JP4824264B2 - 熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料、その製法、その使用ならびに難燃性ポリカーボネート成形品 - Google Patents

熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料、その製法、その使用ならびに難燃性ポリカーボネート成形品 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料、その製法、その使用ならびに難燃性ポリカーボネート成形品に関する。本発明は、特に優れたかつ機能的な表面効果を有する難燃性ポリカーボネート成形品を製造するために使用することができる熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料に関する。
【0002】
ポリカーボネート成形品は、長い間公知であった。これらは、電気工業および電子工業(プラグ、プラグコネクター、スイッチ、コンポネントハウジング、印刷回路板、配電箱などの製造)、データ処理(光学データ貯蔵ディスク)、光光学(ランプカバー、ランプハウジング、照明掲示、光学導波管系)、光学素子(コーティングにより耐引掻性を付与することができる光学レンズ)、家庭用テクノロジー(台所用機械のハウジング、ファン、掃除機;耐マイクロ波食器洗浄器など)、レーザー工業(安全ヘルメット、耐破壊性保護ゴーグル)、建築工業(半透明の屋根材、遮音塀)および自動車工業[バス用、貨車および飛行の内部ライニング、機、ダッシュボード、ランプカバー、緩衝器(ポリカーボネートブレンド、例えばABSから製造)および車体構造部材](CD Roempp Chemie Lexikon-Version 1.0, Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag 1995)の分野で広く使用されている。
【0003】
多くの適用分野においてポリカーボネートの自消性特性は適切ではない。例えば、飛行機製造において使用するために、ポリカーボネートは特に厳しい耐火性要求条件に応えなくてはならないが、従来はこの事は、単に難燃剤および/または難燃添加剤を添加することにより果たされていた。この難燃剤および/または難燃添加剤が存在するため、これらのポリカーボネート成形品は、もはや透明では無くなり、かつ一般的には僅かに、または著しく着色されてしまう。
【0004】
消費者により、アトラクティブな可視側を有するポリカーボネート成形品が望まれている。難燃性を施すタイプの場合には、これは現在、不透明な着色および場合により表面の構造化により達成されている。この場合に、押出技術は単色であるのが有利である。成形品の表面は、部分的に特殊な難燃性ラッカーを使用して被覆されている。この方法の欠点は、相応するラッカー塗り法が極めてコスト高であり、かつ所望の表面効果および機能的表面効果の多くが達成不可能であることである。さらに、塗布された装飾仕上げは、機械的効果に対して不十分にしは保護されていない。
【0005】
先行技術に鑑み、本発明の課題は、アトラクティブかつ機能的表面効果を有する難燃性ポリカーボネート成形品の製造を可能にし、単色のものに限定されない熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料を提供することであった。特に、従来は開示されていない機能的表面効果を有する難燃性ポリカーボネート複合材料を提供すべきである。
【0006】
他の課題は、近年の防火要求条件、特に航空工業における要求条件に応じる熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料を提供することにある。熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料は簡単な方法で、低コストで製造可能であるべきである。
【0007】
本発明は、低コストで実施可能であり大規模に使用可能な本発明による熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料を提供することにも課題の根底を成す。さらに、この方法は市販の成分を使用して簡単かつ単純に実施できるべきである。
【0008】
本発明の他の課題は、アトラクティブかつ機能的表面効果を有するポリカーボネート成形品を提供することであった。この表面効果は、外部作用、例えば、環境作用および機械的作用から保護されているべきである。本発明によるポリカーボネート成形品の使用可能性も提供されるべきである。
【0009】
前記の課題ならびに明確には記載されていないが、本明細書中の導入部で記載された関連から容易に推論可能または導き出すことができる課題は、請求項1に記載された全ての特徴を有する熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料により解決された。本発明の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の有利な変更は、請求項1に従属するアンダークレームにより保護される。本発明の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の製法は、方法のクレームに記載されている。さらに、熱可塑性成形によって、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート成形品から出発して得られる難燃性ポリカーボネート成形品が請求されている。使用カテゴリーのクレームは、本発明の難燃性ポリカーボネート成形品の有利な使用を保護するものである。
