(実施例1)
(1)画像形成装置例
図1は、本実施形態の画像形成装置を好適に示す一例たるレーザビームプリンタ(以下、プリンタと略称する)1の概略構成を示す模式的断面図である。
このプリンタ1は、ホストコンピュータ等の外部画像情報提供装置(図示せず)から提供された画像情報に応じた画像をシート状の記録媒体Pに形成し記録するという一連の画像形成プロセスを公知の電子写真方式に則り行う形態の画像形成装置である。
プリンタ1は、潜像担持体としてのドラム状の回転自在な電子写真感光体2及び現像装置3を保持するプロセスカートリッジ4と、画像情報に応じて感光体2の外周面を露光することにより静電潜像を形成するレーザスキャナユニット(以下、スキャナと略記する)5と、記録媒体Pに画像を転写処理を施すロール状の回転自在な転写体6と、画像転写処理済みの記録媒体Pに加熱及び加圧により定着処理を施す定着装置7とを備えている。
プリンタ1に備えられたプロセスカートリッジ4は、感光体2及び現像装置3に加えて、スキャナ5による露光処理工程前に感光体2の外周面を規定電位分布に帯電せしめる一次帯電機構8も保持している。そしてこのプロセスカートリッジ4はプリンタ本体にて取り外し自在に支持されている。感光体2の修理及び現像装置3への現像剤補給等のメンテナンスが必要であるときには、前記本体にて開閉自在に支持されているカバー9を開いたのち、プロセスカートリッジ4ごと交換することによりメンテナンスの迅速化及び簡易化等が図られている。
プロセスカートリッジ4に保持されている一次帯電機構8は、スキャナ5による露光処理工程前において商用電源等から規定バイアスを印加されることにより感光体2の外周面を規定電位分布に帯電せしめるようになっている。
プリンタ1に備えられたスキャナ5は、画像情報提供装置からの画像情報に基づいて生成されるデジタル画素信号に応じて変調されたレーザLaで、プロセスカートリッジ本体に設けられた窓4aを介して、帯電処理された感光体2の外周面を露光走査する。これにより前記画像情報に応じた静電潜像が前記感光体2の外周面に形成される。
次に、プリンタ1における一連の画像形成プロセスに関して説明する。先ず、プリンタ1に対して一連の画像形成プロセスの開始が指示されると、感光体2が矢印K1の時計方向に規定周速度にて回転駆動を開始されると共に、規定バイアスが印加されている一次帯電機構8により感光体2の外周面が規定電位分布に帯電せしめられる。
次に、画像情報提供装置からの画像情報に応じて感光体2の外周面の帯電処理済みの部位がスキャナ5により走査及び露光されることにより前記画像情報に応じた静電潜像が前記部位に形成される。その静電潜像が現像装置3の現像剤により前記静電潜像が顕像に可視像化される。
一方、所定のタイミングにて駆動された給紙ローラ12により給紙カセット11から記録媒体Pが一枚分離給送される。給紙カセット11には複数枚の記録媒体Pを積載収容してあり、プリンタ本体にて取り外し自在に支持されている。給紙カセット11から給送された記録媒体Pはレジストローラ対12aにより所定の制御タイミングにて感光体2と転写体6との間に形成された転写ニップ部へと給送され、転写ニップ部を挟持搬送されていく。この挟持搬送過程において感光体2側の前記顕像が転写体6により記録媒体P側に順次に転写される。
そして、転写処理済みの記録媒体Pは、定着装置7により定着処理が施されたのち回転自在に支持された定着排紙部10を経由してプリンタ排紙部13から機外へと排紙され、プリンタ本体の上面のトレイ14上に積載され、一連の画像形成プロセスが終了する。
(2)定着装置7
次に、プリンタ1に備えられた定着装置7に関して説明する。図2は定着装置7の概略構成を示す要部の斜視模型図、図3は模式的断面図である。この定着装置7は、フィルム加熱方式、加圧体駆動方式の加熱装置である。
15は加熱手段(加熱源)たるセラミックヒータである。後述するように、被加熱材である記録媒体(被記録材)Pの搬送路面において記録媒体搬送方向FPに交差する方向を長手とする横長・薄肉で、全体に低熱容量のものである。電力供給を受けて発熱して迅速に昇温する。
19は耐熱性・断熱性のヒータホルダである。このヒータホルダ19は横断面略半円弧状樋型で、記録媒体搬送方向FPに交差する方向を長手とする横長の剛性部材である。例えばフェノール系の熱硬化性樹脂製である。このヒータホルダ19の下面の略中央部の位置に長手に沿って形成具備させたヒータ嵌め込み溝部19a内に上記のセラミックヒータ15を嵌め込んで固定支持させている。
16は円筒状またはエンドレスベルト状の可撓性部材である。この可撓性部材16は、低熱容量化を図ることにより定着ニップ部等の昇温率を向上するために、本実施形態にあっては、ポリイミドを主成分とする無端帯状体の外周面にPTFEを主成分とする無端帯状体を被覆した二層構造となっており、全層厚が100μm以下となっている。以下、上記の可撓性部材16をフィルムと記す。フィルム16の構成としては、本実施形態に限定されず、低熱容量化を図る他の有効な構造としてもよい。例えば、耐熱素材たるPTFE、PFA又はFEP等を主成分とする無端帯状体の単層構造、或いは、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES又はPPS等を主成分とする無端帯状体の外周面にPTFE、PFA又はFEP等を主成分とする無端帯状体を被覆した二層構造などが挙げられる。また金属層をベースとする単層構造、或いは、複合層構造のものにすることもできる。又、フィルム16の全層厚としては、本実施形態に限定されないが、低熱容量化を効率良く図るためには、100μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい。
