JP4849387B2 - 油脂類を原料とする脂肪酸エステルの製造方法 - Google Patents

油脂類を原料とする脂肪酸エステルの製造方法 Download PDF

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本発明は、油脂類に含まれるトリグリセリドをアルコールと反応させてエステル交換により脂肪酸エステルを製造するための有用な方法に関するものである。
炭酸ガス排出規制に対応する取り組みの一つとして、化石燃料に代えて植物起源の燃料を利用する試みが盛んに行われている。通常植物から得られるパーム油、菜種油等はトリグリセリドを主体とするため、軽油に比べて粘度が高く、また、融点の関係から寒冷地では凝固する等のため、そのままではディーゼルエンジンに使用することは必ずしも適当でない。このため、アルキルアルコールを用いてトリグリセリドとの間でエステル交換反応を行い、脂肪酸アルキルエステルとすることによって軽油と同等のディーゼル燃料を製造することが試みられ、以下のような各種の方法が提案されている。
(A)化学触媒(酸触媒又はアルカリ触媒)を使用するもの。a.反応を常圧で行うものとしては、苛性ソーダ触媒(例えば特許文献1、2)、苛性カリ触媒(例えば特許文献3)を使用する方法が提案されており、小規模な実用化例も散在するが、生産速度が低く、且つ又触媒を副生グリセリンとの混合物から回収することがコスト的に困難であり、現状ではグリセリンと共に有害廃棄物として処理せざるを得ない。この種の方法は、小規模生産には適用可能であるが、環境問題に寄与し得るような大量生産を行うには不適当である。b.生産速度を向上させるため、加圧(10Mpa)、240℃、7〜8倍過剰のメタノール使用の条件下で、アルカリ触媒若しくは亜鉛触媒を使用する例(非特許文献1)もあるが、高温・高圧のため設備投資・ランニングコストの増大は避けられず、安全面についての配慮も必要である。また、触媒の回収については、上記aに述べたと同様の問題がある。
(B)リパーゼ等酵素触媒を使用するもの。酵素触媒は添加のほかシリカ等を担体とした固定触媒の形でも使用され、食品関係への応用が多く見られるが、ディーゼル燃料についても提案(例えば特許文献4)がなされている。しかしながら、酵素触媒は化学触媒に比べて効果が小さく、反応に長時間を要し、エステル変換率も低い。新種酵素の探索は行われているものの、現時点では大量生産には不適当である。
(C)触媒を使用せず、超臨界状態で反応を行うもの。上記の問題を解決するため、近時超臨界状態における化学種の高活性を利用する方法が提案(例えば特許文献5,6,7)されて来ている。これらの方法では超臨界状態のアルコール(メタノールの場合、臨界温度238℃、臨界圧7.9MPaであるので、これ以上の温度・圧力条件下にあるもの)を無触媒で油脂類と反応させ、エステル交換を行うことで目的のアルキルエステルを得ている。反応速度は温度・圧力を上げれば向上するので、連続大量生産も可能と考えられるが、高温・高圧反応であるため、上記(A)bと同様、設備投資・ランニングコストの増大は避けられず、操業の安全性についても相当の配慮が必要である。この種の方法は未だ実用化検証の段階には至っていない。
(D)触媒を使用して、超臨界状態で反応を行うもの。上記の難点を補うため、最近時においては超臨界状態による化学種の活性化に加えて、触媒(多くは固定触媒)を併用して経済的に有利な反応条件を得ようとする試みが提案(例えば特許文献8,9)されている。これらの方法は、ニッケル含有触媒の添加或いは塩基性固体触媒等の使用により亜臨界状態まで緩和された条件での反応を可能にするものであるが、なお相当の高温・高圧を必要とし、程度の差こそあれ上記(A)b及び(C)にのべて難点を残している。この種の方法は未だ実用化検証の段階には至っていない。
(E)加水分解−エステル化の2段階反応を行うもの。更に最近の新聞情報では、直接のエステル交換よりも反応の制御がし易く、実際の工業化に適するものとして、超臨界状態でトリグリセリドを加水分解し、生成した脂肪酸をアルコールでエステル化する2段階法が提案されているが、工程中における水分の除去の必要性、高温高圧水による装置上の問題等の困難が予想される。
(F)未公開の、常圧下で無触媒若しくは固体触媒のみを用いて反応をおこなうもの。本発明者らは、気液接触手段を選ぶことにより、過熱気化メタノールと原料油脂類とを大気圧近傍(0.101〜0.150MPa)・温度350℃以下の条件下で反応させ、良好な収率でエステル燃料を得る方法(特許文献10、11,12)を提案した。このうち、今回の発明に関連する内容は以下の如くである。
F1.大気圧近傍(0.101〜0.150MPa)・温度350℃以下の条件下で、過熱気化アルコールと原料油脂類とを反応させる。
F2.触媒は使用しないか、又は金属系固体触媒(反応後固相として気・液相から容易に分離されるもの)のみを使用する。
F3.反応時、原料油脂類に対し化学当量よりも過剰のアルコールを使用し、必要に応じ複数箇所においてアルコールを供給する。
F4.充填層・棚段塔・反応管等により過熱気化アルコールと原料油脂類との気液接触機会、触媒を使用する場合には併せて原料と触媒との接触機会の増大を図る。
F5.反応生成物は最終的に過剰の過熱気化アルコールと共に混合気相流として反応容器から取り出し、冷却してアルキルエステルとグリセリンとを逐次若しくは同時に凝縮させて採取する。
F6.アルキルエステルとグリセリンとを同時に凝縮させて採取する場合には、分離槽において比重分離を行い、それぞれの製品を得る。
特開平9−235573 特開平7−197047 特開平10−245586 特開2002−233393 特開2000−143586 特開2000−109883 特開2000−204392 特開2001−302584 特開2002−308825 特願2003−436641 特願2004−40565 特願2004−40566 Ullman:Enziklopadie der Techniscen Chemie Vol.11 p.432(1976)
本発明においては、上記(A)〜(E)に述べた従来技術の持つ生産性・装置・操業上の問題点を解決するため、(F)の提案を基盤として、安全且つ低コストの設備と操業条件とによって、性能・価格とも軽油に匹敵する植物起源のアルキルエステル燃料を提供しようとする。具体的には、プラントとして、ア.要求処理量の変動に対して柔軟に対応出来ること(連続・半連続生産がとも可能なシステムであること)、イ.原料の品質の変動によって製品の質が影響を受けないこと、ウ.格別の精製工程を設けずに燃料として高品質な製品が得られ、副生グリセリンを商品として採取出来ること、エ.常圧反応で操業の安全度が高く、エネルギー消費が少ないこと、オ.無公害、エネルギー自給が可能であることを実現し得る製造方法を提案する。
本発明者らは上記(F)の製造方法について更に検討を進めた結果、より具体的且つ総合的な手段として、以下のような発明を行った。
