JP4820996B2 - 希ガスの固定化装置及び固定化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば希ガスを含むか或いは化学反応等により連続的に希ガスを発生するような真空系で適用され、その真空系のガスから希ガス、特にヘリウムを効果的に固定化するための希ガスの固定化装置及び固定化方法に関するものである。
従来、ヘリウム等の希ガスの排気は、クライオポンプやターボ分子ポンプ又は3極式スパッターイオンポンプを用いて行われてきた。特に、ヘリウムは希ガスのみならず永久気体中その沸点が最も低い−4.2Kのため、通常80Kの冷凍パネルを持つクライオポンプを用いても蒸気圧が高く、活性炭等の吸着材を併用して排気することが多い。ターボ分子ポンプの場合にも圧縮比が気体質量の平方根に比例するため、小質量原子であるヘリウムは、窒素等に比べて実効排気流量の面で極端に不利である。
そのため、ターボの回転翼段数を増やして圧縮比を上げるか、大型の排圧側ポンプを用いてヘリウムや水素等の排気に対応しているのが現状である。また、スパッターイオンポンプの場合にもヘリウムは電子衝撃イオン化断面積が小さいため、排気速度は水素の約30分の1程度である。従って、これら従来の真空技術を用いて希ガスを排気する場合、大型ポンプを用いることでその目的を達成しているのが現状である。一方、希ガスの貯蔵、運搬に関しては、従来高圧ガスボンベに貯蔵し、運搬することが広く行われている。
上記のように従来の真空技術では、大型ポンプに頼ることで小質量気体の排気に対応してきた。従って、真空設備に関してコスト高になりがちであった。また、希ガス排気対策としてクライオポンプのパネルに補助的に取り付けられるモレキュラーシーブのような吸着剤には本質的に飽和点があり、ヘリウムの連続的排気が必要となるような真空装置には不適当である。また、スパッターイオンポンプの作動範囲は、通常、10−5Torr以下であるため、動作開始までにターボ分子ポンプ等による荒引きが必要である。但し、ターボ分子ポンプも何らかの工学的理由(例えば、超伝導マグネットのクライオスタット)で分厚い壁を通す排気ダクトを用いる場合、コンダクタンスロスのため十分な排気速度を確保するのは困難である。希ガスの貯蔵、運搬に関しても、高圧ガス取り扱いに関する取扱性、ボンベ貯蔵スペース及び運搬重量に問題があった。
そこで、本発明者らは先に、チタンやリチウムの蒸着膜が連続的に形成される回転機構をもつターゲットと、水素ガスを導入する水素ガス導入部と、該水素ガス導入部から導入された水素ガスのプラズマ柱を生成するためのプラズマ発生装置とを備えた水素固定化装置を提案した(例えば、非特許文献1を参照)。すなわち、水素ガス導入部から導入された水素ガスをプラズマ発生装置により水素のプラズマ柱を生成し、そのプラズマ柱をターゲットの蒸着膜に照射し、水素ガスを蒸着膜中に固定化する装置である。
Fusion Sci.& Technol.45巻、60〜65頁(2004)
しかしながら、非特許文献1に記載の水素ガス固定化装置では、固定化される対象ガスが水素ガスであり、蒸着膜材料との反応性を有している。そのため、プラズマ化された水素ガスは、蒸着膜を形成するチタンやリチウムと反応してチタン又はリチウムの水素化物を生成し、蒸着膜中に固定化される。ところが、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの場合には、それらのガスが不活性ガスであることから、チタンやリチウムと反応することはなく、蒸着膜中への固定化は全く期待することができない。特に、ヘリウムは希ガスの中でも最も蒸気圧が高く、固定化が困難なガスである(図3を参照)。