図1の荷電粒子ビームシステム1は、重く堅牢なテーブル5上に位置して取り付けられた試料チャンバ10を有する。テーブル5は石材プレートまたはコンクリート製のプレートとすることが可能である。テーブル5自体は、複数本の第1脚部3a, 3b上に置かれ、第1脚部3a及び3bのうちの2本が図1に示される。第1脚部3a, 3bは、床2上に位置するよう設計される。各第1脚部3a, 3bは、床からテーブル5への振動伝達をさけるべく、第1防振材4a, 4bを含むか又は支承する。
試料チャンバ10は、複数本の第2脚部18a, 18bを介してテーブル5上に置かれる。各第2脚部18a, 18bも又、第2防振材9a, 9bを含むか又は支承する。これらの防振材9a, 9bは、テーブル5から試料チャンバへの振動伝達を低減するか又は防止する役割を果たす。テーブル5のこうした振動は、例えばテーブル5に固定的に接続されるか又は取り付けられたターボポンプ等である機械式真空ポンプ17に由来する可能性がある。テーブル5が大質量であるために、機械式ポンプ17により発生した振動振幅が大幅に低減される。
機械式ポンプ17は機能的に試料チャンバ10に接続される。この機能接続のために、ポンプ17の吸気口は2つのフレキシブルベロー部6, 8を介して硬質管7と接続するか、又は両フレキシブルベロー部の間のコンパクトな真空フランジと接続し、試料チャンバ10に至る。ポンプ17から試料チャンバへの完全ラインは、「フレキシブルベロー部-硬質管-フレキシブルベロー部」の一連の配置を形成する。この配置は更に振動エネルギーを減衰し、テーブルからチャンバへ伝達される振動を低減する役割を果たす。チャンバの振動は、中間管の質量が大きい場合に更に低減可能であり、ベロー又は管と接触するエネルギー吸収材がある場合に更に低減可能である。チャンバの振動は、管及びベローに力学的共振があり、この力学的共振によりポンプ17に起因する周波数の振動エネルギーが優先して吸収及び消散される場合に更に低減可能である。
以下に述べる特別の実施形態において、荷電粒子ビームシステムは1つを上回る機械式ポンプ、特に2つのターボ分子ポンプを有することが可能である。像の品質に対する振動の影響を低減する手段として、両ターボ分子ポンプ(又は2つを上回るターボ分子ポンプがある場合にはその全て)はフレキシブルベローの連続する対により荷電粒子ビームシステムに接続される。荷電粒子ビームシステムは、チャンバ用の1つとガン用の1つの、2つのターボ分子ポンプを有することが可能である。
ダブルベロー配置により、ポンプの回転周波数に伴う振動(例えば900 Hz又は1kHz及びその高調波)が顕微鏡に伝達することが防止される。ターボポンプ自体は、その大質量及び備わっている減衰能力の故に選択された巨大な石材プラットフォーム(テーブル5)に固定的に取り付けられる。この石材プラットフォームは、石材上で計測可能な振動をナノメータ又はサブナノメータレベルにまで低減する役割を果たす。顕微鏡への振動伝達は、その間に硬質管を備えた2つの連続するベロー配列により更に低減される。試料チャンバ10又は荷電粒子源において計測されるターボ振動は通常、サブナノメータ又はサブオングストロームのレベルである。このように、適正なポンピング速度(例えば毎秒200リットルの真空ポンピング速度以上)を、不利に像の品質を低下させずに達成可能である。
試料チャンバ10は真空気密ハウジング19を有する。管状延長部11は、固定的及び分離不可能に試料チャンバ10のハウジング19に取り付けられる。管状延長部11は、試料チャンバ10を包囲するハウジング19の残部に溶接された金属管により形成可能である。代替的に、管状延長部をチャンバハウジング自体の一体部分とすることも可能である。
管状延長部11の内部には荷電粒子カラム12が取り付けられる。従って荷電粒子カラム12は、レンズ、絞り、及び図1では示されていないビーム走査系を有する。荷電粒子カラム12の構成部品を、試料チャンバ10のハウジング19の管状延長部の内部に直接取り付けることにより、荷電粒子カラムの構成部品と試料チャンバ10の内部に配置された試料ステージ20との間の機械的振動を避けるか又は少なくとも低減可能である。
試料チャンバのハウジング19の管状延長部11上には、荷電粒子源を含むモジュールが接続される。このモジュールは、上部球状面を有する下部ハウジング部16を有する。上部球状面は二軸式傾斜マウントの一部分を形成する。更に、この源モジュールは上部ハウジング15を有し、上部ハウジング15内に荷電粒子エミッタが取り付けられる。図示のケースにおいて、荷電粒子源はガス電界イオン源であり、荷電粒子エミッタ14は導電性チップである。上部ハウジング15は又、二軸式傾斜マウントの第2部分を形成する球状面部分を有する。この傾斜マウントの助けにより、荷電粒子エミッタ14を把持する上部ハウジング部分15は、二軸回りに荷電粒子カラム12に対して傾斜可能であり、荷電粒子エミッタ14により放出される荷電粒子の放出軸を、荷電粒子カラム12の内部に配置された荷電粒子構成部品により規定される光軸に整列させる。
傾斜マウントは空気軸として設計可能であり、上部ハウジング15の球状面又は下部ハウジング16の球状面が小さなチャネル(図示されず)を有し、そのチャネルを介して空気流を提供可能であり、空気流が上部ハウジングを揚げ、上部ハウジングは下部ハウジングに対して容易に移動可能であるよう設計される。空気流を停止することにより、上部ハウジング及び下部ハウジングは上部ハウジングと下部ハウジングとの間の強力な摩擦力により共に把持される。
図2において、管状延長部を備えた試料チャンバ10のハウジング19が詳細に示される。管状部分11内に取り付けられた荷電粒子カラム12は、複数の絞り22、偏向系23及び対物レンズ21を有する。対物レンズ21により、荷電粒子ビームは試料チャンバ10の内部の試料ステージ(図示されず)上に位置可能な試料上に集束し、試料全域を走査可能である。荷電粒子ビームシステムがガス電界イオンビームシステムである場合、レンズ21及び偏向系23は静電部品であり、システムの構成部品に印加された異なる静電位に起因する静電力でイオンに作用する。更に、荷電粒子カラム12は第1圧力制限開口24及び第2圧力制限開口25を有し、これらはエミッタチップ14及び試料チャンバ10が位置する真空領域の間に中間真空領域(中間カラム領域70)を形成する。ガス電界イオン源のエミッタに最も 近接する荷電粒子カラム12の構成部品は、偏向器27へ続く集光レンズの一部を形成する電極26である。この場合偏向器27は、ガス電界イオン源からのビームを、試料チャンバ10へのビーム伝播の方向に下方へ続く荷電粒子光学部品により規定された光軸に合わせる。
図3にはコンパクトなガス電界イオン源の設計が示される。このガス電界イオン源はニ重にネストされた絶縁体を備えて設計される。これによりコンパクトな設計でありつつ、同時に依然として高い電圧と可変ビームエネルギー、及びガス格納容器が提供される。設計は複数の部分から構成される。第1部分は、熱伝導性(例えば銅)のベースプラットフォーム31である。ベースプラットフォーム31はアース接続され、極低温冷却システム52に直結され、例えば銅リボン又は銅編組線等のフレキシブル熱伝導体32により、極低温冷却システム52に熱的接続される。熱伝導体32の弾性により、ガス電界イオン源全体が傾斜可能となり、いかなる振動伝達をも最小化可能である。編組線の熱伝導性により、定期的メンテナンスの手順としてガス電界イオン源をも加熱可能である。
