JP4842763B2 - 光学素子および光学装置 - Google Patents

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Description

この発明は光学素子および光学装置に関する。
使用波長の光波長よりも短い周期(サブ波長周期)の微細凹凸構造を持つ波長板として「透明基板表面に格子パターンが形成されたもの」が知られている。このような波長板は、格子パターンに基づく光学異方性(構造複屈折)を示し、互いに偏光面の直交する2つの直線偏光に対して位相差を生じさせることができる。
波長板における重要な特性として「透過率と位相差」がある。波長板は、互いに偏光面の直交する2つの直線偏光に対して所望の位相差を生じさせるのみならず「高い透過率」を有することが望ましい。
上記位相差は「透明基板材料の屈折率」やサブ波長周期をもつ「格子パターン(微細凹凸構造)の溝深さ」等の関数であり、透明基板材料の屈折率が大きいほど、また格子パターンの溝が深いほど大きな位相差を生じさせることができる。
しかしながら「大きな溝深さのサブ波長構造を持つ格子パターン」を成形等で製作することは必ずしも容易でない。
そこで「透明基板屈折率に比べて十分大きい屈折率を有する媒質」を透明基板に形成された格子パターンに充填して、透明基板屈折率に比べて十分大きい屈折率を有する媒質により「透明基板に形成された格子パターンと等しい周期の格子パターン」を形成して「より大きな位相差」を生じさせるようにしたものが特許文献1に開示されている。この位相板では「大きい位相差」を実現できるが、透明基板屈折率に比べて十分大きい屈折率を有する媒質を透明基板上に有するため「波長板に光が入射する際に高屈折率媒質の表面で反射される光量」が多くなり透過率の低下を招来する。
このような透過率の低下に対処する方法として、透明基板の格子パターンを充填する高屈折率の媒質の上に更に、高屈折率膜の膜材よりも低い屈折率を有する低屈折率膜をさらに形成するものが提案されている(特許文献2)。
この方法では、光は空気側から低屈折率膜に入射するので、空気と低屈折膜との境界面での反射を低く抑えることができ、また低屈折率膜と高屈折率媒質との境界面での反射も低く抑えることができる。しかし、高屈折率媒質と透明基板との屈折率差は依然として大きいので、高屈折媒質と透明基板との境界面での反射は低減されない。
特公平7−99402号公報 特開2005−099099
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、高い透過率と所望の位相差を両立させ得る新規な光学素子とこの光学素子を用いる光学装置の実現を課題とする。
この発明の光学素子は、基本的に「透明基板とサブ波長構造層と」を有する。
サブ波長構造層は透明基板上に薄層として設けられるが、サブ波長構造層の材質の屈折率は、透明基板の材質の屈折率よりも高い
サブ波長構造層には「1次元格子状の微細凹凸構造」が使用波長より小さいサブ波長周期で形成されている。微細凹凸構造は、凹凸の凹部が「透明基板とサブ波長構造層との境界面に達するように形成」されている。即ち、サブ波長構造層は、微細凹凸構造の凹部により凹凸配列方向に分断されている。
透明基板は、そのサブ波長構造層側に「1次元格子状の微細凹凸構造と同周期に配列した空穴部」を有する。「空穴部」は微細凹凸構造の凹部に連通する。即ち、サブ波長構造層に形成された微細凹凸構造の凹部は、その底部が空穴部に連通している。その結果、光学素子としては、サブ波長構造層の微細凹凸構造と空穴部の配列とが「微細凹凸構造の凹部とこれに連結する空穴部とを1単位の凹部構造とする1次元格子状の格子パターン」を形成することになる。
透明基板が有する「空穴部」は、サブ波長構造層と透明基板との境界面に直交する深さ方向において、幅が不均一であり、該幅の最大幅が、上記境界面位置における「微細凹凸構造の凹部の幅」よりも大きい。
このような構造により、後述のように、サブ波長構造層と透明基板との境界面に直交する方向において、少なくとも空穴部の部分で「入射光に対する屈折率を変化」させる機能が得られる。
即ち「微細凹凸構造の凹部とこれに連結する空穴部とを1単位の凹部構造とする1次元格子状の格子パターン」による構造複屈折により「位相差」を確保しつつ、少なくとも空穴部の部分で「入射光に対する屈折率を変化」させることにより「微細凹凸構造の凹部とこれに連結する空穴部とを1単位の凹部構造とする1次元格子状の格子パターン」の部分での光の反射を有効に軽減させることにより透過率の向上を図るのである。
上記「サブ波長構造層に形成された1次元格子状の微細凹凸構造の周期方向における断面形状」は、例えば長方形形状としてもよく、この場合、サブ波長構造層の微細凹凸構造の凹部・凸部は凹部の深さ方向へ均一な幅を有することになり、この部分での屈折率は凹部の深さ方向に一定であるが、空穴部の部分で上記深さ方向に屈折率が変化することにより、光の反射を軽減できる。
「サブ波長構造層に形成された1次元格子状の微細凹凸構造の周期方向における断面形状」は、凸部の幅が「凸部の高さ方向に変化する形状」が好ましい(請求項2)。このようにサブ波長構造層の微細凹凸構造において、凸部の幅が高さ方向に変化すると、この微細凹凸構造の部分においても、凹部の深さ方向に屈折率の変化が生じるので、空穴部における屈折率変化と合わせて、上記「微細凹凸構造の凹部とこれに連結する空穴部とを1単位の凹部構造とする1次元格子状の格子パターン」の深さ方向においてより大きな屈折率のグラデーションを実現でき、屈折率の急激な変化に起因する反射率の増大を有効に抑制することができ、光学素子の透過率をより向上させることができる。なお上記「屈折率の変化」は連続的な変化でも良いし「ステップの細かい段階的な変化」でもよい。
「サブ波長構造層に形成された1次元格子状の微細凹凸構造の周期方向における断面形状」における「凸部の幅が凸部の高さ方向に変化する形状」は、具体的には「台形形状もしくは三角形形状もしくは部分円形状または部分楕円形状」であることができる(請求項3)。勿論、他の形状、例えば「三角形状の斜面部分を曲線化した形状」等であることもできる。
