JP4851261B2 - 冷却式nmrプローブヘッド - Google Patents

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Description

本発明は、化学分析などに用いられるNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)分析装置においてNMR信号の検出を行うための冷却式NMRプローブヘッドに関する。
NMR信号を検出する手段として、NMR用アンテナコイルを備えたNMRプローブヘッドが知られる。前記NMR用アンテナコイルは、一般に筒状をなし、その内側に挿入されたサンプルに高周波(RF:Radio Frequency)パルスを照射し、その照射から一定時間経過後に前記サンプルから放出される磁気共鳴信号をピックアップする。しかし、このようにして検出されるNMR信号は微弱なため、その検出感度の向上が要求される。
そのための方法として、前記アンテナコイルをヘリウム等の冷媒を用いて極低温まで冷却することにより熱雑音を減らす技術が開発されている。前記NMR信号のS/N比(SNR)は、次式(1)に示されるようにアンテナコイルの温度Tcと抵抗値Rcの積を含む値の平方根に反比例するので、前記アンテナコイルを冷却することはNMR信号の検出感度の著しい向上をもたらす。
SNR∝1/√[T+T+T(R+R] (1)
ここで、Tは測定対象となるサンプルの温度、Rは同サンプルの有効抵抗値、Tは信号を増幅させるためのプリアンプの温度である。
前記アンテナコイルを冷却する手段として、下記特許文献1は、前記アンテナコイルを支持する円筒状の熱伝導体と、GM冷凍機により冷却されたヘリウムガスが導入される熱交換器とを具備するプローブヘッドを開示する。具体的に、この特許文献1の図2は、前記熱伝導体の下端が前記熱交換器の上面に立直状態で結合された構造を示している。
米国特許出願公開第2004/0004478号明細書及び図面
前記(1)式から明らかなように、NMR信号のS/N比の向上のためには、前記アンテナコイルの温度が極力低いことが望ましい。しかし、従来の冷却式NMRプローブヘッドでは、アンテナコイルが20K〜25K程度の温度下で運転されており、その温度が冷却の限界とされている。その理由は次のとおりである。
上述のように、NMR用アンテナコイルは、一般にNMR検出コイルとRF送信コイルとに兼用され、測定用の電力の導入を受ける。この電力の一部はジュール熱として前記アンテナコイル内で消費され、同コイルの温度を上昇させる。一方、前記アンテナコイルを形成する金属(例えば銅やアルミニウム)の比熱は20K〜25Kを下回る温度域では著しく小さいため、僅かなジュール熱も前記アンテナコイルの温度を著しく上昇させてしまう。しかも、前記アンテナコイルの材料である銅やアルミニウムの電気抵抗値は、当該材料の温度に伴って増大し、この電気抵抗の増大が当該アンテナコイルのジュール熱による温度上昇を促進する。その電気抵抗値は、10K〜20K付近の低い温度域では「残留抵抗」と呼ばれる非常に小さな抵抗値に抑えられるが、当該温度域よりも高い温度域、例えば上記のような従来のアンテナコイルの運転温度領域(20K〜25K)では当該温度の増加に伴って急激に増大するという特性を有している。
本発明は、このような事情に鑑み、前記アンテナコイルの有効な冷却によりその運転温度を低下させてNMR信号の検出感度を高めることが可能な冷却式NMRプローブヘッドを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段として、本発明は、アンテナコイルを備え、このアンテナコイルが冷却された状態でNMR信号を検出する冷却式NMRプローブヘッドにおいて、前記アンテナコイルを支持するコイル支持部材と、このコイル支持部材の少なくとも一部の周囲に配置され、当該コイル支持部材との間に冷媒が流通可能な冷却用空間を形成する冷却用部材とを備え、前記冷却用空間を流れる前記冷媒が前記コイル支持部材の外周面に直接接触するように前記冷却用部材が前記コイル支持部材に連結されているものである。
