JP6735541B2 - 偏光フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、色相に優れるとともに耐熱性にも優れる偏光フィルムと、それを用いた色相および耐熱性に優れる偏光板に関する。
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。多くの偏光板は偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護フィルムが貼り合わされた構造を有しており、偏光板を構成する偏光フィルムとしてはポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸してなるマトリックス(一軸延伸して配向させた延伸フィルム)にヨウ素系色素(I3 -やI5 -等)が吸着しているものが主流となっている。このような偏光フィルムは、ヨウ素系色素を予め含有させたPVAフィルムを一軸延伸したり、PVAフィルムの一軸延伸と同時にヨウ素系色素を吸着させたり、PVAフィルムを一軸延伸した後にヨウ素系色素を吸着させたりするなどして製造される(特許文献1等を参照)。
特開平5−245858号公報
ところで近年、消費電力低減のためバックライトの輝度を低くする要求があり、このような輝度の低いバックライトを用いた場合であっても画面が暗くならないようにするために単体光線透過率の高い偏光板が求められている。また、偏光板の色相を改善するため偏光フィルムの単体b値を低下させることも求められている。
通常、単体光線透過率と単体b値とは概ね比例関係にあって、例えば偏光フィルムを製造する際の染色工程における染色の程度を弱めるなどして単体光線透過率を向上させれば単体b値はある程度低下する傾向にある。一方、単体光線透過率を特定範囲に固定した上でさらに単体b値を低下させる方法として、偏光フィルムを製造するための延伸工程後にヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬する方法がある。しかしながら、このような方法を採用して得られた偏光フィルムは耐熱性に劣る問題のあることが分かってきた。
そこで本発明は、色相に優れるとともに耐熱性にも優れる偏光フィルム、および、それを用いた色相および耐熱性に優れる偏光板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のけん化度のPVAを含むPVAフィルムを原反フィルムとして用い、延伸工程後にヨウ化カリウムの含有率を少なくした洗浄浴を用いて偏光フィルムを製造すると、単体b値が従来よりも小さくカリウムの含有量も少ない従来にない偏光フィルムが得られること、および、このような偏光フィルムは、色相に優れるとともに耐熱性にも優れることを見出し、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
[1]PVAを含むマトリックスにヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムであって、単体光線透過率をX%とし単体b値をYとした際に0.5X+Y≦23.7の関係を満たし、カリウム原子の含有量がヨウ素原子の含有量の6.5質量倍以下である、偏光フィルム;
[2]PVAを含むマトリックスにヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムであって、単体光線透過率をX%とし単体b値をYとした際に0.5X+Y≦23.7の関係を満たし、温度80℃の条件下に24時間放置した際の単体光線透過率(X’%)と放置前の単体光線透過率(X%)との差が0.4%以下である、偏光フィルム;
[3]カリウム原子の含有量がヨウ素原子の含有量の6.5質量倍以下である、上記[2]の偏光フィルム;
[4]PVAのけん化度が97〜99.5モル%である、上記[1]〜[3]のいずれか1つの偏光フィルム;
[5]Xが43以上である、上記[1]〜[4]のいずれか1つの偏光フィルム;
[6]偏光度が99.5%以上である、上記[1]〜[5]のいずれか1つの偏光フィルム;
[7]上記[1]〜[6]のいずれか1つの偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムが貼り合わされた偏光板;
に関する。
本発明によれば、色相に優れるとともに耐熱性にも優れる偏光フィルム、および、それを用いた色相および耐熱性に優れる偏光板が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の偏光フィルムは、PVAを含むマトリックスにヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムであって、単体光線透過率をX%とし単体b値をYとした際に0.5X+Y≦23.7の関係を満たす。そして、本発明の1つの態様では、当該偏光フィルムにおけるカリウム原子の含有量が、当該偏光フィルムにおけるヨウ素原子の含有量の6.5質量倍以下である(以下、当該偏光フィルムを「偏光フィルムA」と称する場合がある)。また本発明の別の態様では、温度80℃の条件下に24時間放置した際の単体光線透過率(X’%)と放置前の単体光線透過率(X%)との差が0.4%以下である(以下、当該偏光フィルムを「偏光フィルムB」と称する場合がある)。
