JP4836323B2 - X線画像撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線発生手段及びX線検出手段を備えた支持器、並びに、被検体を載置する天板を備えた寝台(いずれもその位置等を移動することが可能)を有するX線画像撮影装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来において、造影剤でコントラストを強調した血管を撮影する等のため、例えば略C字形状の支持器(以下、「Cアーム」という。)、該Cアームの一端に備えられたX線発生源としてのX線管球、他端に備えられているX線検出器としてのイメージ・インテンシファイア(I.I.(Image Intensifier)、また、被検体を静穏に載置するための天板及び寝台、そして収集された投影データを処理する画像処理装置、等からなるX線画像撮影装置が知られている。
【0003】
このようなX線画像撮影装置は、一般には「アンギオ装置」とも呼称され、このアンギオ装置によれば、被検体中へのカテーテルの挿入作業等その他の医師による手術ないし検査と併せ、これに並行したX線撮影を行うこと等を可能とする。また、より具体的には、前記Cアームの位置をX線撮影中随時変更することで、被検体に投与した造影剤の流れを追跡する撮影(いわゆる「ボーラスチェイス撮影」)等を行うことも可能である。
【0004】
ところで、このX線画像撮影装置において上記各種のX線撮影を実施するためには、その前提として、被検体内の注目部位(例えば病変部等)をはっきりと捉えるため(=該注目部位の像を確実に診断可能な程度に画像上に現させるため)、前記寝台ないし天板及びCアーム(以下、単に「寝台及びCアーム」、あるいは「寝台及び/又はCアーム」等というときでも、これらの表現において「天板」は暗に含まれるものとする。)の相対的な位置関係が適切なものとなるよう、これら各要素の位置を定める工程、つまり撮影位置を定める工程が必要となる。
【0005】
従来においては、この工程はもっぱら透視像の取得を通じて行われていた。すなわち、前記X線管球より低線量のX線を連続的に発生させて被検体に曝射することで、いわゆるシネ映像的な透視像をモニター上に表示させるとともに、前記寝台及びCアームの位置関係を変化させるのに応じて変化する前記透視像及び該透視像中の注目部位の像(以下「(透視又は画)像中の注目部位」という表現は、「注目部位の像」という表現に同義とする。)の様子ないし位置を確認しつつ、最終的に適切な寝台及びCアームの位置を定める、といった工程が践まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したX線画像撮影装置においては次のような問題があった。すなわち、すぐ上で述べたように、従来においては、撮影位置を定めるために透視像を利用しているため、寝台及びCアームの移動ないし位置決めを行っている間中、被検体に対し、(低線量とはいえ)連続的にX線を曝射することとなる点に問題があった。つまり、被検体に対する被曝量を増大させることとなっていた。
【0007】
また、このようなことは特に、多方向(=複数の撮影位置、つまり複数の寝台及びCアームの相対的位置関係)によるX線撮影を行おうとする場合、深刻である。というのも、このような場合においては、原則として、一方向一方向ごとに、上記したような移動・位置決め工程を経る必要があるから、それだけ被検体の被曝量が増大することとなるからである。
【0008】
なお、このような弊害を除去するため、現状においても、透視像(ないしその透視像中の注目部位の大凡の位置)を確認した後一旦X線の発生を停止させ、その確認の結果に沿うように、透視像の直接の視認を並行的に実施することなく、寝台及びCアームの移動・位置決めを行う、といった運用が可能ではあるが、当該移動・位置決めの後には、再び透視像による確認が必要となることを考えると、被曝量「低減」というには足りない。また、この場合においては、当該移動・位置決めが一度ではうまくいかない場合が十分に考えられ、結果、透視像取得及び移動・位置決め工程を繰り返し実施することとなった場合には、検査時間が長期化するばかりでなく、かえって被曝量を増大させる懸念さえある。
【0009】
なおまた、上述したような問題点は、いわゆるX線照射条件の設定時においても問題となる。ここに、X線照射条件とは、X線管球における管電流・時間等をどの程度にするか等の各種条件のことをいう。このようなX線照射条件は、被検体の身長、あるいは体厚等が異なることにより、たとえ同じ撮影位置による撮影を行うとしても、被検体ごとに変更されるのが通常である。そして、このX線照射条件は、従来において、撮影位置の位置決めと同様、被検体に対する「透視像」の観察(また、当該透視像を得たときのX線照射条件)を通じて決められており、この点、上記と全く同様の問題が生じることとなっていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、撮影位置等を定めるに際して、被検体に対し無用な被曝を強いることなく、その被曝量を低減することの可能なX線画像撮影装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために以下の手段をとった。
すなわち、請求項1記載のX線画像撮影装置は、被検体を載置し移動可能な天板と、X線発生手段及びX線検出手段を備えた支持器とを有し、前記天板及び前記支持器それぞれの種々の位置及び姿勢に応じた種々の撮影位置にて前記被検体に関するX線画像を撮影可能なX線画像撮影装置において、前記X線画像のうち撮影位置の設定に使用するX線画像を選択するための入力手段と、天板及び支持器の移動を操作者が操作するための操作手段と、前記入力手段によって選択されたX線画像に付随する撮影位置情報を読み出す制御手段とを備え、前記制御手段は、前記撮影位置情報に基づいて、前記天板及び前記支持器の位置または姿勢を前記選択されたX線画像が撮影された際の撮影位置または姿勢に略一致するように自動的に設定し、前記操作手段により移動の操作が行われている間に操作対象である前記天板及び前記支持器の双方を、前記自動的に設定された撮影位置または姿勢に向けて駆動させることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2記載のX線画像撮影装置は、請求項1記載の同装置において、前記撮影位置情報は、前記X線画像が撮影された際の前記天板及び前記支持器の位置または姿勢に関する情報であることを特徴とする。