JP4846376B2 - 生産・物流スケジュール作成装置及び方法、生産・物流プロセス制御装置及び方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents

生産・物流スケジュール作成装置及び方法、生産・物流プロセス制御装置及び方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は生産・物流スケジュール作成装置及び方法、生産・物流プロセス制御装置及び方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関し、特に、操作者の熟練度に依存することなく対象システムのスケジュールを正確に作成するような場合に用いて好適なものである。
従来、見込み生産を行わない受注生産の形態では、受注した品目を製造オーダーに分割し、納期遵守率や設備稼働率、中間在庫量、コスト等の観点を考慮して生産・物流スケジュールを作成している。上記生産・物流スケジュールを作成する手法として、技術的に大別すると2つの手法が用いられている。
すなわち、第1の手法としては、例えば、特許文献1の「生産計画評価方法及びシステム」に開示されているように、コンピュータ上に構築した工場を模したシミュレーション上で、実機器と同じインタフェースから取得した情報を使用して実機器の稼動を予測し、稼動予測に基づいて、実機器より速い速度で仮想的な生産を行い、仮想的な生産の過程及び結果を用いて、精度の高い指標を提示することによって、生産計画の評価及び選択を可能にする手法である。
また、第2の手法としては、特許文献2の「物流計画作成装置」にて開示されているように、線形計画法、数理計画法等のように、最適性が保証される手法に基づいてスケジュールを作成する手法である。
特開2002−366219号公報 特開2000−172745号公報
上記特許文献1に記載の「生産計画評価方法及びシステム」に開示されているように、シミュレータを用いて生産・物流スケジュールを作成する手法は、満足できる結果が得られるまでには、(1)条件を種々に変えながらシミュレーションを行い、その結果の評価を何回も繰返し行う必要があった。したがって、(2)大規模工場では生産・物流スケジュールを作成するのに多くの時間がかかってしまう問題点があった。また、(3)高精度な生産・物流スケジュールを得るためには、シミュレーション・ルールを細かく設定しなければならない問題点があった。
また、上記特許文献2の「物流計画作成装置」にて開示されているように、線形計画法、数理計画法等のように、最適性が保証される手法に基づいてスケジュールを作成する手法の場合には、(1)生産・物流スケジュールを作成する規模が大きくなると、実用的な時間内に解くことが困難になってしまう問題点があった。また、(2)数式で記述できない制約や条件に起因する誤差が生じるため、得られた生産・物流スケジュールが実行可能であるかどうかは保証されていない問題点があった。すなわち、(3)一貫した離散時間系制御理論に基づく制御則ではないため、プロセス全体の物流制御を自動的に最適化することは難しい問題点があった。
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、シミュレーションを繰り返し行うことなく最適な生産・物流シミュレーション結果を得ることができるようにして、スケジュール作成対象の生産・物流プロセスで実際に使用可能であることが保証された生産・物流スケジュールを高速に、且つ高精度に作成できるようにすることを目的とする。特に、不可制御の物流モデルであっても自動的に、かつ高速に最適化できるようにすることを目的とする。
本発明の生産・物流スケジュール作成装置は、生産・物流プロセスの工程内製品仕掛状態を表す物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬する離散系のシミュレータであって、スケジュールを作成するのに考慮すべき物流状態と物流制約とを全て記載する生産・物流シミュレータと、上記生産・物流プロセスの物流状態と物流制約とのうち、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された状態方程式を用いた数式モデルを保持する数式モデル保持装置と、
上記数式モデル所定の評価関数入力して最適化計算処理を行って上記生産・物流シミュレータに対する、上記製品の移動の指示である物流指示を算出して出力する最適化計算装置とを有し、
上記最適化計算処理により
物流状態である状態ベクトルに掛け合わせることによって物流指示である操作ベクトルとなる値であるフィードバックゲインを算出し、
次に、上記算出したフィードバックゲインと状態ベクトルとを用いて操作ベクトルを算出して上記生産・物流シミュレータに与えて、シミュレーションを進め、新たな状態ベクトルを得て、この新たな状態ベクトルと上記算出したフィードバックゲインをもとに新たな操作ベクトルを算出するという処理を、予め設定されたスケジュール作成の対象期間だけ繰り返すことにより得られたシミュレーション結果、すなわち該スケジュール作成の対象期間における一連の物流状態からスケジュールを作成する生産・物流スケジュール作成装置であって、
上記数式モデル保持装置で最適化計算処理の時間に比例したきざみ時間遅れに従って表される接続行列と遷移行列とを用いた、下記の式(1)
M(k+1)=A・M(k)十B・u(k) (1)
(但し、Aは遷移行列、Bは接続行列、M(k)、M(k+1)は、それぞれ、時刻k、k+1における状態ベクトル、u(k)は時刻kにおける操作ベクトル)
で定義される状態方程式を求めるとともに、上記求めた状態方程式と、設定した評価行列および、前記状態ベクトルの取るべき値の目標値であって、下記の式(24)
Mr =A・Mr (24)
(但し、Aは遷移行列、M r は目標状態量)の条件を満たす目標状態量によって表され、下記の式(30)で定義される有限加算ステップの評価関数である上記所定の評価関数とから最適化計算装置でフィードバックゲイン行列の収束値として記フィードバックゲインを求めておいて、
上記求めたフィードバックゲインと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルとから、製品の移動の指示である操作ベクトルを求めたのち、上記操作ベクトルの中の正値で大きい操作量が得られた順に、上記生産・物流シミュレータによるシミュレーション上の制約を満足して移動可能であるかどうかを調べ、移動可能な数だけ製品を移動させるようにして生産・物流スケジュールを作成するようにしたことを特徴とする。
Figure 0004846376
本発明の生産・物流プロセス制御装置は、生産・物流プロセスの工程内製品仕掛状態を表す物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬する離散系のシミュレータであって、スケジュールを作成するのに考慮すべき物流状態と物流制約とを全て記載する生産・物流シミュレータと、上記生産・物流プロセスの物流状態と物流制約とのうち、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された状態方程式を用いた数式モデルを保持する数式モデル保持装置と、上記数式モデル所定の評価関数入力して最適化計算処理を行って上記生産・物流シミュレータに対する、上記製品の移動の指示である物流指示を算出して出力する最適化計算装置とを有し、
上記最適化計算処理により
物流状態である状態ベクトルに掛け合わせることによって物流指示である操作ベクトルとなる値であるフィードバックゲインを算出し、
次に、上記算出したフィードバックゲインと状態ベクトルとを用いて操作ベクトルを算出して上記生産・物流シミュレータに与えて、シミュレーションを進め、新たな状態ベクトルを得て、この新たな状態ベクトルと上記算出したフィードバックゲインをもとに新たな操作ベクトルを算出するという処理を、予め設定されたスケジュール作成の対象期間だけ繰り返すことにより得られたシミュレーション結果なわち該スケジュール作成の対象期間における一連の物流状態から上記生産・物流プロセスの制御を行う際に、
上記最適化計算処理の時間に比例したきざみ時間遅れに従って表される接続行列と遷移行列とを用いた、下記の式(1)
M(k+1)=A・M(k)十B・u(k) (1)
(但し、Aは遷移行列、Bは接続行列、M(k)、M(k+1)は、それぞれ、時刻k、k+1における状態ベクトル、u(k)は時刻kにおける操作ベクトル)
で定義される状態方程式を求めるとともに、上記求めた状態方程式と、設定した評価行列および、前記状態ベクトルの取るべき値の目標値であって、下記の式(24)
Mr =A・Mr (24)
(但し、Aは遷移行列、Mrは目標状態量)の条件を満たす目標状態量によって表され、下記の式(30)で定義される有限加算ステップの評価関数である上記所定の評価関数とから最適化計算装置でフィードバックゲイン行列の収束値として上記フィードバックゲインを求めておいて、
上記求めたフィードバックゲインと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルとから、製品の移動の指示である操作ベクトルを求めたのち、上記操作ベクトルの中の正値で大きい操作量が得られた順に、上記生産・物流シミュレータによるシミュレーション上の制約を満足して移動可能であるかどうかを調べ、移動可能な数だけ製品を移動させるようにして生産・物流プロセスの制御を行うことを特徴とする。
Figure 0004846376
本発明の生産・物流スケジュール作成方法は、生産・物流プロセスの工程内製品仕掛状態を表す物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬する離散系のシミュレータであって、スケジュールを作成するのに考慮すべき物流状態と物流制約とを全て記載する生産・物流シミュレータと、上記生産・物流プロセスの物流状態と物流制約とのうち、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された状態方程式を用いた数式モデルを保持する数式モデル保持装置と、上記数式モデル所定の評価関数入力して最適化計算処理を行って上記生産・物流シミュレータに対する、上記製品の移動の指示である物流指示を算出して出力する最適化計算装置とを有する生産・物流スケジュール作成装置により生産・物流スケジュールを作成する方法であって、
上記最適化計算処理により、物流状態である状態ベクトルに掛け合わせることによって物流指示である操作ベクトルとなる値であるフィードバックゲインを算出し、
次に、上記算出したフィードバックゲインと状態ベクトルとを用いて操作ベクトルを算出して上記生産・物流シミュレータに与えて、シミュレーションを進め、新たな状態ベクトルを得て、この新たな状態ベクトルと上記算出したフィードバックゲインをもとに新たな操作ベクトルを算出するという処理を、予め設定されたスケジュール作成の対象期間だけ繰り返すことにより得られたシミュレーション結果、すなわち該スケジュール作成の対象期間における一連の物流状態から上記生産・物流スケジュールを作成する際に、
上記最適化計算処理の時間に比例したきざみ時間遅れに従って表される接続行列と遷移行列とを用いた、下記の式(1)
M(k+1)=A・M(k)十B・u(k) (1)
(但し、Aは遷移行列、Bは接続行列、M(k)、M(k+1)は、それぞれ、時刻k、k+1における状態ベクトル、u(k)は時刻kにおける操作ベクトル)
で定義される状態方程式を求めるとともに、上記求めた状態方程式と、設定した評価行列および、前記状態ベクトルの取るべき値の目標値であって、下記の式(24)
Mr =A・Mr (24)
(但し、Aは遷移行列、M r は目標状態量)の条件を満たす目標状態量によって表され、下記の式(30)で定義される有限加算ステップの評価関数である上記所定の評価関数とからフィードバックゲイン行列の収束値として記フィードバックゲインを求めておいて、
上記求めたフィードバックゲインと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルとから、製品の移動の指示である操作ベクトルを求めたのち、上記操作ベクトルの中の正値で大きい操作量が得られた順に、上記生産・物流シミュレータによるシミュレーション上の制約を満足して移動可能であるかどうかを調べ、移動可能な数だけ製品を移動させるようにして上記生産・物流プロセスにおける生産・物流スケジュールを作成するようにしたことを特徴とする。
Figure 0004846376
本発明の生産・物流プロセス制御方法は、生産・物流プロセスの工程内製品仕掛状態を表す物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬する離散系のシミュレータであって、スケジュールを作成するのに考慮すべき物流状態と物流制約とを全て記載する生産・物流シミュレータと、上記生産・物流プロセスの物流状態と物流制約とのうち、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された状態方程式を用いた数式モデルを保持する数式モデル保持装置と、上記数式モデル所定の評価関数入力して最適化計算処理を行って上記生産・物流シミュレータに対する、上記製品の移動の指示である物流指示を算出して出力する最適化計算装置とを有する生産・物流プロセス制御装置により生産・物流プロセスを制御する方法であって、
上記最適化計算処理により、物流状態である状態ベクトルに掛け合わせることによって物流指示である操作ベクトルとなる値であるフィードバックゲインを算出し、
次に、上記算出したフィードバックゲインと状態ベクトルとを用いて操作ベクトルを算出して上記生産・物流シミュレータに与えて、シミュレーションを進め、新たな状態ベクトルを得て、この新たな状態ベクトルと上記算出したフィードバックゲインをもとに新たな操作ベクトルを算出するという処理を、予め設定されたスケジュール作成の対象期間だけ繰り返すことにより得られたシミュレーション結果、すなわち該スケジュール作成の対象期間における一連の物流状態から上記生産・物流プロセスにおけるスケジュールを作成する際に、
上記最適化計算処理の時間に比例したきざみ時間遅れに従って表される接続行列と遷移行列とを用いた、下記の式(1)
M(k+1)=A・M(k)十B・u(k) (1)
(但し、Aは遷移行列、Bは接続行列、M(k)、M(k+1)は、それぞれ、時刻k、k+1における状態ベクトル、u(k)は時刻kにおける操作ベクトル)
で定義される状態方程式を求めるとともに、上記求めた状態方程式と、設定した評価行列および、前記状態ベクトルの取るべき値の目標値であって、下記の式(24)
Mr =A・Mr (24)
(但し、Aは遷移行列、M r は目標状態量)の条件を満たす目標状態量によって表され、下記の式(30)で定義される有限加算ステップの評価関数である上記所定の評価関数とから最適化計算装置でフィードバックゲイン行列の収束値として記フィードバックゲインを求めておいて、
上記求めたフィードバックゲインと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルとから、製品の移動の指示である操作ベクトルを求めたのち、上記操作ベクトルの中の正値で大きい操作量が得られた順に、上記生産・物流シミュレータによるシミュレーション上の制約を満足して移動可能であるかどうかを調べ、移動可能な数だけ製品を移動させるようにして生産・物流プロセスの制御を行うようにしたことを特徴とする。
Figure 0004846376
