JP4843756B2 - 樹脂押出成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動販売機のパッキンや建材あるいはその一部などとして、種々の用途に使用される樹脂押出成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5(a)および(b)はそれぞれ、樹脂押出成形品を製造するための金型、およびその金型を用いた製造ラインの一般的な例を示している。所望の断面形状を有する樹脂押出成形品を製造する場合には、まず、その断面形状と同じ押出口31aを有する金型31を準備し、同図(b)に示すような押出機32にセットする。次いで、押出機32のホッパ32aに、原料の樹脂材料を投入する。投入された樹脂材料は、押出機32内で加熱溶融され、金型31を介して、連続的に押し出される。そして、金型31の押出口31aから押し出された押出物Eは、押出機32の下流側に配置された冷却水槽33内を通過しながら冷却されるとともに、サイジング器34でサイジングされ、さらに引取機35で引き取られながら、切断機36で所望の長さに切断される。これにより、所望の断面形状および長さを有する樹脂押出成形品が得られる。
【0003】
上記のような金型31を用いて、樹脂押出成形品を製造する場合、原料の樹脂材料によっては、寸法精度の高い成形品を得るために、押出速度を低速にしなければならないことがあり、この場合には、製造効率が悪くなってしまう。このような場合には、一般に、図6(a)に示すような金型41、すなわち互いに同一形状の複数(図6(a)では2つ)の押出口41aを有する金型41を用いるとともに、同図(b)に示すように、金型41の各押出口41aごとに、押出機32の下流側に、サイジング器34、引取機35および切断機36を配置し、複数の押出口41a、41aから、複数の押出物E、Eを一度に押し出すことによって、樹脂押出成形品の製造効率を高めるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような複数の押出口41a、41aを有する金型41を使用することで、樹脂押出成形品を効率的に製造することが可能であるものの、この場合には、上述したように、押出口41aの数の分、サイジング器34、引取機35および切断機36が必要になる。このため、一つの製造ライン上に、複数の同一機器が配置されることになり、製造ラインの効率が非常に悪い。また、複数の押出物E、Eが互いに接近した状態で押し出されるため、押出時の各押出物Eの取り扱いが煩雑となり、その結果、作業効率が低下するという問題もある。
【0005】
なお、図6(c)に示すような金型42、すなわち上記図6(a)に示すような2つの押出口41a、41aを互いに接続し且つそれらの接続部分42bを断面V字状に形成した単一の押出口42aを有する金型42を使用することによって、所望の断面形状を2つ有する単一の押出物を得ることが可能である。そして、得られた押出物を、断面V字状のノッチを境に分割することによって、2つの樹脂押出成形品が得られる。この場合には、押出物が単一であるので、製造ライン上のサイジング器34、引取機35および切断機36がそれぞれ一つずつあればよく、そのため、製造ラインを効率化することが可能となる。しかし、原料の樹脂材料によっては、得られた押出物を手で簡単には分割できないことがあり、また分割された破断面がささくれた状態となることで、きれいに分割できないこともある。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、樹脂押出成形品を効率的に製造できるとともに、ささくれの無い、優れた表面品質を得ることができる樹脂押出成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る樹脂押出成形品の製造方法は、硬質樹脂材料を含む溶融状態の樹脂材料を、仕切部で互いに仕切られた所定形状の複数の押出口を有する金型を介し、硬質樹脂材料を仕切部の付近に通過させながら、複数の押出口に向かって押すことにより、複数の押出口から複数の押出物として押し出す押出工程を備えており、仕切部は、複数の押出物が複数の押出口から押し出されたときに膨張することによって互いに接触するような所定の仕切幅および押出方向長さを有しており、複数の押出物が互いに接触することによって接合された単一の接合体を、複数の押出物の互いの接合部分で破断することによって、複数の押出物に分割する分割工程を、さらに備えており、樹脂材料には、接合体の接合部分の伸びを抑制するための充填材が、ベース樹脂材料に対して10重量%以上の割合で添加されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、所望の断面形状を有する樹脂押出成形品を次のようにして製造する。まず、製造すべき樹脂押出成形品の断面形状に対応した複数の押出口を有する金型を準備する。