以下本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯機につき図1〜図12を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載の内容を限定するものではない。
本実施の形態のドラム式洗濯機は既述した基本構成と乾燥機能を有し、図1、図9に示すマイクロコンピュータを搭載した制御手段9などの制御装置によって、モード設定や制御プログラムに従い、モータ5、給水系7、排水系11、乾燥系13を自動制御して少なくとも洗濯工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程を行う機能を有している。なお、給水系7は電磁弁の開閉によって実線矢印で示すように適時に給水でき、また給水を利用して洗剤収容部の洗剤を水槽2内に適時に投入できるようになっている。排水系11は電磁弁の開閉によって洗濯工程終了時、すすぎ工程終了時など必要なときに一点鎖線矢印で示すように排水できるようになっている。乾燥系13は水槽2および回転ドラム4内の空気を送風機12によって図1、図2に示す破線矢印で示すように循環させる循環経路において、水槽2および回転ドラム4からの導入空気中の糸くずなどを捕集し除塵するフィルタ15、除塵後の導入空気を除湿する除湿部16、除湿後の空気を加熱して渇いた高温空気とする加熱部17を有し、送風機12は加熱部17の下流に配置し湿気の影響を受けにくくしている。図示例では除湿部16、加熱部17は圧縮機18により冷媒を循環されて循環空気と熱交換を行う蒸発器および凝縮器であり、空気調和機19を構成するものとしてある。しかし、これに限られることはない。
具体的には、制御手段9は図9に示すような制御系を有し、運転コース等を設定するための図1、図9に示す操作パネル14からの情報を入力して、その情報を基に操作パネル14上の表示手段で表示して使用者に知らせるとともに、操作パネル14での入力設定手段により運転開始が設定されると、水槽2内の水位を検知する水位検知手段等からのデータを入力して駆動回路111を介して、排水弁、給水弁などの動作を制御し、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥などの運転を行う。
このとき、制御手段9は、モータ5のロータの位置を検出する位置検出手段112からの情報に基づいて、駆動回路111を介してインバータ113を制御することによりモータ5を回転制御するようにしている。モータ5は直流ブラシレスモータで、図1、図3に示すように3相巻線を有するステータ5aと、リング上に2極の永久磁石を配設してステータ5aのない外周に配置したロータ5b1、5b2とで構成し、ステータ5aは3相巻線を構成する第1の巻線5a1、第2の巻線5a2、第3の巻線5a3をスロットを設けた鉄心に巻き付けて構成している。
インバータ113は、パワートランジスタ(IGBT)と逆導通ダイオードの並列回路からなるスイッチング素子で構成している。第1のスイッチング素子113aと第2のスイッチング素子113bの直列回路と、第3のスイッチング素子113cと第4のスイッチング素子113dの直列回路と、第5のスイッチング素子113eと第6のスイッチング素子113fの直列回路で構成し、各スイッチング素子の直列回路は並列接続している。
ここで、スイッチング素子の直列回路の両端は入力端子で、直流電源を接続し、スイッチング素子の直列回路を構成する2つのスイッチング素子の接続点に、それぞれ出力端子を接続している。出力端子は、3相巻線のU端子、V端子、W端子に接続し、スイッチング素子の直列回路を構成する2つのスイッチング素子のオン・オフの組合せにより、U端子、V端子、W端子をそれぞれ正電圧、零電圧、解放の3状態にする。
スイッチング素子のオン・オフは、ホールICからなる3つの位置検出手段112a、112b、112cからの情報に基づいて制御手段9により制御される。位置検出手段112a、112b、112cは電気角で120度の間隔でロータ5b1、5b2が有する永久磁石に対向するように、ステータに配設されている。
ロータ5b1、5b2が1回転する間に、3つの位置検出手段112a、112b、112cは、それぞれ電気角で120度の間隔でパルスを出力する。制御手段9は、3つの位置検出手段112a、112b、112cのいずれかの信号の状態が変わったときを検知し、位置検出手段112a、112b、112cの信号を基に、スイッチング素子113a〜113fのオン・オフ状態を変えていくことで、U端子、V端子、W端子を正電圧、零電圧、解放の3状態にし、ステータ5aの第1の巻線5a1、第2の巻線5a2、第3の巻線5a3に通電して磁界を作り、ロータ5b1、5b2を回転させるよう構成している。
また、スイッチング素子113a、113c、113eはそれぞれパルス幅変調(PWM)制御され、例えば、繰り返し周波数10kHzでハイ、ローの通電比を制御することで、ロータ5b1、5b2の回転数を制御するようにしてあり、制御手段9は、3つの位置検出手段112a、112b、112cのいずれかの信号の状態が変わるたびにその周期を検出し、その周期よりロータ5b1、5b2の回転数を算出して、設定回転数になるようにスイッチング素子113a、113c、113eをPWM制御する。
ここで、モータ5の回転速度は時間経過と回転位置の変化から演算できるが、図9に示すように速度検出手段114を設けて別途検出することができ、検出した速度データは制御手段9による制御に反映させられる。このような速度検出手段114としてはエンコーダなどがある。
回転ドラム4は回転軸4aに水槽2上のモータ5が直結されて、水槽2と共に、開口側から底部側に向けて回転軸方向を水平方向から角度θ=20±10度に傾斜させて設置し、水平方向での設置の場合に比べ、回転ドラム4を同じ高さに設置しても開口が斜め上向きとなることで屈んだりする無理な姿勢を取らずに洗濯物を容易に出し入れできる。特に、本発明者等の経験からは傾斜角度は20±10度とすることにより、子供(幼児を除く)から大人までの身長差があっても、車椅子利用者であっても、洗濯物の出し入れの作業が最も行い易い状態が得られる。また、回転ドラム4内に給水された水が背面側に溜まって少ない水量でも深い貯水状態が得られる利点もある。