上記三角形形状は、正三角形形状、2等辺三角形形状や直角2等辺三角形形状等であることができる。部分円形状は「円の一部をなす形状」であり、部分楕円形状は「楕円形の一部をなす形状」である。微細凹凸構造は1次元格子状であるから、断面形状が部分円形状や部分楕円形状である場合には、微細凹凸構造の凸部は「円筒面や楕円筒面の一部」になる。
サブ波長構造層と透明基板とはその材質の屈折率が異なり、両者は物質として別個である。両者の屈折率差は必ずしも大きい必要はない
また、サブ波長構造層と透明基板との屈折率の大小関係としては、サブ波長構造層の屈折率が透明基板の屈折率よりも高い。サブ波長構造層を高屈折率材料で形成すると、サブ波長周期の微細凹凸構造における凹部の深さを浅くしつつ、大きな位相差を実現でき、微細凹凸構造の形成が容易になる。
上記請求項1〜3の任意の1に記載の光学素子は「波長板としての光学機能」を有することができる(請求項4)が、「サブ波長構造層の微細凹凸構造と空穴部の周期的配列による周期構造(前記「微細凹凸構造の凹部とこれに連結する空穴部とを1単位の凹部構造とする1次元格子状の格子パターン」)が、透明基板表面の平坦部分を介して「微細凹凸構造における凹凸配列方向」へ周期的に配列し、偏光選択性の回折格子を構成するようにすることができる(請求項5)。
即ちこの場合「微細凹凸構造の凹部とこれに連結する空穴部とを1単位の凹部構造とする1次元格子状の格子パターン」が、所定の間隔を隔して透明基板表面に凹凸配列方向へ配列形成され、上記格子パターンの「所定の間隔を隔した配列」が、偏光選択性の回折格子(1個の格子パターンが「回折格子の格子の1つ」をなす。)を構成するのである。このような光学素子は「偏光選択性回折格子」として使用できる。
請求項1〜3の任意の1に記載の光学素子はまた「偏光ビームスプリッタ」としての光学機能を有することができる(請求項6)。
透明基板は、平行平板状であるのが一般的であるが、これに限らず「プリズム状」であってもよいし「楔状」等であってもよい。また、サブ波長構造層による1次元格子状の微細凹凸構造は、光の入射側のみならず射出側にも形成することができる。
この発明の光学装置は、上記請求項1〜7の任意の1に記載の光学素子を有するものである(請求項7)。
このような光学装置は例えば、「光源からの光束を液晶表示素子に導光し、この液晶表示素子の表示画像を投射レンズで表示面上に投射するプロジェクタ装置であって、光源と投射レンズとの間の光路上に、請求項1〜6の任意の1に記載の光学素子を配置した」構成のものとすることもできるし(請求項8)、「光源からの光束を光記録媒体に、対物レンズを介して集光照射して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置であって、光源と対物レンズとの間の光路上に、請求項1〜6の任意の1に記載の光学素子を配置した」構成のものとすることもできる(請求項9)。
ここで、サブ波長周期を持つ1次元格子状の微細凹凸構造による構造複屈折につき簡単に説明する。
図3(a)に示すのは、1次元格子状の微細凹凸構造を模式的に示している。この図では微細凹凸構造の断面形状は矩形波形状、即ち、凸部の断面形状が長方形形状である。
微細凹凸構造のピッチ:Pは、図に示すように、1対をなす「ランドとスペース」のランドの幅(以下、図示の如く「ランド幅」という。):aとスペースの幅(以下、図示の如く「スペース幅」という。):bの和:(a+b)である。また、スペース底部に対するランドの高さを「溝深さ:H」とする。
このとき、「a/P」で定義される量を「フィリングファクタ」、「H/a」で定義される量を「アスペクト比」と呼ぶ。「フィリングファクタが大きい」ことは、ピッチ:Pに占めるランド幅:aが大きい(スペース幅:bが小さい)ことを意味する。また「アスペクト比が大きい」ほど、ランド幅:aに対する溝深さ:Hが大きい。アスペクト比は、微細凹凸構造形成の容易さの観点から「10よりも小さい」こと、より好ましくは、5程度以下が良い。
微細凹凸構造のピッチ:Pがサブ波長オーダであると、ピッチ:Pよりも大きい波長の光は回折せず「0次光」としてそのまま透過し(このときの透過率を「0次透過率」と呼ぶ。)が、入射光に対して複屈折性を示す。
即ち、図3(b)に示すように、微細凹凸構造へ「空気領域から入射」する入射光において、微細凹凸構造の周期方向(図の左右方向)に平行に振動する偏光成分:TM、ランド長手方向(図面に直交する方向)に平行に振動する偏光成分TEに対し、微細凹凸構造は「屈折率が異なる媒質」のように作用する。
微細凹凸構造の部分における有効屈折率を、偏光成分:TMにつきn(TM)、偏光成分:TEについてn(TE)とすると、これら有効屈折率は、微細凹凸構造が形成された材料の屈折率:n、微細凹凸構造のフィリングファクタ:fを用いて以下のように表される。
n(TE)=√{fn2+(1−f)} (1)
n(TM)=√[n2/{f+(1−f)n2}] (2)
このように、偏光成分:TE、TMに対する屈折率が異なるため、透過光における偏光成分:TMに対し、偏光成分:TEは、図3(b)に示すように位相が「δ」だけ遅れることになる。
即ち、溝深さ:Hを用いると、微細凹凸構造の「光学的厚さ」は、偏光成分:TMに対して「H・n(TM)」、偏光成分:TEに対して「H・n(TE)」であるので、これら光学的厚さの差:H{n(TE)−n(TM)}に応じて「位相遅れ:δ」が生ずる。この「位相遅れ:δ」が「リタデーション」である。
光学的厚さの差:H{n(TE)−n(TM)}をDとし、波長をλとすると、δ=2πD/λであるが、微細凹凸構造においては「波長:λの広い領域にわたって、略一定のリタデーション」が得られる。
n(TE)、n(TM)は、上記屈折率:nと、フィリングファクタ:fにより決定され、リタデーション:δは、屈折率:n、フィリングファクタ:f、溝深さ:Hにより定まるから、結局、リタデーションは材料(nが定まる。)と微細凹凸構造の形態(フィリングファクタ:fと溝深さ:Hが定まる。)を調整することにより所望のものを得ることができる。
リタデーション:δを調整することにより、偏光成分:TM、TEに対する位相差を例えば「πやπ/2」に設定でき、1/2波長板、1/4波長板等の各種位相板を実現できる。