極低温冷却システムは、液体窒素及び/又は固体窒素を満たしたデュワとすることが可能である。代替的に、極低温冷却システムは固体窒素を満たしたデュワとすることが可能である。デュワはヒータ73cを有し、ヒータ73cによりデュワ及びベースプラットフォーム31を加熱可能である。代替的に、極低温冷却システムは機械式冷蔵装置とすることも可能である。
このアース接続されたベースプラットフォーム31には、中央管状高電圧絶縁体33が接続される。中央管状高電圧絶縁体33は例えばアルミナ又はサファイア製とし、ガス電界イオンエミッタを形成する導電性チップ34を機械的に支承する。中央管状絶縁体33はベースプラットフォーム31に関して30 kVを上回る電気絶縁を提供する。この中央絶縁体33は、高電圧リード線35, 36を接続するための1つ以上の開放部を有し、高電圧リード線35, 36は導電性チップ34に接続する必要がある。導電性チップ34は、ガス電界イオン源としてチップ34を作動させるために必要な高電圧を提供し、またチップ34の加熱用の加熱電流も供給する。
またベースプラットフォーム31には、外部管状及び円柱状絶縁体37も接続され、外部管状及び円柱状絶縁体37は中央絶縁体33を包囲する。外部管状絶縁体37は引出電極38を機械的に支承し、30 kV以上の(を超える)電気絶縁も又提供する。
引出電極38は小孔39(例えば直径1 mm, 3 mm, 5 mm)を備えて設計され、小孔39は設計により、チップ34の頂点部から僅かの距離(例えば1 mm, 3 mm, 5 mm)にある。ベースプラットフォーム31、中央絶縁体33、外部円柱状絶縁体37及び引出電極38が共同で内部ガス封じ込め容器41を規定する。引出電極の孔39を介する真空誘導又はポンピング速度を比較的小さくして、内部ガス封じ込め容器41の外側領域と比較して高い、導電性チップ34の領域内の圧力を支承する。ガスが出る唯一の経路は、前述の引出孔、ガス送出経路40及びポンピング弁42である。ガス送出経路40は、供給底部からアース接続されたベースプラットフォーム31を貫いて内部ガス封じ込め容器41に至る細管40を介する。ポンピング弁42はベースプラットフォーム31上に取り付け可能であるか又はガス送出経路40に合体可能である。
荷電粒子源の上述の全ての構成部品は、ベースプラットフォーム31上に支承され、ベースプラットフォーム31は硬質ではあるが熱非伝導性の支承構造(図示されず)により機械的に支承される。支承構造は外部真空容器(図1の15)の上部分に取り付けられる。外部真空容器の上部分は、5度までの小さい角度で凹型球状面の接触面により傾斜可能であり、凹型球状面は、外部真空ハウジングの下部(図1の16)の凸型球状面に対応する。
内部ガス封じ込め容器の内部にはイオンゲッタ45が配置される。内部ガス封じ込め容器内の真空を改善するには、化学的ゲッタ剤45をガス封じ込め容器41の内部に含む。これらの化学的ゲッタ剤45は、ガス電界イオン源をベーキングする際に活性化される。ヒータ73bは化学的ゲッタ剤45を加熱するために備えられる。化学的ゲッタ剤45を約200°Cまで2時間加熱する間、及びこれら構成部品の冷却時に、化学的ゲッタ剤45は多くの化学的活性剤、例えばZr, V, Fe及びTi等を残存させ、これらは多くの不要ガス種を効果的にポンプで排気する役割を果たす。ゲッタ剤は現存部分、例えば外部円柱状絶縁体37の表面に直接被覆可能であり、又はリボン状材料として、内部ガス封じ込め容器を形成する内部表面に接着可能である。あり得る不純物の中で、水素は極低温の冷却面によっては効果的にクライオポンプされないため、水素用の化学的ゲッタ剤のポンピング速度が重要である。内部ガス封じ込め容器41内の化学的ゲッタ剤45は又、搬送されたヘリウム及びネオンガスの更なる不純物に対して非常に効果的である。希ガスであるヘリウム及びネオンは影響を受けないが、全ての不純物は効果的にポンプで排気される。これらが周期的に再生される間、目的のために作成されたバイパス弁42(フラッパ型弁)を開放することで、改善された方法でポンプにより発生ガスを排気可能であり、バイパス弁42は内部ガス封じ込め容器41を外部ガス格納容器81に接続する。
内部ガス封じ込め容器41は放射シールドにより包囲可能であり、放射シールドは外部容器壁(室温)からイオン源への放射熱伝達を最小化する。内部ガス封じ込め容器41は又光学的に透明な窓を有することが可能であり、光学的に透明な窓により、内部真空容器の外側からエミッタのチップ34上が直視可能になる。外部真空容器内で窓が整列しているため、カメラ又は高温度計により、ガス電界イオン源のエミッタチップを観察可能である。こうしたカメラにより、定期保守の間に源を点検し、源の温度をモニタ可能である。これらの窓の一方又は両方を鉛入りガラスとすることが可能で、内部から外部へのX線の放射伝達を最小化する。ベースプラットフォーム31はその高い熱伝導性のために、熱電対のような温度センサ用にも最適である。
以下に詳述されるように、ガス供給管40はヒータ73aを有することが可能である。
ガス電界イオン源はエミッタチップ34の幾何学的形状に基づいて確立される電圧で作動される。幾何学的形状とは、エミッタチップ34の平均円錐角度及び平均の曲率半径といった要素を含む。
上述の設計には、質量及び体積が小さいことの利点がある。質量及び体積が小さいため熱循環が早まり、冷却負荷が低減可能となり、費用及び複雑性が低減される。更に、設計がコンパクトであるため、ガス電界イオン源を作動する希ガスを迅速に交換可能である。特に内部ガス封じ込め容器41がコンパクトな設計であるため、ガス電界イオン源のヘリウムによる作動とネオンによる作動を迅速に変更できる。
理想的な作動状態下では、エミッタチップ34の頂点部は概球状である(例えば、直径50、 100、又は200 nm)。球状面は実際には一連の小平面として描写する方がふさわしく、これら一連の小平面が球面に近似する。エミッタのチップ34の頂点部近傍において、より良好には端部形状を3つの小平面により近似させる。これらの小平面は一つの頂点で交わり、3面の角錐を形成する。角錐端部は、比較的浅い角度(例えばエミッタ軸に対して70度又は80度)とすることが可能である。角錐の稜線及び頂点部は原子レベルでやや丸みを帯び、単一原子の稜線が無いか又は単一原子が頂点部に無い。
理想的な作動状態下では、頂点部にエミッタ材料の3つの原子が存在して正三角形を形成する。これら3つの原子(今後は「三量体」と称する)は最も突出するため、引出電極に対する正電圧(例えば20 kV, 30 kV, 40 kV)がチップに印加される場合に最も大きな電界を生成する。ヘリウム又はネオンガスが存在する場合、中性原子はこれら3つの原子の真上で電界イオン化可能である。比較的高いガス圧(局所圧で10-2 Torr又は10-3 Torr)では、毎秒106又は107又は108イオンの割合で、イオン化可能である。理想的な状況下では、このイオンの安定した流れは時間が経過しても一定であり、無期限に持続する。
本明細書で使用するTorr単位の範囲は、mbar単位により代替可能である。