本発明の偏光フィルムでは、単体光線透過率をX%とし単体b値をYとした際に0.5X+Y≦23.7の関係式を満たすことが重要である。一般に、偏光フィルムに含まれるヨウ素系色素の濃度を下げるなどして偏光フィルムの単体光線透過率を向上させると単体b値は低下する傾向にあるが、本発明の偏光フィルムは0.5X+Yの値が23.7以下であって、より低い単体b値を有する。色相により一層優れる偏光フィルムひいては偏光板となることから、当該0.5X+Yの値は23.6以下であることが好ましく、23.5以下であることがより好ましく、23.4以下であることがさらに好ましく、23.2以下、さらには23以下であってもよい。一方、当該0.5X+Yの値があまりに小さい偏光フィルムはその製造が困難であることから、当該0.5X+Yの値は10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。なお、偏光フィルムの単体b値は、測定対象となる偏光フィルム単体(1枚)のb値を意味し、分光光度計(例えば日本分光株式会社製「V7100」等)を用いて求めることができ、具体的には、実施例において後述する方法により測定することができる。
また偏光フィルムAでは、それに含まれるカリウム原子の含有量がヨウ素原子の含有量の6.5質量倍以下、すなわち当該偏光フィルムに含まれるカリウム原子の質量を当該偏光フィルムに含まれるヨウ素原子の質量で除した値が6.5以下であることも重要である。従来の偏光フィルムではより低い単体b値とするために、偏光フィルムを製造するための延伸工程後にヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬されてきた。そのため、得られる偏光フィルムでは、ヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合が高く、このような偏光フィルムは耐熱性に劣る問題のあることが分かってきた。これに対し偏光フィルムAでは、ヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合が6.5質量倍以下であり耐熱性に優れる。当該耐熱性は、温度80℃の条件下に24時間放置した際の単体光線透過率の差(Δ透過率)で示すことができる。すなわち、本発明は別の態様として、温度80℃の条件下に24時間放置した際の単体光線透過率(X’%)と放置前の単体光線透過率(X%)との差が0.4%以下である偏光フィルムBを包含する。当該偏光フィルムBは偏光フィルムAの要件を満たしていてもよい。
偏光フィルムの耐熱性の観点から、本発明の偏光フィルムにおけるカリウム原子の含有量は、ヨウ素原子の含有量の6.4質量倍以下であることが好ましく、6.3質量倍以下であることがより好ましく、6.2質量倍以下であることがさらに好ましく、6質量倍以下、さらには5.8質量倍以下であってもよい。一方、偏光性能により優れる偏光フィルムが得られることなどから、本発明の偏光フィルムにおけるカリウム原子の含有量は、ヨウ素原子の含有量の4質量倍以上であることが好ましく、5質量倍以上であることがより好ましく、5.5質量倍以上であることがさらに好ましい。なお、ヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合は、偏光フィルムに含まれるヨウ素原子およびカリウム原子のそれぞれの含有量をICP発光分析などによって求めた上で、これらの含有量より求めることができ、具体的には、実施例において後述する方法により求めることができる。
一方、温度80℃の条件下に24時間放置した際の単体光線透過率(X’%)と放置前の単体光線透過率(X%)との差(Δ透過率)は、0.35%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましく、0.25%以下であることがさらに好ましく、0.24%以下であることが特に好ましく、0.23%以下であることが最も好ましい。当該Δ透過率の下限に特に制限はないが、Δ透過率があまりに小さい偏光フィルムはその製造が困難であることなどから、当該Δ透過率は、0.15%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましい。
本発明の偏光フィルムの単体光線透過率(X%)は、消費電力低減のための輝度の低いバックライトにも適用可能な偏光板の製造に好ましく使用することができることから、43%以上であることが好ましく、43.7%以上であることがより好ましく、44.2%以上であることがさらに好ましい。一方、偏光度を向上させることがより容易になることなどから、単体光線透過率(X%)は、45%以下であることが好ましく、44.8%以下であることがより好ましい。なお、偏光フィルムの単体光線透過率(X%)は、測定対象となる偏光フィルム単体(1枚)の光線透過率を意味し、分光光度計(例えば日本分光株式会社製「V7100」等)を用いて求めることができ、具体的には、実施例において後述する方法により測定することができる。また温度80℃の条件下に24時間放置した際の単体光線透過率(X’%)についても、当該条件下(例えば5%RH以下の乾燥条件下)に放置後の偏光フィルムを用いて単体光線透過率(X%)と同様の方法により測定することができる。
本発明の偏光フィルムの偏光度は、得られるLCDのコントラスト比を向上させることができることから、99.5%以上であることが好ましく、99.7%以上であることがより好ましく、99.8%以上であることがさらに好ましい。偏光度は分光光度計(例えば日本分光株式会社製「V7100」等)を用いて求めることができ、具体的には、実施例において後述する方法により測定することができる。
本発明の偏光フィルムでは、PVAを含むマトリックスにヨウ素系色素が吸着している。このような偏光フィルムは、例えば、PVAフィルムを原反フィルムとして用いて、ヨウ素系色素による染色および延伸を施すなどして製造することができる。
当該原反フィルムとして使用されるPVAフィルムを構成するPVA、ひいては得られる偏光フィルムにおけるマトリックスを構成するPVAとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られるものを使用することができる。上記のビニルエステルの中でも、PVAの製造の容易性、入手容易性、コスト等の点から、酢酸ビニルが好ましい。