上に説明した例では、微細凹凸構造の凸部の断面形状が長方形形状であって、ランド幅:a、スペース幅:bが一義的であり、フィリングファクタ:fも一義的に定まる。
これに対し、図3(c)に示す微細凹凸構造のように、断面形状が「台形形状の周期的配列」である場合、ピッチ:Pは一義的であるが、凸部の幅は溝深さに応じて異なり、溝深さ:H1の部分では幅:a1でフィリングファクタ:f1=a1/Pであるが、溝深さ:H2の部分では幅:a2でフィリングファクタ:f2=a2/Pとなって、フィリングファクタが溝の深さ方向に変化する。
このため、式(1)、(2)で与えられる屈折率:n(TE)、n(TM)は「フィリングファクタの変化に応じて変化」する。換言すれば、屈折率:n(TE)、n(TM)は微細凹凸構造の溝深さ方向にグラデーションをなして変化する。
この場合のリタデーションは、上記H{n(TE)−n(TM)}における屈折率:n(TE)、n(TM)を、それぞれの平均値:n(TE)、n(TM)で置き換えて得られる光学的厚さをDとして「2πD/λ」で与えられる。
即ち、微細凹凸構造における凸部の断面形状が、台形形状のように「凸部の幅が凸部の高さ方向に変化する形状(請求項2)」である場合には、屈折率:n(TE)、n(TM)が凸部の高さ方向に変化するので「急激な屈折率変化の場合に生じる高い反射率」が屈折率のグラデーションにより緩和されて「反射率が低減」されるので、微細凹凸構造における0次光の透過率が上昇するのである。
この発明の光学素子では「空穴部での屈折率変化」により有効に反射率を低減させて0次光透過率を増大させるのである。
以上に説明したように、この発明によれば、新規な光学素子およびこの光学素子を含む光学装置を実現できる。この発明の光学素子は、所望の位相差と高い透過率を両立させ従って良好な光学性能を有し、従って、この光学素子を用いることにより性能良好な光学装置を実現できる。
以下、発明の実施の形態を説明する。
図1に光学素子の形態例を示す。
図1において、符号10は透明基板、符号20はサブ波長構造層を示している。透明基板10とサブ波長構造層20とは異なる物質であって屈折率が異なる。
図1(a)の場合を例にとって説明すると、この場合の光学素子は透明基板10上に、透明基板10と屈折率の異なるサブ波長構造層20を有し、サブ波長構造層20に、1次元格子状の微細凹凸構造が、使用波長より小さいサブ波長周期で、且つ、凹部が透明基板10とサブ波長構造層20との境界面に達するように形成されている。符号21は微細凹凸構造の凸部を示している。凹部は「透明基板10とサブ波長構造層20との境界面に達する」ので、微細凹凸構造を構成する凸部21同士は透明基板上で凹部により分断されている。
一方、透明基板10のサブ波長構造層20側に、微細凹凸構造の凹部に連通して「1次元格子状の微細凹凸構造と同周期に配列」した空穴部11が形成されている。即ち、空穴部11の配列は「サブ波長構造層20の微細凹凸構造と同周期」である。
サブ波長構造層20の微細凹凸構造は1次元格子状であるので、微細凹凸構造の断面形状は図面に直交する方向には一様である。また、空穴部11の断面形状も図面に直交する方向へ実質的に均一である。
図1(a)に示す例では、サブ波長構造層20に形成された1次元格子状の微細凹凸構造の周期方向における断面形状が、凸部の幅が「凸部の高さ方向に変化」する形状であり(請求項2)、より具体的には、この断面形状は台形形状である(請求項3)。
図1(b)、(c)は図1(a)に示す形態の変形例であり、図1(b)の例では、サブ波長構造層20の微細凹凸構造における凸部22の底部が「断面長方形状の台部22A」をなす。また、図1(c)に示す例では、台形形状の断面形状を有する凸部23の底部が、台形底辺より若干長さが大きい「断面長方形状の台部23A」をなしている。
図2には光学素子の別の形態例を3例示す。繁雑をさけるため、混同の虞が無いと思われるものに付いては図1におけると同一の符号を付した。
図2(a)に示す例では、サブ波長構造層20に形成された微細凹凸構造の凸部24の断面形状が3角形形状であり、(b)に示す例では、サブ波長構造層20に形成された微細凹凸構造の凸部25の断面形状が矩形形状であり、(c)に示す例では、サブ波長構造層20に形成された微細凹凸構造の凸部26の断面形状が部分円形状である。
図1に示す3例と図2(a)、(c)に示す2例では、サブ波長構造層20に形成された微細凹凸構造の凸部の幅が「凸部の高さ方向に変化」するので、図3(c)に即して説明したように、微細凹凸構造自体においても屈折率がグラデーションをなして変化する。
図1、図2に示された形態例に即して説明したように、この発明の光学素子は、透明基板10のサブ波長構造層20側に、微細凹凸構造の凹部に連通して、1次元格子状の微細凹凸構造と同周期に配列した空穴部11が形成されている。そして、この空穴部が「透明基板10とサブ波長構造層20との境界面に直交する方向(図1、図2の上下方向)において、入射光に対する屈折率を変化させる機能」を有するのである。
ここで、光学素子を構成する透明基板・サブ波長構造層の材料を例示すると、透明基板10の材料としては、石英(屈折率:n=1.45)や、HOYA社製の商品名:BSC7(n=1.5)が好適である。
サブ波長構造層20は、これらよりも高い屈折率を持つ材料で形成され、TiO、Nb、Ta、ZrO、ITO(SnO+In)などの「無機材料」や、TiO、ZrO、Sb、ITO、Al等の元素を材料中に結合させた「ゾル・ゲル材料」、さらにはSiOを骨格とするゾル・ゲル材料中に、上記無機材料の微粒子(5nm以上100nm以下)を分散させた「混合材料」、あるいは、光硬化型樹脂や熱硬化型樹脂で屈折率が1.6以上のもの等を利用可能である。
上記「混合材料」は、特性に応じて混合・ブレンドが可能である。光硬化型樹脂や熱硬化型樹脂は、例えば、光透過型接着剤を初めとする「光学特性に優れたもの」が用いられる。上記「無機材料」で形成されるサブ波長構造層は200℃以上の耐熱性があり「高温環境で使用する光学素子のサブ波長構造層の材料」として適している。
