JP4851955B2 - ドラム式洗濯機 - Google Patents

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Description

本発明は、有底円筒形に形成された回転ドラムを、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸方向が水平または水平方向から下向き傾斜となるようにして水槽内に設置し、回転ドラムを回転駆動することにより回転ドラム内に収容した洗濯物を洗濯するドラム式洗濯機に関するものである。
このようなドラム式洗濯機は本発明の実施の形態を示す図1を参照して、筐体1内にサスペンション構造によって支持された水槽2内に、多数の孔3が形成された回転ドラム4が配設され、回転ドラム4はモータ5によって回転駆動され、筐体1の正面側に開閉自在に設けられた扉6を開くことにより水槽2の正面開口部および回転ドラム4の正面開口部を通して洗濯物を回転ドラム4内から出し入れできるように構成されている。
従来の通常洗濯モードでは、扉6を開いて回転ドラム4内に洗濯物を投入し、洗剤の投入を伴い運転を開始させると、水槽2内には給水系7から給水がなされ、給水された水は孔3を通じて回転ドラム4内にも所要量の水が給水される。モータ5により回転ドラム4が所定回転速度で回転駆動されると、回転ドラム4内に収容された洗濯物は回転ドラム4の内周面に設けられた攪拌突起8に引っ掛けられて回転方向に持ち上げられ、適当な高さから落下することにより、洗濯物には叩き洗いの作用が加えられることにより洗濯がなされる。この洗濯工程の後、汚れた洗濯水は排水系11により排水され、新たに給水された水を用いてすすぎ工程が実施され、すすぎ工程が終了すると回転ドラム4を高速回転させて脱水工程が実施される。これらの工程は所定の制御手順に基づいて自動実行される。なお、図1に示すように送風機12により水槽2および回転ドラム4内の空気を吸引して除湿および加熱を順次に行い乾いた高温空気として水槽2および回転ドラム4内に送風することを繰り返す乾燥系13を装備したドラム式洗濯乾燥機といわれるドラム式洗濯機では、前記脱水工程後に乾燥工程も自動実行される。
ところで、開口側から底部側に向けて回転軸方向が水平または水平方向から下向き傾斜となるように配置された回転ドラムにより洗濯を行うと、洗濯物の出し入れは容易であるが、洗濯物を十分に持ち上げて落し叩き洗いする作用が弱く、傾斜した回転ドラムでは回転軸方向でも低い位置に洗濯物が集まる傾向も手伝って特に弱くなることが既に知見され(例えば、特許文献1参照。)、これを解決する技術として特許文献1では、回転ドラムの回転によって持ち上げられた洗濯物が自重が勝る高さ位置から落下する挙動を示す第1の所定回転速度で回転ドラムを第1の所定の時間回転駆動した後、回転ドラムの回転駆動を所定時間停止させることで、低い位置に集まろうとする洗濯物の位置を入れ換える技術、また、このような回転駆動を正逆方向に交互に行い洗濯物に捩れが発生するのを図9(a)に脱水工程後の状態で示すような捩れ、絡み状態を図9(b)に脱水工程後の状態で示すように抑制し、洗濯物を取り出す際の作業力を幾分低減できる技術、さらに、回転ドラムの直径が500±50mmであるとき、第1の所定回転速度を30±5rpmとして、水平配置の場合の通常速度よりも高めて洗濯物を十分に持ち上げた後での落下により叩き洗い効果を高める技術を開示している。なお、第1の所定時間は13秒、4分などと例示されており前記回転速度との関係から連続回転である。
特開2005−124764号公報
しかし、特許文献1に記載の技術は、回転ドラムの回転速度を水平設置の場合よりも高くしているものの、持ち上げた洗濯物を自然落下させる範疇にしかないため、洗濯物の種類によっては持ち上げ位置の不足、叩き洗い効果の不足を招きかねない。また、正逆回転を交互に行うものの正連続回転と逆連続回転とを交互に行うもので、連続回転中に洗濯物が捩れたり絡んだりするので、連続回転の正回転駆動と逆回転駆動との間に停止期間があっても図9(b)に示す程度に絡みは解消されるが、捩れの抑制はまだ十分でないし、洗濯後も回転ドラムの内面に貼り付いたままになっていて洗濯物を取り出すのに他方向からの剥がし作業が必要となってなお作業は手間である上、洗濯物の皺は余り解消されないので洗濯後に皺を取る作業にも手間が掛かる。