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、希ガスを効果的に固定化することができる希ガスの固定化装置及び固定化方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の希ガスの固定化装置は、表面にリチウムの皮膜が形成されるターゲットと、希ガスを含むガスを導入するガス導入部と、該ガス導入部から導入されたガスのプラズマ柱を生成するためのプラズマ発生装置とを備え、ガス導入部から導入されたガスを用いてプラズマ発生装置により希ガスのプラズマ柱を生成し、そのプラズマ柱をターゲット表面の皮膜に照射し、希ガスを皮膜中に固定化することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明の希ガスの固定化装置は、請求項1に係る発明において、前記ターゲット表面の皮膜を常温に維持するための冷却部を備えていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明の希ガスの固定化装置は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記希ガスはヘリウムであることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明の希ガスの固定化装置は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明において、前記リチウムの皮膜中に固定化された希ガスを、前記皮膜を昇温させることにより皮膜から脱離、気化させて回収する再気化機構を備えていることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明の希ガスの固定化方法は、請求項1に記載の希ガスの固定化装置を用い、ガス導入部から導入されたガスを用いてプラズマ発生装置により希ガスのプラズマ柱を生成し、そのプラズマ柱をターゲット表面のリチウムの皮膜に照射し、希ガスを皮膜中に固定化することを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明の希ガスの固定化方法は、請求項5に係る発明において、前記ターゲットを回転させ、希ガスをリチウムの皮膜中に連続的に固定化することを特徴とするものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の希ガスの固定化装置では、表面にリチウムの皮膜が形成されたターゲットと、希ガスを含むガスを導入するガス導入部と、該ガス導入部から導入されたガスのプラズマ柱を生成するためのプラズマ発生装置とを備えている。そして、ガス導入部から導入されたガスを用いてプラズマ発生装置により希ガスのプラズマ柱を生成し、そのプラズマ柱をターゲット表面の皮膜に照射することにより、希ガスが皮膜中に固定化される。すなわち、リチウムの皮膜中にはリチウム原子が層をなして存在し、それらリチウム原子間に希ガスの原子が捕捉(埋積又は物理的共堆積)され、その状態が主として立体的(3次元的)原子間ポテンシャルにより保持されるものと考えられる。例えば、ヘリウムがリチウムの体心立法格子位置に捕獲された場合、ヘリウムが立体的原子間ポテンシャルによりリチウム原子間に保持される(図4及び図5を参照)。従って、希ガスをリチウム皮膜中に効果的に固定化することができる。
請求項2に記載の発明の希ガスの固定化装置では、前記ターゲット表面の皮膜を常温に維持するための冷却部を備えていることから、請求項1に係る発明の効果に加え、リチウム皮膜中に固定化された希ガスの揮散を抑制することができる。
請求項3に記載の発明の希ガスの固定化装置では、希ガスはヘリウムであることから、希ガスの中で最も蒸気圧が高く、固定化しにくいにもかかわらず、請求項1又は請求項2に係る発明の効果を発揮することができる。
請求項4に記載の発明の希ガスの固定化装置では、前記リチウムの皮膜中に固定化された希ガスを、前記皮膜を昇温させることにより皮膜から脱離、気化させて回収する再気化機構を備えていることから、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、リチウムの皮膜中に固定化された希ガスを容易に回収することができる。