本発明のコンピュータプログラムは、前記に記載の生産・物流スケジュール作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明のコンピュータプログラムの他の特徴とするところは、上記に記載の生産・物流プロセス制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
本発明によれば、異なる複数の工程で複数製品を処理して製造するプロセスにおいて、物流制御システムの構築が容易に行え、かつ自動的に最適化された物流制御方法および処理順序計画方法を確立することができる。
さらに、本発明では、工程内製品仕掛状態の目標量(目標状態量)を導入するとともに、評価行列によって表される評価関数の加算ステップを有限とし、その後フィードバックゲイン行列を求める際にその行列値が収束するまで計算するように構成したので、不可制御のペトリネットモデルであっても評価関数が発散しないようにすることができ、制御に不可欠なフィードバックゲイン行列を常に計算することができる。これにより、可制御であるか不可制御であるかに拘らず、製造プロセスの物流制御を常に自動的に最適化することができるようになる。
また、本発明では、ペトリネットモデルの状態方程式から、ペトリネットモデルの可観測性を満足するように求めた出力行列を用いて出力方程式を作成し、その出力方程式に基づいてフィードバックゲイン行列を計算するようにしたので、ゲイン計算に使用する評価関数で評価の対象となる状態数をペトリネットモデルの全状態数よりも少なくすることができ、その分フィードバックゲイン行列を計算する際の繰り返し演算の回数を少なくして処理時間を短くすることができる。上述のように出力行列は可観測性を満足しているので、評価関数に現れる状態だけを評価の対象としてもペトリネットモデルの全状態を把握することができ、これにより、実質的に制御性能を劣化させることなく、製造プロセスの物流制御を最適化する処理をより高速に行うことができるようになる。
また、本発明の他の特徴によれば、上記フィードバックゲイン行列をチャンドラセカール型の差分方程式により求めるようにしたので、フィードバックゲイン行列を計算する際の繰り返し演算の反復1回当たりの演算量を格段に減らすことができ、ゲイン行列計算の更なる高速化を実現することができるようになる。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態を示し、物流スケジュール作成装置の一例を説明するブロック図である。図1に示したように、本実施形態の物流スケジュール作成装置は、物流シミュレータ1aを備えたシミュレーション制御部1、最適化計算装置2等によって構成されている。
本実施形態では、物流シミュレータ1aは生産・物流プロセスの物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬したシミュレータ、いわば工場を模擬した大型のシミュレータであり、本実施形態においては、グラフモデルを用いてシミュレータを構築するもので、事象(シミュレータのイベント)毎に物を動かす離散系として構成されている。
また、上記物流シミュレータ1aに対応させて数学モデル(数式モデル)3が構成されている。本実施形態においては、生産・物流プロセスの物流状態及び物流制約の中から、作成する物流スケジュールに関連する要素を取り込んで、下式(イ)に示すような状態方程式を用いて上記数式モデル3が作成されている。上記数式モデル3は、半導体記憶手段等により構成される数式モデル保持手段(図示せず)によって保持されている。
M(k+1) =M(k) +b・u(k) ・・・(イ)
すなわち、離散化したある時刻k において各点に存在する要素の数を示す状態ベクトル、言い換えれば状態量をM(k) で表し、各線の発火の有無を"1"及び"0"で表現した操作ベクトルをu(k) で表わすと、次の時刻k+1 における状態ベクトルM(k+1) は、接続行列bを用いて上式(イ)で表わすことができる。
最適化計算装置2では、上記数式モデル3に対して最適化計算処理を行い、フィードバックゲインKを算出するようにしている。上記最適化計算装置2によって行われる最適化計算は線形二次(LQ)制御を利用するものであり、下式(ロ)に示すような評価関数Sを用いて行われる。
S=Σ{M'QM+u'Ru} ・・・(ロ)
評価関数Sにおいて、Q,Rは制御目的にあわせて設定された適当な行列であり、M',u'は、それぞれ状態ベクトルM、操作ベクトルuの転置ベクトルである。そして、評価関数Sが最小となるように制御することを考えれば、
u(k) =−K・M(k) ・・・(ハ)
とした状態フィードバック制御を行うフィードバックゲインKを最適制御理論より求めることができる。
シミュレーション制御部1の最適制御方策部1bでは、最適化計算装置2で算出されるフィードバックゲインKと物流状態(状態ベクトルM)とを用いて物流指示(操作ベクトルu)を算出して物流シミュレータ1aに与えて、シミュレーションを進め、新たな物流状態を得て、この新たな物流状態をもとに新たな物流指示を算出するという処理を繰り返す。そして、これにより得られたシミュレーション結果4から生産・物流プロセスにおける物流スケジュールを作成する。
以下に、第1の実施形態の具体例を、図2〜5を参照しながら説明する。図2に示したように、第1に、生産・物流プロセスのグラフモデルとして、処理時間Tp に比例した数の点で各工程を表わしたグラフモデルを製品種ごとに構築する(ステップS1)。
第2に、構築したグラフモデルの状態方程式と、設定した評価関数Q,Rとからフィードバックゲイン行列Kを製品種ごとに求める(ステップS2)。
第3に、この求めたフィードバックゲイン行列Kと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルM(k) とから、製品の移動操作端に対する操作ベクトルu(k) を製品種ごとに求めたのち、仮想的な生産・物流プロセス内の各移動操作端に対して、正値で大きい操作量が得られた製品順に移動可能(これを発火可能といい、発火可能か発火不可能化を発火可能性という)な数だけ移動操作を順次行うという方法を用いて、所定期間の生産・物流プロセスのシミュレーションを実行する(ステップS3)。ここで、移動操作端とは、グラフモデルにおいて、各工程を処理時間Tp に比例した数の点を繋ぐ部分(線)、実際の工程では、搬送テーブルやクレーンの各処理設備を繋ぎ、次設備への移動を判断する部分を指す。
図3は、図2に示したステップS1の処理、すなわち、生産・物流プロセスのグラフモデルとして、処理時間を比例した数の点で各工程を表したグラフモデルを製品種ごとに構築するための処理手順の例を示すフローチャートである。
すなわち、まず離散きざみ時間ΔTを入力し(ステップS101)、次に製品種ごとに全ての処理工程と処理時間Tp とを入力する(ステップS102)。そして、処理工程ごとに処理時間Tp をきざみ時間ΔTで除して整数化することにより上記各処理工程の点の数np を求め(ステップS103、S104)、全処理工程の点を線で連結して製品種ごとのグラフモデルを構築する(ステップS105)。
そして、全ての製品についてグラフモデルを構築するまでステップS106からステップS102の処理に戻り、以上の処理を繰り返して行う。なお、離散きざみ時間ΔTは、各製品種各工程処理時間の最大公約数をもって定義するのが最も効率的であるが、目的とする制御精度を勘案して適宜設定すればよい。
図4は、図2に示したステップS2の処理、すなわち、構築したグラフモデルの状態方程式と設定した評価関数とからフィードバックゲイン行列Kを製品種ごとに求めるための処理手順の例を示すフローチャートである。なお、全製品についてグラフモデルの接続行列b作成し、それを最適化計算装置2に入力し、全製品を一括で計算するようにしてもよい。
すなわち、まず製品種ごとにグラフモデルの状態方程式を記述する接続行列bを最適化計算装置2に入力するとともに(ステップS201)、評価関数を表す行列Q,Rを入力する(ステップS202)。そして、上記入力した接続行列b及び評価行列Q,Rからフィードバックゲイン行列Kを計算する(ステップS203)。この計算を全ての製品について完了するまでステップS204からステップS201の処理に戻り、以上の処理を繰り返して行う。
図5は、図2に示したステップS3の処理、すなわち、上述のようにして計算したフィードバックゲイン行列Kと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルM(K) とから、製品の移動操作端に対する操作ベクトルu(K) を製品種ごとに求めたのち、仮想的な生産・物流プロセス内の各移動操作端に対して、正値で大きい操作量が得られた製品順に移動可能な数だけ移動操作を順次行うという方法を用いて、所定期間の生産・物流プロセスのシミュレーションを実行するための処理手順の例を示すフローチャートである。
すなわち、まずグラフモデルの初期状態における状態ベクトルM(0) を入力するとともに、投入予定の全製品(要素)を投入点に入力し、時刻 kの値を0に初期化したのち(ステップS301)、現時点(時刻:k )における全製品種の状態ベクトルM(k) を入力する(ステップS302)。
そして、上述の方法を用いて計算されたフィードバックゲイン行列Kと上記入力した状態ベクトルM(k) とをかけて製品種ごとに操作ベクトルu(k) を計算し(ステップS303)、次に移動操作端ごとに、正値で大きい操作量が得られた製品順に、移動可能な数だけ移動操作を実行する(ステップS304)。
次に、時刻を進めたのち(ステップS305)、各ステップのシミュレーションが終了したかどうかを判断し(ステップS306)、終了していないときはステップS302の処理に戻る。一方、終了したときは、そのシミュレーション結果をもって生産スケジュールとする(ステップS307)。
上述したように、本実施形態においては、最適化計算を行った結果得られた指示と、その事象における状態とに基づいた最適制御を行うので、それぞれの事象毎に最適化計算を実行したシミュレーション結果に基づいてスケジュールを作成することができ、しかも、そのスケジュールは生産・物流プロセスの制約を表現したシミュレータによるシミュレーション結果であるから、実際に使用可能であることを確認することができる。
これにより、上記物流シミュレータ1aの規模が非常に大きい場合、或いは制約条件が非常に多くて複雑な場合でも、上記物流シミュレータ1aに記載された物流状態、数式のうち、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを上記数式モデル3に取り込むようにすることで、上記物流シミュレータ1aの規模を適切な範囲にして、実用的な時間内で最適化計算を行うようにすることができる。
上記物流シミュレータ1aは、考慮すべき物流状態、物流制約を全て記載することができるので、1回のシミュレーションを行って作成されたスケジュールは現実に実行可能となることが保証される。
上述したように、本実施形態においては、物流シミュレータ1aと、数式モデル3と、最適化計算装置2とを連動させて物流スケジュールを作成するようにしたので、(1)計算の繰り返しをしないでスケジュールを作成することができる。また、(2)スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを上記数式モデル3に取り込むようにすることで計算時間を短縮することができるとともに、(3)大規模問題を解くことが可能になる。
また、物流指示が必要な事象が発生するたびに上記物流シミュレータ1aの物流状態及び物流制約の情報を検出し、上記検出した検出情報と予め定めた評価指標を元に、上記最適化計算装置2により最適化手法に最適物流指示を計算し、上記計算結果に基づいて上記物流シミュレータ1aで詳細シミュレーションを行ってスケジュールを作成するので、(4)スケジュール精度を高くすることができるとともに、(5)実行可能性の検証が取れているスケジュールを作成することができる。
また、数式モデル3を導入したので、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分に変更が生じた場合でも迅速に対処することが可能となり、メンテナンス性が高いスケジュール作成装置を構築できる。
さらに、シミュレーション制御部1での処理はオンラインで、物流シミュレータ1aに対応させて数学モデル(数式モデル)3の構築や最適化計算装置2での上記数式モデル3に対する最適化計算処理はオフラインで行うように分けることも可能であり、シミュレーション制御部1での処理負荷を軽くして処理能力を高めることができる。
なお、本実施形態では、一般的なグラフ理論に基づく例を説明したが、ペトリネットモデルやその他のグラフモデルに本発明を適用することも可能である。ペトリネットモデルでは、上述したグラフモデルにおける点はプレースで表現され、線はトランジションで表現される。トランジションは、プレースからプレースへ製品すなわちトークンを移動させる移動操作端である。
一般に、ペトリネットモデルでは、1つのトランジションに複数のプレースからアークが入力している場合には、それらのプレースの全てにトークンが存在していないとトランジションの操作ができない。これをトランジションの発火則と言う。また、1つのトランジションから複数のプレースにアークが出力している場合には、それらのプレースの全てにトークンが出力される。なお、アークとは、トランジションからプレース、或いはプレースからトランジションへトークンが移動する方向を示すものであり、その数は移動するトークンの数を示している。また、トランジションを操作することを、トランジションを発火させると言う。
また、グラフモデルでは、各工程内における処理容量をソフトウェア上で制御していたが、ペトリネットモデルでは、各工程内に設けられている仮想プレースに初期設定された容量設定用仮想トークンの数により、各処理工程で同時に処理できる製品の数を制限している。
このような特徴を有するペトリネットモデルに本発明を適用する場合も、一連の動作は上述したグラフモデルにおける動作と同様であり、ここでは、その詳細な説明は省略する。
(第2の実施形態)
本実施形態の物流スケジュール作成装置も、図1に示したように、物流シミュレータ1aを備えたシミュレーション制御部1、最適化計算装置2等によって構成されている。
本実施形態では、物流シミュレータ1aは生産・物流プロセスの物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬したシミュレータ、いわば工場を模擬した大型のシミュレータであり、本実施形態においては、ペトリネットモデルを用いてシミュレータを構築するもので、事象(シミュレータのイベント)毎に物を動かす離散系として構成されている。
また、上記物流シミュレータ1aに対応させて数学モデル(数式モデル)3が構成されている。本実施形態においては、生産・物流プロセスの物流状態及び物流制約の中から、作成する物流スケジュールに関連する要素を取り込んで、下式(イ)に示すような状態方程式を用いて上記数式モデル3が作成されている。上記数式モデル3は、半導体記憶手段等により構成される数式モデル保持手段(図示せず)によって保持されている。
M(k+1) =M(k) +b・u(k) ・・・(イ)
すなわち、離散化したある時刻k において各プレースでのトークンの有無を示す状態ベクトル、言い換えれば状態量をM(k) で表し、各トランジション発火の有無を"1"及び"
0"で表現した操作ベクトルをu(k) で表わすと、次の時刻k+1 における状態ベクトルM(k+1) は、接続行列bを用いて上式(イ)で表わすことができる。
