JP4825364B2 - グリース阻集器用油吸着シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
排水中に含まれる油脂類を分離する装置であるグリース阻集器に捕集された油脂類を吸着する油吸着シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
グリース阻集器又はグリーストラップ(以下阻集器と略す)は、厨房や調理場からの排水中に含まれる油脂(グリース)分を自然浮上の原理で分離させて除去し、油脂分が排水中に流入して管を詰まらせるのを防ぐ設備である。この設備は昭和50年建設省告示第1597号(昭和57年に改訂)によって、汚水が油脂、ガソリン、土砂その他排水の配管設備の機能を著しく妨げる場合には、設置が義務づけされている。
【0003】
阻集器中に浮上・分離した油脂分を取り除かずに放置すると、阻集器からオーバーフローして配管の詰まりの原因になったり、加熱調理等により酸化した油脂分が悪臭の原因になることが問題になっている。
油脂分の除去は、従業員が平均的には週1回、多いところでは毎日柄杓や容器ですくって取り除くことが一般的に行われている。
一方水面に浮かんだ油を簡単に除去する方法として、合成繊維又は天然繊維製の不織布シート(油吸着シート)で油を吸着させて除去する方法が、海難事故で流出した原油や工場等で使用しているマシンオイル等を除去する方法として知られている。特に海難事故用には昭和59年運輸省船舶局長通達舶査52号に定める性能試験基準に合格したものが使われている。
【0004】
油吸着シートの1つとして、ポリプロピレン系樹脂製不織布(B)の両面にポリプロピレン系樹脂製綿(A)がA/B/Aの3層構造に積層された油吸着シート(以下、従来の油吸着シートと呼ぶ)が知られている。
そこで、この従来の油吸着シートで阻集器中の油脂分を吸着・除去する方法を試みたところ、今まで行われてきた柄杓や容器による除去に比べると作業性に優れ作業時間が大幅に短縮されることが分かった。
柄杓や容器による除去作業では、水面の上に浮いている酸化して不透明な油脂分のみをすくいとる必要があり、作業者はかがんだ姿勢で、水を極力すくわないよう注意しながら油脂分のみをすくわなければならず手間が掛かっていた。また油脂分は悪臭を放っているので大変いやな作業のひとつであった。
【0005】
これに対して油吸着シートを用いた場合には、油脂分の上に油吸着シートを浮かべておけば水は吸わずに油脂分のみを選択的に吸着し、十分に油脂分を吸着させた油吸着シートは棒の先端に釘を打ち付けた様な道具で引っかけて簡単に除去することが出来た。
しかし上記従来の油吸着シートは重油やマシンオイルを有効に吸着させる目的で設計されており、阻集器に捕集された油脂分を吸着させる用途には不十分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、従来の油吸着シートが有する油脂分の廃棄作業性は維持した上で油吸着性に優れるグリース阻集器用油吸着シートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のグリース阻集器用油吸着シートは、少なくとも1層のポリプロピレン系樹脂製綿層(A)と少なくとも1層のポリプロピレン系樹脂製不織布層(B)が積層された油吸着シートにおいて、Bの目付が15〜40g/m2 且つ積層された油吸着シート全体の厚み(t:mm)と油吸着シート全体の目付(M:g/m2 )との比(M/t)が77〜90であることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
先ず、本発明のグリース阻集器用油吸着シートが従来の海難事故で流出した油やマシンオイル等を吸着させる為の油吸着シートに比べ優れることを表1を用いて説明する。
表1には、後述する方法で作成された本発明の一例である油吸着シート(実施例1、Run.No.1)の性能を、市販されている油吸着シート(Run.No.2〜Run.No.4)と比較して示されている。性能評価の項は、後述する方法で測定された飽和吸油量、吸水量、飽和吸油量に対する初期(具体的には1分間)の吸油量の割合で示した吸油速度、及び実用評価として阻集器中に捕集された油脂分を吸着させた時の吸油性能、廃棄作業性である。
【0009】