【0010】
少なくとも1つの層が29未満のLOI値を有し、かつ少なくとも1つの層が29を上回るLOI値を有する、少なくとも2個の層を有する熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料を提供することにより、容易に予知できない方法でアトラクティブかつ機能的表面効果を有する熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料を入手することに成功した。これは、大規模でかつ低コストでアトラクティブかつ機能的表面構成および表面効果を有するポリカーボネート成形品の製造を可能にする。ここでは、新規でかつ以前には開示されていない表面効果を達成できる。
【0011】
少なくとも1つの層が29未満のLOI値を有し、かつ少なくとも1つの層が29を上回るLOI値を有することに特徴付けられる少なくとも2個の層を有する熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料から出発して、熱可塑性成形によって難燃性ポリカーボネート成形品が得られることは、特に意外であった。それというのも、29未満のLOI値を有するポリカーボネートは一般的な防火要求条件、特に航空機産業分野において応えられないからである。同時に、本発明の方法により他の利点も達成可能である。これらには、次のものが含まれる:
*本発明の熱可塑性により成形可能な複合材料およびこれから製造可能な成形品の表面を塗装する必要がなく、
*本発明の熱可塑性により成形可能な複合材料およびこれから製造可能な成形品の表面効果が機械的作用から保護される。
【0012】
本発明は、熱可塑性により成形可能なポリカーボネートに関する。ポリカーボネートは、当業者に公知のプラスチックである。これは、一般構造式
【0013】
【化1】
Figure 0004824264
【0014】
を有する熱可塑性ポリマーであり、前記式は炭酸および脂肪族または芳香族ジヒドロキシ化合物から成るポリエステルとして見なすことことができる。この場合に、基Rは相応するジヒドロキシ化合物から誘導される二重結合の脂肪族、脂環式または芳香族基を示す。
【0015】
本発明により使用できるポリカーボネートには、ホモポリカーボネート、コポリカーボネート、非分枝ポリカーボネート、分枝カーボネートおよび前記のポリカーボネートの混合物が属する。
【0016】
本発明の範囲内において、芳香族基Rが有利である。これには、特にヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェノール、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンまたは1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンから誘導される基が含まれる。特に有利な基Rは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンから誘導される。
【0017】
基Rは、場合によりさらに置換基、有利にはメチル基またはハロゲン基を有することができる。特に有利には置換基は、臭素および塩素原子である。
【0018】
本発明によるポリカーボネートは、有利には10,000g/mol〜200,000g/molの範囲内の分子量の質量平均を有する。10,000g/mol〜100,000g/mol、特に15,000g/mol〜45,000g/molの範囲内の分子量の質量平均が特に有利である。
【0019】
本発明によるポリカーボネートは、さらにポリカーボネートと混合可能なポリマーを含有することができる。これには、特にポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ABS、ASAおよびPBTが含まれる。
【0020】
種々の物質の混合性は、本発明の範囲内では、成分が均一な混合物を形成することを意味する。
【0021】
さらに、ポリカーボネートは工業分野で広く知られている添加剤を含有することができる。これには、特に、静電防止剤、抗酸化剤、染料、充填剤、光安定剤、顔料、UV−吸収剤、耐候安定剤および可塑剤が属する。
【0022】
本発明によれば、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料は、LOI値に関して異なる少なくとも2つの層を有する。“層”という用度は、当業者には最も周知である。本発明の範囲内では、鮮明な境界により相互に、かつ周囲から仕切られているLOI値に関して均一な範囲を意味する。本発明の範囲内では、層の形は任意である。本発明による有利な層の形は、押出により得られる。
【0023】