このNMRプローブヘッドでは、前記コイル支持部材が前記冷却用部材との間に冷却用空間を形成し、この冷却用空間を流通する冷媒が前記コイル支持部材の外周面に直接接触する。従って、当該冷媒は当該コイル支持部材と高い効率で熱交換し、このコイル支持部材に支持されるアンテナコイルを有効に冷却する。
前記コイル支持部材のうち少なくとも当該アンテナコイルを支持する部位は、単結晶サファイア、ジルコニア、石英、ダイアモンドの中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成されていることが、好ましい。これらの材料は電気絶縁性が高く、前記アンテナコイルによるNMR信号の検出にほとんど影響を与えない。その一方で熱伝導性が高く、前記アンテナコイルの有効な冷却に寄与する。
本発明において、前記コイル支持部材筒状をなし、前記冷却用部材が、前記コイル支持部材の軸方向の少なくとも一部の外周面を少なくともその径方向外側から全周にわたって覆う形状を有する。さらに、本発明は前記冷却用部材について次の第1の特徴または第2の特徴を含む。
第1の特徴は、前記冷却用部材が、前記コイル支持部材の径方向外側に配置されて当該コイル支持部材の少なくとも一部を取り囲む外周壁と、この外周壁の内側面と前記コイル支持部材の外周面とに挟まれる空間を上下からそれぞれ覆う上蓋及び下蓋とを有し、当該上蓋及び下蓋の内側端がそれぞれ前記コイル支持部材の外周面上に連結されていることである。
第2の特徴は、前記冷却用部材が、前記コイル支持部材の径方向に撓み変位可能な可撓部を有し、この可撓部が前記コイル支持部材に接合されていることである。前記可撓部の撓み変位は、前記コイル支持部材と前記冷却用部材との径方向の熱収縮差を吸収して当該熱収縮差に起因する熱応力を緩和する。
前記冷却用部材と前記アンテナコイルとの位置関係については、前記冷却用部材が前記コイル支持部材の軸方向の一部を覆う形状を有し、前記アンテナコイルが前記コイル支持部材のうち前記冷却用部材により覆われる部分から前記軸方向に外れた部分の外周面上に固定されてもよいし、前記アンテナコイルが前記コイル支持部材のうち前記冷却用部材により覆われる部分に固定されてもよい。前者の場合は、アンテナコイルのメンテナンス作業等が容易になる。後者の場合は、前記コイル支持部材のうち前記冷媒と直接接触する部位に前記アンテナコイルが固定されるので、このアンテナコイルの冷却効率が高い。
さらに、前記アンテナコイルが、前記コイル支持部材のうち前記冷却用部材により覆われる部分の外周面上で前記冷却用空間内を流れる冷媒と直接接触することが可能な位置に固定されているものでは、当該アンテナコイルと冷媒との直接接触が当該アンテナコイルの温度をより有効に低下させる。
前記冷却用部材のうち少なくとも前記アンテナコイルの径方向外側に位置する部位は、単結晶サファイア、ジルコニア、石英、ダイアモンドの中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成されていることが、より好ましい。当該材料で構成された冷却用部材は、前記アンテナコイルによるNMR信号の検出にほとんど影響を与えない。
また本発明は、前記のうちのいずれかの冷却式NMRプローブヘッドと、このNMRプローブヘッドの周囲に設けられる超電導コイルと、この超電導コイルを収容する低温容器とを備えるNMR分析装置である。
このNMR分析装置では、前記NMRプローブヘッドのもつNMR信号の高い検出感度が精度の高いNMR分析を可能にする。
以上のように、本発明によれば、アンテナコイルを支持するコイル支持部材が、冷却用部材とともに冷却用空間を形成し、この冷却用空間を流通する冷媒と直接接触することが可能であるため、当該コイル支持部材に支持される前記アンテナコイルが高い効率で冷却される。このような冷却は前記アンテナコイルの運転温度を有効に低下させ、NMR信号の検出感度を向上させる。この検出感度の向上は、例えば、非常に精度の高いNMR分析装置を得ることを可能にする。
