JP4827035B2 - プラテン保持機構および記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ヘッドに接する位置で用いられるプラテンの保持機構と、それを有する記録装置に関する。
従来、筐体内部に、記録ヘッドとそれに接するローラ状のプラテン(プラテンローラ)とを有し、プラテンローラによって搬送される記録媒体(シート材)に対して記録ヘッドが記録を行う記録装置がある。このような記録装置において、記録ヘッドとプラテンローラとの間に記録媒体を挿入してセットする作業や、記録ヘッドとプラテンローラの間で記録媒体のジャム(いわゆる紙詰まり)が生じた際に、それを解消するための作業や、記録ヘッドおよび/またはプラテンローラの交換やメンテナンスの作業を行う場合に、筐体内部で記録ヘッドとプラテンローラが当接したままの状態では操作が非常に困難である。そこで、プラテンローラと記録ヘッドを引き離すとともに、筐体外部に露出させる構成が存在する。記録ヘッドは複数の記録素子(例えば発熱素子)を有しており、各記録素子を選択的に駆動するための記録信号が入力される電気接続の信頼性を損なわないように、筐体内に固定されているのが好ましい。従って、記録ヘッドを筐体内に固定したままで、プラテンローラを記録ヘッドから引き離して外部に引き出す構成が一般に採用されている。
プラテンローラは、記録動作時には記録ヘッドに対して所定の圧力で互いにしっかりと接触しなければならない。そこで、フレームに凹部を設け、その凹部内にプラテンローラの軸部(被保持部)を保持することによって位置決めを行っている構成がある。
さらに、そのプラテンローラを着脱可能にするために、例えば、凹部をフレームの外部に向けてスリット状に切り欠いた構成にして、その切り欠き部の外部への開口部分をプラテンローラの出入口とする構成がある。このような構成では、プラテンローラが着脱可能であるという利点を有する一方、意図しないときにプラテンローラが切り欠き部から脱出しないように、かつ、記録時にはプラテンローラが記録ヘッドに対して所定の圧力で当接するように保持位置にしっかりと保持するための機構が必要になる。
意図しないときにプラテンローラが切り欠き部から脱出しないようにする機構としては、第1に、スリット状の切り欠き部の開口部分近傍の幅を、プラテンローラの軸部の外径と同等またはそれよりも僅かに狭くする構成が考えられる。この場合、プラテンローラの着脱時には、切り欠き部の開口部分近傍を僅かに弾性変形させて、スリット状の切り欠き部の幅を僅かに広げて、プラテンローラの軸部の通過を可能にする。切り欠き部に意図的に力を加えない限り、スリット状の切り欠き部の幅が狭いため、プラテンローラの軸部は切り欠き部外へ脱出しない。
また、プラテンローラの軸部を、周囲から取り囲む部材によって切り欠き部内に保持する構成、すなわち、切り欠き部の開口部分(プラテンローラの出入口部分)の少なくとも一部を塞いで、プラテンローラの軸部が切り欠き部内から脱出するのを妨げる構成もある。切り欠き部の開口部分を塞ぐ部材が記録ヘッドのみである場合(特許文献1)や、記録ヘッドに加えて、プラテンローラの軸部を保持するための専用のロックアームが用いられる場合(特許文献2)がある。このような構成では、プラテンローラの軸部を取り囲む部材(記録ヘッドやロックアーム)を移動させることによって、切り欠き部の開口部分が開放されて、プラテンローラの着脱が可能になる。
特許文献3には、フレームに対して開閉可能なカバーフレームにプラテンローラの軸部が挿入される第1のスリットが設けられ、フレームに、カバーフレームが閉じられたときに第1のスリットと組み合わされてプラテンローラの軸部を保持する第2のスリットが設けられた構成が開示されている。さらにこの構成では、カバーフレームに回転可能に設けられたロックレバーが、フレームに設けられたピンに係合することによって、プラテンローラが第1のスリットと第2のスリットの交わる位置に保持された状態で、カバーフレームをフレームに固定することができる。