しかし、既述したように脱水工程が例えば1000rpmといった高速度での連続回転にて実行される関係から、洗濯物を洗濯工程、すすぎ工程での絡み、捩れ、皺より状態のまま回転ドラム4の内面に貼り付かせて癖付けしてしまうので、洗濯物を取り出し難いし、事後処理に手間が掛かる。また、洗濯物にきつい皺が残りやすく皺取りの手間が大きい。
このようなことに対応するのに本実施の形態では、前記回転ドラム4の90度を超え200度未満での急正弧回転と急逆弧回転を交互に繰り返す正逆弧回転駆動モードを備えている。これにより、例えば、洗濯工程、または洗濯、すすぎ工程において、正逆弧回転駆動モードによって、回転ドラム4の90度を超え200度未満の急正弧回転と急逆弧回転とにより洗濯物を回転ドラム4内面に貼り付かせて回転ドラム4の最下位置から最大限90度を超えて少なくとも180度未満まで持ち上げられるし、この急正弧回転と急逆弧回転での洗濯物の持ち上げの最終段階に生じる回転の反転のための制動状態時に洗濯物をその慣性および自重により回転ドラム4内面から強制的に剥がして自重により回転ドラム4内面から持ち上げ側と反対の側に向け落せるので、洗濯物の持ち上げ位置、落下位置を正逆切り替わる毎回の弧回転駆動において左右交互に入れ換えられ、洗濯工程、または洗濯、すすぎ工程における水を含んで十分に膨潤し、かつ緩み、滑りやすい状態にある洗濯物に対して特に高い解し作用を働かせられる。また、洗濯物に機械力を満遍なく及ぼすことができる。
このように、正逆弧回転駆動モードによって、回転ドラム4の90度を超え200度未満の急正弧回転と急逆弧回転とにより洗濯物を回転ドラム4内面に貼り付かせて回転ドラム4の最下位置から最大限90度を超えて少なくとも180度未満まで持ち上げ、また、急正弧回転と急逆弧回転での洗濯物の持ち上げの最終段階に生じる制動状態時の洗濯物の慣性により回転ドラム4内面から剥がして自重により回転ドラム内面から持ち上げ側と反対の側に落して、洗濯物の持ち上げ位置、落下位置を正逆切り替わる毎回の弧回転駆動において左右交互に入れ換えられるので、洗濯工程、または洗濯、すすぎ工程における水を含んで十分に膨潤し、かつ緩み、滑りやすい状態にある洗濯物に対して特に高い解し作用を働かせられる。また、洗濯物に機械力を満遍なく及ぼすことができ、脱水工程後の回転ドラム4内壁に張り付いた洗濯物に対しても解し作用を働かせられ、洗濯物の取り出しを容易にしたり、乾燥工程前に、またはおよび、乾燥工程を含むどの実行時点における洗濯物に対しても解し作用を働かせられ、仕上げ状態を高められる。
ところが、本発明者は、特に、洗濯、すすぎ工程では、のモータ5の駆動制御上、回転不足側、回転角不足側への脱調が生じ、一方、乾燥工程では、回転過剰側、回転角過剰側への脱調が生じることを経験している。回転不測側、回転角不足側への脱調は逆弧回転駆動モードにより洗濯物に与える挙動が緩慢になり、上記の期待する効果が得られない結果を招き、回転過剰側、回転角過剰側への脱調は正逆弧回転駆動モードにより洗濯物が回転ドラム4内面に貼り付いて空転し、上記の期待する効果が得られない結果を招く。
そこで、本実施の形態における正逆弧回転駆動モードでは、特に、1つの例として、回転ドラム4の駆動開始から回転ドラム4が正逆反転位置に到達することのない所定の時間t経過時点と、この所定の時間t経過時点で回転ドラム4が到達すべき目標回転速度xとを設定して、前記制御手段9によるモータ5の駆動制御データに用い、モータ5を駆動し、前記所定の時間t経過時点にて前記回転ドラム4の回転速度x1を検知し、この検知回転速度x1と前記目標回転速度xとの差に応じモータ5が発生するトルクを前記駆動回路111を介し変更することで所定の時間t経過時点での回転速度x1が前記目標回転速度xを満足するようにする。
これによれば、制御手段9による正逆弧回転駆動モードでのモータ5の駆動制御において、特に、正逆弧回転駆動モードでの回転ドラム4の挙動につき制御テーブルT(t)に設定した、駆動開始から正逆反転位置に到達することのない所定の時間t経過時点と、この所定の時間t経過時点で回転ドラム4が到達すべき目標回転速度xとを、モータ5が発生するトルクの過不足に関係のない最適な駆動状態を得る条件値として、回転ドラム4の駆動状態の変動をその原因に関係なく、モータ5を駆動し、所定の時間t経過時点で検知した回転ドラム4の途中回転速度x1が目標回転速度xとなっているか否かに、つまり両者の差に反映させられる。従って、判定した差からその時々の駆動実態が最適な駆動状態にあるか否か、なければ過剰か、不足かを簡単かつ即時に判定することができ、前記判定した差に応じモータ5が発生するトルクを変更するだけで、前記所定の時間t経過時点での回転速度x1が前記目標回転速度xを満足するように、つまり最適な駆動状態に安定させられる。特に、この場合、ベクトル制御などによるモータ発生トルク一定制御を行えば、回転加速度をほぼ一定とすることが可能であるため、前記所定の時間経過時点で回転速度が目標速度を満足するということは、前記所定の時間経過時点における回転角がほぼ一定となるようにすることができる。すなわち、洗濯物の慣性による剥がしが所定の回転角時点で行われることを、より高い精度で行うことが可能となり好適である。
また、別の例として、回転ドラム4が駆動開始位置から正逆反転位置に達する回転角未満の所定の回転角θ1と、回転ドラム4が駆動開始から所定の回転角θ1時点で到達すべき目標回転速度xとを制御テーブルT(t)に設定して、前記制御手段9によるモータ5の駆動制御データに用い、モータ5を駆動し、所定の回転角シータθ1時点にて回転ドラム4の回転速度x1を検知し、この検知回転速度x1と目標回転速度xとの差に応じモータ5が発生するするトルクを前記駆動回路111を介し変更することで前記所定の回転角時点で是回転速度が前記目標回転速度を満足するようにする。