また、請求項3記載のX線画像撮影装置は、請求項1または請求項2記載の同装置において、前記X線画像または前記選択されたX線画像を表示する表示手段を備えることを特徴とする。また、請求項4記載のX線画像撮影装置は、請求項3記載の同装置において、前記制御手段は、前記表示手段に表示されたX線画像に付随する前記撮影位置情報を読み出す機能を備えることを特徴とする。また、請求項5記載のX線画像撮影装置は、請求項3記載の同装置において、前記X線画像は複数枚から構成された画像であって、前記表示手段は、前記複数枚から構成された画像を表示する機能を含み、前記入力手段は、前記表示手段に表示された前記複数枚から構成された画像のうち一枚の画像を選択する機能を含み、前記制御手段は、前記入力手段によって選択された前記一枚の画像の撮影位置情報を読み出す機能を備えることを特徴とする。なお、請求項6記載のX線画像撮影装置は、請求項1記載のX線画像撮影装置において、前記X線画像から得られる情報は、前記撮影位置情報に加え、X線照射条件を含み、前記選択されたX線画像に写る被検体と、前記天板及び前記支持器のうち少なくとも一つの位置または姿勢の設定後に撮影しようとする被検体とが同一である場合には、前記制御手段は、前記選択されたX線画像のX線照射条件を読み出し、前記設定に際し前記撮影位置情報とともに前記X線照射条件に一致するよう前記設定後におけるX線照射条件を自動的に設定すること特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るX線画像撮影装置の全体構成を示す概要図、図2はその側面図、をそれぞれ示している。なお、本実施形態においては、本発明にいう「X線画像撮影装置」を、いわゆる「アンギオ装置」に適用した場合を例とした説明を行うこととする。
【0017】
図1及び図2において、アンギオ装置1は、被検体Pを載置し該被検体Pの体軸方向に移動可能な天板2bを備えた寝台2と、その一端にX線管球5及び他端にX線検出器6を備え前記寝台2を側部より覆い得るような略C字形状となるCアーム(支持器)3とを有する。また、これら寝台2及びCアーム3の他、図2に示すように、アンギオ装置1には画像処理部7が備えられ、該画像処理部7には、後述する画像作成部73や画像表示部D等が備えられている(図4参照、後述)。アンギオ装置1では、これらの構成により、被検体P中に対して、カテーテルを挿入する等の医師による手術ないしは検査を行いつつ、これと並行して血管造影等に係るX線画像の取得を同時に行うこと等が可能である。
【0018】
寝台2は、図1及び図2に示すように、脚2aと該脚2a上に設置された前記天板2b等とからなっている。このうち天板2bは、図1中矢印Xに示すように、被検体P(図1において不図示、図2参照)の体軸方向に沿って移動することが可能となっている(なお、当該天板2bは、この体軸方向に直交する方向にも移動可能である。)。一方、脚2aは、自身及び前記天板2bを上下(図1中矢印Y方向)に動作することが可能であることの他、固定式となっている。したがって本実施形態における寝台2自体は、基本的に自身の設置された場所を変更するような構成とはなっていない。また、脚2aは、上記Cアーム3の動作・移動(後述)にとって、邪魔にならない場所に設けられることが好ましい。図1においては、この要請に従い、天板2bの略端部に沿うようにして、略直方体状となる脚2aが設けられていることが図示されている。
【0019】
また、寝台2には、上記脚2aの上下動及び天板2bの体軸方向(及びこれに直交する方向)の移動を可能とするため図示しない動力源が備えられており、これらは寝台駆動部(図4中符号91参照)を構成する。さらに、このような寝台1に関する天板2b等の移動量を検知するため寝台位置検出部(図4中符号81参照)が設けられている。
【0020】
なお、上では寝台2自体は基本的に固定されるとしたが、本発明はこの形態に特に限定されるものではない。例えば、脚2aと共に寝台2そのものが並進動作可能であるような形態としても勿論よい。この場合においては、動力源を別途設けるとともに、上記寝台位置検出部は当該並進動作にかかる移動量をも検知可能と構成することが可能である。
【0021】
一方、アンギオ装置1のCアーム3においては、その一端及び他端それぞれに、図示しないX線発生装置に接続されたX線管球(X線発生手段)5と、例えばイメージ・インテンシファイア(I.I.)等により構成されるX線検出器(X線検出手段)6とが、各々対向するように備えられている。これらX線管球5及びX線検出器6は、常態(≒「X線撮影時」)において前記天板2bないしは被検体Pを挟むように配置される。なお特に、図1に示すような状態、つまりX線管球5とX線検出器6とを結ぶ直線が、被検体Pを鉛直方向に沿って貫くような状態を、以下では「正規状態」ということにする。
【0022】
なお、上記で、X線検出器6としてはイメージインテンシファイアを採用し得ることについて述べたが、本発明は、このような形態に限定されるものではない。例えばX線検出器6として、いわゆる「FPD(Flat Panel Detector;平面検出器)」を採用してよいことは勿論である。
【0023】
また、Cアーム3は、図1に示すように、当該アームを外側から覆うよう設けられる固定アーム3aと、接続部3bを介して接続されている。接続部3bは、固定アーム3aに対してCアーム3を、図1中矢印Cで示すようなスライド動作させることが可能な構成であるとともに、図中矢印Dで示すような回転動作が可能な構成となっている。
【0024】
なお、矢印Cで示される動作方向を、一般に「LAO方向」及び「RAO方向」といい、それぞれ図3(a)に模式的に示すように、前者のLAO方向は、前記正規状態にあるCアーム3の下端が天板2b下面よりせり出し、これに伴い同上端が被検体Pの上方から除かれるような方向であり、後者のRAO方向はその逆の方向のことをいう。また、矢印Dに示される動作方向を、一般に「Cranial方向」及び「Caudal方向」といい、それぞれ図3(b)に示すように、前者のCranial方向は、前記正規状態にあるCアーム3自身から見て右方向に横倒しになるような方向(図面向かって左方向)であり、後者のCaudal方向はその逆の方向(図面向かって右方向)のことをいう。
【0025】