特許文献4には、プラテンローラが回転可能に取り付けられたブッシュレバー部材を有し、このブッシュレバー部材に略長方形状の軸部が形成され、フレームに設けられた切り欠き部の開口部分が、略長方形状の軸部の短辺は通過させるが長辺は通過させない幅を有している構成が開示されている。この構成によると、略長方形状の軸部の短辺を切り欠き部の開口部分に対向させた状態で、ブッシュレバー部材の軸部を切り欠き部内に挿入した後に、ブッシュレバー部材を90度回転させて、略長方形状の軸部の長辺を切り欠き部の開口部分に対向させることによって、軸部およびプラテンローラの切り欠き部内からの脱出を防ぐことができる。
特表平8−505576号公報 特開2000−318260号公報 特開2000−118060号公報 特開平6−71954号公報
前記した従来例のうち、プラテンローラが挿入されるスリット状の切り欠き部の開口部分が狭くなっている構成では、プラテンローラの着脱を繰り返す度に、プラテンローラの軸部が切り欠き部の端面に当接して摺動する。従って、摩耗によって、プラテンローラの軸部が細くなったり、あるいは切り欠き部の開口部分の幅が徐々に広くなったりして、軸部と切り欠き部との間に遊びができてプラテンローラの保持の安定性が悪くなるおそれがある。このように、プラテンローラの保持の精度が低くなると、プラテンローラ上の記録媒体を記録ヘッドの所定の保持位置に所定の圧力で正確に押し付けることができなくなり、記録媒体の搬送や記録が精度良く行えなくなるおそれがある。
また、プラテンローラの軸部が切り欠き部の開口部分から容易に脱出し易くなり、意図しないときにわずかな衝撃等で軸部が切り欠き部から脱出してプラテンローラがフレームから離脱する可能性が高くなる。摩耗をできるだけ低減させるためにフレームとプラテンローラの軸部を強度の高い材料によって形成すると、軸部が通過できるように開口部の幅を広げることが難しくなり、かなり強い力を加えることが必要になり、作業性が悪くなる。さらに、操作者がプラテンローラを切り欠き部外へ脱出させるための力を直接加える必要がある場合には、操作が極めて煩雑である。
特許文献1のように、記録ヘッド自体が切り欠き部の開口部分を塞ぐ位置に配置され、プラテンローラの切り欠き部からの脱出を妨げる構成では、良好な記録を実現するために記録ヘッドを所定の圧力でプラテンローラに押し付けるためのばね部材が、プラテンローラの着脱を規制している。従って、記録ヘッドに取り付けられたばね部材が堅い場合には、切り欠き部の開口部分を開放させることが困難で、プラテンローラの着脱操作が容易でなくなる。一方、ばね部材が軟らかい場合には、使用者が外力を加えていないときに何らかの衝撃や振動等によって意図しないときに記録ヘッドが後退してプラテンローラが凹部外に脱出してしまうことが考えられる。通常の記録時にはプラテンローラが切り欠き部内から脱出せず、かつ記録ヘッドを適切な圧力でプラテンローラに当接でき、しかも、使用者が着脱操作を行う際には容易にばね部材を弾性変形させてプラテンローラを凹部内に挿入できるように、全ての条件を満たした適切なばね力を正確に実現するのは容易ではない。また、長期の使用によってばね力に変動が生じて不都合が生じるようになる可能性がある。
特許文献2のように、切り欠き部の開口部分をロックアームによって塞ぐ構成では、ロックアームがプラテンローラの軸部の一部を、切り欠き部内において、記録時にプラテンローラが保持される保持位置の反対側から抱え込む形態である。通常、ロックアームはフレームに設けられており、操作レバー等によって移動可能になっている。すなわち、ロックアームの動作の支点は、記録ヘッドの近傍または記録ヘッドの後方に位置しているのが一般的である。また、ロックアームを切り欠き部の開口部分を塞ぐ位置に配置するために、ロックアームを付勢するばね部材が設けられている場合もある。この構成では、通常、フレーム、特に記録ヘッドの近傍または後方に、ロックアームの動作の支点や操作レバーやばね部材が配置される。その結果、筐体の中央部のスペースがこれらの部材によって占められるため、記録装置の様々な機能に関連する他の部材を配置するスペースが別途必要になったり、これらの部材のために記録媒体の搬送経路が規制されたりするなど、設計の自由度を損なうとともに、装置全体の小型化の妨げとなる。
また、プラテンローラの軸部は、ロックアームによって抱え込まれつつスリット状の切り欠き部の内外に摺動するため、着脱動作が繰り返されるうちに摩耗し易い。軸部が摩耗すると、プラテンローラを所定の保持位置に配置させている状態でも、軸部とロックアームおよび切り欠き部との間に多少の遊びが生じて、プラテンローラががたつき易くなる。その結果、プラテンローラ上の記録媒体を記録ヘッドの所定の保持位置に所定の圧力で正確に押し付けることができなくなり、記録媒体の搬送や記録が精度良く行えなくなるおそれがある。
