JP4848755B2 - 凍結保存容器、その製造方法並びに生物試料の凍結保存方法 - Google Patents

凍結保存容器、その製造方法並びに生物試料の凍結保存方法 Download PDF

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Description

本発明は、凍結保存容器、その製造方法及び凍結保存方法に関する。具体的には、生物試料を凍結保存するための容器であって、口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部と、内腔を備え、耐寒性フィルムで構成された封止部を含み、前記封止部は、前記封止部の上端部が前記口部よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部に結合した凍結保存容器に関する。
近年、再生医療、細胞含有医薬及び不妊治療などの細胞医療分野がめざましい発展を遂げている。これらの細胞医療分野において、生物試料を凍結保存する技術は全ての当業者が実施する必要不可欠な技術である。
細胞を凍結保存するための容器として、本出願人は超高分子量ポリエチレン層と低密度ポリエチレン層との積層フィルムにより形成したバッグの発明が開示されている。この発明は、本出願人により出願された発明であり、既に特許登録されている(特許文献1)。この発明の実施品は、近年のわが国における臍帯血バンクの発展に貢献している。また、上記凍結保存バッグ以外にも、ポリイミドフィルムとフッ素化エチレンプロピレン重合体フィルムとの積層フィルムからなるもの(特許文献2)や、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体フィルムからなるもの(特許文献3)等が提案されている。さらに、特許文献4には、電子線照射し2軸延伸されたエチレン−酢酸ビニル共重合体のフィルムで成形された凍結保存容器が開示されている。特許文献5には、2軸延伸された架橋ポリエチレンフィルムで成形された凍結保存容器が開示されている。
係るバッグを用いて浮遊系細胞を凍結保存する手順は、まず細胞を懸濁した液を調製後、バッグに備えたポート又はポートに結合されたチューブから上記懸濁液を注入する。次に、バッグに備えたポート又はポートに結合されたチューブを溶着することにより封をする。そして、浮遊系細胞を収容したバッグを液体窒素内に浸漬させる。
ところで、実験室レベルにおける生物試料の凍結保存には、ポリプロピレン製のクライオバイアルが一般的に使用されている。クライオバイアルは、図6に示すようにバイアル基部とキャップとの螺合により蓋をする典型的なバイアルの構造である。係るクライオバイアルの使用方法は、容器内に生物試料を収容後、キャップで蓋をし、そのまま液体窒素に浸漬して保存する。
しかしながら、生物試料を収容したクライオバイアルを液体窒素内で保存する際、上記クライオバイアルの容器本体とキャップとの螺合の隙間から液体窒素及び/又は液体窒素に存在する雑菌(主にマイコプラズマ)が容器内部に侵入するおそれがある。このことにより、容器内の生物試料が、液体窒素に存在する雑菌(主にマイコプラズマ)により汚染される。また、容器内に液体窒素が侵入した状態でバイアルを液体窒素タンクから取り出すと、容器内の温度の上昇により液体窒素が急激に膨張する。その結果、バイアルが破裂する又はキャップが発射される。そして、破裂した容器片又は発射されたキャップにより作業者が怪我をするという事故が発生する。もし、このような事故で作業者が怪我をし、さらに容器内の生物試料が液体窒素内の雑菌により汚染されていると、作業者の傷口に雑菌が侵入しさらに大きな事故に発展するおそれがある。
係る問題を解決する手段として、上記特許文献1〜5のバッグを用いることが考えられる。しかしながら、上記特許文献1〜5のバッグは赤血球細胞、白血球細胞及び造血幹細胞などの浮遊系細胞の保存には適しているものの、ES細胞、間葉系幹細胞、骨骸単核細胞、精子細胞及び卵子細胞などの稀少な細胞、膵島、粘膜上皮組織、角膜上皮組織及び培養角膜組織などの組織、並びに、微生物変異体及び採集が困難な微生物などの稀少な微生物、さらには、精子及び卵子保存には、必ずしも適しているとはいえない。その理由として、以下の4点が挙げられる。
・保存対象が組織である場合、ポートを備えたバッグではバッグ内に組織を無菌的に収容することが困難である。
・保存対象が数少ない精子及び卵子である場合、バッグ内における精子及び卵子の位置の特定が困難である。
・保存対象が付着性細胞及び微生物である場合、細胞をバッグのポートに結合されたチューブからバッグ内に収容する時に、細胞及び微生物がチューブの内壁に付着する場合があり、細胞をバッグ内に収容させる作業が困難である。
・バッグを構成するフィルムが可撓性であるために、外力の影響などによりバッグ内部の生物試料が損傷するおそれがある。
特許第2876588号公報 特公昭49−8079号公報 実公昭55−55069号公報 特公昭55−44977号公報 特公昭62−57351号公報
本発明の課題は、液体窒素及び/又は雑菌が容器内部に侵入しにくく、稀少な生物試料の保存に適した凍結保存容器を提供することである。
本発明は、
[1] 生物試料を凍結保存するための容器であって、
口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部と、
内腔を備え、耐寒性フィルムで構成された封止部を含み、
前記封止部は、前記封止部の上端部が前記口部よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部に結合した
凍結保存容器、
[2] 耐寒性プラスチックの曲げ弾性率が、800〜2000MPaである[1]に記載の凍結保存容器、
[3] 耐寒性フィルムの膜厚が、25〜500μmである[1]に記載の凍結保存容器、
[4] 耐寒性プラスチックの材料がポリプロピレンであり、
