本発明は、口腔内の異変部を抽出できる光を照射する口腔内照明装置に関し、特に、歯科用エアタービンハンドピース、歯科用マイクロモータハンドピース、歯科用スケーラーハンドピース、歯科用スリーウェイシリンジ、デンタルミラー、バキュームシリンジ、歯科用光重合照射器、レーザハンドピース、歯科用歯面清掃機器などの歯科用インスツルメントに着脱自在に装着できる口腔内照明装置に関する。
従来から、歯科診療において、歯科医は、歯牙の切削、歯垢や歯石の除去、治療箇所の洗浄、切削屑や唾液の回収などの処置をするための工具類が装着された歯科用エアタービンハンドピース、歯科用マイクロモータハンドピース、歯科用スケーラーハンドピース、歯科用スリーウェイシリンジ、デンタルミラー、バキュームシリンジ、歯科用光重合照射器、レーザハンドピース、歯科用歯面清掃器などの各種ハンドピース(又はインスツルメント)を駆使している。このようなハンドピースを用いて口腔内の診療を行う場合には、診療台等に別途設置された無影灯を点灯し、口腔内を照明したうえで、患部に対する診療又は治療作業が行われている。
しかし、患者の姿勢、治療部位、また、歯科医などの作業者の作業方向によっては、口腔内の照明が不足して、観察し難くなる場合も有り、その都度、無影灯の位置調整作業が必要になって、診療又は治療の作業性の低下を招いている。
そこで、近年においては、口腔内照明の不足による診療又は治療の作業性低下を改善した照明装置が種々開発されている。この照明装置の多くは、前述のハンドピースの先端部に光源を設けられるようにして、診療又は治療の際に、口腔内を照明できるようにしたものである。
例えば、コントラアングルタイプの歯科・医科用ハンドピースにおいて、複数の発光ダイオード(LED)が、工具装着部に取り付けられる工具を囲むように配置されることにより、工具周辺の360度の広い範囲に亘って、診療又は治療中の患部を明るく照明できるようにしている(例えば、特許文献1を参照)。このハンドピースでは、複数のLEDを点灯する電力は、ハンドピース本体内に配設された可撓性のリード線又はフレキシブル基板配線によって供給されている。しかしながら、特許文献1の技術では、LEDから照射される照射光の波長が口腔内の異変部を抽出できるものでなく、単なる照明に過ぎないため、異変部を抽出することができない。
また、ハンドピースに異変部を抽出できる光、即ち、励起光を照射する光源を組み込んだものとして、レーザダイオードとライトガイドとを歯科用スケーラー等のハンドピース内部に内蔵し、ハンドピース先端から口腔内に出射された光によって発生した蛍光をフォトダイオードで検出して評価することができる歯科用ハンドピースが知られている(例えば、特許文献2を参照)。このハンドピースにより、齲蝕、プラーク、細菌の感染、結石、歯石などに対する処置が、それらを検出し、評価しながら、簡単に行えるというものである。
しかし、このハンドピースの場合では、口腔内における患部の状態を検出し、評価しながら診療又は治療を行うことができるが、レーザダイオードで励起光を照射したスポット部分についてのみ齲蝕しているかどうかをフォトダイオードで検出し、評価できるだけであり、齲蝕部分の分布についてまでは認識できなかった。また、歯科医が購入済みで施術に使用中の歯科用インスツルメントに装着して使用することはできないものであった。
また、ハンドピース本体内にライトガイドや光源を配設して、口腔内を照明する照明光をハンドピース先端部から照射できるようにしたものも開発されているが、これらは、いずれも照明光を照射するものであって、励起光を照射するものではなかった。更に、例えば、ハンドピースがスケーラーチップを有する場合には、チップの形状や長さが様々でチップ先端の位置が一定ではないために、光が特定の方向に集中しないで、ある程度広がって出射されるように、ライトガイドの出射端がハンドピース本体の前端部においてリング状に配置されている。この配置構成では、ライトガイドが特殊な形状となり、コストが非常に高くなる。さらに、このような形状のライトガイドをハンドピースの本体内に収納するため、その構造が複雑となり、製造コストが高くなる。また、ライトガイドの出射端付近を保持する機構が、スケーラーの基本振動を妨害するため、製品の振動特性に悪影響を与えるという問題点があった。
そこで、ライトガイドを使用しないで、1個または複数個の発光素子をハンドピース本体の前端部に配置し、診療又は治療対象部位に対する照射光を発光素子から直接出射するように構成することが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
このハンドピースに備えられる発光素子としては、白色光を放射するLED、或いは、レーザ光を放射する半導体素子(LD)が使用され、それらの複数個の発光素子が、本体の先端部において、工具類の軸を取り囲むように環状に配置され、或いは、複数個の発光素子を集合して発光素子ユニットに形成され、更には、これらの発光素子が器具本体に対して着脱自在に取り付けられている。これらの発光素子に対する給電は、ハンドピース本体内の配線を介して行なわれている。
また、LEDを構成するベアチップを複数集積して発光素子モジュールを形成し、該発光素子モジュールを、口腔内の診療又は治療すべき部位を照明する照明装置として組み込むことができる歯科用ハンドピースが開発されている(例えば、特許文献4を参照)。この発光モジュールには、電極ピンが備えられ、この電極ピンをハンドピース先端のソケットに接続することにより、ハンドピース後端に接続された電源コードからLEDの駆動用電力が供給される。
しかしながら、特許文献3、4についても、これらの光源から照射される光は、いずれも照明光であって、異変部を抽出する励起光ではなく、しかも、歯科医が購入済みの歯科用インスツルメントに装着して使用することはできないものであった。また、最近になって、LEDや半導体レーザの出力が大きくなってきて始めており、肉眼によって異変部の観察が可能となってきた。
特開2001−112779号公報
特開2001−299699号公報
特開2000−316874号公報
特開2002−306512号公報
通常、例えば、歯科医が齲蝕の治療を行う場合、口腔内を無影灯又は照明機能付きハンドピースで照明して、歯科医の肉眼により齲蝕の検出が行われる。このような肉眼での齲蝕等の検出は、齲蝕が進んで顕在化したものは検出できるが、齲蝕が進んでおらず、肉眼では検出しにくかったものまでは分からなかった。対象部位、即ち、異変部を抽出できるように、蛍光を励起させる励起光を照射する励起光照射用ハンドピースを使用する場合、蛍光の確認によって、その部位が齲蝕であるとの検出を行っている。そこでは、当該歯が齲蝕のある歯牙であることが特定できた。しかしながら、蛍光は、弱い光であって、蛍光のみを見る場合では、正常組織は、輪郭程度しか見えない暗い像であった。
この様に、例えば、齲蝕の治療は、数種類の用途のハンドピースが使用され、齲蝕の部位を確認しながら行われ、治療作業が煩雑なものとなっている。そのため、診療又は治療作業中においては、齲蝕の部位を正確に把握することが難しく、しかも、治療の程度を確かめることが困難であった。特に、完全に齲蝕部が除去されたのかについて、切削の都度、確認しづらいものであった。
それ故、様々な既存のハンドピースに、診療又は治療用の工具等が取り付けられるだけでなく、励起光を照射する照射光源等を着脱自在とすることにより、複数種類の用途のハンドピース全てを齲蝕等の異変部を検出可能なハンドピースとして使用できるものになると都合がよい。更に、口腔内を照明する照明光と、齲蝕等の異変部を抽出できる励起光との両方を照射できる機能が備えられると、齲蝕等の異変部のみならず、異変部周辺の正常な生体組織も、鮮明に視認できるので、ハンドピースの利便性が向上し、診療又は治療を確実に、且つ、効率的に行うことができるようになる。
上述した特許文献1及び3に開示された歯科用ハンドピースでは、工具装着部に取り付けられた工具の周辺を照明することができ、例えば、工具による歯の切削作業中であっても当該歯を明るく照明できる。しかし、切削作業中に当該歯を照明できても、肉眼では判り難い当該歯の齲蝕の程度、特に、軽度の齲蝕等を確かめることが困難である。また、歯石や歯垢の検出も容易ではない。
また、上述の特許文献2に開示されているような歯科用ハンドピースでは、レーザダイオード又はフォトダイオードとライトガイドとがハンドピース内部に内蔵され、ハンドピース先端から出射された光によって発生した蛍光を検出しながら、つまり、励起光を照射した点の蛍光の強さを検出することは可能であり、数点測定して異変部がどの程度に拡がっているかを把握してから、そこで始めて治療を行うことができる。しかしながら、蛍光の発生している場所が、どの程度の広がりを持って分布しているかについて、一目の下に把握することができる観察はできなかった。更に、併せて、口腔内の照明を行うことはできない。
