以下、図面について、本発明の一実施の形態を、第1の実施の形態と第2の実施の形態とに分けて詳述する。
(1)第1の実施の形態
(1−1)イヤースピーカ装置の構成
図1、図2及び図3において、1は全体として第1の実施の形態におけるイヤースピーカ装置を示し、ポータブルCD(Compact Disc)プレーヤやDMP(Digital Music Player)の再生処理等により生成されたオーディオ信号を再生音に変換し、これをリスナに聴取させるようになされている。
イヤースピーカ装置1は、一般的な箱形のスピーカ装置とは異なり、ヘッドホン装置と同様にリスナの頭部に装着されることを前提としており、大きく分けてオーディオ信号を再生音に変換する電気音響変換部2L及び2Rと、当該電気音響変換部2L及び2Rをリスナの頭部に装着して固定させるためのバンド部3とにより構成されている。
電気音響変換部2L及び2Rは、球体が垂直方向に4等分されたような形状でなる筐体部4L及び4Rを中心に構成されている。筐体部4L及び4Rは、それぞれ後面側及び左右内側に平面部分が形成されており、左右内側にはリスナの頭部に対する側圧を和らげるためのパッド部5L及び5Rが取り付けられている。
筐体部4L及び4Rの後面側における平面部分であるバッフル板4AL及び4ARには、オーディオ信号を再生音に変換するスピーカユニット7L及び7Rが取り付けられている。このスピーカユニット7L及び7Rは、ポータブルCDプレーヤやDMP等から接続ケーブル6を介して供給されるオーディオ信号に応じて、振動板を振動させることにより放音するようになされている。
また筐体部4L及び4Rのバッフル板4AL及び4ARには、金属製でなり、所定太さを有する中空の部材が側面略U字状に曲げられた管状ダクト8L及び8Rが取り付けられている。この管状ダクト8L及び8Rは、図1に示したように、外端部がそれぞれ左右内側方向に曲げられており、さらに後側先端部のほぼ中央にそれぞれ孔部8AL及び8ARが設けられている。
バンド部3は、中央部3Aを中心に一般的な人間の頭部の形状に合わせて上に凸の略アーチ型に形成されていると共に、当該中央部3Aに対して伸縮自在に摺動し得るアジャスト部3BL及び3BRによりバンド部3全体の長さを調整し得るようになされている。
またバンド部3は、一般的な人間の頭部の形状よりも小さい径のアーチ型に形成されていると共に弾性力を有しており、リスナに装着される際に筐体部4L及び4Rを左右に広げながら装着されると、装着後に当該弾性力の作用によって元の形状に戻ろうとするため、筐体部4L及び4Rを当該リスナの頭部に対して当接させた状態で保持させるようになされている。
さらにバンド部3には、アジャスト部3BL及び3BRの下部における、バンド部3と筐体部4L及び4Rとの接続部分に回転部3CL及び3CRが設けられている。この回転部3CL及び3CRは、バンド部3の延長方向を回転軸とし当該バンド部3に対して筐体部4L及び4Rを回転させ管状ダクト8L及び8Rの後側をそれぞれ内側へ付勢させるような回転力を有するようになされている(詳しくは後述する)。
またバンド部3のアジャスト部3BL及び3BRの内側には、当該アジャスト部3BL及びBRとそれぞれ交差するように、略長楕円板状のスタビライザ3SL及び3SRがそれぞれ取り付けられている。
なお、イヤースピーカ装置1は、図1〜図3に示したようにほぼ左右対称に構成されているため、以下では主に左側の電気音響変換部2Lを例に説明する。
実際上、イヤースピーカ装置1は、図4の左側面図に示すように、バンド部3における長さが調整された上でリスナの頭部100に装着されることにより、アジャスト部3BLの下端側に取り付けられた電気音響変換部2Lをリスナの頭部における耳介101Lよりもやや前方に位置させるようになされている。
これによりイヤースピーカ装置1の電気音響変換部2Lは、スピーカユニット7Lから放射された中高音を直接リスナの外耳道内部へ到達させると共に、当該リスナの頬や耳介101L等で反射された反射音も外耳道内部へ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合と同様の、自然な音像定位を与え得るようになされている。
このときイヤースピーカ装置1は、リスナに対して正常に装着された際、スピーカユニット7Lが耳介101L及び外耳道入口102Lのやや前方に位置し、管状ダクト8Lの孔部8ALが外耳道入口102Lの近傍に位置するようになされている。
ここで図4におけるQ1−Q2断面を図5に示すと共に、図5におけるQ3−Q4断面を図6に示す。この図5及び図6に示すように、回転部3CLは、アジャスト部3BLの下側先端部分に略円柱状の軸状部3B1Lと、当該軸状部3B1Lの周側面に沿って設けられる略円筒状のコイルばね3DLと、筐体部4Lに取り付けられ内部に軸状部3B1L及びコイルばね3DLを収容し得る円柱状の空間が設けられた筒状部3C1Lとにより構成されている。
コイルばね3DLは、上側の端部がアジャスト部3BLに固定されると共に、下側の端部が筒状部3C1Lに固定されるようになされている。またコイルばね3DLは、外力が加わらない自然状態において、管状ダクト8Lの後側を所定角度(例えば45度)内側へ回転させた状態とするようになされている。
ところでイヤースピーカ装置1は、リスナの頭部100に装着された際、図5に示したように、管状ダクト8Lの後側が自然状態よりも外方へ広げられた状態となる。このため回転部3CLは、自然状態に戻ろうとする力、すなわち管状ダクト8Lの後側を内側へ押し込むような回転力を作用させることになる。
このため電気音響変換部2Lは、パッド部5によりリスナのこめかみ付近に当接すると共に、管状ダクト8Lの後側により当該リスナの外耳道入口102Lに当接した状態となる。
またスタビライザ3SLは、図4に示したように、前後方向に渡ってリスナの頭部100に当接することにより、バンド部3を当該頭部100に安定的に装着させることができ、回転部3CLの回転力によって当該バンド部3が不必要に捻れてしまうことを未然に防止するようになされている。
この結果、イヤースピーカ装置1は、リスナの頭部100に正しく装着された際、バンド部3の中央部3A、アジャスト部3BL及びパッド部5Lに加えて、スタビライザ3SLによって当該頭部100やこめかみ等にそれぞれ当接すると共に、管状ダクト8Lの後側によって外耳道入口102Lに当接することになり、当該リスナの頭部100に対して極めて安定的に装着されることになる。
因みに管状ダクト8Lは、その先端が略U字状に形成されているため、リスナの外耳道内へ入り込まないようになされている。これによりイヤースピーカ装置1は、当該リスナがイヤースピーカ装置1の装着時等に、誤って管状ダクト8Lにより当該外耳道内を傷つけてしまうことを未然に防止し得るようになされている。
ここで図4におけるQ5−Q6断面を図7に示すように、筐体部4Lはスピーカユニット7Lが取り付けられた状態で管状ダクト8Lを除き密閉された空間を形成しており、スピーカユニット7Lに対して筐体部4L及び当該管状ダクト8Lにより共振回路を形成するようになされている。
また管状ダクト8Lは、筐体部4Lの内部から筐体部4Lのバッフル板4ALを貫通してリスナの外耳道入口102Lの近傍に到達している。実際上、電気音響変換部2Lは、管状ダクト8Lをバスレフダクトとして作用させることにより、全体としてバスレフ型のスピーカとして動作するようになされている。
ところで、一般的なバスレフ型スピーカでは、ダクトが筐体の内部のみに設けられ、外部へは延長しないようになされている。そこで、電気音響変換部2Lとの比較用に、図7の対応部分に同一符号を付した図8に示すような電気音響変換部12Lを想定する。
この電気音響変換部12L(図8)は、一般的なバスレフ型スピーカと同様に構成されており、電気音響変換部2Lの管状ダクト8L(図7)に代えて、筐体部4Lの内側のみに2本の管状ダクト18L及び19Lを有している。
この電気音響変換部12Lの場合、スピーカユニット7Lの位置を仮想的な音源の位置(以下、これを仮想音源位置と呼ぶ)PMと見なしたときの、当該スピーカユニット7Lから放射された中高音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EMと、孔部18AL及び19ALを仮想音源位置PL2と見なしたときの、管状ダクト18L内及び19L内を伝わり当該孔部18AL及び19ALから放射された低音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EL2とを比較すると、経路長EM≒経路長EL2となっている。
ここで、電気音響変換部12Lにより鼓膜103Lに到達する音の周波数特性を図9に示す。この図9に示すように、一般的なバスレフ型の電気音響変換部12Lは、スピーカユニット7Lから放射される、特性曲線SMに示すような周波数特性でなる中高音と、管状ダクト18L内及び19L内を伝わり孔部18AL及び19ALから放射される、特性曲線SL2に示すような周波数特性でなる低音とを合わせてリスナの鼓膜103Lまで到達させることになる。
これにより電気音響変換部12Lは、特性曲線SM及び特性曲線SL2が合成された特性曲線SG2に示すように、特性曲線SMにおける低音域の音圧レベルがある程度上昇された再生音をリスナに聴取させることができる。
