本発明は、x、y、zがそれぞれ個別の材料系に対してゼロまたはゼロでない値である可能性があるとき、あるいはx、y及びzの合計が1に等しいとき、化学式B1-x-y-zInxGayAlzNによって総括的に記述可能な材料系群の構成方法及びその材料系群から構成された半導体構造を対象とする。本明細書で述べる第1の実施形態、それはIn0.05Ga0.75Al0.2Nの形でさらに具体的に記述されるInGaAlN材料系を説明するものであるが、この第1の実施形態では、x+y+z=1であって、それによりボロン成分が消去されることが分かる。本明細書で述べる第2の実施形態では、In0.01Ga0.96Al0.03N材料が使用され、やはりx+y+z=1であることが分かる。第3の実施形態は、量子井戸障壁層用のIn0.15Ga0.84Al0.01N材料及びIn0.16Ga0.80Al0.04N材料とともに、In0.15Ga0.70Al0.15N材料からなるクラッド層を使用する。やはり、両材料は等式x+y+z=1に従うことが分かる。
後に説明する第5の実施形態はAlNクラッド材料とともにB0.01Al0.95Ga0.04N材料系を使用する一方、第6の実施形態はB0.04Al0.63Ga0.33N材料及びB0.03Al0.70Ga0.27Nからなる多重量子井戸層とともにクラッド層用にB0.01Al0.95Ga0.04N材料を使用する。これら材料のそれぞれは総括化学式においてx=0であることが分かる。
同様に、第7の実施形態は、B0.01Ga0.86In0.13N材料及びB0.01Ga0.90In0.09N材料からなる量子井戸層とともにB0.03Ga0.96In0.01N材料からなるクラッド層を使用している。第8の実施形態は、B0.01Ga0.86In0.13N材料及びB0.01Ga0.90In0.09Nからなる量子井戸層とともにクラッド層用にB0.03Ga0.96In0.01N材料を使用している。最後に、第9の実施形態は、B0.01In0.08Al0.91N材料及びB0.02In0.07Al0.91N材料からなる量子井戸層とともにクラッド層用にB0.01In0.01Al0.98N材料を使用している。第7及び第8の実施形態では、z=0の場合にB1-x-y-zInxGayAlzNの総括化学式が当てはまり、第9及び第10の実施形態では、y=0であることが分かる。また、本発明の総括化学式に従うとともに、x、y、zがそれぞれゼロではなく合計が1にならない5元材料系が存在することも理解できる。
まず、図2では、本発明の第1の実施形態にかかる半導体構造を断面図で示す。本発明は複数の素子タイプに適用されるが、例示のため、図面の多くにおいて示す半導体構造はレーザダイオードとする。特に図1に示すように、n型GaN基板100が設けられており、その上には、n型GaN第1クラッド層105(通常0.5μm厚)が形成されている。その後、通常およそ1.5μm厚のn型In0.05Ga0.75Al0.2N材料からなる第2のクラッド層110が形成された後、典型的な構成ではおよそ35オングストローム厚のIn0.02Ga0.85Al0.13N材料からなる4つの障壁層と3対の形で構成されるおよそ35オングストローム厚のIn0.01Ga0.96Al0.03N材料からなる3つの量子井戸層とから構成された多重量子井戸活性層115が形成される。次に、p型In0.05Ga0.75Al0.2N(通常およそ1.5mm厚)の第3のクラッド層120が形成された後、p型GaN第5クラッド層125(通常およそ0.5μm厚)が形成される。p型GaN第4クラッド層125上には、1個のストライプ状ウィンドウ領域135(3.0μm幅)を有するSiO2層130が形成される。n型GaN基板100上には第1の電極140が形成される一方、SiO2層130及びウィンドウ領域135上には第2の電極145が形成される。
活性層115から350nmの波長領域を有する紫外光を放出させるために、井戸層のInNモル分率、GaNモル分率及びAlNモル分率がそれぞれ0.01、0.96及び0.03に設定されている。相分離に起因する欠陥を回避するため、様々な構成層のそれぞれにおいてGaNモル分率x及びAlNモル分率yをx+1.2yが一定の値にほぼ等しいという条件を満たすように設定することによって、様々な構成層の格子定数を互いに一致させている。大部分の実施形態は一定値が1±0.05範囲内にあるが、典型的な実施形態では、一定値がほぼ1、例えば1±0.1に設定される。
材料を適正に選択することにより、n型第2クラッド層110及びp型第3クラッド層120のバンドギャップエネルギーが3対の多重量子井戸活性層115のバンドギャップエネルギーより大きくなる。これにより、n型第2クラッド層110及びp型第3クラッド層120からの注入キャリアが活性層115内に閉じ込められ、キャリアが再結合して紫外光を放出する。さらに、n型第2クラッド層110及びp型第3クラッド層120の屈折率が多重量子井戸活性層115の屈折率より小さいので、光の場が横方向に閉じ込められる。
電極145からの注入電流は閉じ込められてウィンドウ領域135を流れるので、ウィンドウ領域135下方の活性層115内の領域が強く活性化される。これにより、ウィンドウ領域6a下方の活性層内の局部モード利得がSiO2層下方の活性層内の局部モード利得より高くなる。したがって、第1の実施形態の構造内に、レーザ発振をもたらす利得導波による導波路が形成される。
図3は、第1の実施形態に従って構成されたレーザダイオードの放出光対駆動電流の図を示す。レーザダイオードはデューティサイクル1%のパルス電流で駆動される。閾値電流密度は5.5kA/cm2であることが分かる。
図4Aないし図4Dは、第1の実施形態にかかる典型的なレーザダイオードを構成するのに必要な製造工程の概要を順に示す。図4Aないし図4Dから得られる構造は図2に示すものと類似しているので、可能な場合には要素に同じ参照番号を使用することとする。最初に図4Aに示すように、n型GaN基板100が設けられており、その上には、n型GaN第1クラッド層105が成長している。第1クラッド層105は通常およそ0.5μm厚である。その後、通常およそ1.5μm厚のn型In0.05Ga0.75Al0.2N第2クラッド層110が形成される。
次に、およそ35オングストローム厚のIn0.02Ga0.85Al0.13N材料からなる4つの障壁層と、それぞれおよそ35オングストローム厚の3層のIn0.01Ga0.96Al0.03N材料からなる3つの量子井戸を形成することにより、多重量子井戸活性層115が形成される。その後、およそ1.5μm厚のp型In0.05Ga0.75Al0.2N材料からなる第3クラッド層120が形成された後、およそ0.5μm厚のp型GaNからなる第4クラッド層125が形成される。通常、各層は有機金属化学蒸着(MOCVD)法あるいは分子線エピタキシ(MBE)法のどちらかによって形成される。
その後、図4Bに示すように、p型GaN第4クラッド層125上に、例えば化学蒸着(CVD)法によって二酸化珪素(SiO2)層130が形成される。フォトリソグラフィとエッチングまたは他の適切な方法とを用いて、図4Cに示すように、ウィンドウ領域135が形成される。ウィンドウ領域135は、少なくとも一部の実施形態ではストライプ状であってもよい。最後に、図4Dに示すように、蒸着あるいは他の適切な方法により、n型GaN基板100とSiO2層130上にそれぞれ第1の電極140と第2の電極145が形成される。
次に、図5を参照することにより、本発明にかかる半導体構造の第2の実施形態をより深く理解することができる。第1の実施形態と同様に、第2の実施形態の典型的な適用例はレーザダイオードの作成である。第2の実施形態の構造により、実屈折率導波を有する構造内に導波機構を組み込むことができる。これにより、基本横モードで動作可能な低閾値電流レーザダイオードが提供される。
さらに図5に基づいて、第1の実施形態に関して同じ要素を同じ参照番号で示す。n型GaN基板100に、およそ0.5μm厚のn型GaNから第1クラッド層105が形成されている。続いて、およそ1.5μm厚のIn0.05Ga0.75Al0.2N材料からn型第2クラッド層110が形成されている。その後、およそ35オングストローム厚のIn0.02Ga0.85Al0.13N材料からなる4つの障壁層とおよそ35オングストローム厚のIn0.01Ga0.96Al0.03N材料からなる3つの井戸層とを備えた多重量子井戸活性層115が形成されている。次に、およそ1.5μm厚のIn0.05Ga0.75Al0.2N材料からなる第3のp型クラッド層120が形成されている。その後、第3クラッド層120のリッジ構造500全体に、およそ0.5μm厚のp型GaN第4クラッド層125が形成されている。そして、第3及び第4クラッド層が部分的に除去されてリッジ構造500が形成されている。その後、第3クラッド層120の残存する露出部分と第4クラッド層125を覆うように二酸化珪素(SiO2)層130が形成されている。第4及び第3クラッド層125、120の上方には、それぞれSiO2層を介して、およそ2.0μm幅のストライプ状のウィンドウ領域135が形成されている。第1の実施形態と同様に、n型GaN基板100上には第1の電極140が形成され、SiO2層130上には第2の電極145が形成されている。
第1の実施形態と同様に、活性層14から350nm領域の波長を有する紫外光を放出させるために、井戸層内のInN、GaN及びAlNのモル分率がそれぞれ0.01、0.96及び0.03に設定されている。同様に、各構成層の格子定数を一致させて相分離に起因する欠陥を回避するため、全ての層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yはx+1.2yが一定の値にほぼ等しいという条件を満たしている。第1の実施形態と同様に、x+1.2yは、各層の等価格子定数がGaNの格子定数とほぼ等しくなるようにほぼ1に等しい値に設定されている。同様に、クラッド層のバンドギャップエネルギーが活性層のバンドギャップエネルギーより大きい値に維持され、紫外光の放出が可能になっている。また、材料の屈折率は第1の実施形態に関連して述べたとおりであり、光の場を横方向に閉じ込められるようになっている。
第1の実施形態の動作と同様に、SiO2層が注入電流を拘束するので、活性層115のウィンドウ領域135下方の領域が強く活性化される。その結果は、やはり、ウィンドウ領域135下方の活性層内の局部モード利得がSiO2層130下方の活性層内の局部モード利得より高くなる。これにより、リッジストライプ領域の外側と比較して内側において横方向の実効屈折率が相対的に高くなることと相俟って、実効屈折率ステップ(Δn)が得られる。これにより、実屈折率導波により形成された組込み式の導波路を有する構造が得られる。したがって、第2の実施形態の構造により、基本横モードで動作可能な低閾値電流レーザダイオードが提供される。
図6は第2の実施形態にかかるレーザダイオードの放出光対駆動電流特性をグラフ形式で示す。レーザダイオードは持続波電流で駆動される。閾値電流は32.5mAであることが分かる。
次に、図7Aないし図7Eに、第2の実施形態にかかる半導体レーザダイオードの典型的な素子の主要製造工程の概要を示す。