耐寒性フィルムが、
低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステルからなる群より選択されるいずれか1つの高分子層と、
超高分子量ポリエチレンの層
を含むポリエチレン積層系フィルム
である[1]に記載の凍結保存容器、
[5] 耐寒性プラスチックの材料がポリテトラフルオロエチレンであり、
耐寒性フィルムが少なくとも含フッ素高分子層を含む含フッ素高分子系フィルム
である[1]に記載の凍結保存容器、
[6] 含フッ素高分子系フィルムが、さらにポリイミド層を含む[5]に記載の凍結保存容器、
[7] 生物試料を凍結保存するための容器の製造方法であって、
(I) 口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部を準備する工程;
(II) 内腔を備え、耐寒性フィルムで構成された筒状体を準備する工程;及び
(III) 前記筒状体を、前記筒状体の上端部が前記口部よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部に結合することにより封止部を形成する工程
を含む凍結保存容器の製造方法、
[8] 生物試料を凍結保存するための容器の製造方法であって、
(i) 口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部を準備する工程;
(ii) 少なくとも1枚の耐寒性フィルムを、前記少なくとも1枚の耐寒性フィルムの一部が前記口部よりも上に突出するように前記容器基部の口部に結合させる工程;及び
(iii) 前記結合された耐寒性フィルムを、前記口部と連通するように内腔を形成することにより封止部を形成する工程
を含む[7]に記載の凍結保存容器の製造方法、
[9] 生物試料を凍結保存容器内に凍結保存する方法であって、
前記凍結保存容器は、
口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部と、
内腔を備え、耐寒性フィルムで構成された封止部を含み、
前記封止部は、前記封止部の上端部が前記口部よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部に結合した容器であり、
前記方法は、
1)前記生物試料を前記容器基部内に収納する工程;
2)前記封止部を溶着することにより前記容器基部内を密封する工程;及び
3)凍結保存する工程
を含む生物試料の凍結保存方法、
[10] 前記生物試料が、ES細胞、間葉系幹細胞、精子細胞又は卵子細胞である[9]に記載の生物試料の凍結保存方法、
並びに、[11] 前記生物試料が、精子、卵子、膵島、粘膜上皮組織、角膜上皮組織及び培養角膜組織である[9]に記載の生物試料の凍結保存方法に関する。
本発明の凍結保存容器によれは、稀少な生物試料の保存を安全且つ容易に行うことができる。より詳しくは、凍結保存容器は、液体窒素及び/又は雑菌が容器内部に侵入しにくいために、容器内部に保存した生物試料が汚染されることがない。また、液体窒素が容器内部に侵入した状態で解凍作業などを行った場合、液体窒素が急激に膨張し、容器の破損などを防止し、作業者が怪我をするおそれがない。さらに、容器基部がある程度の高度を有するために、外力により生物試料が損傷することがない。
本発明における「凍結保存容器」とは、生物試料を収容しうる容器をいい、少なくとも0度以下の環境下に物理的に耐えうる材料で構成された容器をいう。さらに、凍結保存時に液体窒素及び/又は液体窒素に存在する雑菌が容器内部に侵入しにくい容器をいう。本発明の凍結保存容器の構成は、口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部と、内腔を備え、耐寒性フィルムで構成された封止部を含み、前記封止部は、前記封止部の上端部が前記口部よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部に結合したものである。
上記「生物試料」とは、凍結保存することのある生体由来のものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、全血、赤血球、白血球、血漿、血小板及び多血小板血漿などの血液、血液成分及び血液由来の浮遊系細胞、骨骸単核細胞及び造血幹細胞などの希少な浮遊系細胞、ES細胞、間葉系幹細胞、精子細胞及び卵子細胞などの希少な細胞、膵島、粘膜上皮組織、角膜上皮組織及び培養角膜組織などの組織、採集が困難な微生物及び、薬剤耐性結核菌などの微生物変異体などを含む微生物、さらには、精子並びに卵子が挙げられる。これら生物試料の中でも、収容物を損傷しない観点から、希少な付着性細胞、組織及び微生物が好ましく、さらに好ましくは希少な細胞、精子並びに卵子であり、特に好ましくは精子細胞、卵子細胞、精子並びに卵子である。
上記「凍結保存」とは、0度以下での環境下で保存することをいうが、長期にわたって保存できる観点から、好ましくは−20度以下、さらに好ましくは−80度以下、特に好ましくは−196度(液体窒素温度)の環境下での保存することをいう。凍結保存を行う方法としては、例えば、市販のディープフリーザーなどの装置を用いて行う方法、及び、ドライアイス、液体窒素及び液体ヘリウムなどの冷却物質を用いて行う方法などが挙げられる。これらの凍結保存方法の中でも長期にわたって保存できる観点から、液体窒素が好ましい。
上記「容器基部」とは、口部及び底部を備え、形状としては蓋のない一般的な容器の形状のものをいい、耐寒性プラスチックで構成されたものをいう。本発明において「口部」とは、容器基部上端から10mm以内の領域を含むものとする。また、容器基部の形状は、一般的な容器の形状を逸脱しなければ特に限定されるものではないが、例えば、円柱状、角柱状、円錐状及び角錐状などが挙げられる。これらの形状の中でも製造が容易であり、クライオバイアルと形状が類似し、該クライオバイアルを取り付けるためのケーンなどの付属品に適応できる観点から円柱状であることが好ましい。また、容器基部の内容積も特に限定されるものではないが、当業者が取り扱いに慣れているクライオバイアルと形状が類似し、該クライオバイアルを取り付けるためのケーンなどの付属品に適応できる観点から、約0.5〜5.0ml、好ましくは約1.0〜2.0mlであるが、これに限定されるものではない。