(1)油脂類と一価アルコール(以下単にアルコールと言う)とから脂肪酸エステルを製造する方法のうち、触媒を使用せず、必要な理論化学当量よりも過剰のアルコールを過熱気化アルコール(該アルコールの圧力に対応する沸点よりも高温の状態に保持されたアルコール)の状態で反応に使用し、油脂類とアルコールとを圧力0.090〜0.405Mpa、温度350〜150℃の条件で反応させ、反応生成物を過熱気化アルコールとの混合気相流(気相の反応生成物と過熱気化アルコールとの混合物若しくはこれに液滴状の反応生成物を伴うもの)として取得する方法において、油脂類と一価アルコールとの反応を行うための装置を主体とする工程(以下反応工程と言う)、反応の直前に、原料を昇温するための工程(以下最 終予熱工程と言う)、熱交換により反応生成物の冷却と原料(原料アルコール及び原料油脂類。以下同様)の昇温とを行うための装置を主体とする工程、反応生成物を分離・取得するための装置を主体とする工程、反応ガスと原料との顕熱熱交換を行うための工程(以下高温熱交換工程と言う)、反応生成物の凝縮潜熱と原料との熱交換を行うための工程(以下凝縮熱回収工程と言う)、凝縮した反応生成物と過熱気化アルコールとを分離するための工程(以下反応生成物分離工程と言う)、反応生成物と分離された過熱気化アルコール(以下循環アルコールと言う)と原料アルコ−ル及び/又は冷却水との顕熱熱交換を行うための工程(以下温調熱交換工程と言う)及び原料アルコールによる循環アルコールの断熱冷却を行うための工程(以下断熱冷却工程と言う)を連結する該過熱気化アルコールの循環経路を設け、該循環経路を原料アルコ−ル供給手段、原料油脂類供給手段及び反応生成物分離・排出手段を備えた密閉系(過熱気化アルコールが循環経路の外に出ることの無い系)とすることを特徴とする、脂肪酸エステルの製造方法。
)過熱気化アルコール循環経路に常時一定量の過熱気化アルコールを循環させ、製造原料は気化状態で該循環経路に原料アルコ−ル供給手段又は原料油脂類供給手段を通して供給され、該循環過熱気化アルコール(以下循環アルコールと言う)によって搬送されて反応工程に入り、反応生成物(気相)は循環アルコールによって搬送され、反応生成物分離・排出手段を通して製品として取得されることを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
)熱交換により反応生成物の冷却と原料の昇温とを行うための装置を主体とする工程において、反応工程から取り出された、反応生成物を含む過熱気化アルコール(以下反応ガスと言う)と原料との熱交換に際し、反応ガスの顕熱部と潜熱部とを分離して熱交換を行うことを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
)高温熱交換工程に、高温側が反応ガスで低温側が原料アルコールを随伴する循環アルコール(以下反応原料アルコールと言う)である第1高温熱交換器と、高温側が反応ガスで低温側が原料油脂類である第2高温熱交換器とを設けることを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
)凝縮熱回収工程に、高温側が反応ガスで低温側が反応原料アルコールである第1凝縮熱交換器と、高温側が反応ガスで低温側が原料油脂類である第2凝縮熱交換器とを設けることを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
)温調熱交換工程に、高温側が循環アルコールで低温側が原料油脂類である温調熱交換器を設けることを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
)断熱冷却工程に、高温側が循環アルコールで低温側が原料アルコールである断熱冷却器を設けることを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
)熱交換により反応生成物の冷却と原料の予熱とを行うための装置を主体とする工程において、高温熱交換工程に、高温側が反応ガスで低温側が反応原料アルコールである第1高温熱交換器と、高温側が反応ガスで低温側が原料油脂類である第2高温熱交換器とを設け、凝縮熱回収工程に、高温側が反応ガスで低温側が反応原料アルコールである第1凝縮熱交換器と、高温側が反応ガスで低温側が原料油脂類である第2凝縮熱交換器とを設け、温調熱交換工程に、高温側が循環アルコールで低温側が原料油脂類である温調熱交換器を設け、断熱冷却工程に、高温側が循環アルコールで低温側が原料アルコールである断熱冷却器を設けた熱回収システムを構築し、反応工程を出た高温度の反応ガスを2分岐させてそれぞれ第1及び第2高温熱交換器に入れ、各高温熱交換器を出た各分岐の中間温度の反応ガスをそれぞれ第1及び第2凝縮熱交換器に入れ、各凝縮熱交換器を出た低温度の反応ガスを合流させて反応生成物分離工程に入れ、反応生成物を凝縮物として分離し、得られた循環アルコールを順次温調熱交換器及び断熱冷却器に入れて更に温度を下げ、断熱冷却器において所要の原料アルコールを加えて反応原料アルコールとし、順次第1凝縮熱交換器及び第1高温熱交換器の低温側に送り、加熱・昇温して反応に使用し、一方原料油脂類を順次温調熱交換器・第2凝縮熱交換器・第2高温熱交換器の低温側を通して加熱・昇温して反応に使用する熱交換工程を含むことを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
)高温熱交換工程において、原料油脂類を熱媒として反応ガスと反応原料アルコールとの間で熱交換を行うことを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
10)高温熱交換工程において、高温側が反応ガスで、低温側が熱媒(原料油脂類)である高温熱交換器と、高温側が熱媒(原料油脂類)で低温側が反応原料アルコールであるアルコール加熱用高温熱交換器とを設け、高温熱交換器低温側の熱媒出口とアルコール加熱用高温熱交換器高温側の熱媒入口、アルコール加熱用高温熱交換器高温側の熱媒出口と高温熱交換器低温側の熱媒入口とを導管で連結して熱媒の循環回路を形成し、該循環回路の途中に循環ポンプと高温熱媒(原料油脂類)取り出し手段とを備え、反応ガスの熱によって反応原料アルコールを加熱することを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
11)温調熱交換工程から凝縮熱回収工程に至る過熱気化アルコール循環経路の中間に原料アルコール(液体)供給手段とガス攪拌手段とを備えた混合断熱冷却器を設け、原料アルコール(液体)により回収アルコールを断熱冷却することを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
12)凝縮熱回収工程において反応ガス中の反応生成物を一括凝縮させ、該凝縮物を含む過熱気化アルコールを反応生成物分離工程に送り、凝縮物分離手段(例えば濾過材)を備えた反応生成物分離装置に通して該凝縮物と過熱気化アルコールとを分離し、採取した該凝縮物を製品分離工程に送り、比重分離等の製品分離手段を備えた製品分離装置に入れて脂肪酸エステルとグリセリンとを分取することを特徴とする、請求項記載の脂肪酸エステルの製造方法。
13)反応工程で生ずる反応残渣を、焼却装置(例えば熱媒ボイラー)により焼却処理を行う工程(以下反応残渣焼却工程と言う)に送り、焼却の際に発生する熱によって熱媒を加熱して高温熱源を得ることを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
14)反応残渣焼却工程において得られる高温熱源(熱媒)を最終予熱工程に送り、反応原料アルコール及び原料油脂類と熱交換を行うことを特徴とする、(12)記載の脂肪酸エステルの製造方法。
15)反応工程、高温熱交換工程、凝縮熱回収工程、反応生成物分離工程、温調熱交換工程、断熱冷却工程、最終予熱工程、過熱気化アルコール循環手段、製品分離工程及び反応残渣焼却工程を主工程として構成され、反応工程、高温熱交換工程、凝縮熱回収工程、反応生成物分離工程、温調熱交換工程、断熱冷却工程及び最終予熱工程の全てを連結する過熱気化アルコール循環経路を有し、熱交換により反応ガスの持つ熱を回収して原料の予熱を行うと共に反応生成物を一括凝縮させ、得られた凝縮物から脂肪酸エステルとグリセリンとを分離採取し、反応工程で生ずる反応残渣を反応残渣焼却工程に送り、最終予熱工程に使用する熱媒の加熱のための燃料として使用し、該燃料の不足分を原料油脂類の一部を以って補い、生産された脂肪酸エステルの一部により発電を行い、外部からの燃料及び電力の供給を得ることなく全プラントの稼動が可能であり、且つ有害廃棄物をプラント外に出さないシステムを構築することを特徴とする、()記載の脂肪酸エステルの製造方法。
