JP4838451B2 - 傾動椅子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、座部を周期的に前後傾動させて着座者の疲労を緩和させる椅子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、作業者が事務関係の業務を多く取り扱うような場合、着座状態での作業時間が長くなり、長時間の着座姿勢を維持することに基づいて身体に疲労を誘発することが多い。そこで、現在このような長時間の作業に対して着座者の疲労を緩和させるように、座部を一定周期でゆっくりと動かすようにした椅子が提案されている。このような椅子は、座部を支持軸などで支持し、また、座部の前方を一定周期で昇降させることによって座部をゆっくりと傾動させ、着座者の臀部、大腿部、腰背部の疲労および下肢の腫脹を軽減するようにしたものである。より詳しくは、座部の傾動機構を機械運動的なものに転換し、座面を機械的に前後および/または左右に傾動反復運動させ、座位姿勢に係る股関節角度(体幹大腿角)、腰仙角(仙岬角)および/または体幹側屈角度を連続的に変更してゆくことにより筋肉の可動性を高め、腰背部を主とする骨盤周りの筋肉の持続的緊張を緩和し、かつ座面との接触部位を移動させることにより臀部及び大腿部の痛みや下肢の腫脹を軽減するようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このように座部を一定周期で傾動させるようにした場合、特に体格の違いや着座姿勢の違いなどによって坐骨結節部の位置と傾動支点位置とが離れると傾動動作によって着座者の視線の上下動が大きくなってしまい、かえって目眩などの不快感を与えてしまう可能性がある。また、体格などの違いにより坐骨結節部の位置に個人差があることも分かっている。
【0004】
そこで、本発明は、このような不具合に着目してなされたもので、着座者の体型や着座状態などに対応して最適に疲労を軽減できるような傾動椅子を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の傾動椅子は上記課題を解決するために、座部を傾動可能に支持する支持部を備え、当該支持部によって支持される座部を一定周期で傾動させる傾動機構、当該支持部に対して座部の前方を昇降させる昇降機構とを設けることによって着座者の臀部、大腿部、腰背部の疲労および下肢の腫脹を軽減するようにした傾動椅子において、前記支持部によって支持される座部の支点位置を座部の前後方向に変更しうる変更手段を設けるようにしたものである。
【0006】
このように構成することによって、着座者の体型や着座状態に対応して傾動支点位置を変更することができ、目眩の発生を低減させて傾動椅子本来の効果である着座者の疲労を緩和させることができるようになる。
【0007】
また、このように座部を一定周期で傾動させる方法として、座部を支持する支持部から離れた位置を昇降させることによって当該座部を一定周期で傾動させる傾動機構を設ける。
【0008】
このように、着座者の荷重の加わる座部の位置を回転可能に支持する一方、相対的に大きな荷重の加わりにくい座部の支持部から離れた位置を昇降させるようにすることによって、小さな駆動力で座部を傾動させることができる。
【0009】
更に、変更手段として、支持部を構成する支持軸を座部の前後方向に連続的に変更しうるように構成する。
【0010】
これによって、無段階的に座部の傾動支点位置を変化させることができ、着座者の体型などに応じて細かな調整を行うことができるようになる。
【0011】
また、変更手段として、支持部を構成する支持軸を座部の前後方向に段階的に変更しうるように構成する。
【0012】
このように構成することによって、変更手段を簡単なものに構成することができ、更に、支持部の取付位置を座部の前後方向に変更できるように構成した場合は、複雑な機構を設けることなくより簡単に支持位置を変更することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態を示す傾動椅子100の概観側面図であり、また、図2は座部3を傾動させるための傾動機構4および補強部材32を示す正面図、図3はそのA−A断面図を示したものである。また、図4から図6は座部3の後方の支持部6における種々の実施の形態を示したものである。