さらに、上述の特許文献4に開示されている歯科用ハンドピースで、工具類が取り付けられるタイプのものでは、発光素子モジュールがハンドピース本体に内蔵されており、しかも、放射できる光は、白色と青色とに限られ、歯牙の齲蝕部位や歯石を抽出可能な特定波長を放射するものではない。
この様に、従来に開発されたハンドピースでは、口腔内の診療又は治療の機能と、口腔内の照明機能と、口腔内の異変部の抽出機能とが別々のハンドピースに組み込まれており、これらの機能を合わせ備えたハンドピースがなかった。従って、医療術者は、診療又は治療にあたって、種々の機能を有するハンドピースを揃えなくてはならず、煩わしいものであった。また、一つのハンドピースに、これらの機能を有するハンドピースとするには、新たに開発しなければならず、ハンドピースの価格が高くなるという問題がある。
そこで、本発明の目的は、光源から放射される励起光又は照明光を口腔内の異変部に照射できるアダプタを、該異変部を診療又は治療するハンドピースに着脱自在に装着できるようにして、既存のハンドピースに他の機能を簡単に付加することができる口腔用照明装置を提供することにある。
以上の課題を解決するため、本発明の口腔内照明装置は、光源を操作する操作部とを備え、前記光源から放射される少なくとも口腔内の異変部を抽出できる波長を有する光を該異変部に照射するアダプタと、前記光源を駆動する電源と、前記異変部を治療する歯科用インスツルメントに前記アダプタを着脱自在に装着できる装着部材と、を有し、前記光源は、複数の波長の光を放射でき、前記光源から放射される光の波長を切り換えて照射するようにした。
そして、前記光源は、発光ダイオード又は半導体レーザの発光素子を含み、或いは、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ又は水銀ランプのランプを含むこととし、前記アダプタには、前記ランプから放射される幅広い波長を有する光から、前記異変部を抽出する特定の波長を選択する光学フィルタを備えるようにした。
前記異変部を抽出する波長は、405±50nmの近紫外線領域、470±30nmの青色領域、700±100nmの赤色領域、赤外線領域、又は、近赤外線領域である。また、前記光源から放射される光は、照明に適した白色光、赤色や黄色の単色光、或いは、光重合樹脂の硬化に適する波長の光を含むこととした。
また、前記光源は、複数の波長の光を放射でき、前記光源から放射される光の波長を切り換えて照射することとし、発光ダイオードや半導体レーザ等においては、一つの光源から複数の波長の光を放射できる。また、前記光源が、異なる波長の光を放射する複数の前記発光素子を含み、前記発光素子の駆動を切り換えることにより、前記波長を選択するようにし、或いは、前記光源が、前記ランプを含む場合には、該ランプから放射される光から、前記異なる波長の光が、光学フィルタの交換によって選択されるようにした。
さらに、前記光源は、複数の発光素子を含み、前記複数の発光素子が、前記アダプタの端部において並置されるようにし、或いは、前記アダプタは、前記歯科用インスツルメントの先端部に着脱自在に嵌め込まれるリング形状を有し、前記光源が、複数の発光素子を含み、前記複数の発光素子が、前記アダプタの端部において環状に配置されていることとした。
また、前記光源を駆動操作する操作部が、前記アダプタに設けられ、さらには、前記電源は、前記アダプタに設けられていることとし、前記電源は、一次電池又は二次電池であることとした。
前記光源は、前記アダプタとは分離されて設けられた前記電源により駆動されることとし、前記電源は、前記歯科用インスツルメントの本体に着脱自在に装着され、さらに、前記光源を駆動操作する操作部が、前記歯科用インスツルメントの本体に着脱自在に装着されることとした。
また、前記装着部材は、前記アダプタを前記歯科用インスツルメントの本体に弾性的に保持するようにした。
また、前記アダプタは、前記光源から放射され、導光部材により導光された前記光の照射部を有することとした。
前記アダプタは、前記歯科用インスツルメントの本体の軸方向と直交する平面を有するフィルタ板を備えることとした。
前記歯科用インスツルメントが、前記異変部を照明する照明手段を備えている場合、前記アダプタは、該照明手段からの照明光を遮る位置に取り付けられることとした。
また、前記歯科用インスツルメントは、歯科用エアタービンハンドピース、歯科用マイクロモータハンドピース、歯科用スケーラーハンドピース、歯科用スリーウェイシリンジ、デンタルミラー、バキュームシリンジ、歯科用光重合照射器、レーザハンドピース、歯科用歯面清掃器のいずれか一つであることとした。
以上の様に、本発明によれば、既存の照明機能を有するハンドピースに、本発明の口腔内照明装置を装着する場合、口腔内の照明機能に付加して、口腔内の異変部を抽出できる機能を簡単に持つことができるようになり、また、照明機能を持たない歯科用ハンドピースに本発明の口腔内照明装置を装着する場合、このような口腔内の異変部を抽出できる機能を有するハンドピースに容易に変更が可能となり、更に、通常の照明機能を付加すれば、診療台に付属する無影灯より、口腔内の異変部のみならず、異変部周辺の生体組織が見やすく、治療がしやすくなる。
また、上述のように、異変部を抽出する励起光を放射する機能を持たない各種の歯科用ハンドピースに、本発明の口腔内照明装置を装着し、励起光を照射することにより、口腔内の異変部で励起された蛍光を観察しながら、異変部の分布状況を基にして診療又は治療を行うことができるので、異変部が治療すべき部位であることが面状の画像情報として明確に認識でき、患部のみを選択的に治療できる。
また、口腔内を照明する照明光と、齲蝕等の異変部を抽出できる励起光との両方を同時に照射できる機能が備えられるので、齲蝕等の異変部のみならず異変部周辺の正常な生体組織も同時に鮮明に視認できるので、ハンドピースの利便性が向上し、診療又は治療を確実に、且つ、効率的に行うことができる。
本発明による口腔内照明装置は、前記異変部を抽出する波長及び/又は該異変部を照明する波長の光として、白色光、単色光、赤外光及び紫外光のうちのいずれか一つ以上の光を照射できるので、様々な異変部に対応する最適な励起光や照明光を併用することができる。また、前記光源から放射される前記光の強度が調整されるようになっているので、励起光や照明光を、異変部を視認し易い光景に調整することができる。
本発明によれば、前記光源は、発光ダイオード又は半導体レーザの発光素子からなるので、製品の小型化がし易く、市販品を入手できることから、コストの安い製品にすることができる。更に、前記光源は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ、メタルハライドランプ又は水銀ランプのいずれかの一つのランプを含むので、前記ランプから放射される幅広い波長を有するから、照明光としても使用できる。また、該ランプから放射される幅広い波長の光から、異変部を抽出する特定の波長を選択して放射するように、光学フィルタを備えることで、様々な波長の励起光を発生することができる。また、このような光学フィルタを着脱自在にしておけば、ランプ光源の光を照明光としても励起光の光としても使用できる。
また、前記異変部を抽出する波長は、405±50nmの近紫外線領域、470±30nmの青色領域、700±100nmの赤色領域、赤外線領域、又は、近赤外線領域であるので、歯石や齲蝕、充填物の有無、細かい亀裂等を識別することができる。前記光源から放射される光は、光重合樹脂の硬化に適する波長の光を含むので、齲蝕や亀裂の箇所に対して直ぐに光重合樹脂を充填する治療が行える。
本発明によれば。前記光源は、複数の波長の光を放射でき、前記光源から放射される光の波長を切り換えて照射することができるので、例えば、周知の波長切り換え可能な発光ダイオードや半導体レーザを使用できることから、複数の励起光を選択使用することができる。
本発明の口腔内照明装置では、複数の波長を放射できる発光素子を備え、この発光素子の駆動を切り換えられるようにし、波長選択を可能にしたので、例えば、照明機能と異変部抽出機能との役割を既存のハンドピースに付加でき、異変部抽出機能のある複数の波長を切り換えることができる。これにより、歯の齲蝕の治療中において、照明機能と異変部抽出機能を両方駆使しながら、齲蝕から発する蛍光がなくなるまで、除去すればよいので、患部の除去に対する基準が得られる。また、齲蝕と歯石等、異なる異変部にそれぞれ最適の励起光の波長を選択使用することによって視認性が高まる。
また、本発明によれば、前記光源が、前記ランプを含む場合に、該ランプから放射される光から、異なる波長の光が、光学フィルタの交換によって選択されることで、光学フィルタの交換によって、照明機能と異変部抽出機能を併せ持たせ、異なる異変部に対して最適な異変部抽出機能を生じせしめることができる。