上記のポリビニルエステルは、単量体として1種または2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
上記のビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸などを挙げることができる。上記のポリビニルエステルは、前記した他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
上記のポリビニルエステルに占める前記した他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下、さらには5モル%以下であってもよい。特に前記した他の単量体が、(メタ)アクリル酸、不飽和スルホン酸などのように、得られるPVAの水溶性を促進する可能性のある単量体である場合には、偏光フィルムの製造過程においてPVAが溶解するのを防止するために、ポリビニルエステルにおけるこれらの単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
PVAは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。当該グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体;不飽和スルホン酸またはその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。PVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位(グラフト変性部分における構造単位)の割合は、PVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
PVAは、その水酸基の一部が架橋されていてもよいし架橋されていなくてもよい。また上記のPVAは、その水酸基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、これらの化合物と反応せずアセタール構造を形成していなくてもよい。
PVAの平均重合度は1,000〜9,500の範囲内であることが好ましく、当該平均重合度は、1,500以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましく、また、9,200以下であることがより好ましく、6,000以下であることがさらに好ましい。平均重合度が1,000以上であることにより、偏光フィルムの偏光性能が向上する。一方、平均重合度が9,500以下であることにより、PVAの生産性が向上する。なお、PVAの平均重合度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
PVAフィルムを構成するPVA、ひいては得られる偏光フィルムにおけるマトリックスを構成するPVAのけん化度に特に制限はないが、単体b値が従来よりも小さい本発明の偏光フィルムをより簡単に製造することができ、しかも偏光度等の偏光性能にもより優れる偏光フィルムとなることなどから、当該けん化度は97モル%以上であることが好ましく、97.5モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましく、98.5モル%以上であることが特に好ましく、また、99.5モル%以下であることが好ましく、99.3モル%以下であることがより好ましく、99.2モル%以下であることがさらに好ましく、99.1モル%以下であることが特に好ましく、99モル%未満(例えば98.9モル%以下)であることが最も好ましい。なお、本明細書におけるPVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。けん化度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
PVAフィルムは、それを延伸する際の延伸性向上の観点から可塑剤を含むことが好ましい。当該可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどを挙げることができ、PVAフィルムはこれらの可塑剤の1種または2種以上を含むことができる。これらの中でも、延伸性の向上効果の観点からグリセリンが好ましい。
PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、それに含まれるPVA100質量部に対して1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。当該含有量が1質量部以上であることにより、PVAフィルムの延伸性をより向上させることができる。一方、当該含有量が20質量部以下であることにより、PVAフィルムが柔軟になり過ぎて取り扱い性が低下するのを防止することができる。PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA100質量部に対して、2質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましく、5質量部以上であることが特に好ましく、また、15質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることがさらに好ましい。
なお、偏光フィルムの製造条件などにもよるが、PVAフィルムに含まれる可塑剤は偏光フィルムを製造する際に溶出するなどするため、その全量が偏光フィルムに残存するとは限らない。