ここで、図6にペトリネットモデルの一例を示す。ペトリネットモデルは、プレース(○印)(図示例ではp1〜p6)、トランジション(|印)(図示例ではt1〜t5)、アーク(→印)、トークン(・印)の4要素で表現される。この場合に、1つのトランジションに複数のプレースからアークが入力している場合には、それらのプレースの全てに製品すなわちトークンが存在していないとトランジションの操作ができない(トランジションの発火則、発火可能か発火不可能かを発火可能性という)。また、1つのトランジションから複数のプレースにアークが出力している場合には、それらのプレースの全てにトークンが出力される。なお、アークとは、トランジションからプレース、或いは、プレースからトランジションへトークンが移動する方向を示すものであり、その数は移動するトークンの数を示している。また、トランジションを操作することを、トランジションを発火させると言う。
図6に示すようにトランジションt1を発火させる場合を例にすると、離散化したある時刻k において各プレースp1〜p6でのトークンt1〜t5の有無を示す状態ベクトル、言い換えれば状態量をM(k) で表し、各トランジション発火の有無を"1"及び"0"で表現した操作ベクトルをu(k) で表わすと、次の時刻k+1 における状態ベクトルM(k+1) は、接続行列bを用いて下式(1)で表わすことができる。
Figure 0004846376
最適化計算装置2では、上記数式モデル3に対して最適化計算処理を行い、フィードバックゲインKを算出するようにしている。上記最適化計算装置2によって行われる最適化計算は線形二次(LQ)制御を利用するものであり、下式(ロ)に示すような評価関数Sを用いて行われる。
S=Σ{M'QM+u'Ru} ・・・(ロ)
評価関数Sにおいて、Q,Rは制御目的にあわせて設定された適当な行列であり、M',u'は、それぞれ状態ベクトルM、操作ベクトルuの転置ベクトルである。そして、評価関数Sが最小となるように制御することを考えれば、
u(k) =−K・M(k) ・・・(ハ)
とした状態フィードバック制御を行うフィードバックゲインKを最適制御理論より求めることができる。
シミュレーション制御部1の最適制御方策部1bでは、最適化計算装置2で算出されるフィードバックゲインKと物流状態(状態ベクトルM)とを用いて物流指示(操作ベクトルu)を算出して物流シミュレータ1aに与えて、シミュレーションを進め、新たな物流状態を得て、この新たな物流状態をもとに新たな物流指示を算出するという処理を繰り返す。そして、これにより得られたシミュレーション結果4から生産・物流プロセスにおける物流スケジュールを作成する。
以下に、第2の実施形態の具体例を、図7〜10を参照しながら説明する。図7に示したように、第1に、生産・物流プロセスのペトリネットモデルとして、処理時間Tp に比例した数のプレースで各工程を表したペトリネットモデルを製品種ごとに構築する(ステップS4)。
第2に、構築したペトリネットモデルの状態方程式と、設定した評価関数とからフィードバックゲイン行列Kを製品種ごとに求める(ステップS5)。
第3に、この求めたフィードバックゲイン行列Kと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルM(k) とから、製品の移動操作端に対する操作ベクトルu(k) を製品種ごとに求めたのち、仮想的な生産・物流プロセス内の各移動操作端に対して、正値で大きい操作量が得られた製品順に移動可能な数だけ移動操作を順次行うという方法を用いて、所定期間の生産・物流プロセスのシミュレーションを実行する(ステップS6)。ここで、移動操作端とは、ぺトリネットモデルにおいて、各工程を処理時間Tp に比例した数のプレースを繋ぐトランジションを指し、実際の工程では、搬送テーブルやクレーンの各処理設備を繋ぎ、次設備への移動を判断する部分を指す。
図8は、図7に示したステップS4の処理、すなわち、生産・物流プロセスのペトリネットモデルとして、処理時間Tp に比例した数のプレースで各工程を表したペトリネットモデルを製品種ごとに構築するための処理手順の例を示すフローチャートである。
すなわち、まず離散きざみ時間ΔTを入力し(ステップS401)、次に製品種ごとに全ての処理工程と処理時間Tp とを入力する(ステップS402)。そして、処理工程ごとに処理時間Tp をきざみ時間ΔTで除して整数化することにより各処理工程のプレース数np を求め(ステップS403、S404)、全処理工程のプレースを連結してペトリネットモデルを製品種ごとに構築する(ステップS405)。
そして、全ての製品についてペトリネットモデルを構築するまでステップS406からステップS402の処理に戻り、以上の処理を繰り返して行う。なお、離散きざみ時間ΔTは、各製品種各工程処理時間の最大公約数をもって定義するのが最も効率的であるが、目的とする制御精度を勘案して適宜設定すればよい。
図9は、図7に示したステップS5の処理、すなわち、構築したペトリネットモデルの状態方程式と設定した評価関数とからフィードバックゲイン行列Kを製品種ごとに求めるための処理手順の例を示すフローチャートである。
すなわち、まず製品種ごとにペトリネットモデルの状態方程式を記述する接続行列bを最適化計算装置2に入力するとともに(ステップS501)、評価関数を表す行列Q,Rを入力する(ステップS502)。そして、上記入力した接続行列b及び評価行列Q,Rからフィードバックゲイン行列Kを計算する(ステップS503)。この計算を全ての製品について完了するまでステップS504からステップS501の処理に戻り、以上の処理を繰り返して行う。なお、全製品についてペトリネットモデルの接続行列bを最適化計算装置2に入力し、全製品を一括で計算するようにしてもよい。
図10は、図7に示したステップS6の処理、すなわち、上述のようにして計算したフィードバックゲイン行列Kと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルM(K) とから、製品の移動操作端に対する操作ベクトルu(K) を製品種ごとに求めたのち、仮想的な生産・物流プロセス内の各移動操作端に対して、正値で大きい操作量が得られた製品順に移動可能な数だけ移動操作を順次行うという方法を用いて、所定期間の生産・物流プロセスのシミュレーションを実行するための処理手順の例を示すフローチャートである。
すなわち、まずペトリネットモデルの初期状態における状態ベクトルM(0) を入力するとともに、投入予定の全製品を投入プレースに入力し、時刻kの値を0に初期化したのち(ステップS601)、現時点(時刻:k )における全製品種の状態ベクトルM(k) を入力する(ステップS602)。
そして、上述の方法を用いて計算されたフィードバックゲイン行列Kと上記入力した状態ベクトルM(k) とをかけて製品種ごとに操作ベクトルu(k) を計算し(ステップS603)、次に移動操作端ごとに、正値で大きい操作量が得られた製品順に、移動可能な数だけ移動操作を実行する(ステップS604)。
次に、時刻を進めたのち(ステップS605)、各ステップのシミュレーションが終了したかどうかを判断し(ステップS606)、終了していないときはステップS602の処理に戻る。一方、終了したときは、そのシミュレーション結果をもって生産スケジュールとする(ステップS607)。
上述したように、本実施形態においては、上述した第1の実施形態の効果に加えて、工程内製品仕掛状態を表わす状態ベクトルを各プレースにおける製品の有無に従って表現するようにしたので、フィードバックゲイン行例と上記状態ベクトルから算出される操作ベクトルの各要素を、フォードバックゲイン行列の各要素の大きさをそのまま反映したものとすることができ、同じプレース内に存在する複数種類の製品のうち、ゲインがより大きいものを常に優先して処理するようにすることができる。その結果、各処理工程での総処理時間を最短にする最適なスケジュールを簡単に作成することができる。
また、状態ベクトルを表現する方法として、各プレースにおける製品の有無に従う手法と、各プレースに存在する製品の数に従う手法とのいずれかを選択できるようにすれば、各プレースにおける製品の有無に従って状態ベクトルを表現する場合には、上述のように総処理時間を最短にするスケジュールを簡単に作成することができる一方、各プレースに存在する製品の数に従って状態ベクトルを表現する場合には、1つのプレース内にある製品が溜まってしまうという不都合を防止しつつ総処理時間をある程度短くするスケジュールを簡単に作成することができる。
(第3の実施形態)
本実施形態の物流スケジュール作成装置も、図1に示したように、物流シミュレータ1aを備えたシミュレーション制御部1、最適化計算装置2等によって構成されている。
本実施形態では、物流シミュレータ1aは生産・物流プロセスの物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬したシミュレータ、いわば工場を模擬した大型のシミュレータであり、本実施形態においては、ペトリネットモデルを用いてシミュレータを構築するもので、事象(シミュレータのイベント)毎に物を動かす離散系として構成されている。
また、上記物流シミュレータ1aに対応させて数学モデル(数式モデル)3が構成されている。本実施形態においては、生産・物流プロセスの物流状態及び物流制約の中から、作成する物流スケジュールに関連する要素を取り込んで、下式(ニ)に示すような状態方程式を用いて上記数式モデル3が作成されている。上記数式モデル3は、半導体記憶手段等により構成される数式モデル保持手段(図示せず)によって保持されている。
M(k+1) =a・M(k) +b・u(k) ・・・(ニ)
すなわち、離散化したある時刻k において各プレースに存在するトークンの数を示す状態ベクトル、言い換えれば状態量をM(k) で表し、各トランジション発火の有無を"1"及び"0"で表現した操作ベクトルをu(k) で表わすと、次の時刻k+1 における状態ベクトルM(k+1) は、遷移行列a、接続行列bを用いて上式(ニ)で表わすことができる。
最適化計算装置2では、上記数式モデル3に対して最適化計算処理を行い、フィードバックゲインKを算出するようにしている。上記最適化計算装置2によって行われる最適化計算は線形二次(LQ)制御を利用するものであり、下式(ロ)に示すような評価関数Sを用いて行われる。
S=Σ{M'QM+u'Ru} ・・・(ロ)
評価関数Sにおいて、Q,Rは制御目的にあわせて設定された適当な行列であり、M',u'は、それぞれ状態ベクトルM、操作ベクトルuの転置ベクトルである。そして、評価関数Sが最小となるように制御することを考えれば、
u(k) =−K・M(k) ・・・(ハ)
とした状態フィードバック制御を行うフィードバックゲインKを最適制御理論より求めることができる。
シミュレーション制御部1の最適制御方策部1bでは、最適化計算装置2で算出されるフィードバックゲインKと物流状態(状態ベクトルM)とを用いて物流指示(操作ベクトルu)を算出して物流シミュレータ1aに与えて、シミュレーションを進め、新たな物流状態を得て、この新たな物流状態をもとに新たな物流指示を算出するという処理を繰り返す。そして、これにより得られたシミュレーション結果4から生産・物流プロセスにおける物流スケジュールを作成する。
以下に、第3の実施形態の具体例を、図11〜14を参照しながら説明する。
図11に示したように、第1に、生産・物流プロセスのペトリネットモデルとして、処理時間Tpを入力したプレースで各工程を表したペトリネットモデルを製品種ごとに構築する。そして、構築したペトリネットモデルの各プレースの処理時間Tp に比例したきざみ時間遅れnp に従って表される遷移行列aと接続行列bとを算出し、これら2つの行列a,bを用いて状態方程式を作成する(ステップS7)。
第2に、上記ステップS7で作成した状態方程式と、設定した評価関数とからフィードバックゲイン行列Kを製品種ごとに求める(ステップS8)。
第3に、この求めたフィードバックゲイン行列Kと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルM(k) とから、製品の移動操作端に対する操作ベクトルu(k) を製品種ごとに求めたのち、仮想的な生産・物流プロセス内の各移動操作端に対して、正値で大きい操作量が得られた製品順に移動可能な数だけ移動操作を順次行うという方法を用いて、所定期間の生産・物流プロセスのシミュレーションを実行する(ステップS9)。
図12は、図11に示したステップS7の処理、すなわち、生産・物流プロセスのペトリネットモデルとして、処理時間を入力したプレースで各工程を表したペトリネットモデルを製品種ごとに構築し、製品種ごとに各工程でのきざみ時間遅れを表した遷移行列aと接続行列bとを算出するための処理手順の例を示すフローチャートである。
すなわち、まず離散きざみ時間ΔTを入力し(ステップS701)、次に製品種ごとに全ての処理工程と処理時間Tp とを入力する(ステップS702)。そして、処理工程ごとに処理時間Tp をきざみ時間ΔTで除して整数化することにより上記各処理工程のきざみ時間遅れnp を求め(ステップS703、S704)、そのきざみ時間遅れnp に従って、全処理工程の製品種ごとの遷移行列aと接続行列bとを算出する(ステップS705)。
そして、全ての製品について遷移行列aと接続行列bとを算出するまでステップS706からステップS702の処理に戻り、以上の処理を繰り返して行う。なお、離散きざみ時間ΔTは、各製品種各工程処理時間の最大公約数をもって定義するのが最も効率的であるが、目的とする制御精度を勘案して適宜設定すればよい。
図13は、図11に示したステップS8の処理、すなわち、上記のようにして求めた遷移行列a及び接続行列bから成る状態方程式と設定した評価関数とからフィードバックゲイン行列Kを製品種ごとに求めるための処理手順の例を示すフローチャートである。
すなわち、まず製品種ごとにペトリネットモデルの各プレースの処理時間Tp に比例したきざみ時間遅れnp を表した遷移行列aと接続行列bとを最適化計算装置2に入力するとともに(ステップS801)、評価関数を表す行列Q,Rを入力する(ステップS802)。そして、上記入力した遷移行列a、接続行列b及び評価行列Q,Rからフィードバックゲイン行列Kを計算する(ステップS803)。この計算を全ての製品について完了するまでステップS804からステップS801の処理に戻り、以上の処理を繰り返して行う。なお、全製品についてペトリネットモデルの各プレースの処理時間Tp に比例したきざみ時間遅れnp を表した遷移行列aと接続行列bとを最適化計算装置2に入力し、全製品を一括で計算するようにしてもよい。
図14は、図11に示したステップS9の処理、すなわち、上述のようにして計算したフィードバックゲイン行列Kと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルM(K) とから、製品の移動操作端に対する操作ベクトルu(K) を製品種ごとに求めたのち、仮想的な生産・物流プロセス内の各移動操作端に対して、正値で大きい操作量が得られた製品順に移動可能な数だけ移動操作を順次行うという方法を用いて、所定期間の生産・物流プロセスのシミュレーションを実行するための処理手順の例を示すフローチャートである。
すなわち、まずペトリネットモデルの初期状態における状態ベクトルM(0) を入力するとともに、投入予定の全製品を投入プレースに入力し、時刻 kの値を0に初期化したのち(ステップS901)、現時点(時刻:k )における全製品種の状態ベクトルM(k) を入力する(ステップS902)。
そして、上述の方法を用いて計算されたフィードバックゲイン行列Kと上記入力した状態ベクトルM(k) とをかけて製品種ごとに操作ベクトルu(k) を計算し(ステップS903)、次に移動操作端ごとに、正値で大きい操作量が得られた製品順に、移動可能な数だけ移動操作を実行する(ステップS904)。