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、NMR(核磁気共鳴)分析装置の全体構成を示したものである。この装置は、液体ヘリウム等の冷媒を収容する低温容器10と、その冷媒中に浸漬される超電導コイル12と、冷却式NMRプローブヘッド16とを備える。前記超電導コイル12は、鉛直軸を中心とする筒状の巻枠と、その周囲に巻付けられる超電導線材とで構成され、この超電導コイル12を径方向内側から覆うように前記低温容器10もドーナツ状をなしている。つまり、この低温容器10の中央には鉛直方向に延びる内側空間14が形成されている。前記冷却式NMRプローブヘッド16は前記内側空間14内に下から挿入される。
この冷却式NMRプローブヘッド16は、電極部18と、この電極部18につながる円柱状のプローブ本体20とを有し、このプローブ本体20が前記内側空間14内に下側から挿入される。
図2は、前記プローブ本体20の上部の内部構造を示す。このプローブ本体20は、その中心軸上に位置するサンプル挿入管22と、このサンプル挿入管22を囲む略円筒状のアンテナコイル24と、このアンテナコイル24を支持するコイル支持部材26と、このコイル支持部材26とともに冷却ステージ28を構成する冷却用部材30と、外筒32とを備える。
前記サンプル挿入管22は、石英等からなり、その内側の空間34内は常温常圧に保たれている。この空間34内には上からサンプル管36が挿入される。このサンプル管36は、NMR分析の対象となるサンプル38を収容する。
前記アンテナコイル24は、略円筒状の周壁を有し、この周壁は例えば金属薄板を丸めることによって形成される。このアンテナコイル24の具体的な形状は限定されず、NMR検出に用いられるRFパルスの周波数その他の仕様に応じて適宜設定される。
前記コイル支持部材26は、この実施の形態では円筒状をなし、前記サンプル挿入管22と同軸に配置される。このコイル支持部材26の上部が前記アンテナコイル24を支持する。詳しくは、当該コイル支持部材26の上部の外周面に前記アンテナコイル24の内周面が接合される。
前記冷却用部材30は前記コイル支持部材26の下部を覆うように配置されて当該コイル支持部材26とともに前記冷却ステージ28を構成する。この冷却ステージ28は中空で、同ステージ28に冷媒導入管40及び冷媒排出管42が接続される。前記冷媒導入管40は図略の冷凍機で冷却されたヘリウムガス等の冷媒を前記冷却ステージ28内に導き、前記冷媒排出管42内は前記冷却ステージ28内の冷媒を系外へ排出する。すなわち、前記冷却ステージ28内に前記冷媒が流される。この冷媒は、前記コイル支持部材26さらにはこのコイル支持部材26に接合された前記アンテナコイル24を有効に冷却する。その詳細は後述する。
前記外筒32は、前記コイル支持部材26及び冷却ステージ28を径方向外側から囲むように配置される。この外筒32は、前記コイル支持部材26及び冷却ステージ28を囲む高さ領域に設けられる上側筒部44と、それよりも下方の下側筒部46とを有する。下側筒部46は例えばアルミニウム合金やステンレス鋼といった金属材料で構成されるのに対し、上側筒部44は合成樹脂等の非金属材料で構成される。この上側筒部44の上端からは、前記アンテナコイル24及びコイル支持部材26を上から覆いながら前記サンプル挿入管22の上端とつながる天井壁48が延び、この天井壁48の下側の空間50が外部から隔離されている。この空間50には図略のポンプにより真空が形成される。すなわち、前記アンテナコイル24等は真空空間50内に収容される。
前記上側筒部44のうち、前記アンテナコイル24を含む高さ領域の部分はPFGコイル52により構成される。このPFGコイル52は、前記サンプル管36内のサンプル38にパルス状の勾配磁場を印加するためのもので、本発明において必須ではない。このPFGコイル52は前記樹脂製の上側筒部44とともにモールドされることが可能である。
次に、前記コイル支持部材26及び冷却用部材30の具体的構造についての好ましい種々の形態を図3〜図17を参照しながら説明する。
図3〜図5に示される第1の形態では、前記コイル支持部材26の上部が前記アンテナコイル24を支持し、同部材26の下半部が前記冷却用部材30とともに前記冷却ステージ28を構成する。
