セルロースエステルの劣化を抑制する化合物であれば特に制限ないが、中でも有用な酸化防止剤としては水溶性酸化防止剤、油溶性酸化防止剤があり、好ましくは水溶性酸化防止剤である。水溶性酸化防止剤としては、L−アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウムや草本植物シソ科のシソより抽出精製されたシソエキス、ハーブ系香辛料の一種であるローズマリーより抽出されたローズマリー抽出物のような天然酸化防止剤が挙げられる。ローズマリー抽出物は、例えば、三菱化学フーズ株式会社から、RM−21A、RM−21C、RMキーパーMETACという商品名で市販されている。また、油溶性酸化防止剤としてはフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でも、特にフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が好ましい。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
セルロースエステルは生活環境条件下(50℃以下、湿度90%以下)において、緩やかに置換基部分のエステル加水分解が起こる。セルロースエステル製造直後に製造由来の残留遊離酸除去のために本発明における洗浄を行うと、幅手方向のリタデーションばらつき、ヘイズ及び輝点異物等のフィルム物性が向上するが、製造後洗浄してから時間が経つと徐々に遊離酸量が増加し、フィルム物性が低下する。フィルム製造前に本発明に係る洗浄を再度行えば、セルロースエステル製造後の洗浄からフィルム製造までの期間は特に制限はないが、好ましくは3年以内、より好ましくは1年以内、更に好ましくは6ヶ月以内である。また、セルロースエステル製造直後に洗浄し、フィルム製造前に更に洗浄を行うとコスト的に不利になるため、洗浄はセルロースエステル製造直後だけ行うことが好ましい。この場合、フィルム製造までの期間は1年以内が好ましく、より好ましくは6ヶ月以内、更に好ましくは3ヶ月以内である。
(界面活性剤)
本発明で使用される界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤及び反応性界面活性剤が挙げられ、好ましくは非イオン性界面活性剤が用いられる。また、これらを同種あるいは異種で2種以上ミックスして使用してもよい。
陰イオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等が挙げられる。
カルボン酸塩を有する陰イオン界面活性剤としては、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはPOEアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等が挙げられる。具体例としては、炭素数12〜18の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸のアルカリ金属塩である脂肪酸石鹸等の石鹸類;炭素数12〜18の直鎖または分岐鎖を有するN−アシル−N−メチルグリシン及びそのアルカリ金属塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン及びそのアルカリ金属塩、N−アシルグルタミン酸及びそのアルカリ金属塩等のN−アシルアミノ酸類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸及びそのアルカリ金属塩等のポリオキシエチレンまたはPOEアルキルエテルカルボン酸類;炭素数12〜18の直鎖または分岐鎖を有するアシル化ペプチドのアルカリ金属塩及びトリエチルアミン塩等のアシル化ペプチド類等が挙げられる。上記タイプのカルボン酸塩型陰イオン界面活性剤は、例えば、花王株式会社からSS−40N、KSソープ、ライオン株式会社からエナジコールEC−30という商品名で市販されている。
スルホン酸塩を有する陰イオン界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸とホルマリンの重縮合物、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等が挙げられる。具体例としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するアルキルスルホン酸及びそのアルカリ金属塩等のアルキルスルホン酸類;炭素数12〜18の直鎖または分岐鎖を有するアルキルスルホン酸及びそのアルカリ金属塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類;炭素数12〜18の直鎖または分岐鎖を有するアルキルナフタレンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩等のアルキルナフタレンスルホン酸類;ナフタレンスルホン酸とホルマリンの重縮合物のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩等のナフタレンスルホン酸とホルマリンの重縮合物類;メラミンスルホン酸とホルマリンの重縮合物のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩等のメラミンスルホン酸とホルマリンの重縮合物類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するジアルキルスルホコハク酸エステル及びそのアルカリ金属塩、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するスルホコハク酸アルキル及びそのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸及びそのアルカリ金属塩等のスルホコハク酸塩類;炭素数8〜30の直鎖または分岐鎖を有するアルケンモノスルホン酸及びそのアルカリ金属塩、炭素数8〜24の直鎖または分岐鎖を有するヒドロキシアルカンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩等のα−オレフィンスルホン酸塩類;炭素数12〜18の直鎖または分岐鎖を有するN−アシル−N−メチルタウリン、そのアルカリ金属塩及びそのトリエチルアミン塩、ジメチル−5−スルホイソフタレート及びそのアルカリ金属塩等のN−アシルスルホン酸塩類等が挙げられる。上記タイプのスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤は、例えば、花王株式会社からネオペレックスNo.6Fパウダー、ペレックスNB−L、デモールT、ペレックスCS、ライオン株式会社からリポラン PJ−400という商品名で市販されている。
硫酸エステル塩を有する陰イオン界面活性剤としては、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンまたはPOEアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等が挙げられる。具体例としては、ヒマシ油硫酸のアルカリ金属塩等の硫酸化油類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する高級アルコール硫酸エステル、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩等のアルキル硫酸塩類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩等のアルキルエーテル硫酸塩類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸及びそのアルカリ金属塩等のポリオキシエチレンまたはPOEアルキルアリルエーテル硫酸塩類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪族アルキロールアマイドの硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩等のアルキルアミド硫酸塩類等が挙げられる。上記タイプの硫酸エステル塩型陰イオン界面活性剤は、例えば、花王株式会社からエマール2Fニードル、エマール40パウダー、エマール20CM、ライオン株式会社からロータットOH−104K、サンノールLMT−1430という商品名で市販されている。
リン酸エステル塩を有する陰イオン界面活性剤としては、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンまたはPOEアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンまたはPOEアルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。具体例としては、炭素数8〜18の直鎖または分岐鎖を有するアルキルリン酸、及びそのアルカリ金属塩等のアルキルリン酸塩類;炭素数8〜18の直鎖または分岐鎖を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、及びそのアルカリ金属塩等のポリオキシエチレンまたはPOEアルキルエーテルリン酸塩類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖で置換されたフェニル基を有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸及びそのアルカリ金属塩等のポリオキシエチレンまたはPOEアルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。これらアルカリリン酸塩類はモノエステル、ジエステル、トリエステルがあり、これらを混合物として使用することができる。上記タイプのリン酸エステル塩型陰イオン界面活性剤は、例えば、花王株式会社からエレクトロストリッパーFという商品名で市販されている。
陽イオン界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、4級アンモニウム塩、芳香族アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩等が挙げられる。具体例としては、炭素数12〜18の直鎖または分岐鎖を有する1級、2級及び3級アミンと有機酸及び無機酸から製造される脂肪酸アミン塩類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する4級アンモニウム塩と無機あるいは有機アニオンからなる4級アンモニウム塩類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖及び炭素数6〜20で置換された芳香族環を有する4級アンモニウム塩と無機あるいは有機アニオンからなる芳香族アンモニウム塩類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するピリジニウム塩と無機あるいは有機アニオンからなるピリジニウム塩、炭素数1〜24の直鎖または分岐鎖を有するイミダゾリニウム塩と無機あるいは有機アニオンからなるイミダゾリウム塩等の複素環4級アンモニウム塩類等が挙げられる。上記タイプの陽イオン界面活性剤は、例えば、花王株式会社からアセタミン24、コータミン86Pコンク、コータミンD86P、サニゾールB−50という商品名で市販されている。