次に、時刻を進めたのち(ステップS905)、各ステップのシミュレーションが終了したかどうかを判断し(ステップS906)、終了していないときはステップS902の処理に戻る。一方、終了したときは、そのシミュレーション結果をもって生産スケジュールとする(ステップS907)。
次に、第3の実施形態の作用を以下に示す例に即して説明する。ここでは、異なる複数の工程で複数の製品を処理して製造するプロセスの例として、2種類の製品、すなわち製品Aと製品Bとを4つの工程で処理して製造する場合を考え、各製品に対する各工程の処理時間が表1のように与えられているものとする。
Figure 0004846376
また、離散きざみ時間ΔTを5分として両製品A,Bを製造するプロセスのペトリネットモデルを示したものが、図15である。上記した表1は、処理時間を離散きざみ時間ΔT(=5分)で除して得られた各工程1,2,3,4 のきざみ時間遅れを表している。この例では、製品Aについては工程1,2,3,4 がそれぞれ2,3,1,2 のきざみ時間遅れを有し、製品Bについては工程1,2,3,4 がそれぞれ2,2,0,2 のきざみ時間遅れを有している。この例において製品A,Bは、移動操作端T1(以降、移動操作端をトランジションとも称する)を経由して投入され、トランジションT6を経由して次工程或いは倉庫等へ搬出される。すなわち、製品AはプレースP1,P2,P3,P4 を通り、製品BはプレースP1,P2,P4を通る。
上述のように、離散化したある時刻k において各プレースに存在するトークンの数を示す状態ベクトル、言い換えれば状態量をM(k) で表し、各トランジション発火の有無を"1"及び"0"で表現した操作ベクトルをu(k) で表わすと、次の時刻k+1 における状態ベクトルM(k+1) は、遷移行列a、接続行列bを用いて上式(ニ)で表わすことができる。状態方程式(ニ)上の移動操作端(トランジション)と、実プロセスの移動操作端とは一致している。すなわち、操作ベクトルu(k) の信号は、実プロセスの操作信号である。
例えば、製品Aに対してプレースP1,P2,P3,P4 に存在するトークンの数を並べたベクトルをM、トランジションT1,T2,T3,T5,T6の発火の有無を"1"及び"0"で表した操作ベクトルをuとすれば、以下の式(2)、(3)で示される遷移行列aと接続行列bとを用いて、ベクトルM(k) からベクトルM(k+1) への状態変化を表現することができる。
Figure 0004846376
ただし、上記式(2)において、列方向の1桁の番号はプレース番号を示し、行方向の2桁の番号のうち、左側の数字はプレース番号を示し、右側の数字は各プレースに存在する状態(きざみ時間遅れ)の番号を示している。また、上記式(3)において、列方向の1桁の番号はトランジション番号を示し、行方向の2桁の番号のうち、左側の数字はプレース番号を示し、右側の数字は各プレースに存在する状態(きざみ時間遅れ)の番号を示している。
上記遷移行列aを表現するときの一般形を、次の式(4)に示す。この式(4)から明らかなように、ある工程に存在する状態数がnのとき、その工程に関する部分の小行列は、式(4)中に示したようなn×nの正方行列で表される。そして、全工程の遷移を表した遷移行列aは、上記各工程に関する小行列を行方向及び列方向の番号に対応した適当な位置に配置するとともに、その他の要素を全て"0"とすることによって表される。
Figure 0004846376
また、上記接続行列bを表現するときの一般形を、次の式(5)に示す。すなわち、ある工程に存在する状態数がnのとき、その工程に関する部分の小行列は、式(5)に示すようなn×2の行列で表される。(1,1) 要素の数"1"は、該当するプレースにトークンが入力されることを示し、(n,2) 要素の数"−1"は、該当するプレースからトークンが出力されることを示している。そして、全工程に関する接続行列bは、上記各工程の小行列を行方向及び列方向の番号に対応した適当な位置に配置するとともに、その他の要素を全て"0"とすることによって表される。
Figure 0004846376
製品Aについて上記式(2)、(3)で示される遷移行列aと接続行列bとを用いてベクトルM(k) からベクトルM(k+1) への状態変化を表現したのと同様のことが製品Bについても表現できる。
このように、製品ごとに、処理時間を入力したプレースを持つペトリネットモデルを用い、製品ごとに各工程でのきざみ時間遅れを表した遷移行列aと接続行列bとで各工程を表すことにより、離散時刻k が1進むたびに複数の離散きざみ時間を要するプレースでトークンが移動していくことを表現でき、その結果、離散時間系の最適制御理論を適用できる形にすることができる。
この場合、1つのプレースに複数単位の処理時間(離散きざみ時間)を割り当てるようにしてペトリネットモデルを構築し、遷移行列a及び接続行列bの2つの行列式だけで物流モデルを表現できるようにしているので、1つの離散きざみ時間ごとに1つのプレースを設けた制御用のペトリネットモデルを再構築しなくても済む。また、上記1つの離散きざみ時間ごとにプレースを設けたペトリネットモデルに比べて制御端の数を少なくすることができ、実際のプロセスに使いやすいモデルとすることができる。
これにより、制御の目的にあわせて適当な行列Q,Rを設定して、評価関数(ロ)が最小になるように制御することを考えれば、上式(ハ)とした状態フィードバック制御を行うフィードバックゲイン行列Kを最適制御理論より求めることができる。フィードバックゲイン行列Kの計算法としては、例えば(安藤和昭、他編著「数値解析手法による制御系設計」計測自動制御学会発行、pp.126-130、平成5年初版第2刷)に記載されたいくつかの方法がある。
また、評価行列Q,Rは、それぞれプレースの数及びトランジションの数の次元を有する正方行列で、それぞれ制御の過渡特性とトランジション操作の入力エネルギーとを評価関数として表すためのものであり、制御目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、過渡特性を重視する場合は、大きな数値をもつ行列Qを設定すればよい。また、操作に要する入力エネルギーを小さく抑えたい場合は、大きな数値をもつ行列Rを設定すればよい。
次に、第3の実施形態の具体例を、モデル構築、制御則構築、シミュレーション、実施結果例に分けて以下に説明する。
〔モデル構築〕
図16は、複数工程よりなる製造プロセスのペトリネットモデルの一例を示したものであり、離散きざみ時間ΔTは5分に設定してある。この製造プロセスは、工程1,2,3,4 からなる前処理工程と工程5,6 からなる後処理工程とから構成され、プレースP1(投入プレース)で示した前処理工程入側バッファと、プレースP6,P8 で示した後処理工程入側バッファと、プレースP10 で示した搬出用プレースとを具備している。
この製造プロセスでは、前処理工程1又は2で処理された製品は後処理工程5で処理され、また、前処理工程3又は4で処理された製品は後処理工程6で処理されるが、製品によっては前処理工程1〜4と後処理工程5〜6の複数の組合せのいずれかで処理し得るものがあるため、全体で15の製品種類がある。次の表2は、それぞれの製品種がどの前処理工程と後処理工程との組合せで処理可能かを示したものである。
Figure 0004846376
図16において、プレースP11,P12,P13,P14,P15,P16 は、それぞれ工程1〜6の処理容量を制限するための仮想プレースであり、これらの仮想プレースに初期設定された容量設定用仮想トークンの数により、各処理工程で同時に処理できる製品の数を制限している。例えば、工程1は、プレースP2から構成されるとともに、仮想プレースP11 に初期状態として1個の容量設定用仮想トークンが置かれることにより、この工程1での処理容量が1に設定されている。
すなわち、工程1に製品がなかった状態からトランジションT2を経由して製品が入力されるときに、仮想プレースP11 に置かれた容量設定用仮想トークンが同時に入力され、製品を表すトークンがプレースP1からプレースP2に移動する。その後、そのトークンがトランジションT3を経由してプレースP6に移動すると同時に容量設定用仮想トークンがプレースP11 に復帰して、再び工程1が待ち状態になる。
このように、複数のプレースで表される工程に対して仮想プレースを適宜利用することにより、各工程の処理容量を設定して製造プロセスのペトリネットモデルを構築することは周知の手法である。
なお、この図16の例は、工程1から工程6までの仮想プレースP11,P12,P13,P14,P15,P16 の容量が全て1のプロセスである。また、製品入力用のプレースP1と製品出力用のプレースP10 は最大200個の製品を収容可能で、プレースP6,P8 のバッファはともに最大20個の製品を収容可能と設定してある。
図17に実線で示された部分は、表2に記載した製品種No.1に対するペトリネットモデルを示したものである。同様に、全ての製品種に対してもペトリネットモデルを構築することにより、図11のフローチャートに示したモデル構築が行われる。
〔制御則構築〕
引き続き製品種No.1を例にとり、フィードバックゲイン行列Kを求める過程を説明する。式(ニ)の状態方程式における遷移行列aは、図17に示された製品種No.1のペトリネットモデルに対しては、次の式(6)で表現されるサイズ8×8の行列として求められる。ただし、式(6)において、列方向の番号はプレース番号を示し、行方向の番号のうち、下1桁以外の数字はプレース番号を示し、下1桁の数字は各プレースに存在する状態(きざみ時間遅れ)の番号を示している。
Figure 0004846376
また、式(ニ)の状態方程式における接続行列bは、図17に示された製品種No.1のペトリネットモデルに対しては、次の式(7)で表現されるサイズ8×6の行列として求められる。ただし、式(7)において、列方向の番号はトランジション番号を示し、行方向の番号のうち、下1桁以外の数字はプレース番号を示し、下1桁の数字は各プレースに存在する状態の番号を示している。
Figure 0004846376
また、式(ロ)で表される評価関数中における行列Q,Rは、上述したように、それぞれ各工程のきざみ時間遅れ数及びトランジションの数の次元を有する正方行列であるから、それぞれペトリネットモデルの製品種ごとに設定される。
製品種No.1に対しては、この製造プロセスにおける標準的な値として、
Q=20×I(8) ・・・(8)
及び
R=I(6) ・・・(9)
を設定した。ただし、式(8)、(9)においてI(n) はn次の単位行列である。
このようにして遷移行列a及び接続行列bと、評価関数を定義する行列Q,Rとが定まれば、離散時間系における最適制御理論によりフィードバックゲイン行列Kを求めることができる。
すなわち、代数リッカチ方程式(10)
P=ATPA−ATPB(BTPB+R)-1BTPA+Q・・・(10)
を満足する解Pを求めれば、フィードバックゲイン行列Kは、
K=−(BTPB+R)-1BTPA ・・・(11)
により計算することができる。ここで、(BTPB+R)-1は行列(BTPB+R)の逆行列である。なお、リッカチ方程式の解法は、上述した参考文献にも詳述されているように既知の方法が多々知られている。
このようにして計算した製品種No.1のペトリネットモデルに対するフィードバックゲイン行列Kは、次の式(12)で与えられる。ただし、この式(12)において、列方向の番号及び行方向の番号は、それぞれ式(7)における行方向の番号及び列方向の番号に対応するものである。
Figure 0004846376
同様にして、全ての製品種に対してもフィードバックゲイン行列Kを計算することにより、図11のフローチャートに示した制御則の構築が行われる。
〔シミュレーション〕
次に、シミュレーションについて、図14に示したフローチャートに沿って説明する。まず、ペトリネットモデルの初期状態における状態ベクトルM(0) を入力するとともに、投入予定の全製品を投入プレースに入力し、時刻 kの値を0に初期化したのち(ステップS901)、現時点(時刻:k )における全製品種の状態ベクトルを入力し(ステップS902)、新規投入製品を製品種ごとに入力して状態ベクトルに加えると、現時点における最終的な状態ベクトルM(k) が定まる。さらに、製品種ごとに、フィードバックゲイン行列Kと状態ベクトルM(k) とをかければ、操作ベクトルu(k) が計算できる(ステップS903)。
例えば、ある時刻k において製品種No.1のトークンがプレースP6のみに1個あり、さらに同品種の新規投入製品は無かったとすると、製品種No.1に対する最終的な状態ベクトルM(k) は、
M(k) = [ 0 0 0 1 0 0 0 0 ]′ ・・・(13)
となる。ただし、式(13)において記号′は転置ベクトルであることを表す。また、式(13)の各要素は、それぞれ各プレースP1,P2,P6,P7,P10 の状態番号11,21,22,61,71,72,73,101に対応する製品種No.1のトークン数を表す。
次に、式(12)で与えられたフィードバックゲイン行列Kと式(13)の状態ベクトルM(k) とを式(ハ)に従ってかければ、操作ベクトルu(k) は、
u(k) = [-0.249 -0.255 -0.3430 0.300 0.002 0.004 ]′ ・・・(14)
と求められる。ただし、式(14)の各要素は、それぞれトランジションT1,T2,T3,T10,T11,T14に対する操作量である。
同様にして全ての製品種に対しても操作ベクトルu(k) を求める。そして、移動操作端すなわちトランジションごとに、正値で大きい操作量が得られた製品順に、移動可能な数だけ移動操作を実行する(ステップS904)。
例えば、時刻k において製品種No.1のトークンがプレースP6に1個あり、このとき同時に製品種No.8のトークンもプレースP6に1個あり、他の製品種のトークンはプレースP6にはなかったとする。この場合、トランジションT10 に関して製品種No.1のトークンに対する操作量は、式(14)より 0.300であった。一方、製品種No.8のトークンに対する操作量を同様にして計算する。製品種No.8の遷移行列aを式(15)、接続行列bを(16)、行列Q、Rを(17)、(18)を示す。フィードバックゲイン行列Kは次の式(19)のようになり、トランジションT10 の操作量は0.361となる。
Figure 0004846376
Figure 0004846376
Figure 0004846376
Figure 0004846376
Figure 0004846376
ここで、トランジションT10 は、移動操作すなわち発火によって1個のトークンをプレースP7に移動させることができるものであるとする。この場合、時刻k においては仮想プレースP15 に容量設定用仮想トークンが1個存在しているため、結局製品種No.8のトークンに対してのみトランジションT10 を発火させることが可能になる。また、製品種No.8のトークンは時刻k において他のプレースには存在していなかったから、操作量の正負に関わらずトランジションT10 以外のトランジションは発火できない。
したがって、製品種No.8に対する最終的な操作ベクトルu(k) は、
u(k) = [ 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 ]′・・・(20)
となり、トランジションT10 のみが発火する。その結果、製品種No.8に対する時刻k に
おける状態ベクトルが
M(k) = [ 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 ]′ ・・・(21)
から時刻k+1 における状態ベクトルへ