また、外側アーム3aは、図1に示すように、その一端が、天井に備えられた支点3cに対し、回転可能に取り付けられている。外側アーム3a及びCアーム3は、この支点3cにより、図1中矢印Eで示すような回転動作をする。さらに上記支点3cは、図1乃び図2に示すように、天井面との間に基台3dを介して設置されている。そして当該基台3dは、図示しないレールに沿って図2中矢印Fに示す方向に移動する。以上の構成から、結局、「Cアーム3」が、矢印Fの方向に並進動作することも可能となっている(なお、Cアーム3ないし基台3dは上記の他、天井面に対して、近接又は離反する方向にも移動可能である。)。
【0026】
また、Cアーム3においては、上記した図中矢印C,D,E及びFに係る動作を実現するための複数の動力源が該当する適当な箇所に備えられおり、これらはCアーム駆動部(図1において不図示、図4中符号92参照)を構成する。さらに、Cアーム3には、該Cアーム駆動部を構成する各々の動力源に対応するように、その角度ないし姿勢や位置の情報を検出する、例えばポテンショメータやエンコーダ等で構成されるCアーム状態検出部(図4中符号82参照)がそれぞれ備えられている。より具体的にエンコーダに関していえば、例えば磁気方式、刷子式、あるいは光電式等となる、いわゆるアブソリュートエンコーダを使用してよい。また、本発明は、ロータリエンコーダあるいはリニアエンコーダの種別にこだわるものでもない。
【0027】
なお、上記Cアーム3に関し、矢印C及び矢印Eで示される各回転動作につき、該各回転動作の中心を通る二つの軸線が互いに交わる点を、以下では「Cアーム3のアイソセンタ」と称する。また、上記で説明したCアーム3の移動を実現する機構は一例示に過ぎず、本発明が、これらの形態に限定されるものではない。例えば上記ではCアーム3の図2中F方向に関する移動は、基台3dが天井敷設のレールに沿って走行する、いわゆる天井走行式により実現されるものとなっていたが、本発明ではこれに代えて、Cアーム3を保持する床面設置の別体を用意し、当該別体が床面に沿って移動することにより、図2中F方向の移動が実現されるような形態であってもよい。
【0028】
画像処理部7は、図4のブロック図に示すように、上記X線検出器6から入力されるX線データを収集しこれをデジタル信号に変換するデータ収集部71、そのデジタル変換されたX線データに対し種々のキャリブレーション処理等を行う前処理部72、その結果に基づき画像を作成する画像作成部73、作成された画像を表示する画像表示部D及び該画像を画像データとして記憶する画像メモリM等から構成されている。
【0029】
また、データ収集部71には、図4に示すように、上述した寝台位置検出部81及びCアーム状態検出部82が接続されており、これら各検出部81及び82には寝台駆動部91及びCアーム駆動部92が接続されている。これら各部の作用により、前記動力源の作用によって変化する寝台2ないし天板2bやCアーム3の位置ないし姿勢に関する情報(以下、「撮影位置情報」という。)は、上記X線データ収集と同時に、収集されている。そして、上記画像作成部73において作成された画像に関する管理情報の中には、この同時収集されたCアーム3等の撮影位置情報が含まれている。つまり、画像表示部Dにおいて表示される画像、あるいは画像メモリMにおいて記憶される画像データには、それに固有の撮影位置情報が、その属性情報として必ず付されている(図4中、画像メモリMブロック内参照)。
【0030】
なお、本実施形態においては、上記撮影位置情報に加え、ある撮影位置においてX線撮影を実施した場合には、当該撮影位置におけるX線照射条件、すなわちX線管球5における管電流・時間等をどの程度にしたか等の各種条件を、被検体ごとに(=被検体の別に応じて)、併せて記憶させておくことも可能である。
【0031】
さらに、画像処理部7には、図4に示すように、上記各部(71乃至73、D及びM等)の駆動タイミングや、上記X線検出器5等を制御するための制御部Cが備えられ、また、上記各部に対して装置使用者の意思を伝えるための入力部74が備えられている。このうち、本実施形態における制御部Cは特に、上記撮影位置情報に基づく寝台2及びCアーム3の動作制御や、上記入力部74を通じた透視像に対する指定入力に基づく同動作制御を実現するための演算等を行い、かつ実際に同動作を実現する制御信号等を発する(後に詳述する)。また、入力部74としては、具体的に例えば、キーボードやマウス、あるいはジョイスティック、トラックボール、ジョグシャトル、さらには表示部Dの画像表示面に直截に接触しつつ入力することが可能な構成(いわゆるタッチペン)等、種々の構成を採用することができる。
【0032】
以下では、このような構成となるアンギオ装置1の作用効果について、図5乃び図6、並びに図7及び図10に示すフローチャートに沿った説明を行う。なお、本発明は、アンギオ装置1で取得された画像に付随する撮影位置情報に基づき、あるいは当該画像中の注目部位に対する指定入力に基づき、寝台2及びCアーム3の適切な移動ないし位置決めを実施することにつき特徴があるものであるから、以下ではこの点を中心とした説明を行うことし、前者(撮影位置情報に基づく位置決め等)を第一実施形態と、後者(指定入力に基づく位置決め等)を第二実施形態と呼び、分けて説明することとする。また最後に、第一実施形態及び第二実施形態の双方に関わる事項を、第三実施形態として説明することとする。なお、第一実施形態では、位置決めされた後、前記撮影位置情報に付随して記憶されているX線照射条件に基づいて、同条件の自動設定を行う場合も併せて説明する。
【0033】
(第一実施形態)
まず、本実施形態におけるアンギオ装置1においては、既に撮影されたX線画像に付随する前記撮影位置情報に基づき、寝台2ないし天板2b及びCアーム3の適切な移動ないし位置決めを実施することができる。ここで「既に撮影されたX線画像に付随する撮影位置情報」とは、当該X線画像を作成するに必要なX線データが収集された時における、上記寝台2及びCアーム3の位置ないし姿勢に関する情報、あるいは当該X線画像が撮影された際における撮影位置、と言い換えることもできる。そして、本第一実施形態では、このX線画像が撮影された際における撮影位置に一致するように、天板2bないし寝台2及びCアーム3のいずれか少なくとも一つの位置ないし姿勢を自動的に設定する。以下では、このような態様を、四つのパターンに分けて説明する。
【0034】
(第1パターン)