一方、本発明による電気音響変換部2L(図7)では、スピーカユニット7Lを仮想音源位置PMとみなしたときの、当該スピーカユニット7Lから放射された中高音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EMと、孔部8ALを仮想音源位置PL1と見なしたときの、管状ダクト8L内を伝わり当該孔部8ALから放射された低音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EL1とを比較すると、経路長EM>経路長EL1となっている。
ここで、電気音響変換部2Lにより鼓膜103Lに到達する音の周波数特性を図10に示す。電気音響変換部2Lは、上述したようにバスレフ型スピーカの一種であるため、図9に示した場合と同様、スピーカユニット7Lから放射される、特性曲線SMに示すような周波数特性でなる中高音と、管状ダクト8Lを伝わり孔部8ALから放射される、特性曲線SL1に示すような周波数特性でなる低音とを合わせてリスナの鼓膜103Lまで到達させることになる。
ところで、一般に音源からの距離と音圧レベルとは反比例の関係にある。ここで電気音響変換部2L(図7)と電気音響変換部12L(図8)との経路長を比較すると、経路長EL1<経路長EL2の関係となる。
すなわち電気音響変換部2L(図7)は、仮想音源位置PL1が電気音響変換部12L(図8)の仮想音源位置PL2よりもリスナの外耳道入口102L近傍に位置しているため、管状ダクト8L内を伝わり孔部8AL(仮想音源位置PL1)から放射される低音を、電気音響変換部12Lの場合よりも高い音圧レベルで鼓膜103Lまで到達させ得るようになされている。
すなわち、2つの特性曲線SL1及びSL2を重ねた図11に示すように、管状ダクト8Lによる低音の特性曲線SL1は、経路長EL1<経路長EL2の関係により、管状ダクト18L及び19Lによる低音の特性曲線SL2と比較して全体的な音圧レベルが高くなる。
この結果、第1の実施の形態における電気音響変換部2Lは、特性曲線SM及び特性曲線SL1が合成された特性曲線SG1に示すように、特性曲線SMにおける低音域の音圧レベルが電気音響変換部12Lの場合(特性曲線SG2)よりも上昇された、比較的低い周波数帯まで十分な音圧レベルの再生音をリスナに聴取させ得るようになされている。
ここで特性曲線SG1と特性曲線SG2とを比較すると、特性曲線SG2では低音域側へ進むに連れて比較的急峻に音圧レベルが低下しているのに対して、特性曲線SG1では低音域側へ進むに連れて音圧レベルの低下度合いが緩やかになっていることが分かる。
すなわち電気音響変換部2Lは、電気音響変換部12Lと比較して、広い周波数帯域に渡って高い音圧レベルでなる、すなわち充分な低音域が含まれる良好な再生音をリスナの鼓膜103に伝達して聴取させ得るようになされている。
この場合、電気音響変換部2Lは、図4及び図7に示したように、リスナの外耳道入口102Lの近傍に管状ダクト8Lの外端部を位置させるものの、当該外耳道入口102Lを完全には閉塞しない。
このため電気音響変換部2Lは、スピーカユニット7Lから放射する中高音及び管状ダクト8Lの孔部8ALから放射する低音を合わせた再生音に加えて、リスナの周囲で発生した音(以下これを周囲音と呼ぶ)を遮断することなく当該リスナの鼓膜103Lまで到達させ聴取させ得るようになされている。
因みに電気音響変換部2Lは、筐体部4Lの内容積が10[ml]、スピーカユニット7Lの外径が21[mm]、当該スピーカユニット7Lの振動板における有効振動半径が8.5[mm]、振動系の等価質量が0.2[g]、最低共振周波数f0が360[Hz]、共振のQ0が1.0とされている。
また管状ダクト8Lは、内径が1.8[mm]、当該管状ダクト8Lの筐体部4L内に位置する内部端8BLから孔部8ALまでの有効長が50[mm]、バッフル板4ALの表面から孔部8ALまでの距離が約35[mm]とされている。
ここで管状ダクト8Lは、その側面がU字状に形成され、外端部の中央に孔部8ALが設けられているため、実質的に上半分及び下半分による2本のバスレフダクトを構成しているのと同等であり、当該管状ダクト8Lを1本の管状ダクトに換算した場合の内径(この場合は約2.5[mm]に相当する)が考慮された上で、その内径及び有効長が決定されている。
すなわち管状ダクト8Lは、側面U字状に形成されたことにより、1本の管状ダクトとした場合に比べてその有効長を短く設定し得ると共に、デザイン性及び安全性を大きく向上させ得るようになされている。
この電気音響変換部2L(図7)及び電気音響変換部12L(図8)について、人間の耳介及び外耳道を模した測定用治具を用いて実際の周波数特性を測定したところ、図12に示すような特性曲線SG11(電気音響変換部2Lの場合)及び特性曲線SG12(電気音響変換部12Lの場合)が得られた。
この図12では、図11に示した理論的な周波数特性と同様、およそ500[Hz]以下の低音域において、電気音響変換部2Lの特性曲線SG11が電気音響変換部12Lの特性曲線SG12よりも高い音圧レベルとなっている。すなわち、実際に電気音響変換部2Lがリスナに対して充分な低音を含む良好な再生音を聴取させ得ることが示されている。
このようにイヤースピーカ装置1は、リスナの頭部100に装着された際、スピーカユニット7Lをリスナの外耳道入口102Lからやや離れた場所に位置させ、そのスピーカユニット7Lから再生音の中高音を放射すると共に、筐体部4Lから当該外耳道入口102Lの近傍まで延長されバスレフダクトとして作用する管状ダクト8Lの孔部8ALから再生音の低音を放射することにより、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
(1−2)他のイヤースピーカ装置の構成例
ところで、第1の実施の形態におけるイヤースピーカ装置1は、図1〜4に示したように、装着部としてのバンド部3により電気音響変換部2L及び2Rをリスナの頭部100に装着するようになされているが、このバンド部3に代えて他の種々の装着部を用いることにより電気音響変換部2L及び2Rをリスナの頭部100に装着するようにしても良い。
なお、以下では、上述したイヤースピーカ装置1の場合と同様、主に左側の電気音響変換部2Lを例に説明するが、右側の電気音響変換部2Rについては、当該左側の電気音響変換部2Lと左右対称に構成されているものとする。
例えば図13に示すイヤースピーカ装置20は、所謂イヤークリップ型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、リスナの耳介101Lに引っ掛けるためのイヤークリップ21Lが電気音響変換部2Lの筐体部4Lに取り付けられている。またイヤークリップ21Lにおける筐体部4Lへの取付部分には、回転部3CL(図5及び図6)と同様の構成でなる回転部21CLが設けられている。
このイヤースピーカ装置20は、イヤークリップ21Lがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより電気音響変換部2Lをリスナの頭部100に装着することができる。このときイヤークリップ21Lは、回転部21CLの回転作用により電気音響変換部2Lを回転させ、管状ダクト8Lの後側を外耳道入口102Lに当接させることができる。
これによりイヤースピーカ装置20は、イヤースピーカ装置1と同様、リスナの頭部100に安定して装着され、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
また図14に示すイヤースピーカ装置30は、所謂アンダーチン型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、左右の電気音響変換部2L及び2Rを接続すると共にリスナの耳介101Lに引っ掛けるためのバンド部31が筐体部4Lに取り付けられている。このバンド部31の中央部31Aは、下に凸の略アーチ状に形成され、リスナの顎の下を通って左右に渡されることを前提としている。またバンド部31における筐体部4Lへの取付部分には、回転部3CL(図5及び図6)と同様の構成でなる回転部31CLが設けられている。
このイヤースピーカ装置30(図14)は、バンド部31の耳掛部31BLがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより電気音響変換部2Lをリスナの頭部100に装着することができる。このときバンド部31は、回転部31CLの回転作用により電気音響変換部2Lを回転させ、管状ダクト8Lの後側を外耳道入口102Lに当接させることができる。
これによりイヤースピーカ装置30は、イヤースピーカ装置1と同様、リスナの頭部100に安定して装着され、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