実際には、ヘリウムで作動する場合の典型的状態下でイオン放出は100 pAの放出電流を示すことが可能で、これは連続10日以上継続可能であり、ミリ秒又はより早い時間スケールで0.5%程度上下変動する。放出電流の漸進的損失は、もし修正されない場合、一日当たり10%の割合で進行可能である。ヘリウムの性能(又はヘリウムによる作動の性能)はガスの純度の影響をやや受ける。ガスの純度は99.9990%又は99.9999%又は更に良好化可能であり、ヘリウムが存在していない場合の基本真空の質は、典型的には2 x 10-9 Torr, 1 x 10-9 Torr, 5 x 10-10 Torr又はこれらを上回るものとする。
ガス電界イオン源がネオンにより作動される場合、ヘリウムにより作動された場合の状態と比較していくつか複雑な点がある。一つには、ネオンイオンは遥かに巨大であり、従ってヘリウムの場合の50倍の割合でスパッタリングが発生可能である。ネオンイオンが表面近傍を打つと、スパッタされた原子が負の電荷を帯び(例えば負の二次イオン)、このような原子が加速してエミッタ34へ戻る可能性があり、エミッタ34の破損が引き起こされる。また一つには、市販のヘリウムガスの純度と同レベル(例えば純度99.9999%)のネオンガスが市販されていない。これら純度の効果については後述する。しかし最も顕著なのは、エミッタ34がネオンにより作動された場合、エミッタ34はやや低減された電圧で作動する必要があることである。例えば、ヘリウムに対して40 kVが最適であるとすると、同一のエミッタチップは30 kVでネオンの最適放出電流を発生する。このように電圧が低減されると電界も同様に低減され、不要原子(不完全な真空による残余ガス又はガス供給における不純物)が、より高い率でエミッタ34に到達可能となる。電界強度が僅か25%低減されると、指数関数的により多くの数のこれら不要原子(ヘリウムでもネオンでもない)がエミッタに到達可能となる。これらの不要原子(例えばH2, N2, O2, CO, CO2, H2O等)はガス電界イオン源のチップへの、ネオンの到達可能性を阻害する可能性があり、従って短期及び長期の時間スケール双方で放出不安定性を引き起こす。また、不要原子はエミッタ材料の腐食を促進し、時間の経過と共に徐々にエミッタの形状を変化させるため、イオン放出電流を徐々に低減させ、最適な作動電圧を徐々に低減させる可能性がある。また、不要原子はエミッタチップ34の1つ以上の原子をより容易に電界蒸発させ、急激な放出低下を引き起こす可能性がある。
安定したネオンビーム又はネオンよりも質量の大きい原子を有する希ガスイオンのビームを生成するためには、引出電極の成分が極めて重要であり、特にエミッタに面した表面が重要である。ガス電界イオン源のチップ34は、小孔39を施された隣接する引出電極38に極めて接近するよう構成される。イオン源34のチップ及び引出電極38は、これらに印加される電圧を有する。電圧の差異は、エミッタチップ34の頂点部近傍で極めて大きな電界を起こす原因となる。引出電極38の成分は、ネオンビームにより感知できる程度にはスパッタされない素材で、負イオンを形成しない例えば炭素、鉄、モリブデン、チタニウム、バナジウム、タンタル等の材料製とする。また、チップ34に面した引出電極38表面の成分は、た易く洗浄可能で、超高真空での気体放出速度が低い材料(例えばステンレススチール又は無酸素銅)とする。また表面も平滑(機械的な研磨又電解研磨により実現される)化可能で、鏡状仕上げとする。特にエミッタのチップ34に最も近接する表面は鏡状仕上げとする。また、引出電極38のエミッタチップ34に面する表面の材料は、極めて低い負の二次イオンスパッタイールドを有することが可能である(例えば金、酸化物を含有しない他の材料、ニッケル等)。負の二次イオンのスパッタイールドが低いと、加速されてエミッタに戻りエミッタの破損を引き起こす(又は破損する衝撃を引き起こす)負の二次イオンが生成される頻度が低減される。二次電子イールドは、入射ネオンイオン毎に10-5の低さとすることが可能である。
安定したネオンビームを生成するため、引出電極38の形状を的確なものにすることがいくつかの理由から非常に重要である。特に引出孔39の形状が重要である。引出電極内の孔にはいくつかの設計基準があり、最適な形状は矛盾し合ういくつかのニーズのバランスによる。第一に、孔を比較的小さくして、イオン化ガス(ヘリウム又はネオン)を封じ込めるため、10-2 Torr及び10-3 Torr間の範囲の比較的高い圧力で、希ガスをエミッタチップ34の頂点部近傍の内部ガス封じ込め容器41内に保持し、内部ガス封じ込め容器41の外側では圧力を10-5 Torr及び10-7 Torr間の範囲にまで顕著に降下可能とする。内部ガス封じ込め容器41の外側の圧力を低減することは、所望の高エネルギーイオンが低エネルギーの中性気体原子で散乱する割合を最小化するために重要である。散乱は不所望なビームテールを引き起こし、いくらかのイオンが中性化可能とさえなる原因となる。従って、引出電極38における孔39の真空コンダクタンスが重要である。真空コンダクタンスは毎秒のリットル単位で計測され、孔39の一方の側(内部)から孔39のもう一方の側(外部)へ、圧力がどのように低下するかを決定する基準スケールである。
また、もし引出電極38の孔39が大き過ぎると、ガス電界イオン源のエミッタチップ34は、より温度の高い表面に放射的にさらされる。ガス電界イオン源のエミッタチップ34及び引出電極38は、-210° C及び-190°Cの間の範囲の極低温で保持される。引出電極38における孔39が大き過ぎる場合、ガス電界イオン源のエミッタチップ34は、極低温に冷却されておらず、むしろ室温(例えば+20° C)であるより大きな表面領域に温められる。通常、極低温の冷却表面は効果的に不要ガス原子をトラップし、温かい表面はガス原子を効果的にはトラップできない。
しかし、引出電極38の孔39を小さくし過ぎないことを要求する反対の理由がある。例えば、もし孔39が小さ過ぎると、孔を製造し、孔が機能すべき高真空、高電界を支承するために必要なレベルでこの孔を清潔に保つことが、挑戦と言える程困難になる。また、エミッタのチップ34は、引出電極38における孔39に対して、引出孔39の直径の10%以内で中心に位置すべきである。従って、もし孔が小さ過ぎると、エミッタのチップ34に対して対称に位置させることが困難になる。
また、引出孔の角度広がりは、イオンエミッタのチップ34の頂点部に対して小さ過ぎてはならない。別の表現をすれば、エミッタのチップ34から見た引出孔39の立体角はある特定のサイズである。この要求はイオン放出のパターンに由来する。エミッタのチップ34自体は、かなり狭い円錐状で、2度の半円錐角度を備えたイオンを放出する。しかし、著しくより大きな角度の不要放出があるのは普通であり、エミッタ形状の特性で、エミッタ軸に対して20度の高い不要放出はごく当然である。そして、引出電極38に対する破損、及びエミッタのチップ34を破損する恐れのある負の二次イオンの生成を避けるため、これら放出イオンが引出電極38を打たないことが望まれる。また不要なイオン放出は、エミッタに移動しエミッタのチップからのイオン放出を不安定にする恐れのある、いかなる吸着物をも脱離する役割を果たす可能性もある。従って、引出電極38における孔39の角度広がり、及びエミッタのチップ34と引出電極38との間の距離は、孔の角度が約20度又はそれを上回る角度となるよう選択される。