表1から、本発明の油吸着シートは4.1kg/m2 の油を吸着することが出来ることが分かる。また吸油速度も97%と高い値であることが分かる。
また実際にグリース阻集器に捕集された酸化して褐色に変色した油脂分を吸着させたところ、みるみるシートが吸着した油脂分によってシート全体がほぼ均一に変色していき、阻集器中の油脂分を殆ど吸着することが出来た。釘で引っかけて取り除く際にも破れずに簡単に取り除くことが出来た。
【0010】
これに対し、本発明の一例である油吸着シート(Run.No.1)と同様にポリプロピレン系樹脂製綿(A)とポリプロピレン系樹脂製不織布(B)とがA/B/Aの3層に積層されている従来の油吸着シート(Run.No.2)は、飽和吸着量が3.8kg/m2 と本発明の油吸着シートよりも若干少ない程度であるが吸油速度は84%であり、本発明のほうが優れていた。
実際にグリース阻集器に捕集された油脂分を吸収させた場合には、サラダ油で評価した場合よりも更に吸油速度が遅かった。
【0011】
次に、厚みが2.0mm、目付が200g/m2 である市販の特殊PP繊維不織布油吸着シート(Run.No.3)の飽和吸着量は2.4kg/m2で本発明の油吸着シートのほうが優れていた。
また厚みが9.0mm、目付が250g/m2 の天然繊維のウエブを形成した市販の油吸着シート(Run.No.4)は、単位面積当たりの飽和吸油量は5.3kg/m2 と本発明の油吸着シートよりも優れていたが、単位体積当りの飽和吸油量が本発明の油吸着シートの約1/3程度であり、同量の油脂分を吸着させる為に必要な油吸着シートを保管する場合には3倍のスペースが必要となり、狭い厨房や調理場に保管するには問題があることが分かる。またこの油吸着シートは取扱中に綿が舞ったり、吸油後シートを引き上げようとすると破れる恐れもあり、グリース阻集器用油吸着シートとしては性能が十分ではなかった。
【0012】
以上のことから、本発明のグリース阻集器用油吸着シートが従来の海難事故で流出した油やマシンオイル等を吸着させる為の油吸着シートに比べ優れており、単に海難事故で流出した油やマシンオイル等を吸着させる為の油吸着シートを代用しうるレベル以上の性能をもった油吸着シートであることが分かる。
【0013】
次に、表2を用いて本発明の油吸着シートのポリプロピレン系樹脂製不織布層(B)の目付が15〜40g/m2 である必要性について説明する。
先ず、Bの目付が15g/m2 の後述する実施例2、Run.No.5の油吸着シートと同13g/m2 の比較例2、Run.No.7の油吸着シートとを比較すると、Run.No.5の油吸着シートは廃棄作業が容易に行えたのに対し、Run.No.7の油吸着シートは釘穴から破れて、手でつまみ上げなければならなかった。
以上のことから、ポリプロピレン系樹脂製不織布層(B)の目付が15g/m2 以上であることが従来の油吸着シートの強度、即ち廃棄作業性を維持する上で必要なことが分かる。
【0014】
また、 Bの目付が40g/m2 の実施例2、Run.No.6の油吸着シートと同42g/m2 の比較例2、Run.No.8の油吸着シートとを比較すると、飽和吸油量に差が見られなかったが、吸油速度が前者は90%であるのに対して69%であり、また吸油性能も本願発明のほうが優れていた。
以上のことからBの目付は油吸着シートの吸油速度の点から40g/m2 以下である必要性が分かる。
【0015】
次に、表3を用いて油吸着シート全体の厚み(t:mm)と油吸着シート全体の目付(M:g/m2 )との比(M/t)が77〜90であることの必要性について説明する。
先ず、M/tが77の実施例3、Run.NO.9の油吸着シートと、同76の比較例3、Run.No.11の油吸着シートとの比較において、前者の飽和吸水量(Hsa)が0.3kg/m2 と僅かに水を吸着する程度であるのに対し、後者ではHsaが1.3kg/m2 と4倍以上の水を吸着した。
【0016】
Run.No.11の油吸着シートで阻集器中の油脂分を吸着させたところ、油吸着シートが油脂分の吸着と並行して水も吸着している為に油脂分がまだらに吸着してしまい、本来Run.No.11の油吸着シートがもっている吸油性能を十分に発揮出来なかった。また、油吸着シートを引き上げた時に水が垂れてなかなか収まらずに、廃棄に時間が掛かってしまった。
以上のことからM/tは77以上であることが、水を吸着せず且つ油吸着シートが本来持っている吸油性能を発揮させる為には必要であることが分かる。
