JP4849564B2 - ヨウ素系偏光フィルムおよび偏光板の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水と接触させて膨潤させる膨潤工程、
(2)膨潤されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液中で染色する染色工程、
(3)染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ホウ酸を含む水溶液に浸漬するホウ酸処理工程、
(4)ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水洗する水洗工程、および、
(5)ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する延伸工程。
偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、たとえば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度、好ましくは98〜100モル%程度である。ポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度、好ましくは1,500〜5,000程度である。
本発明においては、染色処理の前に、上記ポリビニルアルコール系原反フィルムの膨潤処理を行なう。膨潤処理は、ポリビニルアルコール系原反フィルムを、アルドン酸系化合物を含有する水溶液と接触させることにより行なわれる。より具体的には、ポリビニルアルコール系原反フィルムを、アルドン酸系化合物を含有する水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。これにより、ポリビニルアルコール樹脂が膨潤するとともに、アルドン酸系化合物がその表面に吸着および/または樹脂中に取り込まれ、アルドン酸系化合物を含有する偏光フィルムが得られる。本発明により得られるアルドン酸系化合物を含有する偏光フィルムは耐久性(耐変色性)に優れている。さらに、本発明により得られる偏光フィルムは、平行の透過光の色相が、従来のものに比べて、より中性色(ニュートラル色)に近くなるという特徴も併せ持つ。ここで、上記したように本発明においては、通常、当該膨潤工程の後、ポリビニルアルコール系樹脂を複数種類の水溶液に浸漬する工程を含んでいるが、このような水溶液浸漬処理を経た後でも、偏光フィルムは、高い耐久性を示す。
膨潤されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液中で染色される。ヨウ素およびヨウ化カリウムを含む水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり0.01〜1質量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり0.5〜20質量部程度である。この水溶液の温度は、20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、20〜1,800秒程度である。
ヨウ素染色後のホウ酸処理は、ヨウ素により染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行なわれる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2〜15質量部程度、好ましくは5〜12質量部程度である。このホウ酸水溶液は、ヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液がヨウ化カリウムを含有する場合、そのヨウ化カリウムの量は、水100質量部あたり、通常40質量部以下、好ましくは30質量部以下である。またこのヨウ化カリウムは、水100質量部あたり0.1質量部以上、さらには1質量部以上含有させることが好ましい。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行なわれる。水洗後は、通常乾燥処理が施される。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸処理は、上記膨潤工程の前に行なわれてもよいし、染色工程の前、染色工程と同時、または染色工程の後に行なわれてもよい。一軸延伸を染色工程の後で行なう場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行なってもよいし、ホウ酸処理中に行なってもよい。もちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行なうことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行なう乾式延伸であってもよいし、溶剤で膨潤した状態にて延伸を行なう湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
上記偏光フィルムを用い、その片面または両面に接着剤層を介して保護フィルムを積層することにより偏光板を得ることができる。保護フィルムとしては、たとえば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアリレート樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン樹脂フィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂フィルムなどが挙げられる。保護フィルムの厚みは、通常10〜200μm程度である。偏光板は、一方の表面、すなわち、保護フィルムの露出面に、反射防止層や防眩層、ハードコート層、接着層など、公知の各種機能性層を有していてもよい。
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の水100質量部にフジグルコン(扶桑化学工業(株)製 グルコノラクトン)5質量部を加えたグルコン酸溶液に1分間浸漬し膨潤させた。次に、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.15/5/100の水溶液に、28℃で43秒間浸漬した。その後、/ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が質量比で9/9.5/100の水溶液に、76℃で300秒間浸漬した。15℃の純水で1秒間水洗した後、50℃で300秒間乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向され、さらにグルコン酸が吸着された偏光フィルムを得た。ネックイン率は42%((1−(乾燥後の偏光フィルム幅)/(膨潤前のポリビニルアルコール幅))×100)であった。
グルコン酸量をそれぞれ10部、15部、20部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、偏光フィルムを作製した。
膨潤工程において、グルコン酸を含まない60℃の水に1分間浸漬したこと、および水洗工程における水洗時間を2秒とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、偏光フィルムを作製した。
得られた偏光フィルムについて、乾熱下における耐久性を評価した。結果を表1に示す。なお、乾熱下における耐久性の評価において、透過率による比較障害を避けるため、いずれの偏光フィルムも、耐久性評価前の単体の視感度補正透過率を43.6±0.1%、視感度補正偏光度を99.95%以上とした。
ΔL*=(L*)after−(L*)before [1]
Δa*=(a*)after−(a*)before [2]
Δb*=(b*)after−(b*)before [3]
ここで、beforeは耐久性試験前の値、afterは耐久性試験後の値である。
ΔE*={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2 [4]
全体の色差ΔE*の値が大きいほど、乾熱下における変色の度合いが大きいものと判断する。
Claims (6)
- ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ヨウ素を用いて染色することによりヨウ素系偏光フィルムを製造する方法であって、
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水と接触させて膨潤させる膨潤工程と、
膨潤されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液中で染色する染色工程と、を少なくとも有し、
前記膨潤工程における、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの膨潤は、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをアルドン酸およびその塩から選択されるアルドン酸系化合物を含有する水溶液と接触させることにより行なわれる、ヨウ素系偏光フィルムの製造方法。 - 前記アルドン酸系化合物は、グルコン酸またはその塩である請求項1に記載のヨウ素系偏光フィルムの製造方法。
- 染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ホウ酸を含む水溶液に浸漬するホウ酸処理工程と、
ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水洗する水洗工程と、をさらに含み、
前記膨潤工程の前、または前記膨潤工程終了後から前記水洗工程の前までの間に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する延伸工程を備える請求項1または2に記載のヨウ素系偏光フィルムの製造方法。 - 前記膨潤工程の前に、前記延伸工程を備える請求項3に記載のヨウ素系偏光フィルムの製造方法。
- 前記染色工程中および/または前記ホウ酸処理工程中に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸が行なわれる請求項3に記載のヨウ素系偏光フィルムの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法によりヨウ素系偏光フィルムを製造した後、該ヨウ素系偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムを貼合する、ヨウ素系偏光板の製造方法。
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