これによれば、制御手段9による正逆弧回転駆動モードでのモータ5の駆動制御において、特に、正逆弧回転駆動モードでの回転ドラム4の挙動につき設定した、回転ドラム4が駆動開始位置から正逆反転位置に達する回転角未満の所定の回転角θ1と、モータ5が発生するトルクの過不足に関係のない最適な駆動状態を得る条件値として、回転ドラム4の駆動状態の変動をその原因に関係なく、モータ5を駆動し、所定の回転角θ1時点で検知した回転ドラム4の途中の回転速度x1が目標回転速度xとなっているか否かに、つまり両者の差に反映させられる。従って、判定した差からその時々の駆動実態が最適な駆動状態にあるか否か、なければ過剰か、不足かを簡単かつ即時に判定することができ、前記判定した差に応じモータ5が発生するトルクを変更するだけで、所定の回転角θ1時点での回転速度x1が目標回転速度xを満足するように、つまり最適な駆動状態に安定させられる。
これらの結果、正逆弧回転駆動モードでの回転ドラム4の挙動につき設定した、モータ5が発生するトルクの過不足に関係のない、最適な駆動状態を得る駆動途中での所定の時間t経過時点ないしは回転角θ1と、そのときに到達しておくべき目標回転速度xと、の2つの条件値を利用して、回転ドラム4の駆動状態の変動をその原因に関係なく、所定の時間t経過時点ないしは回転角θ1にて検知した回転ドラム4の途中の回転速度x1と目標回転速度xとの差に反映させて、その差からその時々の駆動実態の正確な判定ができ、その判定した差に応じモータ5が発生するトルクを変更するだけで、最適な駆動状態に安定させられる。
上記1つの例において、さらに、回転ドラム4の弧回転方向の正逆切り換えは、回転ドラム4の弧回転が90度を超え200度未満で急激な制動動作を挟んで行い、回転ドラム4の回転速度x1の検知時点は、モータ5の正逆弧回転駆動電力の印加終了時点に対応するのが好適である。このように、正逆の弧回転の切り換えに急激な制動動作を挟むことで、正逆弧回転により回転ドラム4内面に貼り付け左右方向の一方側に持ち上げた洗濯物の慣性による剥がしが所定の回転角θ1時点で確実になされ、左右方向の他方側所定位置に確実に落とすことができ、洗濯物に対する解し効果、機械力を高められる。また、モータ5の正逆弧回転駆動電力の印加終了時点は、モータ5の駆動時間が長いほど印加電力が高く回転速度x1が最も高くなる時点であるので、この時点を回転ドラム4の回転速度x1の検知時点とすることにより、モータ5のトルクの過不足を高精度に判定することができる。
ここで、このような1つの例での正逆弧回転駆動モードでの駆動制御例につき、図10を参照して説明する。正逆弧回転駆動がスタートすると、まず、制御手段9において検知する回転速度x1の最大値が0に初期設定され、その後モータ5のオンを待ち、オンされるとテーブルT(t)に従いモータ5に駆動電流を流す。これにより回転ドラム4は回転を開始する。以降制御手段9はモータ5のフィードバック制御移行を判定するまで、テーブルT(t)に従いモータ5に駆動電流を流し続ける。所定の時間tが経過し、モータ5のオフを判定したとき制御手段9は、そのとき検知された回転速度x1が目標回転速度xよりも大きければ、その度合いに応じモータ5の駆動電流を小さく変更し、回転速度x1が目標速度xよりも小さければ、その度合いに応じモータ5の駆動電流を大きく変更する。これによって、回転ドラム4は常に最適な駆動状態に安定する。なお、モータ5の駆動電流の変更は、モータ5を起動した直後のテーブルT(t)における駆動電流などの設定値および、フィードバック制御移行後におけるフィードバックゲインなどの制御設定値のいずれか、あるいは双方に対して行うことができる。
また、別の例での正逆弧回転駆動モードでの駆動制御例につき、図11を参照して説明する。正逆弧回転駆動がスタートすると、まず、制御手段9において検知する回転速度x1が0に初期設定され、その後モータ5のオンを待ち、オンされるとテーブルT(θ1)に従いモータ5に駆動電流を流す。これにより回転ドラム4は回転を開始する。以降制御手段9はモータ5のフィードバック制御移行を判定するまで、テーブルT(θ1)に従いモータ5に駆動電流を流し続ける。所定の回転角θ1となりモータ5のオフを判定したとき制御手段9は、そのとき検知された回転速度x1が目標回転速度xよりも大きければ、その度合いに応じモータ5の駆動電流を小さく変更し、回転速度x1が目標回転速度xよりも小さければ、その度合いに応じモータ5の駆動電流を大きく変更する。これによって、回転ドラム4は常に最適な駆動状態に安定する。この場合においても、モータ5の駆動電流の変更は、モータ5を起動した直後のテーブルT(θ1)における駆動電流などの設定値および、フィードバック制御移行後におけるフィードバックゲインなどの制御設定値のいずれか、あるいは双方に対して行うことができる。
なお、回転ドラム4の回転速度x1の検知は、正弧回転時および逆弧回転時の双方または一方で行えるが、双方で行うと検知機会が一方で行う場合に比べ倍増し、より木目細かな対応ができる。また、一方で行うと検知回数を半減でき木目細かな対応をしなくてよい場合に有利である。
また、回転ドラム4の回転速度x1の検知は、毎回、所定回数ごと、所定時間ごと、のいずれかで行うことができ、検知回数は木目の細かな対応が必要な度合いに応じ選択すればよい。
さらに、モータ5が発生するトルクの変更は、回転ドラム4の毎回の検知データの基に毎回、あるいは複数回蓄積した検知データの基に行うことができ、モータ5が発生するトルクの変更を、毎回の検知データの基に毎回行うと、検知時点ごとに即時の対応ができ、複数回蓄積した検知データの基に行うと、即時の対応はできないが検知データの平均値によって無理のない対応をしたり、イレギュラーな検知データを除去して不自然な対応を避けたりでき、木目細かな対応をしなくてよい場合特に有利である。
以下に、洗濯、すすぎ工程と、脱水工程後、乾燥工程とで、正逆弧回転駆動モードを、回転ドラム4の回転によって持ち上げられた洗濯物がその自重が勝る高さから落下する挙動を示す回転速度x1での前記回転ドラム4の連続回転を正逆交互に繰り返す正逆連続回転駆動モードと併用することにより、消費電力の高い正逆弧回転駆動モードを無駄なく有効に実行して省エネを図り、かつ、正逆弧回転駆動モードで達成されにくい洗濯物の上下の入れ換えと、洗濯物のそのような挙動による叩き作用とによる強い汚れに対する高い洗濯効果が得られるようにした場合の具体例について説明する。
(洗濯工程およびすすぎ工程)