上記の円筒状のフィルム16は、セラミックヒータ15を取り付けたヒータホルダ19に対してルーズに外嵌させてある。すなわち、円筒状のフィルム16は、その内周長がヒータホルダ19の外周長より所定長、例えば、3mm程度、長く採られ、以て、ヒータホルダ19に無張力にて外嵌されている。
上記のセラミックヒータ15、ヒータホルダ19、フィルム16等で加熱体Aが構成されている。
17は加圧体としての加圧ローラである。この加圧ローラ17は、アルミニウム等の金属製の円柱状若しくは略円柱状の芯金17Aと、その外周面に被覆した離型性の良いシリコーンゴム等を主成分とする弾性層17Bとから成る弾性ローラである。
この加圧ローラ17は芯金17Aの両端部を不図示の装置側板間に回転自由に軸受支持させてある。この加圧ローラ17の上側に上記の加熱体Aをセラミックヒータ15側を下向にして並行に配列し、ヒータホルダ19の両端部側を付勢ばね20・20により加圧ローラ17側に加圧ローラの弾性層17Bの弾性に抗して所定の押圧力で押圧状態にするように構成している。これにより、セラミックヒータ15と加圧ローラ17をフィルム16を挟んで圧接させて、加圧ローラの弾性層17Bの弾性変形により所定幅の圧接ニップ部である定着ニップ部Nを形成させている。
加圧ローラ17は駆動機構Mの駆動力が加圧ローラの芯金端部に設けたドライブギアGに伝達されて、図3において矢印の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ17の駆動により、定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ17とフィルム16の外面との摩擦力でフィルム16に回転力が作用する。このため、フィルム16の内面が定着ニップ部Nにおいてセラミックヒータ15の下面に密着して摺動しながら矢印の時計方向に加圧ローラ17の周速度にほぼ対応した周速度をもってヒータホルダ19の外回りを従動回転する。ヒータホルダ19は従動回転するフィルム16のガイド部材の役目もしている。
そして、加圧ローラ17によるフィルム16の回転駆動がなされていて、かつセラミックヒータ15が通電により所定の温度に昇温している状態において、作像部側から未定着トナー画像tを形成担持させた記録媒体Pが定着ニップ部Nのフィルム16と加圧ローラ17との間に導入される。そうすると、記録媒体Pはフィルム16の外面に密着してフィルム16と一緒の重なり状態で定着ニップ部Nを通過していく。
この定着ニップ部Nの通過過程でセラミックヒータ15の熱エネルギーがフィルム16を介して記録媒体Pに付与されて記録媒体P上の未定着トナー画像tが加熱溶融定着処理される。記録媒体Pは定着ニップ部Nを通過してフィルム16の面から分離されて排出されていく。tbは記録媒体P上の定着トナー画像を示している。
フィルム16はセラミックヒータ15と密着摺動するため、摩耗を防いだり摺動抵抗を低減するためにフィルム16の内部にはグリスが塗布してある。
(3)セラミックヒータ15
図4は加熱手段としてのセラミックヒータ15の一例の概略構成図である。このセラミックヒータ15は、
1)記録媒体Pの搬送路面において記録媒体搬送方向FPと直交する方向を長手とする横長のアルミナ・窒化アルミニウム・炭化ケイ素等の高絶縁性のセラミックスでできたセラミック基板(絶縁基板)15A、
2)上記セラミック基板15Aの表面側に長手に沿ってスクリーン印刷等により、厚み10μm程度、幅1〜5mm程度の線状もしくは細帯状に塗工し焼成して形成した、例えばAg/Pd(銀パラジウム)、RuO2、Ta2N等の発熱抵抗体15B、
3)上記発熱抵抗体15Bの長手方向両端部に電気的に導通させて設けた、Ag/Pt(銀・白金)で形成された電極部15C・15C、
4)発熱抵抗体15Bの表面に設けた、電気的に絶縁し、フィルム16との摺擦に耐えることが可能な薄層のガラスコートやフッ素樹脂コート等の絶縁保護層15D、
5)セラミック基板15Aの裏面側に設けた温度検知体としてのサーミスタ18、
等からなる。
上記のセラミックヒータ15は絶縁保護層15Dを設けた側が表面側であり、絶縁保護層15Dの面にフィルム16が摺動する。このセラミックヒータ15を、ヒータホルダ19の下面に長手に沿って形成したヒータ嵌め込み溝部19a(図3)内にヒータ表面側を外側にして嵌め込んで耐熱性接着剤で接着して保持させてある。
21・21は給電用コネクタであり、ヒータホルダ19に固定支持させたセラミックヒータ15の電極部15C・15C部分に嵌着され、電極部15C・15Cにそれぞれ給電用コネクタ側の電気接点が接触状態になる。22は商用電源(AC)、23はトライアック、24は電力(通電)制御手段(CPU)である。セラミックヒータ15は、商用電源22から、トライアック23を介して電極部15C・15C間に給電されることで発熱抵抗体15Bの発熱で迅速急峻に昇温する。
そのセラミックヒータ15の昇温が温度検知体であるサーミスタ18により検知され、その検知温度の電気的アナログ情報がアナログデジタル変換回路(A/D変換回)25に入力し、デジタル化されて電力制御手段24に入力する。