さらに図15に示すイヤースピーカ装置40は、所謂ショルダーホールド型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、左右の電気音響変換部2L及び2Rを接続すると共にリスナの肩部から支持するショルダーアーム41が筐体部4Lに取り付けられている。このショルダーアーム41の中央部41Aは、後ろに凸の略アーチ状に形成され、リスナの首の後ろから肩の上部に引っ掛けて左右に渡されることを前提としている。またショルダーアーム41における筐体部4Lへの取付部分には、回転部3CL(図5及び図6)と同様の構成でなる回転部41CLが設けられている。
このイヤースピーカ装置40(図15)は、リスナの両肩に渡って引っ掛けられることにより電気音響変換部2Lをリスナの頭部100に装着することができる。このときショルダーアーム41は、回転部41CLの回転作用により電気音響変換部2Lを回転させ、管状ダクト8Lの後側を外耳道入口102Lに当接させることができる。
これによりイヤースピーカ装置40は、イヤースピーカ装置1と同様、リスナの頭部100に安定して装着され、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
さらに図16に示すイヤースピーカ装置50は、所謂ネックバンド型として構成されており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、左右の電気音響変換部2L及び2Rを接続すると共にリスナの耳介101Lに掛けるためのバンド部51が筐体部4Lに取り付けられている。このバンド部51の中央部51Aは、後ろに凸の略アーチ状に形成され、リスナの後頭部の後ろ側で渡されることを前提としている。またバンド部51における筐体部4Lへの取付部分には、回転部3CL(図5及び図6)と同様の構成でなる回転部51CLが設けられている。
このイヤースピーカ装置50(図16)は、バンド部51の耳掛部51BLがリスナの耳介101Lに引っ掛けられることにより電気音響変換部2Lをリスナの頭部100に装着することができる。このときバンド部51は、回転部51CLの回転作用により電気音響変換部2Lを回転させ、管状ダクト8Lの後側を外耳道入口102Lに当接させることができる。
これによりイヤースピーカ装置50は、イヤースピーカ装置1と同様、リスナの頭部100に安定して装着され、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
さらに図17に示すイヤースピーカ装置60は、電気音響変換部2Lに加えて、上述した電気音響変換部12L(図8)と同様の構成でなる後方電気音響変換部62Lを有しており、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代わるバンド部61により、電気音響変換部2Lを耳介101Lの前方に位置させると共に、後方電気音響変換部62Lを当該耳介101Lの後方に位置させるようになされている。
因みに、後方電気音響変換部62Lには、4チャンネルや5.1チャンネル等のマルチチャンネル音源におけるリアチャンネル用の音声信号が供給されるようになされている。またバンド部61における筐体部4Lへの取付部分には、回転部3CL(図5及び図6)と同様の構成でなる回転部61CLが設けられている。
このイヤースピーカ装置60(図17)は、リスナの頭部100に装着されることにより、電気音響変換部2L及び後方電気音響変換部62Lを当該リスナの頭部100に装着することができる。このときバンド部61は、回転部61CLの回転作用により電気音響変換部2Lを回転させ、管状ダクト8Lの後側を外耳道入口102Lに当接させることができる。
これによりイヤースピーカ装置60は、イヤースピーカ装置1と同様、リスナの頭部100に安定して装着され、電気音響変換部2L及び後方電気音響変換部62Lの間に耳介101Lを挟み込んだ状態で、自然な音像定位を与えながら、サラウンド音でなり充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
またこの場合、イヤースピーカ装置60(図17)では、バンド部61に加振器65を取り付け、例えば5.1チャンネル音源における重低音成分に応じた振動をリスナの頭部100に加えるようにしても良い。
なおイヤースピーカ装置60(図17)は、電気音響変換部2Lから管状ダクト8Lをリスナの外耳道入口102L近傍まで延長する以外にも、後方用電気音響変換部62Lから管状ダクトをリスナの外耳道入口102L近傍まで延長するようにしたり、或いは電気音響変換部2L及び後方用電気音響変換部62Lの両方から管状ダクトをリスナの外耳道入口102L近傍まで延長するようにしても良い。この場合、バンド部61における後方用電気音響変換部62Lの取付部分に回転部61CLと同様の回転部を設け、管状ダクトをリスナの外耳道入口102Lに当接させるようにしても良い。
さらに図18に示すイヤースピーカ装置70は、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、左右の電気音響変換部2L及び2Rを接続すると共にリスナの頬よりも前側に位置させるためのバンド部71が筐体部4Lに取り付けられている。またバンド部71における筐体部4Lへの取付部分には、回転部3CL(図5及び図6)と同様の構成でなる回転部71CLが設けられている。
さらに筐体部4Lには、管状ダクト8Lに代えて筐体部4Lからリスナの外耳道入口102L近傍まで延長された管状ダクト78Lが設けられている。なお、管状ダクト78Lは、再生音における良好な低音を孔部78ALから放射するべく、その内径や音の経路長等が適切に計算されている。
このイヤースピーカ装置70(図18)は、リスナの頭部100に装着されることにより、筐体部4Lを当該リスナの頬よりも前方に位置させることができる。このときバンド部71は、回転部71CLの回転作用により電気音響変換部2Lを回転させ、管状ダクト78Lの後側を外耳道入口102Lに当接させることができる。
これによりイヤースピーカ装置70は、イヤースピーカ装置1と同様、リスナの頭部100に安定して装着される。またスピーカユニット7Lから放射された中高音は、当該リスナの頬等において反射されることによりその特性が変化するため、イヤースピーカ装置1の場合と比較して、一般的な据置型のスピーカから放射された音に一層近づけられることになる。これによりイヤースピーカ装置70は、一段と自然な定位感を与え得る再生音をリスナに聴取させることができる。
さらに図19に示すイヤースピーカ装置80は、イヤースピーカ装置1(図1〜図4)におけるバンド部3に代えて、左右の電気音響変換部2L及び2Rを接続するバンド部81が筐体部4Lに取り付けられている。バンド部81は、バンド部3(図1〜図4)における中央部3Aに代えて2本の連結バンド81A1及び81A2が設けられており、両者がアジャスト部81BLから前後へ広げられて取り付けられている。またバンド部81における筐体部4Lへの取付部分には、回転部3CL(図5及び図6)と同様の構成でなる回転部81CLが設けられている。
このためバンド部81は、回転部81CLの回転作用により電気音響変換部2Lを回転させ、管状ダクト8Lの後側を外耳道入口102Lに当接させることができる。このときイヤースピーカ装置80(図19)は、バンド部81の連結バンド81A1及び81A2がリスナの頭部100の前後に広げられることにより、バンド部3におけるスタビライザ3SL及び3SRと同様、当該バンド部81をリスナの頭部100に安定的に装着させることができ、アジャスト部81BLの捻れを防止し得るようになされている。
これによりイヤースピーカ装置80は、イヤースピーカ装置1と同様、リスナの頭部100に安定して装着され、自然な音像定位を与えながら充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
このように本発明では、イヤースピーカ装置1のバンド部3(図1〜図4)以外にも、イヤースピーカ装置20〜80(図13〜図19)のような種々の方式でなる装着部により、電気音響変換部2L及び2Rをリスナの頭部100に対して装着させるようにしても良い。
(1−3)第1の実施の形態における動作及び効果
以上の構成において、イヤースピーカ装置1は、リスナの頭部100に装着されることにより、電気音響変換部2Lの筐体部4Lに設けられたスピーカユニット7Lを当該リスナの外耳道入口102Lよりもやや前方に位置させると共に、当該筐体部4Lから後方に延長されバスレフダクトとして作用する管状ダクト8Lの先端部分を外耳道入口102Lの近傍に位置させた状態で、所定のアンプから供給される音声信号に基づいた再生音を出力する。
このときイヤースピーカ装置1の電気音響変換部2L(図7)では、スピーカユニット7Lから放射される中高音がリスナの鼓膜103Lに到達するまでの経路長EMよりも、管状ダクト8Lの孔部8ALから放射される低音が当該鼓膜103Lに到達するまでの経路長EL1を短くなるため、特性曲線SM(図9)に示したような中高音に対して、特性曲線SL1に示したように比較的音圧レベルが高い低音を当該鼓膜103Lに到達させる。
従ってイヤースピーカ装置1の電気音響変換部2Lは、スピーカユニット7Lから放射された中高音を当該リスナの頬や耳介101L等で反射させて鼓膜103Lに到達させることができるので、一般的なスピーカを介して再生音を聴取する場合と似た特性の再生音を当該リスナに聴取させることができ、音像が頭外に位置しているような自然な定位感を与えることができる。