そして、硬質樹脂材料を含む樹脂材料を、金型を介し、硬質樹脂材料を仕切部の付近に通過させながら、複数の押出口に向かって押す。これにより、金型の複数の押出口から複数の押出物が押し出される。上記構成の金型の仕切部は、上記のように設定された仕切幅および押出方向長さを有しているので、複数の押出物は、複数の押出口から押し出されたときに、樹脂材料に生じていたせん断応力からの解放により膨張することによって、互いに接触する。したがって、複数の押出物は、押出口からの押し出し直後に互いに接触し、融着によって接合されながら、単一の接合体として押し出される。そして、その接合体を、複数の押出物の互いの接合部分で破断することによって、複数の押出物に分割する。これにより、一度の押し出しで、複数の樹脂押出成形品を得ることができる。
【0009】
このように、本発明の樹脂押出成形品の製造方法によれば、上記のような複数の押出口を有する金型を使用し、複数の押出口から押し出された複数の押出物を、単一の接合体として押し出すので、製造ライン上の各種の機器(サイジング器、引取機および切断機など)がそれぞれ一つずつあればよく、製造ラインを効率化することができる。加えて、接合体を複数の押出物に分割するので、所望の樹脂押出成形品を、少なくとも分割した押出物の数の分、得ることができる。したがって、本発明の製造方法により、製造ラインを効率化しながら、樹脂押出成形品を効率的に製造することができる。また、押出工程では、仕切部の付近に硬質樹脂材料を通過させるので、押出物の互いの接合部分は硬質樹脂で構成される。しかも、その接合部分は、押出物の互いの接触による不完全な融着状態で接合される。このため、接合部分の強度や伸びが、接合部分の周囲の硬質樹脂に比べて小さくなる。これにより、接合体を複数の押出物に分割する際に、接合部分を手などで簡単に破断することが可能となり、しかも、ささくれの無い、きれいな破断面を得ることができる。
また、樹脂材料には、接合体の接合部分の伸びを抑制するための充填材が添加されているので、接合体を接合部分で分割する際の接合部分の伸びを、より一層小さくすることができ、これにより、よりきれい破断面を得ることができる。このような充填材による伸びの抑制効果は一般に、充填材が10重量%以上添加されることで確保されるので、本発明によれば、上記の効果を確実に得ることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の樹脂押出成形品の製造方法において、充填材は、タルク、炭酸カルシウム、クレー、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト、窒化アルミニウムおよび窒化ボロンの少なくとも1つであることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、充填材が上記各物質の少なくとも1つであるので、接合部分の伸びの抑制を十分に確保できることに加えて、充填材を構成する上記各物質が有する特性を樹脂押出成形品に付与したり、樹脂押出成形品の製造を行い易くしたりすることができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、硬質樹脂材料を含む溶融状態の樹脂材料を、仕切部で互いに仕切られた所定形状の複数の押出口を有する金型を介し、硬質樹脂材料を仕切部の付近に通過させながら、複数の押出口に向かって押すことにより、複数の押出口から複数の押出物として押し出す押出工程を備えており、仕切部は、複数の押出物が複数の押出口から押し出されたときに膨張することによって互いに接触するような所定の仕切幅および押出方向長さを有しており、複数の押出物が互いに接触することによって接合された単一の接合体を、複数の押出物の互いの接合部分で破断することによって、複数の押出物に分割する分割工程を、さらに備えており、樹脂材料には、接合体の接合部分の伸びを抑制するための充填材として、ゴム粒子および無定形のカーボンの少なくとも一方が、ベース樹脂材料に対して3重量%以上の割合で添加されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、前述した請求項1と同様の作用、効果を得ることができる。また、ゴム粒子および無定形のカーボンは、一般に嵩密度が大きいので、これらの少なくとも一方をベース樹脂材料に対して3重量%以上添加すれば、接合部分の伸びの抑制を十分に確保することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂押出成形品の製造方法において、接合体を分割工程に先立ち所定時間放置する放置工程を、さらに備えていることを特徴とする。
【0015】