まず、図7A及び図7Bに示すように、n型GaN基板100上への第1及び第2クラッド層105、110及び3対の多重量子井戸活性層115の形成は第1の実施形態と同じである。その後、第3及び第4のクラッド層120、125が形成された後、通常はエッチングにより、一部が除去されてリッジ構造500が形成される。既に述べたように、典型的な実施形態では、MOCVD法あるいはMBE法のどちらかにより様々な層が順次形成される。
その後、図7Cないし図7Eに示すように、第5及び第3クラッド層125、120上にそれぞれ、通常はCVD法により二酸化珪素層130が形成され、その後、第1の実施形態と同様に、ウィンドウ領域135が形成される。その後、電極140、145が構造体に蒸着されるかあるいは接合される。
次に、図8を参照することにより、本発明の第3の実施形態をより深く理解できる。第3の実施形態はモル分率がわずかに異なることによって青色光の放出を可能にするが、その他の点では第1の実施形態と同様である。したがって、n型GaN基板100をn型GaN第1クラッド層105とともに依然として使用する。しかしながら、第2クラッド層810が一般におよそ1.5μm厚のIn0.15Ga0.70Al0.15N材料からなる一方、3対の量子井戸活性層815が一般にIn0.16Ga0.80Al0.04N材料からなる4つの障壁層とIn0.15Ga0.84Al0.01N材料からなる3つの障壁層とを備えている。第3クラッド層820が一般にp型In0.15Ga0.70Al0.15N材料からなる一方、第4クラッド層125が、第1の実施形態と同様に、p型GaN材料である。各層の厚さは第1の実施形態の場合とほぼ同じである。SiO2層130、ウィンドウ領域135、第1及び第2の電極140、145が構造体を完成させる。
活性層24から400nmの波長領域で青色光を放出させるため、井戸層815内のInN、GaN及びAlNのモル分率がそれぞれ0.15、0.84及び0.01に設定されている。構成層の格子定数を一致させて相分離誘因性欠陥の発生を回避するため、各層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yは、x+1.2yがおよそ0.85±0.1の一定の値にほぼ等しいという条件を満たすように設定されており、既に述べたように、大部分の実施形態はその一定の値が0.85±0.05の範囲内になる。
第1の実施形態が紫外光を放出する一方で、第3の実施形態は青色光を放出するが、クラッド層のバンドギャップエネルギーは依然として3対の多重量子井戸活性層815のバンドギャップエネルギーよりも高く設定されている。既に述べたように、これにより、活性層815内でのキャリアの閉じ込めと再結合が可能になる。第1の実施形態と同様に、第2及び第3のクラッド層の屈折率は、意図的に、活性層よりも小さく、その結果、光の場を横方向に閉じ込めている。同様に、ウィンドウ領域135の下方に電流を強く注入することにより、活性層のSiO2層130下方の部分に対して活性層内で比較的高い局部モード利得が発生し、その結果、やはり、レーザ発振をもたらす導波路が得られる。
図9は第3の実施形態にかかるレーザダイオードの放出光対駆動電流特性の図を示す。レーザダイオードはデューティサイクル1%のパルス電流で駆動される。閾値電流密度は5.0kA/cm2であることが分かる。
図10Aないし図10Dは、第3の実施形態の一実施例における半導体レーザダイオードの一連の製造工程を示す。製造工程は図4Aないし図4Dに関連して説明したものと同じであるので、さらに説明は行わない。
次に、図11を参照することにより、本発明の第4の実施形態をより深く理解することができる。第4の実施形態は、第3の実施形態と同様に、青色光を放出するよう構成され、したがって、第3の実施形態と同じモル分率を有している。しかしながら、第4の実施形態は、第2の実施形態と同様に、導波路として作用するリッジ構造を提供するよう構成されている。モル分率が図8のものと同様であるので、同様の要素は図8で使用したのと同じ参照番号を使って説明する。
引き続き図11を見れば、第4の実施形態の構造がGaN基板100を有し、その上に、第1クラッド層105が形成され、その後に第2クラッド層810が形成されていることが分かる。それらの上方には、3対の多重量子井戸活性層815が形成され、その後に、第3クラッド層820が形成されている。既に述べたように、第4クラッド層125、二酸化珪素層130、ウィンドウ135及び電極140、145も全て形成されている。InN、GaN及びAlNのモル分率を含む材料は、図8に示すとおりであり、すなわち、それぞれ0.15、0.84及び0.01である。同様に、各層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yは、先の実施形態と同様、x+1.2yがおよそ0.85±0.1の一定の値に等しいまたはほぼ等しいという条件を満たすように設定されている。バンドギャップエネルギー、屈折率、及び電流注入時のモード利得はすべて第3の実施形態に関連してほぼ記述したとおりであり、さらに説明はしない。
図12は第4の実施形態に従って構成されたレーザダイオードの駆動電流対放出光を図示している。レーザダイオードは持続波電流で駆動される。閾値電流は28.5mAであることが分かる。
図13は、第4の実施形態にかかる半導体レーザダイオードの製造工程の概要を示す。これらの工程は、図7Aないし図7Eに関連して記述したものと基本的に同一であり、さらに説明はしない。
次に、図14を参照することにより、GaNモル分率x及びAlNモル分率yの選択と、InGaAlN構成層の場合の両モル分率の関係をより深く理解できる。特に、相対モル分率は、0<x+y<1、1<=x/0.80+y/0.89の関係をほぼ満足させることが必要である。
図14は、様々な成長温度に対してグラフ化された相分離領域の境界を示す。図14の線は様々な温度に関して組成的に不安定な(相分離)領域と安定した領域との間の境界を示している。InN-AlN線と境界線とで囲まれた領域は相分離含有率領域を示す。3元合金InAlN及びInGaNは、InNとAlNとの間及びInNとGaNとの間の格子不整合が大きいために相分離領域が大きいことが分かった。他方、3元合金GaAlNは、約1000℃の温度での結晶成長の場合にAlNとGaNとの間の格子不整合が小さいために相分離領域がないことが分かる。
したがって、結晶成長温度が約500℃ないし約1000℃の概算範囲内にあるとき、In含有分、Ga含有分及びAl含有分の相分離が有意には発生しないInGaAlN材料系を提供できることが分かった。約1000℃より低い結晶成長温度で相分離を回避するためのInGaAlNのGa含有率及びAl含有率の含有率選択領域は、図15の斜線領域であり、2つの領域を分離する線がx/0.80+y/0.89=1の関係によって近似的に定義されることがわかる。
したがって、これまでに開示した4つの各構造的実施形態の場合、レーザダイオードの全構成層のGaモル分率x及びAlNモル分率yが0<x+y<1、1<=x/0.80+y/0.89の関係をほぼ満たすとき、およそ500℃と約1000℃との間の結晶成長温度で実施することによって、InGaAlN材料系内で相分離現象を回避することができる。その結果、原子モル分率に従って各構成層内にIn原子、Ga原子及びAl原子がほぼ均一に分布する。
図16は約1000℃より低い成長温度で相分離現象を回避するためのInGaAlN系のGa含有率x及びAl含有率yの含有率選択線を示す。図16の線はx+1.2y=1の例示的な線を示す。したがって、GaN基板上に形成されたレーザダイオードのInGaAlN構成層のGa含有率及びAl含有率に関してx+1.2yがほぼ1に等しく、0<x+y<1、1<=x/0.80+y/0.89の関係を確実に有していることによって、欠陥密度が低く、相分離が全くないか非常に少ないレーザダイオードをGaN基板上に製造することができる。
さらに、上述した材料系によって他の半導体構造を製造することも可能である。III族窒化物材料、特にGaNとAlNは高出力高温条件下で動作可能な電子デバイス、例えばマイクロ波パワートランジスタでの使用に有望である。これは、そのバンドギャップの広さ(GaNの場合3.5eV、AlNの場合6.2eV)、降伏電界の高さ、飽和速度の高さにある程度起因している。比較すると、AlAs、GaAs、Siのバンドギャップは、それぞれ、2.16eV、1.42eV、1.12eVである。このことは、そのような電界効果トランジスタ(FET)用にAlGaN/GaN材料を使用することの有意義な研究に繋がっている。しかしながら、既に述べたように、AlGaNとGaNの格子定数の違いから重大な欠陥が発生し、そのことが、結果得られる構造体内の電子の移動度とそのような材料系のFET用途での実用性に限界を与えている。
本発明は、本発明のInGaAlN/GaN材料がGaNと等しい格子定数を有するという点で上記の限界をほぼ克服する。既に述べたように、GaNモル分率(x)及びAlNモル分率(y)が0<x+y<1、1<=x/0.8+y/0.89及びx+1.2y=1±0.1の関係を満たすとき、In1-x-yGaxAlyNの4元材料系は3.1eVより大きいバンドギャップを持つだけでなく、GaNとほぼ等しい格子定数を有する。これにより、様々な層内でほぼ均一な原子含有率分布を有するFET等の半導体構造が製造可能になる。したがって、GaNモル分率x及びAlNモル分率yが上記の関係を満たす本発明にかかるInGaAlN/GaN材料系を使用することにより、欠陥密度の低い高出力高温トランジスタを実現することができる。
図17Aに、本発明にかかるInGaAlN/GaN材料を用いたヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)の典型的な実施形態を示す。GaN基板520上には、0.5μm厚のi-GaN層525が形成され、その次に、薄い約10nm厚のGaN導電用チャンネル層530と10nm厚のInGaAlN層535が形成されている。ソース電極及びドレイン電極540A、540Bとゲート電極545が従来の方法で形成されている。この構造において、InGaAlN層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yはそれぞれ0.64及び0.3に設定されている。この場合、xとyの値は0<x+y<1、1<=x/0.8+y/0.89及びx+1.2y=1±0.1の関係を満たしている。これにより、実質的に相分離がなくGaNと等しい格子定数を有するInGaAlN層が得られる。ひいては、InGaAlN層とGaN層のヘテロ界面に形成された2次元電子ガスが(欠陥が存在する場合に発生するような)InGaAlN層の原子含有率の揺らぎによって散乱されることがないために、高い電子速度を達成することができる。さらに、InGaAlNのバンドギャップは4eVより大きいので、図17Aに示す構造を使用することにより信頼性のある高温動作を実現することができる。