【0017】
次にM/tが90の実施例3、Run.No.10の油吸着シートと、同92の比較例3、Run.No.12の油吸着シートとの比較において、飽和吸油量は前者が3.9kg/m2 後者が4.1kg/m2 と後者の方が若干大きい程度であったが、吸油速度が前者が90%に対して後者が70%と本願発明のほうが優れていた。実際にグリース阻集器に使用してもこの違いは明らかで、Run.No.1の油吸着シートとRun.No.2の油吸着シートとの場合以上に差が見られた。
【0018】
以上のことから、 M/tは90以下であることが吸油速度の点から必要であることが分かる。
尚、本発明の油吸着シートの厚み(t)はM/tの値や綿の特性、不織布の密度等に影響されるので一概には言えないが、2.0〜3.5mmであることが好ましい。
又、ポリプロピレン系樹脂製綿層(A)の目付は80〜310g/m2 であることが好ましい。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂製綿(A)は、A格品、B格品、C格品等等級は問わないが、製造工程においてカーディング装置に掛ける都合上捲縮加工が施されたものが好ましい。尚材質については、排水中には界面活性剤等も混ざっているので、比重が1よりも軽いものが良く、且つ焼却する場合に有害なガスの発生が少ないものが良くポリエチレン系樹脂綿でも代用可能ではあるが、強度がある程度必要なことを考慮するとポリプロピレン系樹脂製が良い。繊維径については、低粘度油の場合には繊維径が細い程吸着される吸油量が多くなるが、吸着させる油の粘度が比較的高い油の場合では繊維径を細くしても吸油量が増加しないことが知られており、吸油性能と繊維の強度やコストから1〜5デシテックス程度が好ましい。
【0020】
またポリプロピレン系樹脂製不織布層(B)は、プロピレン単独重合体、エチレン、ブテン−1等との共重合体、芯鞘構造体等比重が1以下で焼却時有害ガスの発生が少ないもの、強度がある程度あるもの等から選ばれる繊維で構成された不織布が好ましく、繊維間の接着はケミカルボンド法、サーマルボンド法、スパンレース法等いずれの方法でも良い。好ましくは、スパンボンド法にて形成された不織布である。不織布の見掛けの密度は、吸油性能の観点から0.11〜0.16g/cm3 程度が好ましい。
【0021】
更に、ポリプロピレン系樹脂製綿(A)とポリプロピレン系樹脂製不織布(B)との積層方法は、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法等で行うことが出来るが、好ましくはニードルパンチ法である。
AとBは、A1/B1の2層、A1/B1/A2、B1/A1/B2の3層等に積層されるが、好ましくは両外層にA層がある場合である。尚A1/B1/A2の場合、A1とA2とに吸油性能差が無い場合が好ましく、A1及びA2を構成するポリプロピレン系樹脂製綿に違いが無く目付の違いのみである場合には目付の差がA1とA2とで3倍未満であることが好ましい。
【0022】
次に、本発明の油吸着シートの好ましい使用方法について述べる。
本発明の油吸着シートはグリース阻集器に捕集された油脂分を吸着させる為のシートであり、通常は捕集された油脂分の上から油吸着シートをかぶせて十分に油脂分を吸着させた後廃棄する。好ましい使用方法として、一度グリース阻集器内を清掃した後、阻集器内の清浄な水面に本油吸着シートを浮かべて置いて、営業時間中又は週の終わりまで等一定の期間中に排水に含まれる油脂分を十分に吸着させた後に油吸着シートを廃棄する方法がある。この様にするとグリース阻集器の壁面に付着したり、配管中に流れてしまう油脂分を大幅に減少出来る他に臭いの発散をある程度抑えることが出来る。また常温では固体やグリース状になる動物系油脂も、排出時には60℃程度の温度で液体の状態で排出されているので固化する前に本油吸着シートに吸着させて簡単に除去することが出来る。
【0023】
本発明について、以下具体的に説明する。
先ず測定法を記す。
(1)ポリプロピレン系樹脂製不織布(B)の目付
積層されている油吸着シートの一定面積を機械的に各層に分離して、Bの質量を測定して目付を求めた。
(2)油吸着シートの厚み(t)
倍率が25〜50倍の拡大率をもつ顕微鏡で油吸着シートの断面写真を5箇所撮り平均厚み(t)(mm)を求めた。
(3)油吸着シートの目付(M)