さらにイヤースピーカ装置1の電気音響変換部2Lは、管状ダクト8Lがリスナの外耳道入口102L近傍まで延長されていることにより、特性曲線SG1(図11)及び特性曲線SG11(図12)に示したような、低音域まで比較的充分な音圧レベルでなる良好な再生音をリスナに聴取させることができる。
この場合、イヤースピーカ装置1の電気音響変換部2Lは、管状ダクト8Lがリスナの外耳道入口102L近傍まで延長されているため、一般的なバスレフ型の電気音響変換部2L(図8)において、管状ダクト18L及び19Lから出力される特性曲線SL2(図9)のような低音と比較して、特性曲線SL1(図9)のような音圧レベルが大きい低音をリスナの鼓膜103Lに到達させることができ、その結果スピーカユニット7Lの口径が比較的小さく外耳道入口102Lからやや離れていることにより不足しがちな低音を、十分な音圧レベルでリスナに聴取させることができる。
さらにイヤースピーカ装置1は、低音の再生音量を上げるのではなく、低音の放射口である管状ダクト8Lの孔部8ALを鼓膜103Lに近づけることによりリスナの鼓膜103L(図7)に充分な低音を到達させているため、例えば大口径のスピーカやサブウーファー等を用いて低音を再生するような場合と比較して、周囲に漏れる低音や振動をほぼ皆無にすることができる。
従って、例えばリスナが深夜にイヤースピーカ装置1を介して再生音を聴取する場合等に、近隣や周囲への迷惑を殆ど気にすることなく、充分な低音が含まれる良好な再生音を堪能することができる。
またイヤースピーカ装置1のバンド部3は、回転部3CLによって電気音響変換部2Lを回転させることにより、管状ダクト8Lの後側を内方へ押し込む。これによりイヤースピーカ装置1は、当該電気音響変換部2Lをパッド部5及び管状ダクト8Lの後側によってリスナの頭部100及び外耳道入口102Lに当接させることができるので、当該リスナの頭部100に安定して装着され得る。
さらに管状ダクト8Lは、リスナの外耳道入口102Lを塞ぐことがないため、再生音と共に、当該リスナの周囲で発生した周囲音を遮断することなく鼓膜103Lに到達させて聴取させることができる。
これによりイヤースピーカ装置1では、リスナが歩行するときやスポーツを行うときなど、リスナが周囲音を聴取する必要がある場合にも、良好な再生音に加えて確実に周囲音を聴取させることができる。
またイヤースピーカ装置1は、従来の密閉型ヘッドホンのように、リスナの耳介101L等を電気音響変換部2Lによって覆ってしまうことがないため、密閉型ヘッドホンを装着したリスナが感じるような閉塞感や蒸れといった不快感を与えることがない。さらにイヤースピーカ装置1では、密閉空間を形成しないため、密閉型ヘッドホンを使用した場合に生じ得る、外耳道における共振周波数の変化を生じることもなく、リスナに違和感を与えることもない。
そのうえイヤースピーカ装置1は、低音の放射口である管状ダクト8Lの孔部8ALを鼓膜103Lに近づけることによりリスナに十分な音量レベルの低音を聴取させ得るため、スピーカユニット7Lの口径を不必要に大きくする必要が無く、筐体部4Lの大きさを必要最小限に止めることができる。これによりイヤースピーカ装置1では、全体の大きさや重量を必要最小限に抑えることができるので、リスナがイヤースピーカ装置1を装着した際の大きさや重さによる煩わしさを極力抑えることができる。
以上の構成によれば、イヤースピーカ装置1は、リスナの頭部100に装着された際、電気音響変換部2Lのスピーカユニット7Lを当該リスナの外耳道入口102Lよりもやや前方に安定して位置させると共に、管状ダクト8Lの孔部8ALを外耳道入口102Lの近傍に位置させた状態で再生音を出力することにより、バスレフダクトとして作用する管状ダクト8Lの孔部8ALから放射する低音を十分な音圧レベルで鼓膜103に到達させることができるので、自然な音像定位を与えながら比較的低音域まで充分な音圧レベルでなる良好な再生音をリスナに安定的に聴取させることができる。
(1−4)第1の実施の形態に対する他の実施の形態
なお上述した第1の実施の形態においては、管状ダクト8Lが側面略U字状に形成され、孔部8ALを境に2本のバスレフダクトとして機能させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該管状ダクト8Lを1本や3本以上の管状ダクトによって構成するようにしても良い。
例えば図20に示すように、イヤースピーカ装置90の電気音響変換部92Lにおいては、筐体部4Lからバスレフダクトとして機能する1本の管状ダクト98Lが後方へ延長されるようにしても良く、さらに当該管状ダクト98Lの先端部にリスナの外耳道入口102Lを傷つけないための保護部99Lが取り付けられていても良い。この場合、保護部99Lは、音を通しやすいスポンジ状の部材等で構成されることにより、周囲音を遮断せずリスナに聴取させることができる。
また第1の実施の形態においては、金属等の固い材料で形成された管状ダクト8Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、可撓性を有する樹脂等の柔らかい材料で形成された管状ダクト8Lを用いるようにしても良い。この場合、当該管状ダクト8Lの材料の違いを考慮した上で内径や経路長が設計されることが望ましい。
さらに第1の実施の形態においては、管状ダクト8Lが筐体部4Lのバッフル板4ALを貫通するように設けられた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該管状ダクト8Lが当該筐体4Lにおける他の側面を貫通するよう設けられていても良い。
さらに第1の実施の形態においては、イヤースピーカ装置1がリスナの頭部100(図4)に装着された際、スピーカユニット7Lの放音面がほぼ後方向を向くようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばスピーカユニット7Lの放音面がやや内側を向くようにしても良く、要は当該スピーカユニット7Lの放音面がおおよそ外耳道入口102Lの方向に向き、放射する中高音が効率良く鼓膜103Lへ到達されれば良い。
さらに第1の実施の形態においては、イヤースピーカ装置1が左右の電気音響変換部2L及び2Rを有し、2チャンネルの再生音を出力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば左側の電気音響変換部2Lのみを有し1チャンネルの再生音を出力するようにしても良い。
さらに第1の実施の形態においては、筐体部4Lに中高音用のスピーカユニット7Lを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば中音用及び高音用といった2つのスピーカユニットを1つの筐体部4Lに設けて2ウェイスピーカとするなど、複数のスピーカユニットを筐体部4Lに設けるようにしても良い。
さらに第1の実施の形態においては、球体を垂直方向に4等分したような形状でなる筐体部4Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば立方体状や円柱状等の種々の形状であっても良く、要はバスレフ型スピーカのエンクロージャとして機能し得るようなほぼ密閉された空間を内部に有していれば良い。
さらに第1の実施の形態においては、管状ダクト8L(図7)の内端部8BLの端部にエッジが残された状態の筐体部4Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、管状ダクト8Lの内端部8BLの端部に対してR状の丸みが形成された筐体部4Lを用いるようにしても良い。この場合、筐体部4Lでは、スピーカユニット7Lの背面側から押し出される空気がエッジに当って風切り音を発生するようなことがなく、ノイズのない低音だけを管状ダクト8Lの孔部8ALから放射することができる。
さらに第1の実施の形態においては、筐体部4L及び4Rに対して管状ダクト8L及び8Rが一体に取り付けられているようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、取り付け及び取り外し可能な構成としても良い。
例えば、図7との対応部分に同一符号を付した図21に示すように、筐体部4L1では、当該筐体部4L1のバッフル板4ALに凹形状のダクト保持部4L2が形成されている。この筐体部4L1では、ダクト保持部4L2に管状ダクト8L1のダクト勘合部8L2を嵌め合わせることにより管状ダクト8L1を取り付け、またダクト保持部4L2とダクト勘合部8L2との勘合状態を解消することにより当該管状ダクト8L1を取り外すことが可能となる。
さらに第1の実施の形態においては、孔部8ALから内端部8BLまでのダクト長がそれぞれ同じ長さに設定された管状ダクト8Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、それぞれ異なる長さのダクト長に設定された管状ダクトを用いるようにしても良い。
