JP4843968B2 - 歯車群を備えた装置、歯車装置、及び歯車装置の設計方法 - Google Patents
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ここで、一般には、上記固有振動数は停止状態における固有振動数である。また、上記一対の歯車からなる歯車対(歯車群)は、モータによって駆動されて回転する。
すなわち、歯車群を構成する各歯車の固有振動数を互いに異なる値となるように設計しても、噛合部を構成する歯車群の固有振動数とモータの振動周波数とが一致すると、歯車の噛合部で発生する振動・騒音に悪影響が発生するという課題がある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、歯車の噛合部における振動・騒音をより低減可能にすることを課題としている。
さらに、噛合部を構成する歯車群の固有振動数は、歯車作動状態において、(1)歯車の回転に伴い変動すること、(2)歯車に加わる駆動トルクの大きさにより変動すること、を確認し、歯車と原動機の相互の固有振動数を所定の離間周波数幅だけずらして歯車と原動機の相互の固有振動数が一致しないように設定する際に、この2つの変動を考慮しなければならないことを見出した。
上記歯車群の固有振動数として、想定される使用条件での歯車作動状態によって変動する歯車群の固有振動数と、前記第一の連結部品及び前記第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数とを一致させないようにしたものである。
なお、上記歯車群の噛合部は、一対の歯車で構成される場合もあるし、3個以上の歯車が噛合することで構成される場合もある。
また、一つの歯車装置内に複数の歯車群が有る場合もある。
本実施形態では、少なくとも2つの歯車が噛合してなる歯車群を備えた装置として、車両のフロントガラス用のワイパを駆動する駆動装置を例示する。
この駆動装置を備えたワイパシステム例は、図1に示すように、駆動装置であるモータユニット3がワイパフレーム4に搭載され、該ワイパフレーム4が複数個のゴムマウントを介して車体に支持される。そして、モータユニット3からのトルクがワイパアーム5に伝達されることで当該ワイパアーム5が往復運動をしてフロントガラスを拭く。
また、上記歯車は、ウォーム歯車6を除いて樹脂製として、金属製歯車を採用した場合に比べて噛み合い時の衝撃荷重を低減して低騒音化を図っている。なお、この2段減速の歯車列2は、モータユニット3の小型化を主目的とする一方、音振的観点からは、異音の発生要因となるウォーム歯車6のスラスト方向変位を相殺する効果もある。
ここで、一般的に歯の撓みによって歯の剛性は変化し、特に変形量が大きい樹脂製歯車では剛性変化が顕著である。その結果、歯車列2で構成される歯車群の固有振動数(以下、単に、歯車列2の固有振動と呼ぶ場合もある。)は、歯の撓み量、すなわち歯車に負荷するトルクに応じて変化し易い。すなわち、停止時における歯車列2の固有振動数と、作動状態での歯車列2の固有振動数が異なり、上述のように変形量が大きな樹脂製歯車を一部若しくは全部に使用した歯車列2の固有振動数の歯車作動による変動幅が大きくなる。
停止時における歯車列2の固有振動数が、モータ1の振動周波数よりも大きいと判定した場合には、モータ1の振動周波数よりも所定の離間周波数幅だけ大きな値を歯車列2の固有振動数の最小値とする。そして、例えば、歯車列2に負荷されるトルクが通常使用状態における最小値のときの作動状態における歯車列2の固有振動数が、上記最小値若しくはそれ以上となるように、各歯車の諸元を設計する。
また、複数の歯車で構成される歯車列2の場合、対となるどちらかの歯車を金属製とすることで、固有振動数を大きくする事が出来る。この場合、どちらかは必ず樹脂製とすることで、金属製の弊害である歯打ち音などの懸念は発生しない。
また、各歯車間の固有振動数も異なるように設定する。
作動による歯車列2の固有振動数の変動幅を考慮しないで、他の連結部品との離間周波数幅を決めた場合、例えば、停止時における歯車列2の固有振動数とモータ1の振動周波数とが所定の離間周波数幅だけ異なるように歯車の諸元を設定した場合には、その離間周波数幅よりも歯車固有振動数の変動幅が大きい場合に、共振現象が発生して騒音・振動が大きくなる作動領域が存在するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、作動時における歯車列2の固有振動数の変動を考慮しているため、確実に騒音・振動を低減することができて、共振による騒音・振動が発生する作動領域を低減若しくは無くすことが可能となる。