サーミスタ18の検知温度に応じたデジタル情報が入力される電力制御手段24は、サーミスタ18の検知温度が目標温度から所定幅内の値になるよう商用電源22から発熱抵抗体15Bへの通電を制御するようになっている。
尚、本実施形態にあっては、サーミスタ18の検知温度に基づく電力制御手段24による商用電源22から発熱抵抗体15Bへの通電制御として、商用電源22の半波周期毎の通電位相を制御する(位相制御)、前記半波周期毎に通電を導通又は遮断のいずれか一方に切り換える(波数制御)等が採用される。
(4)カール対策モード
ところで、前記定着装置7にあっては、加熱定着処理時に、定着ニップ部Nで記録媒体Pを挟持搬送しながら、加熱定着処理を行う際に、記録媒体Pの表面に加熱体A側のフィルム16を介して接するセラミックヒータ15が発熱するが、記録媒体Pの裏面に接する加圧体である加圧ローラ17側には発熱源を持たない。そのため、定着装置7の定着ニップ部Nで加熱定着動作を行う際に、記録媒体Pの表裏に与える熱量に大きな差が出てしまう。
記録媒体Pが紙などの水分を含む材料から成る場合、記録媒体Pの表裏から蒸発する水分量に差が生じる為、記録媒体Pの表面と裏面で収縮/膨張量が変って、定着動作後の記録媒体Pにカール(紙の反り)が生じてしまう問題があった。
加圧ローラ17側にも第2の熱源を設け、第2の熱源で加圧ローラを加熱する構成をとれば、加圧ローラの表面温度も設定でき、定着ニップ部N内の温度の表裏差を制御できるが、定着装置が複雑かつ高価なものとなってしまう。
そこで、本実施形態では、カール対策モード(第2の定着処理モード)として、複数の記録媒体への連続定着処理工程において、N枚目の記録媒体への定着処理終了後、N+1枚目の記録媒体への定着処理開始までの紙間(インターバル)期間における加熱体Aの目標温度を、記録媒体の定着処理期間の加熱体Aの目標温度より高い温度に設定する。
ここで、フィルム加熱方式の加熱装置においては、加熱体Aの温度は、加熱手段であるセラミックヒータ15の温度と実質的に等しい。
本実施形態での複数枚の記録媒体への連続処理工程におけるセラミックヒータ15の温度制御(すなわち加熱体Aの温度制御)に関して図5に基づき説明する。以下の温度制御はサーミスタ18の検知温度に基づいて電力制御手段24が行う。
一連の記録媒体への画像形成プロセスを開始するに伴い、加圧ローラ17の回転駆動が開始され、商用電源22から加熱体A側のセラミックヒータ15への通電が開始される。これにより、サーミスタ18の検知温度が温度aから温度b、温度cというように昇温すると共に、加圧体である加圧ローラ17も加熱体A側のフィルム16を介してセラミックヒータ15の熱で暖められる。
未定着像を担持した一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nに突入する時刻T1までにサーミスタ18の検知温度(すなわち加熱体Aの温度)が定着温度dに昇温される。また、前記記録媒体に定着処理が施されている期間たる時刻T1から時刻T2に亘り前記検知温度が定着温度dから所定幅内の値に維持されるよう、電力制御手段24によりトライアック23が制御されて、商用電源22から発熱抵抗体15Bへの通電が制御される。
次に、一枚目の記録媒体の定着処理終了から二枚目の記録媒体の定着処理開始までの間に亘り、サーミスタ18の検知温度を、紙間温度eから所定幅内の値に維持すべく、トライアック23が制御されて、商用電源22から発熱抵抗体15Bへの通電が制御される。この紙間温度たる温度eは定着温度たる温度dよりも高い温度設定にしてある。
以降、電力制御手段24は、N枚目の定着処理終了後に目標温度を紙間温度eへ切替え、N+1枚目の定着処理開始時には、サーミスタ検知温度が定着温度dから所定以内の値に復帰するようにN+1枚目の定着処理開始前に目標温度を定着温度dへ切替える。
次に、本実施形態における効果について説明する。まず、定着温度d、紙間温度eと紙間長さが定着処理された記録媒体のカール量、積載性にどのような影響を与えるかを確認する実験1を行った。
[実験1]
定着温度dを固定とし、定着温度dと紙間温度eの差を0℃、5℃、10℃、15℃と変えて、また、それぞれ、紙間の長さを0.5秒間、1秒間、2秒間、3秒間、5秒間と変えて、定着処理された記録媒体のカール量、積載性の評価を行った。
セラミックヒータ15への通電を制御してから、セラミックヒータ温度が目標温度へ達するまでは少し時間がかかる為、紙間が短い条件では、定着温度dと紙間温度eの差を大きくする実験は行っていない。通紙実験に使用した記録媒体は、Xerox4024紙、坪量75g/m2、気温30℃/湿度80%の環境下に、包装紙から出して、3日ほど放置したものを使用し、紙の水分量は10%ほどであった。
本実験で用いた定着装置の具体的構成は以下の通りである。図2〜図4と同様に構成された定着装置7において、加圧ローラ17は、アルミニウム芯金17A上に厚さ4mmの発泡ゴムの弾性層17Bを設け、外径25mmに成形した。この加圧ローラ17と、セラミックヒータ15を、60μmのポリイミド樹脂からなる基層の外周面に10μmのPFAからなる表層を備えた無端帯状フィルム16を介して96N(9.8kg)で圧接した。
本実験では、以上の定着装置を使用した画像形成装置を使用した。記録媒体Pの搬送速度は、LTRサイズの記録材を20PPMのスループットで搬送できる111mm/秒とし、記録媒体が定着ニップ部Nを通過している間の定着温調(定着温度d)は180℃とした。
