JP4823974B2 - 蓄電池の残存容量検知方法及び残存容量検知装置 - Google Patents

蓄電池の残存容量検知方法及び残存容量検知装置 Download PDF

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Description

本発明は、蓄電池の残存容量検知方法及び残存容量検知装置に関するものである。
近年、自動車には多くの電気デバイスが使われるようになっており、これに伴って車載電源の重要度が高まっている。車載電源に対する要求は、20〜30年以上の過去においてはエンジンのスタート、エアコン、ランプの点灯程度の機能に限られていた。これに対し、近年はバイワイヤー化が進み、電動ブレーキ(EPB)に代表される安全系の部品を電気で制御するようになってきている。また、省エネや二酸化炭素の排出規制に伴って、燃費改善の対策として、交差点などの短時間停止時のアイドリングストップ機能とその再始動能力の確保が求められている。このように多種多様な機能が電源及び電池に求められており、これに対応して電池の状態検知精度の向上が望まれている。
そのような中で、特に蓄電池の残存容量(SOC:State of charge)を精度良く検知することは、EPB等の電気デバイスの安定動作に繋がり、自動車の走行を安全・快適に行い、環境に配慮した車社会を実現する上で重要な技術である。
一般に、蓄電池が安定した条件下では、その開放端電圧(OCV)とSOCとは、1:1に対応する関係がある。しかしながら、充放電を行った後の蓄電池は、電気化学反応による極板表面でのイオンの生成・消滅反応、及び電解液の拡散や対流によるイオンの移動、のそれぞれの影響を受けている。そのため、安定したOCVに収束するまでに時間がかかり(例えば20時間程度)、このような経時変化がある場合には、OCVとSOCとが1:1に対応しなくなってしまう。図14は、蓄電池のSOC及び温度が一定のときの放電後のOCVの経時変化の一例を示す図である。SOCが一定であっても、OCVが一定値に安定するまでに時間がかかることを示している。
このような経時変化の影響を補正してSOCを算出する従来技術の一例として、特許文献1がある。これは二次電池のSOC検出方法として、内部抵抗等による電圧降下を加味した電圧を起点として、そこからのΔVを分極(polarization)とみなして電圧を補正し、補正された電圧から相関テーブルを用いてSOCを求めるようにしている。
また、別の従来技術として、特許文献2に記載の二次電池のSOC検出方法が開示されている。ここでは、開放電圧と残存容量との関係を測定データとして保持し、その関係を算出するために分極の扱いを考慮している。分極の補正のためには、早い反応と遅い反応とが関係しているが、早い反応が終了し、遅い反応が安定してきた状態を分極影響が少ない状態と判断して、その条件でSOCを検知するという方法である。
特開平11−7984号公報 特開平2005−83970号公報
しかしながら、従来のSOC検出方法では、以下のような課題があった。特許文献1に開示されている二次電池のSOC検出方法ではLi電池が対象と思われ、極板表面で起きる電気化学反応に着眼し、反応寿命の早い現象のみの補正を考慮している。一方で車載に搭載される鉛蓄電池では極板表面の反応だけでなく、希硫酸を基本とする成層化現象の影響も受けて反応過程が進行するため、単一の分極という概念の導入だけでは、精度の良いSOCを求められない。
また特許文献2に記載の方法では、遅い反応が安定してくるまでに時間を要するため、交差点での車両停止時のアイドリングストップ機能とそこからの再始動という短時間での停止条件では、SOCの検知が再始動確保の判定に間に合わないという問題がある。また、かかる短時間でSOCを検知しようとすれば、速い反応による分極の影響が残り、正確にSOCを検知できないという問題がある。
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、分極に伴う速い変化と遅い変化とを別々に推定することで残存容量を高精度に検知する蓄電池の残存容量検知方法及び残存容量検知装置を提供することを目的とする。
本発明の蓄電池の残存容量検知方法の第1の態様は、蓄電池の残存容量検知方法であって、 前記蓄電池の充放電停止後の経過時間がtのときの前記蓄電池の電圧OCVmes(t)を測定するステップと、事前に作成された急反応電圧変化式Ffast(t)と緩反応電圧変化式Fslow(t)とで表わされる、下記の式1及び式2
より平衡開放端電圧OCVbaseを算出するステップと、所定の開放端電圧対残存容量の相関式または相関表に基づいて前記平衡開放端電圧OCVbaseに対応する残存容量を検知するステップと、を含むことを特徴とする。