請求項5に記載の発明の希ガスの固定化方法では、請求項1に記載の希ガスの固定化装置を用い、ガス導入部から導入されたガスを用いてプラズマ発生装置により希ガスのプラズマ柱を生成し、そのプラズマ柱をターゲット表面のリチウムの皮膜に照射し、希ガスを皮膜中に固定化するものである。このため、希ガスをリチウムの皮膜中に効果的に、かつ容易に固定化することができる。
請求項6に記載の発明の希ガスの固定化方法では、ターゲットを回転させ、希ガスをリチウムの皮膜中に連続的に固定化することから、請求項5に係る発明の効果に加えて、希ガスの固定化操作を連続的に行うことができ、希ガスの固定化効率を一層高めることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の希ガスの固定化装置は、希ガスを含むか或いは化学反応等により希ガスを連続的に発生するような真空系に適用され、その真空系のガスから希ガス、特にヘリウム(He)を効果的に固定化するための装置である。そのような真空系の例として、希ガススパッタリング装置、プラズマCVD装置、反応エッチング装置等の小型装置や、重水素−三重水素反応を利用しヘリウム灰が発生する定常運転核融合炉等の大型装置が挙げられる。
図1は、本実施形態の希ガスの固定化装置10を模式的に示す説明図である。同図に示すように、四角箱状をなすステンレス鋼製の真空チャンバー11にはターボ分子ポンプ12が連通管13を介して接続され、真空チャンバー11内が10−7Torr(10−5Pa)台まで真空に排気されるようになっている。真空チャンバー11内の中心には円筒状をなす銅製のターゲットとしての回転ターゲット14が配設され、一定の回転速度で回転されるように構成されている。回転ターゲット14の中心には冷却部としての水冷却管15が設けられ、回転ターゲット14の表面が常温(15〜25℃)になるように冷却する。この場合、水冷却管15を流れる水は常温の水道水でよいが、15℃未満の冷却水を用いれば回転ターゲット14表面の温度を下げることができる。さらに、液体窒素等の冷媒を用いれば、回転ターゲット14表面の温度を一層下げることができる。回転ターゲット14は例えば直径10cmに形成され、真空チャンバー11とは電気的に絶縁されている。
真空チャンバー11内の回転ターゲット14の下方位置には融点185℃の低融点金属であるリチウム(Li)の蒸発源16が配置されるとともに、その蒸発源16を囲むように蒸気導入管17がその開口部を上方に向けて設けられている。リチウムは前記のように低融点であることから、蒸着のためのエネルギーを節約することができる。そして、蒸発源16から蒸発されたリチウムの蒸気が蒸気導入管17から回転ターゲット14に向けて放出され、回転ターゲット14の表面に皮膜としての蒸着膜18を形成する。前記真空チャンバー11の底面は支持台19で支持され、その中心には前記蒸発源16の位置を上下させる上下位置調節装置20が上下動可能に設けられている。
希ガスとしては、ヘリウムのほか、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)及びキセノン(Xe)が挙げられる。図3は各希ガスの温度と蒸気圧との関係を示すグラフであり、同図に示すようにヘリウムが最も蒸気圧が高く、ネオン、アルゴン、クリプトンの順に蒸気圧が低下し、キセノンが最も蒸気圧が低い。つまり、最も蒸気圧の高いヘリウムはリチウムの蒸着膜に埋積されにくくて最も固定化が困難であり、最も蒸気圧の低いキセノンはリチウムの蒸着膜18に埋積されやすくて最も固定化が容易である。従って、ヘリウムの固定化ができるということは、それ以外の希ガスも容易に固定化できることを意味している。また、前述の原子間ポテンシャルの計算結果も同様の傾向を示している(図は省略)。
真空チャンバー11の側方位置(図1では左方位置)には、電子サイクロトロン共鳴型(ECR)のプラズマ発生装置21が連結パイプ22を介して配設され、プラズマ発生装置21によって発生されるプラズマを回転ターゲット14表面に照射するように構成されている。このときの照射粒子束は、プラズマ発生装置21の出力によって決定される。連結パイプ22のプラズマ発生装置21側下部にはガス導入部としてのガス導入パイプ23が接続され、ヘリウム等の希ガスを含有するガスを連結パイプ22内に導入し、プラズマ発生装置21によって発生するプラズマにより希ガスのプラズマ柱24を生成する。希ガスのプラズマ柱の圧力は、ヘリウムの場合には10−2〜10−4Torrである。