非イオン界面活性剤としては、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型等が挙げられ、好ましくはエーテル型、エーテルエステル型、エステル型である。
エーテル型非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル及びアルキルフェニルエーテルアルキルアリルホルムアルデヒド縮合物ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロレンアルキルブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル等が挙げられる。具体例としては、炭素数12〜22の直鎖または分岐鎖を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖及び炭素数1〜20で置換された芳香族環を有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖及び炭素数1〜20及びフェノール酸素がポリオキシエチレンで置換されたフェノールとホルマリンの重縮合物等のアルキルアリルホルムアルデヒド縮合物ポリオキシエチレンエーテル類;ポリプロピレンオキシドの両端にエチレンオキシドを付加重合したポリオキシエチレンポリオキシプロレンアルキルブロックコポリマー類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するアルコールにプロピレンオキシドを付加重合した後エチレンオキシドを付加重合したポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル類等が挙げられる。上記タイプのエーテル型非イオン界面活性剤は、例えば、花王株式会社からエマルゲン130K、エマルゲン350、エマルゲン4085、エマルゲンA−500、エマルゲンPP−290という商品名で市販されている。
エーテルエステル型非イオン界面活性剤としては、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。具体例としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸のモノあるいはジグリセリンエステルに、エチレンオキシドを付加重合したポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸のモノ、ジ、トリエステルにエチレンオキシドを付加重合したポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル類;ソルビトールにエチレンオキシドを付加重合した後炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸でエステル化したポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類等が挙げられる。上記タイプのエーテルエステル型非イオン界面活性剤は、例えば、花王株式会社からレオドールTW−S106、レオドール440V、日本エマルジョン株式会社からEMALEX GWS−204という商品名で市販されている。
エステル型非イオン界面活性剤としては、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコールと炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸のモノあるいはジエステル等のエチレングリコール脂肪酸エステル類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸にエチレンオキシドを付加重合したポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;グリセリンと炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸のモノ、ジあるいはトリエステル等のグリセリン脂肪酸エステル類;グリセリンを脱水縮合したポリグリセリンを炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸でエステル化したポリグリセリン脂肪酸エステル類;ソルビタンを炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸でエステル化したモノ、ジ、トリ、テトラエステル等のソルビタン脂肪酸エステル類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸とプロピレンオキシドの1:1付加物等のプロピレングリコールエステル類;ショ糖と炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸のエステル等のショ糖エステル等が挙げられる。上記タイプのエステル型非イオン界面活性剤は、例えば、花王株式会社からレオドールMS−60、レオドールSP−S10V、ライオン株式会社からエソファット0/20、日本エマルジョン株式会社からEMALEX EGS−A、EMALEX DSG−2という商品名で市販されている。
含窒素型非イオン界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン等のアミンと炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸の縮合物等の脂肪酸アルカノールアミド類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸アミドにエチレンオキシドを付加重合させたポリオキシエチレン脂肪酸アミド類;炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸の1つあるいは2つを有するアミン化合物にエチレンオキシドを付加重合させたポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。上記タイプの含窒素型非イオン界面活性剤は、例えば、花王株式会社からアミノーンL−02、アミート302という商品名で市販されている。
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、スルホベタイン等のベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。具体例としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有する4級アンモニウム塩とカルボキシル基あるいはスルホン酸基を有するカルボキシベタイン、スルホベタイン等のベタイン類;炭素数12〜18の直鎖または分岐鎖を有するアミン塩とカルボキシル基を有するアミノカルボン酸塩類;イミダゾリニウムとカルボキシル基を有するイミダゾリン誘導体類等が挙げられる。上記タイプの両性界面活性剤は、例えば、花王株式会社からアンヒトール24B、アンヒトール20YBという商品名で市販されている。
フッ素系界面活性剤としては、アニオンタイプ、非イオンタイプ、カチオンタイプ、両性タイプ等が挙げられる。具体例として、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するフルオロアルキルカルボン酸及びそのアルカリ金属塩、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキルカルボン酸及びそのアルカリ金属塩、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキルスルホン酸及びそのアルカリ金属塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、そのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキルエチルリン酸エステル等のアニオンタイプ、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド等の含窒素型非イオン界面活性剤、N−ポリオキシエチレン−N−プロピルパーフルオロオクタンスルホンアミド等のノニオンタイプ、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖を有するパーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウムのハライド等のカチオンタイプ、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーオクチルオクタンスルホン酸アミド、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N′−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン等の両性タイプ等が挙げられる。上記タイプのフッ素系界面活性剤は、例えば、大日本化学工業株式会社からメガファックF−114、メガファックF−411、メガファックF−450、メガファックF−445、メガファックF−487という商品名で市販されている。
反応性界面活性剤とは、分子内にラジカル重合可能な二重結合を有した化合物を示し、具体的には、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩等が挙げられる。上記タイプの反応性界面活性剤は、例えば、第一工業製薬株式会社からアクアロンKH−05、アクアロンRN、アクアロンHS、旭電化工業株式会社からアデカリアソープSE、アデカリアソープNEという商品名で市販されている。
(遊離酸)
遊離酸とは製造時に除去しきれない原料のカルボン酸誘導体やエステル化の触媒として使用される硫酸等が挙げられる。また、製造から使用時までにセルロースエステルから脱離するカルボン酸誘導体も含まれる。これらの遊離酸は以下の方法で定量化できる。
〈前処理〉
試料500mg(M)をPP製の容器に計り取り、超純粋を10ml加える。これを超音波洗浄器で30分間分散した後、水系クロマトディスク(0.45μm)で濾過する。これを試料とする。
(酢酸及びプロピオン酸の定量)
〈装置〉 イオンクロマトグラフ DIONEX製 DX−500
〈カラム〉 DIONEX IonPac ICE−AS1
〈サプレッサー〉 AMMS−II
〈溶離液〉 1.0mM−オクタンスルホン酸
〈再生液〉 5.0mM−水酸化テトラブチルアンモニウム(高純度窒素5psiで送液)
〈流速〉 1.0ml/min
〈注入量〉 25μl
(SO4の定量)
〈装置〉 イオンクロマトグラフ DIONEX製 DX−120
〈カラム〉 IonPac AG14(4mm)+IonPac AS14(4mm)
〈サプレッサー〉 ASRS−ULTRAII(4mm)
〈溶離液〉 3.5mM−Na2CO3 1.0mM−NaHCO3
〈SRS電流〉 50mA
〈流速〉 1.0ml/min
〈注入量〉 25μl
〈換算方法〉
含量(ppm)=測定値(mg/l)/1000×10/M(mg)×1000000。
前記セルロースエステルの懸濁洗浄後に存在するカルボン酸誘導体、硫酸等触媒として使用される遊離酸総量は、50ppm以下であることが好ましく、1〜20ppmの範囲であることがより好ましい。