内部ガス封じ込め容器41が非常に良好な基本真空を有すること、又はそれと同様に内部ガス封じ込め容器41に不要吸着原子(例えば、ヘリウム又はネオンのような所望される作動希ガス以外の原子及び分子)が無いことには、何らかの重要性が認められる。こうした不要原子及び分子にはH2, N2, H2O,O2, CO, NO, CO2等がある。説明として挙げると、内部ガス封じ込め容器41内の基本真空圧力は、内部ガス封じ込め容器へのガス供給、特にヘリウム及びネオンガスの供給が停止された際に、内部ガス封じ込め容器内部で計測される圧力である。所望される圧力は10-10 Torr又はそれよりも良好な圧力であろう。4 x 10-10 Torrの圧力で、同時に背景ガス圧力が低い場合、当初清浄であった表面が不要吸着原子により1つの単分子層の厚みにまで被覆される所要時間は約1時間であろう。こうした吸着原子により、イオン源の不安定性が引き起こされるため、最大限に可能な基本真空の達成が意図される。この目的を達成すべく、ガス電界イオン源のハウジング全体は、超高真空(UHV)手段で洗浄されるよう構成される。そしてガス電界イオン源のチップ34が収容される内部ガス封じ込め容器41は、UHVサービス用に構成及び準備される。
図4はガス電界イオン顕微鏡を示す。ガス電界イオン顕微鏡はイオンビーム用に2つの異なる希ガスにより作動可能であり、この特別なケースにおいて、ヘリウム又はネオンにより作動される。ガス電界イオン顕微鏡は、顕微鏡のハウジング19の内部に3つの真空領域を有する。第1真空領域は試料チャンバ10、第2真空領域は中間カラム領域70及び第3真空領域は外部真空格納容器81であり、ガス電界イオン源は外部真空格納容器81内に収容される。中間カラム領域70は外部ガス格納容器81と試料チャンバ10との間に位置する。
事前に述べたように、試料チャンバはターボ分子ポンプ17により排気され、ターボ分子ポンプ17はテーブル5上に取り付けられる(図4には示されず)。外部ガス格納容器81も又、機械式ポンプ60により排気される。機械式ポンプ60も、テーブル5上に又取り付け可能なターボ分子ポンプとすることが可能である。外部ガス格納容器81を排気する機械式ポンプ60との間の接続は、ポンプ17と試料チャンバとの間の接続のように設計可能、すなわちポンプ60と外部ガス格納容器81との間の接続も、硬質管を備えた2つのフレキシブルベロー、又はそれらフレキシブルベロー間にコンパクトな真空フランジを有することが可能である。
中間カラム領域70は、第1圧力制限開口54により外部ガス格納容器81から分離される。同様の方法で、中間カラム領域70は試料チャンバ10から第2圧力制限開口55により分離される。中間カラム領域70はイオンゲッタポンプ56により排気される。これにより、イオンゲッタポンプ56がいかなる振動をも発生しないという利点がある。
イオンゲッタポンプ56は制御部59に接続されて制御される。制御部59は、ガス電界イオン源が作動されるか及び/又は希ガスが内部ガス封じ込め容器41に供給される場合には、常にイオンゲッタポンプ56がスイッチオフされるよう、イオンゲッタポンプ56を作動する。
中間カラム領域70を排気するイオンゲッタポンプ56は、フランジ72を経て中間カラム領域に接続する。フランジ72には弁57が備えられ、弁57は、イオンゲッタポンプ56を交換する又はさもなければ保守点検する必要がある、又はイオンゲッタポンプがスイッチオフされるかイオンゲッタポンプが中間カラム領域70を排気してはならない場合等に閉鎖可能である。このようにして。イオンゲッタポンプ56の交換又は保守点検は中間カラム領域70を大気にすることなく可能である。
イオンゲッタポンプ56はヒータ58を有し、ヒータ58も又制御部59に接続されて制御される。ヒータ58によりイオンゲッタポンプ56を加熱可能であり、希ガス及び他の吸着物をイオンゲッタポンプ56から放出してイオンゲッタポンプ56を浄化する。
外部ガス格納容器81は圧力計測装置82を有する。圧力計測装置82も又制御部59に接続する。制御部59は、例えば外部ガス格納容器81の内部の圧力が所定の圧力値を下回った場合、すなわち圧力計測装置82のアウトプット信号が、外部ガス格納容器81内の圧力が所定の圧力値を下回ったと示す場合にのみ、イオンゲッタポンプ56をスイッチオンするソフトウエアプログラムを備えたコンピュータにより構成される。このようにして、イオンゲッタポンプ56の寿命が延長可能である。
図3に関連してすでに上述したように、外部ガス格納容器81の内部にはガス電界イオン源が配置される。図4では、内部ガス封じ込め容器41を形成するガス電界イオン源の構成部品、すなわちベースプラットフォーム31、外部管状絶縁体37及び引出孔39を備えた引出電極38のみが示される。図4に示されるように、ゲッタ45は内部ガス封じ込め容器41の内部にある。
図4には、駆動装置43を備えたフラッパ型弁42も示される。駆動層装置43も又制御部59に接続されて制御される。フラッパ型弁42は、内部ガス封じ込め容器41をすばやく排気することが要求された場合、例えばヘリウムイオンビームを生成するヘリウムによる作動と、ネオンイオンビームを生成するネオンによる作動との間でガス電界イオン源の作動変更が要求された場合、フラッパ型弁42を開放可能である。
ガス電界イオン顕微鏡は冷却装置、例えばエミッタチップ、ガス供給管40及びベースプラットフォーム31を冷却するデュワ52を有する。図4にはデュワ52と、ベースプラットフォーム31又はガス供給管40のような冷却される構成部品との間の熱的な接続は示されていない。デュワ52は、クライオジェンで充填されるよう構成されたデュワの内部チャンバを、外界から絶縁する真空ジャケットを有する。デュワジャケット弁及び真空ラインを経て、デュワジャケットは試料チャンバ10に接続する。このようにして、真空ジャケット内の真空を試料チャンバの圧力で保持可能である。デュワジャケット弁は以下の場合に閉鎖可能である。すなわち、いかなる処理ガスが試料チャンバ内の試料に供給される場合、チャンバが大気とされる場合、又は一般的にチャンバ圧力が所定の圧力値、例えば10-6 Torrを上回る場合である。デュワジャケット弁を閉鎖することにより、デュワジャケット内に凝縮性ガスが蓄積するのを防止可能である。
図4に示されたガス電界イオンビームシステムのガス供給系は、2つのガス容器61, 62を有し、1つの容器はヘリウムを、もう1つの容器はネオンを含む。両ガス容器は圧力調整機を有し、圧力調整機以降のガス供給ライン内で一定のガス圧力を確保する。圧力調整機以降の両ガス供給ラインに続いて、各ガス供給ラインはリーク弁63, 64を有する。リーク弁63, 64は、ガス容器61, 62から管40へ、対応する希ガスの一定のガス流を確保し、それにより内部ガス封じ込め容器41内への対応する希ガスの一定のガス流を確保する。
ガス容器61, 62からの管40へのガス流の方向で両ガス供給ラインが接続される。ガス流の方向に続いて、結合されたガス供給ラインで浄化器65及びガス弁68が続き、その後ガス供給ラインは内部ガス封じ込め容器41内で終了する管40に接続される。