本発明によれば、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の少なくとも1つの層は、29未満のLOI値を有し、かつ少なくとも1層が29を上回るLOI値を有する。LOI値は、いわゆる酸素指数に関して当業者に公知の略語であり(英語の名称“極限酸素指数(limiting oxygen index)”に由来する)、かつこの値は、材料が外部炎の点火後に、なお独りでに燃焼する酸素/窒素混合物中で定められた酸素の体積消費量の極限値である。これは、ASTM D 2863試験法により一般的に決定される。難燃剤または難燃添加剤を含有しない直鎖のポリカーボネートは、LOI値26を有する。このLOI値は、難燃剤および/または難燃添加剤を添加することにより32〜35に増大する(Bodo Carlowitz Kunststofftabellen 第4版;Muenchen, Wien; Hanser 1995 p. 146)。
【0024】
難燃剤および/または難燃添加剤は当業者には公知である。これらは、特に木材および木材原料、プラスチックおよび繊維を防火化(難燃性付与)する無機および/または有機物質のようなものを意味する。これらは、この防火化を保護すべき物質に炎が広がることを妨害し、点火を回避しかつ燃焼を困難にすることにより達成する。難燃剤および/または難燃添加剤には、炎を消し、炭化を促進し、バリア層および/または絶縁層を形成する作用が含まれる。これらには、特に特別な無機化合物、例えば、酸化アルミニウム水化物、水酸化アルミニウム、水ガラス、ホウ酸塩、特にホウ酸亜鉛、酸化アンチモン(大抵は有機ハロゲン化合物と一緒に)、リン酸アンモニウム、例えば、(NHHPO、およびアンモニウムポリホスフェートが属する。
【0025】
本発明により使用できる他の難燃剤または難燃添加剤には、ハロゲン化有機化合物、例えば、クロロパラフィン、ヘキサブロモベンゼン、臭素化ジフェニルエーテル、ならびに他の臭素化合物、有機リン化合物、特にリン酸塩、亜リン酸塩およびホスホン酸塩、特に可塑化作用を有するもの、例えば、トリスクレジルホスフェート、ハロゲン化有機リン化合物、例えば、トリ(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェートまたはトリス(2−ブロモ−4−メチルフェニル)ホスフェートが含まれる。
【0026】
さらに、本発明により使用可能な他の難燃剤または難燃添加剤には、加熱の際に泡のように膨らみ、250〜300℃で炭化し、この場合に固化され、かつ良好に絶縁する細かい有孔のクッションを形成するもの、例えば、尿素、ジシアンジアミン、メラミンおよび有機リン酸塩から成る混合物が属する。
【0027】
難燃剤または難燃添加剤は、その製造が完了する前にポリカーボネートに添加してもよい。難燃化合物をポリカーボネート高分子中にモノマーとして組込むことも可能である。
【0028】
有利には、火災の際には環境に有害な物質、例えば、毒性リン酸塩および重毒性のダイオキシンを形成しない難燃剤または難燃添加剤が有利である。
【0029】
本発明の有利な1実施態様において、29未満のLOI値を有する少なくとも1つの層は、28未満のLOI値、有利には27未満のLOI値を有する。
【0030】
さらに有利な本発明の1実施態様において、29を上回るLOI値を有する少なくとも1つの層は、30を上回るLOI値、有利には31を上回るLOI値を有する。
【0031】
本発明の範囲内で、29を上回るLOI値を有する少なくとも1つの層は、有利には、
a)混合物の全質量に対して、少なくとも1種のポリカーボネート40〜100質量%、
b)混合物の全質量に対して、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ABS、ASAおよびPBTの群から成る少なくとも1種のポリマー0〜40質量%、
c)混合物の全質量に対して、少なくとも1種の難燃剤および/または難燃添加剤0〜10質量%
d)混合物の全質量に対して、静電防止剤、抗酸化剤、染料、充填剤、光安定剤、顔料、UV−吸収剤、耐候安定剤および可塑剤の群から成る少なくとも1種の添加剤0〜10質量%
(その際、a)、b)、c)およびd)の合計は、100質量%である)
から成る混合物から成る。
【0032】
同様に、29未満LOI値を有する少なくとも1つの層が、
e)混合物の全質量に対して、少なくとも1種のポリカーボネート40〜100質量%、
f)混合物の全質量に対して、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ABS、ASAおよびPBTの群から成る少なくとも1種のポリマー0〜40質量%、
g)混合物の全質量に対して、静電防止剤、抗酸化剤、染料、充填剤、光安定剤、顔料、UV−吸収剤、耐候安定剤および可塑剤の群から成る少なくとも1種の添加剤0〜10質量%
(その際、e)、f)およびg)の合計は、100質量%である)
から成る混合物から得られるのが有利である。
【0033】
本発明の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料中の層の数は、所望の適用分野に左右される。この場合に、本発明による熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料は、少なくとも2つの層、有利には2、3、4または5つの層から成る。