(セルロースエステル)
本発明に係るセルロースエステルは、脂肪酸アシル基、置換もしくは無置換の芳香族アシル基の中から少なくともいずれかの構造を含む、セルロースの前記単独または混合酸エステルである。
芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基の例として、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基及びアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2及び−O−Si(−R)3が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基である。置換基の数は1〜5個であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましく、1〜3個であることが更に好ましく、1個または2個であることが最も好ましい。
置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基及びウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基及びカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基及びアリールオキシ基が更に好ましく、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基が最も好ましい。
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基は環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル及び2−エチルヘキシルが含まれる。上記アルコキシ基は環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は更に別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ及びオクチルオキシが含まれる。
上記アリール基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリール基の例にはフェニル及びナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシ及びナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アシル基の例にはホルミル、アセチル及びベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。カルボンアミド基の例にはアセトアミド及びベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。スルホンアミド基の例にはメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド及びp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。ウレイド基の例には(無置換)ウレイドが含まれる。
上記アラルキル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アラルキル基の例にはベンジル、フェネチル及びナフチルメチルが含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルコキシカルボニル基の例にはメトキシカルボニルが含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アリールオキシカルボニル基の例にはフェノキシカルボニルが含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は8〜20であることが好ましく、8〜12であることが更に好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイル及びN−メチルカルバモイルが含まれる。上記スルファモイル基の炭素原子数は20以下であることが好ましく、12以下であることが更に好ましい。スルファモイル基の例には(無置換)スルファモイル及びN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ及びベンゾイルオキシが含まれる。
上記アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルケニル基の例にはビニル、アリル及びイソプロペニルが含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルキニル基の例にはチエニルが含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。
本発明のセルロースエステルにおいて、セルロースの水酸基部分の水素原子が脂肪族アシル基との脂肪酸エステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で、具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
本発明において,前記脂肪族アシル基とは更に置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては上述の芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるときベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
また、上記セルロースエステルのエステル化された置換基が芳香環であるとき、芳香族環に置換する置換基Xの数は0または1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1または2個である。更に芳香族環に置換する置換基の数が2個以上のとき、互いに同じでも異なっていてもよいが、また互いに連結して縮合多環化合物(例えば、ナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
上記セルロースエステルにおいて、置換もしくは無置換の脂肪族アシル基、置換もしくは無置換の芳香族アシル基の少なくともいずれか1種選択された構造を有する構造を有することが、本発明のセルロースエステルに用いる構造として用いられ、これらはセルロースの単独または混合酸エステルでもよく、2種以上のセルロースエステルを混合して用いてもよい。
本発明のセルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
混合脂肪酸エステルの置換度として、更に好ましいセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとしたとき、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロース樹脂である。なお、アセチル基の置換度と他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96により求めたものである。
式(I) 2.5≦X+Y≦2.9
式(II) 0.1≦X≦2.0
この内、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.0≦X≦2.5であり、0.5≦Y≦2.5であることが好ましい。アシル基の置換度の異なるセルロ−スエステルをブレンドして、光学フィルム全体として上記範囲に入っていてもよい。上記アシル基で置換されていない部分は、通常水酸基として存在しているのものである。これらは公知の方法で合成することができる。アセチル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
本発明の光学フィルムに使用するセルロースエステルの数平均分子量は、60000〜300000の範囲が得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に70000〜200000が好ましい。
更に、本発明のセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、より好ましくは2.0〜5.0であり、更に好ましくは2.5〜5.0であり、特に好ましくは3.0〜5.0のセルロースエステルである。重量平均分子量の測定方法は下記方法によることができる。
(分子量測定方法)
分子量の測定は、高速液体クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフ(GPC))を用いて測定する。測定条件は以下の通りである。
装 置:HLC−8220 GPC(東ソー製)
カラム:TSK−SUPER HM−M(φ6.0mm×150mm)
TSK−GuardcolumnH−H(φ4.6mm×35mm)
溶 媒:テトラヒドロフラン
流 速:0.6ml/min
温 度:40℃
試料濃度:0.1質量%
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1300000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
また、セルロース樹脂の極限粘度は1.5〜1.75g/cm3が好ましく、1.53〜1.63g/cm3の範囲が更に好ましい。
また、本発明のセルロースエステルは、フィルムにしたときの輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステルフィルムを観察したときに、光源の光が漏れて見える点のことである。このとき評価に用いる偏光板は、輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。
輝点異物はセルロースエステルに含まれる未酢化、もしくは低酢化度のセルロースがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロースエステルを用いる(置換度の分散の小さいセルロースエステルを用いる)ことと、溶融したセルロースエステルを濾過すること、あるいはセルロースエステルの合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくともいずれかにおいて、一度溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することもできる。溶融樹脂は粘度が高いため、後者の方法のほうが効率がよい。
フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステルの含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向があるが、輝点異物は輝点の直径0.01mm以上が200個/cm2以下であることが好ましく、100個/cm2以下であることがより好ましく、50個/cm2以下であることが更に好ましく、30個/cm2以下であることがより更に好ましく、10個/cm2以下であることが特に好ましいが、皆無であることが最も好ましい。また、0.005〜0.01mm以下の輝点についても200個/cm2以下であることが好ましく、100個/cm2以下であることがより好ましく、50個/cm2以下であることが更に好ましく、30個/cm2以下であることがより更に好ましく、10個/cm2以下であることが特に好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