なお、上記実施形態では、歯車列2に連結する連結部品として原動機であるモータ1のみを考慮しているが、ワイパアーム5(歯車列2とワイパアーム5とを連結するリンク部材を含む)の固有振動数も考慮して、上記作動時における歯車列2の固有振動数の最大値や最小値を決めても良い。ただし、歯車列2と直結するモータ1は、起振源であって、かつ、直接に歯車列2と連結するため、歯車列2の固有振動数に及ぼす影響が大きい。したがって、主として原動機であるモータ1と歯車列2との固有振動数を異なる値とすると、振動低減効果が大きい。
歯車列2の固有振動数が変動する主要因は、歯車に加わる回転トルクの大きさによる変動である。従って、上記のようにして決定すれば、歯車列2の固有振動数が変動することを考慮した最大値あるいは最小値を正確に決めることができる。
図6に示すように、カウンタ歯車7をテーパ付歯車とする。そして、図7に示すように、トルクセンサにてカウンタ歯車7に負荷されるトルクを検出し、そのトルクに応じてアクチュエータを作動してカウンタ歯車7を軸方向に変位させることで、ウォーム歯車6との噛み合いを変化、具体的には図7では前進させることで、噛み合いを強くする。噛み合いを強くするほど、図8のように、噛合部における接触力が大きくなり、その結果、歯車同士の接触状態が点接触から面接触状態に移行して接触剛性が大きくなり、もって固有振動数が上昇する。これによって、離間周波数幅を調整可能となる。上記離間周波数の調整に、ウォーム歯車6に負荷されるトルクを使用しているが、これに限定されない。例えば、モータ1のトルクや回転数に基づき調整してもよい。
また、上記実施形態では、歯車列2の諸元を調整して、歯車列2の固有振動数と連結部品の固有振動数若しくは振動周波数とが一致しないようにする場合を例示しているが、連結部品側の仕様を調整して、歯車列2の固有振動数と連結部品の固有振動数若しくは振動周波数とが一致しないようにしても良い。
モータ1の回転に伴う振動は、各歯車に伝達する過程で、歯車の歯数、伝達した歯車の数によって変化する。従って、減速機(歯車列2)における起振源周波数(モータ1の振動周波数)は、歯車例の位置によって異なり、複数個存在する。例えば、ウォーム歯車6、及び出力歯車8の位置で発生する起振源周波数は、それぞれ下記(1)(2)で求まる。
そして、固有振動数の歯車列2の作動時における変動分を考慮して、起振源周波数と歯車列2の固有振動数との差である「離間周波数幅」を決定することで、歯車列2の歯車が変形して上記固有振動数が変動しても、起振源周波数と固有振動数の一致を回避出来る。
この図10のような場合には、従来のように停止時における歯車列2の固有振動数よりも上記と同じ幅で離間周波数幅を設定したとすると、ワイパアーム5が往復する際に歯車列2の固有周波数と起振源周波数とが一致して音振が悪化する作動領域が存在することになる。
図4から分かるように、回転数が上がり負荷されるトルクが上昇する領域では、歯車列2の固有振動数も追従して上がっていく。このとき、停止時における歯車列2の固有振動数が起振源周波数よりも大きい場合には、歯車列2の固有振動数の最小値が、起振源周波数よりも所定の離間周波数だけ大きくなるように設定される。
なお、歯幅を大きくすることは、その他性能(耐久性)に対しても効果的であるので、本来性能とのトレードオフは無い。
2 モータ
3 歯車列(歯車群)
6 ウォーム歯車
7 カウンタ歯車
8 出力歯車
Claims (11)
- 少なくとも2つの歯車が噛合してなる歯車群と、その歯車群の駆動側に連結する第一の連結部品、及び前記歯車群の被駆動側に連結する第二の連結部品とを備え、上記歯車群の固有振動数と、前記第一の連結部品及び前記第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数とを異なる値とする歯車群を備えた装置であって、
歯車の剛性及び歯車同士の接触力の少なくとも一方を調整することにより、
上記歯車群の固有振動数として、想定される使用条件での歯車作動状態によって変動する歯車群の固有振動数と、前記第一の連結部品及び前記第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数とを一致させないことを特徴とする歯車群を備えた装置。 - 少なくとも2つの歯車が噛合する歯車群からなる歯車装置において、
想定される使用条件での歯車作動により変動する当該歯車群の固有振動数の変動の範囲内の振動数に、上記歯車群の駆動側に連結する第一の連結部品、及び前記歯車群の被駆動側に連結する第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数が、一致しないように歯車群の仕様を設定し、