M(k+1) = [ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 ]′ ・・・(22)
と更新される。
同様の計算を全製品種、全トランジションについて行えば、全製品種に対する時刻k+1 における状態ベクトルM(k+1) が計算されることになる。その後は、時間を進めたのち(ステップS905)、各ステップのシミュレーションが終了したかどうかを判断し(ステップS906)、終了していないときはステップS902の処理に戻る。一方、終了したときは、そのシミュレーション結果をもって生産スケジュールとする(ステップS907)。
上述したように、本実施形態においては、上述した第1の実施形態の効果に加えて、1つのプレースに複数のきざみ時間遅れを含むようにしてペトリネットモデルを構築し、遷移行列及び接続行列の2つの行列式だけで数式モデルを表現できるようにしたので、1つのきざみ時間遅れごとに1つのプレースを設けたペトリネットモデルを再構築しなくても済む。また、1つのきざみ時間遅れごとに1つのプレースを設けたペトリネットモデルに比べて制御端の数を少なくすることができ、実プロセスに使いやすいものとすることができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として製造プロセスにおける物流制御装置の具体例を説明する。
本実施形態の物流制御装置は、図26に示すように、入力手段2601と、きざみ時間遅れ算出手段2602と、遷移・接続行列算出手段2603と、ゲイン行列算出手段2604と、操作ベクトル算出手段2605と、制御手段2606と、記憶手段2607と、状態ベクトル入力手段2608と、出力行列算出手段2610とを具備しており、以下に述べるような物流制御方法を実施する。
すなわち、入力手段2601は、製造プロセス2609の各処理工程とその処理時間Tp ときざみ時間ΔT、およびペトリネットモデルに関する所定の評価関数を表す評価行列Q,R、更には後述する目標状態量Mr の各情報を入力するためのものであり、例えばキーボード等により構成される。なお、上記評価行列Q,Rは、
Q=QT ≧0、R=RT >0
を満たすものとする(行列Q,Rの肩のTは転置行列であることを示す)。
きざみ時間遅れ算出手段2602は、上記入力手段2601により入力された処理時間Tp ときざみ時間ΔTとから上記各処理工程のきざみ時間遅れnp を求める。遷移・接続行列算出手段2603は、上記きざみ時間遅れ算出手段2602により求められたきざみ時間遅れnp を有する各1つのプレースで各処理工程を表したペトリネットモデルの状態方程式を記述する遷移行列Aと接続行列Bとを求める。
ゲイン行列算出手段2604は、上記入力手段2601により入力された評価行列Q,Rおよび目標状態量Mr と、上記遷移・接続行列算出手段2603により求められた遷移行列Aおよび接続行列Bとを用いて、上記所定の評価関数の値を最小にするような上記ペトリネットモデルのフィードバックゲイン行列Kを求める。
上記入力手段2601により入力された目標状態量Mr 、上記遷移・接続行列算出手段2603により求められた遷移行列Aと接続行列B、および上記ゲイン行列算出手段2604により求められたフィードバックゲイン行列Kは、上記操作ベクトル算出手段2605および制御手段2606において実際に制御を行う際に使用するため、記憶手段2607に記憶されて保存される。
操作ベクトル算出手段2605は、上記入力手段2601により入力されて上記記憶手段2607に記憶された目標状態量Mr と、上記ゲイン行列算出手段2604により求められて上記記憶手段2607に記憶されたフィードバックゲイン行列Kと、状態ベクトル入力手段2608により入力される製造プロセス2609の現時点での工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルM(k) とから、製品の移動操作端に対する発火の有無を表す操作ベクトルu(k) を求める。
制御手段2606は、上記操作ベクトル算出手段2605により求められた操作ベクトルu(k) に基づいて、操作量(操作ベクトルu(k) の要素)の正値で大きい順に発火可能性を調べ、製造プロセス2609内の各移動操作端に対し発火可能な操作端を全て発火させて、移動可能な数だけ移動操作を行うことにより上記製造プロセス2609の物流を制御する。
このとき、上記記憶手段2607より入力される遷移行列A、接続行列Bおよび目標状態量Mr と、上記状態ベクトル入力手段2608より入力される現時点での状態ベクトルM(k) とを用いて、上記状態方程式から移動操作後の状態ベクトルM(k+1) を求め、それを次の時間における処理に利用するために状態ベクトル入力手段2608にフィードバックする。
なお、上述したきざみ時間遅れ算出手段2602、遷移・接続行列算出手段2603、ゲイン行列算出手段2604、操作ベクトル算出手段2605、制御手段2606、記憶手段2607および状態ベクトル入力手段2608は、例えば、CPU(中央処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)などからなるマイクロコンピュータによって構成されている。
〔モデル構築〕
図8は、異なる複数の工程で複数の製品を処理して製造するプロセスのモデルを示す図である。図8に示すように、複数の製品は工程1あるいは工程2で処理される。ここで扱う複数の製品は、単一晶種であることを想定しており、工程1および工程2のどちらでも処理が可能である。
例えば、工程1では、原料がバッファ1に蓄えられた後、装置1において上記原料に対して所定の処理が行われ、後処理1を経て製造された製品が製品置場に置かれる。また、工程2では、原料がバッファ2に蓄えられた後、装置2において上記原料に対して所定の処理が行われ、後処理2を経て製造された製品が製品置場に置かれる。なお、矢印は製品の流れを示し、矢印に付した数字は製品の搬送可能容量を示す(常に1個とする)。
ここで、工程1内の装置1での処理時間は2単位時間であり(単位時間は離散きざみ時間△Tのことであり、例えば5分に設定される。よって、"2"という数字は装置1のきざみ時間遅れを示す)、装置1における製品の容量は1個である。また、工程2内の装置2での処理時間は4単位時間であり、装置2における製品の容量も1個である。また、工程1の後処理1および工程2の後処理2のどちらも処理時間は2単位時間である。なお、バッファ、後処理および製品置場には製品の容量制限はない。
このような物流モデルにおいて、全製品をより短時間で製造するための最適なスケジュールを作ることを考える。そのための第1段階として、上記物流モデルに基づくペトリネットモデルを構築する。
図9は、図8に示した製造プロセスに本実施形態を適用した場合に得られるぺトリネットモデルを示したものである。なお、説明の便宜上、図9のペトリネットモデルでは、装置1、装置2、後処理1、後処理2の各工程を処理時間に比例した数のプレースで表しているが、実際には図2のステップS1で説明したように、それぞれの工程でかかる処理時間を離散きざみ時間△Tで除して得られるきざみ時間遅れを有する各1個のプレースにまとめて表現する。
このペトリネットモデルでは、プレースp1(投入プレース)からトランジションt1,t5を介してプレースp2(工程1の入側バッファ)とプレースp7(工程2の入側バッファ)とに原料が投入され、それぞれ装置1および後処理1の処理、あるいは装置2および後処理2の処理を経て、トランジションt4,t8を経由して製品置場のプレースp14に搬出される。
なお、図9において、ブレースp3とp4との間、プレースp5とp6との間、プレースp8〜p11の間、およびプレースp12とp13との間にはトランジションであることを表す符号tが付けられていない。これは、上述したように、実際のペトリネットモデルではきざみ時間遅れを有する各1個のプレースにより表現され、トランジションの操作とは関係なく処理が行われるからである。
すなわち、装置1、装置2、後処理1および後処理2内の製品の移動は、トランジションの操作によって行われるのではなく、操作の有無に関係なく順次移動されていく。このような装置1、装置2、後処理1および後処理2内の製品の移動は、後述するように遷移行列Aによって表される。一方、トランジションの発火は接続行列Bによって表される。
製品の移動に際して、1つのトランジションに複数のプレースからアーク(矢印)が入力している場合には、それらのプレースの全てに製品すなわちトークンが存在していないとトランジションの操作ができない。これをトランジションの発火則と言う。また、1つのトランジションから複数のプレースにアークが出力している場合には、それらのプレースの全てにトークンが出力される。
なお、アークとは、トランジションからプレース、あるいはプレースからトランジションへトークンが移動する方向を示すものであり、その数は移動するトークンの数を示している(上述のように、図9の例の場合は移動するトークンの数は何れも1個である)。また、トランジションを操作することを、トランジションを発火させると言う。
また、図9において、プレースp15,p16は、それぞれ装置1および装置2での処理容量を制限するための仮想プレースであり、これらの仮想プレースに初期設定された容量設定用仮想卜一クンの数により、各装置で同時に処理できる製品の数を制限している。上述のように、装置1および装置2とも製品の容量は1個であるので、仮想プレースp15,p16には初期状態として1個の容量設定用仮想トークンが置かれる。
ここで、容量設定用仮想トークンの作用を詳しく説明する。例えば、装置1に製品がなかった状態からトランジションt2を経由して製品が入力されるときに、仮想プレースp15に置かれた1個の容量設定用仮想トークンが同時に入力され、製品を表すトークンがプレースp2からプレースp3に移動する。その後、そのトークンがトランジションt3を経由してプレースp5に移動すると同時に容量設定用仮想トークンがプレースp15に復帰して、再び装置1が待ち状態になる。
このように、複数のプレースで表される工程に対して仮想プレースを適宜利用することにより、各工程の処理容量を設定して製造プロセスのペトリネットモデルを構築する。
ところで、図9のように構成したペトリネットモデルは、可制御ではない。なお、可制御であるとは、ある制御によって有限時間の間にシステムを任意の目標の状態に到達させることができることを言い、システムを思うままに制御することができることを言う。
離散化したある時間kにおいて各プレースに存在するトークンの数を示す状態ベクトル、すなわち状態量をM(k)で表し、各トランジション発火の有無を"1"および"0"で表現した操作ベクトルをu(k)で表すとすると、次の時間k+1における状態ベクトルM(k+1)は、以下に示す状態方程式(1)
M(k+1)=A・M(k)十B・u(k) (1)
で表すことができるが、可制御であるときには状態M(k)を"0"とする操作ベクトルu(k)が存在する。この場合、単に対(A,B)が可制御であるとも言う。
しかし、上述したように図9の例においては、装置1および装置2での製品の処理容量がそれぞれ1個に制限されている。図9のペトリネットモデルは、このような容量の制限を受けることから制御方法も制約され、可制御ではなくなっている。
すなわち、状態ベクトルM(k)の要素数、すなわち状態数をmとしたとき、対(A,B)が可制御であるなら、
rank[BAB…Am−1B]=m
が成り立つが、図9の例の場合は、
rank[BAB…A15B]=13<16
となり、状態ベクトルM(k)の状態数m=16と一致しない。
このことは、次のように解釈できる。まず、プレースp3,p4,p15内のトークンの合計数が常に一定であることが分かる。例えば、プレースp15に1個、プレースp3,p4に0個の初期トークンを与えると、プレースp15のトークンが1個の場合は、プレースp3,p4のトークンは0個、プレースp15のトークンが0個の場合は、プレースp3かブレースp4のどちらかにトークンが1個あるので、プレースp3,p4,p15内のトークンは常に合計1個となる。
同様に、プレースp8〜p11,p16内のトークンの合計数が常に一定である。さらに、プレースp15,p16を除くプレース内でもトークンの合計数が常に一定であることも分かる。このように、保存される(=自由にならない)量が存在するときは不可制御であり、保存量の個数は16−13=3で与えられている。
このように、ペトリネットモデルが不可制御であると、従来の制御法をそのまま適用した場合には、後述するようにフィードバックゲイン行列Kを求めることができない。そのため、図8の物流モデルからペトリネットモデルを構築するに当たって、ペトリネットモデルを可制御にするために、図10に示すように、容量制限を表すプレースp15,p16を無視するとともに、製品置場であるプレースp14もモデルから削除する必要があった。
しかしながら、本実施形態では、以下に述べるように、不可制御のペトリネットモデルの各プレースに目標状態量を設定して、フィードバックゲイン行列Kを求める手順を工夫することにより、図9のような不可制御のペトリネットモデルであっても製造プロセスの物流制御を自動的に最適化することができるようにしている。
〔制御則構築〕
ここでは、フィードバックゲイン行列Kを求める過程を説明する。
本実施形態において、ペトリネットモデルの状態方程式は、
M(k+1) =A・M(k) +B・u(k) (23)
により求める。
上記式(1) と同じである。また、本実施形態では、上述したように目標状態量Mr を新たに導入している。なお、この目標状態量Mr は、
r =A・Mr (24)
を満たすように設定する。
上記した式(1),(2) より、
M(k+1) −Mr =A・(M(k) −Mr )+B・u(k) (25)
が成り立つので、M(k) −Mr を新たな状態x(k) と見ることができ、式(25) は次の式(26) のように書ける。
x(k+1) =A・x(k) +B・u(k) (26)
なお、式(23) の状態方程式は、各プレースの状態の目標量が0の場合に相当するものである。これに対して式(25) あるいは式(26) の状態方程式のように、式(24) を満たすような目標状態量Mr を導入することで各プレースの状態の目標量を自由に設定することができる。すなわち、本実施形態では、図20に示すような遷移行列Aによって製品の移動操作が決定されるプレースp3,p5,p8,p9,p10,p12 以外のプレースに、目標状態量Mr の入力によって目標量を自由に設定することができる。
本実施形態においては、上記状態方程式(25) あるいは(26) 上の移動操作端(トランジション)と、実プロセスの移動操作端とは一致している。すなわち、操作ベクトルu(k) の信号は、実プロセスの操作信号である。
例えば、プレースp1〜p16 に存在するトークンの数から目標状態量を引いた値を並べた状態ベクトルをxで表し、トランジションt1〜t8の発火の有無を"1"および"0"で表した操作ベクトルをuとすれば、以下の式(27),(28)で示される遷移行列Aと接続行列Bとを用いて、上記式(26) のようにベクトルx(k) からベクトルx(k+1) への状態変化を表現することができる。
Figure 0004846376
ここで、上記遷移行列Aを表す式(27) において、列方向の16個の要素は上から順に番号の若い順のプレースに対応し、行方向の16個の要素も左から順に番号の若い順のプレースに対応する。そして、対角要素中の"0"とそれを含む列ベクトル(縦ベクトル)内に存在する"1"との組が、それらの要素によって表されるプレース間のトークン移動を表している。例えば、3行3列の要素(以下、(3,3) 要素のように記載する) にある"0"と(4,3) 要素にある"1"とは、プレースp3からプレースp4への移動を表している。