10cm×10cmの大きさに5枚切り出し、その質量測定の平均値から求めた。
【0024】
(4)飽和吸油量(Os)
油吸着シートから10cm×10cmのサンプルを切り出しその質量(w1)(g)を測定した後、幅220mm×奥行275mm×高さ45mmのステンレス製バットに20〜30℃に保った1リットルの日清製油(株)製、日清サラダ油(深さ約18mm)の上に静かに浮かべて5分間放置した。その後直ちにサンプルを取り出し、呼び寸法が16mmのステンレス製ふるいの上に5分間放置し、再度質量(w2)(g)を測定した。
(w2−w1)/w1で単位質量当りの飽和吸油量(Osw:g/g)を、(w2−w1)/(10×t)で単位体積当りの飽和吸油量(Osv:g/cm3 )を、(w2−w1)×0.1で単位面積当たりの飽和吸油量(Osa:kg/m2 )を求めた。
油を吸着させる時間を5分にしたのは、吸着させる時間を変化させて油の吸着量を測定したところ全てのサンプルが約3分程度で飽和することが分かったので余裕をみて5分とした。
【0025】
(5)飽和吸水量(Hs)
サラダ油を水道水に変えた他は飽和吸油量と同様に測定した。
(6)吸油速度
吸油時間を1分とした他は飽和吸油量と同様に測定して1分間の吸油量を求め、飽和吸油量に対する1分間の吸油量の割合を求めた。
【0026】
(7)吸油性能
・方法
水を満たした3槽式のグリース阻集器の内、長さ約50cm、幅約50cm、深さ約30cmの中央の槽にサラダ油とオリーブオイルとラードと水が5:5:1:1の混合物を200℃で約30分間熱して酸化させた油脂を2.5kgを浮かべて、50cm×50cmに切り出した油吸着シートサンプルを油脂分の上にかぶせて2分間放置させた後、油吸着シートを5寸釘を指した棒で引っかけて除去した。この時の観察結果を以下の基準に従い判定した。
Figure 0004825364
【0027】
(8)廃棄作業性
上記吸油性能評価において、油吸着シートを除去する際に、油吸着シートが破れなかったものを「○」、破れたものを「×」とした。
【0028】
【実施例1】
A格品のポリプロピレン綿をカーディング装置に掛けて目付が95g/m2 になるように均一なウエブ(A1)を形成して、目付が30g/m2 の旭化成社製ポリプロピレン・スパンボンド不織P03030(B1)の上から重ねてニードルパンチ法で積層して巻き取った。巻き取ったものを再度繰り出して、上記と同様にして目付が95g/m2 A格品のポリプロピレン綿(A1)を積層して巻き取りA1/B1/A1の3層構成の油吸着シートを作成した(Run.No.1)。出来た油吸着シートを上記方法に従って評価した。尚厚みは2.7mm、目付は230g/m2 、M/tは85であった。
【0029】
【比較例1】
実施例1、Run.No.1と同様なポリプロピレン系樹脂製綿(A)とポリプロピレン系樹脂製不織布(B)からなるA/B/Aの3層構成で厚みが2.5mm、目付が230g/m2 、M/tが92の油吸着シートである従来の油吸着シート(Run.No.2)、厚みが2.0mm、目付が200g/m2 の特殊PP繊維不織布からなる市販の油吸着シート(Run.No.3)、厚みが9.0mm、目付が250g/m2 の天然繊維製の市販の油吸着シート(Run.No.4)について、実施例1と同様に評価した。
【0030】
以上Run.No.1〜Run.No.4の油吸着シートの評価結果をまとめて表1に示す。
以下に、本発明の油吸着シートはグリース阻集器用油吸着シートとして優れており、単に海難事故で流出した油やマシンオイル等を吸着させる為の油吸着シートで代用しうるレベル以上の性能をもった油吸着シートであることを説明する。
実施例1、Run.No.1の油吸着シートは、飽和吸油量及び吸油速度共に優れ且つ吸水も殆どなく、実用評価においても吸油性能及び廃棄作業性に優れており、グリース阻集器用油吸着シートとして優れていることが分かる。
【0031】
また、特殊PP繊維不織布の市販の油吸着シート(Run.No.3)は本発明の油吸着シート(Run.No.1)に比べて飽和吸油量が少なく、吸油性能でも本発明のほうが優れていた。
更に、天然繊維製の市販の油吸着シート(Run.No.4)は、単位質量当り及び単位面積当たりの飽和吸油量は優れていたが、単位体積当りの吸油量は本発明のほうが優れていた。またこの油吸着シートは取扱中に綿が舞ったり、吸油後シートを引き上げようとすると破れたりして強度は実用には適さないレベルのものであった。