本実験で使用した画像形成装置は、図1と同様の構成であり、定着装置7から定着処理を終えて排出された記録媒体は、排紙トレイ14上に出力され、積載される。排紙ローラ及び排紙コロからなるプリンタ排紙部13は、排紙トレイ14の面より40mm上に位置し、カールのない坪量75g/m2の平滑紙であれば、300枚程度の排紙積載が可能である。
上記画像形成装置を用いて、気温30℃/湿度80%の環境下で、100枚連続で定着処理を行った。
カール量測定は、図6に示すように、定着処理された記録媒体Pを水平な机100の上に置き、記録媒体Pの4角の机からの距離を測定した。排紙積載された記録媒体から、上から30枚を抜き取り、揃えた30枚束の4つの角の値の平均値を示した。
積載性評価については、排紙トレイ14に積載された記録媒体が、記録媒体のサイズよりも縦横10cmずつ広い幅316mm、386mmの排紙トレイ14のエリアからはみ出た場合を△とした。また、さらに乱れて排紙トレイ14上から落下したものや、排紙トレイ14のエリアから20cm以上はみ出たもの、記録媒体の丸まりによって定着装置の排紙部を塞いでしまい、しわや角折れが発生したものを×とした。
以上の条件で実験を行った結果を表1に示す。
定着温度dと紙間温度eを同温度とし、紙間の長さが3.0sec以内の実験結果は、定着処理された紙のカールが大きく、出力された紙がかさばり、連続100枚の定着処理中に排紙トレイから紙が落下した。
定着温度dと紙間温度eがd<eで、差を大きくしていくと、カール量は小さくなり、積載性は向上した。
また、紙間の長さを伸ばしていくと、カール量は小さくなり、積載性は向上した。
ただし、定着温度dと紙間温度eを同温度としたままのものは、紙間の長さを伸ばしても、100枚積載する事は出来なかった。
上記、実験結果を説明する為に、上記実験における連続定着処理における加圧ローラ温度17の表面温度を計測した結果を図7に示す。
連続定着処理中の加圧ローラ17の温度は、セラミックヒータ15からフィルム16を介して暖められる事で、紙間で上昇し、記録媒体Pに熱を奪われる為、定着処理中に低下し、上下しながら推移する。
100枚連続定着処理中の加圧ローラ17の最高温度と、そのときの定着温度dと加圧ローラ温度の差を表2に示す。定着温度dはヒータ表面を制御する目標温度であり、フィルム表面の温度とは異なる為、実際の定着ニップ部N内の温度差とは異なるが、記録媒体Pの表裏に供給される熱量差の参考となる為、記しておく。
定着温度dと紙間温度eを同温度とし、紙間の長さを0.5sec.とした実験結果では、加圧ローラ温度が低かった。加圧ローラが紙間で加熱される量が少ない為と考えられる。この結果から、加熱定着時にセラミックヒータ15の温度と加圧ローラ温度の差が大きく、定着ニップ部Nにおいて、紙の裏表に与える熱量の差が大きかった為、カールが大きかった事が説明できる。
定着温度dと紙間温度eを同温度のまま、紙間を長くしていくと、加圧ローラ17の温度が高くなった。ただし、紙間長さを一定以上長くしても、加圧ローラ温度は、定着温度dと一定の温度差をもってほぼ飽和した。
セラミックヒータ15と加圧ローラ17の間に存在するフィルム16や、その他周辺部品への熱抵抗、熱容量によって、加圧ローラ17の温度は、加熱しているセラミックヒータ15の温度よりも低い温度で飽和する。先の通紙実験と温度測定の結果、定着処理中に紙の表裏にあたえる熱量の差を、カールを完全に直せるほど、小さくする事ができていない事がわかる。
紙間での目標温度を定着温度dとして加圧ローラ17を加熱し、紙間を長くするだけでは、加圧ローラ温度と、定着処理中のセラミックヒータ15の温度の差を、フィルム16や、その他周辺部品への熱抵抗、熱容量による熱エネルギーの損失分よりも小さくする事ができない事がわかる。
紙間では紙間温度eを定着温度dよりも高い温度まで上げて、加圧ローラ17を加熱し、定着処理時には、定着温度dを紙間温度eよりも低い温度へ下げた実験結果では、加圧ローラ温度と定着処理時のセラミックヒータ温度の差を小さくする事ができている。先の通紙実験の結果は、定着処理中に紙の表裏にあたえる熱量の差が、カールを十分に直せるほど、小さくする事ができているためと説明できる。
以上示されるように、紙間温度eを定着温度dよりも高い温度に設定する方法は、紙間温度eを定着温度dと同温度以下にする方法に比べて、定着処理された記録媒体Pのカール低減、積載性の点で優れている事がわかる。
すなわち、例えば表3のカール対策モードを実行する事で、水分量の多い記録媒体を使用しても、ユーザーによる記録媒体の歪み直しや、記録媒体の整列など余計な作業を強いる事なく、高品位に出力された記録媒体をストレスなく使用してもらう事ができる。カール対策モードでは、紙間温度eを定着温度dよりも20℃高く設定する。紙間温度eと定着温度dの差が大きく、温度の切替えに時間がかかる為、紙間長さは3.0秒とする。カール、積載性に効果がある事は、表1に示したとおりである。
また、表3のカール対策モードに加えてスループット優先モード(第1の定着処理モード)を設け、カールを気にしないユーザー、カールが発生しない環境、用紙を使用するユーザー、スループットを優先するユーザー等が、自動的、または手動でスループット優先モードを選択可能にしている。これにより、必要に応じて速やかに出力画像を得る事ができる。