本発明にかかる、過熱気化アルコール循環手段を備えた一連の製造工程、固体(触媒)・液体(油脂類)・気体(過熱気化アルコール)3相の接触手段及び該各相の加熱手段を備えた反応工程並びに熱交換と反応残渣の焼却による熱回収手段により、超臨界反応の如き高圧を使用せずに脂肪酸エステルとグリセリンとを効率よく生産することが出来、操業の安全性、設備費・運転経費の低減を期待することが出来る。該脂肪酸エステルおよびグリセリンは気相として採取されるため高沸点の夾雑物を含まず、特段の精製工程を必要とせず、原料の変動によって品質が左右されにくい。反応残渣は全て製造工程の加熱用燃料として使用されるので廃棄物は殆どなく、原料油脂類及び製品(脂肪酸エステル)の小部分を燃料補助に用いることによりエネルギー自給型プラントを構成することが可能である。
以下に原料アルコールとしてメタノールを用い、圧力0.090〜0.405MPa(好ましくは0.102〜0.150MPa)、温度350〜150℃(好ましくは290〜180℃)の条件下で、油脂類に対し必要な理論化学当量よりも過剰な過熱気化メタノールを反応に使用し、無触媒若しくは金属系固体触媒のみを用いて反応を行う際の、本発明を実施するための最良の形態を例示し、図を参照しながら説明する。
〔第1の実施形態〕 本実施形態は問題を解決するための手段(以下解決手段と言う)()〜()に対応するものである。 図1は本発明の第1の実施形態の中心である、過熱気化アルコール循環手段によって連結された脂肪酸エステルの製造工程の概念図であって、その最も好ましい形態として、反応工程1・高温熱交換工程2・凝縮熱回収工程3・生成物分離工程4・温調熱交換工程5・断熱冷却工程6及び最終予熱工程7を連結したものを示した。
過熱気化アルコール循環手段14aは、反応工程1、高温熱交換工程2、凝縮熱回収工程3、生成物分離工程4、温調熱交換工程5、断熱冷却工程6を経て再び凝縮熱回収工程3、高温熱交換工程2、更に最終熱予熱工程7を通って触媒反応工程1に至り循環経路を形成する。該循環経路を流れる循環(過熱気化)メタノールの温度は、反応生成物を随伴する反応ガス13として反応工程1を出た点で最も高く、順次熱交換により降温して、反応生成物分離工程4を出た点で反応生成物を分離して循環(過熱気化)アルコール14となり、断熱冷却工程6を出た点で原料アルコールを随伴する反応原料(過熱気化)アルコールとして最低温度となり、再度凝縮熱回収工程3、高温熱交換工程2を通って昇温され、最終予熱工程7によって所要の温度を得て反応工程1に戻る。
原料油脂類11は温調熱交換工程5・疑縮熱回収工程3・高温熱交換工程2を経て順次昇温され、最終加熱工程7によって所要の温度を得て反応工程1に供給される。
原料メタノール(液体)12は、アルコール断熱冷刧工程6において気化した後循環メタノール14と合流して反応原料メタノール16となり、該反応原料メタノールは更に凝縮熱回収工程3・高温熱交換工程2を経て順次昇温され、最終予熱工程7によって所要の温度を得て反応工程1に供給される。
図2は、図1の過熱気化アルコール循環手段をより具体的に説明するための概念図であり、併せて残渣焼却工程8による熱回収の位置付けをも示した。反応工程1においては、メタノール(過熱気化状態)は油脂類に対し常に理論化学等量を越えた過剰の状態に保たれ、該メタノールと油脂類若しくはメタノールと油脂類と金属系固体触媒とは、接触手段による十分な接触の下で相互に作用し、反応生成物(脂肪酸エステルとグリセリン)は過剰の過熱気化メタノール中に移行して該過熱気化メタノールと共に反応ガス13として反応工程1から排出され、2分されて高温熱交換工程2でそれぞれ反応原料メタノール16及び原料油脂類11と熱交換後、分岐したまま凝縮熱回収工程3に入り、それぞれ反応原料メタノール及び原料油脂類と熱交換を行い、この結果、反応生成物は潜熱をすべてメタノール(過熱気化状態)に与え、凝縮して液相(液滴)となり、メタノール(過熱気化状態)に随伴されて凝縮熱回収工程を出る。
反応生成物の液滴を随伴した2分岐の過熱気化メタノールは合流して反応生成物分離工程4に入り、反応生成物(液体)15は該メタノールから分離され、さらに脂肪酸エステルとグリセリンとに分離されて最終製品となる。
一方反応生成物と分離されたメタノールは、循環メタノール(過熱気化状態)14として温調熱交換工程5に送られて原料油脂類11及び必要に応じ冷却水18と熱交換を行い、次工程に適した温度に調整されて断熱冷却工程6に入り、原料メタノール(液体)12のミストにより断熱冷却されて温度を低下させ、戻り熱交換の温度差を確保し、一方原料メタノールは気化潜熱を得て気相となり、循環メタノールに随伴されて反応原料メタノール16として凝縮熱回収工程3及び高温熱交換工程2に入り、反応ガス13と向流して熱交換を行い、必要な温度を得て順次最終予熱工程7、反応工程1に至って過熱気化メタノール循環経路を形成する。
原料アルコール12は、反応生成物15として取り出される分に対応した量を供給する。
原料油脂類は、反応生成物15及び反応残渣13として取り出される分に対応した量を供給する。
反応残渣17は廃液焼却工程8に送り、熱媒ボイラ等により焼却して最終熱交換工程7で使用する高温熱媒をつくる。
本実施形態は、過剰な過熱気化メタノールと油脂類とを十分に接触させ、高い収率で反応生成物を得、かつ反応生成物を過熱気化メタノールと共に採取する製造方法において、その反応生成物採取の特異な形態を利用して、各工程間を連結する定常的な過熱気化メタノールの密閉循環流を形成し、反応で消費される分の原料メタノールのみを該循環流に供給することにより、一定量のメタノールで反応時に必要なメタノール過剰の条件を確保することを可能にしたものである。
また、該循環流の形成により、生成物の凝縮分離のための冷却工程と原料の加熱工程とを相互の熱交換によって行うことが容易になり、多少の反応効率の変動を吸収して経済的なプラントを構成することを可能にしている。
本実施形態における、過熱気化メタノール(反応原料メタノール)及び原料油脂類の供給手段、反応生成物を含む過熱気化アルコール(反応ガス)と反応残渣の排出手段、液体(原料油脂類)・気体(過熱気化アルコール)2相若しくは固体(触媒)をも含めた3相の接触手段及び該2相若しくは固体(接触手段及び/又は触媒)をも含めた3相のうちの1または2、或いは3相すべての加熱手段により構成される反応工程の基本概念図を図3及び4に示す。
図3は、反応容器19の外部に反応原料メタノールの供給手段20、原料油脂類の供給手段21、反応ガスの排出手段22、反応残渣の排出手段23を備え、反応容器19の内部に前項に述べた加熱手段24と触媒・油脂類・反応原料メタノールの接触手段(無触媒の場合には油脂類と反応原料メタノールとの接触手段)25とを設置したものである。該接触手段には、必要に応じ何らかの攪拌手段26を設ける。該加熱手段の対象は反応原料メタノール・原料油脂類の双方または何れか一方であり、必要に応じ触媒及び/又は接触手段をも加熱し、触媒及び/又は接触手段を反応原料メタノール・原料油脂類及び/又は反応生成物の加熱手段として機能させる。
本反応工程においては、油脂類中に気化アルコール気泡が存在する状態と気化アルコール中に油脂類の気化物が存在する状態とが混在し、更にこれらが固体(触媒または接触手段)と接触しつつ反応が行われるため、局所的な温度変化が生じやすい。従って反応工程に先立つ最終予熱工程による加温のみでは反応時の必要温度を確保することは困難で、反応工程内で反応直前に加温を行い、設定された温度条件を満足させることが必要である。本発明にかかる反応工程においては、反応容器内に加熱手段を設け、メタノール及び/又は原料油脂類が接触手段に至る直前に必要な加熱を行い、更には触媒及び/又は接触手段による加熱を行うことにより問題を解決した。本発明においては反応生成物を気相として過熱気化メタノールと共に排出するため、該加熱手段は反応に必要な温度を与えるほか、反応生成物に気化潜熱を供給する役割をも持っている。