同様に、図17Bは本発明にかかるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)の実施形態を示す。GaN基板550上には、400nm厚のn型InGaAlNコレクタ層555が形成され、その次に、50nm厚のp型GaNベース層560と300nm厚のエミッタ層565が形成されている。ベース電極570、コレクタ電極575及びエミッタ電極580が従来の方法で形成されている。図17Aと同様に、図17Bの実施形態では、InGaAlN層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yはそれぞれ0.64及び0.3に設定されており、xとyは上記と同じ関係を満たす必要がある。図17Aと同様に、大きな相分離がなくGaNと等しい格子定数を有するInGaAlN層が実現され、その結果、非常に高品質のInGaAlN/GaNヘテロ接合が得られる。さらに、InGaAlNエミッタ層のバンドギャップ(4.2eV)はGaNベース層のバンドギャップ(3.5eV)より大きいので、p型ベース層に発生した正孔がこのベース層内にうまく閉じ込められる。これは、GaNホモ接合バイポーラトランジスタにおいて発生するよりも大きな価電子帯不連続がGaNとInGaAlNとの間に発生することに起因する。このことは、ベース電流に比べて電流増幅が大きいコレクタ電流が得られるという利点をもたらす。さらに、上述したように、InGaAlNとGaN層のバンドギャップは大きいので、トランジスタを高温での用途に信頼性を持って利用することができる。
次に、図18に、本発明のフォトトランジスタとしての実施例を示す。この点に関して、GaNとAlNは広いバンドギャップ(GaNの場合、200nmの光の波長に相当する3.5eV、AlNの場合、350nmの光の波長に相当する6.2eV)を有するので、GaNとAlGaNは紫外線(UV)領域の光検出器にとって魅力的な材料である。直接バンドギャップとAlN合金の組成範囲全体の中でのAlGaNの可用性のために、AlGaN/GaNによるUV光検出器は、高遮断波長が調整可能であるとともに、量子効率が高いという利点をもたらす。しかしながら、AlGaNの格子定数は欠陥が形成されやすいほどGaNと異なっており、漏れ電流を増加させることになる。
GaNモル分率x及びAlNモル分率yが0<x+y<1、1<=x/0.8+y/0.89の関係を満たすIn1-x-yGaxAlyNの4元材料は、3.1eVより大きいバンドギャップを提供するだけでなく、各層内に同じ原子含有率分布で形成することができるので、InGaAlN材料をUV光検出器用途に利用することも可能である。さらに、GaNモル分率x及びAlNモル分率yがx+1.2y=1の関係を満たすIn1-x-yGaxAlyNの4元材料は、GaNと等しい格子定数を有する。したがって、GaNモル分率x及びAlNモル分率yが上記の関係を満たすInGaAlN/GaN材料を使用することにより、欠陥密度の低いUV光検出器を実現することができる。他の周波数、例えば青色光の検出が必要な場合には、当業者にとって明らかなように、わずかな変更しか必要としない。
図18に示すように、本発明の半導体装置は、InGaAlN/GaN材料を使用してヘテロ接合フォトトランジスタ(HPT)の形で実施可能である。GaN基板700上には、n型InGaAlNコレクタ層705がおよそ500nm厚に形成され、その次に、200nm厚のp型GaNベース層710が形成されている。その後、およそ500nm厚のエミッタ層715が形成されている。エミッタ層の上には、光がベース層に当たるようにリング状の電極720が形成されている。
典型的な構造では、InGaAlN層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yはそれぞれ0.64及び0.3に設定される。この場合、xとyの値は0<x+y<1、1<=x/0.8+y/0.89及びx+1.2y=1の関係を満たすので、InGaAlN層をGaNと等しい格子定数を持ちながら相分離をほぼ回避するように形成して、高品質のInGaAlN/GaNヘテロ接合を形成することが可能になる。InGaAlNエミッタ層のバンドギャップ(290nmの光の波長に相当する4.2eV)はGaNベース層のバンドギャップ(350nmの光の波長に相当する3.5eV)よりも大きい。光はエミッタ側に照射される。図示の実施形態の場合、290nmと350nmの間の波長範囲の照射光はエミッタ層を透過するので、GaNベースに吸収されて電子と正孔の対を発生させる。GaNとInGaAlNとの間の価電子帯の不連続が従来のGaNホモ接合フォトトランジスタの場合よりも大きいので、p型ベース層の光吸収によって生成された正孔はベース層にうまく閉じ込められる。これにより、より大きなエミッタ電流が誘導されることになり、ホモ接合フォトトランジスタの場合よりも優れた電子中和がベース領域にもたらされる。したがって、高量子効率かつ高感度、及びその結果として入射光からコレクタ電流への高変換効率を有するUV光検出器が得られる。他の周波数を検出する場合には、GaNベース層は、例えば青色光の場合、InGaNに置き換えられる。
図18のフォトトランジスタに加えて、本発明に従ってフォトダイオードを実現することも可能である。図19では、n型GaN基板900が設けられており、その上にIn1-x-yGaxAlyN4元材料または等価物からなるn型層910が形成され、この層は図18に関連して上述した関係に従っている。その後、活性層915が形成され、その上方には、p型In1-x-yGaxAlyN4元材料からなる層920が形成されている。そして、この層920の上方に、p型第2クラッド層925が形成され、そこには、層920の一部を露出させるようにウィンドウ930が形成されている。ウィンドウ930は光を層920に当てることができる入口となって正孔を発生させる。従来の方法で一対の電極935、940が形成されてもよく、その場合、電極935は、通常、ウィンドウ930周りのリング状の電極である。第2クラッド層925のバンドギャップは層920のバンドギャップよりも大きいことが好ましく、さらに、層920のバンドギャップは活性層915のバンドギャップよりも大きいことが好ましいことが理解できる。そのような手法によれば、最大限広い範囲の光の波長に対して感度がよくなる。より狭い波長範囲が望ましい場合には、層920よりも小さなバンドギャップを有する材料を層925に対して使用してもよい。さらに、層910、915、920は、少なくともいくつかの場合には、適正な光電性pn接合を提供するので、全ての実施形態に層925を含ませる必要はない。
次に、図20を参照することにより、本発明の第5の実施形態をより深く理解することができる。第5の実施形態はBAlGaN4元材料系を使用してUV発光素子を提供している。図20には、本発明の第5の実施形態にかかる半導体構造が断面図で示されている。特に図20に基づく第5の実施形態のダイオードには、n型AlN基板200が設けられており、その上に、n型AlN第1クラッド層205(通常0.5μm厚)が形成されている。その後、通常およそ1.5μm厚のn型B0.01Al0.95Ga0.04N材料からなる第2クラッド層210が形成され、その次に、多重量子井戸活性層215が形成され、この多重量子井戸活性層215は、典型的な構成では、およそ35オングストローム厚のB0.04Al0.63Ga0.33N材料からなる3つの量子井戸層と、およそ35オングストローム厚のB0.03Al0.70Ga0.27N材料からなる4つの障壁層を3対の構成で備えている。次に、p型B0.01Al0.95Ga0.04N材料からなる第3クラッド層220(通常およそ1.5μm厚)が形成され、その次に、p型AlN第5クラッド層225(およそ0.5μm厚)が形成されている。p型AlN第4クラッド層225の上に、ストライプ状ウィンドウ領域235(3.0μm幅)を1つ有するSiO2層230が形成されている。n型AlN基板200の上には第1の電極240が形成されており、SiO2層230及びウィンドウ領域235の上には第2の電極245が形成されている。
230nmの波長範囲の紫外光を活性層215から放出するために、井戸層のBNモル分率、GaNモル分率及びAlNモル分率はそれぞれ0.04、0.63及び0.33に設定されている。格子不整合に起因する欠陥を回避するため、様々な構成層のそれぞれにおいてAlNモル分率x及びGaNモル分率yをx+1.12yが一定の値にほぼ等しいという条件を満たすように設定することによって、様々な構成層の格子定数を互いに一致させている。大部分の実施形態は一定値が1±0.05範囲内にあるが、典型的な実施形態では、一定値がほぼ1、例えば1±0.1に設定される。
材料を適正に選択することにより、n型第2クラッド層210及びp型第3クラッド層220のバンドギャップエネルギーが3対の多重量子井戸活性層215のバンドギャップエネルギーより大きくなる。これにより、n型第2クラッド層210及びp型第3クラッド層220からの注入キャリアが活性層215内に閉じ込められ、キャリアが再結合して紫外光を放出する。さらに、n型第2クラッド層210及びp型第3クラッド層220の屈折率が多重量子井戸活性層215の屈折率より小さいので、光の場が横方向に閉じ込められる。
電極245からの注入電流は閉じ込められてウィンドウ領域235を流れるので、ウィンドウ領域235下方の活性層215内の領域が強く活性化される。これにより、ウィンドウ領域下方の活性層内の局部モード利得がSiO2層下方の活性層内の局部モード利得より高くなる。したがって、第5の実施形態の構造内に、レーザ発振をもたらす利得導波による導波路が形成される。
図21Aないし図21Dは、第5の実施形態にかかる典型的なレーザダイオードを構成するのに必要な製造工程の概要を順に示す。図21Aないし図21Dから得られる構造は図20に示すものと類似しているので、可能な場合には要素に同じ参照番号を使用することとする。最初に図21Aに示すように、n型AlN基板200が設けられており、その上には、n型AlN第1クラッド層205が成長している。第1クラッド層205は通常およそ0.5μm厚である。その後、通常およそ1.5μm厚のn型B0.01Al0.95Ga0.04N第2クラッド層210が形成される。
次に、およそ35オングストローム厚のB0.03Al0.70Ga0.27N材料からなる4つの障壁層と、それぞれおよそ35オングストローム厚の3層のB0.04Al0.63Ga0.33N材料からなる3つの量子井戸を形成することにより、多重量子井戸活性層215が形成される。その後、およそ1.5μm厚のp型B0.01Al0.95Ga0.04N材料からなる第3クラッド層220が形成された後、およそ0.5μm厚のp型AlNからなる第4クラッド層225が形成される。通常、各層は有機金属化学蒸着(MOCVD)法あるいは分子線エピタキシ(MBE)法のどちらかによって形成される。
その後、図21Bに示すように、p型AlN第4クラッド層225上に、例えば化学蒸着(CVD)法によって二酸化珪素(SiO2)層230が形成される。フォトリソグラフィとエッチングまたは他の適切な方法とを用いて、図21Cに示すように、ウィンドウ領域235が形成される。ウィンドウ領域235は、少なくとも一部の実施形態ではストライプ状であってもよい。最後に、図21Dに示すように、蒸着あるいは他の適切な方法により、n型AlN基板200とSiO2層230上にそれぞれ第1の電極240と第2の電極245が形成される。
次に、図22を参照することにより、本発明にかかる半導体構造の第6の実施形態をより深く理解することができる。第5の実施形態と同様に、第6の実施形態の典型的な適用例はレーザダイオードの作成である。第6の実施形態の構造により、実屈折率導波を有する導波路を構造内に組み込むことができる。これにより、基本横モードで動作可能な低閾値電流レーザダイオードが提供される。