図8において、26はカール対策モードとスループット優先モードの選択手段である。電力制御手段24は選択手段26で選択されたカール対策モードまたはスループット優先モードに従ってセラミックヒータ15の温度制御を実行する。
スループット優先モードでは、カール対策モードよりもスループットを優先し、紙間を短くする。このスループット優先モードでの紙間長さは、例えば、記録媒体を画像形成装置に給紙する給紙装置、未定着画像形成装置など定着装置以外の装置が許す限り、なるべく短い時間に設定し、例えば、紙間の長さを0.5sec.とする。
紙間をなるべく短くするために、定着温度と紙間温度は同温度とし、時間がかかる紙間での温度の切り替えは毎回は行わない。ただし、大量に連続して定着処理を行った場合、所定の枚数Zで温調温度の切り替えを行う。
例えば、Z枚目の定着処理が終わったタイミングTdで、紙間温度、定着温度をh1からh2に切替え、タイミングTd以前よりも、それぞれ5度低い温度に制御する。
紙間が短い定着モードでも、連続して定着処理を行った場合、加圧ローラ及び定着装置全体の温度が徐々に上昇し、記録媒体Pに過剰な熱量を与えるようになる。記録媒体上の現像材に過剰な熱量を与えると、現像剤が溶けすぎて粘度が極度に低下し、フィルム16に転移して、画像不良をおこす。
以上の制御を行ったスループット優先モードでの、連続通紙中のヒータ温調温度と加圧ローラ温度の推移を図9に示す。図9中には、参考として、カール優先モードの場合のヒータ温調温度と加圧ローラ温度の推移も示してある。スループット優先モードでの温度切替え時には、一時的に、紙間温度が定着温度よりも高くなるが、一時的な状態に過ぎないので、加圧ローラ温度と定着温度との温度差は十分小さくはならない。
スループット優先モードでの通紙中の加圧ローラ温度と定着温度との温度差は、カール優先モードに比べて小さく、このスループット優先モードで、気温30℃/湿度80%の環境下で連続100枚の定着処理を行った場合は、カール、積載性は悪くなる。
したがって、定着温度と紙間温度の温度を切り替える定着装置の温度制御を行っていても、本実施例におけるカール対策モードのように制御しなければ十分なカール対策の効果は得られない場合がある。
例えば、定着装置が使用可能な記録媒体の最大サイズよりも幅が狭い紙(以後、小サイズと称する。)を連続的に定着処理する場合、スループット優先モードよりも紙間を長くし、紙間温度を、定着温度よりも低い温度とする。一般に、小サイズを連続して定着処理すると、例えば加圧ローラの記録媒体が接触しない領域(非通紙部)が熱を奪われない為に昇温し、非通紙部が高温になる。上記のように、紙間温度を定着温度よりも低い温度とすることにより、紙間で加圧ローラを非通紙部の温度を冷まし、端部昇温を軽減することができる。
ただし、この場合、紙間で加圧ローラの温度を上昇させ、通紙中の定着温度を下げる制御ではない為、カール対策モードとは異なり、カールの対策効果は得られない。
以上説明したように、紙間での加熱体の目標温度を、被加熱材加熱処理時の目標温度よりも高く設定する事により、紙間で加圧体の温度を上昇させ、被加熱材加熱処理時には加熱体の温度を低下させる。これにより、被加熱材の加熱処理時における加熱体の表面温度と、加圧体の表面温度の差を小さくし、加熱体側から被加熱材に供給される熱量と、加圧体側から被加熱材に伝わる熱量の差を小さくして、被加熱材の反り、カールを抑える事ができる。
また、発熱源を備える加熱体と発熱源を持たない加圧体との圧接部で、記録媒体を挟持搬送しながら加熱定着処理する定着装置において、紙間温度eを定着温度dよりも高い温度に設定する。これにより、例えば高湿環境下で、または、水分の多い記録媒体、紙の強度の弱い記録媒体を使用する場合であっても、定着処理された記録媒体のカールを抑えることができる。したがって、画像形成装置の積載面からの落下や印刷順序の逆転、しわ、角折れなどを防ぎ、ユーザーが歪みを直したり、整列させたりする事なく使用すること事ができる。
(実施例2)
本実施形態における画像形成装置の概略構成などは実施例1と同様である。本実施形低においては、図10のように、記録媒体の水分量を検知する手段27を備え、電力制御手段24はこの水分量検知手段27で検知した記録媒体の水分量に応じて、紙間温度eと定着温度dの温度差、および紙間長さを変化させる。
水分量検知手段27で検知された記録媒体水分量の電気的アナログ情報がアナログデジタル変換回路(A/D変換回路)28に入力し、デジタル化されて電力制御手段24に入力する。
記録媒体Pの水分量検知手段27としては、例えば、電気抵抗式、高周波抵抗式、高周波容量式、マイクロ波式などがあり、どのような水分量検知方式を用いても良い。また、例えば、構成を簡単にする為に、搬送手段で記録媒体を挟持搬送しながら、電圧を印加し、流れる電流量から、記録媒体の水分量を推定する方法でも良い。また、転写部で転写処理中に電圧を印加した際に、転写体6を流れる電流から記録媒体Pの水分量を推定する方法を用いても良い。
記録媒体の水分量が多いと、定着処理中に蒸発する水分量も多くなり、記録媒体の収縮量が大きくなる為、カールしやすくなり、カール対策が必要となる。逆に、水分量が少なければ、カールはしにくくなり、カール対策は必要ない。
記録媒体Pの水分量が、定着処理された記録媒体のカール、積載性にどのような影響をあたえるかを確認する実験を行った。
通紙実験に使用した記録媒体は、Xerox4024紙、坪量75g/m2、気温30℃/湿度80%の環境下に放置したもので、紙の水分量が4.0%、7.0%、10.0%のものを用いた。