例えば、図4との対応部分に同一符号を付した図22に示すように、筐体部4L3には、孔部8ALから内端部8BL1までの長さL1と、孔部8ALから内端部8BL2までの長さL2とが異なる管状ダクト8L3が設けられている。この筐体部4L3は、長さL1のダクト部分と、長さL2のダクト部分とで共振特性の位相ずれが生じる結果、孔部8ALから僅かに出力される中高域の周波数成分を相殺し、管状ダクト8L3の孔部8ALから中高音が打ち消された低音だけを放射することができる。
さらに上述した第1実施の形態においては、回転部3CLによってバンド部3に対して電気音響変換部2Lを回転させることにより、管状ダクト8Lの後側をリスナの外耳道入口102Lに当接させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば回転部3CLと異なる構成でなる回転部であっても良く、要は少なくとも管状ダクトをリスナの外耳道入口に当接させ得る構成を有していれば良い。
例えば図7との対応部分に同一符号を付して示す図23において、イヤースピーカ装置130は、電気音響変換部2Lと対応する電気音響変換部132Lが回転部3CL(図4)を介さずにバンド部3のアジャスト部3BLに直接取り付けられるようになされている(図示せず)。このためイヤースピーカ装置130では、筐体部4Lをバンド部3やリスナの頭部100に対して回転させることなく固定する。
この電気音響変換部132Lは、管状ダクト8Lと対応する管状ダクト138Lを有している。管状ダクト138Lは、可撓性及び密閉性を有する素材でなるダクト支持部139Lを介してバッフル板4ALに取り付けられている。
また管状ダクト138Lは、筐体部4Lの内部に取り付けられた板ばね134DLにより、ダクト支持部139Lを支点として内端部138BLを外方へ押し出すように、すなわち管状ダクト138Lの後側を内方へ押し込むように付勢されている。
このためイヤースピーカ装置130は、イヤースピーカ装置1(図7)と同様、パッド部5に加えて管状ダクト138Lの後側をリスナの外耳道入口102Lに当接させることができ、電気音響変換部132Lを当該リスナの頭部100に安定して装着させることができる。
さらに第1の実施の形態においては、バンド部3にスタビライザ3SL及び3SRを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該バンド部3がリスナの頭部100に安定して装着され得る範囲で種々の構成としても良く、或いは例えばバンド部3の前後方向の幅を広げることにより当該スタビライザ3SL及び3SRを省略する等しても良い。
さらに第1の実施の形態においては、筐体部としての筐体部4L及び4Rと、スピーカユニットとしてのスピーカユニット7L及び7Rと、管状ダクトとしての管状ダクト8L及び8Rと、装着部としてのバンド部3と、回転部としての回転部3CL及び3CRとによってイヤースピーカ装置としてのイヤースピーカ装置1を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体部と、スピーカユニットと、管状ダクトと、装着部と、押当部とによってイヤースピーカ装置を構成するようにしても良い。
(2)第2の実施の形態
(2−1)イヤースピーカ装置の構成
図1との対応部分に同一符号を付した図24及び図25において、200は全体として第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置を示し、ポータブルCDプレーヤやDMPの再生処理等により生成されたオーディオ信号を再生音に変換し、これをリスナに聴取させるようになされている。
このイヤースピーカ装置200においても、一般的な箱形のスピーカ装置とは異なり、通常のヘッドホン装置と同様にリスナの頭部に装着されることを前提としており、大きく分けてオーディオ信号を再生音に変換する電気音響変換部202L及び202Rと、当該電気音響変換部202L及び202Rをリスナの頭部に装着して固定させるためのバンド部3とにより構成されている。
電気音響変換部202L及び202Rは、全体がほぼ球形状でなる筐体部204L及び204Rを中心に構成されており、その筐体部204L及び204Rには、それぞれ内部にスピーカユニット207L及び207Rが設けられている。
筐体部204L(図25)は、スピーカユニット207Lを境に、前方向側に位置する半球状部204LAと、後方向側に位置するカバー部204LBとに分けられており、半球状部204LAのバッフル板204ALには、オーディオ信号を再生音に変換するスピーカユニット207Lが取り付けられている。
このスピーカユニット207Lは、ポータブルCDプレーヤやDMP等から接続ケーブル6を介して供給されるオーディオ信号に応じて、振動板を振動させることにより主に中高音を放音するようになされている。
カバー部204LB(図25)は、内部に空間を有する半球形状でなり、バッフル板204ALの前方空間を覆い隠すと共に、その表面のほぼ中央に対して、金属製でなり、所定太さを有する中空の部材が側面略U字状に曲げられた管状ダクト208Lが取り付けられている。
この管状ダクト208L及び208R(図24)は、外端部がそれぞれ左右内側方向に曲げられており、さらに外端部のほぼ中央にそれぞれ孔部208AL及び208ARが形成されている。
バンド部3は、第1の実施の形態と同様、中央部3Aを中心に一般的な人間の頭部の形状に合わせて上に凸の略アーチ型に形成されていると共に、当該中央部3Aに対して伸縮自在に摺動し得るアジャスト部3BL及び3BRにより当該バンド部3全体の長さを調整し得るようになされている。
またバンド部3は、一般的な人間の頭部の形状よりも小さい径のアーチ型に形成されると共に弾性力を有しており、リスナに装着される際に筐体部204L及び204Rを左右に広げながら装着されると、装着後に当該弾性力の作用によって元の形状に戻ろうとするため、筐体部204L及び204Rを当該リスナの頭部に対して当接させた状態で保持させるようになされている。
さらにバンド部3には、第1の実施の形態と同様、アジャスト部3BL及び3BRの下部における、当該バンド部3と筐体部204L及び204Rとの接続部分に回転部3CL及び3CRが設けられている。因みに回転部3CLは、第1の実施の形態と同様、図5及び図6に示したような内部構造を有している。
またバンド部3のアジャスト部3BL及び3BRには、当該アジャスト部3BL及びBRとそれぞれ交差するように、略長楕円板状のスタビライザ3SL及び3SRがそれぞれ取り付けられている。
なお、イヤースピーカ装置200は、ほぼ左右対称に構成されているため、以下では主に左側の電気音響変換部202Lを例に説明する。
実際上、イヤースピーカ装置200(図25)は、バンド部3における長さが調整された上でリスナの頭部100に装着されることにより、アジャスト部3BLの下端側に取り付けられた電気音響変換部202Lをリスナの頭部における耳介101Lよりもやや前方に位置させるようになされている。
これによりイヤースピーカ装置200では、バンド部3を介してリスナに対し正常に装着された場合、筐体部204Lのスピーカユニット207Lが耳介101L及び外耳道入口102Lのやや前方に位置し、カバー部204LBの管状ダクト208Lの孔部208ALが外耳道入口102Lの近傍に位置するようになされている。
またイヤースピーカ装置200は、リスナの頭部100に装着される際、第1の実施の形態と同様に、管状ダクト208Lの後側が自然状態よりも外方へ広げられた状態となる。このため回転部3CLは、自然状態に戻ろうとする力、すなわち管状ダクト208Lの後側を内側へ押し込むような回転力を作用させることになる。
このため電気音響変換部202Lは、回転部3CLによりリスナのこめかみ付近に当接すると共に、管状ダクト208Lの後側により当該リスナの外耳道入口102Lに当接した状態となる。
またスタビライザ3SLは、図25に示したように、前後方向に渡ってリスナの頭部100に当接することにより、バンド部3を当該頭部100に安定的に装着させることができ、回転部3CLの回転力によってバンド部3が不必要に捻れてしまうことを未然に防止する。
この結果、イヤースピーカ装置200は、リスナの頭部100に正しく装着された際、バンド部3の中央部3A、アジャスト部3BL及び回転部3CLに加えて、スタビライザ3SLによって当該頭部100やこめかみ等にそれぞれ当接すると共に、管状ダクト208Lの後側によって外耳道入口102Lに当接することになり、当該リスナの頭部100に対して極めて安定的に装着されることになる。
従ってイヤースピーカ装置200は、スピーカユニット207Lから放射された主に中高音をカバー部204LB及び管状ダクト208Lを介して、直接リスナの外耳道内部へ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合よりも中高音の音漏れがない状態で自然な音像定位を与え得るようになされている。
因みに管状ダクト208Lは、その先端部が側面略U字状に形成されているため、リスナの外耳道内部へ入り込まないようになされている。これによりイヤースピーカ装置200では、当該リスナが装着時等に誤って管状ダクト208Lの先端部により当該外耳道内部を傷つけてしまうことを未然に防止し得るようになされている。