本発明の蓄電池の残容量検知方法の第2の態様は、前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、前記蓄電池の温度を第1のパラメータとして持ち、前記経過時間がtのときの前記蓄電池の温度Tmesを測定するステップと、前記第1のパラメータの値を前記温度Tmesとしたときの前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップと、を更に含むことを特徴とする。
本発明の蓄電池の残容量検知方法の第3の態様は、前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、前記残存容量を第2のパラメータとして持ち、前記第2のパラメータの値を前回検知した残存容量SOCn−1としたときの前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップと、をさらに含むことを特徴とする。
本発明の蓄電池の残容量検知方法の第4の態様は、前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、前記残存容量を第2のパラメータとして持ち、前回の充放電開始から前記充放電停止までの前記蓄電池の電流積算値ΔSOCを算出するステップと、前記第2のパラメータの値を前回検知した残存容量SOCn−1と前記電流積算値ΔSOCとの加算値としたときの前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップと、をさらに含むことを特徴とする。
本発明の蓄電池の残容量検知方法の第5の態様は、前記第2のパラメータとして、前回検知した残存容量SOCn−1またはこれに前記電流積算値ΔSOCを加算した値から、予め作成された自然放電量算出式FD(t)で算出される自然放電量を減算した値を用いることを特徴とする。
本発明の蓄電池の残容量検知方法の第6の態様は、前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、前記蓄電池の劣化度を第4のパラメータとして持ち、前記第4のパラメータに前記蓄電池の所定の履歴データを代入して前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップをさらに含むことを特徴とする。
本発明の蓄電池の残容量検知方法の第7の態様は、前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、次式
で表わされることを特徴とする。
本発明の蓄電池の残存容量検知装置の第1の態様は、蓄電池の電圧を測定する電圧センサと、事前に作成された急反応電圧変化式Ffast(t)と緩反応電圧変化式Fslow(t)とを記憶する記憶部と、前記蓄電池の充放電停止後の経過時間がtのとき、前記電圧センサから電圧OCVmes(t)を入力し、次式
より平衡開放端電圧OCVbaseを算出し、所定の開放端電圧対残存容量の相関式または相関表に基づいて前記平衡開放端電圧OCVbaseに対応する残存容量を検知する制御部と、を備えることを特徴とする。
本発明の蓄電池の残存容量検知装置の第2の態様は、蓄電池の温度を測定する温度センサをさらに備え、前記制御部が、前記温度センサにより測定された前記経過時間がtのときの前記蓄電池の温度Tmesをもとに、前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップをさらに含むことを特徴とする。
本発明の蓄電池の残存容量検知装置の第3の態様は、蓄電池の電流を測定する電流センサをさらに備え、前記制御部が、前記電流センサにより測定された電流値をもとに、前回の充放電開始から前記充放電停止までの期間における前記蓄電池の電流積算値ΔSOCを算出するステップと、前記電流積算値ΔSOCを用いて前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップをさらに含むことを特徴とする。
本発明によれば、分極に伴う速い変化と遅い変化とを別々に推定することで残存容量を高精度に検知する蓄電池の残存容量検知方法及び残存容量検知装置を提供することができる。
本発明の好ましい実施の形態における蓄電池の制御方法及び残存容量検知装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
本発明の第1の実施の形態に係る蓄電池の残存容量検知装置の構成図を図2に示す。本実施形態の蓄電池の残存容量検知装置100は、蓄電池10の状態量を測定するためのセンサとして、蓄電池10の電圧を測定する電圧センサ101と、温度を測定する温度センサ102とを備えている。
制御部110は、各センサから蓄電池10の必要な測定データを入力し、下記で説明する所定の処理によって蓄電池10の残存容量を検知している。また、記憶部120は制御部110で行われる処理に必要な各種算出式やデータ等を保存している。これに加えて、各センサで測定された蓄電池10の測定データを記憶部120に記憶させるようにしてもよい。