実験に使用した画像形成装置は、実施例1の実験1と同様の構成であるため、説明を省略する。画像形成装置は気温30℃/湿度80%の環境下に設置し、定着温度を180℃で固定とし、定着温度と紙間温度の差を0℃、5℃、10℃、15℃と変えて実験を行なった。また、それぞれ、紙間の長さを0.5秒間、1秒間、2秒間、3秒間、6秒間、12秒間、15秒間と変えて、実施例1の[実験1]の積載性評価と同様に、100枚連続定着処理を行い、定着処理された記録媒体の積載状態を評価した。実験結果を表4に示す。
水分量が小さいほど積載性は良く、水分量が多いものは積載性が悪い傾向があった。水分量4.0%の記録媒体では、紙間温度の差を0℃、紙間の長さ0.5秒でも、積載性は良好であった。
このような記録媒体を使用した場合、紙間温度eと定着温度dの差は小さくし、紙間長さを短くして、スループットを速めた方が、ユーザーにとって有益である。
一方、水分量10.0%の記録媒体ではカールしやすく、紙間温度eと定着温度dの差を0℃、紙間の長さ0.5秒として制御した場合、定着された記録媒体は丸まり、積載トレイ14から次々と落下してしまった。また、強く丸まってしまって、そのままでは使用に耐えなかった。これでは、連続定着処理が完了するまでの時間が短くとも、ユーザーに記録媒体の整列や、歪み直しなど余計な作業を強いる事になる。
紙間温度eと定着温度dの差を20℃、紙間の長さ3.0秒まで広げた場合、カールを抑え、整列性よく100枚積載する事ができた。連続定着処理が完了するまでの時間は延びたが、出力された記録をユーザーがストレイス無く、すぐに使用する事ができる。
上記実験結果からわかるように、水分量に応じて、定着温度dと紙間温度eの温度差、紙間長さを変更する方法により、カール、積載性を良好に維持しつつ、スループットを最大限速くし、ユーザーが使用する記録媒体の状態に対して最適な制御を行う事ができる。
即ち、例えば、表5のように、カールが悪い紙にはカール対策を行い、ユーザーに歪み直しや、記録材の整列など余計な作業を強いる事なく、高品位に出力された記録紙をストレスなく使用してもらう事ができる。しかも、カールしにくい紙は速いスループットで、記録紙を速やかにユーザーに提供する事ができる。
以上説明したように、被記録材の水分量を検知し、紙間での加熱体の目標温度と、加熱処理時の目標温度との温度差を設定する。これにより、紙の水分が少なくカールしにくい被記録材の場合は、紙間温度と定着温度の温度差を小さくし、紙間と加熱処理をスムーズに切替えて、加熱処理のスループットを速めることができる。加えて、カールしやすい被記録材の場合は、紙間温度と定着温度の温度差を大きくし、被記録材の反り、カールを抑える事ができ、被記録材の状態に応じて最適な温度制御を行う事ができる。
(実施例3)
本実施形態における画像形成装置の概略構成などは実施例1と同様である。本実施形態においては、図11のように、画像形成装置の設置された環境の温度、湿度、またはその両方を検知する環境検知手段29を備え、電力制御手段24はこの環境検知手段29の検知結果に応じて、紙間温度eと定着温度dの温度差、および紙間長さを変化させる。
環境検知手段29で検知された環境の温度、または湿度、またはその両方の電気的アナログ情報がアナログデジタル変換回路(A/D変換回)30に入力し、デジタル化されて電力制御手段24に入力する。
高温高湿環境に設置された画像形成装置に使用される紙は、同環境になじんだ、吸湿した紙である可能性が高い。
高温高湿環境から、低温低湿環境まで、それぞれの環境に3日間、紙を放置した場合の紙の水分量を測定した。
a:気温32℃湿度80%の環境に放置された紙の水分量は11.0%であった
b:気温25℃湿度50%の環境に放置された紙の水分量は7.0%であった
c:気温15℃湿度10%の環境に放置された紙の水分量は3.5%であった
上記aの気温32℃湿度80%の環境に放置された紙の水分量は多く、実施例1の実験結果より、カールしやすい事がわかる。上記cの気温15℃湿度10%の環境に放置された紙の水分量は多く、実施例2の実験結果より、カールしにくい事がわかる。
即ち、表6のように、カールが悪い紙にはカール対策を行い、ユーザーに歪み直しや、記録材の整列など余計な作業を強いる事なく、高品位に出力された記録紙をストレスなく使用してもらう事ができる。加えて、カールしにくい紙は速いスループットで、記録紙を速やかにユーザーに提供する事ができる。
本実施例では、温度、湿度の両方を検知する1例を示したが、湿度の高い環境になじんだ記録媒体は、水分量が多くなるので、湿度だけ検知しても、十分な効果が得られる。
また、温度の高い環境は、温度の低い場合に比べて絶対湿度が高くなる為、温度の高い環境になじんだ記録媒体は、水分量が多い可能性が高い。温度だけ検知しても、十分ではないが効果はある。
また、本実施例では、環境検知手段27として温度センサー、湿度センサーを使用する一例を示したが、センサーを使用せず、イオン導電性転写体などの抵抗値変動により推定する方法でも同様の効果が得られる。
以上説明したように、加熱装置の設置された環境の温度、湿度、またはその両方に応じて、紙間での加熱体の目標温度と、加熱処理時の目標温度との温度差を設定する事により、以下の効果が得られる。すなわち、被記録材がカールしにくい環境の場合は、紙間温度と定着温度の温度差を小さくし、紙間と加熱処理をスムーズに切替えて、加熱処理のスループットを速めることができる。また、被記録材がカールしやすい環境の場合は、紙間温度と定着温度の温度差を大きくし、被記録材の反り、カールを抑える事ができ、加熱装置の設置された環境に応じて最適な温度制御を行う事ができる。