原料油脂類の反応温度を上げることは脂肪酸エステルの製造に有利であるが、同時に原料油脂類の劣化も促進される。このため、原料油脂類を高温に保つ時間を極力短くすることが必要であり、本発明にかかる反応工程においては、上記のごとき手段により、反応直前に所要の温度に昇温することで問題を解決した。また、原料油脂類の昇温の何れかの段階(複数段階を含む)においてメタノールを共存させ、爾後の加熱をメタノールが共存する還元性雰囲気中で行うことは油脂類の劣化防止に有効であると考えられる。両者の共存形態としては、メタノールの原料油脂類中への溶解及び/又は液相(液滴)分散及び/又は気相(気泡)分散か、原料油脂類のメタノール中への気相及び/又は液相としての混合・分散であり、必要に応じ攪拌手段を使用する。特に触媒もしくは接触手段を加熱手段とする場合には、原料油脂類の反応直前の最高温度への加熱を過剰の過熱気化メタノール雰囲気中で行うことが出来る。反応直前の昇温の幅は使用原料油脂の種類等によって調整の必要があるが、本発明においては原料油脂類の予熱・昇温を多段階で行い、且つ反応工程直前に最終予熱工程を設けることによってこれを解決した。
図4は装置の簡素化若しくは接触手段を内蔵する反応装置の形状上の必要から、加熱手段を反応容器の外部に設置したものである。
接触手段を備えた反応装置として好ましいものを例示すれば、次の通りである。図5はガス吸込型の反応装置の一例を示す模式図であって、反応容器19の中にドラフトチューブ34を設け、下部にドラフトチューブ内の液体を下方に吸い込むためのインペラー33を備え、ドラフトチューブの中心軸線上にその駆動軸と駆動モーター36とを配置し、駆動軸には攪拌手段26を付随させる。ドラフトチューブの外側上部と反応容器壁との間にはメンテナンスのために着脱可能とした触媒35(無触媒の際は接触手段)を設置する。原料油脂類11は原料油脂類供給手段21、加熱手段24bを通ってチューブ内側へ上方から、反応原料メタノール16は反応原料アルコール供給手段20、加熱装置24aを通ってチューブ内部の原料油脂類上部へ供給される。反応容器内には常時原料油脂類がチューブ上端よりも高い液面52まで貯留されており、チューブ内の原料油脂類と反応ガス気泡との気液混相流53はインペラーによって下降、次いでドラフトチューブ外側を上昇し、触媒35(無触媒の際は接触手段)を通過してドラフトチューブ上端からチューブ内に戻る循環流を形成する。反応原料メタノールはこの循環流に乗ってチューブ内を下降しつつ攪拌され、微小気泡となって原料油脂類と混和し、チューブ外側を上昇、触媒(無触媒の際は接触手段)を通過する過程において反応し、反応生成物は過剰の気化メタノールと共に反応ガス13となり、反応ガス排出手段22から外部へ排出される。
図6は油スプレ−・ガス吸込型の反応装置の一例を示す模式図であって、図4に示したガス吸込型において、原料油脂類11をスプレーヘッド28を介してミストとして下方に噴射・供給し、反応原料メタノールとの接触機会を更に増加させたものである。図5においては駆動モーターを反応容器下部に配し、加熱手段24cによって触媒(無触媒の際は接触手段)35をも加熱する例を示した。このような加熱手段ないし駆動モーターの配置は、図4の方式においても同様に行うことが出来る。
図7は充填塔・油外部加熱型の反応装置の一例を示す模式図であって、充填塔の中間部に設けた触媒層35(無触媒の際は接触手段)の下方に原料油脂類を貯留し、該原料油脂類に原料油脂類供給手段21を通して原料油脂類11を供給し、落下する未反応原料油脂類と共に送液ポンプ37によって塔の外部に取り出し、加熱手段24bによって加熱して触媒充填層の上方から塔内に供給する。図6では加熱された原料油脂類をスプレーヘッド28を介してミストとして供給し、反応原料メタノールとの接触機会の増大を図った型を示した。反応原料メタノール16は反応原料メタノール供給手段20・加熱手段24aを通して塔下部から吹込ノズル20aを介して供給され、原料油脂類中を気泡として通過後、触媒層35内部及び触媒層上方で原料油脂類と接触する過程において反応し、反応生成物は過熱気化メタノールと共に反応ガス13として排出手段22から排出される。
図8はデイップパイプ型の反応装置の一例を示す模式図であって、反応容器内に複数のガス吹き込みノズル20aを設け、供給手段20・加熱手段24aを介して所要温度に昇温された反応原料アルコール16を該反応容器に貯留された原料油脂類中に吹き込み、該反応原料アルコールが気泡として該原料油脂類を上昇し、液面52の上部に泡沫層41aを形成し、該泡沫が破裂して泡沫層上部の反応ガス中に入る過程において反応を生起させる。生成した反応ガス13は、排出手段22を介して取り出される。原料油脂類11は、反応によって失われる分を導入手段21・加熱手段24bを介して所要温度に昇温して供給する。図8には反応容器をセパレータ47によって2室に仕切り、左室で反応原料アルコールを吹き込まれた原料油脂類の一部が、セパレータ下方の間隙を通って右室に入り、更に反応原料アルコールの吹き込みを受ける2段型の装置を示した。該反応段数は必要に応じ増加することが出来る。吹き込みノズル先端の液深は、生成される反応原料アルコールの気泡径が反応に最適になるように設定され、必要に応じノズル先端部若しくは反応容器内に気泡径制御手段を設ける。図8に示した反応装置は、既存の反応装置例えば泡鐘塔に改造を加えることによっても実現が可能である。
図9は図8と同様デイップパイプ型の反応装置の一例を示す模式図であって、図8の装置に触媒35を付加したものである。図9には該触媒が泡沫層上部に設けられ、泡沫(極めて薄い油膜が過熱気化アルコールと接した状態)が例えばハニカム状の金属系触媒或いはリング状触媒の充填層に触れながら通過する場合を示した。触媒には加熱手段を付与し、反応原料が接触時にのみ所要の高温になるようにすることも可能である。また、触媒の設置個所は、泡沫層上部に限らず、必要に応じ原料油脂類中〜泡沫層上部のいずれの個所にも設置が可能であり、複数箇所に設置することも出来る。
図10はマルチ熱パイプ型の反応装置の一例を示す模式図であって、図の右方部分は、熱パイプに垂直な断面により、熱パイプ60の配置状態を示す。反応容器内に水平に設置された複数の熱パイプ60に加熱装置24cによって昇温された熱媒45を通して所要の温度を与え、上部の散液ヘッド28aから原料油脂類を滴下し、該原料油脂類が熱パイプ表面を膜状となって流下する状態で、下方から供給手段20・加熱手段24aを介して導入された反応原料アルコール16と反応を生起させ、反応生成物は過剰の過熱気化メタノールと共に反応ガスとして排出手段22から排出される。反応原料アルコールは該熱パイプに至る前に、気泡として反応容器下部に貯留された原料油脂類を通過させる。原料油脂類11は反応によって失われる分を供給手段21を介して反応容器下部に供給し、未反応のまま落下した原料油脂類と共に排出手段21aを介して送液ポンプ37により上部に送り、供給手段21・加熱手段24bを通して所要温度に昇温し、散液ヘッド28aに供給する。触媒を使用する場合には、熱パイプ表面に金属系固体触媒を付加する。
図11は単反応管型の反応装置の一例を示す模式図であって、送気ポンプ38によって送られる反応原料メタノール16は、加熱手段24aで加熱された後混合手段39に入り、同様に加熱手段24bで加熱されて混合手段に入った原料油脂類11と混和して気液混相流となり、必要な長さを持ち、加熱手段24dによって所要の温度に維持された反応管40を通過し、反応ガス13となって排出手段22から排出される。触媒との接触は必要に応じ混合手段内及び/又は反応管内で行われる。混合手段としては、スタチックミキサのような簡易なものの他、他の反応装置を用いて、得られる反応ガスと原料油脂類との気液混合物若しくは原料油脂類の飛沫を同伴した反応ガスを反応管に供給するような方法がある。