まず洗濯工程およびすすぎ工程の動作について、説明する。洗濯工程または、洗濯工程およびすすぎ工程において、絡み、捩れの発生を大きく改善し機械力の働きを高めながら皺も生じ難くすることを意図して、本実施の形態では、開口側から底部側に向けて回転軸方向が水平方向から下向き傾斜となるようにして設置した有底円筒形の回転ドラム4に対する制御基板9による駆動制御に関し、回転ドラム4の90度を超え200度未満の急正弧回転、急逆弧回転を交互に繰り返す正逆弧回転駆動モードと、前記回転ドラム4の回転によって持ち上げられた洗濯物がその自重が勝る高さから落下する挙動を示す回転速度での前記回転ドラム4の連続回転を正逆交互に繰り返す正逆連続回転駆動モードと、を備え、洗濯工程または、洗濯工程およびすすぎ工程において、前記正逆弧回転駆動モードと前記正逆連続回転駆動モードとを、図8に正逆弧回転駆動モードをD、正逆連続回転駆動モードをTで示すように交互に実行し、前記正逆弧回転駆動モードの実行割合を前記正逆連続回転駆動モードの実行割合よりも低くするようにしている。
これによれば、回転ドラム4の90度を超え200度未満の急速度での弧回転および急激な制動により洗濯物を回転ドラム4の最下位置から最大限90度を超えて180度未満まで持ち上げられるし、洗濯物の持ち上げの最終段階の急激な制動により制動状態が生じて洗濯物をその慣性および自重により回転ドラム4内面から剥がしてその自重によって落すことが確実に達成できるので、水を含んで十分に膨潤し、かつ緩み、滑りやすい状態にある洗濯物に対して特に高い解し作用を与えられるし、機械力を洗濯物に及ぼすことができるので洗浄性能を高めることができる。なお、本発明者は、水槽2内に十分な水と洗濯物21が入っている状態であれば、洗濯物21が持ち上げられた後、回転ドラム4に落下したときに水による抵抗と洗濯物21の重量により回転ドラム4は十分にブレーキがかかるので、回転ドラム4の90度を超え180度未満の急回転および急な制動により洗濯物21を回転ドラム4の最下位置から最大90度を超えて180度未満まで持ち上げられるし、正逆交互の急弧回転駆動の周期も短くなり、機械力を洗濯物21に及ぼす回数を増やすことができるので、洗浄性能を高めることができ、最適であることを確認している。さらに、弧回転駆動の正方向の急正弧回転と逆方向の急逆弧回転とを交互に繰り返すことで正逆弧回転駆動モードとし、これによって、正逆交互の急弧回転駆動によって洗濯物の持ち上げ位置、落下位置を毎回の弧回転駆動において左右交互に入れ換えられるので、洗濯物が絡むことをより防ぎながら解し作用をさらに高められるとともに、機械力を洗濯物に及ぼす回数を増やすことができるので洗浄性能を高めることができる。
また、正逆弧回転駆動モードのみでは、洗濯物の絡み、捩れ、皺より等が軽減される一方で、洗濯物の上下方向の位置が入れ換わりにくく、洗いむらが生じやすいが、正逆連続回転駆動モードを併用することによって、洗濯物の上下方向の位置の入れ換わりを実現することができ、すなわち、連続回転駆動モードにおける洗濯物の絡み、捩れ、皺よりを軽減するとともに、正逆弧回転駆動モードにおける洗濯物に対する機械力付与の不均衡を軽減することで、両モードによって洗濯やすすぎ中の洗濯物に異なった2通りの挙動、具体的には正逆弧回転駆動モードによっては洗濯物の絡み、捩れ、皺よりを軽減しつつしっかりした手もみ洗いの挙動を、正逆連続回転駆動モードによっては洗濯物を大きく連続に動かしむらを軽減しながら洗う、均一で強い汚れに対する効果的な洗い挙動を与えられる。
特に、これら正逆連続回転駆動モードおよび正逆弧回転駆動モードを洗濯工程、または洗濯、すすぎ工程において交互に繰り返すのに、正逆弧回転駆動モードはその高い解し効果に鑑み正逆連続回転駆動モードに対する実行割合を低くすることにより、正逆連続回転駆動モードでの洗濯物の絡み、捩れ、皺を十分に解しながら、正逆連続回転駆動モードに比べ消費電力の高い正逆弧回転駆動モードを無駄に実行せず、しかも、正逆連続回転駆動モードの正逆弧回転駆動モードに対する実行割合が高い分強い汚れに対する洗浄効果を低い消費電力で高められる。このように、消費電力の高い正逆弧回転駆動モードの正逆連続回転駆動モードに対する実行割合を低くして無駄に実行せず省エネを図りながら、絡みはもとより捩れや皺を効率よく解し脱水を行っても取り出しが容易となり皺も軽減することができる。しかも、正逆連続回転駆動モードの正逆弧回転駆動モードに対する実行割合を高くできる分だけ、洗濯物の強い汚れに対する洗浄効果も高められる。これらから、正逆弧回転駆動モードおよび正逆連続回転駆動モード双方の累計実行時間も短縮でき、この面での省エネ効果もある。
なお、前記正逆弧回転駆動モードと正逆連続回転駆動モードとは複数回切り換えて実行し、それらの前記実行割合は、累積実行割合、またはおよび、一方から他方への切り換え前後での実行割合とすることにより、洗濯工程、または洗濯、すすぎ工程での時間経過に伴うその時々での洗濯条件の変化に対応した実行割合を、その時々で異なり、また上記とは逆の関係となる実行割合をも含んで、上記の特徴を損なわずに自由に選択することができる。
また、正逆連続回転駆動モードの実行割合に対する正逆弧回転駆動モードの実行割合は最大限15%程度まで低くして、必要な解し効果を得られて省エネ効果を格段に高められるし、正逆連続回転駆動モードの実行割合を最大限85%程度と高められるので低い消費電力にて強い汚れに対する洗浄効果をさらに高められる。従って、高い洗い効果による全体の洗い時間短縮による省エネ効果も高められる。
さらに、正逆連続回転駆動モードと正逆弧回転駆動モードとの間に、図8に示すように回転休止時間Kを設定することにより、前後の異なった駆動モードでの回転ドラム4や洗濯物の挙動を一旦落ち着かせ、先の駆動モードでの回転ドラム4や洗濯物の挙動の影響なく次の駆動モードの挙動を無理なく早期に得られ、駆動負荷が軽減される。休止時間は1秒程度として十分である。