前記コイル支持部材26は、電磁波に対して透明な絶縁材料で形成される。これは、当該コイル支持部材26の存在が前記アンテナコイル24によるNMR信号の検出に影響を与えるのを防ぐためである。このコイル支持部材26の材料は、さらに、熱伝導性に優れたものであることが好ましい。具体的には、単結晶サファイア、ジルコニア(ZrO等)、石英、ダイアモンドが好適な例として挙げられる。特に単結晶サファイアは低温域での熱伝導率に優れていて前記アンテナコイル24の有効な冷却に大きく寄与する。ちなみに、4.2Kでの単結晶サファイアの熱伝導率は251[W/K/m]であり、10Kでのそれは2870[W/K/m]である。
前記コイル支持部材26と前記アンテナコイル24との接合は例えば図3に示すような接合材料25を媒介とするロウ付けにより行うことができる。特に、前記コイル支持部材26が前記単結晶サファイアからなる場合、このコイル支持部材26と金属製(アルミニウム製や銅製)のアンテナコイル24との接合のための接合材料25には、Tiを含むAg−Cu合金に代表される、活性銀ロウと呼ばれる接合材が好適である。
前記冷却用部材30は、全体が前記冷媒導入管40及び冷媒排出管42とともに銅等の金属材料により一体に形成され、前記コイル支持部材26の下半部の外周面を径方向外側から全周にわたって覆う形状を有する。そして、当該コイル支持部材26とともに、ドーナツ状の冷却用空間60を囲む冷却ステージ28を構成する。
具体的に、この冷却用部材30は、外周壁54と上蓋55及び下蓋56とを一体に有する。前記外周壁54は、コイル支持部材26の下半部を取り囲むようにその径方向外側に配置される。前記上蓋55及び下蓋56は、前記外周壁54の内側面と前記コイル支持部材26の外周面とに挟まれる空間を上下からそれぞれ覆うドーナツ状をなし、各蓋55,56の径方向内側端がそれぞれ前記コイル支持部材26の外周面に接合される。
前記上蓋55の径方向内側端は、当該上蓋55の本体部分から径方向内側に向かって斜め下方に延びる薄肉の可撓部55aである。この可撓部55aの下端部は前記コイル支持部材26の径方向に撓み変位可能であり、当該下端部の内側面が前記接合材料25と同様の接合材料58によって前記コイル支持部材26の外周面に接合される(図4)。同様に、前記下蓋56の径方向内側端は、当該下蓋56の本体部分から径方向内側に向かって斜め上方に延びる薄肉の可撓部56aであり、この可撓部56aの上端部も前記コイル支持部材26の径方向に撓み変位可能であって、その上端部の内側面が前記接合材料58と同様の接合材料によって前記コイル支持部材26の外周面に接合される。各可撓部55a,56aの撓みは、前記コイル支持部材26と前記冷却用部材30との径方向の相対変位を吸収する。
前記冷媒導入管40及び前記冷媒排出管42はともに前記下蓋56につながっている。従って、前記冷媒は前記冷却用空間60に対して下から導入され、かつ、下から排出される。
この第1の形態において、前記コイル支持部材26の下半部は、前記冷却用部材30とともに冷却用空間60を囲んでいてこの冷却用空間60内を冷媒が流通するので、この冷媒は前記コイル支持部材に直接接触可能である。従って、例えば前記冷却用部材30の外側面に前記コイル支持部材26の下端部が接合される構造に比べると、前記冷媒は非常に高い効率で前記コイル支持部材26を冷却することができ、このコイル支持部材26に接合されるアンテナコイル24の温度を非常に低い温度まで低下させることが可能である。例えば、前記冷媒として4.2Kの液体ヘリウムが使用された場合、アンテナコイル24の温度は6K以下の温度まで低下することが可能である。
前記冷却は、前記コイル支持部材26と前記冷却用部材30との間にその材質の相違による熱収縮差を与える。例えば、前記コイル支持部材26が単結晶サファイア製である場合、その室温での線膨張係数は5×10−6〜5.8×10−6[1/K]であるのに対し、前記冷却用部材30が銅製である場合、その線膨張係数は前記の線膨張係数よりも著しく大きい33×10−6[1/K]である。しかし、前記各可撓部55a,56aの撓みが前記熱収縮差を吸収し、この熱収縮差に起因する熱応力の発生を有効に抑止する。
これら可撓部55a,56aの向きは限定されない。図6及び図7が示す第2の形態のように、前記可撓部55aが上向きに延び、前記可撓部56aが下向きに延びていても前記熱収縮差の吸収が可能である。