PVAフィルムは、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤、界面活性剤などの成分をさらに含んでいてもよい。
PVAフィルムにおけるPVAの含有率は、所望とする偏光フィルムの調製のしやすさなどから、50〜99質量%の範囲内であることが好ましく、当該含有率は、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることが特に好ましく、また、98質量%以下であることがより好ましく、96質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以下であることが特に好ましい。
PVAフィルムの厚みに特に制限はなく、目的とする偏光フィルムの厚みなどに応じて適宜設定することができるが、偏光フィルムを製造する際の一軸延伸のしやすさなどの観点から当該厚みは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることが特に好ましく、8μm以上であってもよく、また、100μm以下であることが好ましく、65μm以下であることがより好ましく、45μm以下であることがさらに好ましく、35μm以下、さらには25μm以下とすることもできる。なお、PVAフィルムは単層であっても、PVAの層と他の層とが積層された積層体であってもよいが、本発明の効果がより顕著に奏されることから単層であることが好ましい。積層体の場合にはPVAの層の厚みが上記範囲にあることが好ましい。
PVAフィルムの形状は特に制限されないが、偏光フィルムを製造する際に連続して使用することができることから長尺のフィルムであることが好ましい。長尺のフィルムの長さ(長さ方向の長さ)は特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、1〜20,000mの範囲内とすることができる。
PVAフィルムの幅は特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば0.1m以上とすることができるが、近年、液晶テレビや液晶モニターの大画面化が進行している点から、PVAフィルムの幅を0.5m以上、より好ましくは1.0m以上にしておくと、これらの用途に好適である。一方、PVAフィルムの幅があまりに広すぎると実用化されている装置で偏光フィルムを製造する場合に均一に延伸することが困難になる傾向があることから、PVAフィルムの幅は7m以下であることが好ましい。
PVAフィルムの膨潤度は、偏光フィルムの生産性や性能の観点などから、180〜220%の範囲内であることが好ましく、当該膨潤度は、185%以上であることがより好ましく、190%以上であることがさらに好ましく、195%以上であることが特に好ましく、また、215%以下であることがより好ましく、210%以下であることがさらに好ましく、205%以下であることが特に好ましい。PVAフィルムの膨潤度は、実施例において後述する方法により測定することができる。PVAフィルムの膨潤度は、例えば、熱処理の条件を強くすることによって、より小さい値に調整することができる。
上記のPVAフィルムの製造方法に特に制限はなく、従来公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、PVAが液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVAおよび液体媒体を含みPVAが溶融した製膜原液を用いて製膜することができる。
製膜原液の調製に使用される液体媒体としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷や回収性の点から水が好適に使用される。
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の含有割合)は、製膜方法、製膜条件などによっても異なるが、一般的には、50〜95質量%、さらには55〜90質量%、特に60〜85質量%であることが好ましい。製膜原液の揮発分率が低過ぎると、製膜原液の粘度が高くなり過ぎて、製膜原液調製時の濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点の少ないPVAフィルムの製造が困難になる傾向がある。一方、製膜原液の揮発分率が高過ぎると、製膜原液の濃度が低くなり過ぎて、工業的なPVAフィルムの製膜が困難になる傾向がある。
PVAフィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えば、湿式製膜法、ゲル製膜法、流延製膜法、押出製膜法などを採用することができる。また、これらの組み合わせによる方法などを採用することもできる。以上の製膜方法の中でも流延製膜法または押出製膜法が、厚みおよび幅が均一で、物性の良好なPVAフィルムが得られることから好ましく採用される。
具体的な製膜方法としては、T型スリットダイ、ホッパープレート、I−ダイ、リップコーターダイなどを用いて、製膜原液を回転する加熱したロール(あるいはベルト)の周面上に均一に吐出し、このロール(あるいはベルト)上に吐出された膜の一方の面から揮発性成分を蒸発させて乾燥してPVAフィルムとするか、あるいは、このように乾燥させた後、1個または複数個の回転する加熱したロールの周面上でさらに乾燥したり、熱風乾燥装置の中を通過させてさらに乾燥したりしてPVAフィルムを製膜する方法が挙げられる。製膜後のPVAフィルムは、巻き取り装置により一旦巻き取った後に必要に応じて巻き出すなどして後述する熱処理を施してもよいが、上記のようにして連続的に製膜されたPVAフィルムに対して後述する熱処理を連続的に施した後に巻き取ってもよい。