本発明における「耐寒性プラスチック」とは、外力により容器基部が変形しにくい程度の硬度を有し、少なくとも0度以下、好ましくは−40度以下、特に好ましくは−196度(液体窒素温度)の環境下で物理的に耐えうるものをいう。耐寒性プラスチックの材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。また、耐寒性プラスチックの硬度は、容器基部が破損しない程度であれば特に限定されるものではないが、曲げ弾性率で約900MPa以上、好ましくは約1000〜2000MPa、特に好ましくは約1200〜1700MPaである。また、容器基部の厚さは、上記破断強度を有し、凍結保存における熱伝導を阻害しない程度の厚さであれば特に限定されるものではない。例えば、上記耐寒性プラスチックの材料がポリプロピレンである場合、容器基部の厚さは、約0.5〜1.5mm、好ましくは約0.8〜1.2mmである。上記耐寒性プラスチックの材料がポリテトラフルオロエチレンである場合、容器基部の厚さは、約0.5〜1.5mm、好ましくは約0.8〜1.2mmである。これら容器基部の形状は、選択する耐寒性プラスチックにより当業者が適宜設定できるものであるため、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
上記容器基部の口部には、耐寒性フィルムで構成された封止部を設ける。本発明における「封止部」とは、上記容器基部の口部に溶着することで形成され、溶着により上記容器基部の内部を密封することのできるものをいい、耐寒性フィルムで構成されたものをいう。つまり、本発明の封止部は、凍結保存容器における蓋の役割を果たす。前記封止部は、前記封止部の上端部が前記口部よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部に結合することにより形成される。ここで、本発明における「結合」とは、接着、溶着及び埋設などにより、容器基部と封止部との分離が容易ではない程度に互いに接した状態をいう。結合する壁面は、口部の内壁、壁中及び外壁のいずれであってもよいが、製造が容易である観点では外壁が好ましく、容器基部と封止部との結合強度の観点では壁中が好ましい。
上記封止部の形状は、例えば、
(A) 二枚の同形状の長方形フィルムを重ね、重なった二枚のフィルムの平行する二辺を溶着することで内腔を形成した形状(図1);及び
(B) 一枚の長方形フィルムの平行する二辺を重ね、重なった二辺を溶着することで内腔を形成した形状(図2)
などが挙げられる。これらの形状の中でも密封する時の溶着が容易である観点から、(A) 二枚の同形状の長方形フィルムを重ね、重なった二枚のフィルムの平行する二辺を溶着することで内腔を形成した形状が好ましいが、本発明の封止部の形状はこれらの記載に限定されるものではない。
上記「耐寒性フィルム」とは、上記耐寒性プラスチックと熱溶着が可能であり、可撓性を有し、少なくとも0度以下、好ましくは−40度以下、特に好ましくは−196度(液体窒素温度)の環境下で物理的に耐えうる耐寒性高分子層を含むものをいう。上記耐寒性フィルムの膜厚は、熱溶着が可能であり、可撓性を有する程度であれば特に限定されるものではないが、例えば、約25〜500μm、好ましくは約50〜300μmであり、特に好ましくは約75〜200μmである。
上記耐寒性フィルムの構造及び材料は、上記耐寒性プラスチックと熱溶着を可能とする構造及び材料でなければならないため、耐寒性プラスチックの材料に依存する。例えば、上記耐寒性プラスチックの材料がポリプロピレンである場合、上記耐寒性フィルムは主にポリエチレン系積層フィルムが選択される。また、例えば上記耐寒性プラスチックの材料がポリテトラフルオロエチレンである場合、上記耐寒性フィルムは主に含フッ素高分子系フィルムが選択される。上記2つの組み合わせは当業者が適宜選択できるものであり、特に限定されるものではない。なぜならば、前者は製造コストの観点では後者よりも好ましいが、後者は製造が容易である観点では前者よりも優れているからである。
本発明における上記「ポリエチレン系積層フィルム」とは、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステルからなる群より選択されるいずれか1つの高分子層と、超高分子量ポリエチレンの層を含む積層フィルムをいう。つまり、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステルからなる群より選択されるいずれか1つの高分子層が上記ポリプロピレンと溶着する役割をし、超高分子量ポリエチレンにより積層フィルムに耐寒性を付与する。これらポリエチレン系積層フィルムの中でも、ポリプロピレンとの溶着性及びフィルム積層フィルムの製造が容易である観点から、低密度ポリエチレンの層及び超高分子量ポリエチレンの層を含む積層フィルムが好ましい。
本発明における上記「低密度ポリエチレン」とは、高分子化学分野における一般的な低密度のポリエチレンをいい、その密度が約0.925g/cm以下、好ましくは0.910〜0.925g/cmのポリエチレンをいう。また、「中密度ポリエチレン」とは、高分子化学分野における一般的な中密度のポリエチレンをいい、その密度が0.926〜0.940g/cmのポリエチレンをいう。
上記低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステルからなる群より選択されるいずれか1つの高分子層の製造方法は、その分子構造、ガラス転移温度及び融点などにより当業者が適宜選択して製造することができる。例えば、圧縮成形、射出成形、押出成形、Tダイ成形、インフレーション成形及び溶剤キャスティング法などが挙げられる。