図12は流動層型の反応装置の一例を示す模式図であって、反応容器19内に貯留された原料油脂類に粒状・薄片状等の触媒35を保持させ、これにそれぞれ加熱手段24a、24bで加熱された反応原料ガス16及び原料油脂類11を反応容器下部から供給し、反応ガス気泡41、原料油脂類及び触媒粒子35の3者の混合流動層を形成して反応を生起させ、反応ガス13を容器上部の排出手段22から取り出すものである。流動層は反応容器内部の加熱手段24eによって必要な温度に維持される。流動は反応原料ガスのバブリングによって行われるが、必要があれば適宜の攪拌手段を設ける。
図13はマルチ反応管型の反応装置の一例を示す模式図であって、反応容器19内に設置された反応管40の内部に触媒35を充填し、反応管外部は熱媒45によって満たされ、熱媒に対する加熱手段24cを設け、加熱手段24aで加熱された反応原料ガス16を下方から、加熱手段24bで加熱された原料油脂類11を上方から供給し、反応管内の加熱された触媒中で反応を生起させ、反応ガス13を容器上部から排出するものである。無触媒の場合には、触媒に代えて接触手段を配置する。
上記各反応装置は、いずれもバッチ・セミバッチ・連続の各生産方法に適応が可能であり、また、反応容器下部に存在する原料油脂類若しくは一部反応ガス気泡を含む原料油脂類を、同種若しくは異種の別の反応装置に対して原料油脂類として供給し、多段反応装置を構成することが出来る。
各反応装置における反応条件は、前述の如く圧力0.090〜0.405MPa(好ましくは0.102〜0.150MPa)、温度350〜150℃(好ましくは290〜180℃)のマイルドなものであって、反応装置の構造・材料については超臨界反応に対するような特別な配慮を必要としない。反応時には原料油脂類に対し過剰のメタノール(好ましくは理論化学当量の3倍以上)の存在を有利とするが、この条件は、前述の如く常時一定量の過熱気化メタノールが密閉経路中を循環するシステムにより、容易に達成される。経路内の反応ガス等の漏洩防止には、必要に応じ経路内を大気圧に対し若干負圧に保することが有効である。上記の圧力は反応容器壁に設置した液柱型又はプルドン管型圧力計の数値であり、温度はサーミスタ式若しくは抵抗式による接触手段又は触媒の表面(若しくは表面に近い内部の点)の温度の測定値である。
本発明においては、反応時に触媒を使用することなく経済的に成立可能な製造工程を構築することが出来るが、必要に応じ反応装置等に大きな変更を加えることなく金属系固体触媒を使用することが出来る。該触媒中の金属としては鉛、亜鉛、錫或いはモリブデン・クロム・ニッケル又はバナジュウムを含む鋼を用いることが出来、いずれも反応生成物を汚損することはなく、回収のための特別な措置を必要としない。なお、触媒の使用形態等については、特願2003−436641、特願2004−40565及び特願2004−40566に記載された関連事項が適用される。
〔第の実施の形態〕 本実施形態は解決手段()〜()に対応するもので、反応ガスと原料との熱交換を効率的に行うためのシステムであり、図14にその概念図を示す。反応工程1の反応装置1aから排出された反応ガス13は、2分されてそれぞれ高温熱交換工程2の高温熱交換器2a、2bの高温側に入り、2aにおいて反応原料メタノール16、2bにおいて原料油脂類11と向流熱交換を行い、次いで2分岐のまま凝縮熱回収工程3に導入される。
2分された反応ガスの一方は、凝縮熱交換器3aの高温側を通って反応原料メタノールと向流熱交換を行い、次いで反応生成物分離工程4に入る。2分された反応ガスの他方は、凝縮熱交換器3bの高温側に入って原料油脂類11と向流熱交換を行い、次いで3aを出た先の分岐反応ガスと合流して反応生成物分離工程4に入る。凝縮熱回収工程3においては、メタノール以外の反応生成物はすべて凝縮して液相となり、潜熱をメタノールに与える。
反応生成物分離工程4においては、フイルター・衝突板等を使用した反応生成物分離装置4aにより、液滴として随伴された反応生成物をメタノールから分離し、メタノールは循環メタノール14として温調熱交換工程5に入り、分離された反応生成物15は比重分離を利用した製品分取装置4bに送って脂肪酸エステル49とグリセリン48とを分取し、最終製品を得る。
他方、循環メタノール14は、温調熱交換工程5(温調熱交換器5a)の高温側を通って原料油脂類11及び冷却水18と向流熱交換を行い、所要の温度に調整されて断熱冷却工程6(アルコール断熱冷却器6a)に入って原料メタノール12(液体)のスプレーミストによって断熱冷却され、温度を低下させて戻り熱交換の温度差を確保し、該断熱冷却器内で気化潜熱を得て気化した原料メタノールを併せて反応原料メタノール16となって順次凝縮熱回収工程3(凝縮熱交換器3a)及び高温熱交換工程2(高温熱交換器2a)の低温側に入り、反応ガスと向流して熱交換を行い、更に最終熱予熱工程7(加熱装置7b)で必要な温度を得て反応工程1に送られる。過熱気化メタノールの循環は、送気ポンプ38によって行われる。
原料貯蔵タンク10から取り出された原料メタノール12は、反応生成物として採取される分に対応した量が断熱冷却工程6(アルコール断熱冷却器6a)に供給され、スプレーミストとして循環メタノール14の断熱冷却を行う際に自身は気化潜熱を得て気化し、循環アルコール14と合流して反応原料アルコール16となり、上記の予熱経路を経て所要温度で反応工程1に供給される。
原料貯蔵タンク9から取り出された原料油脂類11は、反応生成物及び反応残渣として取り出される分に対応した量を最初に温調熱交換器5aの低温側に入れて循環アルコール14と向流させて予熱し、次いで上記の凝縮熱交換器3b、高温熱交換器2b及び最終熱交換工程7の加熱装置7aを経て所要温度で反応工程1に供給される。
反応残渣13は残渣焼却工程8に送り、熱媒ボイラ等の残渣焼却装置8aにより焼却し、得られる熱によって最終予熱工程用の高温熱媒8bをつくる。
本発明では、反応工程でメタノールと油脂類とを所要の反応温度条件下に置き、且つ反応生成物に気化潜熱を与えるための加熱が必要であるが、上記熱交換システムにおいて、反応生成物の冷却・凝縮工程で原料メタノール、循環メタノール及び原料油脂類とを予熱することと、反応残渣の焼却による高温熱媒を利用することとによって、反応に必要な加熱のための熱量の殆どを賄うことが出来る。
冷却水18によって得られる温水は、プラントのユーテリテイとして使用する。
〔第の実施の形態〕 本実施形態は、解決手段()及び(10)に対応するもので、高温熱交換工程において、気体/気体による熱交換を避け、液体熱媒(原料油脂類)を使用して熱交換効率を向上させた熱交換システムであり、図15にその概念図を示す。該実施形態は高温側が反応ガス、低温側が液体熱媒(原料油脂類)である高温熱交換器2c、高温側が液体熱媒(原料油脂類)、低温側が反応原料ガスである高温熱交換器2d、高温側が反応ガスで低温側が反応原料メタノールである凝縮熱交換器3c、高温側が反応ガスで低温側が原料油脂類である凝縮熱交換器3d、液体熱媒(原料油脂類)循環手段(ブロワー)11p、原料油脂類供給口11fを備えた導管11e及び高温熱媒(原料油脂類)取り出し手段11vを備えた導管11dによって構成される。
反応工程から取り出された反応ガス13は高温熱交換器2cの高温側に入り、低温側の液体熱媒(原料油脂類)と向流熱交換を行い、2分されてそれぞれ凝縮熱交換器3c・3dの高温側に入リ、以下上記第3の実施形態に述べた経路によって循環する。
高温熱交換器2cの低温側と高温熱交換器2dの高温側とは液体熱媒(原料油脂類)循環手段(ブロワー)11p、高温熱媒(原料油脂類)取り出し手段11vを備えた導管11d及び原料油脂類供給口11fを備えた導管11eによって循環路を形成し、液体熱媒(原料油脂類)は高温熱交換器2cで気/液熱交換により高温を得、高温熱交換器2dにおいては熱源として液/気熱交換により反応原料メタノール16を加熱する。