本発明の目的は、絡み、捩れの発生を大きく改善し、機械力の働きを無理なく高めながら皺も生じ難いドラム式洗濯機を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明に係るドラム式洗濯機は、有底円筒形に形成されモータにより回転駆動される回転ドラムを、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸方向が水平または水平方向から下向き傾斜となるようにして水槽内に設置し、前記モータ等を制御して洗濯、すすぎ、脱水等の各工程を実行する制御装置を有するドラム式洗濯機であって、
前記制御装置は、洗濯工程およびすすぎ工程の少なくとも一方において、前記モータの急駆動、急制動を正逆交互に繰り返し行うことで、前記回転ドラムの急弧回転による遠心力にて洗濯物を前記回転ドラム内面に貼り付けるとともに前記洗濯物の上方部分を前記回転ドラムの最下位置から90度を超え180度未満の位置まで持ち上げた後、前記洗濯物をその慣性および自重により回転ドラム内面から剥がすとともに前記回転ドラムの下部範囲の持ち上げ側と反対の側に落下させる動作を、正逆交互に繰り返し行うような前記回転ドラムの正逆弧回転制御を行うことを1つの特徴としている。
このような特徴によれば、回転ドラムの90度を超え180度未満の急弧回転により洗濯物を最大限90度を超えて180度未満まで持ち上げられるし、洗濯物の持ち上げの最終時点ないしはその近傍で急激な制動状態が生じて洗濯物をその慣性および自重により回転ドラムから剥がしその自重により回転ドラムの左右反対の側に落下させることができるので、洗濯物が絡むことを防ぎながら解し作用を高められるし、機械力を及ぼすことができる。
また、制御装置は、第1のドラム駆動指示によるモータの駆動にて、前記モータの脱調限界を超えるとき、上限負荷を超えない第2のドラム駆動指示により前記モータを駆動することを特徴とすることにより、その時々で駆動負荷に違いがあっても、洗濯物に対する持ち上げ、剥がしの挙動を設定通りに得られる。
また、制御装置は、経過時間または洗濯物の量により、回転ドラムの駆動を変更することを特徴とすることにより、洗濯の進行による洗濯条件の変化または洗濯物の量による駆動負荷の違いに対応した洗濯物に最適な回転ドラムの駆動ができる。
さらに、制御装置は、前記回転ドラムの回転方向の正逆切り換えのための停止または反転、前記回転ドラム内面に貼り付いた洗濯物が落下するまでに行うことを特徴とすることにより、洗濯物の落下位置が弧回転方向の持ち上げ側から左右反対の側に移った落下位置を確保して反転した弧回転による持ち上げが行えるので、洗濯物の持ち上げ位置、落下位置の毎回の弧回転駆動における左右交互の入れ換えをより確実に達成して洗濯物の解し作用をさらに高め、機械力をさらに満遍なく及ぼすことができる。
本発明によれば、洗濯工程およびすすぎ工程の少なくとも一方において、モータの急駆動、急制動を正逆交互に繰り返し行うことで、回転ドラムの急弧回転による遠心力にて洗濯物を回転ドラム内面に貼り付けるとともに洗濯物の上方部分を回転ドラムの最下位置から90度を超え180度未満の位置まで持ち上げた後、洗濯物をその慣性および自重により回転ドラム内面から剥がすとともに回転ドラムの下部範囲の持ち上げ側と反対の側に落下させる動作を、正逆交互に繰り返し行うような回転ドラムの正逆弧回転制御を行うことにより、洗濯物の解し作用を高めて絡みはもとより捩れや回転ドラム内面への貼り付きを防止し、洗濯物の取り出しが容易で洗濯物に皺が付くのを大幅に緩和することができる。また、洗濯物に機械力を及ぼすことができるし叩き作用のある洗濯物の落下回数を増大するので洗い効果を始めとする洗濯機が行う各工程での機能を高められる