ここで、図25におけるQ7−Q8断面を図26に示すように、電気音響変換部202Lの筐体部204Lはスピーカユニット207Lの前面空間が管状ダクト208Lの孔部208ALを除き密閉されており、スピーカユニット207Lに対してカバー部204LB及び当該管状ダクト208Lにより共振回路を形成するようになされている。
また管状ダクト208Lは、筐体部204Lの内部から筐体部204Lのカバー部204LBを介してリスナの外耳道入口102Lの近傍に到達している。実際上、電気音響変換部202Lは、スピーカユニット207Lの前面から放射される主に中高音を、カバー部204LB及び管状ダクト208Lを介して集め、当該管状ダクト208Lの孔部208ALからリスナの鼓膜103へダイレクトに到達させることにより、音漏れの少ない状態で充分な音声レベルの中高音をリスナに聴取させ得るようになされている。
なお管状ダクト208Lは、側面略U字状に形成されたことにより、1本の管状ダクトとした場合に比べてその有効長を短く設定し得ると共に、デザイン性及び安全性を大きく向上させ得るようになされている。
(2−2)他のイヤースピーカ装置の構成例
ところで、第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置200は、図24〜図26に示したように、装着部としてのバンド部3により電気音響変換部202L及び202Rをリスナの頭部100に装着するようになされているが、このバンド部3に代えて他の種々の装着部を用いることにより電気音響変換部202L及び202Rをリスナの頭部100に装着するようにしても良い。
なお、以下では、上述したイヤースピーカ装置200の場合と同様、主に左側の電気音響変換部202Lを例に説明するが、右側の電気音響変換部202Rについても、当該左側の電気音響変換部202Lと左右対称に構成されているものとする。
例えば図13との対応部分に同一符号を付した図27に示すように、リスナの耳介101Lに引っ掛けるためのイヤークリップ21Lが、第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置200(図24〜図26)のバンド部3に代えて、電気音響変換部202Lの筐体部204Lに取り付けられた所謂イヤークリップ型のイヤースピーカ装置220が考えられる。イヤークリップ21Lにおける筐体部204Lへの取付部分には回転部21CLが設けられている。
この場合のイヤースピーカ装置220(図27)においても、回転部21CLの回転作用により電気音響変換部202Lを回転させ管状ダクト208Lの後側を外耳道入口102Lに当接させて安定装着させると共に、スピーカユニット207Lから放射された主に中高音を、カバー部204LB及び管状ダクト208Lを介して直接リスナの外耳道内部へ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合よりも中高音の音漏れがない状態で自然な音像定位を与え得るようになされている。
また図14との対応部分に同一符号を付した図28に示すように、第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置200(図24〜図26)の左右の電気音響変換部202L及び202Rを接続すると共にリスナの耳介101Lに引っ掛けるためのバンド部31が、当該イヤースピーカ装置200のバンド部3に代えて電気音響変換部202Lの筐体部204Lに取り付けられた所謂アンダーチン型のイヤースピーカ装置230が考えられる。またバンド部31における筐体部204Lへの取付部分には、回転部31CLが設けられている。
この場合のイヤースピーカ装置230(図28)においても、回転部31CLの回転作用により電気音響変換部202Lを回転させ管状ダクト208Lの後側を外耳道入口102Lに当接させて安定装着させると共に、スピーカユニット207Lから放射された主に中高音をカバー部204LB及び管状ダクト208Lを介して、直接リスナの外耳道内部へ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合よりも中高音の音漏れがない状態で自然な音像定位を与え得るようになされている。
さらに図15との対応部分に同一符号を付した図29に示すように、第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置200(図24〜図26)の左右の電気音響変換部202L及び202Rを接続すると共にリスナの肩部から支持するショルダーアーム41が、当該イヤースピーカ装置200のバンド部3に代えて電気音響変換部202Lの筐体部204Lに取り付けられた所謂ショルダーホールド型のイヤースピーカ装置240が考えられる。またショルダーアーム41における筐体部204Lへの取付部分には、回転部41CLが設けられている。
この場合のイヤースピーカ装置240(図29)においても、回転部41CLの回転作用により電気音響変換部202Lを回転させ管状ダクト208Lの後側を外耳道入口102Lに当接させて安定装着させると共に、スピーカユニット207Lから放射された主に中高音をカバー部204LB及び管状ダクト208Lを介して、直接リスナの外耳道内部へ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合よりも中高音の音漏れがない状態で自然な音像定位を与え得るようになされている。
さらに図16との対応部分に同一符号を付した図30に示すように、第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置200(図24〜図26)の左右の電気音響変換部202L及び202Rを接続すると共にリスナの耳介101Lに引っ掛けるためのバンド部51が、当該イヤースピーカ装置200のバンド部3に換えて筐体部204Lに取り付けられた所謂ネックバンド型のイヤースピーカ装置250が考えられる。またバンド部51における筐体部204Lへの取付部分には、回転部51CLが設けられている。
この場合のイヤースピーカ装置250(図30)においても、回転部51CLの回転作用により電気音響変換部202Lを回転させ管状ダクト208Lの後側を外耳道入口102Lに当接させて安定装着させると共に、スピーカユニット207Lから放射された主に中高音をカバー部204LB及び管状ダクト208Lを介して、直接リスナの外耳道内部へ到達させることができるため、一般的な据置型スピーカを介して聴取した場合よりも中高音の音漏れがない状態で自然な音像定位を与え得るようになされている。
さらに図17との対応部分に同一符号を付した図31に示すように、第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置200(図24〜図26)の電気音響変換部202Lに加えて、当該電気音響変換部202Lと同様の構成でなる後方用電気音響変換部262Lを有しており、イヤースピーカ装置200(図24〜図26)におけるバンド部3に代わるバンド部61により、電気音響変換部202Lを耳介101Lの前方に位置させると共に、後方用電気音響変換部262Lを当該耳介101Lの後方に位置させるようになされている。
因みに、後方用電気音響変換部262Lには、4チャンネルや5.1チャンネル等のマルチチャンネル音源におけるリアチャンネル用の音声信号が供給されるようになされている。またバンド部61における筐体部204Lへの取付部分には、回転部61CLが設けられている。
このイヤースピーカ装置260(図31)は、リスナの頭部100に装着されることにより、電気音響変換部202L及び後方電気音響変換部262Lを当該リスナの頭部100に装着することができ、このとき回転部61CLの回転作用により電気音響変換部202Lを回転させ管状ダクト208Lの後側を外耳道入口102Lに当接させて安定装着させることができる。
これによりイヤースピーカ装置260は、電気音響変換部202L及び後方用電気音響変換部262Lにより耳介101Lを挟み込んだ状態で自然な音像定位を与えながら、サラウンド音でなり充分な低音を含む良好な再生音を当該リスナに聴取させ得るようになされている。
またこの場合、イヤースピーカ装置260(図31)では、バンド部61に対して加振器65を取り付け、例えば5.1チャンネル音源における重低音成分に応じた振動をリスナの頭部100に加えるようにしても良い。
なおイヤースピーカ装置260(図31)は、電気音響変換部202Lから管状ダクト208Lをリスナの外耳道入口102L近傍まで延長する以外にも、後方用電気音響変換部262Lから管状ダクトをリスナの外耳道入口102L近傍まで延長するようにしたり、或いは電気音響変換部202L及び後方用電気音響変換部262Lの両方から管状ダクトをリスナの外耳道入口102L近傍まで延長するようにしても良い。この場合、バンド部61における後方用電気音響変換部262Lの取付部分に回転部61CLと同様の回転部を設け、管状ダクトをリスナの外耳道入口102Lに当接させるようにしても良い。
さらに図18との対応部分に同一符号を付した図32に示すように、第2の実施の形態におけるイヤースピーカ装置200(図24〜図26)の電気音響変換部202Lをリスナの頬よりも前側に位置させるバンド部71が筐体部204Lに取り付けられたイヤースピーカ装置270が考えられる。またバンド部71における筐体部4Lへの取付部分には、回転部71CLが設けられている。