引き続き図22に基づいて、参照を容易にするため、同じ要素を同じ参照番号で示す。n型AlN基板200に、およそ0.5μm厚のn型AlNから第1クラッド層205が形成されている。続いて、およそ1.5μm厚のB0.01Al0.95Ga0.04N材料からn型第2クラッド層210が形成されている。その後、およそ35オングストローム厚のB0.03Al0.70Ga0.27N材料からなる4つの障壁層とおよそ35オングストローム厚のB0.04Al0.63Ga0.33N材料からなる3つの井戸層を備えた多重量子井戸活性層215が形成されている。次に、およそ1.5μm厚のB0.01Al0.95Ga0.04N材料からなる第3のp型クラッド層220が形成されている。その後、第3クラッド層220のリッジ構造1500全体に、およそ0.5μm厚のp型AlN第4クラッド層225が形成されている。そして、第3及び第4クラッド層が部分的に除去されてリッジ構造1500が形成されている。その後、第3クラッド層220の残存する露出部分と第4クラッド層225を覆うように二酸化珪素(SiO2)層230が形成されている。第4及び第3クラッド層225、220の上方には、それぞれSiO2層を介して、およそ2.0μm幅のストライプ状であるウィンドウ領域235が形成されている。第5の実施形態と同様に、n型AlN基板200上には第1の電極240が形成され、SiO2層230及びウィンドウ領域235の上には第2の電極245が形成されている。
第5の実施形態と同様に、活性層215から230nm領域の波長を有する紫外光を放出させるために、井戸層内のBN、GaN及びAlNのモル分率がそれぞれ0.04、0.33及び0.63に設定されている。同様に、各構成層の格子定数を一致させて格子不整合に起因する欠陥を回避するため、全ての層のAlNモル分率x及びGaNモル分率yはx+1.12yが一定の値にほぼ等しいという条件を満たしている。第5の実施形態と同様に、x+1.12yは、各層の等価格子定数がAlNの格子定数とほぼ等しくなるようにほぼ1に等しい値に設定されている。同様に、クラッド層のバンドギャップエネルギーが活性層のバンドギャップエネルギーより大きい値に維持され、紫外光の放出が可能になっている。また、材料の屈折率は第1の実施形態に関連して述べたとおりであり、光の場を横方向に閉じ込められるようになっている。
第5の実施形態の動作と同様に、SiO2層が注入電流を拘束するので、活性層215のウィンドウ領域235下方の領域が強く活性化される。その結果は、やはり、ウィンドウ領域235下方の活性層内の局部モード利得がSiO2層230下方の活性層内の局部モード利得より高くなる。これにより、リッジストライプ領域の外側と比較して内側において横方向の実効屈折率が相対的に高くなることと相俟って、実効屈折率ステップ(Δn)が得られる。これにより、実屈折率導波により形成された組込み式の導波路を有する構造が得られる。したがって、第6の実施形態の構造により、基本横モードで動作可能な低閾値電流レーザダイオードが提供される。
次に、図23Aないし図23Eに、第5の実施形態にかかる半導体レーザダイオードの典型的な素子の主要製造工程の概要を示す。
まず、図23A及び図23Bに示すように、n型AlN基板200上への第1及び第2クラッド層205、210及び3対の多重量子井戸活性層215の形成は第5の実施形態と同じである。その後、第3及び第4のクラッド層220、225が形成された後、通常はエッチングにより、一部が除去されてリッジ構造1500が形成される。既に述べたように、典型的な実施形態では、MOCVD法あるいはMBE法のどちらかにより様々な層が順次形成される。
その後、図23Cないし図23Eに示すように、第5及び第3クラッド層225、220上にそれぞれ、通常はCVD法により二酸化珪素層230が形成され、その後、第5の実施形態と同様に、ウィンドウ領域235が形成される。その後、電極240、245が構造体に蒸着されるかあるいは接合される。
次に、図24を参照することにより、AlNモル分率x及びGaNモル分率yの選択と、BAlGaN構成層の場合の両モル分率の関係をより深く理解できる。特に、相対モル分率は、0<x+y<1、1<=1.04x+1.03yの関係をほぼ満足させることが必要である。
図24は、様々な成長温度に対してグラフ化された相分離領域の境界を示す。図24の線は様々な温度に関して組成的に不安定な(相分離)領域と安定した領域との間の境界を示している。同一温度の2つの境界線で囲まれた領域は各温度の相分離含有率領域を示す。3元合金BAlN及びBGaNは、BNとAlNとの間及びBNとGaNとの間の格子不整合が大きいために相分離領域が大きいことが分かった。他方、3元合金GaAlNは、約1000℃の温度での結晶成長の場合にAlNとGaNとの間の格子不整合が小さいために相分離領域がないことが分かる。
したがって、InGaAlNの場合と同様に通常結晶成長温度が約500℃ないし約1000℃の概算範囲内にあるBGaAlN材料系を提供できることが分かった。また、およそ500℃とおよそ1000℃の間の処理温度ではBGaAlNのB含有分、Ga含有分及びAl含有分の相分離が有意には発生しないことも分かった。最後に、これら2点を結びつけることにより、約1000℃より低い結晶成長温度で相分離を回避するためのBGaAlNのGa含有率及びAl含有率の含有率選択領域は、図25の斜線領域であり、2つの領域を分離する線が1.04x+1.03y=1の関係によって近似的に定義されることがわかる。
したがって、これまでに開示したBAlGaNを用いる2つの各構造的実施形態の場合、レーザダイオードの全構成層のAlモル分率xw及びGaNモル分率yが0<x+y<1、1<=1.04x+1.03yの関係をほぼ満たすとき、およそ500℃と約1000℃との間の結晶成長温度で実施することによって、BGaAlN材料系内で相分離現象を回避することができる。その結果、原子モル分率に従って各構成層内にB原子、Ga原子及びAl原子がほぼ均一に分布する。
図26は約1000℃より低い成長温度で相分離現象を回避するためのBGaAlN系のAl含有率x及びGa含有率yの含有率選択線を示す。図26の線はx+1.12y=1の例示的な線を示す。したがって、AlN基板上に形成されたレーザダイオードのBGaAlN構成層のGa含有率及びAl含有率に関してx+1.12yがほぼ1に等しく、0<x+y<1、1<=1.04x+1.03yの関係を確実に有していることによって、欠陥密度が低く、相分離が全くないか非常に少ないレーザダイオードをAlN基板上に製造することができる。
さらに、BAlGaN材料系によって他の半導体構造を製造することも可能である。上述したように、III族窒化物材料、特にGaNとAlNは高出力高温条件下で動作可能な電子デバイス、例えばAlGaN/GaNヘテロ構造を利用することによってマイクロ波パワーFETでの使用に有望である。しかしながら、既に述べたように、AlGaNとGaNの格子定数の違いから重大な欠陥が発生し、そのことが、結果得られる構造体内の電子の移動度とそのような材料系のFET用途での実用性に限界を与えている。
本発明は、本発明のBGaAlN/AlN材料がAlNと等しい格子定数を有するという点で上記の限界をほぼ克服する。既に述べたように、AlNモル分率(x)及びGaNモル分率(y)が0<x+y<1、1<=1.04x+1.03y及びx+1.12y=1±0.1の関係を満たすとき、B1-x-yAlxGayNの4元材料系は5eVより大きいバンドギャップを持つだけでなく、AlNとほぼ等しい格子定数を有する。これにより、様々な層内でほぼ均一な原子含有率分布を有するFET等の半導体構造が製造可能になる。したがって、AlNモル分率x及びGaNモル分率yが上記の関係を満たす本発明にかかるBGaAlN/AlN材料系を使用することにより、欠陥密度の低い高出力高温トランジスタを実現することができる。
図27Aに、本発明にかかるBGaAlN/AlN材料を用いたヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)の典型的な実施形態を示す。AlN基板1520上には、0.5μm厚のi-B0.04Al0.63Ga0.33N層1525が形成され、その次に、薄い約10nm厚のB0.04Al0.63Ga0.33N導電用チャンネル層1530と10nm厚のAlN層1535が形成されている。ソース電極及びドレイン電極1540A、1540Bとゲート電極1545が従来の方法で形成されている。この構造において、BGaAlN層のAlNモル分率x及びGaNモル分率yはそれぞれ0.64及び0.33に設定されている。この場合、xとyの値は0<x+y<1、1<=1.04x+1.03y及びx+1.12y=1±0.1の関係を満たしている。これにより、実質的に相分離がなくAlNと等しい格子定数を有するBGaAlN層が得られる。ひいては、BGaAlN層とAlN層のヘテロ界面に形成された2次元電子ガスが(欠陥が存在する場合に発生するような)BGaAlN層の原子含有率の揺らぎによって散乱されることがないために、高い電子速度を達成することができる。さらに、BGaAlNのバンドギャップは5eVより大きいので、図27Aに示す構造を使用することにより信頼性のある高温動作を実現することができる。
同様に、図27Bは本発明にかかるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)の実施形態を示す。AlN基板1550上には、400nm厚のn型AlNコレクタ層1555が形成され、その次に、50nm厚のp型BAlGaNベース層1560と300nm厚のAlNエミッタ層1565が形成されている。ベース電極1570、コレクタ電極1575及びエミッタ電極1580が従来の方法で形成されている。図27Aと同様に、図26Bの実施形態では、BGaAlN層のAlNモル分率x及びGaNモル分率yはそれぞれ0.63及び0.33に設定されており、xとyは上記と同じ関係を満たす必要がある。図27Aと同様に、大きな相分離がなくAlNと等しい格子定数を有するBGaAlN層が実現され、その結果、非常に高品質のBGaAlN/GaNヘテロ接合が得られる。さらに、AlNエミッタ層のバンドギャップ(6.2eV)はBGaAlNベース層のバンドギャップ(5.3eV)より大きいので、p型ベース層に発生した正孔がこのベース層内にうまく閉じ込められる。これは、AlNホモ接合バイポーラトランジスタにおいて発生するよりも大きな価電子帯不連続がAlNとBGaAlNとの間に発生することに起因する。このことは、ベース電流に比べて電流増幅が大きいコレクタ電流が得られるという利点をもたらす。さらに、上述したように、BGaAlNとAlN層のバンドギャップは大きいので、トランジスタを高温での用途に信頼性を持って利用することができる。
次に、図28に、本発明のフォトトランジスタとしての実施例を示す。
AlNモル分率x及びGaNモル分率yが0<x+y<1、1<=1.04x+1.03yの関係を満たすB1-x-yAlxGayNの4元材料は、3.5eVより大きいバンドギャップを提供するだけでなく、各層内に同じ原子含有率分布で形成することができるので、BGaAlN材料をUV光検出器用途に利用することも可能である。さらに、AlNモル分率x及びGaNモル分率yがx+1.12y=1の関係を満たすB1-x-yAlxGayNの4元材料は、AlNと等しい格子定数を有する。したがって、AlNモル分率x及びGaNモル分率yが上記の関係を満たすBGaAlN/AlN材料を使用することにより、欠陥密度の低いUV光検出器を実現することができる。他の周波数、例えば青色光の検出が必要な場合には、わずかな変更しか必要としない。