輝点異物を溶融濾過によって除去する場合、セルロースエステルを単独で溶融させたものを濾過するよりも、可塑剤、劣化防止剤、酸化防止剤等を添加混合した組成物を濾過することが輝点異物の除去効率が高く好ましい。勿論、セルロースエステルの合成の際に溶媒に溶解させて濾過により低減させてもよい。紫外線吸収剤、その他の添加物も適宜混合したものを濾過することができる。濾過はセルロースエステルを含む溶融物の粘度が10000P以下で濾過されるこが好ましく、更に好ましくは5000P以下が好ましく、1000P以下であることが更に好ましく、500P以下であることが更に好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく用いられ、30μm以下のものがより好ましく、10μm以下のものが更に好ましく、5μm以下のものが特に好ましく用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することもできる。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることができるが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
(添加剤の内包)
本発明に係るセルロースエステルは、加熱溶融する前に1種以上の添加剤を内包していることが好ましい。
本発明において、添加剤を内包しているとは添加剤がセルロースエステル内部に包まれている状態のみならず、内部及び表面に同時に存在することも含むものである。
添加剤を内包させる方法としては、セルロースエステルを溶媒に溶解した後、これに添加剤を溶解または微分散させ、溶媒を除去する方法が挙げられる。溶媒を除去する方法は公知の方法が適用でき、例えば、液中乾燥法、気中乾燥法、溶媒共沈法、凍結乾燥法、溶液流延法等が挙げられ、溶媒除去後のセルロースエステル及び添加剤の組成物は、粉体、顆粒、ペレット、フィルム等の形状に調製することができる。添加剤の内包は前述のようにセルロースエステル固体を溶解して行うが、セルロースエステルの合成工程において析出固化と同時に行ってもよい。
液中乾燥法は、例えば、セルロースエステル及び添加剤を溶解した溶液にラウリル硫酸ナトリウム等の活性剤水溶液を加え、乳化分散する。次いで、常圧または減圧蒸留して溶媒を除去し、添加剤を内包したセルロースエステルの分散物を得ることができる。更に活性剤除去のため、遠心分離やデカンテーションを行うことが好ましい。乳化法としては各種の方法を用いることができ、超音波、高速回転せん断、高圧による乳化分散装置を使用することが好ましい。
超音波による乳化分散では、所謂バッチ式と連続式の2通りが使用可能である。バッチ式は比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、例えば、UH−600SR(株式会社エスエムテー製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計として求められる。超音波の照射時間は実際上は10000秒以下である。また、10000秒以上必要であると工程の負荷が大きく、実際上は乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10000秒以上は必要でない。更に好ましくは10秒以上、2000秒以内である。
高速回転せん断による乳化分散装置としては、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ウルトラミキサーなどが使用でき、これらの型式は乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。
高圧による乳化分散ではLAB2000(エスエムテー社製)などが使用できるが、その乳化・分散能力は試料にかけられる圧力に依存する。圧力は104〜5×105kPaの範囲が好ましい。
活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子分散剤などを用いることができ、溶媒や目的とする乳化物の粒径に応じて決めることができる。
気中乾燥法は、例えば、GS310(ヤマト科学社製)のようなスプレードライヤーを用いて、セルロースエステル及び添加剤を溶解した溶液を噴霧し乾燥するものである。
溶媒共沈法は、セルロースエステル及び添加剤を溶解した溶液をセルロースエステル及び添加剤に対して貧溶媒であるものに添加し、析出させるものである。貧溶媒はセルロースエステルを溶解する前記溶媒と任意に混合することができる。貧溶媒は混合溶媒でも構わない。また、セルロースエステル及び添加剤の溶液中に貧溶媒を加えても構わない。析出したセルロースエステル及び添加剤の組成物は、濾過、乾燥し分離することができる。
セルロースエステルと添加剤の組成物において、組成物中の添加剤の粒径は1μm以下であり、好ましくは500nm以下であり、更に好ましくは200nm以下である。添加剤の粒径が小さいほど、溶融成形物の機械特性、光学特性の分布が均一になり好ましい。
上記セルロースエステルと添加剤の組成物、及び加熱溶融時に添加する添加剤は、加熱溶融前または加熱溶融時に乾燥されることが望ましい。ここで乾燥とは、溶融材料のいずれかが吸湿した水分に加え、セルロースエステルと添加剤の組成物の調製時に用いた水または溶媒、添加剤の合成時に混入している溶媒のいずれかの除去を指す。
この除去する方法は公知の乾燥方法が適用でき、加熱法、減圧法、加熱減圧法等の方法で行うことができ、空気中または不活性ガスとして窒素を選択した雰囲気下で行ってもよい。これらの公知の乾燥方法を行うとき、材料が分解しない温度領域で行うことがフィルムの品質上好ましい。
例えば、前記乾燥工程で除去した後の残存する水分または溶媒は、各々フィルム組成物の全体の質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下にすることである。このときの乾燥温度は、100℃以上乾燥する材料のTg以下であることが好ましい。材料同士の融着を回避する観点を含めると、乾燥温度はより好ましくは100℃以上(Tg−5)℃以下、更に好ましくは110℃以上(Tg−20)℃以下である。好ましい乾燥時間は0.5〜24時間、より好ましくは1〜18時間、更に好ましくは1.5〜12時間である。これらの範囲よりも低いと乾燥度が低いか、または乾燥時間がかかり過ぎることがある。また乾燥する材料にTgが存在するときには、Tgよりも高い乾燥温度に加熱すると、材料が融着して取り扱いが困難になることがある。
乾燥工程は2段階以上に分離してもよく、例えば、予備乾燥工程による材料の保管と、溶融製膜する直前〜1週間前の間に行う直前乾燥工程を介して溶融製膜してもよい。
(添加剤)
本発明の光学フィルムは、添加剤としては有機酸と3価以上のアルコールが縮合した構造を有するエステル系可塑剤、多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の少なくとも1種の可塑剤、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤から選択される少なくとも1種の安定剤を含んでいることが好ましく、更にこの他に過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、マット剤、染料、顔料、更には前記以外の可塑剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤以外の酸化防止剤などを含んでも構わない。
フィルム組成物の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種起因の分解反応を抑制または禁止する等、解明できていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために、また透湿性、易滑性といった機能を付与するために添加剤を用いる。
一方、フィルム組成物を加熱溶融すると分解反応が著しくなり、この分解反応によって着色や分子量低下に由来した該構成材料の強度劣化を伴うことがある。またフィルム組成物の分解反応によって、好ましくない揮発成分の発生も併発することもある。
フィルム組成物を加熱溶融するとき、上述の添加剤が存在することは材料の劣化や分解に基づく強度の劣化を抑制すること、または材料固有の強度を維持できる観点で優れており、本発明の光学フィルムを製造できる観点から、上述の添加剤が存在することが必要である。
また、上述の添加剤の存在は加熱溶融時において可視光領域の着色物の生成を抑制すること、または揮発成分がフィルム中に混入することによって生じる透過率やヘイズ値といった光学フィルムとして好ましくない性能を抑制または消滅できる点で優れている。
本発明において液晶表示画像の表示画像は、本発明の構成で光学フィルムを用いるとき1%を超えると影響を与えるため、好ましくはヘイズ値は1%未満、より好ましくは0.5%未満である。
フィルム製造時、リターデーションを付与する工程において、該フィルム組成物の強度の劣化を抑制すること、または材料固有の強度を維持できることにある。フィルム組成物が著しい劣化によって脆くなると、該延伸工程において破断が生じやすくなり、リターデーション値の制御ができなくなることがあるためである。
上述のフィルム組成物の保存あるいは製膜工程において、空気中の酸素による劣化反応が併発することがある。この場合、上記添加剤の安定化作用と共に空気中の酸素濃度を低減させる効果を用いることも、本発明を具現化する上で好ましい。これは、公知の技術として不活性ガスとして窒素やアルゴンの使用、減圧〜真空による脱気操作、及び密閉環境下による操作が挙げられ、これら3者の内少なくとも1つの方法を上記添加剤と併用することが好ましい。フィルム組成物が空気中の酸素と接触する確率を低減することにより、該材料の劣化が抑制でき、本発明の目的のためには好ましい。
本発明の光学フィルムは偏光板保護フィルムとして活用するため、本発明の偏光板及び偏光板を構成する偏光子に対して経時保存性を向上させる観点から、フィルム組成物中に上述の添加剤が存在することが好ましい。
本発明の偏光板を用いた液晶表示装置は、本発明の光学フィルムに上述の添加剤が存在することにより、上記変質や劣化が抑制されて光学フィルムの経時保存性が向上できると共に、光学フィルムに付与された光学的な補償設計が長期に亘って安定化し、液晶表示装置の表示品質が向上する。
(可塑剤)
本発明の光学フィルムは、可塑剤として、下記一般式(1)で表される有機酸と3価以上のアルコールが縮合した構造を有するエステル化合物を可塑剤として1〜25質量%含有することが好ましい。1質量%よりも少ないと可塑剤を添加する効果が認められず、25質量%よりも多いとブリードアウトが発生しやすくなり、フィルムの経時安定性が低下するために好ましくない。より好ましくは上記可塑剤を3〜20質量%含有する光学フィルムであり、更に好ましくは5〜15質量%含有する光学フィルムである。
可塑剤とは、一般的には高分子中に添加することによって脆弱性を改良したり、柔軟性を付与したりする効果のある添加剤であるが、本発明においては、セルロースエステル単独での溶融温度よりも溶融温度を低下させるため、また同じ加熱温度においてセルロース樹脂単独よりも可塑剤を含むフィルム組成物の溶融粘度を低下させるために、可塑剤を添加する。また、セルロースエステルの親水性を改善し、光学フィルムの透湿度改善するためにも添加されるため、透湿防止剤としての機能を有する。