さらに筐体部204Lには、管状ダクト208Lに代えて筐体部204Lからリスナの外耳道入口102L近傍まで延長された管状ダクト271Lが設けられている。なお、管状ダクト271Lは、再生音における良好な低音を孔部271ALから放射するべく、その内径や音の経路長等が適切に計算されている。
このイヤースピーカ装置270(図32)は、リスナの頭部100に装着された際、回転部71CLの回転作用により電気音響変換部202Lを回転させ管状ダクト208Lの後側を外耳道入口102Lに当接させて安定装着させると共に、筐体部204Lを当該リスナの頬よりも前方に位置させることができる。この場合、スピーカユニット207Lから放射された中高音は、当該リスナの頬等において反射されることによりその特性が変化するため、イヤースピーカ装置200の場合と比較して、一般的な据置型のスピーカから放射された音に一層近づけられることになる。これによりイヤースピーカ装置270は、一段と自然な定位感を与え得る再生音をリスナに聴取させることができる。
このように本発明では、イヤースピーカ装置200のバンド部3(図24〜図26)以外にも、イヤースピーカ装置220〜280(図27〜図32)のような種々の方式でなる装着部により、電気音響変換部202L及び202Rをリスナの頭部100に対して装着させるようにしても良い。
(2−3)第2の実施の形態における動作及び効果
以上の構成において、イヤースピーカ装置200は、リスナの頭部100に装着されることにより、電気音響変換部202Lの筐体部204Lに設けられたスピーカユニット207Lから主に放射される中高音をカバー部204LBから管状ダクト208Lを介して集め、外耳道入口102Lの近傍に位置した管状ダクト208Lの孔部208ALから当該中高音を出力させる。
従ってイヤースピーカ装置200の電気音響変換部202Lは、スピーカユニット207Lから放射された中高音を、管状ダクト208Lの孔部208ALからのみ鼓膜103Lに直接到達させることができるので、一般的なスピーカを介してリスナに聴取させる場合と似た特性の再生音を音漏れなしに聴取させ得ると共に、音像が頭外に位置しているような自然な定位感を与えることもできる。
またイヤースピーカ装置200のバンド部3は、回転部3CLによって電気音響変換部202Lを回転させることにより、管状ダクト208Lの後側を内方へ押し込む。これによりイヤースピーカ装置1は、当該電気音響変換部202Lを当該回転部3CL及び管状ダクト208Lの後側によってリスナの頭部100及び外耳道入口102Lに当接させることができるので、当該リスナの頭部100に安定して装着され得る。
またイヤースピーカ装置200は、管状ダクト208Lの孔部208ALを外耳道入口102Lの近傍に位置させるだけであって、密閉型のヘッドホンのように外耳道入口102Lを塞いでしまうことがないため、管状ダクト208Lの孔部208ALから出力される再生音だけでなく、周囲音についても遮断されることなく鼓膜103Lに届かせることができ、かくして管状ダクト208Lを介して再生音を聴取させながら外部の周囲音についても聴取させることができる。
これによりイヤースピーカ装置200では、リスナが歩行するときやスポーツを行うときなど、リスナが周囲音について聴取する必要がある場合にも、管状ダクト208Lの孔部208ALから出力される再生音に加えて周囲音についても確実に聴取させることができる。
またイヤースピーカ装置200は、リスナの耳介101L等を電気音響変換部202Lによって覆ってしまうことがないため、一般的なヘッドホンを装着したリスナが感じるような閉塞感や蒸れといった不快感を与えることがない。さらにイヤースピーカ装置200では、密閉空間を形成しないため、密閉型ヘッドホンを使用した場合に生じ得る、外耳道における共振周波数の変化を生じることもなくリスナに違和感を与えることもない。
そのうえイヤースピーカ装置200は、再生音の放射口である管状ダクト208Lの孔部208ALを鼓膜103Lに近づけることによりリスナに十分な音量レベルの中高音を聴取させ得るため、スピーカユニット207Lの口径を不必要に大きくする必要が無く、筐体部204Lの大きさを必要最小限に止めることができる。
これによりイヤースピーカ装置200では、全体の大きさや重量を必要最小限に抑えることができるので、リスナがイヤースピーカ装置200を装着した際の大きさや重さによる煩わしさを極力抑えることができる。
以上の構成によれば、イヤースピーカ装置200は、リスナの頭部100に装着された際、電気音響変換部202Lのスピーカユニット207Lを当該リスナの外耳道入口102Lよりもやや前方に安定して位置させると共に、スピーカユニット207Lから主に放射される中高音をカバー部204LBから管状ダクト208Lを介して外部に漏れることなく集め、外耳道入口102Lの近傍に位置した管状ダクト208Lの孔部208ALから音声信号に基づいた再生音を出力することにより、管状ダクト208Lの孔部208ALから放射する中高音を十分な音圧レベルで鼓膜103に到達させることができるので、自然な音像定位を与えながら充分な音圧レベルでなる良好な再生音をリスナに安定的に聴取させることができる。
(2−4)第2の実施の形態に対する他の実施の形態
なお上述した第2実施の形態においては、回転部3CLによってバンド部3に対して電気音響変換部202Lを回転させることにより、管状ダクト208Lの後側をリスナの外耳道入口102Lに当接させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば筐体部204Lに対して管状ダクトのみを回転させる等しても良い。
例えば図26との対応部分に同一符号を付して示す図33において、イヤースピーカ装置280は、電気音響変換部202Lと対応する電気音響変換部282Lが回転部3CL(図4)を介さずにバンド部3のアジャスト部3BLに直接取り付けられるようになされている(図示せず)。
この電気音響変換部282Lは、管状ダクト208Lと対応する管状ダクト288Lを有している。管状ダクト288Lは、可撓性及び密閉性を有する素材でなるダクト支持部289Lを介して筐体部204Lの半球状部204LAに取り付けられている。
また管状ダクト288Lは、筐体部204Lの内部に取り付けられた板ばね284Lにより、ダクト支持部289Lを支点として内端部288BLを外方へ押し出すように、すなわち管状ダクト288Lの後側を内方へ押し込むように付勢されている。
このためイヤースピーカ装置280は、イヤースピーカ装置200(図24〜図26)と同様、アジャスト部3BLの下端近傍に加えて管状ダクト288Lの後側をリスナの外耳道入口102Lに当接させることができ、電気音響変換部282Lを当該リスナの頭部100に安定して装着させることができる。
さらに第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様、バンド部3にスタビライザ3SL及び3SRを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該バンド部3がリスナの頭部100に安定して装着され得る範囲で種々の構成としても良く、或いは例えばバンド部3の前後方向の幅を広げることにより当該スタビライザ3SL及び3SRを省略する等しても良い。
また上述した第2の実施の形態においては、管状ダクト208Lが側面略U字状に形成され、孔部208ALを境に2本の管状ダクトによって構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該管状ダクト208Lを1本や3本以上の管状ダクトによって構成するようにしても良い。
例えば図34に示すように、イヤースピーカ装置290の電気音響変換部292Lにおいては、筐体部204Lにおけるカバー部204LBの表面から1本の管状ダクト298Lが後方へ延長されるようにしても良く、さらに当該管状ダクト298Lの後側先端部にリスナの外耳道入口102Lを傷つけないための保護部299Lが取り付けられていても良い。この場合、保護部299Lは、音を通しやすいスポンジ状の部材等で構成されることにより、周囲音を遮断させることなくリスナに聴取させることができる。
また第2の実施の形態においては、金属等の固い材料で形成された管状ダクト208Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、可撓性を有する樹脂等の柔らかい材料で形成された管状ダクト208Lを用いるようにしても良い。この場合、当該管状ダクト208Lの材料の違いを考慮した上で内径や経路長が設計されることが望ましい。
さらに第2の実施の形態においては、イヤースピーカ装置200がリスナの頭部100(図25)に装着された際、スピーカユニット207Lの放音面がほぼ後方向を向くようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばスピーカユニット207Lの放音面がやや内側を向くようにしても良く、要は当該スピーカユニット207Lの放音面がおおよそ外耳道入口102Lの方向に向き、放射する中高音が効率良く鼓膜103Lへ到達されれば良い。