図28に示すように、本発明の半導体装置は、BGaAlN/AlN材料を使用してヘテロ接合フォトトランジスタ(HPT)の形で実施可能である。AlN基板1700上には、n型AlNコレクタ層1705がおよそ500nm厚に形成され、その次に、200nm厚のp型BAlGaNベース層1710が形成されている。その後、およそ500nm厚のエミッタ層1715が形成されている。エミッタ層の上には、光がベース層に当たるようにリング状の電極1720が形成されている。
典型的な構造では、BAlGaN層のAlNモル分率x及びGaNモル分率yはそれぞれ0.63及び0.33に設定される。この場合、xとyの値は0<x+y<1、1<=1.04x+1.03y及びx+1.12y=1の関係を満たすので、BGaAlN層をAlNと等しい格子定数を持ちながら相分離をほぼ回避するように形成して、高品質のBGaAlN/AlNヘテロ接合を形成することが可能になる。AlNエミッタ層のバンドギャップ(200nmの光の波長に相当する6.2eV)はBAlGaNベース層のバンドギャップ(230nmの光の波長に相当する5.3eV)よりも大きい。光はエミッタ側に照射される。図示の実施形態の場合、200nmと230nmの間の波長範囲の照射光はエミッタ層を透過するので、BAlGaNベースに吸収されて電子と正孔の対を発生させる。AlNとBAlGaNとの間の価電子帯の不連続が従来のAlNホモ接合フォトトランジスタの場合よりも大きいので、p型ベース層の光吸収によって生成された正孔はベース層にうまく閉じ込められる。これにより、より大きなエミッタ電流が誘導されることになり、ホモ接合フォトトランジスタの場合よりも優れた電子中和がベース領域にもたらされる。したがって、高量子効率かつ高感度、及びその結果として入射光からコレクタ電流への高変換効率を有するUV光検出器が得られる。他の周波数を検出する場合には、BAlGaNベース層は、例えば青色光の場合、InGaNに置き換えられる。
図28のフォトトランジスタに加えて、本発明に従ってフォトダイオードを実現することも可能である。図29では、n型AlN基板1900が設けられており、その上にB1-x-yAlxGayN4元材料または等価物からなるn型層910が形成され、この層は図28に関連して上述した関係に従っている。その後、活性層1915が形成され、その上方には、p型B1-x-yAlxGayN4元材料からなる層1920が形成されている。そして、この層1920の上方に、p型第2クラッド層1925が形成され、そこには、層1920の一部を露出させるようにウィンドウ1930が形成されている。ウィンドウ1930は光を層1920に当てることができる入口となって正孔を発生させる。従来の方法で一対の電極1935、1940が形成されてもよく、その場合、電極1935は、通常、ウィンドウ1930周りのリング状の電極である。第2クラッド層1925のバンドギャップは層1920のバンドギャップよりも大きいことが好ましく、さらに、層1920のバンドギャップは活性層1915のバンドギャップよりも大きいことが好ましいことが理解できる。そのような手法によれば、最大限広い範囲の光の波長に対して感度がよくなる。より狭い波長範囲が望ましい場合には、層1920よりも小さなバンドギャップを有する材料を層1925に対して使用してもよい。さらに、層1910、1915、1920は、少なくともいくつかの場合には、適正な光電性pn接合を提供するので、全ての実施形態に層1925を含ませる必要はない。
次に、図30を参照することにより、本発明の第7の実施形態をより深く理解することができる。第7の実施形態はBGaInN4元材料系を使用して青色発光素子を提供している。図28には、本発明の第7の実施形態にかかる半導体構造が断面図で示されている。特に図30に基づく第7の実施形態のダイオードには、n型GaN基板300が設けられており、その上に、n型GaN第1クラッド層305(通常0.5μm厚)が形成されている。その後、通常およそ1.5μm厚のn型B0.03Ga0.96In0.01N材料からなる第2クラッド層310が形成され、その次に、多重量子井戸活性層315が形成され、この多重量子井戸活性層315は、典型的な構成では、およそ35オングストローム厚のB0.01Ga0.86In0.13N材料からなる3つの量子井戸層と、およそ35オングストローム厚のB0.01Ga0.90In0.09N材料からなる4つの障壁層を3対の構成で備えている。次に、p型B0.03Ga0.96In0.01N材料からなる第3クラッド層320(通常およそ1.5μm厚)が形成され、その次に、p型GaN第5クラッド層325(およそ0.5μm厚)が形成されている。p型GaN第4クラッド層325の上に、ストライプ状ウィンドウ領域335(3.0μm幅)を1つ有するSiO2層330が形成されている。n型GaN基板300の上には第1の電極340が形成されており、SiO2層330及びウィンドウ領域335の上には第2の電極345が形成されている。
400nmの波長範囲の青色光を活性層315から放出するために、井戸層のBNモル分率、GaNモル分率及びInNモル分率はそれぞれ0.01、0.86及び0.13に設定されている。格子不整合に起因する欠陥を回避するため、様々な構成層のそれぞれにおいてGaNモル分率x及びInNモル分率yをx+1.56yが一定の値にほぼ等しいという条件を満たすように設定することによって、様々な構成層の格子定数を互いに一致させている。大部分の実施形態は一定値が1.01±0.05範囲内にあるが、典型的な実施形態では、一定値がほぼ1.01、例えば1.01±0.1に設定される。
材料を適正に選択することにより、n型第2クラッド層310及びp型第3クラッド層320のバンドギャップエネルギーが3対の多重量子井戸活性層315のバンドギャップエネルギーより大きくなる。これにより、n型第2クラッド層310及びp型第3クラッド層320からの注入キャリアが活性層315内に閉じ込められ、キャリアが再結合して青色光を放出する。さらに、n型第2クラッド層310及びp型第3クラッド層320の屈折率が多重量子井戸活性層315の屈折率より小さいので、光の場が横方向に閉じ込められる。
電極345からの注入電流は閉じ込められてウィンドウ領域335を流れるので、ウィンドウ領域335下方の活性層315内の領域が強く活性化される。これにより、ウィンドウ領域下方の活性層内の局部モード利得がSiO2層下方の活性層内の局部モード利得より高くなる。したがって、第7の実施形態の構造内に、レーザ発振をもたらす利得導波による導波路が形成される。
図31Aないし図31Dは、第7の実施形態にかかる典型的なレーザダイオードを構成するのに必要な製造工程の概要を順に示す。図31Aないし図31Dから得られる構造は図30に示すものと類似しているので、可能な場合には要素に同じ参照番号を使用することとする。最初に図31Aに示すように、n型GaN基板300が設けられており、その上には、n型GaN第1クラッド層305が成長している。第1クラッド層305は通常およそ0.5μm厚である。その後、通常およそ1.5μm厚のn型B0.03Ga0.96Ga0.01N第2クラッド層310が形成される。
次に、およそ35オングストローム厚のB0.01Ga0.90In0.09N材料からなる4つの障壁層と、それぞれおよそ35オングストローム厚の3層のB0.01Ga0.86In0.13N材料からなる3つの量子井戸を形成することにより、多重量子井戸活性層315が形成される。その後、およそ1.5μm厚のp型B0.01Ga0.96In0.01N材料からなる第3クラッド層320が形成された後、およそ0.5μm厚のp型GaNからなる第4クラッド層325が形成される。通常、各層は有機金属化学蒸着(MOCVD)法あるいは分子線エピタキシ(MBE)法のどちらかによって形成される。
その後、図31Bに示すように、p型GaN第4クラッド層325上に、例えば化学蒸着(CVD)法によって二酸化珪素(SiO2)層330が形成される。フォトリソグラフィとエッチングまたは他の適切な方法とを用いて、図31Cに示すように、ウィンドウ領域335が形成される。ウィンドウ領域335は、少なくとも一部の実施形態ではストライプ状であってもよい。最後に、図31Dに示すように、蒸着あるいは他の適切な方法により、n型GaN基板300とSiO2層330上にそれぞれ第1の電極340と第2の電極345が形成される。
次に、図32を参照することにより、本発明にかかる半導体構造の第8の実施形態をより深く理解することができる。第7の実施形態と同様に、第8の実施形態の典型的な適用例はレーザダイオードの作成である。第8の実施形態の構造により、実屈折率導波を有する導波路を構造内に組み込むことができる。これにより、基本横モードで動作可能な低閾値電流レーザダイオードが提供される。
引き続き図32に基づいて、参照を容易にするため、同じ要素を同じ参照番号で示す。n型GaN基板300に、およそ0.5μm厚のn型GaNから第1クラッド層305が形成されている。続いて、およそ1.5μm厚のB0.03Ga0.96In0.01N材料からn型第2クラッド層310が形成されている。その後、およそ35オングストローム厚のB0.01Ga0.90In0.09N材料からなる4つの障壁層とおよそ35オングストローム厚のB0.01Ga0.86In0.13N材料からなる3つの井戸層を備えた多重量子井戸活性層315が形成されている。次に、およそ1.5μm厚のB0.03Ga0.96In0.01N材料からなる第3のp型クラッド層320が形成されている。その後、第3クラッド層320のリッジ構造2500全体に、およそ0.5μm厚のp型GaN第4クラッド層325が形成されている。そして、第3及び第4クラッド層が部分的に除去されてリッジ構造2500が形成されている。その後、第3クラッド層320の残存する露出部分と第4クラッド層325を覆うように二酸化珪素(SiO2)層330が形成されている。第4及び第3クラッド層325、320の上方には、それぞれSiO2層を介して、およそ2.0μm幅のストライプ状のウィンドウ領域335が形成されている。第7の実施形態と同様に、n型GaN基板300上には第1の電極340が形成され、SiO2層330及びウィンドウ領域335の上には第2の電極345が形成されている。
第7の実施形態と同様に、活性層315から400nm領域の波長を有する青色光を放出させるために、井戸層内のBN、GaN及びAlNのモル分率がそれぞれ0.01、0.86及び0.13に設定されている。同様に、各構成層の格子定数を一致させて格子不整合に起因する欠陥を回避するため、全ての層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yはx+1.56yが一定の値にほぼ等しいという条件を満たしている。第7の実施形態と同様に、x+1.56yは、各層の等価格子定数がGaNの格子定数とほぼ等しくなるようにほぼ1.01に等しい値に設定されている。同様に、クラッド層のバンドギャップエネルギーが活性層のバンドギャップエネルギーより大きい値に維持され、紫外光の放出が可能になっている。また、材料の屈折率は第1の実施形態に関連して述べたとおりであり、光の場を横方向に閉じ込められるようになっている。