上記の洗濯工程、すすぎ工程での正逆弧回転駆動モードについて、そのときの洗濯物21の動きを図4を用いて説明する。なお、この図4は、実際の洗濯物21の動きを説明するための模式図であり、特許請求の範囲の記載の内容を限定するものではない。回転ドラム4の90度を超え200度未満(なお、180度未満であれば、なお好適である)の急正弧回転、急逆弧回転により図4に示す水を含んで重い洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼りつかせて図4(a)の丸付き符号2、4、6に例示する破線位置から実線位置へと最大限90度を超えて180度未満まで持ち上げられる。また、この弧回転駆動を図4(a)に示す丸付き符号2、4、6、4、6・・の順に正逆交互に行うことで、図4(a)に示す丸付き符号3、5のように、洗濯物21の持ち上げの最終時点である実線位置ないしはその近傍で回転の反転のための急激な制動状態が生じて洗濯物21に与えられていた慣性および自重により回転ドラム4の内面から剥がしその自重により破線位置から実線位置への矢印で示すような放物線を描いて回転ドラム4の左右方向の反対側に落下させることが確実にできる。しかも、正逆交互の弧回転駆動によって洗濯物21の持ち上げ位置、落下位置を毎回の弧回転駆動において図4(b)に示すように左右交互に入れ換えられるので、水を含んで十分に膨潤し、かつ緩み、滑りやすい状態にある洗濯物21に対しては解し作用を特に高められるし、機械力を洗濯物21に及ぼすことができる。
この結果、回転ドラム4の弧回転により洗濯物21を回転ドラム4の左右片側上部まで持ち上げることを正逆交互に行い、洗濯物21の持ち上げの最終時点ないしはその近傍での急激な制動状態にて洗濯物21をその慣性および自重により回転ドラム4の内面から剥がしその自重によって回転ドラム4の左右反対側に落すことの繰り返しにより、急正弧回転、急逆弧回転ごとに洗濯物21の持ち上げ位置、落下位置を左右交互に入れ換え、洗濯物21の解し作用を高めて絡みはもとより捩れや回転ドラム4の内面への貼り付きを防止し、脱水を行う場合でも洗濯物21の取り出しが容易で洗濯物21に皺が付くのを大幅に緩和することができる。また、洗濯物21に機械力を及ぼすことができるし叩き作用のある洗濯物21の落下回数を大幅に増大するので洗い効果を始めとする洗濯機が行う各工程での機能を高められる。
また、前記回転ドラム4の弧回転は、洗濯物21が回転ドラム4の最下位置から90度付近に到達するまでに洗濯物21が回転ドラム4の内面に貼り付く急加速度で駆動することにより、洗濯物21が回転ドラム4の最下位置からの持ち上がりにより回転ドラム4の回転に追随できず自重により落下しやすくなる90度付近までに洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼り付かせる急加速度によって、洗濯物21を所定の持ち上げ位置まで滑り無く、従って、回転ドラム4の回転速度に見合う慣性を付与して確実に持ち上げ、前記急激な制動状態への変化時点での剥がし、洗濯物21の持ち上げ側と反対の側への落下による洗濯物21の持ち上げ位置、落下位置の左右入れ換えをより確実に達成できる。
また、前記回転ドラム4の弧回転方向の正逆切り換えは、前記回転ドラム4の弧回転が90度を超え200度未満(なお、180度未満であれば、なお好適である)で急激な制動動作を挟んで行うことを特徴とすることにより、洗濯物21の貼り付きを保証する急加速度を満足する条件においても弧回転方向を正逆に急反転させて、洗濯物21の弧回転最終段階にて急加速度時の慣性により確実に剥がして持ち上げ側とは反対の側に落下させられ、洗濯物21に対する機械力付与のロスを抑制することができる。従って、より短時間に洗濯機の各工程効果を得ながら絡みや捩れを防止し、皺の付きを緩和することができる。
ここで、直径が500±50mm程度の回転ドラム4での、重力をドラム中心方向と接線方向に分解したときの、中心方向の力と遠心力が釣り合うドラム回転速度につき、
mrω2=mgcosθ
によって算出したところ、図5に示す「張付きレベル」と記載した太い実線の通りである。図5に示す丸付き符号は、図4(a)に示す丸付き符号と対応している。図5の丸付き符号1で示す停止時から丸付き符号2で示す付近の回転速度50rpm程度に至って洗濯物21の貼り付きが確実に達成される。また、それに必要な回転ドラム4の回転角は90度弱であり、既述の条件を満足している。また、既述では、洗濯物21の貼り付けによる持ち上げは回転ドラム4の90度を超え200度までとしたが、ここでの例では、丸付き符号2で示す回転角125度付近としてあり、この125度付近で「張付きレベル」と記載した太い実線と回転ドラム4の回転の実線とが交わり、それ以降、回転ドラム4の回転の実線が「張付きレベル」と記載した太い実線より下側にあるため、回転角125度付近から丸付き符号3に達する回転角140度付近で停止させる制動により洗濯物21に働く慣性および自重によって回転ドラム4の内面から剥がれる最大回転速度45rpm付近と少しの減速状態によっても剥がれることが分かる。
このような算出および経験から、正逆弧回転駆動モードでの弧回転の最大回転速度は40rpm以上であり、洗濯物21の剥がしないしは制動はその最大回転速度で行われることにより、正逆弧回転駆動モードによる実効が得られる。また、正逆弧回転駆動モードでの洗濯物21の剥がしは、例えば図示例のように回転角125度〜140度の範囲で行う制動で行うことができる。具体的には、40rpm以上で行う弧回転からの減速状態により40rpm以上での回転を続けようとする洗濯物21の回転慣性によって40rpm未満への減速度に応じた強制剥がし力を洗濯物21に与え落下させられる。
さらに、正逆弧回転駆動モードでの図4(a)丸付き符号2で示す初期弧回転は図5に破線で示すように140度近傍で行い、図4(a)丸付き符号3〜6に示すそれ以降の弧回転は図5に実線で示すように140度近傍〜30度近傍の範囲で行うことにより、初期弧回転時に図4(a)丸付き符号1に実線で示し、丸付き符号2に破線で示すように回転ドラム4の下部範囲に静止している洗濯物21を120度近傍の弧回転で左右の初期弧回転側の上部まで持ち上げて120度〜140度の間で制動し、回転ドラム4の左右の反対側、具体的には回転ドラム4のほぼ直径線上に落すことを確保し、それ以降の弧回転は140度近傍〜30度近傍の110度として回転ドラム4の左右一方側に寄って、具体的にはほぼ30度の位置に落ちた洗濯物21を回転ドラム4の同じ側の上部、具体的にはほぼ120度位置に持ち上げ、回転ドラム4の左右反対の側に落す挙動をほぼ対称的に、かつ回転ドラム4の直径分となる最大の落下距離を得て確実に達成することができる。これによって、洗濯物21の解しと叩きの効果を高められる。