本第1パターンは、画像メモリM中におけるある一枚の画像を入力部74を通じて選択・入力(図5ステップS1)すると、該画像に付随する撮影位置情報の中から、Cアーム3の角度(上記にいう「Cranial方向」若しくは「Caudal方向」又は「RAO方向」若しくは「LAO方向」)に関するデータを制御部Cにより読み出し(図5ステップS2)、これに基づきCアーム駆動部92を通じて、Cアーム3を当該データが示す位置に向かって移動(この場合においては、「回転動作」のみとなる。)させ、かつ、当該位置において位置決めを実施する(図5ステップS3乃びS4)。
【0035】
このような運用法は、例えば術前・術後において同一画像を確認したい場合等に有効である。すなわち、本運用法によれば、術前の画像と同一方向からみた画像の確認を、術後においても容易に実施することができ、またこのことから当然に、その治療効果の確認も短時間のうちに、かつ容易に実施することが可能となる。言い換えれば、従来、術前・術後で同一画像を確認するためには、術後において、被検体の透視像を確認しながら術前に撮影された画像に関する寝台2及びCアーム3の位置を手動で再度セッティングする必要があったところ、本第1パターンではそのような必要がないことになる。ここで従来法が透視像の取得、つまり被検体に対する新たな被曝を強いることとなる点を鑑みるに、本第1パターンの有意性が特に確認されるところである。
【0036】
なお、上記したCアーム3の移動・位置決めに際しては、例えば入力部74を構成する図示しない「Cアーム回転ボタン」を押下中のみ、該Cアーム3の実際の移動(図5ステップS4)が行われるような構成とするとよい。このようにすれば、装置使用者はCアーム3の時々の移動を確認しながら、前記移動・位置決めの随時進行ないし完了を制御することができ、該Cアーム3と被検体Pとの間で干渉を生じさせる等の不具合を回避する(つまり、被検体Pの安全を確保する)ことができる。
【0037】
(第2パターン)
本第2パターンは、画像メモリM中におけるある一枚の画像を入力部74を通じて選択・入力すると、当該画像に付随する撮影位置情報に合致した位置での撮影(つまり、当該画像と同一の撮影位置での撮影)が可能となる点、上記第1パターンと変わりはないが、この際、前記撮影位置情報中、Cアーム3の位置ないし姿勢に関する情報、及び寝台2ないし天板2bに関する情報の双方、すなわち該撮影位置情報を構成する全情報(全データ)を利用する点で相違する(図5ステップS2におけるかっこ内の記述参照)。そして、この場合においては、寝台駆動部91又はCアーム駆動部92のいずれか一方、あるいは双方に制御信号を送信して、寝台2ないし天板2b及び/又はCアーム3の移動・位置決めを行う(図5ステップS4におけるかっこ内の記述参照)。
【0038】
このような運用によれば、例えばCアーム3等の位置を連続的に変化させ、複数枚の画像を撮影する等の検査実施中において、注目部位(例えば血管中の狭窄又は閉塞部位等その他、より一般的にいえば「病変部」等、以下同じ。)を再度検査する必要が生じた際、それ以前に上記連続変化の中で一度通過した位置関係(=寝台2及びCアーム3の相対的な位置関係)を再現したい場合等に有効である。そして、この場合においても、上記第1パターンと同様に、被検体に対し無用な被曝を強いることとならない点が特筆される。
【0039】
なお、本第2パターンにおいても、入力部74を構成する図示しない「位置移動ボタン」を押下中のみ、寝台2及び/又はCアーム3の移動が行われるような構成とするとよい。
【0040】
また、上記したように、Cアーム3等の位置ないし姿勢を連続的に変化させる検査実施中においては、取得される画像が同一の被検体に関するものとなるから、上記した又は図5に示した撮影位置再現処理が行われたとき(つまり、X線撮影角度を規定するCアーム3の角度及び寝台2とCアーム3との相対的な位置関係が従前と同じものとして再現されるとき)には、そのときのX線照射条件は、当該再現された撮影位置におけるX線照射条件と、ほぼ同じとしてよいこととなる。
【0041】
したがって、このような場合においては、上記したように、画像データに付随させて画像メモリMに記憶可能とされていた、各撮影位置におけるX線照射条件を利用すると、上記とはまた別の効果が奏される。すなわち、上記又は図5に示すような撮影位置再現処理が行われた場合、そのときのX線照射条件は、当該再現された撮影位置におけるX線照射条件に一致するよう自動的に設定されるようにしておくとよい。そして、このようにしておけば、わざわざX線照射条件決めの透視をして、余計な被曝を被検体に与えなくともよくなる。
【0042】
なお、1フレーム目の画像では、わずかにX線照射条件がずれていても画像処理により十分な検査画像として利用できるし、2フレーム目以降の画像は、1フレーム目の撮影画像を元にX線照射条件をより厳密に設定できるので殆ど問題ない。
【0043】
なおまた、指定された画像が同一被検体に関するものではあっても、連続した検査中の画像でなかった場合(例えば、前日の検査画像を参照したような場合)には、被検体の姿勢をほぼ同じように保てる機構(例えば、天板上に印があるとか、頭と脚を同じ位置で固定する等)があれば、前記実施例をそのまま適用できる。
【0044】
ちなみに、このような考え方は、上記第1パターンにも当てはめて考えることができるし、以下に述べる第3及び第4パターンについても同様である。また、上記第1及び第2パターンの効果として述べた事項(=被検体の被曝量低減等)、及び、寝台2及び/又はCアーム3の移動を何らかのボタンの押下中のみ実行する構成としてよいことは、以下に述べる第3及び第4パターンでも全く同様である。したがって、以下の第3及び第4パターンでは、このような事項等に関する記載を省略する。
【0045】
(第3パターン)
本第3パターンは、やはり画像メモリM中に記憶された画像の選択・入力を通じて、該画像に付随する撮影位置情報に合致したCアーム3等の移動を実現することにつき、上記第1及び第2パターンと何ら変わりはない。ただし、本第3パターンにおいては、選択・入力の対像となる画像が、Cアーム3の角度の変更を伴いながら撮影された複数枚から構成された画像である点で相違する。
【0046】
すなわち、この場合においては、画像メモリM中における上記複数枚の画像を、いわゆるリプレイ表示している間に、その中の一枚の画像を入力部74を通じて選択・入力(図6ステップT1)することになる。このとき、この選択・入力は、例えば「注目部位がはっきり見える画像」といった装置使用者の主観的な基準に基づいて実施すればよい。
【0047】