上記第3の実施形態と同様温調熱交換器によって予熱された原料油脂類11aは、凝縮熱交換器3dの低温側を通って加熱され、高温熱交換器2dの出口で液体熱媒(原料油脂類)と合流し、高温熱交換器2cによって加熱される。高温を得た原料油脂類は、高温液体熱媒(原料油脂類)取り出し手段11vから必要量が最終加熱装置7aに送られ、次いで反応工程1に供給される。
反応原料メタノール16は、凝縮熱交換器3c、高温熱交換器2dにより順次昇温され、最終加熱装置7bを経て反応工程1に供給される。
本実施形態によれば、液体熱媒(原料油脂類)の使用による伝熱効率の向上の結果、高温熱交換器の容積を縮小(約20%減)することが出来、原料油脂類の昇温も大きく、最終加熱工程及び反応工程における加熱の負荷を軽減させることが可能である。
反応ガス中の反応生成物の各成分(脂肪酸エステルとグリセリン)の凝縮の様態は、反応ガス中の濃度と温度に依存し、凝縮部分と未凝縮部分とでは熱的性質が異なるので伝熱係数は大幅に変化する。従って、安定な熱交換を行うためには、反応ガスの顕熱と潜熱とを区分して利用することが必要である。本発明においては、上記の各実施形態に示した如く高温然交換工程と凝縮熱交換工程とを直列して設けることによってこの問題を解決しており、本実施形態においてもこのことは同様である。
〔第の実施の形態〕 本実施形態は解決手段(11)に対応するものである。図16は、循環メタノール14の断熱冷却工程6に使用される断熱冷却器6aの1例の模式図であって、円筒容器27の一端に循環メタノール14の導入手段29、原料メタノール(液体)12の導入手段30とそれに接続されたスプレーヘッド28を備え、他端に反応原料メタノール16の取り出し手段31、容器内のスプレーヘッド下手に攪拌手段32(スタチックミキサ)を設け、温調熱交換過程を出た循環メタノールを円筒容器に導入し、該メタノール中に液体原料メタノールをスプレーすることによって該メタノールを断熱冷却し、他方液体原料メタノール(液体)は蒸発潜熱を得て気化し、循環メタノールとともに、戻り熱交換に必要な温度差が確保された反応原料メタノール16として31から取り出される。衝突板43及び濾過材44(グラスウール等)は、反応生成物が前段の生成物分離工程4で取り切れなかった場合に備えた液滴捕集手段であって、捕集された反応生成物15(液体)は反応生成物排出手段46bを介して取り出される。衝突板及び濾過材は省略が可能であり、逆に、生成物分離工程4を省略して本装置のみで反応生成物を捕集することも出来る。
本発明においては過剰の過熱気化メタノールの循環流によって原料メタノールを反応工程に導入するため、原料メタノールを加熱して気化させることが必要であるが、本実施形態により、簡易な装置で回収メタノールの断熱冷却に伴う熱交換を利用して該気化を行うことが出来、特別な加熱装置は不要である。
過熱気化メタノールの循環量に比べて原料メタノール(液体)のスプレー量は少ないので、該原料メタノールの気化は完全に行われ、未蒸発の液滴処理のためのミストエリミネータ等は必要でない。
第6の実施の形態
〔第の実施の形態〕 本実施形態は解決手段(14)に対応するものである。図17は、凝縮熱交換工程で得られた、凝縮反応生成物の液滴を含む回収メタノールから反応生成物を分離するための反応生成物分離装置の1例を示す模式図である。原理的には図16に示したところと同様であって、濾過材44と衝突板43とで構成されるミストエリミネーターにより、反応ガス導入手段41から導入される、反応生成物の液滴を含む反応ガス13から反応生成物15を分離し、該反応生成物を反応生成物排出手段46bを通して製品分取装置に送り、他方メタノールを循環メタノール14として温調熱交換工程5に送るものである。
図18は、製品分取装置として、比重分離により脂肪酸エステルとグリセリンとを連続的に分取するものの一例の模式図であって、反応生成物導入手段によって導入された脂肪酸エステルとグリセリンとの混合物は、セパレーターの左側で比重差によって上下に分かれ、下に沈んだグリセリンはセパレーターの下部を通って槽の右側に貯留される。
本発明においては、反応生成物は気相として採取され、温度を350℃好ましくは290℃までに制御しているため、高沸点成分はすべて反応残渣となって反応容器に残り、反応生成物分離工程の温度は90℃以上に保持されるのでメタノールは気相として存在し、従って該反応生成物は微量の水分を含むグリセリンと脂肪酸エステルとのみの混合物であり、比重分離により、特に精製工程を設けることなく不純物の少ない脂肪酸エステルを微量の水を含むグリセリンから分離・採取することが出来る。
〔第の実施の形態〕 本実施形態は解決手段(13)及び(14)に対応するものである。本発明の反応工程では、目的とする反応生成物は気相として次工程に送られるため、生ずる反応残渣は油脂類の酸化・重合物を含む高沸点成分であり、これを反応容器底部から取り出し、先に図14において説明した如く、残渣焼却装置(熱媒ボイラー)8aの燃料油として利用する。生成された高温熱媒8bは、2分岐されて最終熱交換工程に送られ、最終熱交換装置7a、7bにおいてそれぞれ原料油脂類及び反応原料メタノールの加熱に循環使用される。
反応残渣の発生量と発熱量は、原料油脂類の種類によって異なる。原料としてバージンのパーム油・菜種油等を使用した場合には残渣は少量であり、廃油等使用暦のあるものでは発生量が多くかつ質・量の変動も大きい。従って、どの程度の熱量を取得出来るかは予測が困難であるが、高温熱媒の温度を350℃として試算すれば、原料油換算で生産に使用される量の2〜5%に対応する熱量が得られれば、効率的な熱交換と相俟って全プラントの熱エネルギーをまかなうことが可能である。反応残渣は植物起源であるので、その焼却は二酸化炭素の増加には繋がらない。
〔第の実施の形態〕 本実施形態は解決手段(15)に対応するものである。本発明にかかるプラントの構成の最良の形態は、図19に示したように、1〜8の一連の製造工程と原料貯蔵タンク・製品貯蔵タンク等のタンク群55ならびに電力供給施設54とから成る。プラントに必要な熱量は、触媒反応工程1、高温熱交換工程2、凝縮熱回収工程3、反応生成物分離工程4、温調熱交換工程5、断熱冷却工程6及び最終加熱工程7を過熱気化アルコール循環手段によって連結し、反応ガスとの熱交換による原料の予熱をきわめて効果的に行うことが出来るため、反応残渣焼却工程8(反応残渣焼却装置8a)による最終加熱工程用の熱媒8bの取得によってほぼまかなうことが出来る。反応残渣の焼却によって得られる熱量は不安定であるが、必要に応じ原料油脂類の5%以下を補足することで安定な操業が保持され、更に電力供給工程54を設け、生産された脂肪酸エステル49の2〜5%を用いてディーゼルエンジン56により発電機57を稼動させ、全プラントの使用電力をまかなう。冷却水18によって得られる温水はプラントのユーテリテイとして利用する。これらの方策によって、本発明においては、外部からの燃料及び電力の供給を必要としない自給システムが構築される。脂肪酸エステルによるディーゼル発電は、二酸化炭素の増加には繋がらない。
本発明にかかる製造方法において生ずる廃棄物はほぼ反応残渣のみであり、これを焼却して熱を回収することにより、実質的にゼロエミッションを達成することが出来る。このようなエネルギー自給・ゼロエミッションのプラントは、通常の工業環境にも望ましいことは無論であるが、特に、十分なユーテリテイを期待し得ない原料生産地に立地して原料運搬費の削減を図るような場合には、特に有用である。