さらに、プラテンローラを所定の保持位置に保持している姿勢でロックアームを固定する必要があるが、ロックアームが正確な保持位置に到達する前に停止してしまい完全に固定されていない状態、すなわち中途半端な位置に緩やかに固定された、いわゆるハーフロック状態になる可能性がある。この場合、プラテンローラの位置精度が悪いのみならず、僅かな衝撃等によってプラテンローラが移動し易い。その結果、やはりプラテンローラ上の記録媒体を記録ヘッドの所定の保持位置に所定の圧力で正確に押し付けることができなくなり、記録媒体の搬送や記録が精度良く行えなくなるおそれがある。
特許文献3に記載の構成では、フレームではなくカバーフレームに操作レバーが設けられているため、フレーム側のスペースが有効に使えるという利点はある。しかし、この構成では、カバーフレーム全体の移動によってプラテンを記録ヘッドから引き離すため、動作のストロークが大きく、そのために操作レバーも大型である。このことは、この装置の設置スペースの自由度を損なう。
特許文献4の構成では、ブッシュレバー部材が比較的大型であり、それを90度回転させるためストロークが大きく、ブッシュレバー部材の移動スペースを空けておかなければならない。さらに、プラテンローラが凹部内に挿入された状態でブッシュレバー部材を固定するため、ブッシュレバー部材の係止部と筐体の開口部を係止する構成が必要である。また、略長方形状の軸部の長辺の長さ>凹部の開口部分の幅>軸部の短辺の長さという関係が厳密に守られなければならず、またそれらの長さの差がごく僅かであるとロックの信頼性に乏しくなるので、極端な小型化は不可能である。
そこで本発明の目的は、前記した各従来例の種々の問題を解消し、小型かつ簡単な構成で、容易にプラテンの着脱が可能であるとともに、プラテンの保持に関して高い信頼性を確保することができるプラテン保持機構と、それを有する記録装置を提供することにある。
本発明のプラテンの保持機構は、シート材に対して処理を行なうヘッドと、ヘッドによるシート材の処理時にシート材を挟んでヘッドと対向し、シート材を支持するプラテンと、フレームに設けられており、シート材の処理時にプラテンの被保持部を保持する保持位置からフレームの外部に向けて切り欠かれている切り欠き部と、フレームに設けられており、プラテンの被保持部の、切り欠き部に対する進入および脱出方向を規制する爪部と、ヘッドをプラテンに向けて付勢する第1の付勢手段と、プラテンまたはプラテンを保持する部材に係合し、フレームに対して移動可能なリリースアームと、ヘッドの、第1の付勢手段の付勢力に抗する移動に伴って、リリースアームを移動させて、プラテンに対して、被保持部が切り欠き部から脱出する方向への押圧力を与えさせる駆動部材と、を有し、駆動部材は、リリースアームを付勢する第2の付勢手段であり、第2の付勢手段は、その付勢方向が、第1の付勢手段からヘッドを介してプラテンに加わる付勢力が解除されたときに、リリースアームを介してプラテンまたはプラテンを保持する部材に押圧力を加えて、プラテンの被保持部を切り欠き部から脱出する方向に移動させるような方向になるように、ヘッドとリリースアームの間に配置されており、プラテンを保持する部材は、フレームに対して移動可能なプラテンフレームであることを特徴とする。
この構成によると、爪部によって、プラテンの被保持部が切り欠き部から脱出する方向が限定されており、第1の付勢手段がヘッドを介してプラテンに押圧力をかけることによって、限定された脱出方向への被保持部の移動を抑える。それによって、プラテンの被保持部の、切り欠き部からの意図しない脱出が防げる。そして、ヘッドを、第1の付勢手段の付勢力に抗して移動させると、駆動部材がリリースアームを移動させて、プラテンの被保持部を切り欠き部から脱出させる。
そして、ヘッドを移動させるだけで、操作者が特別な操作をしなくてもプラテンを切り欠き部外に押し出すことができる。
1の付勢手段の付勢力は第2の付勢手段の付勢力よりも大きい。
第1の付勢手段は、その付勢方向が、ヘッドを介してプラテンに押圧力を加えて、プラテンの被保持部を切り欠き部内の保持位置に押しつけるような方向になるように配置されている。