(実施例4)
本実施形態における画像形成装置などの概略構成などは実施例1と同様である。本実施形態においては、図12のように、記録媒体の厚さ、種類、またはその両方を検知する検知手段31を備え、電力制御手段24はこの検知手段31で検知した記録媒体の厚さ、種類、またはその両方に応じて、紙間温度と定着温度の温度差、および紙間長さを変化させる。
検知手段31で検知された記録媒体の厚さ、種類、またはその両方の電気的アナログ情報がアナログデジタル変換回路(A/D変換回)32に入力し、デジタル化されて電力制御手段24に入力する。
記録媒体の厚さ・種類の検知手段31は、例えばセンサーを接触させて厚さ、表面粗さを測定し、判断する接触式、光線を照射して、反射光から厚さ、表面粗さを測定し、判断する非接触光学式などがあるが、どのような検知手段を用いても良い。
記録媒体の厚さ、種類が、定着処理された記録媒体のカールにどのような影響をあたえるかを確認する実験を行った。
通紙実験に使用した記録媒体は、それぞれ気温30℃/湿度80%の環境下に、包装紙から出して3日間放置したものである。
定着温度dと紙間温度eの差を0℃、紙間の長さ0.5秒まで広げた場合、
定着温度dと紙間温度eの差を10℃、紙間の長さ1.5秒まで広げた場合、
定着温度dと紙間温度eの差を20℃、紙間の長さ3.0秒まで広げた場合、
について、実施例1の[実験1]の積載性評価と同様に、100枚連続定着処理を行い、定着処理された記録媒体の積載状態を評価した。実験結果を表7に示す。
実験の結果、坪量が大きい紙種はカールが少なく、坪量が小さい紙種はカールが良くない傾向があった。また、紙種では、BOND紙や再生紙のカールが悪い傾向があった。
平滑紙でいえば、坪量64g/m2の紙種のカールが特に悪く、定着温度dと紙間温度eの差が0℃の温度制御で出力された記録紙は、カールがひどく、丸まってしまって使用に耐えなかった。定着温度と紙間温度の差が15℃まで大きくし、紙間を空けた制御では、カールを抑える事ができた。逆に、105g紙以上の紙種では、定着温度と紙間温度の差が0℃、紙間を0.5sec.まで詰めた制御でもカールは悪くなかった。BOND紙や再生紙といった非平滑紙では、80g紙以下の紙種でカールが良くない傾向があった。これも、定着温度と紙間温度の差を20℃まで大きくし、紙間を3.0sec.空けた制御では、カールを抑える事ができた。
上記実験結果からわかるように、記録媒体の厚さ・紙種を検知し、平滑紙か、非平滑紙かどうか、坪量を判断する事で、定着温度dと紙間温度eの温度差、紙間長さを変更する。これにより、カールを良好に維持しつつ、スループットを最大限速くし、ユーザーが使用する記録媒体の状態に対して、最適な制御を行う事ができる。
即ち、表8のように、カールが悪い紙にはカール対策を行い、ユーザーに歪み直しや、記録材の整列など余計な作業を強いる事なく、高品位に出力された記録紙をストレスなく使用してもらう事ができる。しかも、カールしにくい紙は速いスループットで、記録紙を速やかにユーザーに提供する事ができる。
以上説明したように、本実施形態においては、被記録材の厚み、種類に応じて、紙間での加熱体の目標温度と、加熱処理時の目標温度との温度差を設定する。これにより、カールしにくい被記録材の場合は、紙間温度と定着温度の温度差を小さくし、紙間と加熱処理をスムーズに切替えて、加熱処理のスループットを速めることができる。しかも、カールしやすい被記録材の場合は、紙間温度と定着温度の温度差を大きくし、被記録材の反り、カールを抑える事ができ、被記録材の状態に応じて最適な温度制御を行う事ができる。
(実施例5)
本実施形態における画像形成装置などの概略構成などは実施例1と同様である。本実施形態においては、図13のように、電力制御手段24に連続して定着処理した枚数をカウントするカウンタ機能部24aを具備させ、電力制御手段24はこのカウンタ機能部24aでカウントした連続定着処理枚数に応じて、紙間温度eと定着温度dの温度差、および紙間長さを変化させる。
本発明者の検討では、連続定着処理された記録紙の中で、1枚目に定着処理された記録紙のカールは、数十枚目に定着処理された記録紙のカールよりも小さい事がわかっている。
紙間を0.5sec.と短くし、紙間温度eと定着温度dを同じ温度にして、実施例1の[実験1]の積載性評価と同様に、100枚連続定着処理を行い、定着処理された記録媒体の積載状態を評価した。
また上記実験の場合の加圧ローラ温度の推移を図14に示す。1枚目が定着処理される時は、加圧ローラ表面の温度が高く、ヒータ温度と加圧ローラ表面温度の差が比較的小さかった。その後、加圧ローラ表面の温度は通紙毎に低下している。これは、1枚目の定着処理の前においては、ヒータ温度を目標温度まで立ち上げる期間がある為、加圧ローラ表面の温度が上昇している。ところが、2枚目以降は紙間が短い為に、紙間で加圧ローラに供給される熱量よりも、通紙時に記録媒体に熱を奪われる量の方が多いために、加圧ローラ表面温度が低下している。その為、連続定着処理された記録紙のカールは、初期が最も良い。その後、加圧ローラ温度はわずかずつ上がるが、大量に連続通紙しなければ十分温度は上がらない。カール、積載性が悪い記録紙が、大量に出力される事になる。