以下には、透明基板10として石英(屈折率:n=1.45)の平行平板、サブ波長構造層20の材料としてTa(屈折率:n=2.25)の場合を例として説明する。
透明基板10である石英の平行平板の平坦な面上に、Taによるサブ波長構造層をスパッタリングや蒸着等の成膜技術で薄層として形成する。
なお、サブ波長構造層20を上記ゾル・ゲル材料や混合材料、光硬化型樹脂や熱硬化型樹脂で形成する場合には、これらを透明基板10上にスピンコート等により薄層上に形成すればよい。
サブ波長構造層20に形成する「サブ波長周期を持った1次元格子状の微細凹凸構造」は、例えば、薄層として形成されたサブ波長構造層上に「電子ビームの走査により潜像を形成されるレジスト層」を設け、このレジスト層に「微細凹凸構造に対応するパターン」を電子ビームにより描画して潜像を形成し、これを現像して「微細凹凸構造に対応するレジストパターン」を得、このレジストパターンをマスクとしてRIE(反応性イオンエッチング)等のエッチングでサブ波長構造層を透明基板10の表面に至るまでエッチングすることによって形成することができる。
このようなエッチング工法を用いる場合、材料によってエッチングレートが異なる。
この「エッチングレートの違い」を利用することにより、図1、図2に示すような空穴部11を形成することが可能である。一般に、高屈折率材料はエッチングにより侵刻されにくい特性を有するため、エッチングにより「高屈折率材料(Ta)によるサブ波長構造層20」の侵刻を透明基板10との境界までを行ったのち、さらにエッチングを行うと、サブ波長構造層20に形成された微細凹凸構造の凹部で透明基板10がエッチングされ、空穴部11が形成される。このようにして「微細凹凸構造の凹部に連接」する空穴部11が透明基板10に形成される。
空穴部11の大きさや断面形状は、エッチングの条件(導入ガスの種類や導入量、エッチング時間等)を透明基板・サブ波長構造層の材料に応じて切換え、あるいは調整することにより制御でき、空洞11の断面形状や大きさを制御することにより、空穴部における屈折率の変化を制御して「サブ波長構造層20と透明基板10の境界面での反射による透過率のロス」を低減することが可能となる。
図4(a)は、図1(a)に示した形態例の一部を示している。この形態例では微細凹凸構造の凸部21は断面形状が台形形状であり、前述のように、この微細凹凸構造の部分でも屈折率が図の上下方向へ変化する。
また、空穴部11の配列も「1種の微細凹凸構造」を構成するのでこの部分でも構造複屈折が生じるが、空穴部11」の断面形状は均一でないので、この空穴部11の部分においても「フィルファクタが空穴部11の深さ方向へ変化」して屈折率の変化を惹起するのである。そしてこの屈折率変化のグラデーションが反射率を軽減させる。
「空穴部11の部分における屈折率変化による反射率低減効果」は、主として、空穴部11の大きさ・形状を特徴づける4つの量、即ち、図4(a)に示すように、微細凹凸構造のピッチ:P(これは空穴部11の配列ピッチでもある。)、空穴部11の配列方向における最大幅:X、空穴部11の深さ:H2、空穴部11における最大幅:Xを与える深さ:Zにより実質的に決定されることが発明者らの研究を通じて明らかになった。
そこで、図4(a)の状態を同図(b)に示す「多辺形の断面形状としてモデル化」し、屈折率変化による反射率低減効果を見るべく、偏光成分:TM、TEに対する透過率を演算シミュレーションにより調べた。
演算シミュレーションの前提条件は以下の通りである。
透明基板10は石英の平行平板で屈折率:n=1.45、サブ波長構造層20のTaであって屈折率:n=2.25である。
演算に当たっては、長さの次元を持つ量を使用波長:λで規格化して無次元化した。
即ち、微細凹凸構造のピッチ:P/λ=0.5、微細凹凸構造における凸部の断面形状である台形形状の底辺部分において凸部の幅:0.7P/λ=0.35、凹部の幅:0.3P/λ=0.15、凸部の高さ(凹部の深さ):H1/λ=0.74である。
このような条件のもとにおいて、演算パラメータとして、
空穴部の深さ:H2/λ、空穴部11における最大幅:Xを与える深さ:Zと空隙部の深さ:H2の比:Z/H2とを用い、これらのパラメータ:H2/λ、Z/H2を種々に変化させ「空穴部の最大幅:Xとピッチ:Pとの比:X/Pの変化に対する0次光透過率の変化」を調べた。結果を図5、図6に示す。
図5、図6の各図における縦軸「Efficiency」は0次光透過率であり、空穴部が形成されていない場合(透明基板の平坦な面の上に「サブ波長構造層の微細凹凸構造のみ」が存在する場合)の偏光成分:TEの透過率を1としている。即ち、この場合が「空穴部の効果がない場合」であり、このときの偏光成分:TMの透過率は0.92である。
なお、図5、図6において「空洞あり、空洞なし」は「空穴部のある場合とない場合」を意味し、「TE−OT」とあるのは偏光成分:TEの0次光透過率、「TM−OT」とあるのは偏光成分:TMの0次光透過率を表す。
図5、図6に示すように、0次光透過率:TE−OTは、空穴部の存在により「空穴部がない場合よりも小さく」なるが、X/Pが大きい領域では十分に大きな値となり、透過率:TM−OTについても、X/Pの大きさにより「空穴部がない場合よりも大きな値」が実現できている。
次にリタデーションについて、上記パラメータ:H2/λを0.25、0.49とし、パラメータ:Z/H2を0.0(空穴部がない場合)、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0のように変化させたときの使用波長:λを単位とするリタデーションのパラメータ:X/Pに対する変化を求めたところ図7(a)、(b)の如くになった。図7の縦軸「Retardation」がリタデーションである。
図7から明らかなように「空穴部の深さ:H2が大きくなると、リタデーションが増大する傾向」がある。説明中の例では、透明基板に対してサブ波長構造層の屈折率が高く、リタデーションに対する微細凹凸構造の影響が空穴部による影響よりも大きい。
以上の結果から、微細凹凸構造における凹部の深さ(凸部の高さ):H1、空穴部の深さ:H2をエッチング条件の制御により調整することにより、高い透過率を実現しつつ所望の位相差を実現することができる。