本発明の記録装置は、前記したいずれかの構成のプラテン保持機構を含み、ヘッドはシート材に記録を行う記録ヘッドであることを特徴とする。
本発明によると、プラテンをフレームの切り欠き部内の所定の保持位置に保持することができ、プラテンの被保持部に摩耗が生じても、安定して保持することができる。また、必要に応じてヘッドを移動させるだけで、容易にプラテンを取り出すことができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1,2に本発明の一実施形態の記録装置の要部が示されている。この記録装置は、記録可能な状態において、図2に示す記録媒体(シート材)Sに対して記録を行う記録ヘッドの一例であるサーマルヘッド1と、記録媒体Sを搬送するローラ状のプラテン(プラテンローラ2)が、互いに接するように配置されている。図示しないが、サーマルヘッド1には、多数の発熱素子と、各発熱素子を選択的に駆動するために駆動信号を伝達する電気接続機構が設けられている。また、サーマルヘッド1とフレーム3の間には、サーマルヘッド1をプラテンローラ2に対して圧接させるように付勢する第1の付勢手段であるばね部材4が配置されている。プラテンローラ2は、軸部2aと、弾性体からなる外周部2bを有している。このサーマルヘッド1およびプラテンローラ2が記録部を構成している。
サーマルヘッド1はフレーム3に、例えばばね部材4の弾性変形の範囲内で僅かな変位のみ移動可能に取り付けられている。プラテンローラ2はプラテンフレーム5に回転可能に取り付けられている。そして、プラテンフレーム5は、フレーム3に対して移動可能に(例えば揺動可能に)取り付けられている。フレーム3の側方には、モータ(駆動手段)12からの回転駆動力をプラテンローラ2に伝達するための歯車群6が配置されている。
図3(a)に示すように、フレーム3には、記録時にプラテンローラ2を保持すべき所定の保持位置から外部に向けて切り欠いた形状の切り欠き部7が形成されている。そして、この切り欠き部7の開口部分の近傍には、内側に向かって突出する爪部8が形成されている。この爪部8によって、切り欠き部7において保持位置から開口部分へ向かう脱出方向は、矢印A方向(正確には、矢印A方向を含む僅かな角度範囲内の方向であるが、ここでは便宜上「矢印A方向」と述べる)に限定される。当然、切り欠き部7内への進入方向は、矢印A方向の反対の方向に限定される。
前記したとおり、プラテンローラ2はプラテンフレーム5に回転可能に保持されている。具体的には、プラテンフレーム5に設けられたスリット状の凹部5a内に、プラテンローラ2の軸部2aが挿入されて保持されている。軸部2aはスリット状の凹部5a内で移動可能、かつ、外部からの力を加えられない限り凹部5aの外部へは脱出不能に保持されている。このように、軸部2aはプラテンローラ2の被保持部として機能する。プラテンフレーム5は、フレーム3に対して移動可能に取り付けられている。
フレーム3には、揺動軸9aを中心として揺動可能なリリースアーム9が取り付けられている。このリリースアーム9は、プラテンローラ2の軸部2aに係合する係合部9bを有している。また、リリースアーム9とサーマルヘッド1の間には、第2の付勢手段であるばね部材10が配置されている。
位置検出用のスイッチ11がフレーム3に固定されている。このスイッチ11は、切片11aがリリースアーム9に当接されたときと、リリースアーム9に接触していないときとで、オンとオフの切り替えが行われる。
以上のような構成であり、図1〜3に示す組立状態において、感熱性の記録媒体であるシート材Sが供給されると、モータ12から歯車群6を介して駆動されるプラテンローラ2の回転によって、シート材Sが搬送される。この時、ばね部材4によってサーマルヘッド1がプラテンローラ2に向けて付勢されるため、シート材Sはサーマルヘッド1とプラテンローラ2の間に挟みつけられる。そして、図示しない電気接続機構からサーマルヘッド1の発熱素子に駆動信号が伝達されて、サーマルヘッド1が駆動され、シート材Sに所望の記録が行われる。