本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯機の要部構成を示す断面図である。 図1のドラム式洗濯機の内部を見た背面図である。 図1のドラム式洗濯機のモータ取り付け部分のほぼ半部を示す断面図である。 (a)図1のドラム式洗濯機での正逆弧回転駆動モードの工程模式図、(b)洗濯物の持ち上げ位置および落下位置の左右入れ替わりを示す説明用の模式図である。 図1のドラム式洗濯機での正逆弧回転駆動モードを理想的に実現するための、回転ドラム内面への洗濯物の貼り付きと剥がしに対する回転特性の解析図である。 図1のドラム式洗濯機での正逆連続回転駆動モードと正逆弧回転駆動モードとの組み合わせパターンの1つの例を示すグラフである。 図1のドラム式洗濯機での正逆連続回転駆動モードと正逆弧回転駆動モードとの組み合わせパターンの別の例を示すグラフである。 図4〜7に示す実施例での正逆弧回転駆動モードを脱水工程後に行った後の洗濯物の2つの状態例を示す模写図である。 従来技術に係るドラム式洗濯機での脱水工程後の洗濯物の2つの状態例を示す模写図である。
以下本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯機につき図1〜図8を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載の内容を限定するものではない。
本実施の形態のドラム式洗濯機は既述した基本構成を有し、図1に示す操作パネル14からのモード設定や制御プログラムに従い、マイクロコンピュータを搭載した制御基板9などの制御装置によってモータ5、給水系7、排水系11、乾燥系13を自動制御して少なくとも洗浄工程、すすぎ工程、乾燥工程を行う機能を有している。なお、給水系7は電磁弁の開閉によって実線矢印で示すように適時に給水でき、また給水を利用して洗剤収容部の洗剤を水槽2内に適時に投入できるようになっている。排水系11は電磁弁の開閉によって洗濯工程終了時、すすぎ工程終了時など必要なときに一点鎖線矢印で示すように排水できるようになっている。乾燥系13は水槽2および回転ドラム4内の空気を送風機12によって図1、図2に示す破線矢印で示すように循環させる循環経路において、水槽2および回転ドラム4からの導入空気中の糸くずなどを捕集し除塵するフィルタ15、除塵後の導入空気を除湿する除湿部16、除湿後の空気を加熱して渇いた高温空気とする加熱部17を有し、送風機12は加熱部17の下流に配置し湿気の影響を受けにくくしている。図示例では除湿部16、加熱部17は圧縮機18により冷媒を循環されて循環空気と熱交換を行う蒸発器および凝縮器であり、空気調和機19を構成するものとしてある。しかし、これに限られることはない。
回転ドラム4は回転軸4aに水槽2上のモータ5が直結されて、水槽2と共に、開口側から底部側に向けて回転軸方向を水平方向から角度θ=20±10度に傾斜させて設置し、水平方向での設置の場合に比べ、回転ドラム4を同じ高さに設置しても開口が斜め上向きとなることで屈んだりする無理な姿勢を取らずに洗濯物を容易に出し入れできる。特に、本発明者等の経験からは傾斜角度θは20±10度とすることにより、子供(幼児を除く)から大人までの身長差があっても、車椅子利用者であっても、洗濯物の出し入れの作業が最も行い易い状態が得られる。また、回転ドラム4内に給水された水が背面側に溜まって少ない水量でも深い貯水状態が得られる利点もある。しかし、既述したように水平方向での設置の場合に比べ洗濯物が回転軸方向にも低い位置に集まりやすい傾向を示す。
このような傾向性も含め、絡み、捩れの発生を大きく改善し機械力の働きを高めながら皺も生じ難くすることを意図して、本実施の形態では、開口側から底部側に向けて回転軸方向が水平方向から下向き傾斜となるようにして設置した有底円筒形の回転ドラム4に対する制御基板9による駆動制御に関し、回転ドラム4の90度を超え180度未満の急速度での弧回転および急激な制動を行う弧回転駆動モードと、前記回転ドラムの連続回転を行う連続回転駆動モードとを備えたものとしている。従って、これら両駆動モードを必要に応じどのようにも実行することができる。
これによれば、回転ドラム4の90度を超え180度未満の急速度での弧回転および急激な制動により洗濯物を最大限90度を超えて180度未満まで持ち上げられるし、洗濯物の持ち上げの最終時段階の急激な制動により制動状態が生じて洗濯物をその慣性および自重により回転ドラム4内面から剥がしてその自重によって落すことが確実に達成できるので、洗濯物が絡むことを防ぎながら解し作用を高められるし、機械力を洗濯物に及ぼすことができるので洗浄性能を高めることができる。さらに、弧回転駆動モードの正方向の急正弧回転と逆方向の急逆弧回転とを交互に繰り返すことで正逆弧回転駆動モードとし、これによって、正逆交互の急弧回転駆動によって洗濯物の持ち上げ位置、落下位置を毎回の弧回転駆動において左右交互に入れ換えられるので、洗濯物が絡むことを防ぎながら解し作用をさらに高められるとともに、機械力を洗濯物に及ぼす回数を増やすことができるので洗浄性能を高めることができる。