さらに第2の実施の形態においては、イヤースピーカ装置200が左右の電気音響変換部202L及び202Rを有し、2チャンネルの再生音を出力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば左側の電気音響変換部202Lのみを有し1チャンネルの再生音を出力するようにしても良い。
さらに第2の実施の形態においては、筐体部204Lに中高音用のスピーカユニット207Lを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば中音用及び高音用といった2つのスピーカユニットを1つの筐体部204Lに設けて2ウェイスピーカとするなど、複数のスピーカユニットを筐体部204Lに設けるようにしても良い。
さらに第2の実施の形態においては、半球形状のカバー部204LBを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば四角錐や三角錐等の形状であっても良く、要はスピーカユニット207Lから出力された中高音を集められ、かつ外部に漏れない構造であれば良い。
さらに第2の実施の形態においては、スピーカユニット207Lの後方を閉塞した構造の半球状部204LAが設けられた筐体部204Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図35に示すように、スピーカユニット207Lの後方に貫通孔305〜308が形成されると共に、その貫通孔305〜308を内側から塞ぐようなスポンジ等でなる音響抵抗体309が取り付けられた半球状部304LAを有する筐体部304Lを用いるようにしても良い。
この場合の筐体部304L(図35)では、スピーカユニット207Lの後方側が貫通孔305〜308によって開放されたことによって当該スピーカユニット207Lの振動板がオーディオ信号に対して追従し易くなると共に、貫通孔305〜308が形成されたことによる音質の低下を音響抵抗体309によって防ぐことができるので、高音質な中高音を管状ダクト208Lの孔部208ALから放射することができる。
因みに、筐体部304L(図35)では、音響抵抗体309が必ずしもなければならない訳ではなく、必要に応じて音響抵抗体309を取り付け、またその長さ及び厚さを変更したものを取り付けることにより音質を調整することが可能である。
さらに第2の実施の形態においては、スピーカユニット207Lの後方を閉塞した構造の半球状部204LAが設けられた筐体部204Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図36に示すように、スピーカユニット207Lの前方に貫通孔405〜408が形成されると共に、その貫通孔405〜408を内側から塞ぐようなスポンジ等でなる音響抵抗体409及び410が取り付けられたカバー部404LBを有する筐体部404Lを用いるようにしても良い。
この場合の筐体部404L(図36)では、スピーカユニット207Lの前方側が貫通孔405〜408によって開放されたことによって当該スピーカユニット207Lの振動板がオーディオ信号に対して追従し易くなると共に、貫通孔405〜408が形成されたことによる音質の低下を音響抵抗体409及び410によって防ぐことができるので、高音質な中高音を管状ダクト208Lの孔部208ALから放射することができる。
因みに、筐体部404L(図36)においても、音響抵抗体409及び410が必ずしもなければならない訳ではなく、必要に応じて音響抵抗体409及び410を取り付け、またその長さ及び厚さを変更したものを取り付けることにより音質を調整することが可能である。
さらに第2の実施の形態においては、カバー部204LBの表面に管状ダクト208Lが設けられた筐体部204Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図34に示すように半球状部504LAの表面に管状ダクト508Lが一体に設けられた筐体部504Lを用いるようにしても良い。
この場合、筐体部504L(図37)は所謂ケルトン型のスピーカ装置と同様の構造を有することになり、スピーカユニット207Lの前方の空間に中高音を閉じ込める一方、スピーカユニット207Lの後方から所定の周波数帯域の低音だけを、管状ダクト508Lの孔部508ALを介して放射させることができる。
因みに、筐体部504L(図37)の構造としては、これに限るものではなく、スピーカユニット207Lの後方を半球状部によって閉塞し、カバー部204LBの表面の何れかに管状ダクトを設けることによりケルトン型とすることも考えられる。
さらに第2の実施の形態においては、カバー部204LBの表面に管状ダクト208Lが一体化した状態で形成された筐体部204Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図38に示すようにカバー部604LBに形成された勘合部604LBSと、管状ダクト608Lの一方に形成された保持部608LSとを相互に勘合することにより、当該管状ダクト608Lがカバー部604LBに対して着脱自在に設けられた構成の筐体部604Lを用いるようにしても良い。
これにより筐体部604L(図38)では、リスナにとって必要なときにのみ管状ダクト608Lが取り付けられた状態で使用され、リスナにとって不必要なときには管状ダクト608Lが取り外された状態で使用されるようになるため、リスナの使い勝手を大幅に向上させることができる。
さらに第2の実施の形態においては、カバー部204LBの内側であって、管状ダクト208Lの付け根部分にエッジが残った状態の筐体部204L(図26)を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図39に示すようにカバー部704LBの内側であって、管状ダクト708Lの付け根部分にR状のラウンド部711が形成された筐体部704Lを用いるようにしても良い。
この筐体部704Lでは、スピーカユニット207Lの前面側から押し出される空気がエッジに当って風切り音を発生するようなことがなく、高音質な中高音だけを管状ダクト708Lの孔部708ALから放射することができる。
さらに第2の実施の形態においては、カバー部204LBの表面に管状ダクト208Lが一体化した状態で形成された筐体部204Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、カバー部204LBと管状ダクト208Lとを区別することなく、スピーカユニット207Lの前面側を包み込むような形状で先端に行くに連れて細い管状に形成された管状ダクトがバッフル板204ALに取り付けられた構造の筐体部を用いるようにしても良い。
さらに第2の実施の形態においては、孔部208ALを中心としたカバー部204LBの表面までのダクト長がそれぞれ同じ長さに設定された管状ダクト208Lを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、それぞれ異なる長さのダクト長に設定された管状ダクトを用いるようにしても良い。
例えば、図22との対応部分に同一符号を付した図40に示すように、孔部808ALから内端部808BL1までの長さL3と、孔部808ALから内端部808BL2までの長さL4とが異なる管状ダクト808Lが設けられた筐体部804Lでは、長さL3のダクト部分と、長さL4のダクト部分とでは互いに共振特性の位相ずれが生じ、その結果、孔部808ALから僅かに出力される中高域の周波数成分を相殺し、管状ダクト208L2の孔部808ALから中高音が打ち消された低音だけを放射し得るようになされている。
さらに第2の実施の形態においては、筐体部としての筐体部204L及び204Rと、スピーカユニットとしてのスピーカユニット207L及び207Rと、管状ダクトとしての管状ダクト208L及び208Rと、装着部としてのバンド部3と、回転部としての回転部3CL及び3CRとによってイヤースピーカ装置としてのイヤースピーカ装置1を構成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体部と、スピーカユニットと、管状ダクトと、装着部と、押当部とによってイヤースピーカ装置を構成するようにしても良い。
1、20、30、40、50、60、70、80、90、200、220、230、240、250、260、270、280、290……イヤースピーカ装置、2L、2R、72L、92L、202L、202R……電気音響変換部、3、31、51、61、71、81……バンド部、3CL、3CR、21CL、31CL、41CL、51CL、61CL、71CL、81CL……回転部、4L、4L1、4L3、4R、204L、204R、304L、404L、504L、604L、704L、804L……筐体部、7L、7R、207L、207R……スピーカユニット、8L、8R、208L、208R、261L、281L、298L、308L、608L、708L、808L……管状ダクト、8AL、8AR、208AL、208AR……孔部、100……頭部、101L……耳介、102L……外耳道入口、103L……鼓膜。