なお、発明者の確認によると、洗濯工程、すすぎ工程において、正逆弧回転駆動モードでの弧回転の最大回転速度が40rpm未満の場合、回転ドラム4の急激な制動動作を行っても、回転ドラム4の制動による洗濯物21に働く回転慣性では洗濯物21は回転ドラム4の内面から剥がれる挙動は発生せず、回転ドラム4の逆転時も洗濯物21が回転ドラム4の内面に貼り付いたまま回転ドラム4と一緒に回転するという状態となってしまう場合がある。
さらに、回転ドラム4の回転角度が90度以下の場合は、洗濯物21を持ち上げることができず、また、回転ドラム4の回転角度が200度以上の場合は、回転ドラム4の逆転時、洗濯物21が180度の位置(最上部)を通り越してしまい、図4(b)に示すような洗濯物21が左右交互に入れ換えられるといった動作を行わないものとなってしまう。
ところで、以上のような回転ドラム4の正逆弧回転駆動モードを実現するにはモータ5に掛かる駆動負荷が非常に大きく、モータ5の極数を増大するなど大型化の原因になるが、本実施の形態では図1、図3に示すように水槽2の底部外面に固定したステータ5aに対して回転軸4aに直結したインナロータ5b1、アウタロータ5b2をステータ5aの内周側および外周側双方に配置してステータ5aに対し内外周から作用し合うようにしてあり、モータ5の大型化の問題なく駆動パワーを倍増でき、小さなモータ5によって急反転を伴う正逆弧回転駆動モードを難なく実行できる。
これによって、図5に示すような左右バランスのよい回転速度特性を持った急反転を伴う正逆弧回転駆動モードを永続的にも実行できる技術が実現し、洗濯物21の正転、逆転のいずれにおいても丸付き符号3、5で示す回転ドラム4の同じ位置に洗濯物21を落下させ、その落下時点からほぼ同じ回転角90度位置で洗濯物21の貼り付き域に達した後、ほぼ同じ回転角で丸付き符号4、6の位置に達して急制動による洗濯物21の回転ドラム4からの剥がしを達成している。また、丸付き符号4で示す剥がれ位置から丸付き符号6で示す剥がれ位置までの所要時間は0.8秒程度であり、丸付き符号6で示す剥がれ位置から丸付き符号4で示す剥がれ位置までの所要時間は0.8秒程度であり、双方等しい。
また、回転ドラム4の回転方向の正逆切り換えのための停止または反転は、回転ドラム4の内面に貼り付いた洗濯物21が落下するまでに行う。これにより、洗濯物21の落下位置が弧回転方向または連続回転方向の持ち上げ側から左右反対の側に移った落下位置を確保して反転した急弧回転または連続回転による持ち上げが行えるので、洗濯物21の持ち上げ位置、落下位置の毎回の弧回転駆動または連続回転駆動における左右交互の入れ換えをより確実に達成して洗濯物21の解し作用をさらに高め、機械力をさらに満遍なく及ぼすことができる。
(脱水工程後および乾燥工程)
また、脱水工程後および乾燥工程においても、回転ドラム4に対する制御基板9による駆動制御に関し、回転ドラム4の90度を超え200度未満の急正弧回転と急逆弧回転を交互に繰り返す正逆弧回転駆動モードと、回転ドラム4の回転によって持ち上げられた洗濯物21がその自重が勝る高さから落下する挙動を示す回転速度での回転ドラム4の連続回転を正逆交互に繰り返す正逆連続回転駆動モードとを併用し、正逆連続回転駆動モードの実行割合に見合った省エネおよび機械力の均等付与効果を図りながら、脱水後の回転ドラム4の内面に図13(a)(b)に示すように貼り付いた洗濯物21の剥がしとなお残っている絡みを解し、捩れや皺よりの解しを正逆弧回転駆動モードの実行割合に見合って図ることができる。具体的には、特に、乾燥工程中の洗濯物21に正逆弧回転駆動モードによっては洗濯物21の絡み、捩れ、皺よりを取り除きつつふっくら仕上げるふっくら仕上げ挙動、正逆連続回転駆動モードによっては洗濯物21を大きく広域に移動させて洗濯物21の位置を入れ換えることで送り込まれる高温空気を洗濯物21に均一に当て乾燥むらを軽減するように有効利用する乾燥促進挙動が与えられ、洗濯物21の落下時の叩き作用による皺伸ばしを伴い個々の洗濯物21の解れによる広がりと繊維の再生が図れるので高い乾燥性能の基に洗濯物21の仕上がり状態を大きく高められる。洗濯工程およびすすぎ工程と脱水工程後および乾燥工程とで正逆弧回転駆動モードと正逆連続回転駆動モードとを併用した場合、洗濯物21は図12(a)(b)に示すように皺が少なく目立たないふっくらした仕上がりとなる。
この脱水工程後および乾燥工程での正逆弧回転駆動モードについて、そのときの洗濯物21の動きを図6を用いて説明する。なお、この図6は、実際の洗濯物21の動きを説明するための模式図である。このような正逆弧回転駆動モードでは、回転ドラム4の90度を超え200度未満の弧回転により図6に示す洗濯物21をそれが脱水により軽量化していても図6(a)の丸付き符号2、4、6に例示する破線位置から実線位置へと回転ドラム4の最下位置から最大限90度を超えて180度未満まで持ち上げられる。
具体的には、図6(a)の丸付き符号1後、開始時においては、図6(a)の丸付き符号2のように、正転方向の85度近傍まで50rpm以上に急加速し、洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼り付かせて持ち上げる。その後、図6(a)の丸付き符号3のように、急制動をかけて正転方向の165度の位置まで急減速する。このとき、洗濯物21は、回転ドラム4の回転速度が50rpm以下になったとき、すなわち正転方向の135度近傍で、その慣性および自重により、回転ドラム4の内面から剥がされ、洗濯物21は持ち上げ側と反対の側に向け落下する。その後、回転ドラム4は、惰性により正転方向の165度近傍まで回転し、それによって、洗濯物21は、正転方向の15度近傍まで回転する。
次に、図6(a)の丸付き符号4のように、逆転方向の85度近傍まで、即ち逆転方向100度の回転で50rpm以上に急加速し、洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼り付かせて持ち上げる。その後、図6(a)の丸付き符号5のように、急制動をかけて逆転方向の165度の位置まで急減速する。このとき、洗濯物21は、回転ドラム4の回転速度が50rpm以下になったとき、すなわち逆転方向の135度近傍で、その慣性および自重により、回転ドラム4の内面から剥がされ、洗濯物21は持ち上げ側と反対の側に向け落下する。その後、回転ドラム4は、惰性により逆転方向の165度近傍まで回転し、それによって、洗濯物21は、逆転方向の15度近傍まで回転する。
