JP4852325B2 - スラリーの乾燥方法および乾燥装置 - Google Patents
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Description
その対策として、特許文献1には、乾燥前に、スラリーの粘度を上げる増粘工程を設けることも提案されているが、一工程が増えてしまう。
従って、従来から、通風乾燥時には、図3に示すように、基体31を網状体33上に載置して、下方から上方に向かう空気流中に基体31を位置させることにより全てのセルに確実に空気を流入させて、セルの目詰まりの発生を極力阻止していた。
そうすると、乾燥が基体31の外周側から進むことになり、中央部分のセルの内壁に施されたスラリーまで十分に乾燥しようとすると、外周側のセルの内壁に施されたスラリー中のバインダーが外周側へ濃縮されて濃度が内側より高くなる。
次の焼成時にはバインダーは酸化分解するので、バインダー濃度が過剰に高くなると、そのバインダーが接触する基体部分が溶解されてヘアクラック(割れ)が発生し易くなる。
(1)スラリー中のバインダーの濃縮を抑制し、結果としてヘアクラックの発生を有意的に抑制できること、
(2)外周側のセルの詰まりは、空気などの乾燥ガス流の流速と温度を一定以上に調整することにより回避できること、
ことを見出し、さらに、そのスラリーの乾燥方法を実施できる装置を具現化することに成功した。
なお、本発明は、その本旨から、排気ガス浄化用触媒担体にのみ適用されるものではなく、構造体にスラリーを施すもの一般に適用可能であることは明らかである。
先ず、この実施の形態に係る被乾燥物を説明する。
被乾燥物の構造体は、排気ガス浄化用触媒のハニカム型担体の基体1である。この基体1は円柱形をしており、その中には両端面に連通するガス通路としてのセル3が複数形成されている。そして、各セル3中には水性スラリーが含浸されている。スラリーにはこの分野で慣用的な種類の耐熱性微粒子とバインダーが含まれている。
符号7は乾燥ガスとしての熱風の導出管路を示し、この導出管路7の一端部にはブロア9が接続され、他端部には吹出部11が接続されている。吹出部11は開口12が上方を向くように備えられている。
符号13はトレイを示し、このトレイ13には凹部15が形成されており、この凹部15は基体1の一端面側が僅かな隙間をあけて嵌まり込む寸法に設定されている。凹部15の底面17には円形の通風穴19が形成されており、この通風穴19は基体1の一端面より僅かに小さい寸法に設定されている。トレイ13は吹出部11に設置されており、トレイ13の通風穴19は吹出部11の開口12に対向している。
符号21はマイクロ波発生器を示し、このマイクロ波発生器21はトレイ13の上方に備えられている。
以下の説明の便宜のために、基体1の外周側を通風穴19より外側の部分に対向する部分、内側を通風穴19に対向する部分と定義する。
基体1の一端面の径(s):通風穴19の径(p)=100:92〜98に設定することが好ましい。92未満に設定すると、空気の流速や温度を調整しても外周側の乾燥が不足して外周側にセル詰まりが発生し易くなり、98超に設定すると、基体1の一端面とトレイ13の凹部15の底面17との接触面積が小さくなり過ぎて、遮蔽効果が不十分になるからである。但し、この上限は、あくまでもこの実施の形態に示すように基体1をトレイ13に載置して基体1の自重を利用して基体1の外壁2と吹出部11との間を遮蔽したものに適用されるものである。
先ず、基体1をトレイ13の凹部15に嵌めて、基体1の一端面の縁部4を凹部15の底面17に支持させる。支持時には、縁部4を除く部分が通風穴19に対向し、しかも基体1の軸心は通風穴19の軸心と一致している。
乾燥装置5を作動させると、熱風が導出管路7を通過して吹出部11の開口12から通風穴19を通って、基体1の一端面に向かう。そして、基体1の内部のセル3を流通して上方に抜ける。熱風はセル3を流通する際にセル3の内壁に施されたスラリーの表層の水分をトラップして上方に抜けるので、スラリーが乾燥される。
吹出部11と基体1の外壁2との間はトレイ13によって遮蔽されており、連通していないので、吹出部13から送出された熱風は全て基体1のセル3に流入する。
マイクロ波が照射されるとスラリーの内部の水分を蒸発させるので、スラリーが乾燥される。
上記したように、熱風送風とマイクロ波照射を併用して、スラリーの表層及び内部から同時に水分を除去することで、乾燥を効率良く進行できる。
また、基体1の下端面側は上端面よりバインダー濃度が高くなるので基体1の長さ方向、即ちセル3中の風の流れ方向にバインダーの濃度勾配が形成されるが、マイクロ波照射を併用することでバインダーの濃度勾配を小さく調整できる。従って、下端面側に比べてヘアクラックの発生し易い上端面側においてもヘアクラックを一切発生させることなく、セル詰まりの発生を防止することができる。