この記録装置において、プラテンローラ2の軸部2aは、プラテンフレーム5のスリット状の凹部5a内、かつフレーム3の切り欠き部7内に位置する。ばね部材4がサーマルヘッド1を介してプラテンローラ2に押圧力を加えることによって、軸部2aは、図3(a),(b)に示す保持位置に押しつけられて保持される。軸部2aが切り欠き部7内から脱出可能な方向は、爪部8によって概ね矢印A方向のみに規制されている。そして、ばね部材4がサーマルヘッド1を介してプラテンローラ2に加える押圧力(付勢力)の少なくとも一部は、矢印A方向の反対側から作用する。従って、ばね部材4の付勢力によって、プラテンローラ2およびその軸部2aは、図3(a),(b)に示す保持位置に押しつけられ、この保持位置から離れることはない。なお、この状態で、スイッチ11の切片11aはリリースアームに当接された状態であり、プラテンローラ2が保持位置にあることを検知できる。
非記録時に、サーマルヘッド1とプラテンローラ2との間に記録媒体を挿入してセットする作業や、サーマルヘッド1とプラテンローラ2の間で記録媒体のジャム(いわゆる紙詰まり)が生じた際に、それを解消するための作業や、サーマルヘッド1および/またはプラテンローラ2の交換やメンテナンスの作業を行う場合には、プラテンローラ2をサーマルヘッド1から引き離して外部に露出させる。その場合、本実施形態では、まず、図示しないレバー等を操作して、ばね部材4の付勢力に抗してサーマルヘッド1をプラテンローラ2から引き離す(図4(a),(b)参照)。この時、実際にはサーマルヘッド1の移動と同時に、サーマルヘッド1にばね部材10を介して連結されているリリースアーム9が移動する。すなわち、実際には、図4(a),(b)に示す状態になることはなく、図5(a),(b)に示すように、サーマルヘッド1とばね部材10とリリースアーム9とが一体的に移動する。この時、リリースアーム9の係合部9bがプラテンローラ2の軸部2aに係合して一緒に移動させる。それによって、プラテンローラ2は、図1〜3に示す保持位置から離れ、軸部2aは切り欠き部7の開口部分近傍に移動する。この位置で、軸部2aの一部は爪部8の外側に位置し、爪部8による規制から逃れることができるようになる。そこで、プラテンフレーム5をフレーム3に対して移動させて、図6(a),(b)に示すようにプラテンローラ2の軸部2aをフレーム3の切り欠き部7から完全に脱出させる。図5〜6に示す状態では、スイッチ11の切片11aはリリースアームに接触しておらず、プラテンローラ2が保持位置にない、すなわち記録不可の状態にあることを検知できる。
なお、前記した通り、図4(a),(b)は、本実施形態では実際にはほとんどあり得ない状態を示しているが、サーマルヘッド1を移動させることを説明するために用いた参考図である。
その後、記録媒体のセット、ジャムを解消する処理、サーマルヘッド1および/またはプラテンローラ2の交換やメンテナンス等の作業を行う。必要に応じて、プラテンローラ2をプラテンフレーム5のスリット状の凹部5aから脱出させてもよい。ただし、プラテンローラ2をプラテンフレーム5の凹部5aから脱出させる構成および方法は、本発明の特徴部分ではなく、従来から公知の様々な手段を採用できるので、説明を省略する。
以上説明したとおり、図1〜3に示すように、ばね部材4の付勢力によって、プラテンローラ2の軸部2aを切り欠き部7内の所定の保持位置に押しつけて保持することができる。仮に、摩耗によって軸部2aの径が細くなったとしても、ばね部材4の付勢力によって保持位置に押しつけられる状態を維持できるので、がたつきを生じることはない。もちろん、軸部2aが切り欠き部7から脱出することはない。従って、本実施形態によると、軸部2aに多少の摩耗が生じても、シート材Sの搬送および記録を安定して精度良く行える。また、ばね部材4による付勢力があるため、軸部2aが中途半端な位置で停止してハーフロック状態になることはない。
そして、図示しないレバー等の操作でサーマルヘッド1をプラテンローラ2から僅かに(数mm程度)引き離しさえすれば、ばね部材10の付勢力によってプラテンローラ2が移動して軸部2aが切り欠き部から脱出し、プラテンローラ2を外部に出すことが可能な状態になる。この際、操作者がプラテンローラ2を移動させるための力を直接加える必要はない。