【0034】
本発明による熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の特定の材料特性、特にその燃焼性は、29未満のLOI値を有する少なくとも1つの層の厚さと、29を上回るLOI値を有する少なくとも1つの層の厚さとの比により影響される。この比は、0.01〜0.5の範囲内にあるのが有利である。
【0035】
29未満のLOI値を有する少なくとも1つの層の量と、29を上回るLOI値を有する少なくとも1つの層の量の比も、本発明による熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の幾つかの材料特性、特にその燃焼性に影響を与える。同様に、この比が0.01〜0.5の範囲内にあるのが有利である。
【0036】
本発明の有利な1実施態様において、29未満のLOI値を有する少なくとも1つのポリカーボネート層は、30μm〜500μmの厚さである。さらに、本発明の範囲内では29を上回るLOI値を有する少なくとも1つのポリカーボネート層が0.7mm〜3mmの厚さであるのが有利である。
【0037】
本発明の範囲内では、29未満のLOI値を有するポリカーボネート層がポリカーボネート複合材料の外層であることにより特徴付けられる熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料が有利である。
【0038】
本発明の特に有利な実施態様において、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料は、29を上回るLOI値を有する層と29未満のLOI値を有する層との間に、3番目の層を有し、その際、前記3番目の層は装飾層である。
【0039】
当業者には、本発明による熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料が他の層を有することができることが明らかである。これは例えば、その組成物が前記の層とは異なる他のポリカーボネート層を有することができる。これは、さらに装飾/プリント層を有することができる。さらに、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料は、種々のプラスチックから成る層を結合するためにも、保護すべき対象物上にフィルムを固定するためにも使用することができる接着層を含有することができる。さらに層の順序は変化させることができる。
【0040】
本発明による熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料は、最も厳しい火災保護要求条件、特に航空機製造の分野からのものに応える。航空工業の分野において、米国官庁の要求条件が世界的に有効である(FAR, Part 25, Amdt. 25-72, App. F, Part I (b) (4), Vertical Test; App. F., Part I (b) (5), Horizontal Test)。適用分野、例えば、壁用層材料および天井用層材料、ケーブルおよび導線に応じて、試験体の制限された火災の広がりならびに制限された残炎時間および場合によっては燃えない液滴を検出することができる。この場合に、FAR(FAR 25.853(a)(i),(ii),(iii),(iv)または(v))により、細長い試験体(帯状の形;305mm×75mm)に側面から水平に、または下側から垂直にフレームを適用する。本発明によれば、垂直なフレーム適用試験が有利である。
【0041】
近年の要求条件に応えるために、試験体のエッジにフレームがそれぞれ60秒および12秒適用された場合に、残炎時間は15秒を超えてはならず、かつ燃焼長さは、それぞれ最大で150mmもしくは200mmであり、かつ滴下材料の燃焼時間はそれぞれ3秒未満および5秒未満であるべきである。
【0042】
本発明の有利な1実施態様において、FAR 25.853(a)(1)(i)によりエッジに垂直にフレーム適用を60秒間行った場合に、本発明の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料は、150mm未満、有利には120mm未満の燃焼長さを有し、かつ15秒未満、有利には9秒未満の残炎時間を有し、かつ3秒未満、有利には2秒未満の滴下材料の燃焼時間を有する。
【0043】
さらに本発明の範囲内で、FAR 25.853(a)(1)(ii)によりエッジに垂直にフレーム適用を12秒間行った場合に、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料は、200mm未満、有利には50mm未満の燃焼長さを有し、かつ15秒未満、有利には7秒未満の残炎時間を有し、かつ5秒未満、有利には1秒未満の滴下材料の燃焼時間を有する。
【0044】