第5の実施形態の動作と同様に、SiO2層が注入電流を拘束するので、活性層315のウィンドウ領域335下方の領域が強く活性化される。その結果は、やはり、ウィンドウ領域335下方の活性層内の局部モード利得がSiO2層330下方の活性層内の局部モード利得より高くなる。これにより、リッジストライプ領域の外側と比較して内側において横方向の実効屈折率が相対的に高くなることと相俟って、実効屈折率ステップ(Δn)が得られる。これにより、実屈折率導波による組込み式の導波路を有する構造が得られる。したがって、第6の実施形態の構造により、基本横モードで動作可能な低閾値電流レーザダイオードが提供される。
次に、図33Aないし図33Eに、第7の実施形態にかかる半導体レーザダイオードの典型的な素子の主要製造工程の概要を示す。
まず、図33A及び図33Bに示すように、n型GaN基板300上への第1及び第2クラッド層305、310及び3対の多重量子井戸活性層315の形成は第7の実施形態と同じである。その後、第3及び第4のクラッド層320、325が形成された後、通常はエッチングにより、一部が除去されてリッジ構造2500が形成される。既に述べたように、典型的な実施形態では、MOCVD法あるいはMBE法のどちらかにより様々な層が順次形成される。
その後、図33Cないし図33Eに示すように、第5及び第3クラッド層325、320上にそれぞれ、通常はCVD法により二酸化珪素層330が形成され、その後、第5の実施形態と同様に、ウィンドウ領域335が形成される。その後、電極340、345が構造体に蒸着されるかあるいは接合される。
次に、図34を参照することにより、GaNモル分率x及びAlNモル分率yの選択と、BGaInN構成層の場合の両モル分率の関係をより深く理解できる。特に、相対モル分率は、0<=x+y<=1かつ1<=1.03x+0.88y、あるいは0<=x+y<=1かつ1<=0.95x+1.01yの関係をほぼ満足させることが必要である。
図34は、様々な成長温度に対してグラフ化された相分離領域の境界を示す。図34の線は様々な温度に関して組成的に不安定な(相分離)領域と安定した領域との間の境界を示している。同一温度の2つの境界線で囲まれた領域は各温度の相分離含有率領域を示す。3元合金BGaN、BInN及びInGaNは、BNとGaNとの間、BNとInNとの間及びInNとGaNとの間の格子不整合が大きいために相分離領域が大きいことが分かった。したがって、4元合金BGaInNは広い相分離領域を有し、B、Ga及びInの各原子含有率も素子の用途に対して注意深く選択される必要がある。
InGaAlNの場合と同様に通常結晶成長温度が約500℃ないし約1000℃の概算範囲内にあるBGaInN材料系を提供できることが分かった。また、およそ500℃とおよそ1000℃の間の処理温度ではBGaInNのB含有分、Ga含有分及びIn含有分の相分離が有意には発生しないことも分かった。最後に、これら2点を結びつけることにより、約1000℃より低い結晶成長温度で相分離を回避するためのBGaInNのGa含有率及びIn含有率の含有率選択領域は、図35の斜線領域であり、2つの領域を分離する線が1.03x+0.88y=1及び0.95x+1.01y=1の関係によって近似的に定義されることがわかる。
したがって、これまでに開示したBGaInNを用いる各構造的実施形態の場合、レーザダイオードの全構成層のGaモル分率x及びInNモル分率yが0<=x+y<=1かつ1<=1.03x+0.88y、あるいは0<=x+y<=1かつ1<=0.95x+1.01yの関係をほぼ満たすとき、およそ500℃と約1000℃との間の結晶成長温度で実施することによって、BGaInN材料系内で相分離現象を回避することができる。その結果、原子モル分率に従って各構成層内にB原子、Ga原子及びIn原子がほぼ均一に分布する。
図36は約1000℃より低い成長温度で相分離現象を回避するためのBGaInN系のGa含有率x及びAl含有率yの含有率選択線を示す。図36の線はx+1.56y=1.08の例示的な線を示す。したがって、GaN基板上に形成されたレーザダイオードのBGaAlN構成層のGa含有率及びIn含有率に関してx+1.56yがほぼ1.01に等しく、0<=x+y<=1かつ1<=1.03x+0.88yの関係を確実に有していることによって、欠陥密度が低く、相分離が全くないか非常に少ないレーザダイオードをGaN基板上に製造することができる。
さらに、BGaInN材料系によって他の半導体構造を製造することも可能である。上述したように、III族窒化物材料、特にGaNとAlNは高出力高温条件下で動作可能な電子デバイス、例えばAlGaN/GaNヘテロ構造を利用することによってマイクロ波パワーFETでの使用に有望である。しかしながら、既に述べたように、AlGaNとGaNの格子定数の違いから重大な欠陥が発生し、そのことが、結果得られる構造体内の電子の移動度とそのような材料系のFET用途での実用性に限界を与えている。
本発明は、本発明のBGaInN/GaN材料がGaNと等しい格子定数を有するという点で上記の限界をほぼ克服する。既に述べたように、GaNモル分率(x)及びInNモル分率(y)が0<=x+y<=1、1<=1.03x+0.88y及びx+1.56y=1.01±0.1の関係を満たすとき、B1-x-yGaxInyNの4元材料系は3.3eVより大きいバンドギャップを持つだけでなく、GaNとほぼ等しい格子定数を有する。これにより、様々な層内でほぼ均一な原子含有率分布を有するFET等の半導体構造が製造可能になる。したがって、GaNモル分率x及びAlNモル分率yが上記の関係を満たす本発明にかかるBGaInN/GaN材料系を使用することにより、欠陥密度の低い高出力高温トランジスタを実現することができる。
図37に、本発明にかかるBGaInN/GaN材料を用いたヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)の典型的な実施形態を示す。GaN基板2520上には、0.5μm厚のi-B0.01Ga0.86In0.13N層2525が形成され、その次に、薄い約10nm厚のi-B0.01Ga0.86In0.13N導電用チャンネル層2530と10nm厚のGaN層2535が形成されている。ソース電極及びドレイン電極2540A、2540Bとゲート電極2545が従来の方法で形成されている。この構造において、BGaInN層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yはそれぞれ0.86及び0.13に設定されている。この場合、xとyの値は0<=x+y<=1、1<=1.03x+0.88y及びx+1.56y=1.01±0.1の関係を満たしている。これにより、実質的に相分離がなくGaNとほぼ等しい格子定数を有するBGaInN層が得られる。ひいては、BGaInN層とGaN層のヘテロ界面に形成された2次元電子ガスが(欠陥が存在する場合に発生するような)BGaInN層の原子含有率の揺らぎによって散乱させられることがないために、高い電子速度を達成することができる。さらに、BGaInNのバンドギャップは3.3eVより大きいので、図35Aに示す構造を使用することにより信頼性のある高温動作を実現することができる。
同様に、図37Bは本発明にかかるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)の実施形態を示す。GaN基板2550上には、400nm厚のn型GaNコレクタ層2555が形成され、その次に、50nm厚のp型BGaInNベース層2560と300nm厚のGaNエミッタ層2565が形成されている。ベース電極2570、コレクタ電極2575及びエミッタ電極2580が従来の方法で形成されている。図37Aと同様に、図37Bの実施形態では、BGaInN層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yはそれぞれ0.86及び0.13に設定されており、xとyは上記と同じ関係を満たす必要がある。図37Aと同様に、大きな相分離がなくGaNと等しい格子定数を有するBGaInN層が実現され、その結果、非常に高品質のBGaInN/GaNヘテロ接合が得られる。さらに、GaNエミッタ層のバンドギャップ(3.5eV)はBGaInNベース層のバンドギャップ(3.3eV)より大きいので、p型ベース層に発生した正孔がこのベース層内にうまく閉じ込められる。これは、GaNホモ接合バイポーラトランジスタにおいて発生するよりも大きな価電子帯不連続がGaNとBGaInNとの間に発生することに起因する。このことは、ベース電流に比べて電流増幅が大きいコレクタ電流が得られるという利点をもたらす。さらに、上述したように、BGaInNとGaN層のバンドギャップは大きいので、トランジスタを高温での用途に信頼性を持って利用することができる。
次に、図38に、本発明のフォトトランジスタとしての実施例を示す。
GaNモル分率x及びAlNモル分率yが0<=x+y<=1、1<=1.03x+0.88yの関係を満たすB1-x-yGaxInyNの4元材料は、3.2eVより大きいバンドギャップを提供するだけでなく、各層内に同じ原子含有率分布で形成することができるので、BGaInN材料を青色光検出器用途に利用することも可能である。さらに、GaNモル分率x及びAlNモル分率yがx+1.56y=1の関係を満たすB1-x-yGaxInyNの4元材料は、GaNと等しい格子定数を有する。したがって、GaNモル分率x及びAlNモル分率yが上記の関係を満たすBGaInN/GaN材料を使用することにより、欠陥密度の低い青色光検出器を実現することができる。他の周波数、例えば青色光の検出が必要な場合には、わずかな変更しか必要としない。
図38に示すように、本発明の半導体装置は、BGaInN/GaN材料を使用してヘテロ接合フォトトランジスタ(HPT)の形で実施可能である。GaN基板2700上には、n型GaNコレクタ層2705がおよそ500nm厚に形成され、その次に、200nm厚のp型BGaInNベース層2710が形成されている。その後、およそ500nm厚のエミッタ層2715が形成されている。エミッタ層の上には、光がベース層に当たるようにリング状の電極2720が形成されている。
典型的な構造では、BGaInN層のGaNモル分率x及びAlNモル分率yはそれぞれ0.86及び0.13に設定される。この場合、xとyの値は0<=x+y<=1、1<=1.03x+0.88y及びx+1.56y=1.06の関係を満たすので、BGaInN層をGaNと等しい格子定数を持ちながら相分離をほぼ回避するように形成して、高品質のBGaInN/GaNヘテロ接合を形成することが可能になる。GaNエミッタ層のバンドギャップ(380nmの光の波長に相当する3.5eV)はBGaInNベース層のバンドギャップ(370nmの光の波長に相当する3.3eV)よりも大きい。光はエミッタ側に照射される。図示の実施形態の場合、370nmと380nmの間の波長範囲の照射光はエミッタ層を透過するので、BGaInNベース層に吸収されて電子と正孔の対を発生させる。GaNとBGaInNとの間の価電子帯の不連続が従来のGaNホモ接合フォトトランジスタの場合よりも大きいので、p型ベース層の光吸収によって生成された正孔はベース層にうまく閉じ込められる。これにより、より大きなエミッタ電流が誘導されることになり、ホモ接合フォトトランジスタの場合よりも優れた電子中和がベース領域にもたらされる。したがって、高量子効率かつ高感度、及びその結果として入射光からコレクタ電流への高変換効率を有する青色光検出器が得られる。他のより低い周波数を検出する場合には、BGaInNベース層は、例えば青緑色光の場合、InGaNに置き換えられる。