後は、選択された画像に付随する撮影位置情報の中から、Cアーム3の角度に関するデータを制御部Cにより読み出し(図6ステップT2)、これに基づきCアーム駆動部92を通じて、Cアーム3を当該データが示す位置に向かって移動させ、かつ、当該位置において位置決めを行う(図6ステップT3乃びT4)。
【0048】
(第4パターン)
本第4パターンの上記第3パターンに対する関係は、上記第2パターンの上記第1パターンに対する関係と全く同様である。つまり、本第4パターンは、上記第3パターンでCアーム3の回転に関してのみ考慮されていたのに加え、Cアーム3の位置や、寝台2ないし天板2bの位置をも考慮する点で異なる。
【0049】
要するに、本第4パターンでは、選択された画像に付随する撮影位置情報を構成する全情報(全データ)を利用し(図6ステップT2におけるかっこ内の記述参照)、寝台駆動部91又はCアーム駆動部92のいずれか一方、あるいは双方に制御信号を送信して、寝台2ないし天板2b及び/又はCアーム3の移動・位置決めを行う(図6ステップT4におけるかっこ内の記述参照)。
【0050】
なお、本第一実施形態においては、上記四つのパターンを各別に実施できることは勿論、検査の進行状況等に応じて、各パターンの二以上を適宜組み合わせて実施するようにしてよい。
【0051】
また、上記第1乃至第4パターンにおいて、ある被検体に関する撮影を実施する場合であって、かつ、前記天板2b、前記寝台2及び前記Cアーム3の位置ないし姿勢を、当該被検体に関し記憶されている撮影位置と概略同じ撮影位置として自動的に設定する場合には、上記第2パターンの説明中述べたように、当該撮影位置におけるX線照射条件に一致するよう、当該設定時におけるX線照射条件をも自動的に設定するようにしてもよい。このようにすれば、被検体に対する無用な被曝を避けることができる。
【0052】
なお、この場合、前記撮影位置情報及び前記X線照射条件は、まとめて「検査情報」として捉えることができよう。また、このような実施例は、撮影位置の設定が、上記第1乃至第4パターンのように自動的に行われる場合はもちろん、これを手動で行う場合においても同様に考えることができる。つまり、撮影位置の設定は手動で行うが、その設定が記憶された検査情報中のある撮影位置に概略一致する場合には、当該撮影位置におけるX線照射条件が自動的に設定されるということになる(ただし、被検体は同一である必要がある。)。
【0053】
(第二実施形態)
さて次に、本実施形態におけるアンギオ装置1においては、X線管球5から低線量のX線を連続的に発生させて、これをX線検出器6及び画像作成部73等においてリアルタイムに処理する、いわゆる「透視撮影」下の状況で、これにより随時得られている透視像(X線画像)を画像表示部D上に表示するとともに、該透視像に対する指定(位置)入力に基づいて、寝台2ないし天板2b及びCアーム3の適切な移動ないし位置決めを実施することができる。以下では、このような態様を、三つの実施例に分けて説明する。
【0054】
(第一実施例)
通常、上記透視撮影を実施する目的は、その後に予定される本撮影(例えば、「ボーラスチェイス撮影」等)を実施する前に、被検体P内における注目部位の位置関係を把握し、また該注目部位がCアーム3のX線管球5とX線検出器6とを結ぶ線分上にちょうど位置するよう、寝台2ないしCアーム3の位置等を調整することにある。
【0055】
本第一実施例では、以下に記すような処理を実施することにより、上記調整を迅速かつ効率的に実施することができる。まず、図7ステップU1にあるように、任意に取得された(ないしは、現に取得の最中にある)透視像において、その像中の注目部位に対し、入力部74を通じた指定入力をする。ここに「任意」の「透視像」とは、寝台2及びCアーム3が特に定まった位置にある状態にあるわけではなく、(したがって)注目部位の像が必ずしも画像表示部D上の中心に位置しない場合を意味する。
【0056】
また、上記指定入力は、例えば図8に示すように、適当な大きさの領域を上記マウス等で囲むことにより行う等とすればよい。なお、この図8においては、透視像DZが、その一部につき腫瘍TM及びこれに伴う閉塞部位dvn(=注目部位の像)が観察される血管Pdvを現す画像であって、かつ、この腫瘍TMないし閉塞部位dvnにつき、上記指定入力にかかる領域SPが指定されている例が示されている。
【0057】
次に、制御部Cは、図7ステップU2にあるように、上記指定入力に基づき、被検体P中の注目部位を通る、実空間(=本アンギオ装置1が設置される空間)上のX線軌跡がどのように表現されるかを確認する。ここで「注目部位を通る」とは、例えば簡単には、上記領域SPの「中心部位SPC(に対応するX線検出器6上の前記実空間上における座標値)を通る」等と解すればよい。また、座標系としては、Cアーム3のアイソセンタを原点とした座標系を考えればよい。結局この場合において制御部Cは、中心部位SPC(に関する上記したような座標値)とX線管球5のセンターとを結ぶ直線が、Cアーム3のアイソセンタを原点とした座標系でどのように表現されるかを演算することになる。
【0058】
具体的には、上記中心部位SPCに対応するX線検出器6上の前記実空間上における座標値を(e,f,g)とし、該座標値(e,f,g)とX線管球5のセンターとを結ぶベクトルをA=(a,b,c)とすれば、上記X線軌跡ないし直線は、(x,y,z)=A・t+(e,f,g)、あるいは、
(x,y,z)=(a,b,c)・t+(e,f,g)…(1)
と表すことができる。ここに、tはパラメータであって、
−∞≦t≦∞…(2)
である。また、ベクトルAや座標値(e,f,g)は、Cアーム状態検出部92から得られるCアーム3の現在の位置や、X線検出器6上における一画素分の長さ(設計値)等に基づいて求めることができる。
【0059】
なお、前記座標系等を図示すると、図9のようになる。この図9において、符号SPRは被検体P中の注目部位、符号ICは原点たる前記アイソセンタであり、また、該座標系は、そのz軸方向が被検体の体軸方向に一致するとともに、そのxy平面が前記z軸に垂直な被検体の断面に合致し、かつ、y軸方向が鉛直上向きに一致するようにとられている。
【0060】
制御部Cは次に、上記X線軌跡に関する演算に続き、図7ステップU3にあるように、注目部位SPRの「高さ」位置の座標値を、プリセット値及び寝台2の物理的高さから演算する。ここに「プリセット値」とは、注目部位SPRの天板2b面からの高さを表す数値のことをいい、所与の値として予め準備することの可能なものである。例えば図8に示した透視像DZが、「胸部」に関する画像であるならば、プリセット値は、概ね天板2b面から「10cm程度」等と決められている。なお、該プリセット値の入力は、いま説明している処理を始める際(すなわち、図7ステップU1以前に)に予め実施しておくことが可能であり、また場合によっては、注目部位SPRの像に対する指定入力を行った時点において実施する、等とすればよい。