また、弧回転駆動モードのみでは、洗濯物の絡み、捩れ、皺より等が軽減される一方で、洗濯物の上下方向の位置が入れ替わりにくく、洗いむらが生じやすいが、連続回転駆動モードを併用することによって、洗濯物の上下方向の位置の入れ替わりを実現することができ、すなわち、連続回転駆動モードにおける洗濯物の絡み、捩れ、皺よりを軽減するとともに、弧回転駆動モードにおける洗濯物に対する機械力付与の不均衡を軽減することで、両モードによって洗濯やすすぎ中の洗濯物に異なった2通りの挙動、具体的には弧回転駆動モードによっては洗濯物の絡み、捩れ、皺よりを軽減しつつしっかりした手もみ洗いの挙動を、連続回転駆動モードによっては洗濯物を大きく連続に動かしむらを軽減しながら洗う均一な洗い挙動を与えられる。
また、弧回転駆動モードは、急回転、急制動を行うので、モータにかかる駆動負荷が大きいが、モータにかかる駆動負荷が小さい連続回転駆動モードを併用することによって、モータにかかる駆動負荷を軽減することができる。
特に、上記の弧回転モード、特に正逆弧回転駆動モードについて、そのときの洗濯物21の動きを図4を用いて説明する。なお、この図4は、実際の洗濯物21の動きを説明するための模式図であり、特許請求の範囲の記載の内容を限定するものではない。回転ドラム4の90度を超え180度未満の急正弧回転、急逆弧回転により図4に示す洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼りつかせて図4(a)の丸付き符号2、4、6に例示する破線位置から実線位置へと最大限90度を超えて180度未満まで持ち上げられる。また、この弧回転駆動を図4(a)に示す丸付き符号2、4、6、4、6・・の順に正逆交互に行うことで、図4(a)に示す丸付き符号3、5のように、洗濯物21の持ち上げの最終時点である実線位置ないしはその近傍で回転の反転のための急激な制動状態が生じて洗濯物21に与えられていた慣性および自重により回転ドラム4の内面から剥がしその自重により破線位置から実線位置への矢印で示すような放物線を描いて回転ドラム4の左右方向の反対側に落下させることが確実にできる。しかも、正逆交互の弧回転駆動によって洗濯物21の持ち上げ位置、落下位置を毎回の弧回転駆動において図4(b)に示すように左右交互に入れ換えられるので、洗濯物21の解し作用を高められるし、機械力を洗濯物21に及ぼすことができる。
この結果、回転ドラム4の弧回転により洗濯物21を回転ドラム4の左右片側上部まで持ち上げることを正逆交互に行い、洗濯物21の持ち上げの最終時点ないしはその近傍での急激な制動状態にて洗濯物21をその慣性および自重により回転ドラム4の内面から剥がしその自重によって回転ドラム4の左右反対側に落すことの繰り返しにより、急正弧回転、急逆弧回転ごとに洗濯物21の持ち上げ位置、落下位置を左右交互に入れ換え、洗濯物21の解し作用を高めて絡みはもとより捩れや回転ドラム4の内面への貼り付きを防止し、洗濯物21の取り出しが容易で洗濯物21に皺が付くのを大幅に緩和することができる。また、洗濯物21に機械力を及ぼすことができるし叩き作用のある洗濯物21の落下回数を大幅に増大するので洗い効果を始めとする洗濯機が行う各工程での機能を高められる。
また、前記回転ドラム4の弧回転は、洗濯物21が回転ドラム4の最下位置から90度付近に到達するまでに洗濯物21が回転ドラム4の内面に貼り付く急加速度で駆動することにより、洗濯物21が回転ドラム4の最下位置からの持ち上がりにより回転ドラム4の回転に追随できず自重により落下しやすくなる90度付近までに洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼り付かせる急加速度によって、洗濯物21を所定の持ち上げ位置まで滑り無く、従って、回転ドラム4の回転速度に見合う慣性を付与して確実に持ち上げ、前記急激な制動状態への変化時点での剥がし、洗濯物21の持ち上げ側と反対の側への落下による洗濯物の持ち上げ位置、落下位置の左右入れ換えをより確実に達成できる。
