JP4828033B2 - 導電性粉末、その製造方法及び用途 - Google Patents

導電性粉末、その製造方法及び用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム、樹脂等の導電性付与材として好適な導電性粉末、その製造方法及び用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、導電性フィラーが充填された、電気抵抗10〜10Ω・cm{(E+9)〜(E+2)Ω・cm}程度の導電性ゴム組成物又は導電性樹脂組成物は、例えば電気・電子機器の接点、乾式複写機、プリンタ・ファックス用の静電気除去ロール、転写ロール、帯電ロール、現像ロール、定着ロール、面状発熱体、電力ケーブル、自動車用タイヤの導電層等、広い分野で用いられている。導電性フィラーとしては、例えばカーボンブラックやグラファイト等の炭素粉末、銀、ニッケル、銅等の金属粉末、非導電性の粉体や短繊維表面を銀等の金属で処理したもの、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維、或いはこれらの混合物等が用いられており、中でもカーボンブラックが賞用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンブラックは、少量の充填によってゴム又は樹脂(以下、ゴム又は樹脂の両者を「ゴム等」という。)に所望の導電性を付与することが可能であるが、カーボンブラック特有のパーコレーション現象(すなわち、カーボンブラックの僅かな充填量変化によってゴム等の導電性が急激に変化する現象。)が起こるため、厳格な導電性を必要とする例えばプリンター用ロール等の用途には、ゴム等の組成物を調製するのに多大な労力・工程管理が必要であった。
【0004】
また、カーボンブラックの導電性付与能力は、そのストラクチャーと粒径によって制御できるものであるところ、充填量で導電性を制御することができない用途の場合には、導電性付与能力の異なるカーボンブラックの多品種を準備しておき、その適切なものを選択使用しなければならないので、その製造と貯蔵等において何かと不便であった。
【0005】
そこで、今日の要求は、多品種のカーボンブラックを準備しなくても、容易かつ精度よく導電性付与能力を調節することができ、パーコレーション現象のない導電性粉末の出現である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易かつ精度よく導電性付与能力が調節可能で、パーコレーション現象のない導電性粉末、その製造方法及び用途を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、通常品に限られることのない炭素粉末を用い、それに複合化させるSiOx粉末の割合を変化させることによって達成することができる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(請求項1)アセチレンブラック又はアセチレンを熱分解して得られた熱分解炭素粉末とSiOx(0.5<x<1.5)粉末を含み、SiOx含有率が1〜50質量%であることを特徴とする導電性粉末。
(請求項2)アセチレンブラック又はアセチレンを熱分解して得られた熱分解炭素粉末とSiOx(0.5<x<1.5)ガスとを温度1600℃で接触させることを特徴とする導電性粉末の製造方法。
(請求項3)SiOx(0.5<x<1.5)粉末からなることを特徴とするアセチレンブラック又はアセチレンを熱分解して得られた熱分解炭素粉末の導電性調節材。
(請求項4)請求項1記載の導電性粉末の充填されたゴム及び/又は樹脂の導電性組成物。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0010】
本発明の導電性粉末は、炭素粉末とSiOx(0.5<x<1.5)粉末との複合化物であるが、その形態は両者の機械的混合物(以下、単に「機械的混合物」ともいう。)であってもよく、また1600℃以上の高温下において、炭素粉末とSiOxガスとを接触させた後の冷却物(以下、「接触・冷却物」ともいう。)であってもよい。後者は、前者に比べて、ゴム等への充填量変化に対する導電性付与能力の変化が緩やかである特徴がある。
【0011】
機械的混合物又は接触・冷却物における炭素粉末としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、オイルブラック、サーマルブラック、黒鉛粉末等のカーボンブラックや、アセチレン、プロパン、メタン、ブタン、LPG、ベンゼン等の炭化水素ガスを熱分解して得られた熱分解炭素を用いることができる。
【0012】
SiOx粉末は、例えば金属シリコン粉末とシリカ粉末との等質量混合物原料を1600℃程度の高温下で熱処理してSiOxガスを発生させ、それを冷却、固相析出させ、捕集することによって製造することができる。
【0013】
機械的混合物は、上記炭素粉末とSiOx粉末とをボールミル等の通常の混合機を用いて混合することによって製造することができる。
【0014】
接触・冷却物は、炭素粉末とSiOx(0.5<x<1.5)ガスとを温度1600℃以上で接触させた後、冷却して製造される。SiOxの含有率は、接触温度、接触時間、SiOxガス濃度、供給量等で制御できる。
【0015】
炭素粉末とSiOxガスの接触方法としては、炭素粉末をSiOxガス発生場へ供給する方法、炭素粉末にSiOxガスを噴霧する方法を採用することができる。接触温度は1600℃以上が望ましく、1600℃未満であるとSiOxガスの発生が不十分となり、所望のSiOx粉末が得られにくくなる。
【0016】
炭素粉末とSiOxを複合化させた接触・冷却物の輸送には、アルゴン等の不活性ガス、水素、窒素等の非酸化性ガス等のキャリアーガスが用いられる。
【0017】
接触・冷却物は、炭素粉末とSiOxガスとの反応を利用して得られる粉末であるため、機械的混合物よりも緻密化されている。接触・冷却物の構造は、炭素粉末とSiOxとが純粋に混合した状態であるものの他に、炭素粉末の表面にSiOxが被覆された状態のもの、炭素粉末の表面にSiOxが濃度勾配を持って被覆された状態のもの、などが存在している。
【0018】