例えば、光学素子を1/4波長板として実現する場合であれば、1/4波長板はリタデーション:0.25λにあたるから、図7の場合よりも、空穴部の深さ:H2を浅くして、リタデーションが0.25λとなるようなX/Pを選択すればよい。
若干補足すると上の説明から明らかなように、光学素子の0次光透過率は、サブ波長構造層における微細凹凸構造の凸部の断面形状が台形形状(凸部の高さ方向に幅が変化する形状)であることによる「微細凹凸構造での屈折率のグラデーション」と「空穴部における屈折率のグラデーション」とが光学素子の0次光透過率の向上(反射率の低減)に寄与しているが、「少なくとも空穴部における屈折率の変化」があれば、透過率の向上を図ることができる。
なお、必要に応じて、空穴部の一部もしくは全部、あるいはさらに、微細凹凸構造の凹部における深さ方向の一部もしくは全部に、透明基板・サブ波長構造層の屈折率のうち低いほうよりもさらに低い屈折率を持つ材料を充填してもよい。
光学素子を「1/2波長板」として実現する場合であれば、リタデーションを0.5λとすればよく、リタデーション:0.5λを実現するように、微細凹凸構造・空穴部を設定すればよいが、このようにするかわりに、平行平板状の透明基板の両面にサブ波長構造層を形成し、両面とも微細凹凸構造・空穴部配列を形成し、各面におけるリタデーションが0.25となるようなH2、X/Pを設定してもよい。このようにすると、片面のみでリタデーション:0.5λを実現するよりも微細凹凸構造のアスペクト比を小さく設定できる。
また、透明基板の片面のみにサブ波長構造層を形成する場合、透明基板の他方の面に反射防止膜を形成することによって、透過率のさらなる向上を図ることができる。反射防止膜は、例えばよく知られた「高屈折率層と低反射率層を交互に積層した4層構成のもの」等を蒸着により形成することができる。
図8に実施の形態を示す光学素子30は「偏光選択性回折素子」である。
偏光選択性回折格子30は、図8(a)の如き構成を持つ。即ち、同図において符号31は透明基板を示している。
図8(b)は、図8(a)に符号33で示す「光学素子表面部分」を拡大して示している。図8(b)に示す如く「凸部321の配列による微細凹凸構造と空穴部311の周期的配列による周期構造(図8(a)において符号32で示す部分)」が、透明基板31表面の平坦部分31Aを介して微細凹凸構造の凹凸配列方向(図の左右方法)へ周期的に配列して「回折格子」をなしている。即ち、図8(a)に符号32で示す個々の周期構造32が「回折格子の個々の格子」に相当する(請求項5)。
偏光選択性回折素子30は「偏光依存性回折格子」である。周期構造32を通過する光波と平坦部分31Aを通過する光波の位相差が2πのとき、回折波は0次だけの透過波となる。また、位相差がπのときは0次の透過波はなく、全て1次以上の回折波になる。周期構造32における光学的異方性を利用して偏光成分:TE(振動面が図面に平行である。)に位相差:2π」、偏光成分:TM(振動面が図面に直交する。)に「位相差:π」を与えるように「微細凹凸構造と空穴部配列を設定」すると、偏光成分:TE波が素通りし、偏光成分:TMが全て回折する偏光選択性回折素子となる。
このような偏光選択性回折素子においても、空穴部の存在が「反射率ロスを低減」する効果を生じる。
図9に実施の形態を示す光学素子40は「偏光ビームスプリッタ」である(請求項6)。偏光ビームスプリッタ40は、図1、図2に即して説明したものと同様に、透明基板に形成されたサブ波長構造層に微細凹凸構造が形成され、この微細凹凸構造の凹部に連通して、透明基板側に空穴部の周期的配列が形成されている。微細凹凸構造の凸部の断面形状は、図1、図2に例示したような種々の形状が可能である。
等方性の均一媒質により形成されるスカラー領域(格子ピッチが波長よりも十分に大きい)の回折素子では、その回折効率に偏光依存性は発現しないが、格子構造が微細凹凸構造になってピッチがサブ波長領域になると、格子構造に依存した光学異方性、即ち、構造複屈折が発現するので回折効率に偏光依存性が生じる。従って、微細凹凸構造に「偏光ビームスプリッタ」の機能を持たせることができる。
図9の例では、例えば、偏光成分:TMが0次光として直進的に透過し、偏光成分:TEは1次回折光として回折する。回折角が光学素子40に対して45度となるように設定すれば、図の如く、0次光(偏光成分:TM)と1次回折光(偏光成分:TE)とが互いに直交するように分離することができる。この場合にも、空穴部の存在が「反射率ロスを低減」する効果を生む。
以下には、この発明の光学素子を用いる光学装置の実施の形態を説明する。
図10に示す光学装置はプロジェクタ装置(請求項8)である。
3原色に対応する各色の映像を個別に形成する3つの液晶表示素子110、111、112と、これら液晶表示素子から射出した各色の映像光を合成するクロスプリズム113を有し、液晶表示素子とクロスプリズム113との間の3光路に、波長板116、117、118を有している。波長板116、117、118として上に実施の形態を説明した1/2波長板相当の波長板を用いる。
白色光源101から放射された白色光はリフレクタ102により反射され、ダイクロイックミラー103に入射する。ダイクロイックミラー103は、青色波長以下の光を透過させ、青色波長より長い波長の光を反射する。従って、ダイクロイックミラー103に入射する白色光の内、青色成分はダイクロイックミラー103を透過し、緑色成分と赤色成分はダイクロイックミラー103により反射されてダイクロイックミラー104に入射する。
ダイクロイックミラー104は赤色波長以上の波長の光を透過させ、赤色波長より短い波長の光を反射する。従って、ダイクロイックミラー104に入射した光のうち、緑色成分はダイクロイックミラー104に反射され、赤色成分はダイクロイックミラー104を透過する。このようにして、ダイクロイックミラー103、104により白色光源101からの白色光が、赤、緑、青の3原色の成分光に色分解される。