本発明の第1の実施形態に係る蓄電池の残存容量検知方法を、図2の残存容量検知装置100を参照して以下に説明する。充放電を行った後の蓄電池10の開放端電圧は、電気化学反応による極板表面でのイオンの生成・消滅反応に伴う経時的な変化と、電解液の拡散・沈殿・対流によるイオンの移動に伴う経時的な変化とを合わせた変化を示す。図3は、充電後の電圧変化の一例を示しており、開放端電圧は漸次減少する変化(ΔVpol)を示す。図3において、符号21は前者の極板表面でのイオンの生成・消滅反応に伴う経時的な電圧変化を模式的に示しており、符号22は後者の電解液の拡散・沈殿・対流によるイオン移動に伴う経時的な電圧変化を模式的に示している。そして、符号20は、符号21の電圧変化と符号22の電圧変化とを合わせた電圧変化を示している。さらに、符号23は電圧変化の測定値を示している。
図3に示した一例のように、符号21の極板表面でのイオンの生成・消滅反応に伴う経時的な電圧変化は、時間的に速い変化であり、充放電停止直後は大きな変化を示すが、短時間のうちに変化が小さくなって安定する。これに対し、符号22の電解液の拡散・沈殿・対流によるイオン移動に伴う経時的な電圧変化は、時間的に遅い変化であり、安定するまでに長時間を要する。
なお、図3は充電後の開放端電圧の変化を示したが、放電後の開放端電圧はこれとは逆に、漸次増大する変化(図4)となる。
本実施形態の残存容量検知方法では、符号21の時間的に速い電圧変化と符号22の時間的に遅い電圧変化とを分けて評価するようにしている。蓄電池10の充放電を停止してからの経過時間をtとするとき、経過時間tの時点から前者の時間的に速い電圧変化が安定するまでの電圧変化量を関数Ffast(t)で表わし、後者の時間的に遅い電圧変化が安定するまでの電圧変化量を関数Fslow(t)で表わすものとする。また、経過時間tの時点から蓄電池10の開放端電圧が安定するまでの変化量(図4のΔVpol)をΔVpol(t)とするとき、制御部110においてΔVpol(t)を次式で算出している。
また、経過時間tの時点で電圧センサ101を用いて測定した電圧測定値をOCVmes(t)とし、長時間経過して安定したときの蓄電池10の平衡開放端電圧をOCVbaseとするとき、制御部110において平衡開放端電圧OCVbaseを次式で算出している。
なお、(式8)において、蓄電池10の放電後の開放端電圧変化ΔVpol(t)は正(+)の値となり、充電後の開放端電圧変化ΔVpol(t)は負(―)の値となる。
平衡開放端電圧OCVbaseは、蓄電池10の残存容量SOCと例えば図5に示すような1:1の関係がある。そこで、図5に示す関係を表わす所定の相関式を事前に作成して記憶部120に記憶させておき、制御部110がこれを読み込んで蓄電池10の残存容量SOCを算出するようにすることができる。あるいは、図5に示す関係を所定の相関表の形式で表わして記憶部120に記憶させ、これを読み込んで用いるようにしてもよい。
残存容量SOCが平衡開放端電圧OCVbaseの関数GSOC(OCVbase)で表わされて記憶部120に記憶されている場合には、(式8)で算出した平衡開放端電圧OCVbaseを用いてGSOC(OCVbase)を算出することで、蓄電池10の残存容量SOCを高精度に求めることができる。また、残存容量SOCが平衡開放端電圧OCVbaseとの相関表で表わされて記憶部120に記憶されている場合には、(式8)で算出した平衡開放端電圧OCVbaseに対応する残存容量SOCを参照する、あるいは内外挿することによって残存容量SOCを算出することができる。
上記のようにして検知された残存容量SOCは、例えば表示部130に適宜表示させるようにすることができる。あるいは、制御部110において検知された残存容量SOCを所定の閾値と比較し、残存容量SOCが所定の閾値より低下していると判定された場合に、表示部130に残存容量が不足していることを表示させるようにしてもよい。
開放端電圧の変化量ΔVpol(t)を算出するのに用いる関数Ffast(t)及び関数Fslow(t)は、事前に作成したものを記憶部120に記憶させておき、残存容量SOCを算出する時点で制御部110が記憶部120から読み込んで用いるようにすることができる。関数Ffast(t)及び関数Fslow(t)として、次式に示す関数を用いることで経過時間tに伴うそれぞれの変化を高精度に近似することができる。なお、これらの関数を充電後のΔVpol(t)の算出に用いる場合には、係数A及びDはいずれも負の値、放電後のΔVpol(t)の算出に用いる場合には、係数A及びDはいずれも正の値となる。