図8に示したデイップパイプ型について、過熱気化アルコールの吹き込みノズルを1本だけにした簡略な装置により、菜種油の無触媒エステル化実験を行った。直径40mm、高400mmのガラス製円筒容器に、菜種油(純度92%)を底部から約100mmの高さまで満たして290℃に保ち、底部から20mmの点に直径25mmのステンレスの邪魔板を設け、内径1.5mmのステンレス管を吹込ノズルとして開口端を邪魔板の中央下方2mmの点に上向きに設置し、290℃の過熱気化メタノール(純度99.8%)を流速2.6ml/minで吹き込み、菜種油表面に高さ約10〜20mmの泡沫層を存在させ、容器上端から反応ガスを取りだし、冷却して反応生成物を採取した。2段階反応を模すため、別に同様の装置を1基用意し、両装置の容器下端を内径5mmのガラス管で連通し、第2の装置ではメタノールを同じく2.6ml/minの流速で吹き込み、同様に上端から反応ガスを取り出し、冷却して反応生成物を採取した。第2の装置から得られる反応生成物の量は、第1の装置の2〜3倍であった。原料の菜種油は、反応による消費に対応して、約1.7ml/minの量を第1の容器に補給した。過熱気化メタノールは反応生成物を分離後、冷却・凝縮させて回収した。この装置により3.9時間連続反応を行い、約400mlの反応生成物を得、静置してグリセリンとエステル化物とを分離し、グリセリン約25ml、エステル化物約375mlを得た。得られたエステル化物は淡黄色透明の液体で、動粘度は10.4mm/sであった。
図14の製造方法により、触媒を使用したベンチテストを行った。使用装置の諸元ならびに使用原料は次の通りである。反応残渣の焼却は実施しなかった。
反応器:円筒形、直径200mm、充填高さ1000mm、鋼製ラシヒリング20×20mmを充填、外置き0.5mの熱交換器(循環ポンプ100l/hr)を付属。
熱交換器:高温熱交換器2d(反応原料メタノール加熱);4m、最終加熱器7a(反応原料メタノール加熱);0.4m、高温熱交換器2c(原料油脂類加熱);3.0m、最終加熱器7b(原料油脂類加熱);0.3m、凝縮熱交換器3c;1.0m、凝縮熱交換器3d;0.6m、温調熱交換器;0.3m、断熱冷却器;円筒形、直径80mm、長さ300mm。
比重分離槽容量:10l
原料メタノール:純度99.8%
原料油脂類:菜種油、純度92%
上記の装置及び原料を用い、菜種油供給量5kg/hr・メタノール供給量0.6kg/hrに対し、脂肪酸エステル分(反応生成物よりグリセリンを分離して得られたもの)4.8kg/hr、グリセリン0.48kg/hr、反応残渣1.2kg/hrを得た。触媒は鉛薄板(厚さ0.3mm)20×20mm約800枚を、ラシヒリングに混在させて使用した。平均反応温度287℃、循環過熱気化メタノールは循環量19.4kg/hr、反応器への供給温度は292℃で、このときの反応器の加熱のための電気使用量は1.1kwであった。
得られた脂肪酸エステルの主要成分ならびに性質を表1に示す。
Figure 0004849387
本発明は化学触媒の如き有害廃棄物を生ずることなく、きわめて熱効率の高いシステムによって、常圧で安全な操業条件の下に植物起源のディーゼル燃料を低コストで生産するものであり、また、エネルギー自給・無公害のプラントの構築により、種種の環境での立地が可能となるので、炭酸ガス排出規制の観点から、大規模な利用が期待される。、
脂肪酸エステル製造工程の概念図である。 脂肪酸エステル製造工程の概念図である。 反応工程の概念図である。 反応工程の概念図である。 反応装置の一例(ガス吸込型)の模式図である。 反応装置の一例(油スプレー・ガス吸込型)の模式図である。 反応装置の一例(充填塔・油外部加熱型)の模式図である。 反応装置の一例(デイップパイプ型)の模式図である。 反応装置の一例(デイップパイプ型)の模式図である。 反応装置の一例(マルチ熱パイプ型)の模式図である。 反応装置の一例(単反応管型)の模式図である。 反応装置の一例(流動層型)の模式図である。 反応装置の一例(マルチ反応管型)の模式図である。 熱交換システムの概念図である。 熱媒を使用する熱交換システムの概念図である。 断熱冷却器の一例の模式図である。 生成物分離装置の一例の模式図である。 製品分離装置の一例の模式図である。 プラント構成の概念図である。
符号の説明
1 反応工程
1a 反応装置
2 高温熱交換工程
2a 高温熱交換器
2b 高温熱交換器
2c 高温熱交換器
2d 高温熱交換器
3 凝縮熱交換工程
3a 凝縮熱交換器
3b 凝縮熱交換器
3c 凝縮熱交換器
3d 凝縮熱交換器
4 反応生成物分離工程
4a 反応生成物分離装置
4b 製品分取装置
5 温調熱交換工程
5a 温調熱交換器
6 断熱冷却工程
6a 断熱冷却器
7 最終予換工程
7a 最終加熱装置
7b 最終加熱装置
8 残渣焼却工程
8a 残渣焼却装置
8b 熱媒
9 原料貯蔵タンク(油脂類)
10 原料貯蔵タンク(アルコール)
11 原料油脂類
11a 温調熱交換器によって予熱された原料油脂類
11b 疑縮熱交換器・高温熱交換器によって予熱された原料油脂類
11d 高温熱媒(原料油脂類)取出し手段を備えた導管
11e 原料油脂類供給口を備えた導管
11f 原料油脂類供給口
11p 高温熱媒(原料油脂類)循環手段
11v 高温熱媒(原料油脂類)取出し手段
12 原料アルコール
13 反応ガス(過熱気化アルコール、脂肪酸エステル、グリセリン混合物)
14 循環アルコール
15 反応生成物(液相)
16 反応原料アルコール(循環アルコール、原料アルコール混合物)
17 反応残渣
18 冷却水
19 反応容器
20 反応原料アルコール供給手段
20a 反応原料アルコール吹込ノズル
21 原料油脂類供給手段
21a 原料油脂類排出手段
22 反応ガス排出手段
23 残渣排出手段
24a 加熱手段
24b 加熱手段
24c 加熱手段
24d 加熱手段
24e 加熱手段
25 固体(触媒)・液体(原料油脂類)・気体(反応ガス)接触手段
(無触媒の場合には原料油脂類と反応ガスとの接触手段)
26 攪拌手段
27 円筒容器
28 スプレーヘッド
28a 散液ヘッド
29 循環メタノール導入手段
30 液体メタノール導入手段
31 反応原料メタノール取り出し手段
32 攪拌手段
33 インペラー
34 ドラフトチューブ
35 触媒又は触媒層
36 駆動モーター
37 送油ポンプ
38 送気ポンプ
39 気液混合手段
40 反応管
41 反応原料アルコール気泡
41a 反応原料アルコール泡沫
42 分離槽
42 衝突板
43 濾過材(グラスウール等)
45 熱媒
46a 反応生成物導入手段
46b 反応生成物排出手段
47 セパレータ
48 グリセリン
49 脂肪酸エステル
50 グリセリン排出手段
51 脂肪酸エステル排出手段
52 液面
53 気泡・液混相流の流れ
54 電力供給工程
55 貯蔵タンク類
56 ディーゼルエンジン
57 発電機
58 供給電力
59 燃焼用空気
60 熱パイプ

Claims (15)

  1. 油脂類と一価アルコール(以下単にアルコールと言う)とから脂肪酸エステルを製造する方法のうち、触媒を使用せず、必要な理論化学当量よりも過剰のアルコールを過熱気化アルコール(該アルコールの圧力に対応する沸点よりも高温の状態に保持されたアルコール)の状態で反応に使用し、油脂類とアルコールとを圧力0.090〜0.405Mpa、温度350〜150℃の条件で反応させ、反応生成物を過熱気化アルコールとの混合気相流(気相の反応生成物と過熱気化アルコールとの混合物若しくはこれに液滴状の反応生成物を伴うもの)として取得する方法において、油脂類と一価アルコールとの反応を行うための工程(以下反応工程と言う)、反応の直前に、原料を昇温するための工程(以下最終予熱工程と言う)、反応ガスと原料(原料アルコール及び原料油脂類。以下同様)との顕熱熱交換を行うための工程(以下高温熱交換工程と言う)、反応生成物の凝縮潜熱と原料との熱交換を行うための工程(以下凝縮熱回収工程と言う)、凝縮した反応生成物と過熱気化アルコールとを分離するための工程(以下反応生成物分離工程と言う)、反応生成物と分離された過熱気化アルコール(以下循環アルコールと言う)と原料アルコール及び/又は冷却水との顕熱熱交換を行うための工程(以下温調熱交換工程と言う)及び原料アルコールによる循環アルコールの断熱冷却を行うための工程(以下断熱冷却工程と言う)を連結する該過熱気化アルコールの循環経路を設け、該循環経路を原料アルコール供給手段、原料油脂類供給手段及び反応生成物分離・排出手段を備えた密閉系(過熱気化アルコールが循環経路の外に出ることの無い系)とすることを特徴とする、脂肪酸エステルの製造方法。