そこで、本実施例では、連続定着枚数に応じて、紙間温度eと定着温度dの温度差と紙間長さを変更する。例えば、表10のように、定着制御を行う。
表10の定着制御で、実施例1の[実験1]の積載性評価と同様に、100枚連続定着処理を行い、定着処理された記録媒体の積載状態を評価した。実験結果を表11に示す。
上記実験結果からわかるように、本実施例における定着制御では、カール、積載性が良い、連続定着処理を開始した初期は、スループットを優先した定着制御を行い、少ない枚数を定着処理したユーザーに、出力された画像を速やかに提供できる。
枚数に応じて、紙間を広げて定着温度と紙間温度の差を大きく設定する事で、カールは悪化させず、画像形成装置の積載部に記録紙を大量に出力しても、記録紙の落下や、出力順序の逆転などがおこさずに、整列して積載する事ができる。したがって、多い枚数を定着処理したユーザーに、歪み直しや、記録材の整列など余計な作業を強いる事なく、高品位に出力された記録紙をストレスなく使用してもらう事ができる。
以上説明したように、本実施例においては、連続して加熱処理した枚数をカウントし、カウントされた連続加熱処理枚数に応じて、紙間での加熱体の目標温度と、加熱処理時の目標温度との温度差を設定する。これにより、プリント枚数が少なく、排出されて積載される被記録材が少ない間は、紙間温度と定着温度の温度差を小さくし、紙間と加熱処理をスムーズに切替えて、加熱処理のスループットを速めることができる。一方、プリント枚数が多く、排出されて積載される被記録材が多くなると、紙間温度と定着温度の温度差を大きくし、被記録材の反り、カールを抑え、被記録材の積載に最適な温度制御を行う事ができる。
(実施例6)
本実施形態における画像形成装置などの概略構成などは実施例1と同様であるが、本実施例では、熱ローラ方式の定着装置を用いる。
実施例1では、フィルム加熱方式の定着装置7を備えたレーザビームプリンタでの1例を示した。紙間と定着処理中でヒータ温度を変化させる制御を行う上で、加熱手段であるセラミックヒータ15の熱容量が少なく、温度制御の精度、応答性が良好なフィルム加熱方式は好適である。しかし、本発明は、熱ローラ方式など、その他の定着方式であっても、実施例1〜5と同様に、加熱体である熱ローラ(定着ローラ)の表面温度を紙間で高くし、定着処理中に低く制御する事ができれば、同様の効果は得られる事は、実施例1の実験結果からも明らかである。
熱ローラ方式の定着装置では、例えば図15に示すような構成をしている。すなわち、例えば金属などからなる円筒状部材表面にフッ素樹脂などからなる離型層を設けた定着ローラ40の内側に、ハロゲンヒータなどの加熱源41を設け、定着ローラ40に当接したサーミスタ18の検知温度に基づいて通電制御を行う。
従来は、フィルム加熱方式に比べて定着ローラの熱容量が大きかった為、目標温度の切替えの激しい温度制御を行うには不利であったが、近年は、厚みの薄い定着ローラ40を用いて低熱容量化し、急速な温度立ち上げを可能にした定着ローラも実現されている。このような定着装置は、フィルム加熱方式と同様に、本発明の実施に好適であり、実施例1〜5と同様の制御を行う事が可能である。
[その他]
1)フィルム加熱方式の加熱装置において、加熱手段としてのセラミックヒータ15は実施例の構成のものに限られないことは勿論である。ヒータ基板の可撓性部材が摺動する側の面とは反対面側に発熱抵抗体を配設した、いわゆる背面(裏面)加熱タイプのセラミックヒータであってもよい。セラミックの絶縁基板の代わりに、金属板の表面を絶縁被覆処理したものを用いることもできる。
また加熱手段はセラミックヒータに限られない。たとえば電磁誘導発熱性部材を用いることもできる。
加熱手段による可撓性部材の加熱は、内部加熱方式にすることもできるし、外部加熱方式にすることもできる。可撓性部材自体の温度を温度検知体で検知する装置構成にすることもできる。
可撓性部材自体を電磁誘導発熱性にして励磁手段で発熱させる構成にすることもできる。
可撓性性部材の駆動方式は実施例の加圧体駆動方式に限られない。エンドレスの可撓性部材の内周面に駆動ローラを設け、可撓性性部材にテンションを加えながら駆動する装置構成であってもよいし、可撓性性部材をロール巻きの有端ウエブ状にしてこれを繰り出しながら走行移動させる装置構成にすることもできる。
加圧体はローラ体に限られず、ベルト体にすることもできる。
2)ローラ加熱方式の加熱装置において、加熱手段による熱ローラの加熱は、内部加熱方式にすることもできるし、外部加熱方式にすることもできる。
加熱手段はハロゲンヒータに限られない。熱ローラ自体を電磁誘導発熱性にして励磁手段で発熱させる構成にすることもできる。
加圧体はローラ体に限られず、ベルト体にすることもできる。
3)温度検知体はサーミスタに限られない。接触型または非接触型の各種のものを使用することができる。
4)本発明において、加熱装置は、フィルム加熱方式またはローラ加熱方式の装置に限られない。互いに圧接された加熱体と加圧体とを有し、両者間に形成されたニップ部で被加熱材を挟持搬送して加熱処理する加熱装置であればよい。
本発明の加熱装置は、実施例の定着装置に限られず、その他、仮定着する像加熱装置、画像を担持した記録媒体を再加熱してつや等の表面性を改質する像加熱装置、記録媒体以外のシート状の被加熱体を通紙して、乾燥、加熱ラミネート、熱プレスしわ取り、熱プレスカール取り等の加熱処理装置等としても使用できる。