【0014】
この傾動椅子100は、事務用および作業用、監視用として使用されるものであり、脚部1と座部3との間に機械的に構成された傾動機構4を備え、この傾動機構4による傾動動作によって座部3の傾斜角度を一定周期でゆっくり変化させるとともに、傾動支点位置を前後方向に変化させることによって、着座者の体型などに応じて坐骨結節部近傍に傾動支点を位置させ、目眩の発生を低減させつつ着座者の疲労を緩和させうるようにしたものである。以下、この傾動椅子100の構成について詳細に説明する。
【0015】
傾動椅子100の脚部1は、脚羽根10を有する脚柱11に傾動機構4と背支桿20を取り付けるようにしたものであり、この脚柱11の上端に傾動機構4のケーシング5を、また、この脚柱11の後方に背支桿20を固定して取り付けるようにしたものである。
【0016】
この脚部1の後方に取り付けられる背支桿20は、その先端側にクッション部材を有する背もたれ本体21を取り付けており、この背支桿20と背もたれ本体21からなる背もたれ部2を座部3に対して分離かつ独立して設けるようにしている。このように背もたれ部2を座部3に対して分離独立して設けることによって、座部3の傾斜角度を変化させた場合に、背もたれ部2と座部3との間に挟まれた着座者の腰部近傍の屈曲動作と伸展動作を繰り返し行なえるようにし、筋肉の可動性を促進させている。より詳しくは、座部3と背もたれ部2との角度を小さくした場合に座部3と背もたれ部2とで挟まれた着座者の腰部近傍を屈曲するようにし、また、座部3と背もたれ部2の角度を大きくした場合に着座者の腰部の屈曲を伸展するようにしている。なお、本実施の形態においては、背もたれ部2を固定式のものとして説明するが、適宜、脚部1に対して後傾可能な機構を採用することもできる。
【0017】
一方、この背もたれ部2に対応して設けられる座部3は、座面側に設けられたクッション部材30と、このクッション部材30の裏側に設けられる座板31によって構成される。この座板31は、クッション部材30を略全面に亘って支持するように薄板状の部材によって構成されるものであり、その下面側に座板31より小さく設けられた金属製の補強部材32を取り付けるようにしたものである。
【0018】
この座部3の下方に取り付けられる補強部材32は、その下面側に前方軸受79などを取り付け、この補強部材32を介して支持部材61や前方軸受79などから傾動動作時の力を補強部材32にて分散させ、更に、この補強部材32よりも大きい座板31を介してクッション部材30全体にこの力を分散させるようにしている。
【0019】
この座部3を傾動させる傾動機構4は、図1や図2などに示すように、座部3の後方を支持するための支持部6と、外部から供給される電力によって座部3の前方を昇降動作させる昇降機構7とを備え、この支持部6と昇降機構7をケーシング5に取り付けて座部3を基準位置から3度前後傾動させるようにしたものである。
【0020】
この昇降機構7は、家庭用電源によって駆動するモータ70の回転運動を減速機71にて減速させ、この減速させた回転軸72の回転運動を継手73を介して偏芯部74(図3参照)に伝えて昇降アーム75を昇降させるようにしたものであり、より具体的には、A−A断面図である図3に示すように、継手73から伸びる軸に円形の回転部材を備えた偏芯部74を固定して取り付け、また、この偏芯部74を回転可能に保持する保持部材76にその偏芯部74の外形と同形状の円形開口部77を設けて偏芯部74をその内部で回転できるようにし、これによって、保持部材76および昇降アーム75を一定周期で昇降させるようにしたものである。そして、この昇降アーム75の上端側に、ピン78を回転可能に保持する前方軸受79を設け、この前方軸受79にピン78を貫通させることによって、座部3の前方を一定周期で規則正しく昇降させることで座を前後方向に傾動させるようにしている。
【0021】
一方、座部3の後方に設けられている支持部6は、ケーシング5の上面および補強部材32の下面に跨って設けたものであり、図4に示すように、ケーシング5および補強部材32それぞれ対向するように取り付けたスライドレール60と、このスライドレール60の対向する内部でスライド可能にした支持部材61とを備え、この支持部材61を傾動椅子100の前後方向に連続的にスライドさせるようにした調整機構62を設けて構成したものである。なお、図4において(a)は支持部6の正面図を示し、(b)は(a)のB−B断面図を示したものである。