【0061】
具体的には、上記プリセット値をdtとすると、注目部位SPRの高さ位置の座標値y1は、
y1=dt+d0−y0…(3)
と表すことができる(図9参照)。ここに、d0は、寝台2の物理的高さ(≒脚2aの高さ)を表す値であり、寝台位置検出部91を通じて既知である。また、y0はアイソセンタの高さを表す。
【0062】
そして次に、制御部Cは、図7ステップU4にあるように、上記(1)及び(3)式から、注目部位SPRを通るX線軌跡の実空間上における表現式が、
(x,y1,z)=(a,b,c)・t+(e,f,g)…(4)
であることを確認し、さらにこの場合の座標値x及びyの具体的数値、すなわち注目部位SPRの座標値(x1,y1,z1)を定める。具体的には、上記(4)式における右辺がすべて既知(ただし、tを除く。)であること、また、y1=b・t+fであるから、これよりt=(y1−f)/bが求められ、このtと上記(4)式によりx1及びz1は求めることができる。
【0063】
以上の処理を経て制御部Cは、図7ステップU5にあるように、以上のように求まった注目部位SPRの座標値(x1,y1,z1)の投影像が、X線検出器6上の中心位置に位置するよう(=注目部位SPRの像が画像表示部D上の中心に位置するよう)に、寝台2及び/又はCアーム3の位置ないし姿勢を移動させ、また位置決めを実施する。具体的には、この位置決めが成功裏に終了する場合、その時点におけるCアーム3の位置ないし姿勢における上記X線検出器6上の中心位置の座標値を(e0,f0,g0)とすれば、(3)式あるいは(4)式と同様にして、
(x1,y1,z1)=(ax,bx,cx)・t+(e0,f0,g0)…(5)
と表現することができるから、この式を満足するような上記移動ないし位置決めを実現すればよい。
【0064】
ただし、この場合における寝台2及びCアーム3のとり得る位置ないし姿勢、言い換えれば、座標値(x1,y1,z1)の注目部位SPRをX線検出器6の中心位置に投影することが可能であるための寝台2及びCアーム3の最終位置(≒(5)式のベクトルAx=(ax,bx,cx)及び(e0,f0,g0)の具体値)、あるいは該位置までの移動の具体的手順は、原理上、無限にある。したがって、上記移動ないし位置決めを実施する際には、予め何らかの制限をかけておくことが好ましい。
【0065】
例えば具体的には、図9に併せて示すように、原点ICを中心とし、上記座標値(e,f,g)がその表面上に存在する球Qを想定し、当該球Qの表面上に限り、(e0,f0,g0)のあるべき位置を定める、といった手法をとり得る。つまり、この場合においては、「点(e0,f0,g0)が前記球Qの表面上に存在する」という点につき、制限がかけられていることになる。
【0066】
なお、この具体的な求根法としては、例えば、現時点のCアーム3姿勢におけるX線検出器6の中心位置の座標値(ec,fc,gc)と、点(x1,y1,z1)を通る、適当に想定した有限数の直線及び前記球Qが交わる点(ex,fx,gx)(x=1,2,…,n)とにおいて、点(ec,fc,gc)に最も近い点(em,fm,gm)(m=1,2,…or n)に、X線検出器6の中心位置が一致するよう(=(ec,fc,gc)が(em,fm,gm)になるよう)に、Cアーム3の移動及び位置決めを実現する、等とすればよい。これによれば、Cアーム3の移動は、前記球Qの想定により、図1における矢印C及びDに示す回転動作「のみ」実施すればよく、かつ、該移動は最短距離でもって、上記(5)式を近似的に満たし得ることとなる。
【0067】
また、これとは別の例として、現時点におけるX線検出器6の中心位置の座標値(ec,fc,gc)を基準とし(=Cアーム3を移動することなく)、既知となった座標値(x1,y1,z1)を、例えば(x1,y1+Δ1,z1+Δ2)(ただし、例えば−10cm≦Δ1orΔ2≦10cm)等と変化させることにより、この(x1,y1+Δ1,z1+Δ2)と(ec,fc,gc)(=(e0,f0,g0))とにより定義されるベクトルB((5)式におけるベクトルAx=(ax,bx,cx)に該当する。)が、(3)式におけるベクトルAに一致、あるいは近似するようなΔ1及びΔ2を求める、等といった手法を採ることも考えられよう。なお、この場合においては、明らかな通り、寝台2及び天板2bの移動のみを実施すればよいことが分かる。
【0068】
さらに、上記「制限」ということの別の表現例として、「画像表示部D上における透視像DZの拡大率を変化させない」とか、「寝台2の上下動のみの調整を行う」等といった、表現により表される条件を課す場合も考えられよう。
【0069】
いずれにしても、以上例示した演算等により、寝台2及び/又はCアーム3は、(5)式を満たすような適切な位置決めがなされ、結果、注目部位SPRの像は、画像表示部D上において中心に表示されることになる。つまり、本第一実施例の冒頭に述べた「調整」は、自動的に、迅速かつ効率的に実施されることとなる。したがって、本第二実施形態・第一実施例によれば、上記第一実施形態と同様、被検体に対する無用な被曝を強いることがなく、その被爆量を低減することができる。
【0070】
(第二実施例)
本第二実施例は、上記第一実施例における位置決めの精度を向上させることをその趣旨とする。すなわち、上記第一実施例では、各処理において、適度な近似を働かせることを前提としているから、一度演算を実施するのみで、注目部位SPRの像を画像表示部D上の中心に表示できるどうかは必ずしも確実ではない。殊に、上記で導入したプリセット値dtは、そもそも、比較的大雑把に定められる性質の値であることから、上記のような事態が発生することが一般に考えられることとなる。
【0071】
そこで、本第二実施例では、上記第一実施例によって取得された結果に基づいて、上記「調整」に係る精度の更なる向上を図る。具体的には、上記第一実施例の演算結果により、移動及び位置決めされた新たな相対的位置関係にある寝台2及びCアーム3により取得された透視像DZ´(不図示)について、該透視像DZ´中の注目部位SPRに対し上記と同様な指定入力を行う。この結果、上記(1)式に相当する表現式、すなわち、
(x,y,z)=(a1,b1,c1)・t+(e´,f´,g´)…(6)