なお、スラリーの乾燥度合いに応じて、熱風乾燥とマイクロ波照射のいずれかのみを実施することは勿論可能である。
先ず、最終的な乾燥度は、60〜100%とすることが好ましい。60%未満になると乾燥が不十分で次の焼成時に基体1にセル詰まりが発生し易い。より好ましい乾燥度は80%前後である。
なお、上記の乾燥度は基体1全体から算出したものであり、内側と外周側とに分ければ、乾燥度は空気が直接当たる内側の方が外周側より高い。
溶媒として水を使用したスラリーでは、熱風の温度は40℃以上に調整することが好ましい。40℃未満になると乾燥速度が遅くなる。
また、溶媒の種類に応じてその沸点以下に調整することが好ましい。沸騰するとスラリーが流動して隆起してしまい、却ってセル詰まりが発生し易くなるからである。従って、この実施の形態のように、水性スラリーを使用した場合には、95℃以下に調整することが好ましい。
なお、この実施の形態のように300gの基体1をトレイ13に載置した場合には、5m/s以下に調整することが好ましい。5m/s超になると、基体1が転倒し易くなるからである。
例えば、上記の実施の形態に係る乾燥装置5では、基体1の下方から熱風を送出する構成になっているが、上方から送出する構成にすることも可能である。
また、通風穴19の形状は基体の形状に対応するので、円形に限らず、長円形などの場合もある。
また、スラリー中には、触媒成分も含まれていてもよい。
乾燥をスラリーの内部から進行させるために、高周波加熱手段を、マイクロ波発生器に代えて利用しても、或いは併用してもよい。
先ず、使用した基体1とスラリーは以下の通りであった。
(1)ハニカム型基体
素材:コージエライト
直径:103mm、 長さ:130mm、重量:700g(乾燥前の段階で)
セル数:900セル/in2、 セルピッチ:0.85mm
(2)スラリー
各成分の配合:
担体微粒子:アルミナ(平均粒径:5.5μm、50重量%)、
無機バインダー: 硝酸アルミニウム+アルミナ水和物(5重量%)
水(残部)
その後、基体を同数ずつ3グループに分け、各グループの基体を以下の3つの異なる条件で、乾燥率が80%になるまで乾燥させた。なお、室温など記載が省略されている条件は全て同じである。
条件1:図1、図2の装置を使用、s:p=1:0.96
セル内への熱風の流入速度:4m/s、温度:90℃
マイクロ波照射無し
条件2:マイクロ照射有り:1.6kW
その他の条件は条件1と同じ
条件3:図3の装置を使用、
セル内への熱風の流入速度:1m/s、温度:90℃
その後に、450℃以上で焼成して処理を終了した。得られたコート層の厚さは、いずれも、195g/Lであった。
乾燥後に、基体の外周部に位置するセル中のバインダー濃度を測定した。なおバインダー濃度は、図2に示すように基体1を上中下3つに分けて測定した。バインダーは上方より下方が濃縮されるからである。
また、焼成後のヘアクラックの発生率も目視で測定した。
さらに、セルの目詰まり数も数えた。
結果は以下の表に示す通りであった。
3‥‥セル 4‥‥縁部
5‥‥スラリーの乾燥装置
7‥‥導出管路 9‥‥ブロア
11‥‥吹出部 12‥‥開口
13‥‥トレイ 15‥‥凹部
17‥‥底面 19‥‥通風穴
21‥‥マイクロ波発生器
Claims (5)
- 構造体の両端面を貫通する通路に施された、バインダーを含むスラリーを乾燥する装置において、
前記通路に調整された温度の乾燥ガスを調整された流速で送出する乾燥ガス送出手段と、
前記乾燥ガス送出手段から送出された乾燥ガスが前記構造体の外壁に直接当たるのを防止する遮蔽手段と、
を備え、前記遮蔽手段は、構造体の一端面と乾燥ガス送出手段との間に設けられ、前記一端面より小さい通風穴が形成された遮蔽体によって構成されている
ことを特徴とするスラリーの乾燥装置。 - 請求項1に記載したスラリーの乾燥装置において、遮蔽体は構造体を載せるトレイによって構成されていることを特徴とするスラリーの乾燥装置。
- 請求項1または2に記載したスラリーの乾燥装置において、構造体の一端面の径:通風穴の径=100:92〜98であり、前記構造体の軸心と前記通風穴の軸心とが一致していることを特徴とするスラリーの乾燥装置。
- 請求項1から3のいずれかに記載したスラリーの乾燥装置において、さらに、マイクロ波加熱手段及び/又は高周波加熱手段を備えることを特徴とするスラリーの乾燥装置。
- 請求項1から4のいずれかに記載したスラリーの乾燥装置において、構造体は排気ガス浄化用触媒担体の基体であることを特徴とするスラリーの乾燥装置。
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