このような対角要素の"0"と非対角要素の"1"との組は、(3,3),(4,3) 要素の他に、(5,5),(6,5) 要素、(8,8),(9,8) 要素、(9,9),(10,9)要素、(10,10),(11,10) 要素、(12,12),(13,12) 要素に存在し、それぞれプレースp3とp4との間、プレースp5とp6との間、プレースp8〜p11 の間、およびプレースp12 とp13 との間におけるトークンの移動を表している。なお、対角要素が"1"の場合にはそのプレースからはトークンは移動されない。
また、上記接続行列Bを表す式(28) において、列方向の16個の要素は上から順に番号の若い順のプレースに対応し、行方向の8個の要素は左から順に番号の若い順のトランジションに対応する。ここで、接続行列B中の要素のうち、"−1"は該当するトランジションの発火によって該当するプレースからトークンが出力されることを示し、"1"は該当するトランジションの発火によって該当するプレースにトークンが入力されることを示す。
例えば、(1,1) 要素の"−1"は、該当するトランジションt1の発火によって該当するプレースp1からトークンが出力されることを示し、(2,1) 要素の"1"は、該当するトランジションt1の発火によって該当するプレースp2にトークンが入力されることを示している。また、トランジションt2が発火した場合には、プレースp2,p3 におけるトークンの入出力の他に、仮想プレースp15 から容量設定用仮想トークンが出力されることも示されている。
このように、処理時間を入力したプレースを持つペトリネットモデルを用い、各工程でのきざみ時間遅れを表した遷移行列Aと接続行列Bとで各工程を表すことにより、離散時間k が1進むたびに複数の離散きざみ時間を要するプレースをトークンが移動していくことを表現でき、その結果、離散時間系の最適制御理論を適用できる形にすることができる。
この場合、1つのプレースに複数単位の処理時間(離散きざみ時間)を割り当てるようにしてペトリネットモデルを構築し、遷移行列Aおよび接続行列Bの2つの行列式だけで物流モデルを表現できるようにしているので、1つの離散きざみ時間ごとに1つのプレースを設けたペトリネットモデルを再構築しなくても済む。また、上記1つの離散きざみ時間ごとにプレースを設けたペトリネットモデルに比べて制御端の数を少なくすることができ、実際のプロセスに使いやすいモデルとすることができる。
さらに、本実施形態では、各プレースの状態目標量を0以外にも設定できるようにしたので、外乱が入ったときに目標値を一定にするように働く(従来は各プレース内のトークン数を常に0個にするように働く)レギュレータとしての扱いに加えて、変動する目標値に追従するサーボ系としての扱いを新たに実現することが可能となった。また、目標値を大きく設定することにより、目標値の大きいプレースで優先的に処理を行うようにする優先処理を実現することも可能となった。
このように本実施形態では、ペトリネットモデルを離散時間系の最適制御理論を適用できる形にすることができるので、制御の目的にあわせて適当な評価行列Q,Rを設定して、下記の式(30) に示す評価関数Jが最小になるように操作ベクトルu(k) を制御することを考えれば、
u(k) =K・(M(k) −Mr )=K・x(k) (29)
とした状態フィードバック制御を行うフィードバックゲイン行列Kを最適制御理論より求めることができる。
Figure 0004846376
上述の評価行列Q,Rは、それぞれプレース数の次元およびトランジション数の次元を有する正方行列で、それぞれ制御の過渡特性とトランジション操作の入力エネルギーとを評価関数として表すためのものであり、制御目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、過渡特性を重視する場合は、大きな数値をもつ評価行列Qを設定すればよい。また、操作に要する入力エネルギーを小さく抑えたい場合は、大きな数値をもつ評価行列Rを設定すればよい。ここでは、2つの評価行列Q,Rを次の式(31),(32)のように設定している。
Figure 0004846376
このようにして遷移行列Aおよび接続行列Bと、評価関数Jを定義する行列Q,Rとが定まれば、離散時間系における最適制御理論によりフィードバックゲイン行列Kを求めることができる。なお、フィードバックゲイン行列Kの計算法としては、例えば(安藤和昭、他編著「数値解析手法による制御系設計」計測自動制御学会発行、pp.126-130、平成5年初版第2刷)に記載された幾つかの方法がある。
例えば、次に示す離散時間系におけるリカッチ差分方程式(33)を満足する時間kの関数である解P(k) を求めれば、フィードバックゲイン行列Kは、下記の式(34)により計算することができる。ただし、式(33),(34) において符号の肩に示したTは転置行列であることを表し、同じく肩に示した−1は逆行列であることを表す。
Figure 0004846376
ここで、上記評価行列Q,Rによって表される評価関数Jについて詳しく説明する。従来の制御法に従えば、評価関数Jは、通常は製造プロセスの現時点での工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルM(k) と、トランジションの発火の有無を表す操作ベクトルu(k) との2次形式によって以下の式(35)のように設定される。この場合、フィードバックゲイン行列Kは、式(36)により示される代数リカッチ方程式の解Pを用いて、式(37)のように与えられる。
Figure 0004846376
この式(35)のように評価関数Jを設定した場合には、単一品種の製品を扱う図19のような物流制御モデルから図21のような可制御のペトリネットモデルを構築したときは、時間k における状態方程式(23) の状態M(k) を0とする操作ベクトルu(k) が存在する(プレースの目標値を0に一定化することができる)ので、評価関数Jは有限の値に収束し、式(35)は有効である。
しかし、図20のような不可制御のペトリネットモデルを構築したときは、状態方程式(1) の状態M(k) を0とする操作ベクトルu(k) が存在せず、式(35)の評価関数Jは発散するため、式(36)に示した代数リカッチ方程式の解Pが存在せず、式(37)によってフィードバックゲイン行列Kを計算することができない。つまり、図20のように容量制限などによりトークン数の保存されるループがあるときは、製造プロセスの物流制御を自動的に最適化することができない。
これに対して、本実施形態では、M(k) −Mr を新たな状態x(k) と見て、上記式(30) に示したようなM(k) 、u(k) の2次形式を評価関数Jとしている。すなわち、本実施形態では、式(30) に示したように評価関数Jの加算ステップを0〜∞の代わりに0〜Nと有限にし、その後の式(34)に示すフィードバックゲイン行列Kの演算時に極限計算を行うようにしている。なお、Nは対象の時間スケールと比較して十分に大きい任意の数である。
この式(30) のように評価関数Jを設定した場合には、式(34)で示されるフィードバックゲイン行列Kの値は必ず収束し、上記式(30) に示した評価関数Jは常に意味を持つ。すなわち、図20のように容量制限などによりトークン数の保存されるループがある不可制御のペトリネットモデルであっても、製造プロセスの物流制御を自動的に最適化することができる。
つまり、本実施形態では、図22のフローチャートに示すように、状態方程式として目標状態量Mr を考慮した式(25) すなわち式(26) を作成する(ステップS221)。次に、評価関数Jとして式(30) を設定する(ステップS222)。次に、ステップS223において、式(33)に示したようなリカッチ差分方程式の解P(k) を求めて、フィードバックゲイン行列Kを計算する(ステップS224)。
次に、ステップS225において、フィードバックゲイン行列Kの値が収束したか否かを判断する。この判断の結果、収束していない場合にはステップS223に戻り、収束するまでリカッチ差分方程式の解P(k) からフィードバックゲイン行列Kを求める演算を式(34)によって繰り返し行う。
ステップS225の判断の結果、フィードバックゲイン行列Kの値が収束した場合にはステップS226に進み、フィードバックゲイン行列Kの値を用いて式(29) により操作ベクトルu(k) を求め、最適制御を実行する。
〔制御〕
次に、実際に制御を行うにあたっては、各離散時間において操作ベクトルu(k) を上記した式(29) に従って計算する。そして、上記計算した操作ベクトルu(k) に基づいて、各トランジションに対して、正値で大きい操作量の順に発火可能性を調べ、移動可能な数のトークンに対して操作量を改めて"1"とおき、その他のトークンに対しては操作量を"0"とおいて最終的な操作ベクトルu(k) を求める。これにより、操作量が"1"であるトランジションを発火させれば、式(1) に示した値{A・M(k) +B・u(k) }として状態ベクトルM(k+1) を得ることが可能となる。
図23は、本実施形態による制御結果の例を示す図である。図23において、横軸の1〜16の数字は、図20に示した各プレースの番号を示す。また、縦軸の0〜18の数字は、処理時間ステップを示す。また、図24は、各プレースp1〜p16 における状態x1(k)〜x16(k) と各トランジションt1〜t8における操作ベクトルu1(k)〜u8(k)とを各処理時間ステップごとに示す図である。
図23のステップ0は初期状態を示し、この状態では原料置場の投入プレースp1に8個のトークンが置かれるとともに、仮想プレースp15,p16 にそれぞれ1個ずつ容量設定用仮想トークンが置かれている。図24(b)に示すように、この初期状態において単体で発火可能なトランジションはt1,t5 の2つである。ただし、トランジションt1,t5 は同時に発火可能とは限らない。トランジションt1,t5 に対応する制御(量子化前)はそれぞれ4.7465、2.6272であり、数値の大きい順に発火できなくなるまで発火させる。
すなわち、ステップ0では、まずトランジションt1を発火させる。このとき、1個のトークンがプレースp1からプレースp2に移動し、プレースp1のトークンは7個になる。この状態で、トランジションt5も発火可能なので発火させる。これにより、1個のトークンがプレースp1からプレースp7に移動し、プレースp1のトークンは6個になる。したがって、各トランジションに対応する制御(量子化後)はそれぞれ、u1(0)=u5(0)=1、u2(0)=u3(0)=u4(0)=u6(0)=u7(0)=u8(0)=0となる。
次に、ステップ1では、トランジションt1,t2,t5,t6 が発火し、上記ステップ0でプレースp2,p7 に移動されたトークンが更にプレースp3,p8 へと移動するとともに、投入プレースp1からプレースp2,p7 にトークンが1個ずつ移動する。トークンがプレースp3,p8 に移動する際には、仮想プレースp15,p16 から容量設定用仮想トークンが出力されている。
次に、ステップ2では、トランジションt1,t5 が発火し、投入プレースp1からプレースp2,p7 にトークンが1個ずつ移動している。このステップ2の処理の際には、プレースp3,p8 にトークンが存在しているので、これらのトークンは、トランジションの発火の有無に関係なく遷移行列Aの作用によってそれぞれプレースp4,p9 に移動する。なお、装置2内では、トークンはプレースp11 までトランジションの発火に関係なく移動していく(ステップ2〜ステップ4)。
次のステップ3では、トランジションt1,t3 が発火し、投入プレースp1からプレースp2にトークンが1個だけ移動するとともに、プレースp4からプレースp5にトークンが移動している。このとき、装置1内からトークンが出ていったので、仮想プレースp15 に容量設定用仮想トークンが復帰している。
このステップ3では、各プレースp1〜p16 における状態x1(3)〜x16(3) と各トランジションt1〜t8における操作ベクトルu1(3)〜u8(3)は、図24(c)のようになっており、単体で発火可能なトランジションはt1,t3,t5である。しかし、これらのトランジションt1,t3,t5に対応する制御(量子化前)は、それぞれ1.7794、2.8237、-0.2067 であるので、負の値であるトランジションt5は発火させず、残ったトランジションt1,t3 について数値の大きい順に発火させる。したがって、各トランジションに対応する制御(量子化後)はそれぞれ、u1(3)=u3(3)=1、u2(3)=u4(3)=u5(3)=u6(3)=u7(3)=u8(3)=0となる。
そして、次のステップ4では、トランジションt1,t2 が発火し、投入プレースp1からプレースp2にトークンが1個だけ移動するとともに、プレースp2からプレースp3にトークンが移動している。
このステップ4では、各プレースp1〜p16 における状態x1(4)〜x16(4) と各トランジションt1〜t8における操作ベクトルu1(4)〜u8(4)は、図24(d)のようになっており、単体で発火可能なトランジションはt1,t2,t5である。これらのトランジションt1,t2,t5に対応する制御(量子化前)は、それぞれ0.6469、3.2981、0.0111と何れも正値であるので、これらのトランジションt1,t2,t5について数値の大きい順に発火できなくなるまで発火させる。
すなわち、まずトランジションt2を発火させ、この状態で、トランジションt1も発火可能なので発火させる。このとき、1個のトークンがプレースp1からプレースp2に移動し、プレースp1のトークンは0個になる。したがって、この状態ではトランジションt5の発火は不可能となる。したがって、各トランジションに対応する制御(量子化後)はそれぞれ、u1(4)=u2(4)=1、u3(4)=u4(4)=u5(4)=u6(4)=u7(4)=u8(4)=0となる。
ステップ5では、各プレースp1〜p16 における状態x1(5)〜x16(5) と各トランジションt1〜t8における操作ベクトルu1(5)〜u8(5)は、図24(e)のようになっており、単体で発火可能なトランジションt4,t7 を、それらに対応する制御(量子化前)の値の大きい順に発火できなくなるまで発火させる。以下同様にしてステップ18まで処理が行われる。
ここで注目したいのは、ステップ3の処理の時点で投入プレースp1にはトークンが2個存在し、ステップ0〜2の処理と同様にトランジションt1,t5 を発火することによってプレースp2,p7 に2個のトークンを一度に移動させることが可能であるにも拘らず、ステップ3とステップ4との2ステップにかけてトランジションt1のみを1回ずつ発火し、プレースp2に対してのみトークンを1個ずつ順に移動していることである。
先に述べたように、装置1と装置2とでは製品の処理時間が異なり、装置1の方が装置2より処理時間が短い(装置1は2単位時間、装置2は4単位時間)。よって、装置1と装置2とで同じ数ずつ製品を処理するよりも、装置1の方で多くの製品を処理するようにすれば、全製品を処理するトータル時間を短くすることができる。図23の例は、装置1で5個の製品を処理し、装置2で3個の製品を処理するようにすることにより、両装置をフルに活用して全製品の処理時間をより短くする最適スケジュールの作成を実現しているものである。
これに対して、式(35)〜(37)に従う従来の制御法によって制御を行うと、その制御結果は次の図25のようになる。図25において、横軸の1〜13の数字は、図21に示した各プレースの番号を示す。また、縦軸の0〜23の数字は、処理時間ステップを示す。なお、ステップ0は初期状態を示し、この状態では原料置場の投入プレースp1に8個のトークンが置かれている。