後述するように、接合体を分割工程に先立ち所定時間放置することにより、樹脂押出成形品の反りを抑制できることが確認されている。したがって、上記構成によれば、接合体を所定時間放置してから分割することにより、反りの少ない樹脂押出成形品を確実に得ることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の樹脂押出成形品の製造方法において、前記放置工程における前記所定時間は、24時間以上であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、後述するように、接合体を24時間以上放置してから分割することにより、従来と同等の樹脂押出成形品を効率よく得ることができるとともに、より一層反りの少ない樹脂押出成形品を確実に得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による樹脂押出成形品の製造方法に用いられる金型および製造ラインの一例を示している。この金型1は、同図(a)に示すように、互いに同一の所定形状に形成された2つの押出口2、2を有している。各押出口2は、左右方向に直線状に延びる直線部2aと、この直線部2aの一端部から連なり、直線部2aの上側でほぼ半円状に延びるように形成された円弧部2bとで構成されている。
【0021】
また、両押出口2、2は、それらの間、特にそれぞれの直線部2a、2a間が、同図(b)に拡大して示すように、所定の仕切幅Wおよび押出方向長さ(図1(a)、(b)の表裏方向の長さ)を有する仕切部3で仕切られている。より具体的には、仕切部3の仕切幅Wおよび押出方向長さは、後述する樹脂押出成形品の製造時に、両押出口2、2から押し出された2つの押出物E、Eが、樹脂材料に生じていたせん断応力からの解放により膨張することによって、互いに接触するように設定されている。したがって、両押出口2、2から押し出された2つの押出物E、Eは、それらの直線部2a、2a同士が、押出口2、2からの押し出し直後に互いに接触し、融着によって接合されながら、単一の接合体Jとして押し出される。なお、金型1として、押出口2、2が図2に示すように配置されたもの、すなわち2つの押出口2、2が仕切部3を中心とする点対称に配置されたものであってもよい。この金型1も、上記図1(a)と同様に、押出口2、2から単一の接合体Jが押し出せるように、仕切部3の仕切幅Wおよび押出方向長さが適切に設定されている。
【0022】
以上のように構成された金型1は、例えば図1(c)に示すような、樹脂押出成形品の製造ライン11で用いられる。この製造ライン11は、樹脂材料を投入するためのホッパ12aを有し、樹脂材料を加熱溶融しながら、上記金型1を介して押し出す押出機12と、金型1の押出口2、2から押し出された押出物E、Eが互いに接合された接合体Jを冷却するための冷却水槽13と、接合体Jをサイジングするサイジング器14と、冷却水槽13を通過した接合体Jを引き取り、所定方向に送る引取機15と、この引取機15で送られた接合体Jを所望の長さに切断する切断機16とを備えている。これらの冷却水槽13、サイジング器14、引取機15および切断機16は、同図(c)に示すように、押出機12の下流側に配置されている。
【0023】
次に、上記の金型1および製造ライン11を用いて、樹脂押出成形品を製造する手順について説明する。まず、製造すべき樹脂押出成形品の原料などに応じて、仕切部3の仕切幅Wおよび押出方向長さを設定した金型1を準備する。次いで、準備した金型1を押出機12にセットする。そして、押出機12のホッパ12aに、原料の樹脂材料を投入し、これに前後して、押出機12を作動させる。そうすると、投入された樹脂材料は、押出機12内で加熱溶融され、金型1を介し、2つの押出物E、Eとして連続的に押し出される(押出工程)。この場合、押し出された2つの押出物E、Eは、上述したように、押し出し直後の膨張によって、互いに接触し、融着することで接合されながら、単一の接合体Jとして押し出される。なお、本実施形態では、樹脂材料として、例えば、硬質樹脂材料のポリプロピレンブロックコポリマーをベース樹脂材料とし、これに充填材として、タルク30重量%、フェノール系およびリン系の抗酸化剤をそれぞれ0.07重量%および0.05重量%添加したものを使用した。
【0024】
そして、上記接合体Jは、冷却水槽13内を通過しながら冷却されるとともに、サイジング器14でサイジングされ、さらに引取機15で引き取られながら、切断機16で所望の長さに切断される。その後、所望の長さ、すなわち製品として要求される長さに切断された接合体J(以下「所定長さ接合体」という)を、所定時間放置する(放置工程)。所定長さ接合体Jを放置する時間は、硬化の進行に伴う収縮が落ち着くことで反りが解消される時間であることが好ましく、このような観点から、24時間以上であることが好ましい。
【0025】
このように、所定長さ接合体Jを所定時間、放置した後、2つの押出物E、Eの互いの接合部分を境に、手で折るように破断することにより、2つの押出物E、Eに分割する(分割工程)。これにより、単一の所定長さ接合体Jから、所望の断面形状および長さを有する2つの樹脂押出成形品が得られ、樹脂押出成形品の製造が完了する。