【0022】
この支持部材61は、ケーシング5および補強部材32の左右両端近傍にそれぞれ設けられており、スライドレール60の溝部60aに嵌め込まれるスライド部61aと、このスライド部61aの左右から直立する後方軸受61bとを設け、この後方軸受61bに支持軸61dを回転可能に支持させるようにしている。また、下側のスライド部61aの中央後方には、前後方向に貫通するネジ孔を有するナット部61cを取り付けており、このナット部61cを介して支持部材61をスライドレール60に沿ってスライドさせられるようにしている。
【0023】
また、このスライドレール60は、ケーシング5の上面部分および補強部材32の下面部分に固定して取り付けるようにしたものであり、正面視略L字状のスライドレール60を互いに向かい合わせることによって対向する溝部60aを形成するようにしている。そして、この溝部60aにスライド部61aを嵌め込み、調整機構62を介して支持部材61を前後方向にスライドさせて傾動支点位置である支持軸61dの位置を変更し、ロックネジ60bで固定できるようにしている。
【0024】
この調整機構62は、ネジ部材62aの基端側をその位置で回転可能に保持するケーシング5に固定された固定部材62bと、下側の支持部材61の中央後方に設けられたナット部61cなどによって構成されており、支持部材61をスライドさせる場合、ネジ部材62の先端側をナット部61cにねじ込むとともに、座部3の後方からこのネジ部材62aを回転させることによって、ケーシング5に固定された固定部材62bに対して支持部材61を連続的にスライドさせるようにしたものである。
【0025】
次に、このように構成された傾動椅子100の傾動機構4を駆動させて座部3を一定周期で傾動させる場合の動作について説明する。
【0026】
まず、着座者が着座した状態でケーシング5の側面に設けられた電源スイッチSWをONにし、これによってモータ70に電力を供給する。そして、モータ70を駆動させて図示しないモータ回転軸を回転させるとともに減速機71によってこの回転を減速し、この減速された回転力を継手73を介して偏芯部74に伝達する。そして、回転軸72を中心に偏芯部74を回転させて、この偏芯部74を保持する保持部材76およびこの保持部材76に取り付けられている昇降アーム75を一定周期で昇降させる。そして、この昇降アーム75の昇降動作に基づいてピン78および前方軸受79と一体となって座部3の前方を昇降させ、この昇降動作に基づいて、座部3の後方に設けられた支持軸61dを中心に座部3を15秒から20秒程度の周期でゆっくりと傾動させる。
【0027】
一方、着座者が自己の体型や着座姿勢などに基づいて傾動動作に違和感を感じる場合、例えば、支持軸61dの前方に着座することによって上体部分が上下動して視線に変動を来たしてしまうような場合、座部3の後方からネジ部材62aを回転させて、最適な傾動支点位置に支持部材61をスライドさせる。そして、これによって着座者の体型や好みの着座姿勢に対応した傾動支点位置における傾動動作を可能にする。
【0028】
このように、上記実施の形態では、傾動機構4を用いて座部3を一定周期で傾動させることによって着座者の臀部、大腿部、腰背部の疲労および下肢の腫脹の軽減、腰部の疲労の緩和、目眩を軽減するようにした傾動椅子100において、座部3の後方から調整機構62を構成するネジ部材62aを介して座部3の傾動支点位置を前後方向にスライドできるようにしたので、着座者の体型や着座状態に適した傾動支点位置を選択できるようになる。
【0029】
また、この実施の形態では、座部3の後方からネジ部材62aを回転させることによって傾動支点位置を変更することができるため、傾動椅子100を分解することなく簡単に傾動支点位置を変更することができるようになる。
【0030】
なお、上記実施の形態では、変更手段としてスライド機構を有する支持部6について説明したが、図5および図6に示す他の実施の形態を用いて変更手段を実現することもできる。
【0031】
すなわち、このように傾動支点位置を変更する場合、図5に示すように、予め補強部材32とケーシング5に複数のネジ孔64を前後方向に段階的に設けておき、このように設けられたネジ孔64に支持部材を位置決めしてネジ部材63で固定できるようにしても良い。