ここで、係数A〜Fを定数として記憶部120に記憶させておくことも可能であるが、本実施形態では、係数A〜Fを蓄電池10の温度Tの関数で表わし、これを記憶部120に記憶させるようにしている。すなわち、係数A〜Fは第1のパラメータとして蓄電池10の温度Tを有しており、制御部110において、温度センサ103から入力した蓄電池10の温度を、記憶部120から読み込んだ係数A〜Fの第1のパラメータTに代入することで、関数Ffast(t)及び関数Fslow(t)の係数を決定している。蓄電池10の開放端電圧は、温度Tの影響を強く受けることから、係数A〜Fを温度Tに依存して決定させるようにすることで、開放端電圧の変化量ΔVpol(t)を(式7)から高精度に算出することが可能となる。
本実施形態の残存容量検知方法の処理の流れを、図1に示す流れ図を用いて詳細に説明する。ここでは、残存容量検知装置100が、蓄電池10の充放電停止後所定の時間幅Δt毎に残存容量SOCを検知するものとしており、ステップS1では、充放電停止後の時間tが前回実行時の経過時間tn−1からΔt経過してtに達したことを示している。ステップS2では、経過時間t=tの時の蓄電池10の電圧OCVmes(t)及び温度Tmes(t)を、それぞれ電圧センサ101及び温度センサ102から入力している。
ステップS3では、時刻tn−1におけるSOCn−1とそのときの電池電圧測定値Vmes(tn−1)から、ΔVmes=Vmes(t)−Vmes(tn−1)を算出し、現在のΔVmes/Δtが予め実験などにより決められたΔV/ΔtとΔSOCとの関係を記憶部120に参照することによって、Δtの間に生じたΔSOCを算出する。
このようにして算出されたΔSOCが正(+)の場合は現在が放電後の状態であり、ΔSOCが負(−)の場合は現在が充電後の状態である、と判断する(ステップS4)。
ステップS5では、記憶部120から(式9)の関数Ffast(t)及び(式10)の関数Fslow(t)を読み込み、各係数A〜Fを温度Tmes(t)を用いて決定している。すなわち、係数A〜Fは温度Tを第1のパラメータとし、これに測定温度Tmes(t)を代入することで決定されるようにしている。ステップS6では、ステップS5で決定された係数A〜Fを用いて (式7)より開放端電圧変化量ΔVpol(t)を算出し、ステップS7では電圧測定値OCVmes(t)と開放端電圧変化量ΔVpol(t)とから平衡開放端電圧OCVbaseを算出している。
ステップS8では、記憶部120から関数GSOC(OCV)を読み込み、OCVにステップS7で算出した平衡開放端電圧OCVbaseを代入して残存容量SOCを算出する。このようにして検知された残存容量SOCを表示部130に表示してもよいが、本実施形態では、ステップS9で所定の閾値SOCLIMと比較し、SOC<SOCLIMのとき蓄電池10の残存容量が不足と判断して、ステップS10で表示部130に警報を表示させるようにしている。
ここで、t=tの初期状態ではSOC=SOCであり、電池製造時の設計仕様で決まる満充電容量(SOC=100%)をSOCとして決める。対象となる電池の製造と本状態検知装置の組み付けが同時に行えない場合は、電池の製造から状態検知装置の組み付けまでに生じる劣化補正パラメータSOHを予め算出しておき、電池と状態検知装置を組み合わせ後のSOCに対して、SOHを補正した値をSOC’として、状態検知装置による状態検知を開始する。
本実施形態の残存容量検知方法を用いて平衡開放端電圧OCVbaseを算出した一例を図6〜9に示す。図6、7は、蓄電池10の充電を停止した後の開放端電圧の変化を示しており、図8、9は、蓄電池10の放電を停止した後の開放端電圧の変化を示している。図6(a)は、残存容量100%の状態で充電を停止した後の測定電圧OCVmes(t)31、(式8)から算出した平衡開放端電圧OCVbase32、関数Ffast(t)から算出した速い電圧変化33、及び関数Fslow(t)から算出した遅い電圧変化34を示している。ここで、測定電圧OCVmes(t)31及び平衡開放端電圧OCVbase32は、左側の縦軸で表わしており、関数Ffast(t)33及び関数Fslow(t)34は、右側の縦軸で表わしている。同図より、充電停止後のどの時点においても、ほぼ一定の平衡開放端電圧OCVbase32を求めることができることがわかる。
図6(b)は、充電停止後20時間(72000秒)経過したときの開放端電圧を平衡開放端電圧OCVeqとみなし、測定電圧OCVmes(t)31とOCVeqとの差をΔVmes35(左側縦軸)、及び(式8)で算出されたOCVbaseとOCVeqとの差をΔVbase36(右側縦軸)として示している。同図より、充電停止後の開放端電圧は安定するまでに600mV以上変化することがΔVmes35で示されており、この変化を(式8)を用いて推定した場合には、最大約14mVの誤差範囲内で平衡開放端電圧を求めることができることがわかる。