歯車の剛性及び歯車同士の接触力の少なくとも一方を調整することで、歯車群の固有振動数を調整することを特徴とする歯車装置。 - 上記歯車の少なくとも一つは樹脂製であることを特徴とする請求項2に記載した歯車装置。
- 歯車群の固有振動数と、当該歯車群の駆動側に連結する第一の連結部品、及び前記歯車群の被駆動側に連結する第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数とを所定離間周波数幅だけ異なる値として、歯車群の固有振動数と、上記歯車群の駆動側に連結する第一の連結部品、及び前記歯車群の被駆動側に連結する第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数との一致を回避する歯車装置において、
上記歯車群の固有振動数として、想定される使用条件での歯車作動状態における上記歯車群の固有振動数の最大値及び最小値の少なくとも一方を、前記第一の連結部品及び前記第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数よりも小さく若しくは大きくすることを特徴とする請求項2又は3に記載した歯車装置。 - 上記歯車群の固有振動数の最大値及び最小値は、当該歯車群に伝達されるトルクが最大若しくは最小となるときの値であることを特徴とする請求項4に記載の歯車装置。
- 上記第一の連結部品は、歯車群にトルクを伝達する原動機であることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載した歯車装置。
- 上記歯車群の固有振動数を、原動機の回転数が大きくなるほど大きくする離間周波数調整手段を備えることを特徴とする請求項6に記載した歯車装置。
- 上記離間周波数調整手段は、上記歯車群の固有振動数を、原動機の固有振動数若しくは振動周波数より大きい値に設定することでなることを特徴とする請求項7に記載した歯車装置。
- 上記離間周波数調整手段は、2つの歯車のうち、一方の歯車をテーパ付歯車で構成し、当該一方の歯車を軸方向に変位させて、他方の歯車との接触力を大きくすることで、前記歯車群の固有振動数を大きくすることを特徴とする請求項7又は8に記載の歯車装置。
- 上記歯車群を構成する各歯車の固有振動数を互いに異なる値にすることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載した歯車装置。
- 少なくとも2つの歯車が噛合する歯車群からなる歯車装置の設計方法であって、歯車群の固有振動数と、当該歯車群の駆動側に連結する第一の連結部品、及び前記歯車群の被駆動側に連結する第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数とを所定離間周波数幅だけ異なる値として、歯車群の固有振動数と当該歯車群の駆動側に連結する第一の連結部品、及び前記歯車群の被駆動側に連結する第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数との一致を回避する歯車装置の設計方法において、
想定される使用条件での歯車作動による当該歯車群の固有振動数の変動量を考慮して、作動停止状態における歯車群の固有振動数と上記歯車群の駆動側に連結する第一の連結部品、及び前記歯車群の被駆動側に連結する第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数とを比較して、
作動停止状態における歯車群の固有振動数の方が大きい場合には、想定される使用条件での歯車作動による当該歯車群の固有振動数の最小値を、当該歯車群の駆動側に連結する第一の連結部品、及び前記歯車群の被駆動側に連結する第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数よりも所定離間周波数幅だけ大きな値に設定し、
作動停止状態における歯車群の固有振動数の方が小さい場合には、想定される使用条件での歯車作動による当該歯車群の固有振動数の最大値を、当該歯車群の駆動側に連結する第一の連結部品、及び前記歯車群の被駆動側に連結する第二の連結部品の少なくとも一方の固有振動数若しくは振動周波数よりも所定離間周波数幅だけ小さな値に設定する、
ことを特徴とする歯車装置の設計方法。
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