【0026】
次に、上記のようにして樹脂押出成形品を製造する過程で得られる接合体Jにおける接合部分の強度および伸びを検討・評価するために行った試験について説明する。この試験では、まず、図3に示すような試験用金型21を用いて、射出成形により所定形状の樹脂成形品を作製した。この試験用金型21は、平面形状がほぼ横長矩形状に形成され、樹脂の注入口22寄りの位置、および注入口22と反対側(図3の右側)の端部の位置にはそれぞれ、平面形状が円形状の型23a(以下「円形型」という)、および樹脂の注入方向と直交する方向に延びる縦長状の型23b(以下「縦長型」という)が形成されている。また、金型21のキャビティー24は、その深さtが2mmに設定されている。このように構成された試験用金型21において、注入口22を介し、図3の白抜き矢印の方向で、キャビティー24内に溶融状態の樹脂を射出すると、その樹脂は、円形型23aおよび縦長型23bを避けながら、両側から回り込むように流れる。
【0027】
この試験用金型21を用い、下記表1に示す各種の樹脂材料、すなわち、▲1▼ABS樹脂、▲2▼ポリプロピレン、▲3▼充填材としてのタルクを20重量%添加したポリプロピレン(以下、「タルク添加ポリプロピレン」という)、▲4▼ナイロン12、および▲5▼充填材としてのガラス繊維を30重量%添加したナイロン12(以下、「ガラス繊維添加ナイロン12」という)をそれぞれ、注入口22を介して、キャビティー24内に射出し、厚さ2mmの所定形状の試験用樹脂成形品を作製した。なお、図3(a)に破線で示す部分W1およびW2はそれぞれ、試験用樹脂成形品における円形型23aおよび縦長型23bの下流側に形成されるウェルドラインを示しており、これらのウェルドラインW1、W2が、上述した所定長さ接合体Jにおける接合部分に相当する。
【0028】
そして、上記各樹脂材料からなる試験用樹脂成形品からそれぞれ、図3(a)に2点鎖線で示すダンベル状の3つの試験片S1、S2、S3を切り取り、これらについて、引張試験を行った。つまり、3つの試験片S1、S2およびS3はそれぞれ、試験用樹脂成形品における注入口22付近、円形型23aの下流側(ウェルドラインW1)および縦長型23bの下流側(ウェルドラインW2)の物性を調べるための試験片である。これらの試験片S1、S2、S3による引張試験の結果(引張強度および伸び)を、それぞれの樹脂材料の標準物性値と併せて、下記表1に示す。
【0029】
【表1】
Figure 0004843756
【0030】
まず、引張強度について見ると、▲2▼ポリプロピレンでは、注入口22付近、円形型23aの下流側および縦長型23bの下流側のいずれの測定個所でも、標準物性値の引張強度(降伏強度)である350kg/cm2と同じであり、強度の変化は全く認められなかった。一方、▲1▼ABS、▲3▼タルク添加ポリプロピレン、▲4▼ナイロン12および▲5▼ガラス繊維添加ナイロン12の引張強度については、標準物性値に比べて、注入口22付近で低下し、さらに円形型23aの下流側で低下していることがわかる。そして、▲1▼ABSおよび▲4▼ナイロン12の引張強度については、縦長型23bの下流側でさらに低下していることがわかる。
【0031】
なお、縦長型23bの下流側では、▲3▼タルク添加ポリプロピレンおよび▲5▼ガラス繊維添加ナイロン12の引張強度が、円形型23aの下流側の引張強度よりも若干高くなった。これは、注入口22を介して試験用金型21内に射出された樹脂が、試験用金型21の注入口22と反対側の端面で堰き止められることによる樹脂自身の圧力上昇に起因するものであると考えられる。
【0032】
次に、伸びに関しては、▲2▼ポリプロピレンが、上述した引張強度の測定結果と同様に、いずれの測定個所でも、標準物性値の伸び(200%以上)と同じであり、伸びの変化は全く認められなかった。一方、それ以外の全ての樹脂材料、すなわち▲1▼ABS、▲3▼タルク添加ポリプロピレン、▲4▼ナイロン12および▲5▼ガラス繊維添加ナイロン12の伸びについては、標準物性値に比べて、注入口22付近、円形型23aの下流側および縦長型23bの下流側の順に、より大きく低下していることがわかる。
【0033】
以上の比較から明らかなように、溶融状態の樹脂が一旦分かれてから融合したウェルドラインW1、W2部分では、引張強度および伸びが注入口22付近よりも低下することがわかる。つまり、ウェルドライン部分の引張強度および伸びは、ウェルドライン以外の部分の引張強度および伸びよりも低くなり、したがって、本実施形態における所定長さ接合体Jを、その接合部分を境にして、手で簡単に破断できるとともに、ささくれの無い、破断面のきれいな樹脂押出成形品が得られることがわかる。また、注入口22から遠いほど、ウェルドライン部分の伸びが低下することがわかる。これは、注入口22からの距離が遠いほど、樹脂成形時における樹脂の溶融粘度が高くなるためであり、したがって、本実施形態における上記金型1の仕切部3において、押出方向長さを設定することにより、所定長さ接合体Jの接合部分の伸びを調整できることがわかる。