【0032】
また、図6に示すように、複数の軸孔610aを有する後方軸受610bの一方を補強部材32に設け、他方の後方軸受610bを向かい合わせてケーシング5に取り付ける。そして、向かい合って設けられた後方軸受610bの軸孔610aの孔位置を合わせ、この状態で複数の軸孔610aのうち、1つの任意の軸孔610aにピン状の支持軸61dを差し込んで取り付けるようにする。このように段階的に支持軸61dの位置を変更できるようにすることによって、スライドレール60や複雑な調整機構62などを設ける必要がなくなり、より簡単な構成で傾動支点位置を前後方向に変更することができるようになる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々変更することができる。例えば、上記実施の形態においては、傾動機構4として支持軸61dを支点として座部3の前方を昇降させる構成について説明したが、これに限らず、座部3の傾動支持軸自体に回転駆動力を与え、その傾動支持軸を回転駆動させることによって座部3を周期的に傾動させるようにしても良く、また、体型などに応じて傾動支点位置を変更させる場合は、この回転駆動する支持軸自体を前後方向にスライドさせるようにしても良い。
【0034】
【発明の効果】
本発明の傾動椅子は、座部を傾動可能に支持する支持部を備え、当該支持部によって支持される座部を一定周期で傾動させる傾動機構を設けることによって着座者の臀部、大腿部、腰背部の疲労および下肢の腫脹を軽減するようにした傾動椅子において、前記支持部によって支持される座部の支点位置を座部の前後方向に変更しうる変更手段を設けるようにしたので、着座者の体型や着座状態に対応して傾動支点位置を変更することができ、目眩の発生を低減させて傾動椅子本来の効果である着座者の疲労を緩和させることができるようになる。
【0035】
また、このように座部を一定周期で傾動させる方法として、座部を支持する支持部から離れた位置を昇降させることによって当該座部を一定周期で傾動させる傾動機構を設けたので、着座者の荷重の加わる座部の位置を回転可能に支持する一方、相対的に大きな荷重の加わりにくい座部の支持部から離れた位置を昇降させるようにすることによって、小さな駆動力で座部を傾動させることができる。
【0036】
更に、変更手段として、支持部を構成する支持軸を座部の前後方向に連続的に変更しうるように構成すれば、無段階的に座部の傾動支点位置を変化させることによって、着座者の体形などに応じて細かな調整を行うことができる。
【0037】
また、変更手段として、支持部を構成する支持軸を座部の前後方向に段階的に変更しうるように構成すれば、変更手段を簡単なものに構成することができ、特に、支持部の取付位置を座部の前後方向に変更させるように構成した場合は、複雑な機構を設けることなくより簡単に支持位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す傾動椅子の概観側面図。
【図2】同形態の傾動機構の要部正面図。
【図3】図2におけるA−A断面図。
【図4】同形態における支持部を示す図。
【図5】同形態における支持部の第二の実施の形態を示す側面図。
【図6】同形態における支持部の第三の実施の形態を示す側面図。
【符号の説明】
100・・・傾動椅子
3・・・座部
4・・・傾動機構
6・・・支持部
7・・・昇降機構
61d・・・支持軸
Claims (4)
- 座部を傾動可能に支持する支持部と、当該支持部に対して座部の前方を昇降させる昇降機構とを備え、当該支持部によって支持される座部を一定周期で傾動させる傾動機構を具備してなる傾動椅子において、
前記支持部によって支持される座部の支点位置を座部の前後方向に変更しうる変更手段を設けたことを特徴とする傾動椅子。 - 前記変更手段が、支持部を構成する支持軸を座部の前後方向に連続的に変更しうる手段であることを特徴とする請求項1に記載の傾動椅子。
- 前記変更手段が、支持部を構成する支持軸を座部の前後方向に段階的に変更しうる手段であることを特徴とする請求項1に記載の傾動椅子。
- 前記変更手段が、支持軸を有する支持部の取付位置を座部の前後方向に変更しうる手段であることを特徴とする請求項1に記載の傾動椅子。
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