また、上記「超高分子量ポリエチレン」とは、少なくとも耐寒性を有し、重量平均分子量が粘度法で100万以上、または光散乱法で300万以上のいずれかの分子量の条件を満足するポリエチレンをいう。超高分子量ポリエチレンの分子量の上限は特に限定されるものではないが、現時点では約600万程度(粘度法)が当業者の製造しうる限界であるといわれている。また、超高分子量エチレンの層は、主に切削加工により製造することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。超高分子量ポリエチレンは、作新工業社より購入することができる。
上記ポリエチレン系積層フィルムを製造する方法としては、例えば、熱ラミネート法、熱圧縮法、高周波加熱法及び溶剤キャスティング法などが挙げられる。これらの積層方法の中でも製造が容易である観点から熱ラミネート法が好ましい。この積層により、2層間は強固に溶着され、もはや2層が剥がれることがない。ここで、上記熱積層法における温度条件は、例えば、ポリエチレン系積層フィルムが低密度ポリエチレンの層と超高分子量ポリエチレンの層を含む積層フィルムである場合、製造における安全性などの観点から、約150〜250℃、好ましくは約170〜200℃であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上記「含フッ素高分子系フィルム」とは、主鎖及び/又は側鎖に少なくとも1つのフッ素原子を有する高分子(以下、含フッ素高分子という)層を含むフィルムいう。含フッ素高分子は、例えば、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフロエチレン共重合体及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロペンテン共重合体などが挙げられる。また、フッ素ガス雰囲気化によるプラズマ処理などにより、汎用のオレフィン系高分子をフッ素化する方法により、高分子の主鎖及び/又は側鎖に少なくとも1つのフッ素原子を導入することで得られる高分子であってもよい。この代表例としては、エチレン−プロピレン重合体をフッ素化したもの(以下、フッ素化エチレン−プロピレン重合体ともいう)が挙げられる。これらの含フッ素系高分子の中でも、成形加工性及び含フッ素高分子層の可撓性などの観点から、エチレン−テトラフロエチレン共重合体及びフッ素化エチレン−プロピレン重合体が好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。また、市販の含フッ素高分子としては、ダイキン工業社製のネフロンEFEP(商標)等が挙げられる。
上記含フッ素高分子の分子量は、成形加工性の観点から、数平均分子量で約1,000〜1,000,000、好ましくは約2,000〜500,000、さらに好ましくは約5,000〜300,000であるが、これに限定されるものではない。
また、上記含フッ素高分子層の成形方法としては、圧縮成形、射出成形、押出成形、Tダイ成形、ロール成形、インフレーション成形及び溶剤キャスティング法などが挙げられ、成形加工性の観点からTダイ成形、ロール成形及びインフレーション成形が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、上記含フッ素高分子系フィルムは耐寒性を向上させる観点から、含フッ素高分子層に、さらに該含フッ素高分子以外の高分子層を積層した積層フィルムの形態であってもよい。このような高分子としては、例えば、超高分子量ポリエチレン、ポリイミド及びエチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、内容物への熱伝導度及び耐寒性の観点からポリイミドが好ましい。本発明においてこのような積層フィルムを「含フッ素高分子系『積層』フィルム」という。
上記「ポリイミド」とは、主鎖にイミド結合を有する耐熱性の高分子をいい、例えば、主鎖にイミド結合のみを有する非熱可塑性ポリイミド、全芳香族ポリイミド、有機溶媒可溶性ポリイミド、ポリエーテルイミド及びポリイミドアミドなどが挙げられる。また、ポリイミドの分子量は、成形加工性の観点から、数平均分子量で約1,000〜1,000,000、好ましくは約2,000〜500,000、さらに好ましくは約5,000〜300,000であるが、これに限定されるものではない。
上記ポリイミド層は、例えば、高温高圧における熱溶融法、押出法又は圧縮法及び溶剤キャスティング法などにより成形されたものが挙げられる。
上記ポリイミド層に含フッ素高分子層を積層する方法としては、例えば、熱ラミネート法、熱圧縮法、高周波加熱法及び溶剤キャスティング法などが挙げられる。これらの積層方法の中でも製造の容易性の観点から熱ラミネート法が好ましい。ここで、上記熱積層法における温度条件は、製造における安全性などの観点から、約200〜300℃、好ましくは約200〜250℃である。
以上に説明した本発明の容器基部及び封止部は、前記封止部の上端部が前記口部よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部に結合することにより本発明の凍結保存容器を製造することができる。
以下は図面を用いて本発明の実施態様を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