本発明によれば、前記光源は、複数の発光素子を含み、該複数の発光素子が、前記アダプタの端部において、並置されているので、効率良い放射を行える。該アダプタは、歯科用インスツルメントの先端部に着脱自在に嵌め込まれるリング形状を有しているので、いずれの角度からも放射できるので、影を生じることがなく、歯科用インスツルメントを使用することができる。また、前記光源に含まれる複数の発光素子が、前記アダプタの端部において環状に配置されているので、影が生じることなく、歯科用インスツルメントを使用することができる。
また、本発明によれば、前記光源を駆動操作する操作部が、前記アダプタに設けられているので、アダプタに設けられているスイッチ等を操作するだけで、光源のオン・オフ等の操作を行いことができる。更に、前記電源は前記アダプタに設けられているので、電源をボタン電池などの小型のものを使用すれば、装置全体として小型化し得る。該電源には、一次電池又は二次電池であるので、簡単に着脱交換して使用できる。
本発明によれば、前記光源は、前記アダプタとは分離されて設けられた電源により駆動され、大きく重い電源を光源から離すことができるので、インスツルメントの操作に支障がないものにできる。
以上のように、本発明の口腔内照明装置には、電源が、アダプタに内蔵され、或いは、アダプタに接続されているので、既存のインスツルメントに電源が備えられていなくても、アダプタに備えられた発光素子を点灯駆動することができ、照明機能又は異変部抽出機能を達成することができる。一方、既存のインスツルメントに電力が供給される構成になっている場合でも、口腔内照明装置用に電力供給の接続構成を特別に備える必要がなく、コストが嵩むことがない。
本発明によれば、前記電源は、歯科用インスツルメントの本体に着脱自在に装着されるので、本体に設置しない場合に比べてぶらつくことなく、電源の交換をし易くなる。更に、前記光源を駆動操作する操作部が、歯科用インスツルメントの本体に着脱自在に装着されるので、操作性が良くなる。
また、本発明によれば、前記装着部材が、前記アダプタを歯科用インスツルメントの本体に弾性的に保持するので、着脱が容易になる。また、本発明の口腔内照明装置では、各種ハンドピースに装着するための装着部材が専用形状でなく、コイル等で弾性的に保持できるようにしたので、切削用ハンドピース、例えば、エアタービンハンドピース、マイクロモータハンドピース、スケーラーハンドピース等、全種のハンドピースにおける先端部に使用することができるようになり、安価なハンドピースシステムを構成することができる。
本発明によれば、前記アダプタには、離れた光源から放射された光が、導光部材により導光されるので、光源と導光部材の出射端との距離を取ることができ、インスツルメントの操作性を良くし、視界を確保し易い構成とすることができる。
本発明によれば、前記アダプタは、歯科用インスツルメント本体の軸方向と直交する平面を有するフィルタ板を備えられるので、術者は、該フィルタ板を透過した蛍光のみを観察することで、異変部の視認が行い易くなる。この様に、本発明の口腔内照明装置には、励起光のみを除去し、或いは、蛍光を通過させるフィルタ板を組み合わせることが可能であるので、従来のように、それらのフィルタ機能を有するメガネ又はゴーグルを使用しなくて済み、特に、複数の波長を選択して使用する場合には、安価なフィルタ板をその波長に合わせて容易すればよい。
また、本発明によれば、歯科用インスツルメントが、前記異変部を照明する照明手段を備えている場合、前記アダプタは、該照明手段からの照明光を遮る位置、つまり、既存の照明光照射機能付きハンドピースにおいて、照射光の照射される照射端に取り付けられるので、術者は、既存の照明光の照射角度や位置と余り変わらない状態で使用できる。
本発明によれば、歯科用インスツルメントが、歯科用エアタービンハンドピース、歯科用マイクロモータハンドピース、歯科用スケーラーハンドピース、歯科用スリーウェイシリンジ、バキュームシリンジ、歯科用光重合照射器、レーザハンドピース、歯科用歯面清掃器のいずれか一つであるので、いずれのインスツルメントにおいても、異変部を抽出することが簡単にできる。
例えば、照射する励起光として、例えば、400nm近辺の波長の光を採用しているので、齲蝕部位、歯石、歯垢から特徴的な蛍光を効率的に励起させることができる。これらの患部の除去を目的とする、歯科用エアタービンハンドピース、歯科用マイクロモータハンドピース、歯科用スケーラーハンドピース、レーザハンドピース、歯科用歯面清掃器等の照明用として、最適となる。この400nm近辺の波長は、LEDや、LDを含む半導体レーザなどにより簡単に得られる。特に、波長が405nmの光は、DVD用の半導体素子により得られる。また、レーザハンドピースの場合には、励起光や照明光をガイドビームとして使用することができる。
さらに、例えば、エアタービンハンドピース専用、スケーラーハンドピース専用という形状の口腔内照明装置を採用すれば、各々のハンドピース用のアダプタ光源一つを、使用するごとに装着すればよいので、各々について照明付きハンドピースを揃えるより、照明機能を持たないハンドピースと、本発明の口腔内照明装置の一つとを用意する方が、安価となる。
本発明の口腔内照明装置は、更に、歯科用スリーウェイシリンジやバキュームシリンジに搭載されることができるようになるので、歯科医が切削用インスツルメントで歯を治療しているとき、切削用インスツルメントの操作性を悪化させることなく、歯の患部の明示が可能となる。このとこは、通常、歯科用スリーウェイシリンジやバキュームシリンジは、衛生士が使用するインスツルメントであり、歯科用スリーウェイシリンジが、治療部位に水や空気を吹きかけ、バキュームシリンジが、治療部位からの水や切削分などを吸い込むものであり、ともに治療部位の方向を向いているためである。これらのインスツルメントに励起香典を装着すれば、歯科医が使用する切削用インスツルメントに、わざわざ励起用光源を装備しなくて良くなり、その操作性を悪化させることがない。
本発明による口腔内照明装置の実施形態を説明する前に、口腔内の異変部を特徴的に抽出できる原理について、図20乃至22を参照して説明する。
始めに、図20には、励起光の照射に対する健康エナメル質と齲蝕エナメル質の蛍光発光状態を説明するグラフ(その1)が示されている。歯に対して、特定の波長を有する励起光が照射されたときに、歯の状態に影響した蛍光反射波の様子が示されている。同図では、健康な歯のエナメル質の場合と、齲蝕された歯のエナメル質の場合とにおける、nm単位で表された波長に対する歯によって反射された放射線の相対値で表された放射線強度Iがプロットされている。入射放射線、つまり、励起光は、406nmの波長を有する。
図20のグラフから判るように、図示された夫々のカ−ブは互いに異なっている。特に、齲蝕された歯のエナメル質に対する放射線強度のカ−ブは、636nmと673nmと700nmの所で3つの大きな山となる強度を示している。この健康な歯のエナメル質と齲蝕された歯のエナメル質における蛍光挙動の差異を利用すれば、636nmと673nmと700nmの反射光が目立つ、即ち、これらの赤色の蛍光が目立つということであり、これらの赤色部分を観察することにより、齲蝕の有無やおおよその齲蝕の進行度合いの診断を行うことができる。
また、図21には、励起光の照射に対する健康エナメル質と齲蝕エナメル質の蛍光発光状態を説明するグラフ(その2)が示されている。歯に対して、特定の波長を有する励起光が照射されたときに、歯の状態に影響した蛍光反射波の様子が示されている。図21では、健康な歯のエナメル質の場合と、齲蝕された歯のエナメル質の場合とにおける、nm単位で表された波長に対する歯によって反射された放射線の相対値で表された放射線強度がプロットされている。この場合に照射した入射放射線、つまり、励起光は、488nmの波長を有している。
図21のその2のグラフから判るように、図示された夫々のカ−ブは互いに異なっているが、その異なり方は、図20に示されたその1のグラフと違っている。健康エナメル質と齲蝕エナメル質の夫々の放射線強度カ−ブは、いずれも、励起光の波長付近でピークとなっているものの、そのピークの高さが異なっている。このことから、この健康な歯のエナメル質と齲蝕された歯のエナメル質における蛍光反射強度の差異を利用すれば、齲蝕の有無や、おおよその齲蝕の進行度合いに係る診断を行うことができる。
以上に説明したように、健康エナメル質と齲蝕エナメル質とに照射された放射線に対する蛍光挙動の差異又は反射強度の違いを利用すれば、当該歯が健康であるか、又は、齲蝕されているかの判断を行うことができる。
そこで、実際に、歯における異変部、例えば、齲蝕され、或いは、歯石や歯垢が付着している歯牙に、上述した励起光を照射したときの様子を図22に示した。図中では、例示として、口腔内の歯列が示され、代表的に、歯T1乃至T4からなる歯列が示されている。図22では、歯T2とT3に、齲蝕部位B1、B2が存在する場合を例示している。齲蝕部位B1は、完全に齲蝕されて大きな穴状となっている場合(実線で図示)であり、齲蝕部位B2は、歯内部が侵されている場合(破線で図示)である。