ガス供給ラインは、ガス供給ラインを真空チャンバ10に直結するバイパス弁67を備えたバイパスライン66を有する。
更に、ヒータ73aがガス供給管40上に備えられ、ヒータ73aによりガス供給管40を加熱可能である。
ガス電界イオンビームシステムが数日間、高いヘリウム又はネオンガス流により作動されている場合、ガス電界イオン源の作動はクライオポンピング面、すなわちベースプラットフォーム31、ガス供給管40、引出電極38、絶縁体33, 37及びエミッタチップ34を短時間ウォームアップ可能なステップを含むことが可能である。このウォーミングアップの結果、蓄積された低温吸着原子を脱離可能であり、その後ターボ分子ポンプ17, 60を経て排気可能である。ヘリウム又はネオンガスのような希ガスを、外部のガス供給容器61, 62からエミッタチップ34の近傍へ供給するガス送出管40も又、極低温に冷却可能である。これにより、H2O, CO, CO2, N2, O2等の不純物を管40の表面上にクライオポンプ可能となり、供給されたガスを浄化する役割を果たす。ガス供給管40の表面を浄化するために、ガス供給管40は、他のクライオポンピング面が少なくとも100°C、より好適には150°C又は更に200°Cまで加熱されるのと同様に、ヒータ73により定期的に高温まで加熱可能であり、これらの蓄積吸着物を放出可能であり、ターボポンプ60, 17を介して排気可能である。
ガス送出管40は1 mmと6 mmの間の内径を有する。ガス送出管40は、外部ガス格納容器81の壁面を介して外部ガス送出系を内部ガス封じ込め容器41にまで接続する。ガス送出管40はバイパス弁67を有し、脱離ガスの排気を促進する。バイパス弁67は、脱離ガスが内部ガス封じ込め容器41内で大規模にトラップされることを防止する。バイパス弁67は完全に真空ハウジングの外に位置可能であり、又は内部ガス封じ込め容器41内に一体化される。
3つの技術のうちの1つにより、エミッタチップから吸着原子を定期的に除去することが有効であると判明している。3つの技術のうちの1つは、エミッタチップ34を定期的に、例えば300° C以上で1分以上加熱し、同時に内部ガス封じ込め容器41を形成する構成部品を極低温に保つことである。エミッタチップ34をこのように加熱することで、蓄積された吸着原子を熱励起させ、これらの吸着原子が脱離し、重要度がより低い周囲の表面に移動する。そうした表面は、主として引出電極38の冷却表面であり、吸着原子を保持し、エミッタチップ34に移動して戻る可能性を低減する。
代替的に、エミッタチップ34の加熱に替えてエミッタチップ上に集束される強烈な光線を使用し、蓄積された吸着原子を光脱離させることでエミッタチップ34を清浄な、安定したイオン放出に適した状態に残すことが可能である。
更に代替的に、エミッタチップ34と引出電極38との間の電圧差を増やし、電界により蓄積された吸着原子を脱離可能である。例えば、エミッタチップ34と引出電極との間の電圧差がガス電界イオン源の作動間に、ネオン放出用に通常30 kVであるとすると、電界を32 kV、より好適には35 kV又は40 kVまで増加可能であり、吸着物の放出を引き起こす。
これら上述の3つの技術のうちの1つに対する必要性は、放出パターンを観察し、個々の吸着物の影響を見ることで査定可能である。またこれら3つの技術のうちの1つに対する必要性は、エミッタのチップ34からの放出がいかに不安定か観察することでも査定可能である。
エミッタチップの各電界イオン顕微鏡の像は図11a及び図11bに示される。図11aは中央三量体放出パターンを示す。三量体原子が最も明るいが、非三量体原子放出サイトも可視である。通常、ガンの傾斜はこれら3つの中央放出ビームの1つが下部のイオンカラムに向けられるよう調整される。理想的な作動の間、放出パターンは時間が経過しても非常に安定し、一定である。しかし、真空状態又はガス純度が理想的ではないと、不所望な原子又は分子がエミッタ上に吸着する可能性があり、これは図11bにより大きな明るいスポットとして示される。これらの放出パターンは、こうした吸着分子又は原子の変化を待ち受けるべく、定期的にモニタ可能である。不所望な吸着原子は三量体原子上、又は非三量体原始のうちの1つの原子上、又は異なる部位に位置する可能性がある。吸着物の影響により三量体からの放出電流が低減されるか、又は吸着物がそこに残存すると同時に放出電流が増加する。従って、既述の技術は吸着物が取り除かれるまで適用可能であり、放出パターンが本来の所望される外観をとる。
上述のように、少量の不要ガス原子がガス電界イオン源のエミッタチップに到達しても、放出ビームの強度が上下変動するか、又は漸進的及び進行的に弱まる可能性がある。これらの影響はガスマニホールド(又はガス送出系)により低下可能である。ガスマニホールドは、性能を最適化する目的、及び作動手順のために設計される。ガス送出系はバイパス弁を含む。バイパス弁は、ヘリウム又はネオンガスでガス送出ラインを使用する準備段階での浄化プロセスとして、ガス送出ラインを排気可能にする。ガス送出ハードウエアは、UHVサービス用に確立された材料及び方法を備えて準備される。ガス送出系は一体型ヒータを備える。一体型ヒータは、ガスマニホールドを150° C, 200° C又更には400° Cという高温まで8時間、12時間又更には16時間という長い時間範囲で加熱可能であり、いかなる真空汚染物質の脱離をも助長する。この加熱時間の間、内部ガス封じ込め容器41へのライン中の弁68は閉鎖され、試料チャンバ10に至る管66中のバイパス弁67は開放される。その結果、発生ガスの影響がそれほど顕著ではない試料チャンバ10へと、ポンプにより発生ガスが排気される。ベーキングプロセスは、ガスマニホールドが大気にさらされた後(例えば容器又は弁交換等の保守活動の後)、又は放出安定性レベルを改善する必要がある場合に繰り返し可能である。化学的に活性である浄化器65も、普通の不純物を低減するためのガスマニホールドの一部分として組み入れ可能である。浄化器は、100°C, 200°C又更には300° Cの高温、室温又はいかなる所望の温度へ浄化器専用のヒータにより加熱されて作動可能である。浄化器のヒータへは直流電源により動力供給可能であり、60 Hz又は50 Hzの磁界からは何ら干渉を受けない。ガスマニホールドは又圧力計58を有することが可能であり、精密なリーク弁から下流ではあるが、ガスが内部ガス封じ込め容器に搬送される以前の圧力をモニタする。
ガス電界イオン源の内部ガス封じ込め容器は内蔵型の弁、「フラッパ型弁」42を有する。フラッパ型弁が開放されると、内部ガス封じ込め容器41は外部ガス格納容器81と接続され、内部ガス封じ込め容器の体積のポンピング速度が、毎秒1リットル(引出孔39を介してのみの開放である場合)から追加弁が開放された場合の毎秒22リットルにまで増加可能である。この弁を使用することで低い基底圧の達成を助長可能であり、低い基底圧により安定したネオン放出を助長可能である。この弁を使用することで、別のガス(例えばネオン)へ切り換える前に1つのガス(例えばヘリウム)をパージするために要求される時間を短縮可能である。弁は内部ガス封じ込め容器に直接取り付け可能であり、又はより離れて位置することも可能である。弁は又、ガス送出ライン40に組み込み可能である。