を得る。ここに、ベクトルA1=(a1,b1,c1)、座標値(e´,f´,g´)の意味合いは、上記(1)式におけるのと同様である。例えば、座標値(e´,f´,g´)に関していえば、これは、いま行われた指定入力に係る部位に対応するX線検出器6上の実空間上における座標値である。ここで「指定入力に係る部位」とは、上記では「中心部位SPC」であったが、この場合においてもむろん同様に考えてよい。
【0072】
そして、このようにして得られた(6)式と(1)式とを連立させることによれば、注目部位SPRの新たな座標値(x1´,y1´,z1´)を求めることができる。この場合、プリセット値dtの影響は排除されるから、座標値(x1´,y1´,z1´)はそれに関わりのないものとして得られることになる。後は、上記図7ステップU5に関し述べたのと同様に、改めて寝台2及び/又はCアーム3の移動及び位置決めを実施すればよい。以上のことから、本第二実施例では、より精度高く、注目部位SPRの像を画像表示部D上の中心に表示させることが可能となる。
【0073】
(第三実施例)
本第三実施例は、上記第一及び第二実施例に関する応用であって、プリセット値dtを用いずに、そもそも最初から注目部位SPRがX線検出器6上の中心位置に投影されるような寝台2及び/又はCアーム3の移動及び位置決めを実行する手法に関するものである。
【0074】
まず、任意に取得された透視像において、その像中の注目部位SPRに対し、入力部74を通じた指定入力をし、該注目部位SPRを通るX線軌跡の表現式を得る(図10ステップV1乃びV2)。この点、上記第一実施例と何ら変わるところはなく、結果、上記(1)式に相当する式が得られることになる。ただし、ここでは説明の便宜のため、(1)式におけるベクトルAを、ベクトルAa=(aa,ba,ca)に、座標値(e,f,g)を(ea,fa,ga)に置き換えた表現とする(その本質が異ならないのは言うまでもない。)。
(x,y,z)=(aa,ba,ca)・t+(ea,fa,ga)…(1)´
【0075】
次に、制御部Cは、図10ステップV3にあるように、Cアーム3の角度を自動的に所定量変化させ、この後の状態でもう一度透視像DZ´´(不図示)を得る。そして、図10ステップV4及びV5にあるように、この新たな透視像DZ´´中の注目部位SPRに対し、入力部74を通じた指定入力を再度行い、該注目部位SPRを通るX線軌跡の表現式を改めて得る。つまり、この場合の指定入力に係る部位に対応するX線検出器6上の実空間上における座標値を(eb,fb,gb)とし、該座標値(eb,fb,gb)とX線管球5のセンターとを結ぶベクトルをAb=(ab,bb,cb)とすれば、
(x,y,z)=(ab,bb,cb)・t+(eb,fb,gb)…(7)
が得られる。
【0076】
これを図示すると、図11のようになる。この図によれば、上記操作(Cアーム3の角度所定量変化)により、注目部位SPRを通る二つのX線軌跡が得られることとなるのがわかる(なお、このような図示の状況は、上記第二実施例における(1)式と(6)式を図示表現する場合にも当てはまる。)。後は、上記第二実施例と同様に、(1)´式及び(7)式を連立させることにより、注目部位SPRの座標値(x1,y1,z1)を求めた後(図10ステップV6)、上記第一実施例と同様に、該座標値(x1,y1,z1)を有する注目部位SPRを、X線検出器6上の中心位置に投影し得る、寝台2及び/又はCアーム3の移動及び位置付けを実施すればよい(図10ステップV7)。
【0077】
この際、本第三実施例では、上記説明から明らかなように、そもそも当初からプリセット値dtが不要である。したがって、上記第二実施例で目論んだ効果が、始めから享受し得ることとなる。
【0078】
なお、本第二実施形態では、次のような応用形態を適用することが可能である。すなわち、上記第一、第二及び第三の各実施例における処理を経ることによって、注目部位SPRの像が画像表示部D上の中心に表示されるようになったら、それ以降、例えば装置使用者が寝台2ないし天板2b、あるいはCアーム3の移動指令を、入力部74を通じて直接に発した場合(マニュアル操作による移動)にあっても、注目部位SPR像の中心表示が維持されるような構成を採用することが可能である。つまり、上記のようなマニュアル操作が介在すると、一般に注目部位SPR像の画像表示部D上における表示位置は変更される(中心から外れる)ことになるが、この変更を打ち消すような寝台2及び/又はCアーム3の移動・位置決めが自動的に実行されるような構成である。
【0079】
このためには、上記(5)式に示す形式で確定されたベクトルAx=(ax,bx,cx)並びに座標値(x1,y1,z1)及び(e0,f0,g0)を基準として、上記マニュアル操作により与えられた量による変位(例えば一般には、寝台2の移動であれば(x1+Δx,y1+Δy,z1+Δz)として、Cアーム3の移動ないし回転であれば(e0+Δe,f0+Δf,g0+Δg)としてそれぞれ与えられよう。)を打ち消すような新たな(5)式形式による表現を、上記第一実施例中で述べたような手順により求めるようにすればよい。
【0080】
(第三実施形態)
さて次に、上記第一実施形態及び第二実施形態の双方に関わる本アンギオ装置1の運用法について説明する。ここで「双方に関わる」「運用法」とは、つまり上記第一実施形態における主要な概念「撮影位置情報」と第二実施形態における主要な概念「指定入力」を、いわば組み合わせた形態で、本実施形態に係るアンギオ装置1を運用することを意味する。以下具体的に説明する。
【0081】
まず、上記第二実施形態における第三実施例では、取得された二つの透視像中の各注目部位SPRに対し指定入力を行い、これに基づいて、該注目部位SPRがX線検出器6上の中心位置に投影されるよう、すなわち該注目部位SPRの像が画像表示部D上の中心に表示されるように、寝台2及び/又はCアーム3を適切に移動・位置決めするものであった。
【0082】
ところで、検査実行中においては、上記第三実施例のような運用を実施する以前に、当該注目部位SPRの像を含む、撮影済み(=画像メモリMに記憶済み)の透視像を取得している場合も当然に考えられる。また、この透視像は、上記第一実施形態で述べたように撮影位置情報を付随している。
【0083】