  2. 過熱気化アルコール循環経路に常時一定量の過熱気化アルコールを循環させ、製造原料は気化状態で該循環経路に原料アルコール供給手段又は原料油脂類供給手段を通して供給され、該循環過熱気化アルコール(以下循環アルコールと言う)によって搬送されて反応工程に入り、反応生成物(気相)は循環アルコールによって搬送され、反応生成物分離・排出手段を通して製品として取得されることを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  3. 熱交換により反応生成物の冷却と原料の昇温とを行うための工程において、反応工程から取り出された、反応生成物を含む過熱気化アルコール(以下反応ガスと言う)と原料との熱交換に際し、反応ガスの顕熱部と潜熱部とを分離して熱交換を行うことを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  4. 高温熱交換工程に、高温側が反応ガスで低温側が原料アルコールを随伴する循環アルコール(以下反応原料アルコールと言う)である第1高温熱交換器と、高温側が反応ガスで低温側が原料油脂類である第2高温熱交換器とを設けることを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  5. 凝縮熱回収工程に、高温側が反応ガスで低温側が反応原料アルコールである第1凝縮熱交換器と、高温側が反応ガスで低温側が原料油脂類である第2凝縮熱交換器とを設けることを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  6. 温調熱交換工程に、高温側が循環アルコールで低温側が原料油脂類である温調熱交換器を設けることを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  7. 断熱冷却工程に、高温側が循環アルコールで低温側が原料アルコールである断熱冷却器を設けることを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  8. 熱交換により反応生成物の冷却と原料の予熱とを行うための工程において、高温熱交換工程に、高温側が反応ガスで低温側が反応原料アルコールである第1高温熱交換器と、高温側が反応ガスで低温側が原料油脂類である第2高温熱交換器とを設け、凝縮熱回収工程に、高温側が反応ガスで低温側が反応原料アルコールである第1凝縮熱交換器と、高温側が反応ガスで低温側が原料油脂類である第2凝縮熱交換器とを設け、温調熱交換工程に、高温側が循環アルコールで低温側が原料油脂類である温調熱交換器を設け、断熱冷却工程に、高温側が循環アルコールで低温側が原料アルコールである断熱冷却器を設けた熱回収システムを構築し、反応工程を出た高温度の反応ガスを2分岐させてそれぞれ第1及び第2高温熱交換器に入れ、各高温熱交換器を出た各分岐の中間温度の反応ガスをそれぞれ第1及び第2凝縮熱交換器に入れ、各凝縮熱交換器を出た低温度の反応ガスを合流させて反応生成物分離工程に入れ、反応生成物を凝縮物として分離し、得られた循環アルコールを順次温調熱交換器及び断熱冷却器に入れて更に温度を下げ、断熱冷却器において所要の原料アルコールを加えて反応原料アルコールとし、順次第1凝縮熱交換器及び第1高温熱交換器の低温側に送り、加熱・昇温して反応に使用し、一方原料油脂類を順次温調熱交換器・第2凝縮熱交換器・第2高温熱交換器の低温側を通して加熱・昇温して反応に使用する熱交換工程を含むことを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  9. 高温熱交換工程において、原料油脂類を熱媒として反応ガスと反応原料アルコールとの間で熱交換を行うことを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  10. 高温熱交換工程において、高温側が反応ガスで、低温側が熱媒(原料油脂類)である高温熱交換器と、高温側が熱媒(原料油脂類)で低温側が反応原料アルコールであるアルコール加熱用高温熱交換器とを設け、高温熱交換器低温側の熱媒出口とアルコール加熱用高温熱交換器高温側の熱媒入口、アルコール加熱用高温熱交換器高温側の熱媒出口と高温熱交換器低温側の熱媒入口とを導管で連結して熱媒の循環回路を形成し、該循環回路の途中に循環ポンプと高温熱媒(原料油脂類)取り出し手段とを備え、反応ガスの熱によって反応原料アルコールを加熱することを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  11. 温調熱交換工程から凝縮熱回収工程に至る過熱気化アルコール循環経路の中間に原料アルコール(液体)供給手段とガス攪拌手段とを備えた混合断熱冷却器を設け、原料アルコール(液体)により回収アルコールを断熱冷却することを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  12. 凝縮熱回収工程において反応ガス中の反応生成物を一括凝縮させ、該凝縮物を含む過熱気化アルコールを反応生成物分離工程に送り、凝縮物分離手段を備えた反応生成物分離装置に通して該凝縮物と過熱気化アルコールとを分離し、採取した該凝縮物を製品分離工程に送り、比重分離等の製品分離手段を備えた製品分離装置に入れて脂肪酸エステルとグリセリンとを分取することを特徴とする、請求項6記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  13. 反応工程で生ずる反応残渣を、焼却装置により焼却処理を行う工程(以下反応残渣焼却工程と言う)に送り、焼却の際に発生する熱によって熱媒を加熱して高温熱源を得ることを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  14. 反応残渣焼却工程において得られる高温熱源(熱媒)を最終予熱工程に送り、反応原料アルコール及び原料油脂類と熱交換を行うことを特徴とする、請求項12記載の脂肪酸エステルの製造方法。
  15. 反応工程、高温熱交換工程、凝縮熱回収工程、反応生成物分離工程、温調熱交換工程、断熱冷却工程、最終予熱工程、過熱気化アルコール循環手段、製品分離工程及び反応残渣焼却工程を主工程として構成され、反応工程、高温熱交換工程、凝縮熱回収工程、反応生成物分離工程、温調熱交換工程、断熱冷却工程及び最終予熱工程の全てを連結する過熱気化アルコール循環経路を有し、熱交換により反応ガスの持つ熱を回収して原料の予熱を行うと共に反応生成物を一括凝縮させ、得られた凝縮物から脂肪酸エステルとグリセリンとを分離採取し、反応工程で生ずる反応残渣を反応残渣焼却工程に送り、最終予熱工程に使用する熱媒の加熱のための燃料として使用し、該燃料の不足分を原料油脂類の一部を以って補い、生産された脂肪酸エステルの一部により発電を行い、外部からの燃料及び電力の供給を得ることなく全プラントの稼動が可能であり、且つ有害廃棄物をプラント外に出さないシステムを構築することを特徴とする、請求項1記載の脂肪酸エステルの製造方法。
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