ガス供給容器から内部ガス封じ込め容器へのガス送出管としての役割を果たす極低温接続も装備可能である。この利点として、内部ガス封じ込め容器への接続が減少し、運転における接続及び切り離しがより容易になる。他の利点として、ヘリウム又はネオンガス内のいかなる不純物もクライオポンピングすべく、ガス経路が適切に冷却されることがある。他の利点として、デュワが加熱される際に、ガス送出管40が適切に加熱され、不純物を脱離することがある。
内部ガス封じ込め容器は、フレキシブル熱伝導素子32(図3に示される)を介して加熱及び冷却可能である。フレキシブル熱伝導素子の終端部は、極低温クーラに取り付けられたヒータ73cである。デュワがクライオジェンで充填されると、デュワはガス電界イオン源を冷却状態に保つ役割を果たす。デュワがクライオジェンで充填されていない場合、ヒータに動力が供給可能であり、デュワ及び内部ガス封じ込め容器を形成する構成部品の双方を加熱する。このような設計は、デュワ及び内部ガス封じ込め容器が熱的に密な関係にあり、これらの間で温度差を達成するのは単純な事項ではないために特に好適である。これら両部分をベーキングする間、要求される電力は約25ワットであり、達成される温度はデュワ上で130° C、及び内部ガス封じ込め容器41を形成する構成部品で110° Cである。
試料の帯電に起因する像内の電荷による乱れを低減するため、電子ビームを供給するフラッドガンを備えることが可能であり、フラッドガンは1 keVを超える、1.5 keVを超える又は2 keVさえ超える範囲の比較的高いエネルギーを許容する。多数の試料における電荷による乱れを軽減するためには、より高いエネルギーが望ましい。
像の品質上での振動の影響を低減する手段としては、1つ以上のターボ分子ポンプをイオンゲッタポンプで置き換える。ターボ分子ポンプは一般的に高価である。また内部に回転部品を有するため、ターボ分子部品により荷電粒子ビームシステムに対して振動が加えられ、像の品質が低下しがちである。費用を低減し、ターボ振動を除去するための1つの方法は、ゲッタイオンポンプ(akaイオンポンプ)を選択し、1つ以上のターボ分子ポンプを取り替える。ゲッタイオンポンプ(又はイオンゲッタポンプ)は2つのポンピング機構に基づく。第1の方法は、科学的に活性な種をポンプにより排気する化学的ゲッタリングである。第2の方法は直接原子を埋めるものである。第2の方法は、希ガス原子を含めいかなるガス分子に対しても機能する。一方第1の方法は、希ガス原子が化学的に不活性であるため、希ガス原子に対しては機能しない。ゲッタリング効果は、活性種の反応物質への結合により達成され、通常は、ゲッタイオンポンプにより新たに蒸発させられるチタニウム又はタンタルの組み合わせである。分子をイオン化し(電子衝撃により)、結果として得られた、3 keV又は5 keV又は10 keVのエネルギーまでの大きな電界を備えたイオンを加速することにより、原子を直接埋めることが可能である。その後、イオンは隣接面(チタニウム又はタンタル)を打ち、10から100 nmの典型的な深度にまで埋め込まれる。埋め込まれると、ガス種はもはや真空容器に戻ることはできない。直接埋めることにはスパッタリング効果が伴う。スパッタリング効果において、化学的に未反応のチタニウム又はタンタル分子がスパッタされ、それに続く化学的ゲッタリングが可能となる。しかし、イオンポンプはヘリウム及びネオン等の希ガスに対するポンピング速度が限られると知られている。理由としては、(1)ヘリウム及びネオンが化学的に比較的不活性であり、従って直接埋めることで最も効果的にポンプにより排気される。(2)ヘリウム及びネオンはイオン化エネルギーが高いため、容易にイオン化されない。及び(3)ヘリウム及びネオンはその移動性のため、埋められた状態から徐々に放散可能であり、表面の腐食が進行する。希ガス環境でイオンゲッタポンプの寿命が限られるという欠点を克服するために、ガス電界イオン源が作動している場合など、存在するガスが主として希ガスである場合には、イオンゲッタポンプをスイッチオフ可能である。代替的に、ゲッタイオンポンプはターボポンプと組み合わせて作動可能であり、その場合イオンゲッタポンプは、荷電粒子ビームカラム内の小さな中間真空スペースのみを排気し、イオンゲッタポンプへのガス負荷は絞りにより制限される。
ガス電界イオン源をベークアウトして所望の真空レベルを達成する場合、図6に関して述べる特定の時間順序に従うことが有益である。第1ステップ610において、外部真空ハウジング、内部ガス封じ込め容器41及びガス電界イオン源のエミッタチップの全てが、少なくとも100 °C、より好適には150°C又更に好適には200°Cにさえなる高温に加熱される。この加熱は、同時に全ての構成部品に対して実行可能である。しかし、加熱プロセスが第一にステップ611で完了する場合、外部真空ハウジングは室温にまで冷却可能である。外部真空容器がクールダウンする時間中、内部ガス封じ込め容器41及びガス電界イオン源のエミッタチップ等の内部構成部品は継続して加熱される。それから、外部真空ハウジングがステップ612において室温までクールダウン完了した後に、内部ガス封じ込め容器を形成する構成部品が極低温にまで冷却され、同時にガス電界イオン源のチップ34の加熱は依然として継続される。その後ステップ613において、内部ガス封じ込め容器を形成する構成部品が極低温にまで冷却完了された後に、イオンエミッタの加熱が中止され、ガス電界イオン源のチップ34が極低温に保持される。他の温度対時間計画では、ガス電界イオン源のチップが材料の吸着を引き起こす可能性がある。なぜなら、周囲の表面からこれら材料が脱離するためである。
制御部59は、例えば対応するソフトウエアコードにより多様なヒータ73a, 73b, 73c, 58を制御し、エミッタチップの供給ラインを介する加熱電流を、上述の加熱及び冷却計画を確実に実行するよう構成可能である。
像振動として表れる可能性のあるビームランディングエラーは、例えば、イオンビームが誤った場所に着陸する原因となる磁界及び電界を変更する時間を除去することで低減可能である。通常、イオン顕微鏡及び電子顕微鏡は、標準の60 Hz及び50 Hz電力系により動力供給される。これら「交流」電源は、制御電子装置上で小さなリプル電圧を偶然に生成することがあり、これらのリプル電圧により不所望なビームランディングエラーが引き起こされる可能性がある。例えばビームハンドル電極上で60リプルの5 mVが発生すると、ビームが時変的に望ましい目標から逸れる原因となる。代替的に、「交流」電源は磁界を生成可能であり、この磁界は直接荷電粒子ビームに対して力を行使可能であり、再び時変ランディングエラーを引き起こす。例えば、50 Hz磁界で振幅5ミリガウスである場合、1nmを超える時変のランディングエラーを引き起こす可能性がある。一般にこれら「交流」電源は、顕微鏡に含まれサポートする個々の構成部品に電力を供給する。構成部品の例としては、ターボポンプ、イオンポンプ、真空計、ヒータ、機械的ステージモータ、高電圧供給系、フィラメントヒータ、ピコ電流計、チャンバ照明、検出器、電子フラッドガン、カメラ、直流低電圧供給系等を含む。これらのシステムのほとんどは、交流電源入力なくしては使用不可能である。言い換えれば、等しく機能する直流電源を電源とする同等物は一般的には市販されていない。しかし、交流電源を電源とする部品ソース(50 Hz又は60 Hz)を3メートル以内に有さないガス電界イオン顕微鏡の設計が望ましいとされてきた。これは以下の2つの方法で達成可能である。第一に、顕微鏡の3メートル以内に位置する全ての構成部品は、直流電源又は空気圧式アクチュエータによってのみ作動可能であるよう設計、特定又は変更可能である。第二に、交流電源を必要とし、(例えば直流電源等の)代替品の無い少数の構成部品は、顕微鏡から少なくとも2メートル、より好適には3メートルを超えた距離をおいて配置可能である。例えばガス電界イオン顕微鏡は、直流から直流変圧器により局所的に生成された高電圧を有することが可能である。加熱素子の中には直流電源により作動される素子もある。また、顕微鏡の作動時に交流ヒータを停止可能であれば、使用可能な交流ヒータもある。顧客は、操作卓(専用の交流電源コンピュータ及びモニタを備えた)を、自らの志向に従って顕微鏡の近く又は遠くに位置させることを選択可能である。