ここで、フィルム組成物の溶融温度とは該材料が加熱され流動性が発現された状態の温度を意味する。セルロースエステルを溶融流動させるためには、少なくともガラス転移温度よりも高い温度に加熱する必要がある。ガラス転移温度以上においては、熱量の吸収により弾性率あるいは粘度が低下し、流動性が発現される。しかし、セルロースエステルでは高温下では、溶融と同時に熱分解によってセルロースエステルの分子量の低下が発生し、得られるフィルムの力学特性等に悪影響を及ぼすことがあるため、なるべく低い温度でセルロースエステルを溶融させる必要がある。フィルム組成物の溶融温度を低下させるためには、セルロースエステルのガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつ可塑剤を添加することで達成することができる。
本発明に用いられる、前記一般式(1)で表される有機酸と多価アルコールが縮合した構造を有する多価アルコールエステル系可塑剤は、セルロースエステルの溶融温度を低下させ、溶融製膜プロセスや製造後にも揮発性が小さく工程適性が良好であり、且つ得られる光学フィルムの光学特性・寸法安定性・平面性が良好となる点で優れている。
前記一般式(1)において、R1〜R5は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらは更に置換基を有していてよく、R1〜R5のうち少なくともいずれかは1つは水素原子ではない。Lは2価の連結基を表し、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表す。
R1〜R5で表されるシクロアルキル基としては、同様に炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、具体的にはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の基である。これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、フェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8のアシル基、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のカルボニルオキシ基等が挙げられる。
R1〜R5で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、γ−フェニルプロピル基等の基を表し、またこれらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5で表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、もしくはt−ブトキシ等の各アルコキシ基である。また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)、アルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい))、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基が、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられる。
R1〜R5で表されるシクロアルコキシ基としては、無置換のシクロアルコキシ基としては炭素数1〜8のシクロアルコキシ基基が挙げられ、具体的にはシクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等の基が挙げられる。また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基が挙げられるが、このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等前記シクロアルキル基に置換してもよい基として挙げられた置換基で置換されていてもよい。
R1〜R5で表されるアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられ、これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5で表されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8の無置換のアシル基が挙げられ(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
R1〜R5で表されるカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられるが、これらの基は更に前記シクロアルキル基に置換してもよい基と同様の基により置換されていてもよい。
R1〜R5で表されるオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、またフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基を表す。これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。また、R1〜R5で表されるオキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシカルボニルオキシ基を表し、これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
また、これらR1〜R5のうち、少なくともいずれかは1つは水素原子ではない。なおR1〜R5のうちのいずれか同士で互いに連結し、環構造を形成していてもよい。
また、Lで表される連結基としては、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表すが、アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基等の基であり、これらの基は、更に前記のR1〜R5で表される基に置換してもよい基として挙げられた基で置換されていてもよい。中でも、Lで表される連結基として特に好ましいのは直接結合であり芳香族カルボン酸である。
また、これら本発明において可塑剤となるエステル化合物を構成する、前記一般式(1)で表される有機酸としては、少なくともR1またはR2に前記アルコキシ基、アシル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニルオキシ基を有するものが好ましい。また複数の置換基を有する化合物も好ましい。
なお、本発明においては、3価以上のアルコールの水酸基を置換する有機酸は単一種であっても複数種であってもよい。
本発明において、前記一般式(1)で表される有機酸と反応して多価アルコールエステル化合物を形成する3価以上のアルコール化合物としては、好ましくは3〜20価の脂肪族多価アルコールであり、本発明おいて3価以上のアルコールは下記の一般式(3)で表されるものが好ましい。
一般式(3) R′−(OH)m
式中、R′はm価の有機基、mは3以上の正の整数、OH基はアルコール性水酸基を表す。特に好ましいのは、mとしては3または4の多価アルコールである。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ガラクチトール、グルコース、セロビオース、イノシトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特にグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールのエステルは、公知の方法により合成できる。例えば、前記一般式(1)で表される有機酸と多価アルコールとを酸の存在下縮合させエステル化する方法、また有機酸を予め酸クロライドあるいは酸無水物としておき、多価アルコールと反応させる方法、有機酸のフェニルエステルと多価アルコールを反応させる方法等があり、目的とするエステル化合物により、適宜、収率のよい方法を選択することが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールのエステルからなる可塑剤としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
前記一般式(2)において、R6〜R20は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらは更に置換基を有していてよい。R6〜R10のうち、少なくともいずれか1つは水素原子ではなく、R11〜R15のうち、少なくともいずれか1つは水素原子ではなく、R16〜R20のうち、少なくともいずれか1つは水素原子ではない。また、R21はアルキル基を表す。
R6〜R21のシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基については、前記R1〜R5と同様の基が挙げられる。
この様にして得られる多価アルコールエステルの分子量には特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、400〜1000であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
以下に、本発明に係る多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
本発明の光学フィルムは、他の可塑剤と併用してもよい。
本発明に好ましい可塑剤である前記一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールからなるエステル化合物は、セルロースエステルに対する相溶性が高く、高添加率で添加することができる特徴があるため、他の可塑剤や添加剤を併用してもブリードアウトを発生することがなく、必要に応じて他種の可塑剤や添加剤を容易に併用することができる。
なお、他の可塑剤を併用する際には、前記一般式(1)で表される可塑剤が可塑剤全体の少なくとも50質量%以上含有されることが好ましい。より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上含有されることが好ましい。このような範囲で用いれば、他の可塑剤との併用によっても、溶融流延時のセルロールエステルフィルムの平面性を向上させることができるという、一定の効果を得ることができる。
好ましい他の可塑剤として下記の可塑剤が挙げられる。
(多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤)
多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤はセルロースエステルと親和性が高く好ましい。
多価アルコールエステル系の一つであるエチレングリコールエステル系の可塑剤:具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。
これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造がポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