しかも、リリースアーム9は、従来のロックアームのように軸部2aを、切り欠き部7内において、記録時にプラテンローラ2が保持される保持位置の反対側から抱え込む形態ではなく、切り欠き部7内から外部に軸部2aを押し出す形態である。この点について説明すると、従来のロックアームのストロークは、開口部分側から(「ヘッド側から」または「上側から」とも言える)、切り欠き部7側に向かう経路であるので、このストロークを妨げないようにスペースを空けるため、スペース効率が悪い。ひいては、それが記録装置の小型化の妨げとなる。これに対して、本実施形態の構成では、リリースアーム9のストロークは、切り欠き部7の開口部分と反対側から(「ヘッドと反対側から」または「奥側から」とも言える)、切り欠き部7の外側に向かう経路である。従って、この経路を確保するためだけに、余分なスペースを確保する必要はない。その結果、記録装置の小型化に寄与する。
また、従来例では、切り欠き部の開口部分を開放することによってプラテンローラを外部に取り出すことは可能になるものの、実際に取り出すためには、操作者が直接操作しなければならない。これに対して、本実施形態では、切り欠き部の開口部分が開放されているのみならず、サーマルヘッド1をプラテンローラ2から引き離すと、ばね部材10の付勢力によって、軸部2aが切り欠き部7から外部に押し出される。従って、操作者が直接操作しなくても、プラテンローラ2が自動的に飛び出してくる。
プラテンローラ2が切り欠き部7の外部に出ている状態から、図1〜3に示すようにプラテンローラ2を切り欠き部7の保持位置に挿入する場合には、切り欠き部の開口部分に軸部2aを載置するようにしてプラテンローラ2を押し込めばよい。すなわち、プラテンローラ2を押し込むと、サーマルヘッド1がプラテンローラ2に押されて、ばね部材4の付勢力に抗してわずかに移動し、それによってプラテンローラ2が切り欠き部内部に挿入される。そうすると、ばね部材4の付勢力によってサーマルヘッド1が復帰してプラテンローラ2を押圧し、軸部2aを保持位置に押しつけて固定する。この固定は、ばね部材10の付勢力に抗して行われるため、少なくとも軸部2aの進入および脱出方向に関する分力に関しては、ばね部材4の付勢力がばね部材10の付勢力よりも大きくなければならない。
以上説明した実施形態では、第1の付勢部材として、ばね部材4をサーマルヘッド1とフレーム3の間に配置している。このばね部材4は、その付勢方向が、サーマルヘッド1を介してプラテンローラ2に押圧力を加えて、プラテンローラ2の軸部2aを切り欠き部7内の保持位置に押しつけるような方向になるように配置されていることが好ましい。少なくとも、ばね部材4の付勢力は、このような方向に向いている分力を有している必要がある。
また、第2の付勢部材として、ばね部材10をリリースアーム9とサーマルヘッド1の間に配置している。このばね部材10は、その付勢方向が、ばね部材4からサーマルヘッド1を介してプラテンローラ2に加わる付勢力が解除され、サーマルヘッド1がプラテンローラ2から引き離された時に、リリースアーム9を介してプラテンローラ2に押圧力を加えて、プラテンローラ2の軸部2aを切り欠き部7から脱出する方向に移動させるような方向になるように配置されていることが好ましい。少なくとも、ばね部材10の付勢力は、このような方向に向いている分力を有している必要がある。それによって、リリースアーム9は、サーマルヘッド1のばね部材4の付勢力に抗する移動に伴って、プラテンローラ2に対して、軸部2aが切り欠き部7から脱出する方向への押圧力を加えることができる。
ただし、例えば、図7に示すように、ばね部材10をリリースアーム9とフレーム3の間に配置して、前記したのと同様な方向への付勢方向を有する構成にすることもできる。この場合、ばね部材10は圧縮ばねである。なお、図7では、フレーム3の、ばね部材10を固定する部分は図示省略している。
また、ばね部材10に変えて、サーマルヘッド1とリリースアーム9を連結する連結部材を用いることもできる。その場合、付勢力は得られないものの、サーマルヘッド1がプラテンローラ2から離れる動作に追随してリリースアーム9を移動させることができ、係合部9bに係合した軸部2aを切り欠き部7の開口部分側に移動させることができる。この構成では、付勢力(ばね力)は特に必要とせず、図5(a),(b)に示す状態にすることができる。
なお、前記した実施形態では、プラテンローラ2を保持するプラテンフレーム5を用いたが、プラテンフレーム5を省略することも可能である。また、プラテンローラ2に代えて、ローラ状ではないプラテンを用いることもできる。その場合、切り欠き部7内に収容される被保持部は、軸状のものに限らず、あらゆる形状の突起にすることができる。
