JP4846146B2 - 植物育成培地およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、浄水処理を行う場合に発生する浄水汚泥である浄水場発生土から製造する野菜や花卉等の植物育成培地およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
浄水場発生土の農業利用については、「浄水処理ケーキ:特性と農業利用上の問題点」日本土壌肥料学会編(博友社)に詳細に記載されている。浄水場発生土を植物育成培地として利用するために、次のような問題点が挙げられる。
1 浄水処理の過程で添加される、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム)によって、発生土中のアルミニウム含有量が著しく高くなり、浄水場発生土が著しいリン酸欠乏土壌となる。これは、土壌中の遊離アルミニウムがリン酸と容易に結合し、リン酸アルミニウムとなり、リン酸を不可給化するためである。
2 原水中の浮遊物質に含まれる天然由来のマンガンが、浄水場発生土中のマンガン含量を高める。
3 原水由来の有機物が含まれ、分解によって浄水場発生土およびそれから得られる培養土中の成分が変化する。
4 有機物が過剰に多い場合や原水中の窒素含有量が高い場合など、浄水場発生土中の窒素含有量が過剰となり、EC(電気伝導度)が高くなる。
5 雑草の種子や病原菌が混入する。
6 独特の臭気がある。
7 浄水場発生土の物理性に変動がある。
8 発生量に時期的変動がある。
【0003】
一方、一般的に、培養土を製造した場合、含水率が高い場合培養土中に含まれる有機物や肥料成分が微生物の活動等によって変化し、その結果培養土の電気伝導度や無機態窒素含有量が過剰に高くなるなどして、植物の成育を抑制する場合がある。植物の成育を抑制しないまでも、培養土製造後の成分変動の発生は、製品の品質安定上好ましくない。このような弊害が発生する培養土の含水率は一般に20%(w/w)以上である。
【0004】
このような変動を押さえることを目的として微生物の活動を抑制するために培養土を低温で保存する方法や乾燥して含水率を低下させる方法などがある。
浄水場発生土を乾燥して培養土として利用する方法が特開平7−222997号公報等に開示され、実用化されている。しかしながら、浄水場発生土を直接乾燥処理した場合、造粒しにくい、培養土として利用するときに潅水すると臭気が発生する、培養土として使用し始めてから有機物が分解しその結果植物の成育を阻害する、粒が硬く締まるために保水性が不足し植物の栽培に不適当となる等の問題がある。また、浄水場発生土を600〜1100℃の高温で焼成し、得られた焼成物を粉砕し、他の原料と混合造粒する方法が特開平7−264933号公報に開示されているが、大がかりな焼成設備が必要なだけでなく、燃料等製造コストが多くかかるといった問題点がある。
【0005】
浄水場発生土の発酵を促進する発酵槽を設けた方法(特願2001−116834号公報)があるが、野菜や花卉の育苗に適した性状の培地を製造するためにはさらに条件を特定する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、浄水場発生土を植物育成培地の原料として用いるには多くの問題点があり、この問題点を解決するために、種々の方法が提案されている。しかしながら、前述した製造方法では、工業的に大量の植物育成培地を安定して製造することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、浄水場発生土が有する有機物による弊害、理化学性の変動、臭気、雑草や植物病原菌の混入の問題を発生することなく、野菜や花卉の育苗に適した物理性を有し、植物の生育が良好な培地とその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、堆積・発酵処理した浄水場発生土と有機質資材を、撹拌型造粒法により混練、造粒し、次いで整粒、乾燥して得られる植物育成培地である。ここで、浄水場発生土は、その土壌塊の支持強度が20Kg/cm2以下の硬度を有するものが好ましい。また、浄水場発生土の含水率は40%(w/w)以上60%(w/w)以下が好ましい。有機質資材はピートモス、ヤシガラ解砕物およびもみ殻解砕物から選ばれる少なくとも1つが好ましい。浄水場発生土と有機質資材の使用量は、両者の合計量に対して、それぞれ95〜50%(v/v)および5〜50%(v/v)が好ましい。