図8及び図9は、第3の形態として、前記コイル支持部材26の下部が前記上蓋55の径方向中間部分に対してこの上蓋55を貫通するように上から挿入される形態を示している。この形態では、前記コイル支持部材26の下部が前記冷却用部材30によって径方向外側と径方向内側の双方から覆われ、冷却用空間60内を流れる冷媒と直接接触する。
この第3の形態では、前記上蓋55から下向きに内外一対の薄肉の可撓部55b,55cが延び、これらの可撓部55b,55cがそれぞれ前記コイル支持部材26の内側面と外側面とに接合される。これら可撓部55b,55cの撓みも前記コイル支持部材26と前記冷却用部材30との径方向の熱収縮差を吸収することが可能である。
しかし、以上記した可撓部55a〜55c,56aは本発明に必須のものではない。前記熱収縮差が小さい状況では前記可撓部の省略が可能である。例えば、前記図3に示される可撓部55a,56aを取り去った形状をもつ上蓋55及び下蓋56の径方向内側端面がそのまま前記コイル支持部材26の外周面に突き当たる状態で当該外周面と接合されてもよい。
第4の形態を図10及び図11に示す。この形態に係る冷却用部材30は、コイル支持部材26の周囲をその軸方向全域にわたって覆う。この冷却用部材30は、前記図3に示される冷却用部材30と同様に外周壁54と上蓋55および下蓋56を有し、これら上蓋55及び下蓋56の径方向内側端がそれぞれ前記コイル支持部材26の上端外周面及び下端外周面に接合される。
この形態に係るアンテナコイル24は、前記コイル支持部材26の軸方向中間部位の外周面上に固定されている。すなわち、このアンテナコイル24は、前記コイル支持部材26が前記冷却用部材30により覆われている部位に固定されていて、冷却用空間60内に存在している。
前記冷却用部材30は、前記コイル支持部材26と同様に、電磁波に対して透明な絶縁材料で形成される。これは、当該冷却用部材30の存在、特に前記アンテナコイル24の径方向外側に位置する外周壁54の存在が前記アンテナコイル24によるNMR信号の検出に影響を与えるのを防ぐためである。前記コイル支持部材26と同様、前記冷却用部材30の材料も熱伝導性に優れたものであることが好ましい。従って、その具体例として前記の単結晶サファイア、ジルコニア(ZrO等)、石英、ダイアモンドが挙げられ、特に単結晶サファイアが好適となる。
前記冷却用空間60内に冷媒を導入するための冷媒導入管40及び前記冷却用空間60から冷媒を排出するための冷媒排出管42は金属製であり、両管40,42の上端が活性銀ロウ等の接合材料58によって前記冷却用部材30の下蓋56に接合される。
前記図10及び図11に示されるアンテナコイル24は、前記冷却用空間60内に存在するので、この冷却用空間60内を流れる冷媒と直接接触する。このようにアンテナコイル24と直接接触する冷媒は、当該アンテナコイル24を例えば前記図3に示されるように配置されるアンテナコイル24よりもさらに高い効率で冷却する。
前記コイル支持部材26が前記アンテナコイル24を支持する部位は、必ずしも当該コイル支持部材26の外周面に限られない。図12及び図13に示される第5の形態では、前記アンテナコイル24が前記コイル支持部材26の内周面上に固定される。これらの図に示されるアンテナコイル24は冷却用空間60内の冷媒と直接接触することはないが、前記コイル支持部材26のうち前記冷媒と直接接触する部位に固定されているので、高い効率で冷却され得る。
前記冷却用部材30は、必ずしもその全体が絶縁材料で構成される必要はなく、少なくとも前記アンテナコイル24の径方向外側に位置する部分が絶縁材料であればよい。図14及び図15が示す第6の形態に係る冷却用部材30は、外周壁54と上蓋55及び下蓋56を備えるとともに、そのうちの外周壁54のみがコイル支持部材26と同様の絶縁材料で構成され、上蓋55及び下蓋56は銅等の金属材料で構成される。
前記上蓋55及び下蓋56の内周面と前記コイル支持部材26の外周面との間にはそれぞれシール部材61,62が介在し、同様に前記上蓋55及び下蓋56の外周面と前記外周壁54の内周面との間にもシール部材63,64が介在する。これらのシール部材61〜64の材質は例えばインジウムが好適である。