ヘッドはサーマルヘッドやインクジェットヘッド等の記録ヘッドに限られず、熱活性化用ヘッドであってもよい。
(a)は本発明のプラテン保持機構を含む記録装置の要部を示す平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図である。 図1に示す記録装置のII−II線断面図である。 (a)は図1に示す記録装置のプラテン保持機構の、記録可能な状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。 (a)は図1に示す記録装置のプラテン保持機構の、ヘッドを移動させた状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。 (a)は図1に示す記録装置のプラテン保持機構の、リリースアームが移動した状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。 (a)は図1に示す記録装置のプラテン保持機構の、プラテン取り出し状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。 (a)は図1に示す記録装置の変形例のプラテン保持機構の、記録可能な状態を示す側面図、(b)はそのフレームの一部を削除した側面図である。
符号の説明
1 サーマルヘッド(ヘッド)
2 プラテンローラ(プラテン)
2a 軸部(被保持部)
2b 外周部
3 フレーム
4 ばね部材(第1の付勢手段)
5 プラテンフレーム
5a 凹部
6 歯車群
7 切り欠き部
8 爪部
9 リリースアーム
9a 揺動軸
9b 係合部
10 ばね部材(第2の付勢手段)
11 スイッチ
11a 切片
12 モータ(駆動手段)
S 記録媒体(シート材)

Claims (4)

  1. シート材に対して処理を行なうヘッドと、
    前記ヘッドによる前記シート材の処理時に前記シート材を挟んで前記ヘッドと対向し、前記シート材を支持するプラテンと、
    フレームに設けられており、前記シート材の処理時に前記プラテンの被保持部を保持する保持位置から前記フレームの外部に向けて切り欠かれている切り欠き部と、
    前記フレームに設けられており、前記プラテンの前記被保持部の、前記切り欠き部に対する進入および脱出方向を規制する爪部と、
    前記ヘッドを前記プラテンに向けて付勢する第1の付勢手段と、
    前記プラテンまたは前記プラテンを保持する部材に係合し、前記フレームに対して移動可能なリリースアームと、
    前記ヘッドの、前記第1の付勢手段の付勢力に抗する移動に伴って、前記リリースアームを移動させて、前記プラテンに対して、前記被保持部が前記切り欠き部から脱出する方向への押圧力を与えさせる駆動部材と、
    を有し、
    前記駆動部材は、前記リリースアームを付勢する第2の付勢手段であり、
    前記第2の付勢手段は、その付勢方向が、前記第1の付勢手段から前記ヘッドを介して前記プラテンに加わる付勢力が解除されたときに、前記リリースアームを介して前記プラテンまたは前記プラテンを保持する部材に押圧力を加えて、該プラテンの前記被保持部を前記切り欠き部から脱出する方向に移動させるような方向になるように、前記ヘッドと前記リリースアームの間に配置されており、
    前記プラテンを保持する部材は、前記フレームに対して移動可能なプラテンフレームである、
    プラテン保持機構。
  2. 前記第1の付勢手段の付勢力は前記第2の付勢手段の付勢力よりも大きい、請求項に記載のプラテンの保持機構。
  3. 前記第1の付勢手段は、その付勢方向が、前記ヘッドを介して前記プラテンに押圧力を加えて、該プラテンの前記被保持部を前記切り欠き部内の前記保持位置に押しつけるような方向になるように配置されている、請求項1または2に記載のプラテン保持機構。
  4. 請求項1からのいずれか1項に記載のプラテン保持機構を含み、前記ヘッドは前記シート材に記録を行う記録ヘッドである、記録装置。
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