図1は、本発明の凍結保存容器の一実施態様である。図1の凍結保存容器は、口部11及び底部12を備えポリプロピレン製の容器基部1と、ポリエチレン系積層フィルム2枚で構成される内腔21を備えた封止部2を含む。前記封止部2は、その上端部が前記口部11よりも上に突出し、前記内腔21と前記口部11が連通するように前記容器基部の口部11の外壁に結合している。ここで、ポリエチレン系積層フィルムは、中間層として超高分子量ポリエチレンの層を備え、この超高分子量ポリエチレンの層の両面に低密度ポリエチレンの層を備えた積層フィルムである。容器基部1と封止部2との結合は、熱溶着で行われ、口部周囲には溶着しろ31が形成される。さらに、封止部2は、2枚のポリエチレン系積層フィルムで構成されるために、平行する2辺は熱溶着され、溶着しろ32が形成される。したがって、封止部2の水平方向の断面はまるでヒトの目のような形をなす。
図2は、図1とは異なる本発明の凍結保存容器の一実施態様である。図2の凍結保存容器は、口部11及び底部12を備えポリテトラフルオロエチレン製の容器基部1と、含フッ素高分子系積層フィルム1枚で構成された内腔21を備える封止部2を含む。前記封止部2は、その上端部が前記口部11よりも上に突出し、前記内腔21と前記口部11が連通するように前記容器基部の口部11の内壁に結合している。ここで、含フッ素高分子系フィルムは、フッ素化エチレン−プロピレン共重合体層と、ポリイミドの層で構成される2層のフィルムである。容器基部1と封止部2との結合は、ポリテトラフルオロエチレンと含フッ素高分子との熱溶着で行われ、口部周囲には溶着しろ31が形成される。さらに、封止部2は、1枚の含フッ素高分子系積層フィルムで構成されるために、重なった平行する2辺は熱溶着され、溶着しろ32が形成される。したがって、封止部2の水平方向の断面は円形をなす。
図3は、図1及び図2とは異なる本発明の凍結保存容器の一実施態様である。図3の凍結保存容器は、口部11及び底部12を備えポリプロピレン製の容器基部1と、ポリエチレン系積層フィルム1枚で構成される内腔21を備えた封止部2を含む。前記封止部2は、その上端部が前記口部11よりも上に突出し、前記内腔21と前記口部11が連通するように前記容器基部の口部11の内壁に結合している。ここで、ポリエチレン系積層フィルムは、中間層として超高分子量ポリエチレンの層を備え、この超高分子量ポリエチレンの層の両面に低密度ポリエチレンの層を備えた積層フィルムである。容器基部1と封止部2との結合は、熱溶着で行われ、口部11周囲には溶着しろ31が形成される。さらに、封止部2は、1枚のポリエチレン系積層フィルムで構成されるために、重なった平行する2辺は熱溶着され、溶着しろ32が形成される。したがって、封止部2の水平方向の断面は円形をなす。
図4は、図1〜3とは異なる本発明の凍結保存容器の一実施態様である。図4の凍結保存容器は、口部11及び底部12を備えポリプロピレン製の容器基部1と、ポリエチレン系積層フィルム1枚で構成される内腔21を備えた封止部2を含む。前記封止部2は、その上端部が前記口部11よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部11の壁中に埋設している。ここで、ポリエチレン系積層フィルムは、中間層として超高分子量ポリエチレンの層を備え、この超高分子量ポリエチレンの層の両面に低密度ポリエチレンの層を備えた積層フィルムである。容器基部1と封止部2との結合は、熱溶着により図2と同じ形状のものを作成した後、図2の容器よりも外径が少し太い金型内に配置する。その後、少なくとも溶着しろ31の周囲に容器基部1と同じ材料(ポリプロピレン樹脂)の溶融物を流し込むことにより、封止部2が容器基部の口部11の壁中に埋設し、冷却することにより本発明の凍結保存容器が製造される。したがって、封止部2の水平方向の断面は円形をなす。
図5は、図1〜4とは異なる本発明の凍結保存容器の一実施態様である。図5の凍結保存容器は、口部11及び底部12を備えポリプロピレン製の容器基部1と、ポリエチレン系積層フィルム1枚で構成される内腔21を備えた封止部2を含む。前記容器基部1は図6に示すような市販のクライオバイアルのバイアル基部をそのまま用いている。前記封止部2は、その上端部が前記口部11よりも上に突出し、前記内腔21と前記口部11が連通するように前記容器基部の口部11の外壁に結合している。ここで、ポリエチレン系積層フィルムは、中間層として超高分子量ポリエチレンの層を備え、この超高分子量ポリエチレンの層の両面に低密度ポリエチレンの層を備えた積層フィルムである。容器基部1と封止部2との結合は、ポリプロピレンとポリエチレン系積層フィルムとの熱溶着で行われ、口部11周囲には溶着しろ31が形成される。さらに、封止部2は、1枚のポリエチレン系積層フィルムで構成されるために、重なった平行する2辺は熱溶着され、溶着しろ32が形成される。したがって、封止部2の水平方向の断面は円形をなす。さらに、容器基部1は、市販のクライオバイアルのバイアル基部であるため、本発明の凍結保存容器の製造が容易となる。また、市販のクライオバイアルは、バイアル基部に螺合するキャップ4をさらに備えため、凍結保存・解凍後の取り扱いにおいて便利である上、コンタミネーションを防止することができる。
以下は、本発明の凍結保存容器の製造方法について、好ましい態様を挙げながら説明するが、本発明はこれらの好ましい態様に限定されるものではない。
また、本発明は上記凍結保存容器の製造方法も含む。本発明における凍結保存容器の第1の製造方法は、以下の(I)〜(III)の工程を含む。
(I) 口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部を準備する工程;
(II) 内腔を備え、耐寒性フィルムで構成された筒状体を準備する工程;及び
(III) 前記筒状体を、前記筒状体の上端部が前記口部よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部に結合することにより封止部を形成する工程。
つまり、上記の第1の製造方法は、(I) 容器基部の準備する工程、(II) 筒状体の準備する工程、そして、(III) 容器基部に筒状体を結合する工程、という手順で本発明の凍結保存容器を製造する方法をいう。