前記シール部材61,63は、前記上蓋55とこの上蓋55の上面側に締結される固定板65,67との間にそれぞれ挟持される。同様に、前記シール部材62,64は前記下蓋56とこの下蓋56の下面側に締結される固定板66,68との間にそれぞれ挟持される。前記上蓋55及び下蓋56は前記各シール部材61〜64が弾性変形する状態で前記コイル支持部材26と前記外周壁54との間に介装される。前記各締結は、図15に示されるようなボルト70と前記上蓋55及び前記下蓋56に形成されるねじ孔72との組合せにより行われる。前記両蓋55,56の内周面と前記コイル支持部材26の外周面との間、及び前記両蓋55,56の外周面と前記外周壁54の内周面との間には、それぞれ微小な隙間δが確保され、その隙間を前記シール部材61〜64が塞ぐ。
本発明において、アンテナコイルの個数は限定されない。複数のアンテナコイルが軸方向に配列された形態や、同軸状に径方向に配列された形態も本発明に含まれる。
図16及び図17は後者の形態である第7の形態を示す。これらの図16,図17に示されるNMRプローブヘッドは、前記図10に示されるNMRプローブヘッドにもう一つのアンテナコイル74が付加されたものである。このアンテナコイル74は、前記図10に示されるアンテナコイル24よりも大径で、このアンテナコイル24の径方向外側で当該アンテナコイル24と同軸の位置に配される。
このアンテナコイル74は、円筒状のコイル支持部材76により支持される。このコイル支持部材76は、前記図10に示されるコイル支持部材26よりも大径で、前記コイル支持部材26との冷却用部材30とで囲まれる冷却用空間60内に配置される。詳しくは、前記下蓋56上に立設され、この第2のコイル支持部材76の上部の外周面上に前記第2のアンテナコイル74が接合材料25を介して接合される。
前記両コイル支持部材26,76はいずれも冷却用空間60内に支持される。従って、この冷却用空間60内を流れる冷媒が前記両コイル支持部材26,76と直接接触してこれらを高い効率で冷却する。
図3に示されるNMRプローブヘッドであって、コイル支持部材26の外径が10mm、内径が8mm、アンテナコイル24の下端から上蓋55の下面までの距離が20mm、アンテナコイル24の材質がアルミニウムであるNMRプローブヘッドを、4.2Kの冷媒を用いて運転する。前記アンテナコイル24が1時間あたり1Wの発熱をするとしても、このアンテナコイル24の温度は5.9K以下に抑えられる。この温度でのアルミニウムの抵抗率の値は4.2Kでの値と変わらない。従って、測定中のアンテナコイル24の温度上昇によるインピーダンスマッチングのずれは無視することが可能である。
本発明の実施の形態に係るNMR分析装置の断面正面図である。 前記NMR分析装置に組み込まれるNMRプローブの断面正面図である。 前記NMRプローブヘッドの具体的構造についての第1の形態を示す断面正面図である。 図3のIV部の拡大図である。 図3のV−V線断面図である。 前記NMRプローブヘッドの具体的構造についての第2の形態を示す断面正面図である。 図7のVII部の拡大図である。 前記NMRプローブヘッドの具体的構造についての第3の形態を示す断面正面図である。 図8のIX部の拡大図である。 前記NMRプローブヘッドの具体的構造についての第4の形態を示す断面正面図である。 図10のXI−XI線断面図である。 前記NMRプローブヘッドの具体的構造についての第5の形態を示す断面正面図である。 図12のXIII−XIII線断面図である。 前記NMRプローブヘッドの具体的構造についての第6の形態を示す断面正面図である。 図14のXV部の拡大図である。 前記NMRプローブヘッドの具体的構造についての第7の形態を示す断面正面図である。 図16のXVII−XVII線断面図である。
符号の説明
16 NMRプローブヘッド
20 プローブ本体
24 アンテナコイル
26 コイル支持部材
28 冷却ステージ
30 冷却用部材
40 冷媒導入管
42 冷媒排出管
54 外周壁
55 上蓋
56 下蓋
55a,55b,55c,56a 可撓部
60 冷却用空間

Claims (8)

  1. アンテナコイルを備え、このアンテナコイルが冷却された状態でNMR信号を検出する冷却式NMRプローブヘッドにおいて、