図6では、充電停止後1000秒(横軸)までの電圧変化を示していたが、さらに長時間の80000秒までの変化を図7に示す。図7(a)、(b)は、それぞれ図6(a)、(b)に対応しており、横軸の時間長さだけが異なっている。図7(a)において、長時間経過後に測定電圧OCVmes(t)31と平衡開放端電圧OCVbase32とがほぼ一致しており、図7(b)において、誤差ΔVbase36はほぼゼロに収束することが分かる。なお、図7(a)では、早い電圧変化を示すFfast(t)33は短時間にゼロとなってしまうため、その変化をほとんど見ることができない。
同様にして、蓄電池10の放電を停止した後の開放端電圧の変化を図8、9に示す。図8(a)は、残存容量100%の状態から10%放電して停止した後の測定電圧OCVmes(t)31、(式8)から算出した平衡開放端電圧OCVbase32、関数Ffast(t)から算出した速い電圧変化33、及び関数Fslow(t)から算出した遅い電圧変化34を示している。ここで、測定電圧OCVmes(t)31及び平衡開放端電圧OCVbase32は、左側の縦軸で表わしており、関数Ffast(t)33及び関数Fslow(t)34は、右側の縦軸で表わしている。同図より、放電停止後のどの時点においても、ほぼ一定の平衡開放端電圧OCVbase32を求めることができることがわかる。
図8(b)は、放電停止後20時間(72000秒)経過したときの開放端電圧を平衡開放端電圧OCVeqとみなし、測定電圧OCVmes(t)31とOCVeqとの差をΔVmes35(左側縦軸)、及び(式8)で算出されたOCVbaseとOCVeqとの差をΔVbase36(右側縦軸)として示している。同図より、放電停止後の開放端電圧は安定するまでに150mV以上変化することがΔVmes35で示されており、この変化を(式8)を用いて推定した場合には、最大8mV程度の誤差範囲内で平衡開放端電圧を求めることができることがわかる。
図9(a)、(b)は、図7と同様に、それぞれ図8(a)、(b)に対応して横軸の時間長さを80000秒としたときの電圧変化を示している。図9(a)において、長時間経過後に測定電圧OCVmes(t)31と平衡開放端電圧OCVbase32とがほぼ一致しており、図9(b)において、誤差ΔVbase36は2〜4mV程度に収束することが分かる。なお、図9(a)では、図7(a)に示した充電の場合と同様に、早い電圧変化を示すFfast(t)33は短時間にゼロとなってしまうため、その変化をほとんど見ることができない。
本発明の第2の実施の形態に係る蓄電池の残存容量検知方法を、図10に示す流れ図を用いて詳細に説明する。本実施形態では、第1の実施形態のステップS5に代わるステップS11において、関数Ffast(t)及びFslow(t)の係数A〜Fを温度Tmes(t)と前回検知した残存容量SOCn−1を用いて決定している。すなわち、本実施形態の係数A〜Fは、温度Tを第1のパラメータとし、残存容量SOCを第2のパラメータとしており、それぞれに測定温度Tmes(t)及び前回検知した残存容量SOCn−1を代入することで決定されるようにしている。
本発明の第2の実施の形態に係る蓄電池の残存容量検知装置の構成図を図11に示す。本実施形態の蓄電池の残存容量検知装置200は、蓄電池10の電流を測定する電流センサ103をさらに備えている。そして、蓄電池10の充放電中は、制御部110において電流センサ103で測定した電流を積算して残存容量の変化量ΔSOCを算出する。
本発明の第3の実施形態に係る蓄電池の残存容量検知方法は、図11に示した残存容量検知装置200を用いて、図12に示すような処理を行う。本実施形態では、残存容量検知装置200が電流センサ103を備えていることから、ステップS21で電流センサ103から電流測定値Imesを入力し、ステップS22で電流測定値Imesの絶対値が所定の閾値ILIMより小さいときを充放電停止中と判定させ、それ以外を充放電中と判定させるようにしている。
ステップS22で充放電中と判定されると、ステップS23において測定電流Imesの時間積算値である残存容量の変化量ΔSOCを算出し、これをデータとして保持しておく。一方、ステップS22で充放電停止中と判定されると、図1に示した処理の流れと同様に、ステップS1〜S10の処理を順次行って残存容量SOCの検知及び残存容量SOCが不足するか否かの判定を行う。
なお、充放電停止中において、その前の充放電時の電流測定値Imesの変化のデータから、現在が放電後の状態であるか、充電後の状態であるかを判定する(S4)。