連結パイプ22内には一定の開口直径を有するドーナツリミター25がプラズマ柱24と直交するように配置され、その開口直径によってプラズマ柱24の直径が設定される。プラズマ発生装置21、連結パイプ22、真空チャンバー11及びターボ分子ポンプ12の周囲には、円環状をなす3台の電磁石26が一定間隔をおいて配置され、プラズマ発生装置21によって発生したプラズマが回転ターゲット14へ誘導されるようにしている。連結パイプ22の中央上部には温度測定用筒体27が配設され、その中にはラングミュア型のプラズマ探針28が上下動可能に支持されている。このプラズマ探針28の先端は前記プラズマ柱24に達するように支持され、プラズマ柱24の密度と電子温度(電子ボルト、eV)とが測定される。その結果から前記の照射粒子束が計算される。
真空チャンバー11におけるプラズマ発生装置21側の側面の上下位置には、赤外温度計で回転ターゲット14表面の温度を測定するために斜め上方に延びる第1筒体29及び電子衝撃励起光強度を測定するために斜め下方へ延びる第2筒体30が固定されている。そして、赤外温度計を用いて第1筒体29から回転ターゲット14表面の温度が測定されるとともに、第2筒体30を利用し、分光器によって中性ヘリウムの電子衝撃励起光強度が測定され、回転ターゲット14上のリチウムの蒸着膜18中に埋積固定された希ガスの量が測定される。
回転ターゲット14上に希ガスを固定化するためには、例えば希ガスがヘリウムである場合、回転ターゲット14を照射するヘリウムのイオン粒子束に対するリチウムの粒子束の比は、10以上であることが望ましい。具体的には、ヘリウムのイオン粒子束が3×1015He-ions/cm2/secであるとき、リチウムの粒子束は3×1016Li-atoms/cm2/sec以上であることが望ましい。この比が10未満の場合には、リチウムの蒸着膜18中へのヘリウムの固定化率が低下して好ましくない。
次に、再気化機構31について説明する。この再気化機構31は、リチウムの蒸着膜18中に固定化された希ガスを、蒸着膜18の昇温により蒸着膜18から脱離、気化させて回収する機構であり、リチウムの蒸着膜18中に固定化された希ガスを容易に回収することができる。再気化機構31は、前記水冷却管15を利用して減圧下に回転ターゲット14を加熱する機構を採用したり、赤外線ランプで回転ターゲット14の表面を加熱する機構を採用したり、或いは回転ターゲット14表面のリチウム膜を剥がして別の加熱装置で加熱する機構を採用したりすることができる。
次に、前記希ガスの固定化装置10を用いた希ガスの固定化方法について説明する。
まず、回転ターゲット14の外周速度が所定値になるように、回転ターゲット14を図1中の矢印で示す時計方向に回転させる。続いて、リチウムの蒸発源16を加熱するとともに、上下位置調節装置20によりリチウムの蒸発源16を上下動させ、蒸発源16の温度及び蒸発源16と回転ターゲット14との距離の調整を行う。その間、ターボ分子ポンプ12を動作させ、真空チャンバー11内及び連結パイプ22内を真空に維持する。そして、リチウムの蒸発源16からリチウム蒸気を蒸発させ、回転ターゲット14上に所定の速度でリチウムの蒸着膜18を蒸着させる。
この場合、蒸着速度とリチウムの蒸発源16の温度、上下位置との関係は、予め別の真空チャンバーを利用して測定しておく。リチウムの蒸着膜18の回転ターゲット14上における幅は、蒸気導入管17の直径により決定される。この間、回転ターゲット14は、水冷却管15を流れる水によって冷却され、プラズマ照射及びリチウム蒸着中もほぼ常温に維持される。