さらに、前記回転ドラム4の弧回転方向の正逆切り換えは、前記回転ドラムの弧回転が90度を超え180度未満で急激な制動動作を挟んで行うことを特徴とすることにより、洗濯物の貼り付きを保証する急加速度を満足する条件においても弧回転方向を正逆に急反転させて、洗濯物の弧回転最終段階にて急加速度時の慣性および自重により確実に剥がして持ち上げ側とは反対の側に落下させられ、洗濯物に対する機械力付与のロスを抑制することができる。従って、より短時間に洗濯機の各工程効果を得ながら絡みや捩れを防止し、皺の付きを緩和することができる。
以上のような洗濯物21の挙動から見ると、本実施の形態の上記正逆弧回転駆動モードは、また、回転ドラム4の急弧回転による遠心力にて洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼り付かせて上方に持ち上げた後、回転ドラム4の急制動により、この持ち上げた洗濯物21をその慣性および自重により回転ドラム4の内面から剥がしてその自重により落下させる駆動を、正逆交互に繰り返すものとして捉えることができる。
また、よりよくは、回転ドラム4の急弧回転による遠心力にて洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼り付かせて回転ドラム4の上部範囲まで持ち上げた後、回転ドラム4の急制動により、前記洗濯物21をその慣性および自重により回転ドラム4の内面から剥がしてその慣性および自重により回転ドラム4の下部範囲の持ち上げ側と反対の側に落下させる駆動を、正逆交互に繰り返すものともなる。
これらの場合も、既述した理由によって回転ドラム4の正弧回転と逆弧回転とは180度未満で繰り返すのが好適であり、90度を超えて行うのが最良となる。
ここで、直径が500±50mm程度の回転ドラム4での、重力をドラム中心方向と接線方向に分解したときの、中心方向の力と遠心力が釣り合うドラム回転速度につき、
mrω2=mgcosθ
によって算出したところ、図5に示す「張付きレベル」と記載した太い実線の通りである。図5に示す丸付き符号は、図4(a)に示す丸付き符号と対応している。図5の丸付き符号1で示す停止時から丸付き符号2で示す付近の回転速度50rpm程度に至って洗濯物21の貼り付きが確実に達成される。また、それに必要な回転ドラム4の回転角は90度弱であり、既述の条件を満足している。また、既述では、洗濯物21の貼り付けによる持ち上げは回転ドラム4の90度を超え180度までとしたが、ここでの例では、丸付き符号2で示す回転角125度付近としてあり、この125度付近で「張付きレベル」と記載した太い実線と回転ドラム4の回転の実線とが交わり、それ以降、回転ドラム4の回転の実線が「張付きレベル」と記載した太い実線とより下側にあるため、回転角125度付近から丸付き符号3に達する回転角140度付近で停止させる制動により洗濯物21に働く回転慣性および自重によって回転ドラム4の内面から剥がれる最大回転速度45rpm付近と少しの減速状態によっても剥がれることが分かる。
このような算出および経験から、正逆弧回転駆動モードでの弧回転の最大回転速度は40rpm以上であり、洗濯物21の剥がしないしは制動はその最大回転速度で行われることにより、正逆弧回転駆動モードによる実効が得られる。また、正逆弧回転駆動モードでの洗濯物21の剥がしは、例えば図示例のように回転角125度〜140度の範囲で行う制動で行うことができる。具体的には、40rpm以上で行う弧回転からの減速状態により40rpm以上での回転を続けようとする洗濯物21の回転慣性によって40rpm未満への減速度に応じた強制剥がし力を洗濯物21に与え落下させられる。