【0032】
以上のことから、本発明の油吸着シートはグリース阻集器用油吸着シートとして優れており、単に海難事故で流出した油やマシンオイル等を吸着させる為の油吸着シートで代用しうるレベル以上の性能をもった油吸着シートであることが分かる。
【0033】
【表1】
Figure 0004825364
【0034】
【実施例2】
実施例1のA1を目付が110g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A2)にし、またB1を繊維径が約1デシテックスで目付が15g/m2 のポリプロピレン・スパンボンド不織布(B2)に替えた他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.5)。尚油吸着シートの厚み(t)は2.7mm、目付(M)は235g/m2 で、M/tは87であった。
また同様にA1を目付が90g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A3)にし、またB1を目付が40g/m2 の旭化成社製ポリプロピレン・スパンボンド不織布P03040(B3)に替えた他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.6)。尚油吸着シートの厚み(t)は2.6mm、目付(M)は220g/m2 で、M/tは86であった。
【0035】
【比較例2】
実施例1のA1を目付が110g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A2)にし、またB1を繊維径が約1デシテックスで目付が13g/m2 の旭化成社製ポリプロピレン・スパンボンド不織布(B4)に替えた他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.7)。尚油吸着シートの厚み(t)は2.8mm、目付(M)は233g/m2 で、M/tは83であった。
【0036】
また同様にA1を目付が90g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A3)にし、またB1を繊維径が約1デシテックスで目付が42g/m2 のポリプロピレン・スパンボンド不織布(B5)に替えた他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.8)。尚油吸着シートの厚み(t)は2.6mm、目付(M)は222g/m2 で、M/tは87であった。
以上、シートの厚み(t)は2.6〜2.8mm、目付(M)は220〜235g/m2 で、M/tは83〜87の範囲にあるRun.No.5〜Run.No.8の油吸着シートの評価結果を表2にまとめて示す。
【0037】
以下、表2を用いて本発明の油吸着シートのポリプロピレン系樹脂製不織布層(B)の目付が15〜40g/m2 である必要性について説明する。
先ず、Bの目付が15g/m2 の後述する実施例2、Run.No.5の油吸着シートと同13g/m2 の比較例2、Run.No.7の油吸着シートとを比較すると、Run.No.5の油吸着シートは廃棄作業が容易に行えたのに対し、Run.No.7の油吸着シートは釘穴から破れて、手でつまみ上げなければならなかった。
【0038】
以上のことから、ポリプロピレン系樹脂製不織布層(B)の目付が15g/m2 以上であることが従来の油吸着シートの強度、即ち廃棄作業性を維持する上で必要なことが分かる。
また、 Bの目付が40g/m2 の実施例2、Run.No.6の油吸着シートと同42g/m2 の比較例2、Run.No.8の油吸着シートとを比較すると、飽和吸油量に差が見られなかったが、吸油速度が前者は90%であるのに対して69%であり、吸油性能も本発明のほうが優れていた。
以上のことからBの目付は油吸着シートの吸油速度の点から40g/m2 以下である必要性が分かる
【0039】
【表2】
Figure 0004825364
【0040】
【実施例3】