試料チャンバ10の内部の試料ステージ20は、5軸式モータ制御ステージであり、高い繰返精度(2ミクロン未満)、低ドリフト(毎分10 nm未満)及び低振動(< 1 nm)を備える。ステージの軸は(チャンバ取付面19から試料への順で)、傾斜軸、X軸、Y軸、回転軸及びZ軸である。傾斜軸は-5度の限界から0度(ガス電界イオン源ビームが試料を直交方向に打つ)、+54度(ガリウムビームが試料を直交方向に打つ)、限界の+56度まで試料を傾斜可能である。全ての上軸の全ての重量を備えて、この広範な傾斜範囲を達成するためには、最小限の正味の力を備えた相当のトルクが要求される。傾斜軸は従来の真空領域の外側にある、密閉型ロータリーフィードスルーを備えた直流モータ又はステッパモータにより駆動される。全ての上軸はピエゾセラミックアクチュエータにより作動され、ピエゾセラミックアクチュエータは非常に高い剛性(振動低減のため)、及び動力供給されていない場合での生来の遮断性能を有する。
図5に示されるように、ガス電界イオン源はモータ駆動機構により傾斜可能である。機構は、動きが完了した際に駆動機構を接続解除し、振動を低減するよう構成される。説明として挙げると、ガス電界イオン源は小さい角度(典型的にはX又はY方向に1, 2又は3度)ほど傾斜可能であり、カラムに対してイオン源を傾斜する。一つには、エミッタの正確な形状が容易に制御できない場合、この傾斜が必要とされる。一つには、通常3つのイオンビームは約1度の分離角を備えるエミッタの頂点部から発せられるため、このような傾斜を要求可能である。発せられるイオンビームの1つはイオンカラムの軸へと下に向けることが可能であり、最も優れた性能を発揮する。ガス電界イオン源を傾斜させることで、選択されたイオンビームをこのように方向付けできる。上述のとおり、又図5にも示されるように、ガス電界イオン源のハウジングは2つの部分、すなわち上部分15及び下部分16を有する。ハウジングの上部分15は、対応するハウジングに固定された下部分16の凸型球状面と組合う凹型球状面により傾斜を強制される。球状面の中心はエミッタチップの頂点部の位置と一致し、従ってエミッタチップの頂点部と中心を共有する傾斜の動きをとるよう配置される。上部球状面及び下部球状面の接触面は十分な摩擦力を提供し、2つの部分は機械的に極めて硬質で、測定可能ないかなる相対振動からも免れている。
図5に示されたシステムにおいて、上部ハウジング15はモータ駆動の傾斜機構により下部ハウジング16に対して傾斜する。傾斜駆動機構は、下部ハウジング16に固定されたガントリ701により構成され、下部ハウジング16はハウジングの上部分15内のレセプタクルの内部に収まるペグを移動させる。ペグはモータ702, 703の2つの直交軸(X傾斜及びY傾斜用)により移動されるため、レセプタクルの縁部と接触し、上部ハウジング15が所望の方向に移動する。2つの球状面の相対傾斜は、空気軸受の作動によっても可能である。所望の傾斜が達成された後、空気軸受が無力化され、ペグは後退方向に移動し、もはやレセプタクルの縁部と接触しなくなる。このようにして、動きがもはや所望されていない場合、モータ駆動軸(及び軸が導入する可能性のある振動)が完全に接続解除される。従って、モータ702, 703は所望の場合に傾斜効果を提供するが、サービスが完了するとモータ702, 703が接続解除される。また、上部ハウジング15(傾斜部分)に傾斜計705が装備され、傾斜計705が重力の方向に対する上部ハウジング15の傾斜を厳密に測定することも特筆に価する。傾斜計により、2方向(X方向及びY方向)への傾斜角が、オペレータとガン傾斜モータを制御する制御部へと提供される。これにより上部ハウジングが傾斜可能となり、それに従ってイオンガンが1つの位置から別の位置へと移動し、再び戻るという傾斜運動が可能になる。傾斜計705は又、内部(垂直から丁度4度の総傾斜に限定可能)を破損する可能性のある過剰な傾斜角(例えばX方向に+3度及びY方向に+3度)を防止する。また、固定カメラの視線及び固定電気接点に基づく定期的な源メンテナンス実施の必要がある場合には、上部ハウジング15は標準の傾斜角に戻ることが可能である。
上部ハウジングの傾斜調整プロセスを、図7を参照して説明する。第1ステップ801において、上部ハウジング15の重力の方向に対して実際に調整された傾斜位置が、傾斜計705により提供された実計測値を読み出すことで記憶される。次のステップ802において制御部59は、上部ハウジング15と下部ハウジング16との間の2つの球状面の間の空気軸受への空気供給をスイッチオンする。その後、傾斜駆動装置702; 703が作動されるステップ803が続き、同時に下部ハウジング16に対する上部ハウジング15の新たに調整された傾斜位置に関して、傾斜計705が所望の読み出し出力を提供するまで、傾斜計705による実計測値の読み出しが継続される。新たな位置に達すると、ステップ804において上部ハウジング15と下部ハウジング16との間の空気軸受への空気供給が停止される。ステップ805において駆動装置702, 703は、ペグがレセプタクルと接続解除するまで、新たな傾斜位置に達するために必要とされる移動と比較して、反対の方向へと移動するよう制御される。その後ガス電界イオンビームシステムは、ステップ806で上部ハウジング15により作動可能であり、上部ハウジング15は下部ハウジングに対して新たな傾斜位置にある。
古い傾斜位置が記憶されているため、所望の場合には、新たに上述のプロセスを、傾斜計705が再び古い傾斜位置に達したと示すアウトプット信号を提供するまで、しかし駆動装置702, 703を反対方向に移動させ、古い傾斜位置へと再調整可能である。このプロセスは、ガス電界イオン源のチップを再建する際に使用可能である。通常チップの再建は、試料の像を記録するため又は試料を処理するためにシステムを作動する場合とは異なるエミッタチップの向きで実行される。