一方、プラズマ発生装置21によってプラズマを生成させるとともに、ガス導入パイプ23から希ガスを連結パイプ22内に導入し、希ガスのプラズマ柱24を形成する。そのプラズマ柱24を3台の電磁石26の線型磁場によって回転ターゲット14へ誘導する。リチウムの蒸着膜18中にプラズマ柱24から飛来する希ガスイオン(又は希ガスの中性原子)が埋積固定される。このときの浮遊電位は、一般にプラズマ柱24の電子温度で決まり、この電位に従って希ガスイオンがリチウムの蒸着膜18表面を衝撃する。この浮遊電位は、直接希ガスの排気効率に影響を与えるので、直流電源を以って回転ドラムに電圧を印加して調整してもよいが、この印加電圧が高すぎるとリチウムの蒸着による損耗が起こるので、印加電圧の決定には注意を要する。
回転ターゲット14の表面温度は、赤外温度計によって測定される。このとき、分光器によって中性ヘリウムの電子衝撃励起光強度が図1に示される角度で測定される。上記の操作中、一般に電子温度は変わらないと仮定できるので、分光測定強度はプラズマ柱24内の希ガスの原子数密度に比例し、これから回転ターゲット14上のリチウムの蒸着膜18中に連続的に埋積固定されたヘリウムの量を算定することができる。
本実施形態では、希ガスをプラズマ化しそれに直接接触するように設置された浮遊電位の回転ターゲット14にリチウム原子を蒸着させ、連続的に回転ターゲット14上に薄膜(蒸着膜18)を生成し、プラズマから飛来する希ガスイオン又は希ガスの中性原子を薄膜中に埋積することで連続的に固定化される。この方法では連続的に蒸着膜18が生成されるのでモレキュラーシーブ等の吸着剤に見られるような飽和点がない。
図4及び図5は、ヘリウム原子がリチウム原子間に捕捉された状態を示す説明図である。すなわち、リチウム原子32間には結合手33があり、立方晶構造を有している。その体心立方位置にはヘリウム原子34が捕捉され、リチウム原子32との間の立体的原子間ポテンシャルによって保持されている。図5において、リチウム原子32の周囲とヘリウム原子34の周囲にはほぼ一定の間隔で広がる原子間ポテンシャル(静電ポテンシャル)の等高線35が形成されている。この等高線35の間隔はリチウム原子32に近いほど密になり、リチウム原子32から離れるほど粗になっている。
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態における希ガスの固定化装置10では、表面にリチウムの蒸着膜18が形成された回転ターゲット14と、希ガスを含むガスを導入するガス導入パイプ23と、該ガス導入パイプ23から導入されたガスのプラズマ柱24を生成するためのプラズマ発生装置21とを備えている。そして、ガス導入パイプ23から導入されたガスを用いてプラズマ発生装置21により希ガスのプラズマ柱24を生成し、そのプラズマ柱24を回転ターゲット14表面の蒸着膜18に照射することにより、希ガスが蒸着膜18中に固定化される。すなわち、リチウムの蒸着膜18中にはリチウム原子が層をなして存在し、それらリチウム原子間に希ガスの原子が埋積され、その状態が図4及び図5に示した原子間力により保持される。従って、希ガスをリチウムの蒸着膜18中に効果的に固定化することができる。
・ また、前記回転ターゲット14表面の蒸着膜18を常温に維持するための水冷却管15を備えていることから、リチウムの蒸着膜18中に固定化された希ガスの揮散を抑制することができる。
・ 前記希ガスがヘリウムであることにより、ヘリウムは希ガスの中で最も蒸気圧が高く、固定化しにくいにもかかわらず、容易に固定化することができる。
・ さらに、前記リチウムの蒸着膜18中に固定化された希ガスを、前記蒸着膜18を昇温させることにより蒸着膜18から脱離、気化させて回収する再気化機構31を備えることにより、リチウムの蒸着膜18中に固定化された希ガスを容易に回収することができる。
・ 希ガスの固定化方法では、前記希ガスの固定化装置10を用い、ガス導入パイプ23から導入されたガスを用いてプラズマ発生装置21により希ガスのプラズマ柱24を生成し、そのプラズマ柱24を回転ターゲット14表面のリチウムの蒸着膜18に照射し、希ガスを蒸着膜18中に固定化するものである。このため、希ガスをリチウムの蒸着膜18中に効果的に、かつ容易に固定化することができる。