さらに、正逆弧回転駆動モードでの図4(a)丸付き符号2で示す初期弧回転は図5に破線で示すように140度近傍で行い、図4(a)丸付き符号3〜6に示すそれ以降の弧回転は図5に実線で示すように140度近傍〜30度近傍の範囲で行うことにより、初期弧回転時に図4(a)丸付き符号1に実線で示し、丸付き符号2に破線で示すように回転ドラム4の下部範囲に静止している洗濯物21を120度近傍の弧回転で左右の初期弧回転側の上部まで持ち上げて120度〜140度の間で制動し、回転ドラムの左右の反対側、具体的には回転ドラム4のほぼ直径線上に落すことを確保し、それ以降の弧回転は140度近傍〜30度近傍の110度として回転ドラムの左右一方側に寄って、具体的にはほぼ30度の位置に落ちた洗濯物21を回転ドラム4の同じ側の上部、具体的にはほぼ120度位置に持ち上げ、回転ドラム4の左右反対の側に落す挙動をほぼ対称的に、かつ回転ドラム4の直径分となる最大の落下距離を得て確実に達成することができる。これによって、洗濯物21の解しと叩きの効果を高められる。
このような左右バランスのよい洗濯物21の挙動を実現するには、回転ドラム4の回転方向の正逆切り換えのための停止または反転は、回転ドラム4の内面に貼り付いた洗濯物21が落下するまでに行うことが好適であり、洗濯物21の落下位置が弧回転方向の持ち上げ側から左右反対の側に移った落下位置を確保して反転した弧回転による持ち上げが行えるので、洗濯物21の持ち上げ位置、落下位置の毎回の弧回転駆動における左右交互に入れ換えをよりバランスよく確実に達成して洗濯物21の解し作用をさらに高め、機械力をさらに洗濯物に及ぼすことができる。また、洗濯物21の持ち上げ位置からの剥がしを瞬時に行うほど好適であり、それには制動が不可欠であるが、このような制動には機械的な制動と電気的な制動とがあり、電気的な制動を採用する方が種類が多いし機構的な複雑さを招かないしメンテナンスフリーのメリットがある。
なお、発明者の確認によると、正逆弧回転駆動モードでの弧回転の最大回転速度が40rpm未満の場合、回転ドラム4の制動による洗濯物21に働く回転慣性では洗濯物21は回転ドラム4の内面から剥がれる挙動は発生せず、回転ドラム4の逆転時も洗濯物21が回転ドラム4の内面に貼り付いたまま回転ドラム4と一緒に回転するという状態となってしまう。
さらに、回転ドラム4の回転角度が90度以下の場合は、洗濯物21を持ち上げることができず、また、回転ドラム4の回転角度が180度以上の場合は、回転ドラム4の逆転時、洗濯物21が180度の位置(最上部)を通り越してしまい、図4(b)に示すような洗濯物21が左右交互に入れ換えられるといった動作を行わないものとなってしまう。
ところで、以上のような回転ドラム4の正逆弧回転駆動モードを実現するにはモータ5に掛かる駆動負荷が非常に大きく、モータ5の極数を増大するなど大型化の原因になるが、本実施の形態では図1、図3に示すように水槽2の底部外面に固定したステータ5aに対して回転軸4aに直結したインナロータ5b1、アウタロータ5b2をステータ5aの内周側および外周側双方に配置してステータ5aに対し内外周から作用し合うようにしてあり、モータ5の大型化の問題なく駆動パワーを倍増でき、小さなモータ5によって急反転を伴う正逆弧回転駆動モードを難なく実行できる。
これによって、図5に示すような左右バランスのよい回転速度特性を持った急反転を伴う正逆弧回転駆動モードを永続的にも実行できる技術が実現し、洗濯物21の正転、逆転のいずれにおいても丸付き符号3、5で示す回転ドラム4のX’、X”で示す同じ位置に洗濯物21を落下させ、その落下時点からほぼ同じ回転角90度位置で洗濯物21の貼り付き域に達した後、ほぼ同じ回転角で丸付き符号4、6の位置に達して急制動による洗濯物21の回転ドラム4からの剥がしを達成している。また、丸付き符号4で示す剥がれ位置から丸付き符号6で示す剥がれ位置までの所要時間は0.8秒程度であり、丸付き符号6で示す剥がれ位置から丸付き符号4で示す剥がれ位置までの所要時間は0.8秒程度であり、双方等しい。