多価アルコールエステル系の一つであるグリセリンエステル系の可塑剤:具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造がポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
その他の多価アルコールエステル系の可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更に多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
上記多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤の中では、アルキル多価アルコールアリールエステルが好ましく、具体的には上記のエチレングリコールジベンゾエート、グリセリントリベンゾエート、ジグリセリンテトラベンゾエート、特開2003−12823号公報の段落32記載例示化合物16が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系の一つであるジカルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、ジドデシルマロネート(C1)、ジオクチルアジペート(C4)、ジブチルセバケート(C8)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。
これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。また、フタル酸エステルの部分構造がポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
その他の多価カルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的にはトリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルトキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。
これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また1置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造がポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
上記多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の中では、ジアルキルカルボン酸アルキルエステルが好ましく、具体的には上記のジオクチルアジペート、トリデシルトリカルバレートが挙げられる。
(その他の可塑剤)
本発明に用いられるその他の可塑剤としては、更にリン酸エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。
リン酸エステル系の可塑剤:具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等のリン酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等のリン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
また、エチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
更に、リン酸エステルの部分構造がポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
ポリマー可塑剤:具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は1,000〜500,000程度が好ましく、特に好ましくは5000〜200000である。1000以下では揮発性に問題が生じ、500000を超えると可塑化能力が低下し、セルロースエステルフィルムの機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよい。
なお、本発明の光学フィルムは着色すると光学用途として影響を与えるため、好ましくは黄色度(イエローインデックス、YI)が3.0以下、より好ましくは1.0以下である。黄色度はJIS−K7103に基づいて測定することができる。
可塑剤は前述のセルロースエステル同様に製造時から持ち越される、あるいは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去することが好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸、及び水としては0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロース樹脂を溶融製膜する上で熱劣化を抑制でき、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
(酸化防止剤)
セルロースエステルは、溶融製膜が行われるような高温環境下では熱だけでなく酸素によっても分解が促進されるため、本発明の光学フィルムにおいては、安定化剤として酸化防止剤を含有することが好ましい。
また本発明において、セルロースエステルの貧溶媒による懸濁洗浄時に酸化防止剤存在下で洗浄することも好ましい。使用される酸化防止剤はセルロースエステルに発生したラジカルを不活性化する、あるいはセルロースエステルに発生したラジカルに酸素が付加したことが起因のセルロースエステルの劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができる。
セルロースエステルの懸濁洗浄に使用する酸化防止剤は、洗浄後セルロースエステル中に残存していてもよい。残存量は0.01〜2000ppmが良く、より好ましくは0.05〜1000ppmである。更に好ましくは0.1〜100ppmである。
本発明において有用な酸化防止剤としては、酸素による溶融成形材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることができるが、中でも有用な酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でも、特にフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が好ましい。これらの化合物を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、溶融成型時の熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
フェノール系化合物は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されており、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物のうち好ましい化合物として、下記一般式(A)で表される化合物が好ましい。
式中、R11、R12、R13、R14及びR15は置換基を表す。置換基としては、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えば、エチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えば、ピリジン−オキシド基)、イミド基(例えば、フタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えば、ベンゼンジスルフィド基、ベンゾチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、カルボキシル基、スルホ基、ヘテロ環基(例えば、ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
また、R11は水素原子、R12、R16はt−ブチル基であるフェノール系化合物が好ましい。フェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのフェノール化合物は、例えば、Ciba Specialty ChemicalsからIrganox1076、Irganox1010という商品名で市販されている。
本発明に係るヒンダードアミン系化合物としては、下記一般式(B)で表される化合物が好ましい。
式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26及びR27は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。R24は水素原子、メチル基、R27は水素原子、R22、R23、R25、R26はメチル基が好ましい。
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
また、高分子タイプの化合物でもよく、具体例としては、N,N′,N″,N′″−テトラキス[4,6−ビス〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン・N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などで、数平均分子量(Mn)が2,000〜5,000のものが好ましい。
上記タイプのヒンダードフェノール化合物は、例えば、Ciba Specialty ChemicalsからTINUVIN144、TINUVIN770、旭電化工業株式会社からADK STAB LA−52という商品名で市販されている。
本発明に係るリン系化合物としては、下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)、(C−5)で表される部分構造を分子内に有する化合物が好ましい。
式中、Ph1及びPh′1は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。より好ましくはPh1及びPh′1はフェニレン基を表し、該フェニレン基の水素原子はフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph1及びPh′1は互いに同一でもよく、異なってもよい。Xは単結合、イオウ原子または−CHR6−基を表す。R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。また、これらは前記一般式(A)記載と同義の置換基により置換されてもよい。
式中、Ph2及びPh′2は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。より好ましくはPh2及びPh′2はフェニル基またはビフェニル基を表し、該フェニル基またはビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph2及びPh′2は互いに同一でもよく、異なってもよい。また、これらは前記一般式(A)記載と同義の置換基により置換されてもよい。