この図25の例の場合も、ステップ0〜2の処理は、図23の例の場合と同様である。しかしながら、図25の例の場合は、次のステップ3でトランジションt1,t5 の両方を発火し、投入プレースp1からバッファであるプレースp2,p7 に2個のトークンを一度に移動している。このようにすると、装置1と装置2とで製品を4個ずつ処理することとなる。その結果、装置1で処理を行っていない無駄な時間が生じ、全製品を処理するトータル時間が23ステップ時間と図23の例の場合よりも長くなってしまっている。
次に、上述のような製造プロセスにおける物流制御方法を応用した処理順序計算方法を説明する。この処理順序計算方法では、まず、初期状態ベクトル(例えば、毎日の始業時における各工程の製品仕掛状態)をM(0) とし、製造プロセスへ投入予定の全製品をトークンとして投入プレース(図20の例ではプレースp1)に配置する。
そして、離散時間k=1、2、3・・・に対して状態ベクトルM(1)、M(2)、M(3)・・・を順次計算する予測シミュレーションを上述の製造プロセスにおける物流制御方法を用いて行い、その予測シミュレーションの結果、投入プレースから次のプレースへと順次移動していったトークンの順序をもって生産時の製品投入順序とすることにより、製造プロセスにおける処理順序計画を自動的に行うことができる。
以上述べたように、本実施形態の方法では、製造プロセスのペトリネットモデルと最適制御理論とを組み合わせることにより制御則を構築して制御を行うことが可能となる。その際、大規模で複雑なプロセスをモデル化して人の経験あるいは判断を一つ一つプログラム化する従来法に比べ、物流制御システムの構築を格段に容易に行うことができる。
また、理論的な制御則に基づく制御であるため、自動的に最適化された物流制御および処理順序計画を行うことができる。この場合、本実施形態では、目標状態量Mr を導入するとともに、評価行列Q,Rによって表される評価関数Jの加算ステップを式(30) のように有限にし、その後式(33)に示したリカッチ差分方程式の解P(k) を求めてフィードバックゲイン行列Kの収束値を式(34)に従って計算するようにしている。
これにより、図20のような不可制御のペトリネットモデルであっても式(30) で示される評価関数Jの値は必ず収束し、この評価関数Jは常に意味を持つ。したがって、容量制限などによりトークン数の保存されるループがある不可制御のペトリネットモデルであっても、式(34)によってフィードバックゲイン行列Kを必ず求めることができ、製造プロセスの物流制御を自動的に最適化することができる。
次に、上述のような製造プロセスの物流制御の最適化をより高速に行うための工夫について説明する。
以下に示す実施形態においても、状態方程式は式(23) と同じである。本実施形態では更に、以下に示す出力方程式(38)を導入する。
y(k) =C・M(k) (38)
ただし、この式(38)においてCはペトリネットモデルの可観測性を満たすように設定した出力行列である。
なお、可観測性とは、任意の未知の状態に対して、操作ベクトルu(k) を0としたとき、式(38)で表される出力y(k) を適当な時間区間にわたって観測した結果、上記未知の状態がどのようであるかを一意的に決めることができることを言う。例えば、図20の例で説明すると、装置2内のプレースp8〜p11 では遷移行列Aによってトランジションの発火に関係なく製品が移動するが、トランジションの操作を止めたときにプレースp11 に出力される状態を観測していれば、有限時間内に装置2内の内部状態が全て分かる。このとき、プレースp11 を観測点とする装置2は可観測であると言う。
ここで、図20に示したペトリネットモデルの可観測性を満足する出力行列Cの求め方について説明する。
出力行列Cは、図26に示すように、出力行列算出手段2610により遷移行列Aに基づいて作成する。この出力行列Cは、遷移行列Aの行ベクトルと同じサイズの単位行ベクトル(唯一の非ゼロ要素"1"を持つ横ベクトル)で作られる。遷移行列Aと同じサイズの行列で、対角要素が遷移行列Aの対角要素と等しく、非対角要素がすべて0の行列を作る。さらに、この行列からゼロベクトルとなる行を取り除いた行列を作る。この行列の行ベクトルは唯一の非ゼロ要素を持つので、同じ位置が非ゼロ要素となる単位行ベクトルを作り、これらの単位行ベクトルを集めて出力行列Cとする。
次の式(39)は、図20のペトリネットモデルに基づいて計算した式(27) の遷移行列Aから、上述のような方法によって作成した出力行列Cを示すものである。
Figure 0004846376
可観測性の必要十分条件は、状態ベクトルM(k) の次元がmのとき、
rank [CT T T … (AT m-1T =m
が成り立つことであるが、出力行列Cが上記式(17)の場合は、
rank [CT T T … (AT 15T ) =16
となるので、可観測性を満足する。
上記式(39)に示す出力行列Cは、トランジションの発火によってトークンが移動するプレースp1,p2,p4,p6,p7,p11,p13,p14,p15,p16の状態だけを観測するように定めたものである。その他のプレースp3,p5,p8,p9,p10,p12 では、遷移行列Aの作用によってトランジションの発火に関係なくトークンが移動するので、出力行列Cで定められるプレースの状態だけを観測していれば、図20のペトリネットモデルの内部状態を全て把握することが可能である。
さらに、本実施形態においては、評価関数Jとして、上記した式(30) の代わりに以下の式(40)を用いる。ただし、この式(40)中の評価行列Q,Rは、
Q=QT >0,R=RT >0(何れも正定行列)
を満たし、例えば次の式(41)および式(42)のように設定される。なお、式(42)は式(32)と全く同じである。
Figure 0004846376
また、上記式(40)中に示した目標値yr は、式(2) を満足する目標状態量Mr を用いて、
r =C・Mr (43)
で与えられる。このように、本実施形態では、状態M(k) ではなく出力y(k) を評価してフィードバックゲイン行列Kを計算する。
上記式(40)の評価関数Jを最小にする操作ベクトルu(k) は、上記した式(7) により与えられる。ここで、フィードバックゲイン行列Kは、上記した式(33)で与えられ、その中で用いられているP(k) は、次の式(44)に示すリカッチ差分方程式の解である。この式(44)は、上記した式(33)中のQの項をCT QCに置き換えたものである。
Figure 0004846376
上記式(29) に従って操作ベクトルu(k) を求めたら、正値で大きい操作量の順に発火可能性を調べ、製品の移動操作を実行する。このようにして出力方程式(38)を導入して制御を行った結果も、図33と全く同じようになり、処理時間を最短にする最適なスケジュールが得られる。これは、可観測性を満足する出力行列Cを設定して出力方程式(38)を求めているので、全てのプレースの状態を評価せずにポイントを絞って評価しても、実質的に全ての状態を評価して制御を行ったのと同じ結果を得ることができるからである。すなわち、出力方程式(38)を導入して制御を行っても、実質的に制御性能が劣化することはない。
しかも、本実施形態では、状態M(k) ではなく出力y(k) を評価しており、一般に出力数は状態数より少ない(図20の例では出力数が10個、状態数が16個)ので、評価関数Jに現れる評価プレース数を少なくすることができ、その分フィードバックゲイン行列Kの計算時間を短くすることができる。
すなわち、本実施形態では、図27のフローチャートに示すように、可観測性を考慮した出力行列Cによって出力方程式(38)を作成する(ステップS271)。次に、評価関数として式(40)を設定する(ステップS272)。そして、式(44)に示したようなリカッチ差分方程式の解P(k) を求めてフィードバックゲインKの収束値を求める演算を式(34)に従って繰り返し行うが、評価する状態数が少なくて済むので、図22の場合より少ない繰り返し演算でフィードバックゲイン行列Kの値を収束させることができる。なお、リカッチ差分方程式を解く際に、いわゆるダブリングアルゴリズムを用いることにより、収束速度をより速くすることが可能である。
次に示す表3は、出力方程式(38)を用いない方法と用いる方法とのゲイン計算の比較例を示すものである。なお、この表3は、入力数(トランジション数)が18、状態数(全プレース数)が393、出力数が17のシステムにおけるフィードバックゲイン行列Kの計算例を示しており、上述のダブリングアルゴリズムを用いている。
Figure 0004846376
この表3から明らかなように、出力方程式(38)の導入により、フィードバックゲイン行列Kの計算に関して約3倍の高速化を実現することができている。
さらに、このように出力方程式(38)を導入することにより、フィードバックゲイン行列Kを直接計算するアルゴリズムを利用することができるようになる。このフィードバックゲイン行列Kを直接計算するアルゴリズムの一例として、チャンドラセカール(Chandrasekhar )型の差分方程式による方法を用いることができる。このアルゴリズムによれば、次の式(45)に示すチャンドラセカール型の差分方程式によりK(k),R(k) を求めて(図27に示すステップS273)、式(46)によりフィードバックゲイン行列Kを計算する(ステップS274)。
次に、ステップS275において、フィードバックゲイン行列Kの値が収束したか否かを判断する。この判断の結果、収束していない場合にはステップS273に戻り、収束するまでチャンドラセカール型の差分方程式の解K(k),R(k) からフィードバックゲイン行列Kを求める演算を式(46)によって繰り返し行う。
ステップS275の判断の結果、フィードバックゲイン行列Kの値が収束した場合にはステップS276に進み、フィードバックゲイン行列Kの値を用いて式(29) により操作ベクトルu(k) を求め、最適制御を実行する。
Figure 0004846376
本実施形態のように、チャンドラセカール型の差分方程式(45)を用いた場合には、フィードバックゲイン行列Kを計算する際の繰り返し演算の反復1回当たりの演算量を格段に減らすことができ、フィードバックゲイン行列Kの計算を更に高速化することができる。
次に示す表4は、チャンドラセカール型の差分方程式(45)を用いる方法と用いない方法とのゲイン計算の比較例を示すものである。なお、この表4も、表3と同様に入力数が18、状態数が393、出力数が17のシステムにおけるフィードバックゲイン行列Kの計算例を示している。
Figure 0004846376
この表4から明らかなように、上記式(45)の導入によって、単に出力方程式(38)を導入しただけの場合に比べてフィードバックゲイン行列Kの計算を約100倍(出力方程式(38)を全く用いない場合の300倍)高速にすることができている。また、このフィードバックゲイン行列Kの計算の際に現れる変数のサイズは、最大でも接続行列Bおよび出力行列Cのサイズであるので、メモリの使用容量も少なくて済む(式(45)を導入しない場合に現れる変数の最大サイズは遷移行列Aのサイズとなる)。
なお、本実施形態では、ペトリネットモデルを例に挙げて説明したが、その他のグラフモデル、例えば有向グラフや無向グラフに本発明を適用することも可能である。例えば有向グラフでは、上述したペトリネットモデルにおけるプレースは点で表現され、トランジションは矢印付きの線で表現される。矢印付きの線は、点から点へ製品すなわちトークンを移動させる移動操作端であり、移動路の役目をする。また、矢印は、線から点、或いは、点から線へトークンが移動する方向を示すものである。
また、ペトリネットモデルでは、各工程内に設けられている仮想プレースに初期設定された容量設定用仮想トークンの数により、各処理工程で同時に処理できる製品の数を制限していたが、通常のグラフモデルでは仮想プレースは存在せず、各工程内における処理容量をソフトウェア上で制御される。
このような特徴を有する通常のグラフモデルに本発明を適用する場合も、一連の動作は上述したペトリネットモデルにおける動作と同様であり、ここでは、その詳細な説明は省略する。
図18は、上述した生産・物流スケジュール作成装置を作成可能なコンピュータシステムの一例を示すブロック図である。同図において、1200はコンピュータPCである。PC1200は、CPU1201を備え、ROM1202又はハードディスク(HD)1211に記憶された、或いはフレキシブルディスクドライブ(FD)1212より供給されるデバイス制御ソフトウェアを実行し、システムバス1204に接続される各デバイスを総括的に制御する。
上記PC1200のCPU1201、ROM1202又はハードディスク(HD)1211に記憶されたプログラムにより、本実施形態の各機能手段が構成される。
1203はRAMで、CPU1201の主メモリ、ワークエリア等として機能する。1205はキーボードコントローラ(KBC)であり、キーボード(KB)1209から入力される信号をシステム本体内に入力する制御を行う。1206は表示コントローラ(CRTC)であり、表示装置(CRT)1210上の表示制御を行う。1207はディスクコントローラ(DKC)で、ブートプログラム(起動プログラム:パソコンのハードやソフトの実行(動作)を開始するプログラム)、複数のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイルそしてネットワーク管理プログラム等を記憶するハードディスク(HD)1211、及びフレキシブルディスク(FD)1212とのアクセスを制御する。
1208はネットワークインタフェースカード(NIC)で、LAN1220を介して、ネットワークプリンタ、他のネットワーク機器、或いは他のPCと双方向のデータのやり取りを行う。
なお、本発明は複数の機器から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
また、本発明の目的は前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU若しくはMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
更に、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
以上述べた実施形態では、シミュレーション結果から上記生産・物流プロセスにおける生産・物流スケジュールを作成する例を説明したが、シミュレーション結果に基づいて生産・物流プロセスの制御を行う場合にも本発明は適用される。
本発明を適用した生産・物流スケジュール作成装置の概略構成を説明するブロック図である。 第1の実施形態における生産・物流スケジュール作成の処理手順を示すフローチャートである。 モデル構築の処理手順を示すフローチャートである。 制御則構築の処理手順を示すフローチャートである。 シミュレーションの処理手順を示すフローチャートである。 ペトリネットモデルの例を示す図である。 第2の実施形態における生産・物流スケジュール作成の処理手順を示すフローチャートである。 モデル構築の処理手順を示すフローチャートである。 制御則構築の処理手順を示すフローチャートである。 シミュレーションの処理手順を示すフローチャートである。 第3の実施形態における生産・物流スケジュール作成の処理手順を示すフローチャートである。 モデル構築の処理手順を示すフローチャートである。 制御則構築の処理手順を示すフローチャートである。 シミュレーションの処理手順を示すフローチャートである。 ペトリネットモデルの例を示す図である。 ペトリネットモデルの例を示す図である。 製品種No.1に対するペトリネットモデルの例を示す図である。 本発明の生産・物流スケジュール作成装置を構成可能なコンピュータシステムの一例を示すブロック図である。 単一品種の製品を扱う物流制御モデルの一例を示す図である。 不可制御のペトリネットモデルの一例を示す図である。 従来の制御法を適用して製造プロセスの物流モデルの各製造工程を整数プレースで表したペトリネットモデルの例を示す図である。 本発明による製造プロセスにおける物流制御方法の全体の処理手順を使用する計算式と共に示すフローチャートである。 本発明を適用して制御を行った結果の例を示す図である。 各プレースにおける状態と各トランジションにおける操作ベクトルとを各処理時間ステップごとに示す図である。 従来の制御法を適用して制御を行った結果の例を示す図である。 出力方程式を導入した場合の本発明による製造プロセスにおける物流制御装置の要部構成を示すブロック図である。 ペトリネットモデルを用いた従来の製造プロセスにおける物流制御方法の全体の処理手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 シミュレーション制御部