このような正逆弧回転駆動モードを、洗濯工程およびすすぎ工程の少なくとも一方において、少なくとも工程中の連続回転ないしは正逆連続回転に代る一部または全体において行うことで、洗濯物21に持ち上げと落下の挙動を正逆に繰り返し与えて、洗濯物21に対し機械作用を及ぼしながら洗濯物21の解し作用、叩き作用を高めることができ、洗濯後の洗濯物21は図9(a)(b)に示すような従来見られた絡みや捩れが大きく改善され取り出しやすいし、事後処理が容易である。また皺もあまり残らない仕上がり状態となり皺取りの手間が大きく緩和された。なお、脱水工程後に実行すると叩き作用は皺伸ばしになりさらに皺の少ない仕上がり状態が得られるし、脱水時の回転ドラム4内面への貼り付きから洗濯物21を開放し、図8(a)(b)に正逆弧回転駆動モードを行なった乾燥工程後の状態で示す例のようにふわっとしているのでより取り出しやすく、かつ事後処理が楽であり、皺取りにも手間が余り掛からなくなる。特に、脱水後の乾燥工程で実施すると、乾燥した高温空気が通りやすくかつ通気が隅々まで満遍なく及ぶのでむら無く短時間に乾燥させられる上、叩きによる皺伸ばしがさらに促進される。
なお、モータ5のパワーアップはできているが、過剰なパワーアップは不経済であるので、第1のドラム駆動指示によるモータ5の駆動にて、モータ5の脱調限界を超えるとき、上限負荷を超えない第2のドラム駆動指示によりモータ5を駆動することにより、その時々で駆動負荷に違いがあっても、洗濯物21に対する持ち上げ、剥がしの挙動を設定通りに得られる回転ドラム4の回転特性を保証し、パワーアップの上限を抑えられる。それには、例えば、回転ドラム4の回転速度をモニタしてフィードバック制御すればよい。
また、経過時間または洗濯物21の量により、回転ドラム4の駆動を変更することにより、洗濯等の進行による洗濯等条件の変化または洗濯物21の量による駆動負荷の違いに対応した洗濯物21に最適な回転ドラム4の駆動ができ、洗濯物21の量や駆動負荷は既に知られた各種検知方法を採用すればよい。
一方、既述したように、弧回転駆動モードまたは正逆弧回転駆動モードでは駆動負荷が高く、また、回転軸4aと軸受10の周方向の位置が変化しにくく常に同一の下方に位置する部分に荷重がかかる傾向にあることにより、図3に示す回転軸4aと軸受10の間に片減りや早期ガタツキが生じる問題もある。しかし、弧回転駆動モードまたは正逆弧回転駆動モードでの駆動負荷が大きいことに対し、駆動負荷の小さい弧回転駆動モードまたは正逆連続回転駆動モードを適時に実行することによって洗濯全工程での負荷を軽減することができ、また、回転軸4aと軸受10の周方向の位置を変化させることができて回転軸4aの軸受10に片減りや早期ガタツキが生じるようなことを防止して、しかも正逆連続回転駆動モードでの洗濯物21の絡み、捩れ、皺よりを正逆弧回転駆動モードにて解すことができる。
正逆連続回転駆動モードは、従来、40rpm程度を正逆1分置き程度で繰り返しているが、これを変えないで、または種々に変えて正逆弧回転駆動モードと組み合わせ実行することができ、具体的には図6に示すように正逆弧回転駆動モードDは、正逆連続回転駆動モードTと交互に実行するαパターン、または図7に示すように正逆連続回転駆動モードTでの正逆切り換え間にて実行し、正逆弧回転駆動モードDでの正逆弧回転の繰り返し回数を大小異ならせたあるいは開始方向をβ、γパターンなどとして実施することができる。これにより、駆動負荷の高い正逆弧回転駆動モードDに駆動負荷の低い正逆連続回転駆動モードTを併用する分だけ機械的負荷を軽減しながら、正逆連続回転駆動モードDにおける洗濯物21の絡み、捩れ、皺より、洗濯物21に対する機械力付与の不均衡を正逆弧回転駆動モードDの実行割合に応じて是正できる。特に、洗濯工程において、αパターン、βパターン、γパターンを順次に実行して乾燥工程に移行するのに、すすぎ工程を含めないか、あるいは含めて、同じ時間配分、例えば15分ずつ実行しながら、正逆弧回転駆動モードDの正逆弧回転駆動の繰り返し回数を順次に増大させることで、洗濯工程の開始から終了に向けて正逆弧回転の繰り返し回数を3段階に増大し、洗浄水や洗浄剤による界面活性作用の浸透の高まりを伴い洗濯物21の落下による叩き洗いまたは/および叩きすすぎと、皺伸ばしと、の両作用を高めていき、より効果的で短時間の洗濯または/およびすすぎを達成して乾燥工程に移行し、既述したように効率よく乾燥工程を実施し皺の少ない洗濯物21が得られるようになる。なお、正逆連続回転駆動モードTと正逆弧回転駆動モードDとの間に、回転休止時間(休止期間K)を設定することにより、前後の異なった駆動モードT、Dでの回転ドラム4や洗濯物21の挙動を一旦落ち着かせ、先の駆動モードでの回転ドラム4や洗濯物21の挙動の影響なく次の駆動モードの挙動を無理なく早期に得られ、駆動負荷が軽減される。休止時間は1秒程度として十分である。