式中、Ph3は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。より好ましくはPh3はフェニル基またはビフェニル基を表し、該フェニル基またはビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。また、これらは前記一般式(A)記載と同義の置換基により置換されてもよい。
式中、Ph4は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。より好ましくは、Ph4は炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基を表し、該アルキル基またはフェニル基の水素原子は、前記一般式(A)記載と同義の置換基により置換されてもよい。
式中、Ph5、Ph′5及びPh″5は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。より好ましくは、Ph5、Ph′5及びPh″5は炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基を表し、該アルキル基またはフェニル基の水素原子は前記一般式(A)記載と同義の置換基により置換されてもよい。
リン系化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン、トリデシルホスファイトなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物;トリフェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイトなどのホスホナイト系化合物;トリフェニルホスフィナイト、2,6−ジメチルフェニルジフェニルホスフィナイトなどのホスフィナイト系化合物;トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィンなどのホスフィン系化合物;などが挙げられる。
上記タイプのリン系化合物は、例えば、住友化学工業株式会社からSumilizerGP、旭電化工業株式会社からADK STAB PEP−24G、ADK STAB PEP−36、ADK STAB 3010、Ciba Specialty ChemicalsからIRGAFOS P−EPQという商品名で市販されている。
本発明に係るイオウ系化合物としては、下記一般式(D)で表される化合物が好ましい。
式中、R31及びR32は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。R31及びR32はアルキル基が好ましい。
イオウ系化合物の具体例としては、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。上記タイプのイオウ系化合物は、例えば、住友化学工業株式会社からSumilezer TPL−R、Sumilezer TP−Dという商品名で市販されている。
酸化防止剤は前述のセルロース樹脂同様に製造時から持ち越される、あるいは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去することが好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸、及び水としては0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロース樹脂を溶融製膜する上で熱劣化を抑制でき、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
(酸掃去剤)
酸掃去剤とは製造時から持ち込まれるセルロースエステル中に残留する酸(プロトン酸)をトラップする役割を担う剤である。また、セルロースエステルを溶融するとポリマー中の水分と熱により側鎖の加水分解が促進し、CAPならば酢酸やプロピオン酸が生成する。酸と化学的に結合できればよく、エポキシ、3級アミン、エーテル構造等を有する化合物が挙げられるが、これに限定されるものでない。
具体的には、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸掃去剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸掃去剤としてのエポキシ化合物は、当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、及び下記一般式(4)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
式中、nは0〜12である。用いることができる更に可能な酸掃去剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
酸掃去剤は、前述のセルロース樹脂同様に製造時から持ち越される、あるいは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去することが好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸、及び水としては0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロース樹脂を溶融製膜する上で熱劣化を抑制でき、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。なお、酸掃去剤は酸捕捉剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることができる。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、紫外線吸収剤の構造は、紫外線吸収能を有する部位が一分子中に複数存在している二量体、三量体、四量体等の多量体でもよく、特開平10−182621号公報、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、市販品としてTINUVIN109、TINUVIN171、TINUVIN360(いずれもCiba Specialty Chemicals製)を用いることもできる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、紫外線吸収剤は0.1〜20質量%添加することが好ましく、更に0.5〜10質量%添加することが好ましく、更に1〜5質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
(粘度低下剤)
本発明において、溶融粘度を低減する目的として水素結合性溶媒を添加することができる。水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることができるような有機溶媒、即ち結合モーメントが大きく、且つ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列できるような有機溶媒をいう。これらはセルロース樹脂の分子間水素結合よりもセルロースとの間で強い水素結合を形成する能力を有するもので、本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロース樹脂単独のガラス転移温度よりも、水素結合性溶媒の添加によりセルロース樹脂組成物の溶融温度を低下することができる、または同じ溶融温度においてセルロース樹脂よりも水素結合性溶媒を含むセルロース樹脂組成物の溶融粘度を低下することができる。
水素結合性溶媒としては、例えば、アルコール類:例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、グリセリン等、ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン等、カルボン酸類:例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等、エーテル類:例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等、ピロリドン類:例えば、N−メチルピロリドン等、アミン類:例えば、トリメチルアミン、ピリジン等、等を例示することができる。これら水素結合性溶媒は、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
これらのうちでも、アルコール、ケトン、エーテル類が好ましく、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、オクタノール、ドデカノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランが好ましい。更に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランのような水溶性溶媒が特に好ましい。ここで水溶性とは、水100gに対する溶解度が10g以上のものをいう。
(リターデーション制御剤)
本発明の光学フィルムにおいて配向膜を形成して液晶層を設け、光学フィルムと液晶層由来のリターデーションを複合化して光学補償能を付与した偏光板加工を行ってもよい。リターデーションを制御するために添加する化合物は、欧州特許第911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物をリターデーション制御剤として使用することもできる。また、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に不飽和ヘテロ環である。中でも、1,3,5−トリアジン環を有する化合物が特に好ましい。
(マット剤)
本発明の光学フィルムには、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することができ、微粒子としては無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることができる。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低くできるので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の二次粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の二次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子は光学フィルム中では、光学フィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させるために好ましく用いられる。微粒子のセルロースエステル中の含有量は、セルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
上記マット剤として用いられるフィルム中の微粒子の存在は、別の目的としてフィルムの強度向上のために用いることもできる。また、フィルム中の上記微粒子の存在は、本発明の光学フィルムを構成するセルロースエステル自身の配向性を向上することも可能である。
(高分子材料)
本発明の光学フィルムは、セルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーを適宜選択して混合してもよい。前述の高分子材料やオリゴマーはセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。この場合は、上述のその他添加剤として含むことができる。