実施例1のA1を目付が90g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A3)にし、またB1を目付が40g/m2 の旭化成社製ポリプロピレン・スパンボンド不織布P03040(B3)に替え、ニードルパンチの圧を弱める方向で調整して油吸着シートの厚み(t)が2.9mm、目付(M)が220g/m2 で、M/tが77にした他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.9)。
また同様にA1を目付が100g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A4)にし、またニードルパンチの圧を高める方向で調整して油吸着シートの厚み(t)が2.6mm、目付(M)が230g/m2 で、M/tが90にした他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.10)。
【0041】
【比較例3】
実施例1のA1を目付が90g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A3)にし、またニードルパンチの圧を下げる方向で調整して油吸着シートの厚み(t)が2.8mm、目付(M)が210g/m2 で、M/tが76にした他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.11 )。
また同様にA1を目付が100g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A4)にし、またB1を目付が40g/m2 の旭化成社製ポリプロピレン・スパンボンド不織布P03040(B3)に替え、ニードルパンチの圧を高める方向で調整して油吸着シートの厚み(t)が2.6mm、目付(M)が240g/m2 で、M/tは92にした他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.12)。
【0042】
以上、シートの厚み(t)は2.6〜2.9mm、目付(M)は210〜240g/m2 の範囲にあるRun.No.9〜Run.No.12の油吸着シートの評価結果を表3にまとめて示す。
以下に、表3を用いて油吸着シート全体の厚み(t:mm)と油吸着シート全体の目付(M:g/m2 )との比(M/t)が77〜90であることの必要性について説明する。
【0043】
先ず、M/tが77のRun.NO.9の油吸着シートと、同76のRun.No.11の油吸着シートとの飽和吸水量の比較において、Run.No.9のシートはHsaが0.3kg/m2 と僅かに水を吸着する程度であるのに対し、Run.No.11のシートではHsaが1.3kg/m2 と4倍以上の水を吸着した。 Run.No.11の油吸着シートを阻集器中の油脂分を吸着させたことろ、油吸着シートにまだらに油脂分がついて本来油吸着シートがもっている吸油性能を十分に発揮出来なかった。
【0044】
以上のことからM/tは77以上であることが、水を吸着せず且つ油吸着シートが本来持っている吸油性能を発揮させる為には必要であることが分かる。
次にM/tが90のRun.No.10の油吸着シートと、同92のRun.No.12の油吸着シートとの比較において、飽和吸油量は殆ど差がなかったが、吸油速度はRun.No.10の油吸着シートのほうがNo.12の油吸着シートに比べて優れていた。
以上のことから、 M/tは90以下であることが吸油速度の点から必要であることが分かる。
【0045】
【表3】
Figure 0004825364
【0046】
【実施例4】
実施例1において、実施例1のA1を目付が80g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A5)に、またB1を目付15g/ m2 のB2に替えた他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.13)。また同様に、A1を目付が160g/m2 のA格品のポリプロピレン綿(A6)に、またB1を目付40g/ m2 のB4に替えた他は実施例1と同様な操作を繰り返した(Run.No.14)。
【0047】
以上Run.No.13及びRun.No.14の各シート評価結果を表4に示す。
Run.No.13の油吸着シートは、飽和吸油量(Osa)が3.5kg/m2 で、実用試験における吸油性能では阻集器中の油脂分がぎりぎり吸着出来たレベルであった。このとこから、本実施例に用いたポリプロピレン系樹脂製綿及びポリプロピレン系樹脂製不織布を用いる場合には、油吸着シートの厚み(t)は2.0mm以上であることが好ましい。又同様にポリプロピレン系樹脂製(A)の目付は80g/m2 以上であることが好ましい。