しかし、このようなT、D両モードの組み合わせパターンに限られることはなし、このようなT、D両モードの組み合わせパターンに加えさらに、あるいは別に、洗濯開始時点の洗濯物21の濡れ性を高めるために洗濯工程の開始から所定時間の間など、正逆弧回転駆動モードDでの正逆弧回転駆動の繰り返し回数を増大することが好適となるし、ご飯粒やシート固形成分などを落とすためには正逆連続回転駆動モードTの実行比率を高めて、洗濯物21を洗浄水流に勢いよく曝すようにするのが好適である。ここに、正逆連続回転駆動モードTと正逆弧回転駆動モードDとの組み合わせパターンは、それぞれの実行タイミング時の実行時間ないしは回転速度の違いなどを含め、洗濯物21の種類や洗濯目的などの違いに応じてユーザが洗濯できれば好適であり、操作パネル14からの入力設定に応じて種々のパターンが、操作パネル14からの選択入力に従った工程において自動的に実行されるようにすることができる。
また、洗濯工程やすすぎ工程では特に、洗濯物21が水を含み重くなり正逆弧回転駆動モードDでの駆動負荷が特に高くなるので、洗濯工程およびすすぎ工程の少なくとも一方において、正逆連続回転駆動モードTと正逆弧回転駆動モードDとの実行割合を変更することにより、洗濯の目的や程度、負荷によって正逆連続回転駆動モードTとの実行割合を変更するのが好適である。例えば、洗濯機能の面で、洗濯物21の量が少ないなどモータ5の負荷が小さい時は正逆弧回転駆動モードDが3に対し正逆連続回転駆動モードTが1の実行割合がよいのに対し、洗濯物21の量が多いなどモータ5の負荷が高い時は正逆弧回転駆動モードDが1に対し正逆連続回転駆動モードTが3の実行割合とするのがよい。また、洗濯工程に限らず他の工程において実行することにより、洗濯物の量の多少に応じて正逆弧回転駆動モードDの正逆連続回転駆動モードTに対する実行割合を減少しまた増大することで、駆動負荷に過不足なく正逆弧回転駆動モードDによる洗濯特性を最大限活かせる。
回転ドラムを水平方向または傾斜して設置したドラム式洗濯機に実用して、洗濯物の絡みや捩れを防止しながら洗濯効果を機械的な無理なく高め、しかも、洗濯物の皺付きも防止することができる。
1 筐体
2 水槽
3 孔
4 回転ドラム
5 モータ
6 扉
7 給水系
9 制御基板
11 排水系
12 送風機
13 乾燥系
14 操作パネル

Claims (4)

  1. 有底円筒形に形成されモータにより回転駆動される回転ドラムを、開口する正面側から底部となる背面側に向けて回転軸方向が水平または水平方向から下向き傾斜となるようにして水槽内に設置し、前記モータ等を制御して洗濯、すすぎ、脱水等の各工程を実行する制御装置を有するドラム式洗濯機であって、
    前記制御装置は、洗濯工程およびすすぎ工程の少なくとも一方において、前記モータの急駆動、急制動を正逆交互に繰り返し行うことで、前記回転ドラムの急弧回転による遠心力にて洗濯物を前記回転ドラム内面に貼り付けるとともに前記洗濯物の上方部分を前記回転ドラムの最下位置から90度を超え180度未満の位置まで持ち上げた後、前記洗濯物をその慣性および自重により回転ドラム内面から剥がすとともに前記回転ドラムの下部範囲の持ち上げ側と反対の側に落下させる動作を、正逆交互に繰り返し行うような前記回転ドラムの正逆弧回転制御を行うことを特徴とするドラム式洗濯機。
  2. 制御装置は、第1のドラム駆動指示によるモータの駆動にて、前記モータの脱調限界を超えるとき、上限負荷を超えない第2のドラム駆動指示により前記モータを駆動することを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
  3. 制御装置は、経過時間または洗濯物の量により、回転ドラムの駆動を変更することを特徴とする請求項1または2に記載のドラム式洗濯機。
  4. 制御装置は、回転ドラムの回転方向の正逆切り換えのための停止または反転、前記回転ドラム内面に貼り付いた洗濯物が落下するまでに行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
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