したがって、このような透視像が存在する場合であって、かつ、該透視像が現時点で取得されている透視像とは異なる撮影位置で取得されたものである場合には、上記第二実施形態における第三実施例で、二つ目の透視像を取得するのに必要なCアーム3の角度変化工程(図10ステップV3)を省いてもよい。なぜなら、前記撮影された透視像に付随する撮影位置情報により、上記(7)式に相当する表現式を得ることができるからである。ただし、このような場合においては、上記第一実施形態のように、選択された画像に付随する撮影位置情報「そのもの」を利用して寝台2及び/又はCアーム3を移動するといった単純な工程とはならず、当該画像中の注目部位に対する指定入力以降の工程(図10ステップV4以降、参照)が必要となることは言うまでもない。
【0084】
なお、このようなことは、上記第二実施形態における第一及び第二実施例においても、同様に考えることができる。すなわち、これら第一及び第二実施例では、それらの処理において必要とされていた透視像DZ又はDZ´の取得が必要でない場合があり得る。そのような場合とはつまり、既に撮影されたものであって、該透視像DZ又はDZ´に代わり得る注目部位SPRの像を含んだ透視像が存在している場合に他ならない。
【0085】
このように、画像に付随する撮影位置情報は、上記第二実施形態においても有効に利用することができる。そして、このことによれば、上記第二実施形態における各実施例に比してもまだ、被検体に対する被曝量の更なる低減を図ることができる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のX線画像撮影装置によれば、撮影位置を定めるに際して、被検体に対し無用な被曝を強いることなく、その被曝量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るアンギオ装置の構成例を示す概要図である。
【図2】 図1に示すアンギオ装置の側面図である。
【図3】 図1に示すアンギオ装置のCアームがとりうる姿勢を説明する説明図であって、(a)はCアームのRAO方向又はLAO方向、(b)はCranial方向又はCaudal方向の姿勢変化に関する。
【図4】 図1に示すアンギオ装置の電気的構成例を示すブロック図である。
【図5】 本発明の第一実施形態に係り、画像メモリに記憶された画像を選択することにより、当該画像と同一の撮影位置にアンギオ装置をセッティングする処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】 図5と同趣旨のフローチャートである。
【図7】 本発明の第二実施形態、第一実施例に係り、透視像の注目部位に対する指定入力に基づいて、該注目部位の像を画像表示部上の中心の位置に表示させるための処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】 透視像の表示例及び指定入力の例を示す説明図である。
【図9】 図7に示す処理を実施する上で想定される三次元空間、X線軌跡等を示す説明図である。
【図10】 本発明の第二実施形態、第二実施例に係り、透視像の注目部位に対する指定入力に基づいて、該注目部位の像を画像表示部上の中心の位置に表示させるための処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】 図10に示す処理を実施する上で想定される三次元空間、X線軌跡等を示す説明図である。
【符号の説明】
P 被検体
1 アンギオ装置(X線画像撮影装置)
2 寝台
2a 脚
2b 天板
3 Cアーム
3a 固定アーム
3b 接続部
3c 支点
3d 基台
5 X線管球(X線発生手段)
6 X線検出器(X線検出手段)
7 画像処理部
71 データ収集部
72 前処理部
73 画像作成部
74 入力部
D 画像表示部
M 画像メモリ
C 制御部
81 寝台位置検出部
82 Cアーム状態検出部
91 寝台駆動部
92 Cアーム駆動部
Claims (6)
- 被検体を載置し移動可能な天板と、X線発生手段及びX線検出手段を備えた支持器とを有し、前記天板及び前記支持器それぞれの種々の位置及び姿勢に応じた種々の撮影位置にて前記被検体に関するX線画像を撮影可能なX線画像撮影装置において、
前記X線画像のうち撮影位置の設定に使用するX線画像を選択するための入力手段と、
天板及び支持器の移動を操作者が操作するための操作手段と、
前記入力手段によって選択されたX線画像に付随する撮影位置情報を読み出す制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記撮影位置情報に基づいて、前記天板及び前記支持器の位置または姿勢を前記選択されたX線画像が撮影された際の撮影位置または姿勢に略一致するように自動的に設定し、前記操作手段により移動の操作が行われている間に操作対象である前記天板及び前記支持器の双方を、前記自動的に設定された撮影位置または姿勢に向けて駆動させることを特徴とするX線画像撮影装置。 - 前記撮影位置情報は、前記X線画像が撮影された際の前記天板及び前記支持器の位置または姿勢に関する情報であることを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影装置。
- 前記X線画像または前記選択されたX線画像を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載のX線画像撮影装置。
- 前記制御手段は、前記表示手段に表示されたX線画像に付随する前記撮影位置情報を読み出す機能を備えることを特徴とする請求項3記載のX線画像撮影装置。
- 前記X線画像は複数枚から構成された画像であって、
前記表示手段は、前記複数枚から構成された画像を表示する機能を含み、
前記入力手段は、前記表示手段に表示された前記複数枚から構成された画像のうち一枚の画像を選択する機能を含み、
前記制御手段は、前記入力手段によって選択された前記一枚の画像の撮影位置情報を読み出す機能を備えることを特徴とする請求項3記載のX線画像撮影装置。 - 前記X線画像から得られる情報は、前記撮影位置情報に加え、X線照射条件を含み、
前記選択されたX線画像に写る被検体と、前記天板及び前記支持器のうち少なくとも一つの位置または姿勢の設定後に撮影しようとする被検体とが同一である場合には、
前記制御手段は、
前記選択されたX線画像のX線照射条件を読み出し、前記設定に際し前記撮影位置情報とともに前記X線照射条件に一致するよう前記設定後におけるX線照射条件を自動的に設定すること特徴とする請求項1記載のX線画像撮影装置。
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