・ 前記回転ターゲット14を回転させ、希ガスをリチウムの蒸着膜18中に連続的に固定化することにより、希ガスの固定化操作を連続的に行うことができ、希ガスの固定化効率を一層高めることができる。
・ このように、本実施形態では固体中に希ガスが貯蔵されることから、希ガスの取扱性、貯蔵スペース、運搬重量の点から優れており、水素貯蔵合金に匹敵する画期的な新技術である。
以下、実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
図1に示す希ガスの固定化装置10を使用し、前述した固定化方法に従って、ヘリウムの固定化を行った。プラズマ発生装置21の出力を300Wに設定し、ガス導入パイプ23からヘリウムを導入し、低温ヘリウムプラズマ柱を生成し、そのときのラングミュア型のプラズマ探針28で測定されたプラズマ密度は、4×1010l/cc、電子温度は、約4eVであった。また、回転ターゲット14の円周方向の速度を10cm/secに設定した。このとき、浮遊電位にある回転ターゲット14に約30Vの負電位を与えて入射するヘリウムイオンを加速させた。これから回転ターゲット14を照射するヘリウムのイオン粒子束は、約3×1015He-ions/cm2/secとなる。本実施例1ではヘリウムのプラズマ柱24の直径を3.5cmに設定し、リチウムの蒸着膜18の回転ターゲット14上における幅も3.5cmとした。
一方、リチウムの蒸着速度は、約50Å/sec(絶対数すなわちリチウムの粒子束は、約3×1016Li-atoms/cm2/sec)に設定し、ヘリウムのプラズマ柱24の照射中に回転ターゲット14上に蒸着を開始した。ヘリウムの粒子束に対するリチウムの粒子束の比は約10であった。その結果、分光器によるヘリウム励起光強度が約20%減少した。これらの条件から、ヘリウム原子の蒸着膜18中への固定化率が20%、つまりヘリウム原子固定化の絶対数で約6×1014He-atoms/cm2/secであることが分かった。この実施例1のデータを図2に示した。図2の縦軸は励起光強度によるヘリウム検出量(%)を示す。図2に示すように、固定化の経過時間(秒)が80〜100秒でヘリウム検出量(%)がほぼ80%、言い換えればヘリウムの固定化率が20%であった。
実施例1の結果から、本発明の原理を利用した希ガスポンプを作製し、仮にヘリウムのプラズマ柱24が回転ターゲット14を照射する面積を314cm(直径20cmの円)になるヘリウムの固定化装置10の場合、固定化速度(排気速度)は約2×1017He-atoms/secとなり、10−5Torrの圧力で約650 l/secの固定化速度となる。従って、中型のターボポンプの性能に相当する効率でヘリウムを固定化できることになる。また、実験結果の解析からヘリウムの固定化効率は、リチウムの蒸着速度にほぼ比例するので、この蒸着速度を上げれば、ヘリウムの固定化速度が増大することが容易に推察される。さらに、リチウムの融点は185℃であるので、比較的容易に蒸発速度の上昇を図ることができる。また、この原理で固体リチウム中にヘリウムガスを固定化することができれば、貯蔵スペース、運搬重量等に有益な結果をもたらすことは明らかである。
(実施例2)
前記実施例1では、リチウムの蒸着膜18にヘリウムプラズマが照射されたときのヘリウム励起光強度によるヘリウム検出量のデータから、リチウムの蒸着膜18中へのヘリウムの固定効果を評価した。本実施例2では、リチウムの蒸着膜18中にヘリウム以外の希ガスが固定されるか否かを確認するために、アルゴン(Ar)プラズマの照射を行った。用いたアルゴンプラズマの密度、イオン粒子束(照射粒子束)等の特性は、実施例1のヘリウムプラズマと同様に設定した。また、リチウムの蒸着膜18は、ヘリウムプラズマによる実施例1と同様の水冷銅製の回転ターゲット14を用いた。そして、実施例1と同様にして、固定化の経過時間(秒)とアルゴン検出量(%)との関係を測定し、その結果を図6に示した。