製膜に使用されるロールの表面温度としては、例えば、50〜100℃とすることができる。また、製膜原液をベルト上に吐出する場合の乾燥温度としては、例えば、50〜100℃とすることができる。
PVAフィルムは、偏光フィルムの製造工程における生産性を改善するなどの理由から、熱処理を施したものであることが好ましい。熱処理に供されるPVAフィルムの膨潤度は、300%以上であることが好ましく、400%以上であることがより好ましく、また、1,000%以下であることが好ましい。熱処理に供されるPVAフィルムの揮発分率は、例えば10質量%以下、さらには8質量%以下とすることができる。
熱処理における温度は、本発明の偏光フィルムをより容易に製造することができるなどの観点から、130℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましく、137℃以上であることがさらに好ましく、139℃以上であることが特に好ましく、140℃を超えることが最も好ましく、また、145℃以下であることが好ましい。
熱処理時間に特に制限ないが、本発明の偏光フィルムをより容易に製造することができるなどの観点から、0.5分以上であることが好ましく、0.8分以上であることがより好ましく、また、30分以下であることが好ましく、15分以下であることがより好ましい。
上記のPVAフィルムを用いて偏光フィルムを製造する方法に特に制限はなく、PVAフィルムを延伸する工程を含む方法により製造することができ、具体的には例えば、まずPVAフィルムを、膨潤工程に供し、次いで染色工程に供し、必要に応じてさらに架橋工程に供し、その後延伸工程に供し、必要に応じてさらに固定処理工程および/または洗浄工程に供し、そして乾燥工程に供する方法により製造することができる。
膨潤工程は、PVAフィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水に浸漬する際の水の温度としては、20〜40℃の範囲内であることが好ましく、当該温度は、22℃以上であることがより好ましく、25℃以上であることがさらに好ましく、また、38℃以下であることがより好ましく、35℃以下であることがさらに好ましい。当該温度を20〜40℃の範囲内にすることでPVAフィルムを効率良く膨潤させることができる。また、水に浸漬する時間としては、0.1〜5分間の範囲内であることが好ましく、0.5〜3分間の範囲内であることがより好ましい。0.1〜5分間の範囲内にすることでPVAフィルムを効率良く膨潤させることができる。なお、水に浸漬する際の水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。
染色工程における染色処理はヨウ素系色素(I3 -やI5 -等)を用いて行うことができ、具体的には例えば、PVAフィルムをヨウ素系色素を含む水溶液中に浸漬することにより行うことができる。なお、ヨウ素系色素は1種単独であっても2種以上であってもどちらでもよく、例えば、I3 -およびI5 -のように平衡混合物であってもよい。
ヨウ素系色素を含む水溶液中におけるヨウ素系色素の濃度は、使用されるヨウ素系色素の種類などに応じて適宜設定することができ、例えば0.001〜1質量%の範囲内とすることができるが、ヨウ素系色素を含む水溶液としてヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合には、ヨウ素系色素を効率良くPVAフィルムに吸着させることができることから、使用されるヨウ素(I2)の濃度として、0.01〜2質量%の範囲内であることが好ましく、0.02〜0.5質量%の範囲内であることがより好ましく、上記使用されるヨウ素の質量に対する使用されるヨウ化カリウム(KI)の質量の割合として、10〜200質量倍の範囲内であることが好ましく、15〜150質量倍の範囲内であることがより好ましい。ヨウ素系色素を含む水溶液には、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物を含んでいてもよい。ヨウ素系色素を含む水溶液の温度は、ヨウ素系色素を効率良くPVAフィルムに吸着させることができることから、5〜50℃の範囲内であることが好ましく、15〜40℃の範囲内であることがより好ましい。なお、ヨウ素系色素を予め含有させたPVAフィルムを用いる場合には、染色工程を省略することができる。
PVAフィルムに対して架橋工程を行うことで、比較的高い温度で湿式延伸する際にPVAが水へ溶出するのをより効果的に防止することができる。この観点から架橋工程は染色工程の後であって延伸工程の前に行うのが好ましい。架橋工程は、架橋浴として架橋剤を含む水溶液にPVAフィルムを浸漬することにより行うことができる。当該架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を使用することができる。架橋浴における架橋剤の濃度は1〜15質量%の範囲内であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、また、7質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。架橋剤の濃度が1〜15質量%の範囲内にあることで十分な延伸性を維持することができる。架橋浴はヨウ化カリウム等の助剤を含有してもよい。架橋浴の温度は、20〜50℃の範囲内、特に25〜40℃の範囲内とすることが好ましい。当該温度を20〜50℃の範囲内にすることで効率良く架橋することができる。