(溶融流延製膜)
本発明の光学フィルムは、本発明のセルロースエステル及び添加剤の組成物を熱風乾燥または真空乾燥した後、溶融押出し、T型ダイよりフィルム状に押出して、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。冷却ドラムの温度は90〜150℃に維持されていることが好ましい。
溶融押出しは、一軸押出し機、二軸押出し機、更に二軸押出し機の下流に一軸押出し機を連結して用いてもよいが、得られるフィルムの機械特性、光学特性の点から、一軸押出し機を用いることが好ましい。更に原料タンク、原料の投入部、押出し機内といった原料の供給、溶融工程を窒素ガス等の不活性ガスで置換、あるいは減圧することが好ましい。
本発明に係る前記溶融押出し時の温度は、150〜250℃の範囲であることが好ましく、更には200〜240℃の範囲であることが好ましい。
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして偏光板を作製した場合、該光学フィルムは、幅手方向もしくは製膜方向に延伸されたフィルムであることが特に好ましい。
前述の冷却ドラムから剥離され、得られた未延伸フィルムを複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介して、セルロースエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段または多段縦延伸することが好ましい。次に、上記のようにして得られた縦方向に延伸された光学フィルムをTg〜Tg−20℃の温度範囲内で横延伸し、次いで熱固定することが好ましい。
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると、幅方向の物性の分布が低減でき好ましい。更に横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると、幅方向の物性の分布が更に低減でき好ましい。
熱固定はその最終横延伸温度より高温でTg−20℃以下の温度範囲内で、通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/または縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。
また、冷却は最終熱固定温度からTgまでを毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことが、フィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。なお、冷却速度は最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するセルロースエステルにより異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
(延伸操作、屈折率制御)
本発明の光学フィルムは、前記延伸操作により屈折率制御を行うことができる。延伸操作としては、セルロースエステルの1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで好ましい範囲の屈折率に制御することができる。
例えば、フィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に延伸することができる。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
例えば、溶融して流延した方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、フィルムの厚み方向の屈折率が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制あるいは、幅方向にも延伸することで改善できる。幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これはテンター法を用いた場合に見られることがあるが、幅方向に延伸したことでフィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、所謂ボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、該流延方向に延伸することでボーイング現象を抑制でき、幅手の位相差の分布を少なく改善できるのである。
更に、互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。光学フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
光学フィルム支持体の膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。膜厚変動を小さくする目的で、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
応力に対して、正の複屈折を得るセルロースエステルを用いる場合、幅方向に延伸することで光学フィルムの遅相軸が幅方向に付与することができる。この場合、本発明において、表示品質の向上のためには、光学フィルムの遅相軸が、幅方向にあるほうが好ましく、(幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)を満たすことが必要である。
フィルムを延伸する方法には特に限定はなく、例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。勿論これ等の方法は組み合わせて用いてもよい。また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとした場合、該保護フィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に20μm以上、更に35μm以上が好ましい。また、150μm以下、更に120μm以下が好ましい。特に好ましくは25〜80μmが好ましい。上記領域よりも光学フィルムが厚いと偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的には適さない。一方、上記領域よりも薄いとリターデーションの発現が困難となること、フィルムの透湿性が高くなり偏光子に対して湿度から保護する能力が低下してしまう。
本発明の光学フィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
(機能性層)
本発明の光学フィルムの製造に際し、延伸の前及び/または後で帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、易滑性層、易接着層、防眩層、バリアー層、光学補償層等の機能性層を塗設してもよい。特に、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選ばれる少なくとも1層を設けることが好ましい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
製膜工程において、カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として、または異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロース樹脂を含む組成物を共押出しして、積層構造の光学フィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成の光学フィルムを作ることができる。例えば、マット剤はスキン層に多く、またはスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることができ、コア層のみに入れてもよい。また、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。スキン層とコア層のTgが異なっていてもよく、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。また、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよい。
(寸法安定性)
本発明の光学フィルムは、寸度安定性が23℃55%RHに24時間放置したフィルムの寸法を基準としたとき、80℃90%RHにおける寸法の変動値が±1.0%未満であることが好ましく、更に好ましくは0.5%未満であり、特に好ましくは0.1%未満である。
本発明の光学フィルムを偏光板の保護フィルムとして用いた場合、光学フィルム自身が上記の範囲内の寸法変動であれば、偏光板としてのリターデーションの絶対値と配向角が当初の設定を維持できるため、表示品質を経時で長期間維持でき好ましい。
(フィルム中の揮発成分)
フィルム組成物中に添加剤が存在すると、セルロースエステル、可塑剤、酸化防止剤、その他必要に応じて添加する紫外線吸収剤やマット剤、リターデーション制御剤等、フィルムを構成する材料の少なくとも1種に対して、変質や分解による揮発成分の発生を抑制または防止できる。また、添加剤自身もフィルム組成物の溶融温度領域において、揮発成分を発生しないことが求められる。
フィルム組成物が溶融されるときの揮発成分の含有量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下のものであることが望ましい。本発明においては、示差熱質量測定装置(セイコー電子工業社製TG/DTA200)を用いて、30℃から350℃までの加熱減量を求め、その量を揮発成分の含有量とする。
(偏光板)
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の光学フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には該フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UX−RHA−N、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜はポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜はポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明の光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは、完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
(液晶表示装置)
本発明の光学フィルムが用いられた偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。本発明の光学フィルムは、反射型、透過型、半透過型LCDあるいはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜けなどもなく、その効果が長期間維持され、MVA型液晶表示装置では顕著な効果が認められる。特に色むら、ぎらつきや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。