上記「(I) 口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部を準備する工程」とは、耐寒性プラスチックで構成された一般的な蓋のない容器の形状を有するものを製造又は購入により製造者の手元に存在するとする工程をいう。容器基部の製造方法は、例えば、圧縮成形、射出成形、押出成形及び真空成型などが挙げられる。また、市販のクライオバイアルのバイアル基部をそのまま用いてもよい。
上記「(II) 内腔を備え、耐寒性フィルムで構成された筒状体を準備する工程」とは、耐寒性フィルムで構成された筒状体を、上記容器基部とは別途で製造又は購入することにより製造者の手元に存在する状態とする工程をいう。ここで「筒状体」とは、内腔を備え封止部を形成しうる前駆的な形状のものをいう。この筒状体を製造する方法としては、主に熱溶着法である。この筒状体の製造における熱溶着法の溶着幅は、シール強度の観点から、約2〜20mm、好ましくは約5〜15mmであるが、これに限定されるものではない。さらに、溶着温度については、使用する材料の融点よって当業者が適宜設計できるものであり、特に限定されるものではない。例えば、耐寒性フィルムがポリエチレンの層と超高分子量ポリエチレンの層との積層フィルムである場合、シール強度の観点から、約150〜250℃、好ましくは約170〜200℃である。また、例えば、耐寒性フィルムがポリイミドの層と含フッ素系高分子層との積層フィルムである場合、シール強度の観点から、約200〜350℃、好ましくは約200〜300℃である。
そして、(I)の工程で準備した容器基部に(II)の工程で準備した筒状体を結合することにより本発明の凍結保存容器は完成する。より詳細には、前記筒状体を、前記筒状体の上端部が前記口部よりも上に突出し、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部に結合することにより封止部を形成する。結合の方法は、接着剤による接着及び熱溶着が挙げられるが、凍結保存容器の耐寒性の観点から熱溶着法が好ましい。熱溶着法にて前記容器基部に前記筒状体を結合する際の溶着幅は、シール強度の観点から約2〜20mm、好ましくは約5〜15mmであるが、これに限定されるものではない。また、熱溶着法における温度条件は、耐寒性プラスチックと、耐寒性フィルムとの組み合わせにより当業者が適宜設定できるものである。例えば、耐寒性プラスチックがポリプロピレンであり、耐寒性フィルムがポリエチレンの層と超高分子量ポリエチレンの層との積層フィルムである場合、シール強度の観点から約150〜250℃、好ましくは約170〜200℃である。また、例えば、耐寒性プラスチックがポリテトラフルオロエチレンであり、耐寒性フィルムがポリイミドの層と含フッ素系高分子層との積層フィルムである場合、シール強度の観点から約200〜350℃、好ましくは約200〜300℃である。
本発明における凍結保存容器の第2の製造方法は、以下の(i)〜(iii)の工程を含む。
(i)口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部を準備する工程;
(ii)少なくとも1枚の耐寒性フィルムを、前記少なくとも1枚の耐寒性フィルムの一部が前記口部よりも上に突出するように前記容器基部の口部に結合する工程;及び
(iii)前記結合された耐寒性フィルムを、前記口部と連通するように内腔を形成することにより封止部を形成する工程。
つまり、上記の第2の製造方法は、(i) 容器基部の準備する工程、(ii) 耐寒性フィルムを容器基部に結合する工程、そして、(iii) 封止部を形成する工程、という手順で本発明の凍結保存容器を製造する方法をいう。
また、上述した第1の製造方法が、封止部の内腔(筒状体)を予め形成してから容器基部に結合する方法であるのに対し、第2の製造方法は、耐寒性フィルムを容器基部に結合してから内腔を形成して封止部とする方法である。したがって、(ii) 耐寒性フィルムを容器基部に結合する工程及び(iii) 封止部を形成する工程における製造方法としては、主に熱溶着により達成される。さらに、熱溶着における条件も上記第1の製造方法と同様であればよい。
本発明はさらに本発明の凍結保存容器を用いた生物試料の凍結保存方法にまで及ぶ。より詳しくは、以下の1)及び2)の工程を含む。
1)前記生物試料を前記容器基部内に収納する工程;
2)前記封止部を溶着することにより前記容器基部内を密封する工程;及び
3)凍結保存する工程。
上記「1)前記生物試料を前記容器基部内に収納する工程」とは、生物試料が容器基部内に配置する工程をいい、封をすることにより生物試料が密封することができる状態にする工程をいう。生物試料を容器基部内に収納するための方法は、保存する生物試料の種類により当業者が適宜選択して行うことができる。
例えば、卵子細胞、精子細胞、ES細胞などの細胞又は薬剤耐性変異結核菌などの微生物を保存する場合、凍結保存を可能とする培地又は細胞保存液に細胞を懸濁することで細胞懸濁液を調製後、容器基部内に収容することができる。ここで、収容する技術としては、例えば、特開2000−189155号公報に開示されている方法、又は、図7に示すデバイス(国際特許出願番号PCT/JP2005/021962)を用いて収納する方法が挙げられる。特に、稀少な細胞を損失することがなく、組織が損傷することなく凍結保存することができる点で、図7に示すデバイスを用いることが好ましい。具体的には、図7に示すデバイス上に細胞懸濁液の液滴を滴下後、液滴がデバイスから落下しないように本発明の凍結保存容器に収納すればよい。細胞懸濁溶液中の細胞濃度は、細胞の種類によって当業者が適宜決定することができ、特に限定されるものではないが、例えば細胞が精子細胞である場合約2×10〜20×10cells/mlであり、卵子細胞である場合は1〜10cells/mlである。また、細胞懸濁液には凍害保護成分として、例えば、10%程度のジメチルスルホキシド(DMSO)及び5〜10%のアルブミンを添加してもよい。