ダイクロイックミラー103を透過した「青色成分光」は、ミラー105により反射されて液晶表示素子110に入射し、ダイクロイックミラー104に反射された「緑色成分光」は液晶表示素子111に入射する。ダイクロイックミラー104を透過した「赤色成分光」はリレーレンズ108、ミラー106、リレーレンズ109、ミラー107により構成される光路を辿って液晶表示素子112に入射する。リレーレンズ108と109とは赤色成分光に対する光路長補正を行う。
液晶表示素子110、111、112は「液晶層を1対の偏光子で挟持」してなり、液晶層を挟持する1対の偏光子は互いに偏光方向を直交させている。
各色成分光は、対応する液晶表示素子の入射側偏光子を透過すると直線偏光となって液晶層に入射する。液晶表示素子110、111、112にはそれぞれ、青色画像、緑色画像、赤色画像を表示するように画像信号が印加され、「投射すべき映像の画素」の位置の液晶層を透過する光は偏光面が90度旋回し、射出側偏光子と同じ偏光方向になって射出側偏光子を透過する。
このようにして、液晶表示素子110からは「青色画像に応じて2次元的に強度変調された青色成分光(以下「青色映像光」という。)」が射出する。同様に、液晶表示素子111からは「緑色画像に応じて2次元的に強度変調された緑色成分光(以下「緑色映像光」という。)」が射出し、液晶表示素子112からは「赤色画像に応じて2次元的に強度変調された赤色成分光(以下「赤色映像光」という。)」が射出する。即ち、液晶表示素子110、111、112は3原色(青、緑、青)に対応する映像を個別に形成する。
これら各液晶表示素子から射出した各色映像光は、その偏光方向が図面の面内に平行な方向となっている。
液晶表示素子110から射出した青色映像光は波長板116に入射し、液晶表示素子111、112からそれぞれ射出した緑色映像光、赤色映像光は、それぞれ波長板117、118に入射する。
波長板116、117、118は「1/2波長板相当」であって、透過する光の直交2成分に対して1/2波長分の位相差を与える。これら波長板に入射する各色映像光は、上記の如く図面に平行な面内に偏光しているから、透過光はその偏光面が入射時の方向から90度旋回し、図面に直交する方向に偏光した光束となって、クロスプリズム113に、それぞれ対応する面から入射する。
クロスプリズム113は、図面に直交する方向からみた断面形状が正方形となる光透過性素材による直方体であり、互いに直交する反射面113a,113bを有している。反射面113aは「青色波長以下の波長の光を反射し、青色波長より長い波長の光を透過するダイクロイックミラー」となっており、反射面113bは「赤色波長以上の波長の光を反射し、赤色波長より短い波長の光を透過するダイクロイックミラー」となっている。
クロスプリズム113に入射する各色映像光のうち、青色映像光は反射面113aに反射され、赤色映像光は反射面113bに反射され、緑色映像光は反射面113a、113bを透過し、いずれも同一の方向となり、色合成されてクロスプリズム113から射出する。射出した光束は投射レンズ114に入射し、投射レンズ114により「表示面」であるスクリーン115上に拡大投射されて投射映像を表示する。
反射面113a、113bは、その「反射光、或いは透過光の偏光軸」について方向性を有し、一般に「一方の偏光方向についてより高透過率」を有する。そこでクロスプリズム113への入射光の偏光方向と反射面の偏光軸を最適化をするためにクロスプリズム113の前段に1/2波長板相当の波長板116、117、118を挿入している。この実施形態においては、青、緑、赤の各色映像光に対して1/2波長板相当の波長板116、117、118を挿入した場合を示しているが、映像光のいずれか1つのみに対して上記波長板を挿入する構成としてもよい。
図11は、図10に示した実施の形態の変形例である。繁雑を避けるため、混同の恐れが無いと思われるものについては図10におけると同一の符号を付し、これらについての説明は図10に関する説明を援用する。
図11のプロジェクタ装置は、図10のプロジェクタ装置の白色光源101とダイクロイックミラー103との間に、均一照明手段201(オプチカルインテグレータ)と偏光変換素子202とを付加したものである。
「オプチカルインテグレータ」である均一照明手段201は、液晶表示素子への照射光の光量を略均一にする手段であり、例えばフライアイレンズ、ロッドレンズ、矩形レンズアレイ等から成る公知のものを適宜利用できる。
偏光変換素子202は、白色光源101からの光を有効に使い、スクリーン上の投射映像を明るくするために液晶表示素子へ入射する光の偏光方向を揃えるのに用いられる。
液晶表示素子110、111、112は、液晶の持つ偏光特性を利用しており、高いコントラストを実現できるが、1対の偏光子で液晶を挟持しているため、図10に示した実施の形態におけるように「各液晶表示素子に入射する照射光が自然偏光状態である」と、各液晶表示素子の「入射側偏光子」を透過する際に、照明光量の1/2が遮断されてしまうことになり、光の利用効率が悪い。
偏光変換素子202は、光源側からの照明光の偏光状態を「照明光の光強度を略保存しつつ、自然偏光状態から直線偏光状態」に変換するものである。このようにして直線偏光化された照明光の偏光方向を、液晶表示素子における入射側偏光子の偏光方向と揃えれば、光源側からの照明光の略100%を投射画像の表示に利用することができる。
図12は、光源からの白色光束が均一照明手段201により均一化され、偏光変換手段202により偏光状態を変換される状態を説明するための図である。
光源側からの白色光束は「1対の集光レンズアレイ(フライアイレンズアレイ)を対向配置して構成」した公知の均一照明手段201を透過して、偏光変換手段202に入射する。偏光変換手段202は、光学基体202Aと、波長板部分202Bとを有している。
図12(a)に示すように、光学基体202Aの部分は、照明光の光軸に対して45度傾いた偏光分離面2021と反射面2022とを有する。
偏光分離面2021は、入射光を偏光面が互いに直交する反射光S(以下「S成分」という。)と透過光P(以下「P成分」という。)に分割する。反射面2022は、S成分を反射してP成分の進行方向と略同じ方向に向ける。