FARおよびエアバス工業に相応して、航空機のチャンバー内装備品用の材料もNBSチャンバーにおいて一定の煤煙極限値を守らなくてはならない(FAR 25.853(c); AITM 2.0007)(FAR, Part 25, Amdt. 25-72, App. F, Part V: Test Method to determine the Smoke Emission Characteristics of Cabin Materials)(Airbus Industrie Technical Specification ATS-1000.001, Issue 5; Airbus Directives ABD0031)。この試験において、NBSチャンバーに垂直に配置された正方形の試験体(74mm±1mm×74mm±1mm)をI=25kw/mの電気的放射熱源で照射し、次にこれを熱分解する。測定器系を用いて、時間に依存して放出された粒子状の煙粒により、光ビームの減衰を測定する。試験を着火フレームでくすぶる条件下(着火フレームなし)の条件下または着火フレームを用いて6分間実施した。計算すべき比光学濃度は、4分間の試験期間の間にDsmax=200を越えてはならない。
【0045】
本発明の有利な1実施態様において、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料は、FAR 25.853(c)および AITM 2.0007による比光学濃度が4分間の試験時間の間にDsmax=200、有利にはDsmax=140を越えないことが際立っている。
【0046】
火災ガスの毒性評価は、エアーバス規格 AITM 3.0005(Airbus Industrie Technical Specification ATS-1000.001, Issue 5; Airbus Directives ABD0031)により、NBSチャンバー中での試験の間に、種々の煤煙成分を分析的に測定した濃度値を使用して行った。ここでATSによる近年の極限値は、一酸化炭素COに対しては3500ppmであり、二酸化硫黄SOに対しては100ppmであり、塩化水素HClに対しては150ppmであり、シアン化水素HCNに対しては150ppmであり、フッ化水素に対しては100ppmであり、かつ窒素含有ガスである一酸化窒素NOおよび二酸化窒素NOに対しては100ppmである。
【0047】
本発明によれば、AITM 3.0005によるNBSチャンバー中の試験の間の火災ガスが、一酸化炭素を最大3500ppm、有利には最大300ppm、二酸化硫黄を最大100ppm、有利には二酸化硫黄を含有せず、塩化水素を最大100ppm、有利には塩化水素を含有せず、シアン化水素を最大150ppm、有利には最大2ppm、フッ化水素を最大100ppm、有利にはフッ化水素を含有せず、かつ一酸化窒素および二酸化窒素を最大100ppm、有利には最大3ppm含有する熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料が有利である。
【0048】
本発明による熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の製法は、当業者に周知である。本発明の範囲内では有利な方法は押出成形である。この場合には、まず場合により他の成分を含有し、かつその場合に少なくとも1種の乾燥混合物は、29を上回るLOI値を有し、かつ少なくとも1種の乾燥混合物は29未満のLOI値を有している少なくとも2個のポリカーボネート乾燥混合物が使用される。
【0049】
乾燥混合とは、本発明の範囲内ではこれらの混合物から更なる方法の過程において溶剤を除去する必要がないことを意味する。他の後処理を必要としないか、もしくは押出機中で真空により混合物から分離することができる溶剤残留物が可能である。乾燥混合物は、乾燥混合物の全質量に対して、溶剤0.01質量%未満を含有するのが有利である。
【0050】
混合は、この目的のために広く公知の常用の装置中で行われる。混合が行われる温度は、それぞれの混合物のゲル温度を上回る。本発明の場合には、室温で実施するのが有利である。
【0051】
29未満のLOI値を有する乾燥混合物は、ローラーが140℃未満の温度を有する艶出し機上に別々に押し出され、その際、フィルムが形成される。フィルムもしくは層へのポリマーの押出は、広く公知であり、例えば、Kunststoffextrusionstechnik II, Haser Verlag, 1986, 125ページ以降に記載されている。押出は、図1に図式的に表されている所謂“チルロール(Chill-Roll)法”により行うことができる。熱溶融物を押出機1のダイからチルロール2の上に置き、その際、高い光沢を得るために、磨かれたローラーが使用される。しかし、本発明による方法において、チルロール以外のローラーを使用することもできる。もう1つのローラー3は、まずローラー2上で冷却された溶融物を取り上げ、その際、他の層を備えることができる単層のフィルム4が得られる。選択的に、押出機は、図2に図式的に表されているような艶出し機中で行うこともできる。この場合に、熱溶融物は2個以上のローラー3の間で無限に圧延されたフィルム4になる。
【0052】
相応するフィルムを十分に不純物不含にするために、ダイ中への溶融物の入り口の前にフィルターを配置する。フィルターのメッシュ幅は、一般的には使用された出発物質に左右され、かつ相応して広い範囲で変化することができる。しかし、一般的にこの範囲は300μm〜20μmの範囲内である。種々のメッシュ幅の篩いを有するフィルターをダイへの入り口の前に配置することができる。このフィルターは、工業分野で広く公知であり、かつ市販されている。当業者のための更なる出発点として、添付された実施例を使用することができる。高い光沢を有するフィルムを得るために、純粋な原料を使用するのが特に有利である。