但し、本実施形態では、ステップS4の次にステップS24を追加し、ここで前回検知した残存容量SOCn−1にΔSOCを加算して残存容量推定値SOC’を算出し、その後ΔSOCをゼロとしている。ΔSOCをゼロとするのは、ステップS22で再び充放電中と判定されたときに、ステップS23でΔSOCに電流の時間積算値を保存できるようにするためである。次のステップS25では、第1の実施形態のステップS5あるいは第2の実施形態のステップS11に代えて、関数Ffast(t)及びFslow(t)の係数A〜Fを温度Tmes(t)(第1のパラメータ)と残存容量推定値SOC’(第2のパラメータ)を用いて決定するようにしている。前回検知した残存容量SOCn−1を用いる代わりにこれに残存容量変化量ΔSOCを加算して補正したSOC’を用いることで、関数Ffast(t)及びFslow(t)の係数A〜Fをより高精度に決定することができる。
本発明の第4の実施形態に係る蓄電池の残存容量検知方法を、図13に示す処理の流れ図を用いて以下に説明する。本実施形態では、関数Ffast(t)及びFslow(t)の係数A〜Fを決定するのに自然放電量を反映するようにしている。蓄電池10の自然放電は、これが高温、高電圧のときに特に大きくなる。ステップS31において、事前に作成された自然放電量算出式FD(t)を用いて、自然放電量FD(t)を減算した残存容量推定値SOC’を算出するようにしている。自然放電量を反映した残存容量推定値SOC’を用いることで、関数Ffast(t)及びFslow(t)の係数A〜Fをより高精度に決定することができる。
本発明の第5の実施形態に係る蓄電池の残存容量検知方法として、関数Ffast(t)及びFslow(t)の係数A〜Fが第3のパラメータとして蓄電池10の劣化度SOHを持つようにすることができる。関数Ffast(t)及びFslow(t)の係数A〜Fに劣化度SOHを反映させるようにすることで、開放端電圧の変化量ΔVpol(t)をより高精度に決定することができる。
上記説明の通り、本発明によれば、分極に伴う速い変化と遅い変化とを別々に推定することで残存容量を高精度に検知する蓄電池の残存容量検知方法及び残存容量検知装置を提供することができる。蓄電池のSOCを精度良く検知することによって、電気デバイスの安定動作を確保し、または危険予知を促すことが可能となり、車の運行を安全に保つ効果が得られる。また、アイドリングストップ機能の精度向上を図ることができ、環境負荷を低減させることができる。
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る蓄電池の制御方法及び残存容量検知装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における蓄電池の制御方法及び残存容量検知装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明の第1の実施形態に係る蓄電池の残存容量検知方法を説明する流れ図である。 本発明の第1の実施の形態に係る蓄電池の残存容量検知装置の構成図である。 充放電後の蓄電池の開放端電圧の経時的な変化の一例を示す図である。 蓄電池の開放端電圧が平衡値に達するまでの変化を示す図である。 蓄電池の平衡開放端電圧と残存容量との関係を示す図である。 本実施形態の残存容量検知方法を用いて算出した充電停止後の平衡開放端電圧の一例を示す図である(横軸1000秒)。 本実施形態の残存容量検知方法を用いて算出した充電停止後の平衡開放端電圧の一例を示す図である(横軸8000秒)。 本実施形態の残存容量検知方法を用いて算出した放電停止後の平衡開放端電圧の一例を示す図である(横軸1000秒)。 本実施形態の残存容量検知方法を用いて算出した放電停止後の平衡開放端電圧の一例を示す図である(横軸8000秒)。 本発明の第2の実施形態に係る蓄電池の残存容量検知方法を説明する流れ図である。 本発明の第2の実施の形態に係る蓄電池の残存容量検知装置の構成図である。 本発明の第3の実施形態に係る蓄電池の残存容量検知方法を説明する流れ図である。 本発明の第4の実施形態に係る蓄電池の残存容量検知方法を説明する流れ図である。 温度及びSOCが一定のときの蓄電池のOCVの経時変化の一例を示す図である。
符号の説明
10 蓄電池
100 残存容量検知装置
101 電圧センサ
102 温度センサ
103 電流センサ
110 制御部
120 記憶部
130 表示部

Claims (10)

  1. 蓄電池の残存容量検知方法であって、
    前記蓄電池の充放電停止後の経過時間がtのときの前記蓄電池の電圧OCVmes(t)を測定するステップと、
    事前に作成された急反応電圧変化式Ffast(t)と緩反応電圧変化式Fslow(t)とで表わされる、下記の式1及び式2
    より平衡開放端電圧OCVbaseを算出するステップと、
    所定の開放端電圧対残存容量の相関式または相関表に基づいて前記平衡開放端電圧OCVbaseに対応する残存容量を検知するステップと、
    を含むことを特徴とする蓄電池の残存容量検知方法。