更に本発明は、堆積・発酵処理した浄水場発生土と有機質資材を、流動機能と解砕機能を有する撹拌型造粒装置を用いて撹拌型造粒法により混練、造粒し、次いで整粒、乾燥することからなる植物育成培地の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、浄水場発生土を主原料として用いる。本発明で用いる浄水場発生土は、浄水処理過程で得られる沈殿物を無薬注・加圧脱水処理により脱水することによって得られるものが好ましい。
本発明では、浄水場発生土について堆積・発酵処理を行う。堆積・発酵処理を行うことにより、特有の臭気がなくなる。また、浄水場発生土中に含まれる有機物が分解することにより、含有する有機物由来の窒素の多くが無機化し安定する。また、発酵の過程で腐植が生成し、その結果、土壌の粘性が増して造粒性がよくなる。堆積・発酵処理は家畜ふん尿や食品廃棄物等を堆肥化するのに用いられる通常の方法で行えばよく、密閉した発酵容器を加温しながら発酵させる方法や、発酵槽を設けて通気、撹拌を行う方法、一定規模以上の体積を野積みしておく方法等が例示される。
【0010】
本発明で用いる浄水場発生土は、適度な硬さを有し、且つ適度な含水率を有するものが好ましい。具体的には、硬度については、土壌硬度計山中式平面型(藤原製作所)で浄水場発生土の土壌塊が崩れたときの測定値が好ましくは20mm以下、即ち支持強度20Kg/cm2以下、更に好ましくは10mm以下、即ち支持強度は10Kg/cm2以下である。含水率については、好ましくは40%(w/w)以上60%(w/w)以下、更に好ましくは45%(w/w)以上55%(w/w)以下である。ここでいう含水率とは、湿量基準含水率のことであり、湿量基準含水率u’=(Wu−Wo)/Wuで求められる。ここで、Wuは、測定時の重さであり、Woは全乾時の重さである。浄水場発生土の硬度と含水率の関係は概ね負の比例関係にある。硬度が20mmを越える場合、即ち支持強度20Kg/cm2を越える場合、あるいは含水率が40%(w/w)未満の場合は、土塊が堅く締まっているため、後述する有機質資材が浄水場発生土塊の中に十分練り込まれない。また、含水率が60%(w/w)より高い場合は撹拌造粒工程において流動性、造粒性が著しく悪くなるので好ましくない。
浄水場発生土の粒径は、製造しようとする植物育成培地の粒径以下に分布することが望ましい。例えば、粒径4mm以下の植物育成培地を製造しようとする場合には、目開き4mmの篩機に通すなどして浄水場発生土の最大粒径を4mmにしておくことが好ましい。粒径が大きな塊が多く分布する場合、所望の粒径より大きい粒径の培地が発生するため製造効率が低下するだけでなく、製品中に占める原材料の割合を一定に制御するのが困難となる。
【0011】
本発明では、浄水場発生土と共に有機質資材を用いる。浄水場発生土と有機質資材の使用量は、両者の合計量に対して、それぞれ95〜50%(v/v)および5〜50%(v/v)が好ましい。本発明で用いられる有機質資材は形状が均一な植物由来の粒・粉状物であればとくに制限はなく、好ましくは粒径が5mm以下、更に好ましくは3mm以下に分布することが望ましい。本発明で用いられる有機質資材は難分解性有機質資材が好ましい。ここで言う難分解性とは、一般的に野菜や花卉の育苗用の培地として利用する2ケ月程度の期間に急激な分解を発生しない程度の分解性を指す。一般に流通している資材としてピートモス、ヤシ解砕物、もみ殻解砕物などが例示される。有機質資材の粒径は製造しようとする植物育成培地の粒径以下に分布させるのが望ましい。例えば、粒径4mm以下の植物育成培地を製造しようとする場合、目開き4mmの篩機に通すなどして有機質資材の最大粒径を4mmにしておくことが望ましく、篩いオーバーは粉砕機で粉砕してから用いるのが望ましい。
【0012】
本発明で用いるピートモスは保水性の向上を目的とした土壌改良材として政令指定されており、市販されているものであればいずれのものでもよい。
【0013】
本発明で用いるヤシガラ解砕物は、ヤシの果肉部や木質部の組織を断裁して得られるもので、特公昭63−52848号公報、特公平6−23号公報、特開平1−312934号公報等に記載の方法によりヤシ解砕物単独もしくは炭、肥料などを加えることによって、保水性、透水性、保肥性のバランスのとれた植物育成培地として利用されており、また、主に保水性の改善、保肥力の改善を目的とした土壌改良材として一般に市販されている。ヤシガラ解砕物は断裁の程度により、粉状の細かいものから直径3cm程度の粒径のものがある。本発明で用いるヤシガラ解砕物は粒径4mm以下のものが望ましい。