さらに、図6(a)の丸付き符号6のように、正転方向の85度近傍まで、即ち正転方向100度の回転で50rpm以上に急加速し、洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼り付かせて持ち上げる。その後、図6(a)の丸付き符号3のように、急制動をかけて正転方向の165度の位置まで急減速する。このとき、洗濯物21は、回転ドラム4の回転速度が50rpm以下になったとき、すなわち正転方向の135度近傍で、その慣性および自重により、回転ドラム4の内面から剥がされ、洗濯物21は持ち上げ側と反対の側に向け落下する。その後、回転ドラム4は、惰性により正転方向の165度近傍まで回転し、それによって、洗濯物21は、正転方向の15度近傍まで回転する。
また、この弧回転駆動を図6(a)に示す丸付き符号2、4、6、4、6・・の順に正逆交互に行うことで、図6(a)に示す丸付き符号3、5のように、洗濯物21の持ち上げの最終時点である実線位置ないしはその近傍で回転の反転のための減速ないしは制動状態が生じて洗濯物21に与えられていた慣性および自重による強制剥がし力および自重によって回転ドラム4の内面から破線位置から実線位置への矢印で示すような放物線を描いて確実かつ瞬時に剥がして落すことができる。しかも、正逆交互の弧回転駆動によって洗濯物21の持ち上げ位置、落下位置を毎回の弧回転駆動において図6(b)に示すように左右交互に入れ換えられるので、洗濯物21の解し作用を高められるし、機械力を洗濯物21に及ぼすことができる。
なお、乾燥工程でも、前記回転ドラム4の弧回転は、洗濯物21が回転ドラム4の最下位置から90度付近に到達するまでに洗濯物21が回転ドラム4の内面に貼り付く急加速度で駆動する。これにより、洗濯物21が回転ドラム4の最下位置からの持ち上がりにより回転ドラム4の回転に追随できず自重により落下しやすくなる90度付近までに洗濯物21を回転ドラム4の内面に貼り付かせる急加速度によって、洗濯物21を所定の持ち上げ位置まで滑り無く、従って、回転ドラム4の回転速度に見合う慣性を付与して確実に持ち上げ、前記制動状態への変化時点での剥がし、洗濯物21の持ち上げ側と反対の側への落下による洗濯物21の持ち上げ位置、落下位置の左右入れ換えをより確実に達成できる。
ここで、直径が500±50mm程度の回転ドラム4での、重力をドラム中心方向と接線方向に分解したときの、中心方向の力と遠心力が釣り合うドラム回転速度につき、
mrω2=mgcosθ
によって算出したところ、図7に示す「張付きレベル」と記載した太い実線の通りである。図7に示す丸付き符号は、図6(a)に示す丸付き符号と対応している。図7の丸付き符号1で示す停止時から丸付き符号2で示す付近の回転速度60rpm程度に至って洗濯物21の貼り付きが確実に達成される。また、それに必要な回転ドラム4の回転角θは90度弱であり、既述の条件を満足している。また、既述では、洗濯物21の貼り付けによる持ち上げは回転ドラム4の90度を超え200度までとしたが、ここでの例では、丸付き符号2で示す回転角165度付近としてあり、回転角85度付近から丸付き符号3に達する回転角165度付近で停止させる制動により洗濯物21に働く慣性及び自重によって回転ドラム4の内面から剥がれる50rpm付近と少しの減速状態によっても剥がれることが分かる。
このような算出および経験から、正逆弧回転駆動モードでの弧回転の最大回転速度は50rpm以上であり、洗濯物21の剥がしないしは制動は最大回転速度で行われることを特徴とすることにより、正逆弧回転駆動モードによる実効が得られる。
また、正逆弧回転駆動モードでの洗濯物21の剥がしは、例えば図示例のように回転角85度〜165度の範囲で行う制動を利用した50rpm未満の減速で行うことができる。具体的には、50rpm以上で行う弧回転からの減速状態により50rpm以上での回転を続けようとする洗濯物21の慣性によって50rpm未満への減速度に応じた強制剥がし力と重力を洗濯物21に与え落下させられる。
さらに、正逆弧回転駆動モードでの図6(a)丸付き符号2で示す初期弧回転は図7に破線で示すように165度近傍で行い、図6(a)丸付き符号3〜6に示すそれ以降の弧回転は図7に実線で示すように165度近傍〜−15度近傍の範囲で行うことにより、初期弧回転時に図6(a)丸付き符号1に実線で示し、丸付き符号2に破線で示すように回転ドラム4の下部範囲に静止している洗濯物21を90度を超えて200度未満、具体的には160度近傍の弧回転で左右の初期弧回転側の上部(135度近傍)まで持ち上げて回転ドラム4の左右の反対側、具体的には回転ドラム4のほぼ直径線上に落すことを確保し、それ以降の弧回転は200度近傍(165度近傍〜−15度近傍の範囲)として回転ドラム4の左右一方側に寄って、具体的にはほぼ30度寄って落ちた洗濯物21を惰性回転の−15度近傍までの回転を挟み、回転ドラム4の同じ側の165度まで弧回転させる間において、具体的にはほぼ135度近傍位置に持ち上げ、回転ドラム4の左右反対の側に落す挙動をほぼ対称的に、かつ回転ドラム4の直径分となる最大の落下距離を得て確実に達成することができる。これにより洗濯物21の解しと叩きの効果を高められる。
なお、発明者の確認によると、正逆弧回転駆動モードでの弧回転の最大回転速度が50rpm未満の場合、回転ドラム4の急激な制動動作を行っても、回転ドラム4の制動による洗濯物21に働く回転慣性では洗濯物21は回転ドラム4の内面から剥がれる挙動は発生せず、回転ドラム4の逆転時も洗濯物21が回転ドラム4の内面に貼り付いたまま回転ドラム4と一緒に回転するという状態となってしまう場合がある。
さらに、回転ドラム4の回転角度が90度以下の場合は、洗濯物21を持ち上げることができず、また、回転ドラム4の回転角度が200度以上の場合は、回転ドラム4の逆転時、洗濯物21が180度の位置(最上部)を通り越してしまい、図4(b)に示すような洗濯物21が左右交互に入れ換えられるといった動作を行わないものとなってしまう。