【0053】
それぞれのフィルムもしくは層の厚みは、一般的には所望の使用目的に依存して広い範囲にわたり変化させることができる。既に言及したように、29未満のLOI値を有する少なくとも1種のフィルムもしくは層の有利な厚さは、30〜500μmであり、かつ29を上回るLOI値を有する少なくとも1種のフィルムもしくは層の有利な厚さは、0.7mm〜3mmである。フィルムもしくは層は、当業者に公知のパラメーターにより調節できる。
【0054】
溶融された混合物をそれぞれのダイに圧入するために使用される圧力は、例えば、スクリューの速度によりコントロールされる。この圧力は一般的には40〜100バールの間であるが、本発明による方法は、これにより制限されることはない。当業者は、一般的な方法パラメーターに関する示唆を添付された実施例により得ることができる。
【0055】
得られたフィルムもしくは層は優れた表面品質および僅かな曇り度を有するために、ダイの温度がダイ入り口前の混合物の温度よりも高く、ゲル化温度よりも低く選択されることが重要である。
【0056】
ダイの温度は、ダイ入り口前の混合物の温度よりも5%、特に有利には10%および殊に有利には15%高く調節されるのが有利である。相応して、有利なダイの温度は、283℃〜345℃の範囲内、特に有利には297℃〜345℃の範囲内、殊に有利には310℃〜345℃の範囲内である。
【0057】
材料上に積層すべきフィルムは、別々に製造され、場合によりプリントされ、引き続き艶出し機中でベース基材上に積層される。
【0058】
本発明の有利な実施態様において、29未満のLOI値を有する少なくとも1種のフィルムもしくは層の表面に光学効果を付与する。これに引き続き光学効果を付与された29未満のLOI値を有するフィルムを、29を上回るLOI値を有するフィルムもしくは層と積層して、得られる熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料が、29未満のLOI値を有する層と29を上回るLOI値を有する層との間に少なくとも1つの装飾層を有するようにする。
【0059】
相互積層(colamination)によるこれらの層の設置は、室温または僅かに高い温度で行うことができ、その結果、層の表面品質および曇り度が損なわれることはない。この方法は、当業者の間では広く公知であり、かつ例えば、Kunststoffextrusionstechnik II, Hanser Verlag, 1986、320ページ以降に記載されている。
【0060】
本発明のの範囲内では、上記の工程、すなわち、ポリカーボネート含有フィルムもしくは層の製造、場合により、プリントおよび他の層との積層を一般的には連続法で行うのが特に有利である。
【0061】
シート製品が得られ、これからポリカーボネート成形品を熱成形することができる。熱成形は、当業者に公知のポリマー成形品の製法であり、この場合に、熱可塑性により成形可能なポリマーから一定の温度を上回って成形することにより所望の成形品になる。この場合に、“成形”には、成形可能なポリマーの形態を変化させる全ての作用、例えば、1軸および2軸延伸ならびに特別な形状の成形品の製造が含まれる。本発明の範囲内で、熱可塑性により成形可能な複合材料は、有利には165℃を上回る温度で熱により成形される。
【0062】
本発明によるポリカーボネート成形品に可能性のある適用分野は、当業者には周知である。これは、1層または多層のポリカーボネート成形品が適切である特に全ての適用に適切である。その特徴的な特性に基づき、これは特に厳しい防火要求条件に応えなくてはならない適用分野、特に航空機製造における適用に使用するために適切である。
【0063】
以下の実施例および比較例は、本発明を説明するものであるが、これに限定されるものではない。
【0064】
比較例1
1つの滑らかな側面および1つの構造化された側面を有する市販の黒色に着色された難燃性ポリカーボネート(例えば、MAKROLON(R))を使用した。この材料の厚さは2.0mmであった。前記ポリカーボネートは、ASTM D 2863により32〜35のLOI値を有していた。
【0065】
a)フレーム適用試験
FAR 25.853(a)(1)により、細長い試験体(帯状の形;305mm×75mm)に、側面から平行かつ下側から垂直に60もしくは12秒間、フレームを適用した。ここで試験を3回繰り返した。結果は表1〜4に挙げられており、この場合に、これらの結果を近年許容されている極限値と比較した。
【0066】
【表1】
Figure 0004824264
【0067】
【表2】
Figure 0004824264
【0068】
【表3】
Figure 0004824264
【0069】
【表4】
Figure 0004824264
【0070】
b)煤煙濃度の測定
FAR 25.853(c)およびAITM 2.0007により、NBSチャンバー中に垂直に配置した正方形の試験体(74mm±1mm×74mm±1mm)をI=25kW/mの電気的放射熱源で照射し、次にこの方法で熱分解した。測定器系を用いて、時間に依存して放出された粒子状の煙粒により、光ビームの減衰を測定した。試験を着火フレームでくすぶる条件下で6分間実施した。比光学濃度に関する計算値は、表5にまとめられており、かつ熱可塑性成形品に関して近年有効な極限値Dsmax=200と比較した(4分間の試験時間の間)。