ここで、特定の波長を選択された励起光が照射されると、歯から蛍光が発生する。このとき、図20又は図21のグラフに示されるように、健全部と齲蝕部とでは蛍光反射強度が異なるので、治療作業者が、この蛍光を検出できるフィルタ機能を備えたメガネ又はゴーグルを使用して目視し、或いは、ハンドピースに配置された当該フィルタ機能を備えたプロテクト板などを介して目視すると、齲蝕部位B1及びB2を他の健全部と区別して認識することができる。なお、このフィルタ機能とは、単純に励起光を遮断する特性であればよい。例えば、405nmの励起光であれば、440nmより長い波長の領域のみを透過するフィルタであればよい。
齲蝕部位B2は、齲蝕部位B1よりその強度が弱く見える。そのため、診療作業中において、この励起光を照射し続けることにより、齲蝕部位B1、B2の存在を把握でき、しかも、どちらの齲蝕部位を先に治療すればよいかが判断し易くなる。さらに、治療開始した後においても、治療対象部分を特定でき、治療進行状態を明確に把握でき、治療し残しや削りすぎを無くすことができる。また、診療器具を一々持ち替える必要がないので作業効率が向上する。基本的に、齲蝕部位では、本来の部位の色と異なる蛍光色が出るので、その色を発する部分を治療する。歯石、歯垢の付着部位も同様である。
歯に係る異変部として、例えば、齲蝕部位、軟化象牙質、歯石、歯垢、バイオフィルム、欠損、ひびなどが挙げられるが、これらの異変部に照射されたときに蛍光挙動の差異又は反射強度の違いを示す特定の波長としては、405±50nmの近紫外線領域、470±30nmの青色領域、700±100nmの赤色領域、赤外線領域、又は、近赤外線領域の光が挙げられるがこれらの波長に限定されるわけではない。なお、赤外線領域、又は、近赤外線領域の光は、励起光として使用することもあるが、赤外線そのものの反射光を観察する事も可能である。上記は、一例であり本発明はこれに限定されるものではない。
これらの光は、発光ダイオード(LED)や、レーザダイオード(LD)を含む半導体レーザ素子などの発光素子を使用することによって簡単に発生でき、これらの素子は、レンズ部を備えた素子モジュールに形成され、小型の光源として利用できる。LED素子としては、白色LEDを使用してもよい。また、これらの素子以外にも、発光素子として、ランプ光源、例えば、ハロゲンランプなどによる白色光を利用することもできる。この時には、所定の波長を取出せる光学フィルタを組み合わせることで実現できる。
齲蝕部位には、例えば、上述の波長が405nmの励起光を使用でき、齲蝕部位からの蛍光により検出可能であり、軟化象牙質についても、該励起光の照射による蛍光で検出できる。歯石、歯垢、バイオフィルムについても、励起光を照射すると、歯石、歯垢からの蛍光で検出が可能である。また、歯石や歯垢に関しては、付着状態が良く判るので、細部の形態がよくわかる赤外光を照射することにより、歯石や歯垢の存在を確認することができる。
歯石、歯垢、バイオフィルムの検出については、400±30nm、好ましくは、405nm或いは375nmの光を照射すると、明確に区別でき、スケーラーなどのハンドピースに光照射手段の光として適用するのに最適である。このとき、450nm以上の長波長を通過させる光学フィルタを介して観察すれば、400±30nm、好ましくは、405nm或いは375nmの照射された励起光がカットされ、より明瞭に観察することができる。なお、このカットオフ波長は、一例であり、発明は、これに限定されるものではない。
また、緑色系の光を照射すると、欠損、ひびなどが、より明瞭に観察できる。さらに、部位が異なると、光の反射の強度、吸収の度合いが異なるので、反射・吸収の差異が顕著な波長の光を照射して、その差異を確認することにより、異変部を確認することもできる。
なお、この異変部の確認の際に、前述では、治療作業者が、励起光による蛍光を検出できるフィルタ機能を備えたメガネ又はゴーグルを使用し、或いは、インスツルメントに配置された当該フィルタ機能を備えたプロテクト板などを介して目視するとしたが、この場合には、蛍光のみが検出され、治療作業者には、異変部の状況が浮き出て見え、周辺部分は暗く見える。そのため、異変部は明確になるものの、他の健全部の状況は、把握されず、しかも、当該異変部の正確な位置を認識できないことになる。
しかし、異変部に照射する励起光の波長が、可視光領域にある場合には、特に、蛍光を検出するフィルタ機能を有する器具を使用しなくても、治療作業者は、異変部について、その周辺の色と異なる色で観察することができ、さらに、励起光の色に従って異変部周辺の状況をも把握することができる。
また、励起光の透過を排除するフィルタ機能を備えたメガネ又はゴーグルを使用し、或いは、インスツルメントに配置された当該フィルタ機能を備えたプロテクト板などを介して目視すると、治療作業者は、異変部からの蛍光によって異変部の状況を認識でき、さらに、励起光のみを照射している場合には、励起光の照射に邪魔されずに、外部から口腔内に入る光によって、異変部の周辺の状況を把握することができる。或いは、励起光と照明用の白色光との両方を同時に照射している場合にも、異変部のみならず異変部の周辺組織の状況を正確に把握でき、しかも、異変部の周辺も明るくなり、その状況を認識し易くなる。その周辺組織の色合いも、忠実に表現される。
さらに、所定波長の光を放射する発光素子が一つだけ備えられていてもよいが、波長の異なる光を放射する複数の発光素子を備えておけば、切換スイッチの操作で発光素子の駆動を制御することにより、特定波長の励起光のみの選定照射、異なる波長の励起光への切換照射、或いは、照明光と励起光との切換照射などの照射パターンを実現することができる。照明光と励起光との切換照射の場合には、照明光と励起光との時分割の点灯制御によって、口腔内の照明と、異変部の抽出とを同時に行うことができる。
次に、本発明による口腔内照明装置の実施形態について、上述したように、既存のハンドピースに着脱自在に装着することを可能にした口腔内の異変部を特徴的に抽出できる光を照射できる光照射手段の具体例を、実施例1乃至4に分けて説明する。
実施例1は、本実施形態による口腔内照明装置として、上述した異変部抽出原理に基づく光照射手段を有して歯科用インスツルメントに着脱自在に装着されるアダプタに、該光照射手段を点灯駆動する電源が一体的に組み込まれた電源一体型の場合であり、歯科用インスツルメントに装着される口腔内照明装置の具体例1乃至具体例3が、図1乃至図6に示されている。
図1(a)には、歯科用インスツルメントの全体が示され、1は、歯科用インスツルメントの一つであるエアタービンハンドピース本体を、2は、そのハンドピースヘッド部、3は、該ヘッド部に取り付けられるバーなどの工具類である治療具(診療具の一例)を示している。そして、そのハンドピース本体1は、ヘッド部2と反対側においてハンドピース本体1と着脱自在に装着できるジョイント部を備えており、そのジョイント部が、チューブ4を介して、エアなどの供給装置に接続されている。
図1(a)には、具体例1による口腔内照明装置が、ハンドピース本体1に装着された状態で示されている。具体例1の口腔内照明装置は、アダプタ本体5、電源ボックス6、そして、装着部材7で構成されている。アダプタ本体5は、ヘッド部2が口腔内に挿入されることを考慮して、邪魔にならないように、扁平に形成され、本体の一端部に、光照射手段を備えている。なお、アダプタ本体5は、ハンドピース外周の形状に沿った円形状に成形してもよい。
この光照射手段は、少なくとも一つの発光素子Lを含むものであり、複数の発光素子Lが備えられる場合には、アダプタ本体5の扁平形状に合わせて、複数の発光素子Lは、一列に並置される。この複数の発光素子の個々には、集光レンズが組み込まれているものとし、各発光素子の光放射方向は、口腔内照明装置がハンドピース本体1に装着されたときに、治療具3の前方を照射するように調整されている。ここで、光照射手段として、複数の発光素子Lを設ける場合には、放射される光の波長が全て同じであっても、或いは、互いに異なる波長であってもよい。例えば、照明光と励起光の組み合わせとすることができる。
図1(a)に示された具体例1の場合は、歯科用インスツルメントがエアタービンハンドピースであるので、各発光素子の光放射方向は、ハンドピース本体1の中心軸とある角度を持つように、向けられている。例えば、具体例1の口腔内照明装置が、マイクロモータハンドピース、スケーラーハンドピースなどのように、治療具3がハンドピース本体1の中心軸に沿った方向に取り付けられる場合には、アダプタ本体5に設けられる複数の発光素子の光放射方向は、この中心軸に沿った方向に向けられる。
アダプタ本体5のヘッド部側と反対側の端部には、複数の発光素子を点灯駆動するための電源を内蔵した電源ボックス6が設けられている。この電源は、小型の一次又は二次電池であり、一次電池の場合には、ボタン型水銀電池などが使用され、二次電池の場合には、ボタン型又は棒型のリチウム電池などが使用される。これらの電池は、電源ボックス6に交換可能に挿入されるのが、一般的である。しかし、二次電池の場合には、該電池を固定的に内蔵しておき、外部から充電できる端子を、電源ボックス6の側壁に設けておいてもよい。