【0034】
さらに、ベース樹脂材料に充填材を添加することで、ウェルドライン部分の伸びが大幅に低下することがわかる。したがって、ベース樹脂材料に適量の充填材を添加した材料を用いて、所定長さ接合体Jを成形することにより、より一層、破断面のきれいな樹脂押出成形品が得られることがわかる。なお、詳細なデータは省略するが、ベース樹脂材料に対して、10重量%以上の割合で充填材を添加することにより、ウェルドライン部分の伸びの抑制効果を十分に確保できることが確認された。また、充填材として、一般に嵩密度の大きいゴム粒子や無定形のカーボンを添加する場合には、3重量%以上添加すれば、十分な伸びの抑制効果が得られることも確認された。
【0035】
また、下記表2は、樹脂押出成形品の反りの測定結果を示したものであり、3つの実施例と、1つ従来例とを示している。これらの実施例および従来例では、上述した実施形態の樹脂材料(ポリプロピレン+タルク30重量%+フェノール系抗酸化剤0.07重量%+リン系抗酸化剤0.05重量%)と同一の樹脂材料で、樹脂押出成形品を作製した。より具体的には、従来例では、図5(a)に示す金型31を用い、単一の押出物Eを所定長さに成形し、この成形後、72時間放置した。これに対し、3つの実施例については、上述した実施形態と同様に、所定長さ接合体Jを成形し、実施例▲1▼、▲2▼および▲3▼ではそれぞれ、成形後、24、48および72時間放置後に、接合部分を境に分割した。そして、以上のようにして得られたそれぞれの樹脂押出成形品について反りを測定した。具体的な測定方法は、図4に示すように、1mの長さを有する樹脂押出成形品Mについて、反った方向(図4では上下方向)の最大距離(反り高さ)hを測定した。
【0036】
【表2】
Figure 0004843756
【0037】
この表2に示すように、従来例では、72時間放置した樹脂押出成形品の反り高さhが35mmであった。これに対し、実施例▲1▼では、24時間放置後の分割で得られた樹脂押出成形品の反り高さhが、従来と同じ35mmであった。また、実施例▲2▼および▲3▼ではそれぞれ、樹脂押出成形品の反り高さhが16および5mmであった。以上の測定結果から明らかなように、本実施形態で得られた所定長さ接合体Jを24時間放置してから分割することで、従来と同等の樹脂押出成形品を得ることができ、72時間放置が必要な従来に比べて、樹脂押出成形品を効率よく得ることができる。また、所定長さ接合体Jを、24時間を超えて放置してから分割することにより、従来に比べて、反りが非常に少ない樹脂押出成形品を得ることができる。このように、所定長さ接合体Jを所定時間以上放置することで、樹脂押出成形品の反りが小さくなるのは、放置によって、所定長さ接合体Jの硬化の進行に伴う収縮が落ち着くとともに、所定長さ接合体Jを構成する2つの押出物E、Eによる互いの補強効果によるものであると考えられる。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態の樹脂押出成形品の製造方法によれば、2つの押出口2、2を有する金型1を使用し、両押出口2、2から押し出された2つの押出物E、Eを、単一の接合体Jとして押し出すので、製造ライン11上の各種の機器14、15および16がそれぞれ一つずつあればよく、製造ライン11を効率化することができる。また、単一の所定長さ接合体Jを、その接合部分を境に分割することにより、2つの樹脂押出成形品を得ることができる。しかも、所定長さ接合体Jの接合部分の強度および伸びが小さいので、手で簡単に破断できるとともに、ささくれの無い、破断面のきれいな樹脂押出成形品を得ることができる。したがって、本実施形態の製造方法により、製造ライン11を効率化しながら、表面品質の優れた樹脂押出成形品を効率的に製造することができる。
【0039】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、互いに同一形状の2つの押出口2、2を有する金型1を使用したが、これらの押出口については、互いに異なる形状であっても良く、さらに3つ以上の押出口を有する金型を使用することも可能である。また、原料としての樹脂材料には、硬質樹脂材料に加えて、樹脂押出成形品の一部(例えば、押出口2の円弧部2bから押し出される部分)が軟質樹脂で構成されるように、軟質樹脂材料を使用しても良い。ただしこの場合には、押出成形時に、仕切部3の付近には、硬質樹脂材料が通過するように押し出す。また、ベース樹脂材料に添加する充填材については、接合体Jの伸びを十分に抑制し得るものであれば良く、上述したタルクやガラス繊維、ゴム粒子、無定形のカーボンの他、炭酸カルシウム、クレー、ガラスビーズ、炭素繊維、グラファイト、窒化アルミニウムおよび窒化ボロンなどであっても良い。