図38のフォトトランジスタに加えて、本発明に従ってフォトダイオードを実現することも可能である。図39では、n型GaN基板1900が設けられており、その上にB1-x-yGaxInyN4元材料または等価物からなるn型層1910が形成され、この層は図38に関連して上述した関係に従っている。その後、活性層2915が形成され、その上方には、p型B1-x-yGaxInyN4元材料からなる層2920が形成されている。そして、この層2920の上方に、p型第2クラッド層2925が形成され、そこには、層2920の一部を露出させるようにウィンドウ2930が形成されている。ウィンドウ2930は光を層2920に当てることができる入口となって正孔を発生させる。従来の方法で一対の電極2935、2940が形成されてもよく、その場合、電極2935は、通常、ウィンドウ2930周りのリング状の電極である。第2クラッド層2925のバンドギャップは層2920のバンドギャップよりも大きいことが好ましく、さらに、層2920のバンドギャップは活性層2915のバンドギャップよりも大きいことが好ましいことが理解できる。そのような手法によれば、最大限広い範囲の光の波長に対して感度がよくなる。より狭い波長範囲が望ましい場合には、層2920よりも小さなバンドギャップを有する材料を層2925に対して使用してもよい。さらに、層2910、2915、2920は、少なくともいくつかの場合には、適正な光電性pn接合を提供するので、全ての実施形態に層2925を含ませる必要はない。
次に、図40を参照することにより、本発明の第9の実施形態をより深く理解することができる。第9の実施形態はBInAlN4元材料系を使用して紫外光発光素子を提供している。図40には、本発明の第9の実施形態にかかる半導体構造が断面図で示されている。特に図40に基づく第9の実施形態のダイオードには、n型AlN基板400が設けられており、その上に、n型AlN第1クラッド層405(通常0.5μm厚)が形成されている。その後、通常およそ1.5μm厚のn型B0.01In0.01Al0.98N材料からなる第2クラッド層410が形成され、その次に、多重量子井戸活性層415が形成され、この多重量子井戸活性層415は、典型的な構成では、およそ35オングストローム厚のB0.01In0.08Al0.91N材料からなる3つの量子井戸層と、およそ35オングストローム厚のB0.02In0.07Al0.91N材料からなる4つの障壁層を3対の構成で備えている。次に、p型B0.01In0.01Al0.98N材料からなる第3クラッド層420(通常およそ1.5μm厚)が形成され、その次に、p型AlN第5クラッド層425(およそ0.5μm厚)が形成されている。p型AlN第4クラッド層425の上に、ストライプ状ウィンドウ領域435(3.0μm幅)を1つ有するSiO2層430が形成されている。n型AlN基板400の上には第1の電極440が形成されており、SiO2層430及びウィンドウ領域435の上には第2の電極445が形成されている。
220nmの波長範囲の紫外光を活性層415から放出するために、井戸層のBNモル分率、InNモル分率及びAlNモル分率はそれぞれ0.01、0.08及び0.91に設定されている。格子不整合に起因する欠陥を回避するため、様々な構成層のそれぞれにおいてInNモル分率x及びAlNモル分率yを1.75x+yが一定の値にほぼ等しいという条件を満たすように設定することによって、様々な構成層の格子定数を互いに一致させている。大部分の実施形態は一定値が1.03±0.05範囲内にあるが、典型的な実施形態では、一定値がほぼ1.03、例えば1.03±0.1に設定される。
材料を適正に選択することにより、n型第2クラッド層410及びp型第3クラッド層420のバンドギャップエネルギーが3対の多重量子井戸活性層415のバンドギャップエネルギーより大きくなる。これにより、n型第2クラッド層410及びp型第3クラッド層420からの注入キャリアが活性層415内に閉じ込められ、キャリアが再結合して紫外光を放出する。さらに、n型第2クラッド層410及びp型第3クラッド層420の屈折率が多重量子井戸活性層415の屈折率より小さいので、光の場が横方向に閉じ込められる。
電極445からの注入電流は閉じ込められてウィンドウ領域435を流れるので、ウィンドウ領域435下方の活性層415内の領域が強く活性化される。これにより、ウィンドウ領域下方の活性層内の局部モード利得がSiO2層下方の活性層内の局部モード利得より高くなる。したがって、第9の実施形態の構造内に、レーザ発振をもたらす利得導波による導波路が形成される。
図41Aないし図41Dは、第9の実施形態にかかる典型的なレーザダイオードを構成するのに必要な製造工程の概要を順に示す。図41Aないし図41Dから得られる構造は図40に示すものと類似しているので、可能な場合には要素に同じ参照番号を使用することとする。最初に図41Aに示すように、n型AlN基板400が設けられており、その上には、n型AlN第1クラッド層405が成長している。第1クラッド層405は通常およそ0.5μm厚である。その後、通常およそ1.5μm厚のn型B0.01In0.01Al0.98N第2クラッド層410が形成される。
次に、およそ35オングストローム厚のB0.02In0.07Al0.91N材料からなる4つの障壁層と、それぞれおよそ35オングストローム厚の3層のB0.01In0.08Al0.91N材料からなる3つの量子井戸を形成することにより、多重量子井戸活性層415が形成される。その後、およそ1.5μm厚のp型B0.01In0.01Al0.98N材料からなる第3クラッド層420が形成された後、およそ0.5μm厚のp型AlNからなる第4クラッド層425が形成される。通常、各層は有機金属化学蒸着(MOCVD)法あるいは分子線エピタキシ(MBE)法のどちらかによって形成される。
その後、図41Bに示すように、p型AlN第4クラッド層425上に、例えば化学蒸着(CVD)法によって二酸化珪素(SiO2)層430が形成される。フォトリソグラフィとエッチングまたは他の適切な方法とを用いて、図41Cに示すように、ウィンドウ領域435が形成される。ウィンドウ領域435は、少なくとも一部の実施形態ではストライプ状であってもよい。最後に、図41Dに示すように、蒸着あるいは他の適切な方法により、n型AlN基板400とSiO2層430上にそれぞれ第1の電極440と第2の電極445が形成される。
次に、図42を参照することにより、本発明にかかる半導体構造の第10の実施形態をより深く理解することができる。第9の実施形態と同様に、第10の実施形態の典型的な適用例はレーザダイオードの作成である。第10の実施形態の構造により、実屈折率導波による導波路を構造内に組み込むことができる。これにより、基本横モードで動作可能な低閾値電流レーザダイオードが提供される。
引き続き図42に基づいて、参照を容易にするため、同じ要素を同じ参照番号で示す。n型AlN基板400上に、およそ0.5μm厚のn型AlNから第1クラッド層405が形成されている。続いて、およそ1.5μm厚のB0.01In0.01Al0.98N材料からn型第2クラッド層410が形成されている。その後、およそ35オングストローム厚のB0.02In0.07Al0.91N材料からなる4つの障壁層とおよそ35オングストローム厚のB0.01In0.08Al0.91N材料からなる3つの井戸層を備えた多重量子井戸活性層415が形成されている。次に、およそ1.5μm厚のB0.01In0.01Al0.98N材料からなる第3のp型クラッド層420が形成されている。その後、第3クラッド層420のリッジ構造3500全体に、およそ0.5μm厚のp型AlN第4クラッド層425が形成されている。そして、第3及び第4クラッド層が部分的に除去されてリッジ構造3500が形成されている。その後、第3クラッド層420の残存する露出部分と第4クラッド層425を覆うように二酸化珪素(SiO2)層430が形成されている。第4及び第3クラッド層425、420の上方には、それぞれSiO2層を介して、およそ2.0μm幅のストライプ状のウィンドウ領域435が形成されている。第9の実施形態と同様に、n型AlN基板400上には第1の電極440が形成され、SiO2層430及びウィンドウ領域435の上には第2の電極445が形成されている。
第9の実施形態と同様に、活性層415から220nm領域の波長を有する紫外光を放出させるために、井戸層内のBN、InN及びAlNのモル分率がそれぞれ0.01、0.08及び0.91に設定されている。同様に、各構成層の格子定数を一致させて格子不整合に起因する欠陥を回避するため、全ての層のInNモル分率x及びAlNモル分率yは1.75x+yが一定の値にほぼ等しいという条件を満たしている。第8の実施形態と同様に、1.75x+yは、各層の等価格子定数がAlNの格子定数とほぼ等しくなるようにほぼ1.03に等しい値に設定されている。同様に、クラッド層のバンドギャップエネルギーが活性層のバンドギャップエネルギーより大きい値に維持され、紫外光の放出が可能になっている。また、材料の屈折率は第8の実施形態に関連して述べたとおりであり、光の場を横方向に閉じ込められるようになっている。
第9の実施形態の動作と同様に、SiO2層が注入電流を拘束するので、活性層415のウィンドウ領域435下方の領域が強く活性化される。その結果は、やはり、ウィンドウ領域435下方の活性層内の局部モード利得がSiO2層430下方の活性層内の局部モード利得より高くなる。これにより、リッジストライプ領域の外側と比較して内側において横方向の実効屈折率が相対的に高くなることと相俟って、実効屈折率ステップ(Δn)が得られる。これにより、実屈折率導波によって形成された組込み式の導波路を有する構造が得られる。したがって、第10の実施形態の構造により、基本横モードで動作可能な低閾値電流レーザダイオードが提供される。
次に、図43Aないし図43Eに、第10の実施形態にかかる半導体レーザダイオードの典型的な素子の主要製造工程の概要を示す。
まず、図43A及び図43Bに示すように、n型AlN基板400上への第1及び第2クラッド層405、410及び3対の多重量子井戸活性層415の形成は第8の実施形態と同じである。その後、第3及び第4のクラッド層420、425が形成された後、通常はエッチングにより、一部が除去されてリッジ構造3500が形成される。既に述べたように、典型的な実施形態では、MOCVD法あるいはMBE法のどちらかにより様々な層が順次形成される。
その後、図43Cないし図43Eに示すように、第5及び第3クラッド層425、420上にそれぞれ、通常はCVD法により二酸化珪素層430が形成され、その後、第9の実施形態と同様に、ウィンドウ領域435が形成される。その後、電極440、445が構造体に蒸着されるかあるいは接合される。
次に、図44を参照することにより、InNモル分率x及びAlNモル分率yの選択と、BInAlN構成層の場合の両モル分率の関係をより深く理解できる。特に、相対モル分率は、0<=x+y<=1かつ1<=1.01x+0.88y、あるいは0<=x+y<=1かつ1<=0.61x+1.04yの関係をほぼ満足させることが必要である。