偏光分離面2021と反射面2022の組み合わせを1ユニットとし、このようなユニットの複数ユニットが、照明光の透過領域に渡って設けられて所謂「偏光プリズムレンズアレイ」をなし、アレイを構成する個々の偏光プリズムごとに、透過する照明光をS成分とP成分に分ける。
波長板部分202Bは、光学基体202Aから射出するS成分の偏光面を90度旋回させ、P成分の偏光方向に揃える。このようにして「偏光方向が揃った直線偏光の照明光」が得られる。この照明光の偏光方向は勿論「各液晶表示素子の入射側偏光子の偏光方向」と同じである。
図12(b)は波長板部分202Bの部分を説明する図である。波長板部分202Bは、ガラス平板202B1の片面に形成された「屈折率:1.6以上の材料」による薄層202B2の表面に、断面矩形波状の微細凹凸構造2021B、2022B、2023B等がサブ波長構造として形成され、各微細凹凸構造2021B等は「1/2波長板相当の波長板」としての機能を付与されている。ガラス平板202B1は光学基体202Aにおける「方向の揃った照明光が射出する側の面」に一体化され、微細凹凸構造2021B等は「S成分が射出する部分」に形成されている。なお、波長板部分202Bと光学基体202Aとの接合は、薄層202B2を光学基体202Aの側としてもよく、このようにすると、微細凹凸構造をガラス平板202B1により良好に保護することができる。
またガラス平板202B1を用いず、薄層202B2を光学基体202Aに直接形成してもよい。本実施例に用いられている波長板部202Bとして実施例1で説明した波長板を用いればよい。勿論、ガラス平板202B1の片面に形成された薄層202B2の表面に形成される断面矩形波状の微細凹凸構造2021B、2022B、2023B等を、その凹部がガラス平板202B1に達するように形成し、各凹部に連接して空穴部がガラス平板に形成されるようにして、波長板部分における0次光透過率を高めることができる。
図13は、プロジェクタ装置の実施の別形態の変形例である。
このプロジェクタ装置は「単板式」であり、白色光を放射する照明装置300と、放射された白色光を変調してカラー画像を形成する「液晶表示装置」と、表示されたカラー画像を投射する投射レンズ309を有する。
照明装置300は、基板302と、基板302に搭載されて白色光を放射するLEDチップ301と、LEDチップ301から放射される光の照度分布を均一化するための照度分布均一化手段として「ロッドレンズ303、充填材304a及び反射層305、波長板306」を有する。充填材304aは「ロッドレンズ303よりも屈折率の高い材質」で形成され、ロッドレンズ303のLEDチップ301側の面に凹面として形成された境界面304とLEDチップ301との間の空間に充填されている。ロッドレンズ303の光射出側端面303bに設けられた波長板306は1/4波長板相当である。
「液晶表示装置」は、液晶表示素子380Aとその入射側に配設された偏光子308a、カラーフィルタ308cと、射出側に配設された偏光子308bを有している。偏光子308a、308bは透過させる光の偏光面の方向(偏光方向という)が互いに直交している。カラーフィルタ308cは「白色光を赤・緑・青の3原色に色分解」する。
LEDチップ301は電力を供給されると白色光を放射する。放射された白色光は充填材304a内を伝搬してロッドレンズ303との境界面304に入射し、ロッドレンズ303内に入射する。充填材304aはロッドレンズ303よりも屈折率が高いので、白色光は境界面304においてロッドレンズ303の光軸方向(図の左右方向)に近づくように屈折する。
ロッドレンズ303内を伝搬する白色光は、ロッドレンズ303の壁面で全反射を繰り返しつつ伝搬し、全反射が繰り返されることにより光射出側端面303bにおける照度分布が均一化されていく。
ロッドレンズ303の光射出側端面303bから射出する白色光は1/4波長板306に入射する。LEDチップ301から出射された白色光は「ランダム偏光」であるため1/4波長306をランダム偏光のまま透過する。この白色光は偏光子308aに入射し、偏光子308aの偏光方向に平行なp偏光成分はそのまま透過し、カラーフィルタ308cを介して液晶表示素子308Aに入射する。
偏光子307aの偏光方向に直交するs偏光成分は偏光子307aにより反射され、1/4波長板306に再入射し、例えば「右回りの円偏光」に変換されてロッドレンズ303内を伝搬し、ロッドレンズ303のLEDチップ側の面303aに形成された反射層305で反射され、再度ロッドレンズ303を介して偏光子307aに入射する。反射層305に反射される際、右回りの円偏光は「左回りの円偏光」に変換され、1/4波長板306に入射してp偏光成分に変換され、偏光子307aを透過してカラーフィルタ308cを介して液晶表示素子308Aに入射する。
このようにして、LEDチップ301から放射された白色光はその大部分が効率よく、且つ、均一な照度分布をもってカラーフィルタ308cに入射し、カラーフィルタ308cにより赤・緑・青の3原色に色分解され、液晶表示素子308Aにより画像情報に応じて偏光面を旋回され、偏光子308bを透過するとカラー画像光となり、投射レンズ309によってスクリーン310に投射されてカラー投射画像を形成する。
このプロジェクタ装置は、白色光を放射するLEDチップ301を備えた単一の照明装置300と、カラーフィルタ308cと単一の液晶表示装置を有する「単板式プロジェクタ装置」であり小型軽量かつ低価格に実施することができる。
なお、この実施の形態では白色光を出射するLEDチップ301を有するが、これに代えて、赤・緑・青の光を放射する3種のLEDチップを用いても良い。このようにLEDチップ301の代わりに赤・緑・青の色光を放射する3個のLEDチップを配置した場合「カラーフィルタ81を用い、3個のLEDチップを同時に連続発光」させてもよいが、「カラーフィルタ308cを用いず、上記3個のLEDチップをサイクリックに発光させてもよい。このようにすると、カラーフィルタ308cが不要になり、プロジェクタ装置のさらなる低価格化を図ることができる。