【0040】
また、実施形態で示した金型1や製造ライン11の細部の構成、さらには樹脂押出成形品の製造方法の細部の手順などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の樹脂押出成形品の製造方法は、樹脂押出成形品を効率的に製造できるとともに、ささくれの無い、優れた表面品質を得ることができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による樹脂押出成形品の製造方法を説明するための図であり、(a)は、その製造方法に使用する、2つの押出口を有する金型を示す断面図、(b)は、その金型の2つの押出口の仕切部付近を拡大して示す断面図、(c)は製造ラインの一例を示している。
【図2】他の金型を示す断面図である。
【図3】試験用の樹脂成形品を作製するための試験用金型を示しており、(a)は平面図、(b)は(a)の試験用金型をA−A線で切断した状態を示す断面図である。
【図4】樹脂押出成形品における反りの測定方法を説明するための図である。
【図5】従来の樹脂押出成形品の製造方法を実施するための金型および製造ラインを示す図であり、(a)は単一の押出口を有する金型、(b)はその金型を用いた製造ラインを示す模式図である。
【図6】従来の他の樹脂押出成形品の製造方法を実施するための金型および製造ラインを示す図であり、(a)は2つの押出口を有する金型、(b)はその金型を用いた製造ラインを示す模式図、(c)は(a)の2つの押出口を互いに接続し且つそれらの接続部分を断面V字状に形成した単一の押出口を有する金型である。
【符号の説明】
1 金型
2 押出口
3 仕切部
11 製造ライン
21 試験用金型
22 注入口
23a 円形型
23b 縦長型
E 押出物
J 接合体
M 樹脂押出成形品
W 仕切幅
S1、S2、S3 試験片
W1、W2 ウェルドライン

Claims (5)

  1. 硬質樹脂材料を含む溶融状態の樹脂材料を、仕切部で互いに仕切られた所定形状の複数の押出口を有する金型を介し、前記硬質樹脂材料を前記仕切部の付近に通過させながら、前記複数の押出口に向かって押すことにより、当該複数の押出口から複数の押出物として押し出す押出工程を備えており、
    前記仕切部は、前記複数の押出物が前記複数の押出口から押し出されたときに膨張することによって互いに接触するような所定の仕切幅および押出方向長さを有しており、
    前記複数の押出物が互いに接触することによって接合された単一の接合体を、前記複数の押出物の互いの接合部分で破断することによって、前記複数の押出物に分割する分割工程を、さらに備えており、
    前記樹脂材料には、前記接合体の前記接合部分の伸びを抑制するための充填材が、ベース樹脂材料に対して10重量%以上の割合で添加されていることを特徴とする樹脂押出成形品の製造方法。
  2. 前記充填材は、タルク、炭酸カルシウム、クレー、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト、窒化アルミニウムおよび窒化ボロンの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂押出成形品の製造方法。
  3. 硬質樹脂材料を含む溶融状態の樹脂材料を、仕切部で互いに仕切られた所定形状の複数の押出口を有する金型を介し、前記硬質樹脂材料を前記仕切部の付近に通過させながら、前記複数の押出口に向かって押すことにより、当該複数の押出口から複数の押出物として押し出す押出工程を備えており、
    前記仕切部は、前記複数の押出物が前記複数の押出口から押し出されたときに膨張することによって互いに接触するような所定の仕切幅および押出方向長さを有しており、
    前記複数の押出物が互いに接触することによって接合された単一の接合体を、前記複数の押出物の互いの接合部分で破断することによって、前記複数の押出物に分割する分割工程を、さらに備えており、
    前記樹脂材料には、前記接合体の前記接合部分の伸びを抑制するための充填材として、ゴム粒子および無定形のカーボンの少なくとも一方が、ベース樹脂材料に対して3重量%以上の割合で添加されていることを特徴とする樹脂押出成形品の製造方法。
  4. 前記接合体を前記分割工程に先立ち所定時間放置する放置工程を、さらに備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂押出成形品の製造方法。
  5. 前記放置工程における前記所定時間は、24時間以上であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂押出成形品の製造方法。
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