  2. 前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、前記蓄電池の温度を第1のパラメータとして持ち、
    前記経過時間がtのときの前記蓄電池の温度Tmesを測定するステップと、
    前記第1のパラメータの値を前記温度Tmesとしたときの前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップと、
    をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池の残存容量検知方法。
  3. 前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、前記残存容量を第2のパラメータとして持ち、
    前記第2のパラメータの値を前回検知した残存容量SOCn−1としたときの前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップと、
    をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の蓄電池の残存容量検知方法。
  4. 前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、前記残存容量を第2のパラメータとして持ち、
    前回の充放電開始から前記充放電停止までの前記蓄電池の電流積算値ΔSOCを算出するステップと、
    前記第2のパラメータの値を前回検知した残存容量SOCn−1と前記電流積算値ΔSOCとの加算値としたときの前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップと、
    をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の蓄電池の残存容量検知方法。
  5. 前記第2のパラメータとして、前回検知した残存容量SOCn−1またはこれに前記電流積算値ΔSOCを加算した値から、予め作成された自然放電量算出式FDh(t)で算出される自然放電量を減算した値を用いる
    ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の蓄電池の残存容量検知方法。
  6. 前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、前記蓄電池の劣化度を第4のパラメータとして持ち、
    前記第4のパラメータに前記蓄電池の所定の履歴データを代入して前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップをさらに含む
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蓄電池の残存容量検知方法。
  7. 前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)は、次式
    で表わされる
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の蓄電池の残存容量検知方法。
  8. 蓄電池の電圧を測定する電圧センサと、
    事前に作成された急反応電圧変化式Ffast(t)と緩反応電圧変化式Fslow(t)とを記憶する記憶部と、
    前記蓄電池の充放電停止後の経過時間がtのとき、前記電圧センサから電圧OCVmes(t)を入力し、次式
    より平衡開放端電圧OCVbaseを算出し、所定の開放端電圧対残存容量の相関式または相関表に基づいて前記平衡開放端電圧OCVbaseに対応する残存容量を検知する制御部と、
    を備えることを特徴とする蓄電池の残存容量検知装置。
  9. 蓄電池の温度を測定する温度センサをさらに備え、
    前記制御部が、前記温度センサにより測定された前記経過時間がtのときの前記蓄電池の温度Tmesをもとに、前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップを
    さらに含むことを特徴とする請求項8に記載の蓄電池の残存容量検知装置。
  10. 蓄電池の電流を測定する電流センサをさらに備え、
    前記制御部が、前記電流センサにより測定された電流値をもとに、前回の充放電開始から前記充放電停止までの期間における前記蓄電池の電流積算値ΔSOCを算出するステップと、
    前記電流積算値ΔSOCを用いて前記急反応電圧変化式Ffast(t)及び前記緩反応電圧変化式Fslow(t)を決定するステップをさらに含む
    ことを特徴とする請求項9に記載の蓄電池の残存容量検知装置。
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