JP4846495B2 - 平板状軟磁性金属粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
塗膜としては、磁気シールド膜が挙げられ、電気機器の電子回路や電子部品を外部磁界から保護したり、あるいは電気機器から生じる磁界が外部へ漏洩するのを防止するために用いられている。また、この磁気シールド膜は、クレジットカード等の磁気カードにおいても、データの偽造や変造を防止する目的で用いられている。さらに、ICタグ(RFIDシステム)においても、軟磁性金属の高透磁率による磁界収束効果を応用した電磁シールド膜が用いられている。
一方、軟磁性金属/樹脂複合体は、高透磁率による波長短縮効果でアンテナの小型化や電子回路の消費電力の低下が可能であることから、小型アンテナ基板や高周波電子回路基板に用いられている。
また、軟磁性の金属粒子としては、厚みが1μm以下の平板形状であることが求められており、扁平状、鱗片状、フレーク状等、様々な平板形状の軟磁性金属粒子が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
これらの平板形状の軟磁性金属粒子は、塗膜や軟磁性金属/樹脂複合体の表面平滑性を高めるだけでなく、塗料を塗布する際あるいは軟磁性金属/樹脂複合体を成形する際に外部磁場をかけることで、平板形状の軟磁性金属粒子が特定方向に平行に整列(配向)させ、面方向の反磁場係数を低くし、配向方向の透磁率を高めることができる。また、厚みが1μm以下であることから、表皮効果により交流電流を透過させることができ、渦電流による損失を低減することができる。
また、塑性変形する方法では、アトマイズ法にて工業的に量産可能な軟磁性金属粒子の粒径が概ね10μmであることから、この軟磁性金属粒子を厚み1μm以下の平板状に塑性変形すると、平均粒径は数十〜数百μmにもなる。したがって、このように大きな平板状の軟磁性金属粒子は、塗料や複合体中に分散することが困難である上に、機械的な応力により破損し易いために微細な破片を生成し易いという問題点があった。
前記金属は、ニッケルまたはニッケル基合金であることが好ましい。
前記平板状の軟磁性金属粒子は、厚みが1μm以下、平均粒子径が5μm以下、アスペクト比が2以上であることが好ましい。
このようにして得られた平板状軟磁性金属粒子は、有機バインダーや有機高分子等に対する分散性を向上させることができる。また、この平板状軟磁性金属粒子を塗膜や軟磁性金属/樹脂複合体に適用することにより、これら塗膜や複合体の表面平滑性を向上させることができる。
したがって、特定方向の磁場に対して強く磁性を示す高透磁率材料を得ることができる。また、この平板状軟磁性金属粒子が高透磁率材料であることから、この平板状軟磁性金属粒子を樹脂等の非磁性材料中にフィラーとして配向分散させることにより、高透磁率の軟磁性金属/樹脂複合体を得ることができる。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
この軟磁性金属としては、高透磁率材料であるニッケル(Ni)またはニッケル基合金が好ましく、ニッケル基合金としては、78パーマロイ(Ni:Fe=78:22)や45パーマロイ(Ni:Fe=45:55)等のNiを40重量%〜90重量%含み残部がFe及び不可避不純物からなるNi−Fe系合金、Moパーマロイ(Ni:Fe:Mo=80:17:3)等のNi−Fe−Mo系合金等が好ましい。
また、その平均粒子径は、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
さらに、そのアスペクト比は、2以上が好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。
また、この平板状軟磁性金属粒子を樹脂等の非磁性材料中にフィラーとして配向分散させることにより、高透磁率の軟磁性金属/樹脂複合体が得られる。
また、この平板状軟磁性金属粒子は、金属であることから導電性をも有するので、回路基板における電極材料、燃料電池や二次電池における電極材料としても好適である。
さらに、この平板状軟磁性金属粒子は、平板状であることから隠蔽性にも優れているので、各種装飾品、あるいは表面処理等にも適用可能である。
本発明の平板状軟磁性金属粒子の製造方法は、平均粒子径が200nm以下の球状の軟磁性金属粒子を混合しつつ機械的に凝着させ、平板状の軟磁性金属粒子とする方法である。
この方法は、球状の軟磁性金属粒子にメカニカルアロイングと称される合金製造法を適用し、球状の軟磁性金属粒子同士を凝着(機械的エネルギーにより粒子同士を圧接させることにより付着させること)により、厚みが1μm以下、平均粒子径が5μm以下、アスペクト比が2以上の平板状軟磁性金属粒子を、効率よく、工業的規模で廉価に製造することを可能としたものである。
平均粒子径を200nm以下とすることにより、球状の軟磁性金属粒子が極めて微細となり、粒子表面が高活性となるので、粒子同士の親和性も高くなる。これにより、機械的エネルギーにより粒子同士を圧接及びせん断運動させることにより、粒子同士が反応して2次元方向へ結合し、この結合を繰り返すことにより最終的に平板形状の軟磁性金属粒子となる。
また、充填する球状の軟磁性金属粒子の量は、ボールの重量に対して1/10〜1/100の重量が好ましい。
また、球状の軟磁性金属粒子を充填する際にアルコールを添加することにより、メカニカルアロイングを促進することができる。