機械的混合物又は接触・冷却物におけるSiOx(0.5<x<1.5)のx値が0.5以下であると、SiOx粉末の導電性が高まり、導電性粉末の導電性付与能力の制御が困難となる。また、1.5以上であると、SiOxガスの酸化工程が必要となり、SiOx粉末の製造工程がより複雑化するので好ましくない。
【0019】
本発明において、SiOxのx値は、FESEM/EDS(エネルギー分散型X線検出器、例えば日本電子社製)によりSiとOの質量比を測定し、モル比に換算することによって求めることができる。
【0020】
機械的混合物又は接触・冷却物におけるSiOx(0.5<x<1.5)粉末の含有量が1質量%未満であると、絶縁性であるSiOx粉末含有量が不足してゴム等のパーコレーション現象が起こやすくなり、所期の目的を達成することが困難となる。また、50質量%超であると、導電性付与能力が悪化する。好ましい含有率は、5〜35質量%である。
【0021】
本発明において、SiOx粉末含有率は、導電性粉末を大気中で加熱して炭素粉末成分を消失させ、その質量減少率から算出することができる。
【0022】
本発明の導電性粉末が充填されるゴム及び/又は樹脂としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、1,3ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3ジメチル−1,3ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、メチルスチレン、クロロスチレン、2−ビニル−ピリジン、5−エチル2−ビニルピリジン、5−メチル2−ビニルピリジン等を成分とする単独重合体、共重合体及び三次元重合体等から選ばれた1種又は2種以上が用いられる。
【0023】
導電性粉末とゴム及び/又は樹脂との混合は、バンバリーミキサー、ロール等の通常の混合機や混練機を用いて行うことができる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0025】
実施例1〜3
金属シリコン粉末100質量部とシリカ粉末100質量部の混合物原料をカーボン製坩堝に充填し、電気炉にて1600℃に加熱しSiOxガス発生場を形成し、坩堝上部に導かれたノズルよりアセチレンガスを表1に示す流量にて導入し、熱分解炭素粉末とSiOxガスを接触させた。得られた複合化物を吸引ブロワ−にて吸引し、熱交換器を経由して冷却した後、バグフィルターで接触・冷却物を捕集した。
【0026】
実施例4、5
金属シリコン粉末100質量部とシリカ粉末100質量部の混合物原料をカーボン製坩堝に充填し、電気炉にて1600℃に加熱しSiOxガスをさせ、吸引ブロワ−にて吸引を行い、熱交換器を経由して冷却、固相析出させた後、バグフィルターに導き、SiOx粉末を回収した。得られたSiOx粉末とアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、商品名「HS−100」)とをボールミル(ヤマト社製、「UB−31」)で混合し、機械的混合物を製造した。
【0027】
比較例1
アセチレンブラック(電気化学工業社製、商品名「HS−100」)単体を導電性粉末とした。
【0028】
上記で得られた導電性粉末について、実施例1〜5に関しては以下の(1)〜(3)、比較例1に関しては以下の(3)に従う特性を測定した。それらの結果を導電性粉末の製造条件と共に表1に示す。
【0029】
(1)SiOx含有率
導電性粉末を550℃大気中で加熱して炭素粉末成分を消失させ、その質量減少率からSiOx含有率の算出を行った。
(2)SiOxのx値
FESEM/EDS(日本電子社製)より、SiとOの質量比を測定し、モル比に換算した。
(3)比表面積
BET式1点法にて測定した。
【0030】
つぎに、低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、商品名「LDPE403P」)100質量部に対し、実施例、比較例の導電性粉末を表1に示す質量部を配合し、内容積60mlの混練試験機(東洋精機製作所社製、「ラボプラストグラフR−60」)でブレード回転数30rpm、温度160℃で10分間混練した。ついで、この樹脂混練物を加熱プレス機にて温度160℃、圧力9.8MPaで10分間プレスし、200mm×200mm×5mmのシートを成形し、電気抵抗率をJIS K 1496に従って測定した。その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0004828033
【0032】
表1から明らかなように、本発明の導電性粉末を用いた場合、比較例よりも充填量変化に対する導電性の変化が緩やかであった。また、機械的混合物よりも接触・冷却物による効果が顕著であった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の導電性粉末及びそれが充填されたゴム及び/又は樹脂の導電性組成物は、カーボンブラックに特有なパーコレーション現象が緩和されたものとなる。
【0034】
本発明の導電性粉末の製造方法によれば、カーボンブラックに特有なパーコレーション現象を緩和された導電性粉末を容易に製造することができる。
【0035】
本発明の導電性調節材によれば、容易かつ精度良くカーボンブラックの導電性付与能力を調節することができるので、導電性付与能力の異なるカーボンブラックの多品種を揃えておく必要がなくなる。

Claims (4)

  1. アセチレンブラック又はアセチレンを熱分解して得られた熱分解炭素粉末とSiOx(0.5<x<1.5)粉末を含み、SiOx含有率が1〜50質量%であることを特徴とする導電性粉末。
  2. アセチレンブラック又はアセチレンを熱分解して得られた熱分解炭素粉末とSiOx(0.5<x<1.5)ガスとを温度1600℃で接触させることを特徴とする導電性粉末の製造方法。
  3. SiOx(0.5<x<1.5)粉末からなることを特徴とするアセチレンブラック又はアセチレンを熱分解して得られた熱分解炭素粉末の導電性調節材。
  4. 請求項1記載の導電性粉末の充填されたゴム及び/又は樹脂の導電性組成物。
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