このプロジェクタ装置においては、1/4波長板相当の波長板306と偏光子307a、307bが用いられているが、これら波長板・偏光子として上に説明したリタデーション:0.25λの波長板や偏光ビームスプリッタを用いることができる。
図14は、プロジェクタ装置の実施の別形態の変形例である。
このプロジェクタ装置は反射型液晶表示素子を用いたものである。
光源装置は図13のものと同様であり、白色光を放射するLED410、ロッドレンズ411等を有する。ロッドレンズ411により照度分布を均一化された白色光は1/4波長板相当の波長板412を介して偏光子413を透過し、偏光ビームスプリッタ414の接合面で反射されて反射型液晶表示素子415に入射される。
反射型液晶表示素子415は、映像信号に応じて「入射光の偏光面を旋回させる空間変調」を行うもので、この形態においては「高速スイッチングが可能なLCOS(Liquid Crystal On Silicon)素子が用いられている。映像信号に基づいてp偏光に変換された反射光は、偏光ビームスプリッタ414を透過して画像光として投射レンズ416に入射し、スクリーン417上に拡大投射される。
この形態例に用いられている偏光子413や偏光ビームスプリッタ414として、先に説明した偏光ビームスプリッタ(図9)を、また1/4波長板相当の波長板412として上述のリタデーション:0.25λの波長板を用いることができる。
図15は、光学装置の実施の1形態である光ピックアップ装置を説明するための図である。光ピックアップ装置500は、半導体レーザ等の光源502から出射した光を、回折格子503、偏光ビームスプリッタ504、1/4波長板505、コリメータレンズ506および対物レンズ507を順次透過させて光記録媒体509に照射し、その反射光(戻り光)を、対物レンズ507、1/4波長板505を介して偏光ビームスプリッタ504に入射させ、シリンドカルレンズ510に向けて反射させる。シリンドリカルレンズ510により非点収差を与えられた戻り光は、フォトディテクタ511によって読み出しデータ等として検出される。
回折格子503として上述の偏光選択性回折素子(図8)を、偏光ビームスプリッタ504として上述の偏光ビームスプリッタ(図9)を、1/4波長板5として前述のリタデーション:0.25λの波長板を用いることができる。
光学素子の実施の形態例を説明するための図である。 光学素子の実施の別形態例を説明するための図である。 微細凹凸構造による構造複屈折を説明するための図である。 この発明の光学素子の光学機能を説明するための図である。 光学素子の光学機能を説明するための図である。 光学素子の光学機能を説明するための図である。 光学素子の光学機能を説明するための図である。 偏光選択性回折格子の実施の1形態を説明するための図である。 偏光ビームスプリッタの実施の1形態を説明するための図である。 光学装置としてのプロジェクタ装置の実施の1形態を説明する図である。 光学装置としてのプロジェクタ装置の実施の別形態を説明する図である。 図10のプロジェクタ装置の均一照明手段と偏光変換手段を説明するための図である。 光学装置としてのプロジェクタ装置の実施の他の形態を説明する図である。 光学装置としてのプロジェクタ装置の実施の他の形態を説明する図である。 光学装置としての光ピックアップ装置の実施の1形態を説明する図である。
符号の説明
10 透明基板
20 サブ波長構造層
11 空穴部
21 微細凹凸構造の凸部

Claims (9)

  1. 透明基板上に、上記透明基板よりも屈折率の高い薄層によるサブ波長構造層を有し、
    上記サブ波長構造層に、1次元格子状の微細凹凸構造が、使用波長より小さいサブ波長周期で、且つ、凹部が透明基板とサブ波長構造層との境界面に達するように形成され、
    上記透明基板は、上記サブ波長構造層側に、上記微細凹凸構造の凹部に連通して、上記1次元格子状の微細凹凸構造と同周期に配列した空穴部を有し、
    上記空穴部は、上記境界面に直交する深さ方向において、幅が不均一であり、該幅の最大幅が、上記サブ波長構造層と上記透明基板との境界面位置における上記微細凹凸構造の凹部の幅よりも大きいことを特徴とする光学素子。
  2. 請求項1記載の光学素子において、
    サブ波長構造層に形成された1次元格子状の微細凹凸構造の周期方向における断面形状が、凸部の幅が上記凸部の高さ方向に変化する形状であることを特徴とする光学素子。
  3. 請求項2記載の光学素子において、
    サブ波長構造層に形成された1次元格子状の微細凹凸構造の周期方向における断面形状が、台形形状もしくは三角形形状もしくは部分円形状または部分楕円形状であることを特徴とする光学素子。
  4. 請求項1または2または3記載の光学素子において、
    波長板としての光学機能を有することを特徴とする光学素子。
  5. 請求項1〜3の任意の1に記載の光学素子であって、
    サブ波長構造層の微細凹凸構造と空穴部の周期的配列による周期構造が、透明基板表面の平坦部分を介して、上記微細凹凸構造の凹凸配列方向へ周期的に配列し、偏光選択性の回折格子を構成していることを特徴とする光学素子
  6. 請求項1〜3の任意の1に記載の光学素子であって、
    偏光ビームスプリッタとしての光学機能を有することを特徴とする光学素子
  7. 請求項1〜6の任意の1に記載の光学素子を有する光学装置
  8. 請求項7記載の光学装置において、
    光源からの光束を液晶表示素子に導光し、この液晶表示素子の表示画像を投射レンズで表示面上に投射するプロジェクタ装置として構成され、
    上記光源と上記投射レンズとの間の光路上に、請求項1〜6の任意の1に記載の光学素子が配置されたことを特徴とする光学装置
  9. 請求項7記載の光学装置において、
    光源からの光束を光記録媒体に、対物レンズを介して集光照射して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置として構成され、
    上記光源と上記対物レンズとの間の光路上に、請求項1〜6の任意の1に記載の光学素子が配置されたことを特徴とする光学装置。
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