脱水工程後および乾燥工程における正逆弧回転駆動モードにおいても、既述したモータ5のパワーアップ改良によって、図7に示すような左右バランスのよい回転速度特性を持った急正弧回転と急逆弧回転との急反転を伴う正逆弧回転駆動モードを永続的にも実行できる技術が実現し、洗濯物21の正転、逆転のいずれにおいても丸付き符号3、5で示す回転ドラム4のほぼ同じ位置に洗濯物21を落下させ、その落下時点から惰性回転の−15度近傍までの回転を挟み、ほぼ同じ回転角位置85度(回転ドラム4の回転は、85+15=100度)近傍で洗濯物21の貼り付き域に達した後、ほぼ同じ回転角θで丸付き符号4、6の位置に達した後の急制動による洗濯物21の回転ドラム4からの剥がしを達成している。また、丸付き符号3で示す剥がれ位置から丸付き符号5で示す剥がれ位置までの所要時間は0.8秒程度であり、丸付き符号5で示す剥がれ位置から丸付き符号3で示す剥がれ位置までの所要時間は0.8秒程度であり、双方等しい。
ところで、駆動負荷の大きい洗濯工程やすすぎ工程で駆動負荷の高い正逆弧回転駆動モードを実行する場合、上記のように駆動負荷に応じモータの駆動電流を設定して脱調を防止する制御によっても、時としてモータを起動し切れないことがあることにつき、本実施の形態では、特に、前記回転ドラムの90度を超え200度未満での急正弧回転と急逆弧回転を交互に繰り返す正逆弧回転駆動モードでの初期弧回転は、つまり、回転ドラム4の静止状態からの正逆弧回転モードを開始するときの初期弧回転は、それとは逆方向に正逆弧回転駆動モードでの弧回転角度よりも小さい角度および正逆弧回転モードでの回転数よりも低い回転数で弧回転させる逆起動からの反転駆動にて開始する。これにより、駆動負荷が大きくなる洗濯工程やすすぎ工程において駆動負荷の高い正逆弧回転駆動モードを実行するのに、初期弧回転は、それとは逆方向に正逆弧回転駆動モードでの弧回転角度よりも小さい角度および正逆弧回転モードでの回転数よりも低い回転数での駆動負荷の小さい条件で弧回転させる図8にSを付して模式的に示した逆起動を行うことで、回転ドラム4を確実に起動させて回転ドラム4の静止慣性による起動負荷が低減すると共に逆起動による回転ドラム4の回転慣性を抑えながら、回転ドラム4の逆起動で持ち上がった洗濯物の重力による回転ドラム4最下位置への回転力を得て、この逆起動後の回転ドラム4の反転駆動にて正逆弧回転駆動モードでの弧回転を確実に開始し、正逆弧回転駆動モードを実行することができ信頼性の高いものとしながら、洗濯物の最大処理量が大きく制限されるのを防止することができる。
それには、前記急正弧回転、急逆弧回転は、ほぼ180度、前記逆起動は、ほぼ90度にて行うのが好適であり、前記急正弧回転、急逆弧回転は、ほぼ45rpm、前記逆起動は、ほぼ30rpmで行うのが好適である。すなわち、前記逆起動を、ほぼ30rpmで行うので、モータ5にかかる負荷を小さく抑えながら、ほぼ90度回転させているので、この逆起動後の回転ドラム4の反転駆動を確実に実行することができる。
また、制御手段9によるインバータ113のスイッチング素子113a〜113fの制御の基に、その時々に必要なモータ5の駆動条件をきめ細かく設定できることに対応して、前記制御手段9は、洗濯工程またはおよびすすぎ工程における正逆弧回転駆動モードの実行中に、モータ5の駆動電流が所定値を上回ったとき、回転ドラム4の回転を通常よりも低速にする制御の採用により、洗濯物の投入量や種類などによって標準の駆動負荷を万一にも超えたような場合でも、モータ5の駆動電流が所定値を超えることで検知して、制御手段9によって回転ドラム4の回転を通常よりも低速にすることで、回転ドラム4の回転角度が不足したり、正逆弧回転しなかったり、最悪停止するといったことを防止し、正逆弧回転駆動モードでの洗濯やすすぎが継続されるようにすることができ、併せ、時間延長などにより洗濯やすすぎの達成度を簡単に満足できる。
また、これとは別に、制御手段9は、洗濯工程またはおよびすすぎ工程における正逆弧回転駆動モードの実行中に、回転ドラム4が所定の回転数に達しない場合に、駆動負荷の低い他の駆動モードに移行するような制御を採用すると、洗濯物の投入量や種類などによって標準の駆動負荷を万一にも超えたような場合でも、モータ5の回転数が所定値に達しないことで検知して、制御手段9によって、正逆弧回転駆動モードより駆動負荷の低い他の駆動モード、例えば、連続回転を正逆交互に繰り返す正逆連続回転駆動モードなどに移行することで、回転ドラ4の回転角度が不足したり、正逆弧回転しなかったり、最悪停止するといったことを防止し、洗濯やすすぎが継続されるようにすることができる。
以上のような正逆弧回転駆動モードの実行中に、制御手段は、駆動電流が所定値を上回ったとき、または、回転ドラム4が所定の回転数に達しないとき、洗濯物が過剰であることを操作パネル14などを利用して外部に告知する制御を採用すると、洗濯物の投入量や種類などによって標準の駆動負荷を万一にも超えたような場合でも、モータ5の駆動電流や回転数の変化から検知して、制御手段9が外部に告知することでユーザに適正な使用を促せるし、正逆弧回転駆動モードが正常に行えないことや、回転速度を低下させること、洗濯効果やすすぎ効果が低下するか、時間が長びくこと、あるいは他のモードに移行させることなどにつき、ユーザが不審を抱くのを回避することができる。
なお、本実施の形態においては、脱水工程および乾燥工程にても回転ドラムの90度を超え200度未満での急正弧回転と急逆弧回転を交互に繰り返す正逆弧回転駆動モードを備えて、これを実行することで、水を含んで重い洗濯物を扱う洗濯、すすぎ工程ではもとより、脱水によって軽くなった洗濯物を取り扱う乾燥工程においても、洗濯物を少なくとも回転ドラムの最下位置から90度を超え180度未満持ち上げ、洗濯物を左右一方へ持ち上げた後、他方へ落とすことを、左右交互に繰り返すことで、洗濯物の絡み、捩れ、皺より、に対する高い解し効果を発揮できるようにし、洗濯物の仕上がり状態を高められる上、洗濯工程やすすぎ工程のように水が共存する場合に比し駆動負荷が低いことに対応して、逆起動を行わないで正逆弧回転駆動モードを確実に実行することができ、逆起動による駆動および時間の無駄が省ける。