図1(a)に示されるように、アダプタ本体5に、光照射手段として、複数の発光素子Lが備えられている場合には、電源ボックス6に内蔵された電源を、各発光素子Lに切り換えて供給するスイッチSW1が、アダプタ本体5の側壁に設置される。このスイッチSW1で、電源のオン・オフを行えるようにしてもよいが、電源ボックス6自体をアダプタ本体5と着脱自在にピン接続できるようにしておき、電源ボックス6をアダプタ本体5に装着したとき、電源オンとなるようにしてもよい。
さらに、アダプタ本体5の側壁において、スイッチSW1と並んで、もう一つのスイッチSW2を設けておく。このスイッチSW2の操作により、各発光素子Lの発光光量が調節されるようにすることもできる。例えば、スイッチSW2のオン・オフ操作で、2段階の発光光量を出力できる。スイッチSW2を小型ボリュームに置き換えて、無段階に光量を調節することもできる。
また、具体例1による口腔内照明装置を歯科用インスツルメントに着脱自在に装着するために、アダプタ本体5に、装着部材7が設けられている。口腔内照明装置が歯科用インスツルメントに装着されたとき、該装置がこのインスツルメントの口腔内での操作性を阻害しないように配慮されなければならい。そのため、この装着部材7は、図1(a)に示された場合には、アダプタ本体5の上面に備えられ、エアタービンハンドピースにおけるヘッド部の付け根部分を弾性的に挟持する。
図1(b)は、具体例1による口腔内照明装置の使用状態を示しており、図1(a)に図示されたエアタービンハンドピースの先端部分を拡大した側面図を示している。図1(b)では、発光素子Lから放射される光を、破線で示している。図示されているように、発光素子Lからの照明光又は励起光は、治療具3の軸方向で、その前方を照射している。
以上で、実施例1における電源一体型の口腔内照明装置の具体例1が説明されたが、この具体例1では、エアタービンハンドピースを例として、そのヘッド部2の付け根部分に着脱自在に取り付けられたが、図2(a)及び(b)には、ヘッド部2の治療具取り付け部に係る先端部に着脱自在に取り付けることができる電源一体型の口腔内照明装置の具体例2が示されている。
図2(a)でも、歯科用インスツルメントとしてエアタービンハンドピースの場合を例にしており、図1(a)で示された部分と同じ部分には、同じ符号が付されている。図2(a)に示された具体例2の口腔内照明装置は、ヘッド部2の先端部に嵌め込まれて取り付けられることが特徴となっているところから、装置全体が、扁平形状でなく、リング形状になっており、アダプタ本体8がリング形状となっている。
そのリング形状になっているため、具体例2の口腔内照明装置における光照射手段は、複数の発光素子Lが、治療具3を取り囲むように、リング状に配置される。各発光素子Lに給電するための電源ボックス6は、アダプタ本体8の外周側壁に備えられ、装置がヘッド部2に取り付けられたときに邪魔にならないように、電源ボックス6がヘッド部2の付け根部分に位置するように取り付けられる。具体例2による口腔内照明装置におけるスイッチSW1及びSW2の設置の仕方は、具体例1の場合と同様であり、電源ボックス6も同様である。
図2(b)は、具体例2による口腔内照明装置の使用状態を示しており、図2(a)に図示されたエアタービンハンドピースの先端部分を拡大した側面図を示している。図2(b)では、2種類の波長で発光する発光素子L1、L2から放射される光を、破線で示している。図示されているように、例えば、発光素子L1から照明光が、発光素子L2から励起光が放射される場合には、発光素子L1、L2が交互に配列されており、発光が治療具3の軸方向と平行して、その前方を照射している。この様に、複数の発光素子がリング状に配列されることにより、発光が治療具3の軸を取り囲むようになり、前方の異変部に対して、無影状態の照射が可能となる。
ここで、具体例2の口腔内照明装置のアダプタ8における複数の発光素子の配置例を、図3に示した。図3(a)は、発光素子が、砲弾型LEDの場合を、図3(b)は、チップ型LEDの場合を、そして、図3(c)は、ベアチップ型LEDの場合を示しており、いずれの場合も、リング状のアダプタ本体8の端部における円周上に、複数の発光素子L1、L2が配列され、リング状の配線基板などを介して、電源ボックス6から給電される。そして、リング状に配列された複数の発光素子L1、L2の中央部分には、少なくとも治療具3が自在に挿通される開口が設けられている。
図4に、具体例2による口腔内照明装置におけるアダプタ本体8について、治療具3の軸に係る断面図で示した。アダプタ本体8の中央には、ヘッド部2の先端が挿入される空間が設けられ、さらに、治療具3が挿通される開口が開けられている。そして、アダプタ本体8の内周面には、複数の滑り止め部材81が貼着されており、アダプタ本体8がヘッド部2の先端に押し込まれて取り付けられたとき、脱落しないようにされている。
なお、アダプタ本体8がヘッド部2に取り付けられるとき、脱落防止の滑り止め部材の代りに、ネジによる係合手段や、爪による係合手段を採用することができる。また、具体例2の説明には、エアタービンハンドピースの例を挙げたが、マイクロモータハンドピース、スケーラーハンドピース、バキュームシリンジなどの歯科用インスツルメントにおけるように、治療具3の軸が、ハンドピース本体2の中心軸に沿っている場合に対しても、取り付け可能である。レーザハンドピースや光重合照射器では、治療具は装着されていないが、治療用の光が照射される軸を治療具と見なすことができる。
これまでに説明した具体例2による口腔内照明装置におけるアダプタ本体8は、比較的に硬い合成樹脂などで一体的成形されていた。ところが、取り付け対象である歯科用インスツルメントの先端部は、種類によって様々な径を有していることが多く、これに対応させるには、夫々の径に合わせた口腔内照明装置を用意しなければならないので、不経済となる。そこで、先端部の径が変わっても、一つの装置で、柔軟に対処できるようにした具体例3による口腔内照明装置が、図5に示されている。
図5に示された具体例3の口腔内照明装置は、アダプタ本体8と、電源ボックス10と、コイル装着部材11とで構成されている。アダプタ本体8は、複数の発光素子L1、L2と、光源取り付け部材9とでなり、この装着部材9は、リング状に形成され、配線基板を含んでおり、複数の発光素子L1、L2がリング状に配列される。
光照射手段としての発光素子の配置方法は、具体例2の場合と同様であるが、切換用のスイッチは、電源ボックス11の側壁に設けられる。一次電池又は二次電池を内蔵する電源ボックス10からのリード線によって、光源取り付け部材9に配列された発光素子L1、L2に給電される。
光源取り付け部材9には、この部材側の内径は小さく、そして、徐々に内径が大きくなるコイル装着部材11が設けられている。このコイル装着部材9を備えた口腔内照明装置は、主として、歯科用インスツルメントの中でも、ストレートなマイクロモータハンドピース、スケーラーハンドピース、バキュームシリンジなどの歯科用インスツルメントにおけるように、治療具3の軸が、ハンドピース本体2の中心軸に沿っている場合に有効である。
図6に、具体例3の口腔内照明装置をスケーラーハンドピースに取り付けた場合の使用例を示した。図6からも分かるように、コイル装着部材11の内部に、ハンドピース本体1の先端部が、圧入される形態で押し込まれ、コイルが、先端部の径に応じて拡張し、かつ、コイルの弾力で締まる力が発生し、口腔内照明装置が、スケーラーハンドピースの先端部に装着される。このとき、各発光素子の放射方向は、ハンドピース本体1の中心軸と平行となり、光は、スケーラーの工具である治療具3を取り囲むように、照射され、治療具3の前方において、無影状態で照射される。
実施例1の口腔内照明装置では、アダプタに設けられた光照明手段に給電する電源が、該アダプタに一体的に組み込まれる電源一体型の場合であったが、実施例2では、上述した異変部抽出原理に基づく光照射手段を有して歯科用インスツルメントに着脱自在に装着されるアダプタと、該光照射手段を点灯駆動する電源が分離された電源分離型の場合であり、歯科用インスツルメントに装着される口腔内照明装置の具体例4乃至具体例10が、図7乃至図15に示されている。
図7(a)及び(b)には、実施例2に係る口腔内照明装置の具体例2が示されている。そのアダプタ本体の基本構成は、実施例1の具体例1で示された電源一体型の口腔内照明装置におけるものと同様であるが、アダプタ本体に備えられた光照射手段に給電するための電源が、該アダプタから離れた場所に置かれており、電源供給線によって接続されている点が異なっている。図7(a)及び(b)では、図1(a)及び(b)に示された部分と同じ部分には、同じ符号が付されている。