【0014】
本発明で用いるもみ殻解砕物は米を脱穀した際に得られる否可食部の繊維質資材を指す。もみ殻は容易に崩れない構造を有しているため、培地に添加することで、前述の効果のうちとくに培地の気相率が高く、透水性が向上された培地を得ることができる。用いるもみ殻は粉砕等の加工を行い、粒径を細かくしたものがよい。
【0015】
本発明では、肥料成分としてリン酸肥料を添加するのが好ましい。 浄水場発生土は浄水処理の過程で添加されるアルミニウム化合物の影響でリン酸吸収係数が高いため、リン酸肥料の添加量が少ないとリン酸欠乏を引き起こす。また、リン酸添加量が多いと土壌中の塩類濃度を高めて根に障害を及ぼしたり、リン酸肥料の副成分であるカルシウムやマグネシウム等が過剰となり培地中のミネラルバランスを損なったりする。本発明のリン酸肥料の種類については、含有リン酸成分のうち水溶性リン酸を除くク溶性リン酸が50%(w/w)以上であるリン酸肥料を用いるのが望ましい。具体的には熔燐、リンスター、重焼リン等が例示される。本発明で添加するリン酸肥料の添加量は、得られる培地1リットルあたりリン酸成分として1500mg以上4000mg以下、好ましくは2000mg以上、3000mg以下となる量が望ましい。
リン酸以外の多量肥料成分である窒素及び加里については、栽培する植物の種類に応じて適宜添加するのが好ましい。一般的な添加量は、窒素肥料を窒素成分で培地1リットルあたり50〜200mg、加里肥料を加里成分で培地1リットルあたり50〜100mgとするとよい。
本発明では、これらの肥料成分以外にも、植物育成培地に通常使用されている各種の土壌改良材等を必要に応じて加えてもよい
【0016】
本発明では、上記した浄水場発生土と有機質資材および必要に応じてリン酸肥料、窒素肥料、加里肥料等を計量して調製した各資材を撹拌型造粒法により造粒する。本発明の撹拌型造粒法は、槽内に装入された対象資材に加液、あるいは結合剤を添加し、種々の形状をした撹拌羽根を回転させることにより剪断・転動・圧密作用などを加えて目的とする造粒物を得る方法である。
本発明で用いる撹拌型造粒装置は、主軸の撹拌羽根の回転等により対象物質を流動させる流動機能に加えて、高速で回転する副軸による解砕機能を有することが望ましい。また、本発明で用いる撹拌型造粒装置は対象資材に対して同様の流動機能と解砕機能を発揮するものならとくに制限はなく、例えば、流動作用をもたらすために固定した容器内の撹拌羽根を回転させるのではなく、容器そのものが回転する方法を採用した装置でもよい。
【0017】
本発明では、容器内に装入した資材を流動させることよって各々の資材を均一に混合し、粒子の相互付着により雪だるま式に凝集させ粒を形成させる。装入する資材は造粒に適した含水率に予め調整するのが好ましい。各資材の含水率は混合する前に予め測定しておき、その混合割合から平均含水率を計算してもよいし、造粒装置に装入する前あるいは装入してすぐに予備的に混合し、その混合物の含水率を赤外線水分計等を用いて測定してもよい。測定した含水率に応じて造粒に最適な含水率になるように水を加える。造粒に最適な含水率は原材料組成、造粒装置などによって異なるが、概ね45%(w/w)以上55%(w/w)以下である。
本発明で用いる浄水場発生土は堆積・発酵処理することにより適度な粘性を有するようになるため、バインダーの添加は行わなくてもよい。
【0018】
本発明の撹拌型造粒法では、さらに解砕機能を有するチョッパーあるいはアジテーターと呼ばれる副軸回転刃の回転により、浄水場発生土塊中に有機質資材が捏和される。このとき、浄水場発生土の硬さが20Kg/cm2を越える場合あるいは含水率40%(w/w)未満の場合は浄水場発生土塊中に有機質資材が十分捏和することが困難になる。また、浄水場発生土を解砕、捏和するために副軸の回転を高めるなどすると、浄水場発生土と有機質資材が過剰に粉砕されてから再造粒されるため、歩留り低下や、得られた造粒物が硬く締まり保水性が低下するとの問題が発生する。
【0019】
本発明では、撹拌型造粒法により得られた造粒物を次に整粒、乾燥する。整粒は得られた造粒物を転動させ、粒表面をなめらかにする工程で、高速で回転する円盤状プレート上で造粒物を転動させる方法や、造粒物を入れたドラムを回転させる方法などが例示される。ドラム式のロータリードライヤーで乾燥させる方法では、整粒と乾燥が同時に行われる。乾燥は整粒された造粒物の形状を著しく破壊することなく乾燥できればいずれの方法でもよく、回転型ロータリードライヤー、横型流動乾燥機や静置型通風乾燥機などが用いられる。但し、造粒物が著しく動き、粒同士が互いに激しく接触する方法は、微塵の発生や粒が硬く締まり過ぎる等の不具合が起きるため好ましくない。