一方、例えば、組織を保存する場合、組織を例えば、生理食塩水などで浸潤し、容器基部内に収容することができる。ここで、収容する技術としては、例えば、特開2003−009845号公報に開示されている方法、又は、図7に示すデバイスを用いて収納する方法が挙げられる。特に、組織が損傷することなく凍結保存することができる点で、図3に示すデバイスを用いることが好ましい。具体的には、図7に示すデバイス上に組織を載置又は巻き付けた後、組織がデバイスから脱落しないように本発明の凍結保存容器に収納すればよい。
次に、2)前記封止部を溶着することにより前記容器基部内を密封する。ここで「密封」とは、例えば、生物試料を液体窒素下で保存する場合は、液体窒素及び液体窒素に存在する雑菌(主にマイコバクテリア)が容器基部内に侵入しないようにすることをいう。溶着は、例えば、インパルス式のシーラーなどを用いて熱溶着を行う。溶着の温度は、耐寒性フィルムの材料の種類により当業者が適宜設定できる。例えば、耐寒性フィルムがポリエチレンの層と超高分子量ポリエチレンの層との積層フィルムである場合、シール強度の観点から、約150〜250℃、好ましくは約170〜200℃である。また、例えば、耐寒性フィルムがポリイミドの層と含フッ素系高分子層との積層フィルムである場合、シール強度の観点から、約200〜350℃、好ましくは約200〜300℃である。これらの溶着作業により、例えば、図1のような凍結保存容器の外観は図8のようになる。
以上の工程により容器基部内に密封された生物試料は凍結保存される。凍結保存の際の温度条件は上述したとおり、0度以下での環境下で保存することをいうが、長期にわたって保存できる観点から、好ましくは−20度以下、さらに好ましくは−80度以下、特に好ましくは−196度(液体窒素温度)の環境下である。凍結保存を行う方法としては、市販のディープフリーザーなどの装置を用いて行う方法、並びに、ドライアイス、液体窒素及び液体ヘリウムなどの冷却物質を用いて行う方法などが挙げられる。これらの凍結保存方法の中でも長期にわたって保存できる観点から、液体窒素が好ましい。
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
図1の凍結保存容器を製造した。具体的には、まずポリプロピレンを射出成形により口部11及び底部12を備えた円柱形の容器基部1を製造した。射出成形における溶融温度は約210度であった。容器基部1の口部11の外径は約10mm、高さ40mm、容器基部1の内容積は、2.0mlとした。また、この時のポリプロピレンの曲げ弾性率は、約1500MPaであった。
次に、中間層として超高分子量ポリエチレンの層を備え、この超高分子量ポリエチレンの層の両面に低密度ポリエチレンの層を備えた熱溶着法により積層フィルムを製造した。具体的には、厚さ約75μmの超高分子量ポリエチレン層(重量平均分子量約550万、作新化学工業社製)の両面に、厚さ約50μmの直鎖状低密度ポリエチレン層(出光化学社製)を積層した3層のポリエチレン系積層フィルムを製造した。つまり、ポリエチレン系積層フィルムの全体の膜厚は約175μmであった。また、熱溶着の温度は約170度とした。そして、このポリエチレン系積層フィルムを、短辺25×長辺30mmの長方形状にカットしたフィルムを2枚用意した。この2枚のフィルムを重ね合わせ、長辺2辺を溶着幅5mmで熱溶着することで、内腔21を備えた筒状体を製造した。
上記筒状体の内腔21に、容器基部1の口部11を約10mmだけ挿入した。つまり、容器基部1の口部1の外壁周囲に、筒状体が配置した状態である。この容器基部1の口部1の外壁周囲に位置する筒状体を、容器基部1の口部11に熱溶着した。この時の溶着温度は、約170度とした。以上の製造方法により本発明の図1に示す凍結保存容器を製造した。
<実施例2>
図2の凍結保存容器を製造した。具体的には、まずポリテトラフルオロエチレンを射出成形により口部11及び底部12を備えた円柱形の容器基部1を製造した。射出成形における溶融温度は約300度であった。容器基部1の口部11の外径は約10mm、高さ40mm、容器基部1の内容積は、2.0mlとした。また、この時のポリテトラフルオロエチレンの曲げ弾性率は、約1800MPaであった。
次に、含フッ素高分子系積層フィルム(ダイキン工業社より提供、膜厚約100μm、短辺35×長辺40mm)を1枚用意した。
上記含フッ素高分子系積層フィルムの短辺を、容器基部1の口部11の外壁周囲に10mm重なるようにして巻き付けた。この容器基部1の口部1の外壁周囲に位置する含フッ素高分子系積層フィルムを、容器基部1の口部11に熱溶着した。さらに、巻き付けることにより重なりが生じた含フッ素高分子系積層フィルムの長辺を熱溶着することで、内腔21を備えた封止部2を形成した。この時の溶着温度は、約190度とした。以上の製造方法により本発明の図2に示す凍結保存容器を製造した。
<比較例1>
市販のポリプロピレン製のクライオバイアルを用いた。このクライオバイアルは、図6に示すような容器本体に螺合するキャップを備える一般的なバイアルである。
<実験例1>
次に実施例1及び2で製造した凍結保存容器並びに比較例1の凍結保存容器を用いて凍結試験を行った。具体的には、実施例1及び2の凍結保存容器内にジメチルスルホキシド(DMSO)5容量%の水溶液2.0mlを注入し、封止部を熱溶着することで内部を密封した。この時の熱溶着温度は、約170度とした。これに対して、比較例1のクライオバイアルはキャップを螺合することにより蓋をした。その後、これらの凍結保存容器を液体窒素に浸漬し、3日間凍結保存を行った。その後、凍結保存容器を取り出し、約37〜40℃の温浴中で解凍作業を行った。これらの一連の作業を各5回ずつ行い、各作業時における凍結保存容器の様子を目視観察した。
その結果、比較例1の1例の解凍作業中にキャップが発射した。この実験例では、全ての作業においてキャップの方向を実験者に向けないよう注意して行ったために、事故は免れたものの、比較例1の凍結保存容器は容器内部に液体窒素が侵入するおそれがあることを示唆するものであった。つまり、本発明の有用性を示す結果であった。