図7(a)においても、歯科用インスツルメントの一つであるエアタービンハンドピース本体1に、口腔内照明装置のアダプタ本体5が、装着部材7によって装着されている。そして、図7(b)においても、図1(b)に示した具体例1の場合と同様に、具体例4による口腔内照明装置の使用例が示されている。
具体例4の口腔内照明装置は、光照射手段である複数の発光素子Lを先端に備えたアダプタ本体5と、発光素子Lを点灯駆動する電源を内蔵する電源ボックス12とでなり、アダプタ本体5と電源ボックス12は、電源供給線13によって接続されている。電源ボックス12には、一次電池又は二次電池が収納されているタイプの電源でも、また、商用電灯線からの交流電源を定電圧化した直流電源でもよい。図7(a)では、ハンドピース本体1の近くに置かれているように図示されているが、説明の都合上、関係を分かりやすくしたものであり、実際には、電源ボックス12は、例えば、歯科用インスツルメントのエア供給制御装置に組み込まれていてもよく、或いは、治療作業者に装着されてもよい。
具体例4の口腔内照明装置における光照射手段も、具体例1のばあいと同様に、少なくとも一つ以上の発光素子Lを含むものであり、アダプタ本体5の扁平形状に合わせて、複数の発光素子Lは、一列に並置される。この複数の発光素子の個々には、集光レンズが組み込まれているものとし、各発光素子の光放射方向は、口腔内照明装置がハンドピース本体1に装着されたときに、治療具3の前方を照射するように調整されている。ここで、光照射手段として、複数の発光素子Lを設ける場合には、放射される光の波長が全て同じであっても、或いは、互いに異なる波長であってもよい。例えば、照明光と励起光の組み合わせとすることができる。
図7(b)に示された具体例4の使用例のように、歯科用インスツルメントがエアタービンハンドピースであるので、各発光素子の光放射方向は、ハンドピース本体1の中心軸とある角度を持つように、向けられている。例えば、具体例4の口腔内照明装置が、マイクロモータハンドピース、スケーラーハンドピースなどのように、治療具3がハンドピース本体1の中心軸に沿った方向に取り付けられる場合には、アダプタ本体5に設けられる複数の発光素子の光放射方向は、この中心軸に沿った方向に向けられる。
アダプタ本体5のヘッド部側と反対側の端部には、複数の発光素子を点灯駆動するための電源を有する電源ボックス12から延びる電源供給線13が接続されている。アダプタ本体5に、光照射手段として、複数の発光素子Lが備えられている場合には、電源供給線13で供給される電源を、各発光素子Lに切り換えて供給するスイッチSWが、アダプタ本体5の側壁に設置される。電源のオン・オフ用のスイッチについては、アダプタ本体5に設けても、電源ボックス12に、又は、電源供給線の途中に設けてもよい。
さらに、アダプタ本体5の側壁において、スイッチSW1と並んで、もう一つのスイッチSW2を設け、このスイッチSW2の操作により、各発光素子Lの発光光量が調節されるようにすることもできる。例えば、スイッチSW2のオン・オフ操作で、2段階の発光光量を出力できる。スイッチSW2を小型ボリュームに置き換えて、無段階に光量を調節することもできる。
以上で、実施例2における電源分離型の口腔内照明装置の具体例4が説明されたが、この具体例4では、エアタービンハンドピースを例として、そのヘッド部2の付け根部分に着脱自在に取り付けられたが、図8(a)及び(b)には、具体例4の口腔内照明装置のアダプタ本体を簡素な構成にして、さらに、取り付けに嵩張らないように着脱自在な具体例5の口腔内照明装置が示されている。
図8(a)においても、歯科用インスツルメントの一つであるエアタービンハンドピース本体1に、具体例5による口腔内照明装置が装着されている。そして、図8(b)においても、図1(b)に示した具体例1の場合と同様に、具体例5による口腔内照明装置の使用例が、ヘッド部2近傍のみを拡大されて示されている。
具体例5の口腔内照明装置は、光照射手段としての発光素子Lと、この発光素子Lを保持する光源取り付け部材14と、スイッチ保持部材15と、電源ボックス16とで構成される。光源取り付け部材14は、該部材と一体成形された装着部材7の弾性により、ハンドピース本体1のヘッド部2の付け根部分に着脱自在に保持される。そして、スイッチ保持部材15も、一体成形されて弾性構造を有し、ハンドピース本体1の胴部分を着脱自在に挟持する。
スイッチ保持部材15には、スイッチSW1、SW2によるスイッチ部が形成され、電源ボックス16からの電源が、電源供給線13を介して発光素子Lに供給されるようになっており、スイッチ部が、発光素子Lの点灯駆動を制御する。ここで、発光素子Lは、一種類の波長の光のみを放射するものも使用することができるが、一つの素子に、互いに異なる波長の光を放射する複数の素子が組み込まれたものも使用することができる。具体例4では、複数の素子が組み込まれた発光素子が使用されている場合である。
スイッチ保持部材15の側壁において、発光素子Lの発光を切り換えるスイッチSW1と並んで、もう一つのスイッチSW2が設けられており、このスイッチSW2の操作により、各発光素子Lの発光光量が調節されるようにすることもできる。例えば、スイッチSW2のオン・オフ操作で、2段階の発光光量を出力できる。スイッチSW2を小型ボリュームに置き換えて、無段階に光量を調節することもできる。
図8(b)の具体例5の使用例では、図7(b)に示された具体例4の使用例の場合と同様に、歯科用インスツルメントがエアタービンハンドピースであるので、各発光素子の光放射方向は、ハンドピース本体1の中心軸とある角度を持つように、向けられている。例えば、具体例5の口腔内照明装置が、マイクロモータハンドピース、スケーラーハンドピースなどのように、治療具3がハンドピース本体1の中心軸に沿った方向に取り付けられる場合には、発光素子Lの光放射方向は、この中心軸に沿った方向に向けられる。具体例5による口腔内照明装置では、具体例4のように、嵩張るアダプタを形成していないので、電源供給線を必要とするが、全体としてスリムな形状とすることができる。
次に、具体例5による着脱自在に構成された口腔内照明装置を、例えば、歯科用インスツルメントの一つである歯面清掃器に装着した具体例6を図9に示した。具体例6による口腔内照明装置は、具体例5の構成と同様であり、光照射手段としての発光素子Lと、この発光素子Lを保持する光源取り付け部材14と、スイッチ保持部材15と、電源ボックス16とで構成される。図9では、電源ボックス16の図示を省略している。
シリンジやバキュームは、通常、衛生士が使用するインスツルメントであり、スリーウェイシリンジは、治療部位に水や空気を吹きかけ、バキュームシリンジは、治療部位からの水や切削分などを吸い込むものであるため、それらの先端は、治療部位の方向を向いている。この様に、具体例6で示されたように、励起光源を有する口腔内照明装置を、スリーウェイシリンジやバキュームシリンジに装着すれば、治療作業者が口腔内で使用する他の歯科用インスツルメント、例えば、切削用インスツルメントの操作性を悪化することなく、口腔内の患部の明示が可能となる。そのため、衛生士が使用するインスツルメントに励起光源を装着できるようにすれば、歯科医治療作業者である歯科医が使用するインスツルメントに、励起用光源を装着しなくて済み、操作性を悪化させることがない。
図10に示した口腔内照明装置の具体例7は、図8に示された具体例5の口腔内照明装置の構成を変形したものであり、口腔内照明装置が、光照射手段としての発光素子Lと、この発光素子Lを保持する光源取り付け部材14と、スイッチ保持部材15と、電源供給先3、電源ボックス16とで構成されることを基本としている。
しかし、図8に示された具体例5の口腔内照明装置では、電源ボックス16が、スイッチ部に電源供給線13を介して接続され、離れて設置されていたのに対して、図10に示された具体例7の口腔内照明装置では、電源ボックス16が、スイッチ部を形成するスイッチ保持部材15に備えられ、その間の電源供給線が省略されている。この様に、具体例7の口腔内照明装置は、電源分離型の構成となっているが、ハンドピース本体1の側面に纏めて装着され、全体として、コンパクト化されている。口腔内照明装置としての機能は、具体例5のものと同様である。
次に、図11(a)及び(b)には、実施例1の具体例2として示された電源一体型の口腔内照明装置を基本として、電源分離型に変形した口腔内照明装置の具体例8が示されている。具体例2の場合と同様に、図11(a)では、歯科用インスツルメントの一つであるエアタービンハンドピースに装着した例が示され、図11(b)でも、そのヘッド部付近が拡大されて、その使用状態が図示されている。