PVAフィルムを延伸する際の延伸方法に特に制限はなく、湿式延伸法および乾式延伸法のうちのいずれで行ってもよい。湿式延伸の場合は、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液中で行うこともできるし、上記した染色浴中や後述する固定処理浴中で行うこともできる。また乾式延伸法の場合は、室温のまま延伸を行ってもよいし、熱をかけながら延伸してもよいし、吸水後に延伸してもよい。これらの中でも、安定して延伸しやすい点から湿式延伸法が好ましく、得られる偏光フィルムにおける幅方向の厚みの均一性の点から、ホウ酸水溶液中で延伸することがより好ましい。ホウ酸水溶液中におけるホウ酸の濃度は0.5〜6.0質量%の範囲内であることが好ましく、当該濃度は、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましく、また、5.0質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましい。ホウ酸の濃度が0.5〜6.0質量%の範囲内にあることで幅方向の厚みの均一性に優れる偏光フィルムが得られる。上記したホウ素化合物を含む水溶液はヨウ化カリウムを含有してもよく、その濃度は0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。ヨウ化カリウムの濃度が0.01〜10質量%の範囲内にあることで偏光性能がより良好な偏光フィルムが得られる。
PVAフィルムを延伸する際の温度は、幅方向の厚みの均一性に優れる偏光フィルムが得られやすいことなどから、5〜90℃の範囲内であることが好ましく、当該温度は、10℃以上であることがより好ましく、また、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。また、単体b値が従来よりも小さい本発明の偏光フィルムをより簡単に安定して製造することができ、しかも偏光度等の偏光性能にもより優れる偏光フィルムとなることなどから、PVAフィルムを延伸する際の温度は、PVAフィルムの軟化点温度よりも1℃以上低い温度であることが好ましく、2℃以上低い温度であることがより好ましく、3℃以上低い温度であることがさらに好ましく、また、8℃以下低い温度であることが好ましく、7℃以下低い温度であることがより好ましく、6℃以下低い温度、さらには5℃以下低い温度であってもよい。なお上記PVAフィルムの軟化点は使用される原反フィルムの状態(偏光フィルムの製造に供する前)のPVAフィルムの軟化点を意味し、PVAフィルムのサンプルを25℃の蒸留水中に配置し、5℃/分の昇温速度で昇温した際の熱水変形温度として求めることができ、具体的には実施例において後述する方法により測定することができる。
PVAフィルムを延伸する際の延伸倍率は、単体b値が従来よりも小さい本発明の偏光フィルムをより簡単に安定して製造することができ、しかも偏光度等の偏光性能にもより優れる偏光フィルムとなることなどから、4倍以上であることが好ましく、4.5倍以上であることがより好ましく、5倍以上であることがさらに好ましく、5.5倍以上であることが特に好ましく、また、8倍以下であることが好ましく、7.5倍以下であることがより好ましく、7.2倍以下であることがさらに好ましく、7倍以下であることが特に好ましい。PVAフィルムの延伸は一度に行っても、複数回に分けて行ってもどちらでもよいが、複数回に分けて行う場合には各延伸の延伸倍率を掛け合わせた総延伸倍率が上記範囲内にあればよい。なお、本明細書における延伸倍率は延伸前のPVAフィルムの長さに基づくものであり、延伸をしていない状態が延伸倍率1倍に相当する。
PVAフィルムの延伸は、得られる偏光フィルムの性能の観点から一軸延伸が好ましい。PVAフィルムを延伸する場合における一軸延伸の方向に特に制限はなく、長さ方向への一軸延伸や横方向への一軸延伸を採用することができるが、延伸倍率を上げやすく偏光性能により優れる偏光フィルムが得られることから長さ方向への一軸延伸が好ましい。長さ方向への一軸延伸は、互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変える方法などにより行うことができる。一方、横方向への一軸延伸はテンター型延伸機などを用いて行うことができる。
固定処理工程は、主として、PVAフィルムへのヨウ素系色素の吸着を強固にするために行われる。固定処理工程は、延伸前、延伸中または延伸後のPVAフィルムを固定処理浴に浸漬することにより行うことができる。固定処理浴としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種または2種以上を含む水溶液を使用することができる。固定処理浴として使用されるホウ素化合物を含む水溶液中におけるホウ素化合物の濃度は、一般に0.1〜15質量%の範囲内、特に1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。当該濃度を0.1〜15質量%の範囲内にすることでヨウ素系色素の吸着をより強固にすることができる。固定処理浴の温度は、10〜60℃の範囲内、特に15〜40℃の範囲内であることが好ましい。当該温度を10〜60℃の範囲内にすることでヨウ素系色素の吸着をより強固にすることができる。なお固定処理浴中には、必要に応じてヨウ素化合物や金属化合物を添加してもよいが、得られる偏光フィルムにおけるヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合を特定範囲とするために、当該固定処理浴中にはヨウ化カリウムを含有させないか、あるいは、その濃度を低くしてもよい。固定処理浴中におけるヨウ化カリウムの具体的な濃度としては、例えば、10質量%以下、さらには6質量%以下とすることもできるが、得られる偏光フィルムにおけるヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合をより低減するためには、当該濃度は、2.5質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下、さらには0.8質量%以下であってもよい。