【0020】
かくして、浄水場発生土塊中に有機質資材が捏和された土壌塊からなる本発明の植物育成培地が得られる。かかる本発明の植物育成培地は、浄水場発生土が有する有機物による弊害、理化学性の変動、臭気、雑草や植物病原菌の混入の問題を発生することなく、野菜や花卉の育苗に適した物理性を有し、植物の生育が良好な培地である。
【0021】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
浄水場発生土の堆積・発酵処理の有無、硬度及び含水率の影響
(1)方法
浄水場発生土として、表1に示すように、堆積・発酵処理が十分進んだ(コンポスト化あり)硬さの異なる浄水場発生土と脱水直後の堆積・発酵処理を行わない(コンポスト化なし)浄水場発生土を用い、また、含水率の異なる各種の浄水場発生土を用いた。浄水場発生土はすべて4mmの篩いを通過したものを使用した。副資材は、難分解性有機質資材としてピートモス30%(v/v)、リン酸肥料としてリンスターを成分で2500mg/lを用いた。
これらの各資材を撹拌型造粒機に装入して造粒を行った。撹拌型造粒機はチョッパー付きの撹拌造粒機(新東工業製)を用い、処理後の造粒物をロータリードライヤーで熱風を吹き込みながら1分間整粒処理し、静置型通風乾燥機で90℃、1時間乾燥処理を行った。得られた培地の造粒程度および保水性を調べた。また、培地でトマトを生育して生育状態(地上部及び地下部のトマト植物体の一株当たりの乾燥重量)を調べた。更に培地の根鉢崩壊程度を調べた。
【0022】
(2)結果
結果を表1に示した。なお、表1において保水性は、良++、可+、不可−で示した。また、根鉢については、5cmの高さから落下させたときの根鉢の崩壊程度を、完全に崩壊する場合には1、完全崩壊と1/2崩壊の中間を2、1/2崩壊を3、1/2崩壊とほとんど崩壊しないの中間を4、ほとんど崩壊を5として示した(以下の表2とよび3も同様である)。
表1から明らかな通り、堆積・発酵処理しない(コンポスト化なし)浄水場発生土では造粒がやや不十分で微塵が多く発生した。また得られる培地の保水性が小さく、トマトを生育した時のトマト地下部の生育が抑制され、根鉢の形成が悪かった。堆積・発酵処理した(コンポスト化)浄水場発生土を用いた場合、硬度1.1Kg/cm2、含水率64.1(w/w)%の浄水場発生土以外は造粒性も良好で、トマトの成育も良好だった。硬度が低かった浄水場発生土は粒径の荒い造粒物となり、保水性が著しく悪く、トマトの根の生育も悪かった。その他の区では、硬度が22.1Kg/cm2と高かったものでは地下部の生育がやや悪く、根鉢の形成が劣った。
以上の結果から、原料として用いる浄水場発生土は堆積・発酵処理されており、硬度(剪断抵抗)が4から20Kg/cm2程度以下の適度な硬さを有するものが適当であることが分かった。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例2
有機質資材の種類と割合の影響
(1)浄水場発生土として、表2に示すように、堆積・発酵処理が十分進んだ(コンポスト化あり)硬さ7.3Kg/cm2、含水率45%(w/w)の浄水場発生土であって、すべて4mmの篩いを通過した浄水場発生土を使用した。有機質資材として、ピートモス、ヤシガラ解砕物(4mmアンダー)、もみ殻解砕物(4mmアンダー)、パーライト(4mmアンダー)を供試し、表2に示すように、それぞれの有機質資材について使用量が0、5,10、30、50%(v/v)である区を設けた。いずれもリン酸肥料としてリンスターを成分で2500mg/l添加した。
これらの各資材を撹拌型造粒機に装入して造粒を行った。撹拌型造粒機はチョッパー付きの撹拌造粒機(新東工業製)を用い、処理後の造粒物をロータリードライヤーで熱風を吹き込みながら1分間整粒処理し、静置型通風乾燥機で90℃、1時間乾燥処理を行った。得られた培地の造粒程度、比重および保水性を調べた。また、培地でトマトを生育して生育状態(地上部及び地下部のトマト植物体の一株当たりの乾燥重量)を調べた。更に培地の根鉢崩壊程度を調べた。
【0025】
(2)結果