具体例8の口腔内照明装置8は、具体例2で使用されたアダプタ本体8の構成をそのまま使用しており、その光照射機能は、具体例2のものと同様である。ここでは、その説明を省略する。ただ、具体例2では、電源ボックス6が、アダプタ本体8の側壁に取り付けられて、電源一体型の口腔内照明装置としていたのに対し、具体例8の場合には、アダプタ本体8に備えられた光照射手段である発光素子Lへの給電は、アダプタ本体8とは離れた場所に置かれた電源ボックス12から、電源供給線13を介して行われる。この電源ボックス12の置き方は、具体例4の場合と同様である。
また、図12(a)及び(b)に示された口腔内照明装置の具体例9は、図11(a)及び(b)に示された口腔内照明装置の具体例8を基本としており、光照射手段の駆動制御を行うスイッチSW1、SW2をアダプタ本体8の側壁に設けるのではなく、具体例5又は6の場合のように、ハンドピース本体1の胴部側壁に着脱自在なスイッチ保持部材15に、スイッチSW1、SW2からなるスイッチ部を備えた。この様にすれば、口腔内で不意にスイッチ部が歯牙などに当たって操作されることがない。
ここで、具体例9の口腔内照明装置におけるアダプタ本体8のヘッド部2への取り付け構成について、図13(a)及び(b)を参照して説明する。図13(a)は、アダプタ本体8をヘッド部2に取り付けたときの外観を示し、図13(b)は、アダプタ本体8のみを縦断面で表した取り付け構成を示している。
アダプタ本体8のヘッド部2への取り付けにあたっては、図4に示された具体例2の口腔内照明装置におけるアダプタ本体8の取り付け構成を採用することができるが、図4に示された取り付け構成では、滑り止め部材81を使用するので、取り付け状態が不十分であることがある。
そこで、この取り付け状態をより確実にするため、アダプタ本体8をヘッド部2に取り付けたときに、複数の滑り止め部材81がヘッド部2の側壁に強制的に押し付けられるような構造とした。アダプタ本体8は、ケース部材82と、複数の発光素子Lを取り付けられるリング状の光源取り付け部材83と、そして、先端部に滑り止め部材81が設けられた複数の係合片部材84と、バネ体85とを有している。いずれの部材も、合成樹脂製とすることができる。
係合片部材84は、光源取り付け部材83と一体的に成形されて立設され、外側に僅かに傾斜している。一方、ケース部材82の内周面には、係合片部材84の立設位置に対応した部位に、或いは、内周面の全部に、係合片部材84の傾斜面に摺動する突部を形成しておく。また、ケース部材82に設けられた突部と光源取り付け部材83との間には、バネ体85が介在している。
この様な構造を有するアダプタ本体8をヘッド部2に取り付けるときには、先ず、ケース部材82と光源取り付け部材83とを、バネ体85の反発力に抗して、押さえ付ける。そうすると、突起が下方に下がることになり、係合片部材84が外方に反って、ヘッド部2を挿入可能状態となる。
そこで、アダプタ本体8内に形成された空間に、ヘッド部2を挿入し、その後、押さえ付けを解除すると、バネ体85の反発力により、ケース部材82の突起が、係合片部材84の傾斜面を摺動し、滑り止め部材81をヘッド部2の外周面を押さえ付けるようになる。これで、アダプタ本体8のヘッド部2への取り付けが完了し、突起の摺動により、係合片部材84は規制され、アダプタ本体8は、確実に保持される。
次に、図14には、実施例1の具体例3として示された電源一体型の口腔内照明装置を基本として、電源分離型に変形した口腔内照明装置の具体例10が示されている。具体例10の口腔内照明装置では、具体例3で使用されたアダプタ本体8の構成をそのまま使用しており、その光照射機能は、具体例3のものと同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
ただ、具体例3では、電源ボックス10が、アダプタ本体である光源取り付け部材9にリード線を介して取り付けられ、電源一体型の口腔内照明装置としていたのに対し、具体例10の場合には、アダプタ本体8である光源取り付け部材9に備えられた光照射手段である発光素子Lへの給電は、アダプタ本体8とは離れた場所に置かれた電源ボックス10から、電源供給線13を介して行われる。この電源ボックス10の置き方は、具体例4の場合と同様である。
図15には、図6に示された具体例3の電源一体型口腔内照明装置をスケーラーハンドピースに装着した場合と同様に、図14に示された具体例10の電源分離型口腔内照明装置をスケーラーハンドピースに装着した例が示されている。電源分離型の場合には、アダプタ本体8に電源供給線13が、手元に存在し、これが、治療作業性を悪化させる可能性があるため、電源供給線13は、ハンドピース本体1の胴部に、着脱自在に形成された装着部材7によって保持される。
これまでに説明した実施例1及び実施例2に係る口腔内照明装置では、発光素子を含む光照射手段が、アダプタ本体に設けられ、その光照射手段から放射される光が、治療具の軸方向の前方を照射するものであり、実施例2にあっては、電源分離型に構成され、電源ボックスが、アダプタ本体となれた場所に置かれている。そこで、実施例3では、口腔内照明装置における光照射手段の光源も、アダプタ本体と離れた場所に置くようにし、口腔内照明装置の歯科用インスツルメントへの装着構成を簡単化することとした。
図16に、実施例3による口腔内照明装置の具体例11が示されている。図16では、口腔内照明装置が、歯科用インスツルメントの一つであるエアタービンハンドピースに装着された例を示している。口腔内照明装置としての光照射手段の光源は、ハンドピース本体1から離れた場所に置かれた光源ボックス17に内蔵されている。この光源ボックス17は、診療の支障にならない場所に置かれていればよい。
光源ボックス17からは、導光部材である光ファイバ18が、ハンドピース本体1まで延び、この光ファイバ18は、ハンドピース本体1に胴体部と、ヘッド部2の付け根部とにおいて、装着部材7によって、着脱自在に保持される。
光源ボックス17には、光照射手段の光源をオン・オフするスイッチが備えられ、互いに異なる波長の光を放射する複数の発光素子が、光源として含まれる場合には、それらの発光素子の駆動を選択制御するスイッチも備えられる。さらには、発光素子から発光量を調整できるスイッチを備えてもよい。これらのスイッチで制御されて放射された光は、光ファイバ18により、ハンドピース本体1まで導光される。また、光源ボックス17には、波長選択スイッチや光量の調節スイッチが設けられていてもよい。
光ファイバ18の先端部においては、光照射部が形成されており、図16に示されるように、口腔内照明装置がエアタービンハンドピースに装着される場合には、光照射部は、治療具3の軸方向前方の範囲を照射できるように向けられている。また、マイクロモータハンドピース、スケーラーハンドピースなどに装着する場合には、この光照射部は、ハンドピース本体1の中心軸と平行にされ、治療具の前方を照射するようにされる。
具体例11の口腔内照明装置の照射機能は、具体例7の場合と同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
これまで説明してきた実施例1乃至3に係る口腔内照明装置は、口腔内の異変部を抽出できる励起光を照射する光照射手段を備えているが、実際に、治療作業者がこの口腔内照明装置を歯科用インスツルメントに装着して、治療作業が行われる場合には、励起光による蛍光反射光を通過させ、或いは、励起光のみを排除するフィルタ機能を有するメガネ又はゴーグルを使用する必要があった。
そこで、実施例4に係る口腔内照明装置では、異変部を抽出することができるフィルタ機能を、メガネ又はゴーグルなどの形式によるのではなく、このフィルタ機能を持つ平面フィルタ板を歯科用インスツルメントの近傍に配置させ、治療作業者は、このフィルタ板を介して異変部を観察するようにした。
図17に示された実施例4に係る口腔内照明装置の具体例12は、図1に示された具体例1の口腔内照明装置とフィルタ板19とを組み合わせた場合を示している。図18に示された実施例4に係る口腔内照明装置の具体例13は、図10に示された具体例7の口腔内照明装置とフィルタ板19とを組み合わせた場合を、そして、図19に示された実施例4に係る口腔内照明装置の具体例14は、図11に示された具体例7の口腔内照明装置とフィルタ板19とを組み合わせた場合を示している。
具体例12乃至14のいずれの口腔内照明装置においても、フィルタ板19は、着脱自在に装着可能になっており、その面が、ハンドピース本体1の中心軸と直交するように装着される。フィルタ板19の大きさは、口腔内において歯科用インスツルメントで治療作業が行われるとき、障害とならない程度に選択される。
この様に、フィルタ板19が配置されることにより、治療作業者は、口腔内の異変部に対する治療作業を行いながら、異変部を観察することができる。照射する光の波長を変えるときには、このフィルタ板19を交換するだけであるので、メガネなどの掛け換えに比較して簡便となる。フィルタ板形式にしたことにより、安価となった。