図6に示した結果より、固定化の経過時間が40秒前後で、アルゴン検出量が約87%、言い換えればアルゴンの固定化率が約13%であった。アルゴンの固定化率は、実施例1でヘリウムの固定化率が約20%であったのに比べて約7%低いことが明らかとなった。両希ガスがリチウムの蒸着膜18中における格子欠陥に捕獲される点は同じであると考えられるが、固定化率の差はアルゴンがヘリウムに比べて大型の原子であるためと推測される。
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ リチウムの皮膜として、スパッタリング法による皮膜、CVD(化学蒸着)法による皮膜等を用いることができる。
・ 前記ターゲットを平板等により固定した構造とすることができる。
・ 前記冷却部に水以外のエチレングリコール等の冷却媒体を使用することもできる。
・ 水冷却管15を回転ターゲット14の周囲に沿うように複数本配置し、回転ターゲット14表面の冷却効率を高めるように構成することもできる。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記希ガスがヘリウムであり、ヘリウムのプラズマ柱の粒子束に対するリチウムの粒子束が10倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の希ガスの固定化装置。このように構成した場合、ヘリウムをリチウムの皮膜中に効率良く固定化することができる。
・ 前記希ガスがヘリウムであり、ヘリウムのプラズマ柱の圧力は10−2〜10−4Torrであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の希ガスの固定化装置。このように構成した場合、ヘリウムのプラズマ化を容易に行うことができる。
希ガスの固定化装置を示す概略説明図。 経過時間とヘリウム検出量との関係を示すグラフ。 希ガスについて、温度と蒸気圧との関係を示す蒸気圧曲線。 ヘリウム原子がリチウム原子間に捕捉された状態を示す説明図。 ヘリウム原子がリチウム原子間に捕捉された状態における原子間ポテンシャルの等高線を示す説明図。 経過時間とアルゴン検出量との関係を示すグラフ。
符号の説明
10…希ガスの固定化装置、14…回転ターゲット、15…冷却部としての水冷却管、18…皮膜としての蒸着膜、21…プラズマ発生装置、23…ガス導入部としてのガス導入パイプ、24…プラズマ柱、31…再気化機構。

Claims (6)

  1. 表面にリチウムの皮膜が形成されるターゲットと、希ガスを含むガスを導入するガス導入部と、該ガス導入部から導入されたガスのプラズマ柱を生成するためのプラズマ発生装置とを備え、ガス導入部から導入されたガスを用いてプラズマ発生装置により希ガスのプラズマ柱を生成し、そのプラズマ柱をターゲット表面の皮膜に照射し、希ガスを皮膜中に固定化することを特徴とする希ガスの固定化装置。
  2. 前記ターゲット表面の皮膜を常温に維持するための冷却部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の希ガスの固定化装置。
  3. 前記希ガスはヘリウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の希ガスの固定化装置。
  4. 前記リチウムの皮膜中に固定化された希ガスを、前記皮膜を昇温させることにより皮膜から脱離、気化させて回収する再気化機構を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の希ガスの固定化装置。
  5. 請求項1に記載の希ガスの固定化装置を用い、ガス導入部から導入されたガスを用いてプラズマ発生装置により希ガスのプラズマ柱を生成し、そのプラズマ柱をターゲット表面のリチウムの皮膜に照射し、希ガスを皮膜中に固定化することを特徴とする希ガスの固定化方法。
  6. 前記ターゲットを回転させ、希ガスをリチウムの皮膜中に連続的に固定化することを特徴とする請求項5に記載の希ガスの固定化方法。
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