本発明の凍結保存容器によれは、稀少な生物試料の保存を安全且つ容易に行うことができる。より詳しくは、凍結保存容器は、液体窒素及び/又は雑菌が容器内部に侵入しにくいために、容器内部に保存した生物試料が汚染されることがない。また、液体窒素が容器内部に侵入した状態で、解凍作業などを行った場合、液体窒素が急激に膨張し、容器の破損などを防止し、作業者が怪我をするおそれがない。また、容器基部がある程度の高度を有するために、外力により生物試料が損傷することがない。したがって、微生物又は細胞を保存するためのバンク、例えば、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターなどで用いることができる。
本発明の一実施態様を示す図である。 本発明の図1とは異なる一実施態様を示す図である。 本発明の図1および2とは異なる一実施態様を示す図である。 本発明の図1〜3とは異なる一実施態様を示す図である。 本発明の図1〜4とは異なる一実施態様を示す図である。 従来の凍結保存容器を示す図である。 本発明の凍結保存容器内に使用しうるデバイスを示す図である。 図1の凍結保存容器の封止部を封止した凍結保存容器の外観を示す図である。
符号の説明
1 容器基部
11 口部
12 底部
2 封止部
21 内腔
31 容器基部と封止部との結合の際に形成された溶着しろ
32 封止部形成の際に形成された溶着しろ
33 凍結保存容器の封止の際に形成された溶着しろ
4 キャップ
41 螺合溝
5 デバイス

Claims (11)

  1. 生物試料を凍結保存するための容器であって、
    口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部と、
    内腔を備える筒形状で、耐寒性フィルムで構成された封止部を含み、
    前記封止部の下端部、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部の内壁、壁中及び外壁のいずれかに結合し、
    前記封止部は、前記封止部の上端部が前記口部よりも上に突出した溶着しろを有する
    凍結保存容器。
  2. 耐寒性プラスチックの曲げ弾性率が、800〜2000MPaである請求項1に記載の凍結保存容器。
  3. 耐寒性フィルムの膜厚が、25〜500μmである請求項1に記載の凍結保存容器。
  4. 耐寒性プラスチックの材料がポリプロピレンであり、
    耐寒性フィルムが、
    低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−メタクリル酸エステルからなる群より選択されるいずれか1つの高分子層と、
    超高分子量ポリエチレンの層
    を含むポリエチレン積層系フィルム
    である請求項1に記載の凍結保存容器。
  5. 耐寒性プラスチックの材料がポリテトラフルオロエチレンであり、
    耐寒性フィルムが少なくとも含フッ素高分子層を含む含フッ素高分子系フィルム
    である請求項1に記載の凍結保存容器。
  6. 含フッ素高分子系フィルムが、さらにポリイミド層を含む請求項5に記載の凍結保存容器。
  7. 生物試料を凍結保存するための容器の製造方法であって、
    (I)口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部を準備する工程;
    (II)内腔を備え筒形状の筒状体を準備する工程;及び
    (III)前記筒状体の下端部、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部の内壁、壁中及び外壁のいずれかに結合し、前記封止部の上端部が前記口部よりも上に突出した溶着しろを有する封止部を形成する工程
    を含む凍結保存容器の製造方法。
  8. 生物試料を凍結保存するための容器の製造方法であって、
    (i)口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部を準備する工程;
    (ii)少なくとも1枚の耐寒性フィルムを、前記少なくとも1枚の耐寒性フィルムの一部が前記口部よりも上に突出するように、前記少なくとも1枚の耐寒性フィルムの下端部が前記容器基部の口部の内壁、壁中及び外壁のいずれかに結合させる工程;及び
    (iii)前記結合された耐寒性フィルムを、前記口部と連通するように内腔を備える筒形状に形成し、上端部が口部よりも上に突出した溶着しろを有する封止部を形成する工程
    を含む凍結保存容器の製造方法。
  9. 生物試料を凍結保存容器内に凍結保存する方法であって、
    前記凍結保存容器は、
    口部及び底部を備え、耐寒性プラスチックで構成された容器基部と、
    内腔を備える筒形状で、耐寒性フィルムで構成された封止部を含み、
    前記封止部の下端部、前記内腔と前記口部が連通するように前記容器基部の口部の内壁、壁中及び外壁のいずれかに結合され、
    前記封止部は、前記封止部の上端部が前記口部よりも上に突出した溶着しろを有する容器であり、
    前記方法は、
    1)前記生物試料を前記容器基部内に収納する工程;
    2)前記封止部の溶着しろを溶着することにより前記容器基部内を密封する工程;及び
    3)凍結保存する工程
    を含む生物試料の凍結保存方法。
  10. 前記生物試料が、ES細胞、間葉系幹細胞、精子細胞又は卵子細胞である請求項9に記載の生物試料の凍結保存方法。
  11. 前記生物試料が、精子、卵子、膵島、粘膜上皮組織、角膜上皮組織及び培養角膜組織である請求項9に記載の生物試料の凍結保存方法。
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