図23は、上述した各実施例に適用可能であって、励起光と白色光とを同時照射する場合に、励起光と白色光との光量バランスが、光量調節手段である可変抵抗器の調節で実現される電気回路を示す。30は、白色光を発するLEDを含む照明光発光部32の光量調節用可変抵抗器である。31は、励起光を発するLEDを含む励起光発光部33の光量調節用可変抵抗器である。これらの各可変抵抗器を使用して、各LEDに流れる電流を調節し、それぞれの発光部の光量を調節する。なお、ここで、各発光部32、33の光量調節用可変抵抗器30、31の操作の仕方によって、例えば、各LEDのどれかの光量を0に調節することにより、上記の同時照射モードの他に、照明光としての白色光のみの照射モード、或いは、励起光のみの照射モードの選択も可能となり、同時照射モード、照明光照射モード又は励起光照射モードのモード選択手段を構成することができる。
また、工場出荷時に各LEDの光量調節用可変抵抗器30、31を操作して、最適設定での照射モードを持つように固定して出荷することもできる。望ましくは、照明光の白色光は、励起光の光量より少ない設定にすることで、照明光の中に蛍光が埋没することが避けられ、且つ、異変部と異変部周辺組織とが、両方同時に視認できる。このような光量設定を工場出荷時の初期設定とすることが望ましい。
また、術者の好みに応じてではあるが、異変部の周辺組織を中心に観察し、異変部を参考程度に表示するような場合には、照明用の白色光の光量が増加されるように調整すればよい、勿論、単純に明るい像を得たい場合にも、照明用の白色光の光量が増加されるように調整されてもよい。なお、上述の実施例では、照明光として白色光を使用する例を示したが、照明光としては、必要に応じて、赤っぽい色や黄色っぽい色を使用してもよい。この場合も、励起光の光量の調整以外に、照明光の光量を調整すれば、励起光による異変部の強調度合いを調整することもできる。勿論、赤みの調整や黄色みの調整も、照明光の調整で可能である。
図24は、工場出荷時において、最適設定の初期設定を行い、且つ、ユーザにおいても任意に光量調節用可変抵抗器を操作することにより、白色光発光のLEDを含む照明発光部38と励起光発光のLEDを含む励起光発光部39とを、任意の光量に調節できるようにした回路図を示す。切換スイッチ40は、図に実線と破線で示すとおり、出荷時の初期設定側とユーザでの任意調節側とに切り換えが可能となっている。
切換スイッチ40を、実線で示すとおり、ユーザでの任意調節側に切り換えた場合では、白色LED調節可変抵抗器34と、励起光調節用可変抵抗器35とを個別に任意に調節できる。工場出荷時の最適な初期設定は、切換スイッチ40を白色LED調節用固定抵抗器35と励起光調節用固定抵抗器37によって、最適な励起光と白色光のバランスに調節できる。ユーザは、切換スイッチ40を切り換え操作することで、出荷時の初期設定とユーザでの任意調節を切り換えることができる。これらの光量調節手段は、前述のいずれの実施例にも適用可能である。
図25は、照射光選択手段の一例を示す回路図である。この照射光選択手段は、図1に示された実施例の場合であれば、スイッチSW1に対応したものとなり得る。照射光選択手段50は、互いに波長の異なる光を照射する複数の発光素子を含む照射手段を備え、この照射手段は、赤外光を発光するLEDの発光素子L1と、白色光を発光するLEDの発光素子L2とでなる照明光発光部と、波長の異なる紫外光を発光するLEDの発光素子L3、L4でなる励起光発光部とで形成されている。
さらに、照射光選択手段50は、電源108と各発光素子L1乃至L4との間に接続される第1乃至第4アナログスイッチSW1乃至SW4と、これらのアナログスイッチに対応した第1乃至第4光源選択スイッチhs1乃至hs4と、それら複数の発光素子L1乃至L4のうちからいずれか一つ又は複数の発光素子L1乃至L4を選択的に駆動させるための照射駆動手段を含むスイッチ制御部109とを備えている。
例えば、第1光源選択スイッチhs1のオン操作により、第1アナログスイッチSW1を駆動して、赤外光を発する発光素子L1を起動させることができる。同様に、第2アナログスイッチSW2を駆動して、白色光を発する発光素子L2を起動させることができ、第3アナログスイッチSW3を駆動して、第1の紫外光を発する発光素子L3を、そして、第4アナログスイッチSW1を駆動して、第2の紫外光を発する発光素子L4を起動させることができる。このような操作で、任意の種類の照射光を選択することができる。
また、白色光を発する発光素子L2に係る第2光源選択スイッチhs2と、第1の紫外光を発する発光素子L3に係る第3光源選択スイッチhs3若しくは第2の紫外光を発する発光素子L4に係る第4光源選択スイッチhs4を同時にオン操作することにより、白色光の照明光と、第1の紫外光若しくは第2の紫外光との同時照射をすることができる。このような、同時照射により、上述したように、励起光照射による異変部の蛍光像と、照明光の照射による異変部周辺部位に係る正常組織の反射像とが明瞭に視認され、異変部の位置や程度が的確に把握される。
なお、照明光と励起光とを短いパルスの時分割で照射するようなシーケンスを、予め定めるとともに、その専用スイッチを設けておくこともできる。この専用スイッチの操作により、時分割照射するようにすれば、照射対象部位を直接視認する場合は、観察者における目の網膜の残像現象により、同時照射の場合と同様の効果が得られる。また、赤外光の照射による反射光像と組み合わせて、診断像情報とすることもできる。
なお、上述した実施例において、特に、発光素子を点灯駆動する電源ボックスがアダプタ本体と分離されて配置される場合には、或いは、光源ボックスがアダプタ本体と離れている場合には、照射手段のオン・オフ制御を、フットペダルスイッチにより行うようにしてもよい。
本発明による電源一体型の口腔内照明装置に係る実施例1について、ハンドピース本体に取り付けた場合の具体例1を説明する図である。
実施例1の口腔内照明装置をハンドピースヘッドに取り付けた場合を示す具体例2を説明する図である。
具体例2における口腔内照明装置の変形例を説明する図である。
口腔内照明装置におけるリング形状アダプタの内部構成例を説明する図である。
別のハンドピースヘッドに取り付けられる実施例1に係る口腔内照明装置の具体例3を説明する図である。
具体例3の口腔内照明装置をハンドピースヘッドに装着した状態を説明する図である。
本発明による電源分離型の口腔内照明装置に係る実施例2について、ハンドピース本体に取り付けた場合を示す具体例4を説明する図である。
実施例2の口腔内照明装置におけるスイッチ操作部をハンドピース本体に装着した場合を示す具体例5を説明する図である。
具体例5による口腔内照明装置を他の歯科用インスツルメントに装着した場合を示す具体例6を説明する図である。
具体例5の口腔内照明装置におけるスイッチ操作部に電源部を一体化した場合を示す具体例7を説明する図である。
具体例2の口腔内照明装置を電源分離型に変形した場合を示す具体例8を説明する図である。
リング状アダプタを有する口腔内照明装置を具体例5に適用した場合を示す具体例9を説明する図である。
口腔内照明装置におけるリング状アダプタの他の内部構成例を説明する図である。
具体例3の口腔内照明装置を電源分離型に変形した場合を示す具体例10を説明する図である。
具体例10の口腔内照明装置を歯科用インスツルメントに装着した状態を説明する図である。
本発明による導光型の口腔内照明装置に係る実施例3について、ハンドピース本体に取り付けた場合の具体例11を説明する図である。
本発明による口腔内照明装置にアイプロテクタ部材を備えた実施例4について、電源一体型の場合に適用した具体例12を説明する図である。
実施例4について、電源分離型の場合に適用した具体例13を説明する図である。
実施定4について、電源分離型であって、スイッチ操作部を備えた場合に適用した具体例14を説明する図である。
励起光の照射に対する健康エナメル質と齲蝕エナメル質の蛍光発光状態(その1)を説明するグラフである。
励起光の照射に対する健康エナメル質と齲蝕エナメル質の蛍光発光状態(その2)を説明するグラフである。
口腔内の歯における異変部を説明する図である。
励起光と照明光との光量バランスを調節できる電気回路を示す図である。
励起光と照明光との光量バランスを、工場出荷時の初期設定とユーザによる任意の調節とを切り換えられる電気回路を示す図である。
複数の発光素子を含む照射手段の切り換え制御を行う回路例を示す図である。
符号の説明
1…ハンドピース本体
2…ハンドピースヘッド部
3…治療具
4…チューブ
5…アダプタ本体
6、10、12、16…電源ボックス
7…装着部材
8…リング状アダプタ本体
11…コイル装着部材
13…電源供給線
14…光源取り付け部材
15…スイッチ保持部材
17…光源ボックス
18…光ファイバ
19…フィルタ板
30、31、34、36…可変抵抗器
32、33、38、39…発光部
35、37…固定抵抗器
40、50、SW、SW1〜SW4…スイッチ
81…滑り止め部材
82…ケース部材
83、9…光源取り付け部材
84…係合片部材
85…バネ体
L、L1〜L4…発光素子