【0048】
またRun.No.14の油吸着シートはOsaが5.8kg/m2 と優れていて実用評価でも吸油性能に優れていたが、吸油速度が90%程度に留まっており、更に油吸着シートの厚み(t)を厚くしても吸油速度がは更に下がって、厚み(t)を増加させた割には吸油性能が向上しない傾向にあった。従って経済性の面からは、油吸着シートの厚み(t)は3.5mm以下であることが好ましい。また同様に、ポリプロピレン系樹脂製綿の目付は160g/m2 以下であることが好ましい。
以上のことから、ポリプロピレン系樹脂製綿の目付は好ましくは80〜160g/m2 であり、油吸着シートの厚み(t)は好ましくは2.0〜3.5mmである。
【0049】
【表4】
Figure 0004825364
【0050】
【実施例5】
A格品のポリプロピレン綿をカーディング装置に掛けて、目付が190g/m2 になるように均一なウエブ(A7)を形成し、目付が30g/m2 不織布(B1)の上から重ねてニードルパンチ法で積層して巻き取って油吸着シートを作成した(Run.No.15)。出来た油吸着シートを上記評価方法に従って評価した。尚油吸着シートの厚み(t)は2.7mm、目付(M)は220g/m2 、M/tは81であった。
【0051】
【比較例4】
実施例5のA7を目付が180g/m2 のポリプロピレン綿(A8)に、B1を上記B3(目付40g/m2 )に替え、若干ニードルパンチの圧を弱める方向で調整して油吸着シートの厚み(t)が3.2mm、目付(M)が240g/m2、M/tが75になる様にした他は実施例5と同様な操作を繰り返した(Run.No.16)。
【0052】
以上、Run.No.15及びRun.No.16の油吸着シートの評価結果を表5にまとめて示す。
因みに、Run.No.15及びRun.No.16の油吸着シートを顕微鏡で観察したところ、両者共に3層に見え、各層の比率(g/m2 )は前者が130/30/60であり、後者が140/40/40であった。
表5に示した吸油量及び吸水量の値は、目付の多いA面が油又は水に接した場合(以下A面が下と記す)と目付の少ないA面が油又は水に接した場合(以下B面が下と記す)との平均値である。
【0053】
両者の飽和吸油量(Osw)を比較した場合、Run.No.15ではA面が下では18.0g/g、B面が下では17.5g/gと両面間の差は見られなかったが、Run.No.16では同順に17.0g/g、12.5g/gと両面間に差が見られた。
実用上はどちらかの面を指定して下にして貰うことは容易ではないので、両面間で差が無い方が良い。上記結果からは、両面のポリプロピレン系樹脂製綿層の目付の差は2.5倍以下であることが好ましい。
【0054】
また、飽和水分量(Hsw)も前者が0.6g/gに留まったのに対して後者が5.3g/gと大きな値になった。この違いは、M/tの値が前者が81に対して後者が75と77よりも小さかったことによると考えられる。
またM/tの値はニードルパンチの圧にも影響を受けており、前者に比べ後者の方がニードルパンチの圧が小さかった為に、Run.NO.14はRunNo.13に比べB層を突き抜けるポリプロピレン系樹脂製綿の量が少なくて面差が出たものと推察される。
【0055】
【表5】
Figure 0004825364
【0056】
【発明の効果】
本発明によって、従来の油吸着シートの廃棄作業性は維持した上で吸油性能に優れるグリース阻集器用油吸着シートを提供することができた。

Claims (2)

  1. 少なくとも1層のポリプロピレン系樹脂製綿層(A)と少なくとも1層のポリプロピレン系樹脂製不織布層(B)が積層された油吸着シートにおいて、Bの目付が15〜40g/m2且つ積層された油吸着シート全体の厚み(t:mm)と油吸着シート全体の目付(M:g/m2)との比(M/t)が77〜90であることを特徴とするグリース阻集器用油吸着シート。
  2. 前記油吸着シート全体の厚みが2.0〜3.5mmであることを特徴とする請求項1に記載のグリース阻集器用油吸着シート。
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