洗浄工程は、フィルム表面の不要な薬品類や異物を除去したり、最終的に得られる偏光フィルムの光学的性能を調節したりするために行われることが多い。洗浄工程は、PVAフィルムを洗浄浴に浸漬させたり、PVAフィルムに洗浄液を散布したりすることによって行うことができる。洗浄浴や洗浄液としては水を使用することができる。また固定処理浴と同様、得られる偏光フィルムにおけるヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合を特定範囲とするために、当該洗浄浴や洗浄液中にはヨウ化カリウムを含有させないか、あるいは、含有させる場合であってもその濃度を低くすることが好ましい。洗浄浴および洗浄液中におけるヨウ化カリウムの具体的な濃度としては、2.5質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下、さらには0.8質量%以下であってもよい。
乾燥工程における乾燥の条件は特に制限されないが、30〜150℃の範囲内、特に50〜130℃の範囲内の温度で乾燥を行うのが好ましい。30〜150℃の範囲内の温度で乾燥することで寸法安定性に優れる偏光フィルムが得られやすい。
偏光フィルムは、通常、その片面または両面に保護フィルムを貼り合わせて偏光板にして使用される。保護フィルムとしては、光学的に透明でかつ機械的強度を有するものが挙げられ、具体的には例えば、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどを使用することができる。また高温多湿条件下においても良好な耐久性を有する偏光板となることから、当該保護フィルムの水蒸気透過量は300g/m2/日以下であることが好ましく、200g/m2/日以下であることがより好ましく、150g/m2/日以下であることがさらに好ましい。なお保護フィルムの水蒸気透過量はカップ法(JIS Z 0208)により測定することができる。偏光フィルムと保護フィルムとを貼り合わせるための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤などを挙げることができ、PVA系接着剤が好適である。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において採用された、PVAフィルムの膨潤度および軟化点、ならびに、偏光フィルムの単体光線透過率(X%)、単体b値(Y)、偏光度、ヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合および耐久性の各測定または評価方法を以下に示す。
[PVAフィルムの膨潤度]
測定対象となるPVAフィルムから幅方向に10cm、長さ方向に20cmの長方形のサンプルを切り出し、このサンプルをさらに幅が2〜3mm、長さが20cmの短冊状にカットした。その後、これらの短冊状のサンプル全てを30℃の1,000gの蒸留水中にそのまま浸漬した。30分間浸漬後に短冊状のサンプルを取り出し、遠心分離機(KOKUSAN XEM−KL−5886)を用いて3,000rpmで5分間遠心脱水し、脱水後の質量「N」(短冊状のサンプル全ての合計)を測定した。続いて、その短冊状のサンプルを105℃の乾燥機で16時間乾燥した後、質量「M」(短冊状のサンプル全ての合計)を測定し、式:膨潤度(%)=100×N/Mにより膨潤度を算出した。なお同様の測定を3回行い、その平均値を採用した。
[PVAフィルムの軟化点]
測定対象となるPVAフィルムの軟化点を、第一理化株式会社製自動軟化点測定装置「EX−820」を使用して測定した。具体的には、PVAフィルムから3cm角のサイズの正方形のサンプルを切り出し、このサンプルを中央に直径1cmの円形の穴のあいた厚み1mmで3cm角のステンレス板と中央に1cm×2cmの長方形の穴のあいた厚み1mmで3cm角のステンレス板との間に挟み、円形の穴のあいたステンレス板の方を上面にして架台に設置して、円形の穴の中央に位置するフィルム上にJIS B 1501:2009に定める鋼球(呼び:3/8(直径9.525mm)、等級:G60、質量:3.5g±0.05g)を載せた。続いて25℃の蒸留水を750mL入れ、毎分5℃で昇温し、フィルムが架台から25mmの位置まで降下したときの温度をPVAフィルムの軟化点とした。
[偏光フィルムの単体光線透過率(X%)、単体b値(Y)および偏光度]
以下の実施例または比較例で得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、偏光フィルムの長さ方向に4cmの長方形のサンプルを採取し、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製「V7100」)を用いて、このサンプルを当該分光光度計に設置して単体光線透過率(X%)、単体b値(Y)および偏光度を求めた。なお、単体b値(Y)の測定においては、JIS Z 8722(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行った。
[偏光フィルムにおけるヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合]
以下の実施例または比較例で得られた偏光フィルムから約0.005gのサンプルを切り出して精評し、それを20gの純水に溶解させた。得られた溶液をICP発光分析装置(島津製作所製「ICPE−9000」)で分析し、偏光フィルムに含まれるヨウ素原子の含有量およびカリウム原子の含有量を求め、これらの値から偏光フィルムにおけるヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合(質量倍)を算出した。