【0071】
【表5】
Figure 0004824264
【0072】
c)煤煙分析
AITM 3.0005により、NBSチャンバー中の煤煙を比色分析管を使用して分析した。結果は、表6中に挙げられており、かつ近年有効であるATSによる極限値と比較した。
【0073】
【表6】
Figure 0004824264
【0074】
例1
1つの滑らかな側面および1つの構造化された側面を有する市販の灰色に着色された難燃性ポリカーボネート(例えば、MAKROLON(R))(材料の厚み:1.2mm)を使用し、この構造化された側面上に非難燃性ポリカーボネートフィルム(厚さ:80μm)を積層した。難燃性ポリカーボネートは、ASTM D 2863により32〜35のLOI値を有し、非難燃性ポリカーボネートはASTM D 2863により26のLOI値を有していた。
【0075】
a)フレーム適用試験
比較例1のように実施し、結果は表7〜10にまとめられている:
【0076】
【表7】
Figure 0004824264
【0077】
【表8】
Figure 0004824264
【0078】
【表9】
Figure 0004824264
【0079】
【表10】
Figure 0004824264
【0080】
b)煤煙濃度の測定
比較例1のように実施し、結果は表11にまとめられている:
【0081】
【表11】
Figure 0004824264
【0082】
c)煤煙分析
比較例1のように実施し、結果は表12にまとめられている:
【0083】
【表12】
Figure 0004824264
【0084】
例2:
1つの滑らかな側面および1つの構造化された側面を有する市販の灰色に着色された難燃性ポリカーボネート(例えば、MAKROLON(R))(材料の厚み:2.0mm)を使用し、この構造化された側面上に非難燃性ポリカーボネートフィルム(厚さ:90μm)を積層した。難燃性ポリカーボネートは、ASTM D 2863により32〜35のLOI値を有し、非難燃性ポリカーボネートはASTM D 2863により26のLOI値を有していた。
【0085】
a)フレーム適用試験
比較例1のように実施し(垂直試験のみ)、結果は表13および14にまとめられている:
【0086】
【表13】
Figure 0004824264
【0087】
【表14】
Figure 0004824264
【0088】
b)煤煙濃度の測定
比較例1のように実施し、結果は表15にまとめられている:
【0089】
【表15】
Figure 0004824264
【0090】
c)煤煙分析
比較例1のように実施し、結果は表16にまとめられている:
【0091】
【表16】
Figure 0004824264
【0092】
例3:
1つの滑らかな側面および1つの構造化された側面を有する市販の灰色に着色された難燃性ポリカーボネート(例えば、MAKROLON(R))(材料の厚み:1.0mm)を使用し、この構造化された側面上に非難燃性ポリカーボネートフィルム(厚さ:175μm)を積層した。難燃性ポリカーボネートは、ASTM D 2863により32〜35のLOI値を有し、非難燃性ポリカーボネートはASTM D 2863により26のLOI値を有していた。
【0093】
a)フレーム適用試験
例2のように実施し(垂直試験のみ)、結果は表17および18にまとめられている:
【0094】
【表17】
Figure 0004824264
【0095】
【表18】
Figure 0004824264
【0096】
b)煤煙濃度の測定
比較例1のように実施し、結果は表19にまとめられている:
【0097】
【表19】
Figure 0004824264
【0098】
c)煤煙分析
比較例1のように実施し、結果は表20にまとめられている:
【0099】
【表20】
Figure 0004824264
【0100】
例4:
1つの滑らかな側面および1つの構造化された側面を有する市販の灰色に着色された難燃性ポリカーボネート(例えば、MAKROLON(R))(材料の厚み:2.0mm)を使用し、この構造化された側面上に非難燃性ポリカーボネートフィルム(厚さ:500μm)を積層した。難燃性ポリカーボネートは、ASTM D 2863により32〜35のLOI値を有し、非難燃性ポリカーボネートはASTM D 2863により26のLOI値を有していた。
【0101】
a)フレーム適用試験
例2のように実施し(垂直試験のみ)、結果は表21および22にまとめられている:
【0102】
【表21】
Figure 0004824264
【0103】
【表22】
Figure 0004824264
【0104】
b)煤煙濃度の測定
比較例1のように実施し、結果は表23にまとめられている:
【0105】
【表23】
Figure 0004824264
【0106】
c)煤煙分析
比較例1のように実施し、結果は表24にまとめられている:
【0107】
【表24】
Figure 0004824264