結果を表2に示した。造粒程度は全て良好であった。比重は有機質資材の添加量が多いほど小さくなる傾向が見られたが、ピートモス、パーライトが比重低下に及ぼす影響は比較的小さかった。ピートモスは繊維が柔らかいため混練されたときに潰れてしまったこと、パーライトは高速で回転するチョッパーにより細かく粉砕されて気相が小さくなったことが原因と考えられた。保水性は有機質資材無添加では45g/100mlと著しく小さくトマトの生育も悪かった。また、いずれもの有機質資材も添加量が多いほど得られる培地の保水性が高くなったが、5%(v/v)添加でも大きな向上は認められなかった。トマトの生育については、有機質資材の添加量が大きいほど地上部がやや小さくなる傾向が認められたが、これは浄水場発生土由来の窒素成分が相対的に低くなったことに起因する。これに対して根の乾物重はパーライトを除く有機質資材の添加量が多いほど大きくなったが、30%(v/v)以上では大きな差はなかった。パーライト添加区はいずれも地下部の生育がよくなかった。
以上の結果から、有機質資材は植物由来の有機質資材であるピートモス、ヤシガラ解砕物、もみ殻解砕物がよく、その添加量は、浄水場発生土と有機質資材の合計量に対して10%(v/v)から50%(v/v)が適当であることが分かった。
【0026】
【表2】
【0027】
実施例3
造粒方法の違いによる影響
(1)方法
表3に示すように、浄水場発生土として、堆積・発酵処理が十分進んだ(コンポスト化あり)硬さ7.3Kg/cm2、含水率45%(w/w)の浄水場発生土を用い、有機質資材としてピートモス30%(v/v)を用い、リン酸肥料としてリンスターを成分で2500mg/L添加した。
これらの各資材を造粒機に装入して造粒を行った。表3に示すように、造粒機はチョッパー付きの撹拌造粒機(撹拌羽根が回転して内容物を流動させるタイプ)、逆流式撹拌造粒機(容器そのものが回転することで内容物を流動させるタイプ)を用いた。比較例として、チョッパーなしの撹拌造粒機、ペレタイザー(押し出し造粒法)、パン造粒機(転動造粒法)を用いた。整粒機としてロータリードライヤーを用い、熱風を吹き込みながら処理する時間を1分から30分まで4段階設定した。30分処理するとほぼ絶乾となったが、それ以外の区ではさらに静置型通風乾燥機で90℃1時間処理し完全に乾燥させた。
得られた培地の造粒程度、比重、保水性および粒度分布を調べた。また、培地でトマトを生育して生育状態(地上部および地下部のトマト植物体の一株当たりの乾燥重量並びにそれらの割合(T(地上部)/R(地下部)))を調べた。更に培地の根鉢崩壊程度を調べた。
【0028】
(2)結果
結果を表3に示した。いずれの造粒法でも造粒加工は可能であった。撹拌羽根回転式の撹拌造粒機でチョッパーを止めて造粒したものとパン造粒したものは比重が他区に比べて小さかった。しかし、大きな粒径に偏って分布する傾向があり、その結果、保水性が小さかった。同様に粒径がほとんど揃うペレタイザー処理したものも処理の過程で強度の圧縮がかかることもあり、保水性が著しく小さかった。撹拌造粒したものは60(g/100ml)以上と高かったが、ロータリードライヤーで長時間した場合保水性がやや劣った。トマトの生育のうちとくに地下部の生育は保水性が高いほど大きくなり、これらの区では根鉢の形成も良好であった。
【0029】
【表3】
【0030】
【発明の効果】
本発明により、浄水場発生土が有する有機物による弊害、理化学性の変動、臭気、雑草や植物病原菌の混入の問題を発生することなく、野菜や花卉の育苗に適した物理性を有し、植物の生育が良好な培地を提供することができる。
Claims (6)
- 堆積・発酵処理した浄水場発生土と有機質資材を、撹拌型造粒法により混練、造粒し、次いで整粒、乾燥して得られる植物育成培地。
- 浄水場発生土は、その土壌塊の支持強度が20Kg/cm2以下の硬度を有する請求項1記載の植物育成培地。
- 浄水場発生土の含水率が40%(w/w)以上60%(w/w)以下である請求項1または2記載の植物育成培地。
- 有機質資材がピートモス、ヤシガラ解砕物およびもみ殻解砕物から選ばれる少なくとも1つである請求項1から3のいずれかに記載の植物育成培地。
- 浄水場発生土と有機質資材の使用量は、両者の合計量に対して、それぞれ95〜50%(v/v)および5〜50%(v/v)である請求項1から4のいずれかに記載の植物育成培地。
- 堆積・発酵処理した浄水場発生土と有機質資材を、流動機能と解砕機能を有する撹拌型造粒装置を用いて撹拌型造粒法により混練、造粒し、次いで整粒、乾燥することからなる植物育成培地の製造方法。
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