アルコールは、軟磁性金属粒子の凝集を防いで不均一性を緩和する他、金属粒子の表面の酸化皮膜を還元反応により除去し、粒子同士の凝着を容易にする。
アルコールとしては特に制限はないが、反応後の回収を考慮すると低沸点のメタノールやエタノールが好ましい。アルコールの添加量としては、軟磁性金属粒子の重量の2倍〜5倍が好ましい。
また、ボールとボールあるいはボールとボールミルの内壁との間で衝突エネルギーあるいはせん断エネルギーが加わる範囲は、5μm以下の極めて狭い範囲であるから、平板の粒径も5μm以下に制限される。
まず、平均粒子径が200nm以下の球状の78パーマロイ粒子を作製する。
作製法としては、気相還元法、液中還元法のいずれかが用いられるが、経済性と量産性の点から液相還元法が好ましい。
還元剤として水酸化ナトリウムとヒドラジンを用いた場合、平均粒子径が100nm〜200nmの78パーマロイ球形粒子が得られる。
また、液相還元法だけでは十分に合金化しない場合には、平均粒子径が200nmを越えない温度範囲で熱処理し、合金化を促進してもかまわない。
ボールミルを用いる場合、ボールミルに適量の78パーマロイ球形粒子及びボールを充填し、必要に応じてアルコールを添加し、このボールミルを所定時間回転させ、78パーマロイ球形粒子を混合しつつ機械的に凝着させ、平板状の78パーマロイ球形粒子とする。
これにより、厚みが1μm以下、平均粒子径が5μm以下、アスペクト比が2以上の平板状78パーマロイ粒子を、効率よく、工業的規模で廉価に製造することができる。
なお、他の軟磁性金属粒子、例えばニッケル粒子、45パーマロイ粒子、Moパーマロイ粒子等についても、同様にして作製することができる。
ニッケルと鉄のモル比が78:22となるように調製した塩化ニッケル及び塩化第一鉄を含む水溶液を作製し、この水溶液を50℃に加温し、さらに水酸化ナトリウム水溶液及びヒドラジンを添加して反応させ、平均粒子径が160nmの78パーマロイ球形粒子を得た。
次いで、この78パーマロイ球形粒子8gと、直径が0.8mmのステンレススチール製のボール240g及びエタノール24gを、内容積が110mLのステンレス容器内に充填し、このステンレス容器を69時間回転させてメカニカルアロイングを行った。
得られた78パーマロイ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図1に示す。
ニッケルと鉄のモル比が45:55となるように調製した塩化ニッケル及び塩化第一鉄を含む水溶液を作製し、この水溶液を50℃に加温し、さらに水酸化ナトリウム水溶液及びヒドラジンを添加して反応させ、得られた沈殿物を水素雰囲気中、500℃にて1時間焼成し、平均粒子径が180nmの45パーマロイ球形粒子を得た。
次いで、この45パーマロイ球形粒子24gと、直径が0.8mmのステンレススチール製のボール960g及びエタノール96gを、内容積が400mLのステンレス容器内に充填し、このステンレス容器を50時間回転させてメカニカルアロイングを行った。
得られた45パーマロイ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図2に示す。
ニッケルと鉄とモリブデンのモル比が80:17:3となるように調製した塩化ニッケル、塩化第一鉄及び塩化モリブデンを含む水溶液を作製し、この水溶液を50℃に加温し、さらに水酸化ナトリウム水溶液及びヒドラジンを添加して反応させ、平均粒子径が150nmのMoパーマロイ球形粒子を得た。
次いで、このMoパーマロイ球形粒子8gと、直径が0.8mmのステンレススチール製のボール240g及びエタノール24gを、内容積が110mLのステンレス容器内に充填し、このステンレス容器を50時間回転させてメカニカルアロイングを行った。
得られたMoパーマロイ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図3に示す。
塩化ニッケルの水溶液を作製し、この水溶液を50℃に加温し、さらに水酸化ナトリウム水溶液及びヒドラジンを添加して反応させ、平均粒子径が150nmのニッケル球形粒子を得た。
次いで、このニッケル球形粒子8gと、直径が0.8mmのステンレススチール製のボール240g及びエタノール24gを、内容積が110mLのステンレス容器内に充填し、このステンレス容器を20時間回転させてメカニカルアロイングを行った。
得られたニッケル粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図4に示す。
また、これらの粒子のメカニカルアロイング前後における結晶構造をX線回折(XRD)により調べたところ、いずれも結晶構造に変化はなかった。
Claims (4)
- 軟磁性金属粒子の金属成分を金属イオンとして含む溶液を還元することにより平均粒子径が200nm以下の球状の軟磁性金属粒子を合成し、得られた軟磁性金属粒子を混合しつつ機械的に凝着させ、平板状の軟磁性金属粒子とすることを特徴とする平板状軟磁性金属粒子の製造方法。
- 前記混合の際に、アルコールを添加することを特徴とする請求項1記載の平板状軟磁性金属粒子の製造方法。
- 前記金属は、ニッケルまたはニッケル基合金であることを特徴とする請求項1または2記載の平板状軟磁性金属粒子の製造方法。
- 前記平板状の軟磁性金属粒子は、厚みが1μm以下、平均粒子径が5μm以下、アスペクト比が2以上であることを特徴とする請求項1、2または3記載の平板状軟磁性金属粒子の製造方法。
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