【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、チル・ロールを表す図である。
【図2】 図2は、チル・ロールを表す図である。
【符号の説明】
1 押出機、 2 ローラー、 3 ローラー、 4 フィルム

Claims (10)

  1. 航空機チャンバー内装備品用の、少なくとも2つの層を有する熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料において、少なくとも1層が31を上回るLOI値を有し、かつ1.0mm〜3mmの厚さであり、並びに少なくとも1層が、29未満のLOI値を有し、かつ30μm〜500μmの厚さであり、かつポリカーボネート複合材料の外層であり、かつ29未満のLOI値を有する少なくとも1つの層の厚みと、31を上回るLOI値を有する少なくとも1つの層の厚みの比は、0.01〜0.25の範囲内であることを特徴とする、航空機チャンバー内装備品用の、少なくとも2つの層を有する熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料。
  2. 29未満のLOI値を有する少なくとも1つの層が、
    e)混合物の全質量に対して、少なくとも1種のポリカーボネート40〜100質量%、
    f)混合物の全質量に対して、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ABS、ASAおよびPBTの群から成る少なくとも1種のポリマー0〜40質量%、
    g)混合物の全質量に対して、静電防止剤、抗酸化剤、染料、充填剤、光安定剤、顔料、UV−吸収剤、耐候安定剤および可塑剤の群から成る少なくとも1種の添加剤0〜10質量%
    (その際、e)、f)およびg)の合計は、100質量%である)
    から成る混合物から得られる、請求項に記載の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料。
  3. 2、3、4または5つの層から成る、請求項1または2に記載の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料。
  4. 29未満のLOI値を有する少なくとも1つの層の量と、31を上回るLOI値を有する少なくとも1つの層の量の比は、0.01〜0.5の範囲内である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料。
  5. 31を上回るLOI値を有する層と29未満のLOI値を有する層との間に、3番目の層を有し、その際、前記3番目の層は装飾層である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料。
  6. FAR 25.853 (a) (1) (i)により、エッジに60秒間垂直にフレーム適用する際に、150mm未満の燃焼長さを有し、残炎時間が15秒未満であり、かつ滴下材料の燃焼時間が3秒未満である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料。
  7. 4分間の試験時間の間のFAR 25.853 (c)およびAITM 2.0007による比光学濃度は、Dsmax=200を上回らない、請求項1からまでのいずれか1項に記載の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料。
  8. 請求項1からまでのいずれか1項に記載の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の製法において、
    a)29未満のLOI値を有する少なくとも1種の乾燥混合物および31を上回るLOI値を有する少なくとも1種の乾燥混合物を押出し、かつ
    b)得られたフィルムおよび場合により他のフィルムを相互に積層して熱可塑性により成形可能な複合材料を得ることを特徴とする、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の製法。
  9. 請求項1からまでのいずれか1項に記載の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の製法において、
    a)29未満のLOI値を有する少なくとも1種のフィルムの表面に光学効果を付与し、引き続き
    b)光学効果を付与された29未満のLOI値を有するフィルムを、31を上回るLOI値を有するフィルムと積層して、得られる熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料が、29未満のLOI値を有する層と31を上回るLOI値を有する層との間に少なくとも1つの装飾層を有するようにすることを特徴とする、熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料の製法。
  10. 請求項1からまでのいずれか1項に記載の熱可塑性により成形可能なポリカーボネート複合材料が熱可塑性により成形されている方法により得られる、航空機チャンバー内装備品用の難燃性ポリカーボネート成形品。
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