    前記アンテナコイルを支持するコイル支持部材と、
    このコイル支持部材の少なくとも一部の周囲に配置され、当該コイル支持部材との間に冷媒が流通可能な冷却用空間を形成する冷却用部材とを備え、
    前記冷却用空間を流れる前記冷媒が前記コイル支持部材の外周面に直接接触するように前記冷却用部材が前記コイル支持部材に連結され
    前記コイル支持部材は筒状をなし、
    前記冷却用部材は、前記コイル支持部材の軸方向の少なくとも一部の外周面を少なくともその径方向外側から全周にわたって覆う形状を有し、
    前記冷却用部材は、前記コイル支持部材の径方向外側に配置されて当該コイル支持部材の少なくとも一部を取り囲む外周壁と、この外周壁の内側面と前記コイル支持部材の外周面とに挟まれる空間を上下からそれぞれ覆う上蓋及び下蓋とを有し、当該上蓋及び下蓋の内側端がそれぞれ前記コイル支持部材の外周面上に連結されていることを特徴とする冷却式NMRプローブヘッド。
  2. アンテナコイルを備え、このアンテナコイルが冷却された状態でNMR信号を検出する冷却式NMRプローブヘッドにおいて、
    前記アンテナコイルを支持するコイル支持部材と、
    このコイル支持部材の少なくとも一部の周囲に配置され、当該コイル支持部材との間に冷媒が流通可能な冷却用空間を形成する冷却用部材とを備え、
    前記冷却用空間を流れる前記冷媒が前記コイル支持部材の外周面に直接接触するように前記冷却用部材が前記コイル支持部材に連結され、
    前記コイル支持部材は筒状をなし、
    前記冷却用部材は、前記コイル支持部材の軸方向の少なくとも一部の外周面を少なくともその径方向外側から全周にわたって覆う形状を有し、
    前記冷却用部材は、前記コイル支持部材の径方向に撓み変位可能な可撓部を有し、この可撓部が前記コイル支持部材に接合されていることを特徴とする冷却式NMRプローブヘッド。
  3. 請求項1または2記載の冷却式NMRプローブヘッドにおいて、
    前記コイル支持部材のうち少なくとも当該アンテナコイルを支持する部位が、単結晶サファイア、ジルコニア、石英、ダイアモンドの中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成されていることを特徴とする冷却式NMRプローブヘッド。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の冷却式NMRプローブヘッドにおいて、
    前記冷却用部材は、前記コイル支持部材の軸方向の一部を覆う形状を有し、
    前記アンテナコイルは前記コイル支持部材のうち前記冷却用部材により覆われる部分から前記軸方向に外れた部分の外周面上に固定されることを特徴とする冷却式NMRプローブヘッド。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の冷却式NMRプローブヘッドにおいて、
    前記アンテナコイルは、前記コイル支持部材のうち前記冷却用部材により覆われる部分に固定されることを特徴とする冷却式NMRプローブヘッド。
  6. 請求項記載の冷却式NMRプローブヘッドにおいて、
    前記アンテナコイルは、前記コイル支持部材のうち前記冷却用部材により覆われる部分の外周面上で前記冷却用空間内を流れる冷媒と直接接触することが可能な位置に固定されていることを特徴とする冷却式NMRプローブヘッド。
  7. 請求項5または6記載の冷却式NMRプローブヘッドにおいて、
    前記冷却用部材のうち少なくとも前記アンテナコイルの径方向外側に位置する部位が、単結晶サファイア、ジルコニア、石英、ダイアモンドの中から選ばれる少なくとも一つの材料により構成されていることを特徴とする冷却式NMRプローブヘッド。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の冷却式NMRプローブヘッドと、
    このNMRプローブヘッドの周囲に設けられる超電導コイルと、
    この超電導コイルを収容する低温容器とを備えることを特徴とするNMR分析装置。
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