1a 物流シミュレータ
1b 最適制御方策部
2 最適化計算装置
3 数式モデル

Claims (12)

  1. 生産・物流プロセスの工程内製品仕掛状態を表す物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬する離散系のシミュレータであって、スケジュールを作成するのに考慮すべき物流状態と物流制約とを全て記載する生産・物流シミュレータと、
    上記生産・物流プロセスの物流状態と物流制約とのうち、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された状態方程式を用いた数式モデルを保持する数式モデル保持装置と、
    上記数式モデル所定の評価関数入力して最適化計算処理を行って上記生産・物流シミュレータに対する、上記製品の移動の指示である物流指示を算出して出力する最適化計算装置とを有し、
    上記最適化計算処理により
    物流状態である状態ベクトルに掛け合わせることによって物流指示である操作ベクトルとなる値であるフィードバックゲインを算出し、
    次に、上記算出したフィードバックゲインと状態ベクトルとを用いて操作ベクトルを算出して上記生産・物流シミュレータに与えて、シミュレーションを進め、新たな状態ベクトルを得て、この新たな状態ベクトルと上記算出したフィードバックゲインをもとに新たな操作ベクトルを算出するという処理を、予め設定されたスケジュール作成の対象期間だけ繰り返すことにより得られたシミュレーション結果、すなわち該スケジュール作成の対象期間における一連の物流状態からスケジュールを作成する生産・物流スケジュール作成装置であって、
    上記数式モデル保持装置で最適化計算処理の時間に比例したきざみ時間遅れに従って表される接続行列と遷移行列とを用いた、下記の式(1)
    M(k+1)=A・M(k)十B・u(k) (1)
    (但し、Aは遷移行列、Bは接続行列、M(k)、M(k+1)は、それぞれ、時刻k、k+1における状態ベクトル、u(k)は時刻kにおける操作ベクトル)
    で定義される状態方程式を求めるとともに、上記求めた状態方程式と、設定した評価行列および、前記状態ベクトルの取るべき値の目標値であって、下記の式(24)
    Mr =A・Mr (24)
    (但し、Aは遷移行列、M r は目標状態量)の条件を満たす目標状態量によって表され、下記の式(30)で定義される有限加算ステップの評価関数である上記所定の評価関数とから最適化計算装置でフィードバックゲイン行列の収束値として記フィードバックゲインを求めておいて、
    上記求めたフィードバックゲインと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルとから、製品の移動の指示である操作ベクトルを求めたのち、上記操作ベクトルの中の正値で大きい操作量が得られた順に、上記生産・物流シミュレータによるシミュレーション上の制約を満足して移動可能であるかどうかを調べ、移動可能な数だけ製品を移動させるようにして生産・物流スケジュールを作成するようにしたことを特徴とする生産・物流スケジュール作成装置。
    Figure 0004846376
  2. 上記フィードバックゲイン行列の収束値を、上記状態方程式と上記評価関数とからリカッチ差分方程式を用いて求めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の生産・物流スケジュール作成装置。
  3. 上記フィードバックゲイン行列の収束値を、上記数式モデルの可観測性を満たすように設定した出力方程式と上記評価関数とからチャンドラセカール型の差分方程式を用いて求めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の生産・物流スケジュール作成装置。
  4. 上記離散系の生産・物流シミュレータはペトリネットモデルを用いてシミュレータを構築するものであり、上記状態方程式はペトリネットモデルの状態方程式であることを特徴とする請求項1に記載の生産・物流スケジュール作成装置。
  5. 上記離散系の生産・物流シミュレータはペトリネットモデルを用いてシミュレータを構築するものであり、上記状態方程式は処理時間に比例したきざみ時間遅れに従って表わされる接続行列と遷移行列とを用いた状態方程式であることを特徴とする請求項1に記載の生産・物流スケジュール作成装置。
  6. 上記最適化計算処理は線形二次制御を利用するものであり、所定の評価行列を用いて表わされる評価関数を最小とするように上記フィードバックゲイン行列の収束値を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生産・物流スケジュール作成装置。
  7. 生産・物流プロセスの工程内製品仕掛状態を表す物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬する離散系のシミュレータであって、スケジュールを作成するのに考慮すべき物流状態と物流制約とを全て記載する生産・物流シミュレータと、
    上記生産・物流プロセスの物流状態と物流制約とのうち、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された状態方程式を用いた数式モデルを保持する数式モデル保持装置と、
    上記数式モデル所定の評価関数入力して最適化計算処理を行って上記生産・物流シミュレータに対する、上記製品の移動の指示である物流指示を算出して出力する最適化計算装置とを有し、
    上記最適化計算処理により
    物流状態である状態ベクトルに掛け合わせることによって物流指示である操作ベクトルとなる値であるフィードバックゲインを算出し、
    次に、上記算出したフィードバックゲインと状態ベクトルとを用いて操作ベクトルを算出して上記生産・物流シミュレータに与えて、シミュレーションを進め、新たな状態ベクトルを得て、この新たな状態ベクトルと上記算出したフィードバックゲインをもとに新たな操作ベクトルを算出するという処理を、予め設定されたスケジュール作成の対象期間だけ繰り返すことにより得られたシミュレーション結果なわち該スケジュール作成の対象期間における一連の物流状態から上記生産・物流プロセスの制御を行う際に、
    上記最適化計算処理の時間に比例したきざみ時間遅れに従って表される接続行列と遷移行列とを用いた、下記の式(1)
    M(k+1)=A・M(k)十B・u(k) (1)
    (但し、Aは遷移行列、Bは接続行列、M(k)、M(k+1)は、それぞれ、時刻k、k+1における状態ベクトル、u(k)は時刻kにおける操作ベクトル)
    で定義される状態方程式を求めるとともに、上記求めた状態方程式と、設定した評価行列および、前記状態ベクトルの取るべき値の目標値であって、下記の式(24)
    Mr =A・Mr (24)
    (但し、Aは遷移行列、Mrは目標状態量)の条件を満たす目標状態量によって表され、下記の式(30)で定義される有限加算ステップの評価関数である上記所定の評価関数とから最適化計算装置でフィードバックゲイン行列の収束値として記フィードバックゲインを求めておいて、
    上記求めたフィードバックゲインと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルとから、製品の移動の指示である操作ベクトルを求めたのち、上記操作ベクトルの中の正値で大きい操作量が得られた順に、上記生産・物流シミュレータによるシミュレーション上の制約を満足して移動可能であるかどうかを調べ、移動可能な数だけ製品を移動させるようにして生産・物流プロセスの制御を行うことを特徴とする生産・物流プロセス制御装置。
    Figure 0004846376
  8. 生産・物流プロセスの工程内製品仕掛状態を表す物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬する離散系のシミュレータであって、スケジュールを作成するのに考慮すべき物流状態と物流制約とを全て記載する生産・物流シミュレータと、
    上記生産・物流プロセスの物流状態と物流制約とのうち、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された状態方程式を用いた数式モデルを保持する数式モデル保持装置と、
    上記数式モデル所定の評価関数入力して最適化計算処理を行って上記生産・物流シミュレータに対する、上記製品の移動の指示である物流指示を算出して出力する最適化計算装置とを有する生産・物流スケジュール作成装置により生産・物流スケジュールを作成する方法であって、
    上記最適化計算処理により
    物流状態である状態ベクトルに掛け合わせることによって物流指示である操作ベクトルとなる値であるフィードバックゲインを算出し、
    次に、上記算出したフィードバックゲインと状態ベクトルとを用いて操作ベクトルを算出して上記生産・物流シミュレータに与えて、シミュレーションを進め、新たな状態ベクトルを得て、この新たな状態ベクトルと上記算出したフィードバックゲインをもとに新たな操作ベクトルを算出するという処理を、予め設定されたスケジュール作成の対象期間だけ繰り返すことにより得られたシミュレーション結果、すなわち該スケジュール作成の対象期間における一連の物流状態から上記生産・物流スケジュールを作成する際に、
    上記最適化計算処理の時間に比例したきざみ時間遅れに従って表される接続行列と遷移行列とを用いた、下記の式(1)
    M(k+1)=A・M(k)十B・u(k) (1)
    (但し、Aは遷移行列、Bは接続行列、M(k)、M(k+1)は、それぞれ、時刻k、k+1における状態ベクトル、u(k)は時刻kにおける操作ベクトル)
    で定義される状態方程式を求めるとともに、上記求めた状態方程式と、設定した評価行列および、前記状態ベクトルの取るべき値の目標値であって、下記の式(24)
    Mr =A・Mr (24)
    (但し、Aは遷移行列、M r は目標状態量)の条件を満たす目標状態量によって表され、下記の式(30)で定義される有限加算ステップの評価関数である上記所定の評価関数とからフィードバックゲイン行列の収束値として記フィードバックゲインを求めておいて、
    上記求めたフィードバックゲインと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルとから、製品の移動の指示である操作ベクトルを求めたのち、上記操作ベクトルの中の正値で大きい操作量が得られた順に、上記生産・物流シミュレータによるシミュレーション上の制約を満足して移動可能であるかどうかを調べ、移動可能な数だけ製品を移動させるようにして上記生産・物流プロセスにおける生産・物流スケジュールを作成するようにしたことを特徴とする生産・物流スケジュール作成方法。
    Figure 0004846376
  9. 生産・物流プロセスの工程内製品仕掛状態を表す物流状態と物流制約を表現した生産・物流プロセスを模擬する離散系のシミュレータであって、スケジュールを作成するのに考慮すべき物流状態と物流制約とを全て記載する生産・物流シミュレータと、
    上記生産・物流プロセスの物流状態と物流制約とのうち、スケジュール作成に影響が大きい重要な部分のみを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された状態方程式を用いた数式モデルを保持する数式モデル保持装置と、
    上記数式モデル所定の評価関数入力して最適化計算処理を行って上記生産・物流シミュレータに対する、上記製品の移動の指示である物流指示を算出して出力する最適化計算装置とを有する生産・物流プロセス制御装置により生産・物流プロセスを制御する方法であって、
    上記最適化計算処理により
    物流状態である状態ベクトルに掛け合わせることによって物流指示である操作ベクトルとなる値であるフィードバックゲインを算出し、
    次に、上記算出したフィードバックゲインと状態ベクトルとを用いて操作ベクトルを算出して上記生産・物流シミュレータに与えて、シミュレーションを進め、新たな状態ベクトルを得て、この新たな状態ベクトルと上記算出したフィードバックゲインをもとに新たな操作ベクトルを算出するという処理を、予め設定されたスケジュール作成の対象期間だけ繰り返すことにより得られたシミュレーション結果、すなわち該スケジュール作成の対象期間における一連の物流状態から上記生産・物流プロセスにおけるスケジュールを作成する際に、
    上記最適化計算処理の時間に比例したきざみ時間遅れに従って表される接続行列と遷移行列とを用いた、下記の式(1)
    M(k+1)=A・M(k)十B・u(k) (1)
    (但し、Aは遷移行列、Bは接続行列、M(k)、M(k+1)は、それぞれ、時刻k、k+1における状態ベクトル、u(k)は時刻kにおける操作ベクトル)
    で定義される状態方程式を求めるとともに、上記求めた状態方程式と、設定した評価行列および、前記状態ベクトルの取るべき値の目標値であって、下記の式(24)
    Mr =A・Mr (24)
    (但し、Aは遷移行列、M r は目標状態量)の条件を満たす目標状態量によって表され、下記の式(30)で定義される有限加算ステップの評価関数である上記所定の評価関数とから最適化計算装置でフィードバックゲイン行列の収束値として記フィードバックゲインを求めておいて、
    上記求めたフィードバックゲインと工程内製品仕掛状態を表す状態ベクトルとから、製品の移動の指示である操作ベクトルを求めたのち、上記操作ベクトルの中の正値で大きい操作量が得られた順に、上記生産・物流シミュレータによるシミュレーション上の制約を満足して移動可能であるかどうかを調べ、移動可能な数だけ製品を移動させるようにして生産・物流プロセスの制御を行うようにしたことを特徴とする生産・物流プロセス制御方法。
    Figure 0004846376
  10. 請求項8に記載の生産・物流スケジュール作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
  11. 請求項9に記載の生産・物流プロセス制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
  12. 請求項10または11に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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