[偏光フィルムの耐久性]
以下の実施例または比較例で得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、偏光フィルムの長さ方向に4cmの長方形のサンプルを採取し、額縁状のステンレス製金枠2枚で挟んだ。これを温度80℃、湿度5%RH以下の環境下に24時間放置(暴露処理)した。当該暴露処理後のサンプルの単体光線透過率を上記した単体光線透過率(X%)の測定と同様にして求め、暴露処理前後での単体光線透過率の差をΔ透過率と定義し、偏光フィルムの耐久性評価指標とした。
[比較例1]
PVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物、重合度2,400、けん化度99.9モル%)100質量部に対して、可塑剤としてグリセリンを10質量部、および、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを0.1質量部含む長尺で単層のPVAフィルム(厚み30μm、長さ1.5m、幅30cm、膨潤度200%、軟化点67.9℃)に対して、膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程、固定処理工程および乾燥工程を行うことにより偏光フィルムを製造した。
すなわち、上記のPVAフィルムを、温度30℃の水中に1分間浸漬している間に元の長さの2倍に長さ方向(MD)に一軸延伸(1段目延伸)した後、使用量としてヨウ素を0.02質量%およびヨウ化カリウムを0.6質量%の濃度で水に混合してなる温度30℃の染色浴に2分間浸漬している間に元の長さの3倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(2段目延伸)し、次いでホウ酸を2.5質量%の濃度で含有する温度32℃の架橋浴に2分間浸漬している間に元の長さの3.6倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(3段目延伸)し、さらにホウ酸を2.8質量%およびヨウ化カリウムを5質量%の濃度で含有する温度56.6℃のホウ酸/ヨウ化カリウム水溶液中に浸漬している間に元の長さの6.3倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(4段目延伸)し、その後、ホウ酸を1.5質量%およびヨウ化カリウムを5質量%の濃度で含有する温度22℃のヨウ化カリウム水溶液(洗浄浴)中に5秒間浸漬することによりフィルムを洗浄し、続いて60℃の乾燥機で240秒間乾燥することにより、厚み12μmの偏光フィルムを製造した。
得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により、単体光線透過率(X%)、単体b値(Y)、偏光度、ヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合および耐久性を測定ないし評価した。その結果を表1に示した。
[比較例2]
4段目延伸後のフィルムの洗浄において使用したヨウ化カリウム水溶液(洗浄浴)におけるヨウ化カリウムの濃度を2.4質量%に変更したこと以外は、比較例1と同様にしてPVAフィルムおよび偏光フィルムを製造し、得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により、単体光線透過率(X%)、単体b値(Y)、偏光度、ヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合および耐久性を測定ないし評価した。その結果を表1に示した。
[実施例1]
PVAとして酢酸ビニルの単独重合体のけん化物(重合度2,400、けん化度98.9モル%)のPVAを含むこと以外は比較例1および2で用いたのと同様のPVAフィルム(ただし、膨潤度は200%であり、軟化点は62.9℃であった)を用い、また、4段目延伸の温度を56℃とし、延伸倍率を6.6倍としたこと以外は、比較例2と同様にして偏光フィルムを製造し、得られた偏光フィルムを用いて上記した方法により、単体光線透過率(X%)、単体b値(Y)、偏光度、ヨウ素原子の含有量に対するカリウム原子の含有量の割合および耐久性を測定ないし評価した。その結果を表1に示した。

Claims (6)

  1. けん化度が97〜99.5モル%であるポリビニルアルコールを含むマトリックスにヨウ素系色素が吸着している偏光フィルムであって、単体光線透過率をX%とし単体b値をYとした際に0.5X+Y≦23.7の関係を満たし、カリウム原子の含有量がヨウ素原子の含有量の4質量倍以上6.5質量倍以下である、偏光フィルム。
  2. 前記偏光フィルムを温度80℃の条件下に24時間放置した際の単体光線透過率(X’%)と、放置前の単体光線透過率(X%)との差が0.4%以下である、請求項1に記載の偏光フィルム。
  3. 前記単体光線透過率(X’%)と前記単体光線透過率(X%)との差が0.2%以上である、請求項2に記載の偏光フィルム。
  4. Xが43以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
  5. 偏光度が99.5%以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光フィルム。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムが貼り合わされた偏光板。
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