図45は、様々な成長温度に対してグラフ化された相分離領域の境界を示す。図45の線は様々な温度に関して組成的に不安定な(相分離)領域と安定した領域との間の境界を示している。同一温度の2つの境界線で囲まれた領域は各温度の相分離含有率領域を示す。3元合金BAlN、BInN及びInAlNは、BNとAlNとの間、BNとInNとの間及びInNとAlNとの間の格子不整合が大きいために相分離領域が大きいことが分かった。したがって、4元合金BInAlNは広い相分離領域を有し、B、Al及びInの各原子含有率も素子の用途に対して注意深く選択される必要がある。
InGaAlNの場合と同様に通常結晶成長温度が約500℃ないし約1000℃の概算範囲内にあるBInAlN材料系を提供できることが分かった。また、およそ500℃とおよそ1000℃の間の処理温度ではBInAlNのB含有分、Al含有分及びIn含有分の相分離が有意には発生しないことも分かった。最後に、これら2点を結びつけることにより、約1000℃より低い結晶成長温度で相分離を回避するためのBInAlNのAl含有率及びIn含有率の含有率選択領域は、図45の斜線領域であり、2つの領域を分離する線が1.01x+0.88y=1及び0.61x+1.04y=1の関係によって近似的に定義されることがわかる。
したがって、これまでに開示したBInAlNを用いる2つの各構成の実施形態の場合、レーザダイオードの全構成層のInモル分率x及びAlNモル分率yが0<=x+y<=1かつ1<=1.01x+0.88y、あるいは0<=x+y<=1かつ1<=0.61x+1.04yの関係をほぼ満たすとき、およそ500℃と約1000℃との間の結晶成長温度で実施することによって、BInAlN材料系内で相分離現象を回避することができる。その結果、原子モル分率に従って各構成層内にB原子、Al原子及びIn原子がほぼ均一に分布する。
図46は約1000℃より低い成長温度で相分離現象を回避するためのBInAlN系のIn含有率x及びAl含有率yの含有率選択線を示す。図46の線は1.75x+y=1.03の例示的な線を示す。したがって、AlN基板上に形成されたレーザダイオードのBInAlN構成層のAl含有率及びIn含有率に関して1.75x+yがほぼ1.03に等しく、0<=x+y<=1かつ1<=1.61x+1.04yの関係を確実に有していることによって、欠陥密度が低く、相分離が全くないか非常に少ないAlN基板上レーザダイオードを得ることができる。
さらに、BInAlN材料系によって他の半導体構造を製造することも可能である。上述したように、III族窒化物材料、特にGaNとAlNは高出力高温条件下で動作可能な電子デバイス、例えばAlGaN/GaNヘテロ構造を利用することによってマイクロ波パワーFETでの使用に有望である。しかしながら、既に述べたように、AlGaNとGaNの格子定数の違いから重大な欠陥が発生し、そのことが、結果得られる構造体内の電子の移動度とそのような材料系のFET用途での実用性に限界を与えている。
本発明は、本発明のBInAlN/AlN材料がAlNと等しい格子定数を有するという点で上記の限界をほぼ克服する。既に述べたように、InNモル分率(x)及びAlNモル分率(y)が0<=x+y<=1、1<=0.61x+1.04y及び1.75x+y=1.03±0.1の関係を満たすとき、B1-x-yInxAlyNの4元材料系は5eVより大きいバンドギャップを持つだけでなく、AlNとほぼ等しい格子定数を有する。これにより、様々な層内でほぼ均一な原子含有率分布を有するFET等の半導体構造が製造可能になる。したがって、InNモル分率x及びAlNモル分率yが上記の関係を満たす本発明にかかるBInAlN/AlN材料系を使用することにより、欠陥密度の低い高出力高温トランジスタを実現することができる。
図47に、本発明にかかるBInAlN/AlN材料を用いたヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)の典型的な実施形態を示す。AlN基板3520上には、0.5μm厚のi-B0.01In0.08Al0.91N層3525が形成され、その次に、薄い約10nm厚のi-B0.01In0.08Al0.91N導電用チャンネル層3530と10nm厚のAlN層3535が形成されている。ソース電極及びドレイン電極3540A、3540Bとゲート電極3545が従来の方法で形成されている。この構造において、BInAlN層のInNモル分率x及びAlNモル分率yはそれぞれ0.08及び0.91に設定されている。この場合、xとyの値は0<=x+y<=1、1<=1.61x+1.04y及び1.75x+y=1.03±0.1の関係を満たしている。これにより、実質的に相分離がなくAlNとほぼ等しい格子定数を有するBInAlN層が得られる。ひいては、BinAlN層とAlN層のヘテロ界面に形成された2次元電子ガスが(欠陥が存在する場合に発生するような)BinAlN層の原子含有率の揺らぎによって散乱させられることがないために、高い電子速度を達成することができる。さらに、BGaInNのバンドギャップは5eVより大きいので、図47Aに示す構造を使用することにより信頼性のある高温動作を実現することができる。
同様に、図47Bは本発明にかかるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)の実施形態を示す。AlN基板3550上には、400nm厚のn型AlNコレクタ層3555が形成され、その次に、50nm厚のp型BInAlNベース層3560と300nm厚のAlNエミッタ層3565が形成されている。ベース電極3570、コレクタ電極3575及びエミッタ電極3580が従来の方法で形成されている。図47Aと同様に、図47Bの実施形態では、BInAlN層のInNモル分率x及びAlNモル分率yはそれぞれ0.08及び0.91に設定されており、xとyは上記と同じ関係を満たす必要がある。図47Aと同様に、大きな相分離がなくAlNと等しい格子定数を有するBInAlN層が実現され、その結果、非常に高品質のBInAlN/AlNヘテロ接合が得られる。さらに、AlNエミッタ層のバンドギャップ(6.2eV)はBInAlNベース層のバンドギャップ(5.8eV)より大きいので、p型ベース層に発生した正孔がこのベース層内にうまく閉じ込められる。これは、AlNホモ接合バイポーラトランジスタにおいて発生するよりも大きな価電子帯不連続がAlNとBInAlNとの間に発生することに起因する。このことは、ベース電流に比べて電流増幅が大きいコレクタ電流が得られるという利点をもたらす。さらに、上述したように、BInAlNとAlN層のバンドギャップは大きいので、トランジスタを高温での用途に信頼性を持って利用することができる。
次に、図48に、本発明のフォトトランジスタとしての実施例を示す。
InNモル分率x及びAlNモル分率yが0<=x+y<=1、1<=0.61x+1.04yの関係を満たすB1-x-yInxAlyNの4元材料は、5eVより大きいバンドギャップを提供するだけでなく、各層内に同じ原子含有率分布で形成することができるので、BInAlN材料を青色光検出器用途に利用することも可能である。さらに、InNモル分率x及びAlNモル分率yが1.75x+y=1.03の関係を満たすB1-x-yInxAlyNの4元材料は、AlNとほぼ等しい格子定数を有する。したがって、InNモル分率x及びAlNモル分率yが上記の関係を満たすBInAlN/AlN材料を使用することにより、欠陥密度の低い紫外光検出器を実現することができる。他の周波数、例えば青色光の検出が必要な場合には、わずかな変更しか必要としない。
図48に示すように、本発明の半導体装置は、BInAlN/AlN材料を使用してヘテロ接合フォトトランジスタ(HPT)の形で実施可能である。AlN基板3700上には、n型AlNコレクタ層3705がおよそ500nm厚に形成され、その次に、200nm厚のp型BInAlNベース層3710が形成されている。その後、およそ500nm厚のエミッタ層3715が形成されている。エミッタ層の上には、光がベース層に当たるようにリング状の電極3720が形成されている。
典型的な構造では、BInAlN層のInNモル分率x及びAlNモル分率yはそれぞれ0.08及び0.91に設定される。この場合、xとyの値は0<=x+y<=1、1<=0.61x+1.04y及び1.75x+y=1.03±0.05の関係を満たすので、BInAlN層をAlNとほぼ等しい格子定数を持ちながら相分離をほぼ回避するように形成して、高品質のBInAlN/AlNヘテロ接合を形成することが可能になる。AlNエミッタ層のバンドギャップ(200nmの光の波長に相当する6.2eV)はBInAlNベース層のバンドギャップ(212nmの光の波長に相当する5.8eV)よりも大きい。光はエミッタ側に照射される。図示の実施形態の場合、200nmと212nmの間の波長範囲の照射光はエミッタ層を透過するので、BInAlNベース層に吸収されて電子と正孔の対を発生させる。AlNとBInAlNとの間の価電子帯の不連続が従来のAlNホモ接合フォトトランジスタの場合よりも大きいので、p型ベース層の光吸収によって生成された正孔はベース層にうまく閉じ込められる。これにより、より大きなエミッタ電流が誘導されることになり、ホモ接合フォトトランジスタの場合よりも優れた電子中和がベース領域にもたらされる。したがって、高量子効率かつ高感度、及びその結果として入射光からコレクタ電流への高変換効率を有する青色光検出器が得られる。他のより低い周波数を検出する場合には、BInAlNベース層は、例えば青緑色光の場合、InGaNに置き換えられる。
図48のフォトトランジスタに加えて、本発明に従ってフォトダイオードを実現することも可能である。図49では、n型AlN基板3900が設けられており、その上にB1-x-yInxAlyN4元材料または等価物からなるn型層3910が形成され、この層は図48に関連して上述した関係に従っている。その後、活性層3915が形成され、その上方には、p型B1-x-yInxAlyN4元材料からなる層3920が形成されている。そして、この層3920の上方に、p型第2クラッド層3925が形成され、そこには、層3920の一部を露出させるようにウィンドウ3930が形成されている。ウィンドウ3930は光を層3920に当てることができる入口となって正孔を発生させる。従来の方法で一対の電極3935、3940が形成されてもよく、その場合、電極3935は、通常、ウィンドウ3930周りのリング状の電極である。第2クラッド層3925のバンドギャップは層3920のバンドギャップよりも大きいことが好ましく、さらに、層3920のバンドギャップは活性層3915のバンドギャップよりも大きいことが好ましいことが理解できる。そのような手法によれば、最大限広い範囲の光の波長に対して感度がよくなる。より狭い波長範囲が望ましい場合には、層3920よりも小さなバンドギャップを有する材料を層3925に対して使用してもよい。さらに、層3910、3915、3920は、少なくともいくつかの場合には、適正な光電性pn接合を提供するので、全ての実施形態に層3925を含ませる必要はない。
本発明の好ましい実施形態と様々な代替物について説明したが、当業者であれば、本明細書中の教示を与えられると、本発明から逸脱することなく多数の代替物及び等価物が存在することが理解できるであろう。したがって、本発明は上記の説明によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。