説明として挙げると、ガス電界イオンビームシステムは、衝突するイオンビームのために試料を離れる粒子を検出することで試料の像を生成可能であり、サブナノメータの精度でこれらの試料を操作及び変更可能である。従って、集束イオンビームの意図する到着位置においてエラーが無いよう、イオン顕微鏡を作動可能であることが重要である。こうしたランディングエラーは極めて小さく(例えば100 nm未満、10 nm未満又は1 nmさえ下回る)することが可能であるが、小さくとも依然として機器の作動に対して悪影響を及ぼす。ガス電界イオンビームシステムを安定作動させるため、エミッタチップ近傍でのガスイオン化のための希ガスを適切な分量で確保すべきである。適切な希ガス圧力を確保するために、ガス供給系はリーク弁63, 64(図4に示され、詳細には図8に示される)を有する。リーク弁63, 64はオペレータに手動調整されるか、又はモータ駆動の制御系により調整される。どちらにしても、調整は事前に確立されたテーブル値に基づいて確立される。テーブル値は、機械的に作動ガス圧を目標値に調整すること(例えばノブ902又はモータ位置を手動で回転させる)に関連する。図9に示されるように、ガス圧は外部ガス封じ込め容器81内に位置する計器82又はガスマニホールド(図4に示されたガス送出系)内に位置する計器69により評価可能である。そしてどちらにしても、顕微鏡が最高の精度での作動に到達するまで調整を延期可能である。言い換えれば、正常の制御ループは、精密作業の間には中断可能である。例えば、もしガス圧が容認可能範囲を超えたとすると、制御部59はコンピュータインターフェイスを経てオペレータに表示906(例えば「ガス圧が目標から外れています」とのメッセージ)、又は緑から赤に変化可能なライトインジケータを提供可能である。そして、オペレータは現在の顕微鏡作動が修正アクションを許容するか、又はこのアクションを延期すべきかを決定できる。参照用に挙げれば、顕微鏡作動における正常のガス圧は、圧力計82により2.0 x10-6Torrから2.1 x 10-6Torrまでの範囲で読み出される。もし圧力がこの範囲の外側になった場合、進行中のプロセスの同一性又は一貫性に影響が及ぶ可能性がある。しかし修正アクションが、進行中の作業の複製忠実度に対してより深刻な影響を及ぼす可能性がある。従って図9に示されるように、制御部59はステップ908において、針弁63又は64を介するガス流の修正がその時点で望ましいと確認するユーザ相互作用907を受信完了した後でのみ、モータ904を作動するよう構成される。
適切な位置のリーク弁は、市販される手動精密リーク弁とすることが可能であり、ガス電界イオンビームシステム内に組み込まれる。図3に関連して上述したように、1つのリーク弁63をヘリウムガス送出系用に装備可能であり、1つのリーク弁64をネオンガス送出系用に装備可能である。リーク弁63, 64は更なる修正を施さずに手動作動され、校正表を備える。校正表は、一般的に所望されるガス圧とこれらの圧力を達成するために対応するノブの回転を示す。モータ駆動リーク弁の代替実施形態が図8に示される。このモータ駆動リーク弁は市販の手動リーク弁63, 64に基づく。リーク弁のハウジング部903には、スピンドル905を備えた駆動モータ904が接続される。スピンドル905は、手動リーク弁の手動調整ノブ902上で作動する。
代替的に、手動リーク弁のノブ機構を全く無しで済ますことが可能であり、ピエゾセラミックアクチュエータで代替可能である。または更に代替的に、手動リーク弁のノブ機構を無しで済ますことが可能であり、カム式駆動機構で代替可能である。
図10はガス電界イオンビームシステムの実施形態の電気的構成を示す。上述のように荷電粒子ビームシステムは、イオンエミッタを備えた荷電粒子源を有する。イオンエミッタは、導電性チップ34、引出電極38、及び減速又は加速電極110を有する。ビーム伝播の方向へ下方にビーム偏向系112が続く。ビーム偏向系により、イオンビームは自身の伝播方向に垂直な方向に偏向可能であり、試料ステージ20上に位置する試料の表面全域のイオンビームを走査する。更に、荷電粒子ビームシステムは対物レンズを有する。対物レンズは数個の電極107,108,109を有し、イオンビームをステージ20上に位置する試料の表面上に集束する。
対物レンズの電極107,108,109の対称性により規定される光軸125に対して試料を位置するため、試料ステージ20は数個の軸に沿って及び/又は数個の軸の回りに移動可能である。典型的には、試料ステージ20は移動用に4つ又は5つの自由軸を有する。これら5つの軸は、通常は光軸125に垂直な線形移動、光軸125に沿う線形移動、光軸125に垂直な軸の回りの傾斜又は回転、及び光軸125の回りの回転である。移動を駆動するため、対応する個数のモータ駆動装置がステージ20に配置され、そのうちの駆動装置105, 106が図10に示される。
電動モータ105, 106に加えて、システムはリーク弁用のアクチュエータ115、フラッパ型弁用のアクチュエータ116、真空ポンプ17、イオンゲッタポンプ56、ヒータ73a, 73b, 73c等である複数の追加の電動構成部品を有する。荷電粒子ビームシステムの作動の間に作動する必要があるかもしれないこれら駆動装置の全てに電源供給するため、これら電動装置は交流直流変換器114の出力電力により動力供給される。交流直流変換器114自体は、通常の50Hz又は60Hz電源113により動力供給される。この交流直流変換器114は、最も近接する荷電粒子ビームシステムのイオン光学構成部品から数メートル、例えば少なくとも2メートル離れて位置するよう構成される。従って、荷電粒子ビームシステム内又は荷電粒子ビームシステムに直接取り付けられ、荷電粒子ビームシステムの従来の作動中に作動可能である電動構成部品の全ては、交流直流変換器114の直流出力に動力供給されるよう構成される。更に、エミッタ34、引出電極38、加速及び減速電極110、レンズ電極107,108及び偏向系112に印加される高電圧を生成するため、直流直流電圧変換器118が装備される。直流直流電圧変換器118は、交流直流変換器114の入力直流電圧出力から、数個の異なる高電圧を生成するよう構成される。直流直流変換器118の多様な出力信号は、対応する供給ケーブル又は電力供給ライン119 - 124により、荷電粒子ビームシステムの対応する電極へと導かれる。
上述の電気構想は、荷電粒子ビームシステムに近接し、交流電圧で駆動され、荷電粒子ビームシステムの作動中に作動される必要がある電気装置を避けるものである。この電気構想により、交流電源供給の50 Hz又は60 Hzの周波数に伴う障害を大幅に低減可能である。
図12は、放射シールド803を備えるガス電界イオン源の断面図である。ガス電界イオン源の設計は、図3に関連して上述されたガス電界イオン源と非常に類似する。またこの場合、源はエミッタチップ34を把持する内部円柱状絶縁体33と、内部絶縁体33を包囲し、孔39を備えた引出電極38を把持する外部円柱状絶縁体37を有する。外部真空壁801と外部円柱状電極37との間のスペースは、外部ガス格納容器81を形成し、外部円柱状電極に包囲されたスペースは、内部ガス封じ込め容器41を形成する。外部真空壁801のような室温の構成部品からの放射熱伝達を最小化するため、外部円柱状電極37及び引出電極38は放射シールド803により包囲される。放射シールド803は通常、カバー810及び円柱の基底側に基部812を備えた円柱管により形成可能である。放射シールドは研磨された金でめっきされ、放射線吸収を最小化する。放射シールドはベースプレート801に接続されるため、放射シールドも又、極低温にまで冷却される。代替的に、放射シールドもデュワのような冷却システムへの専用の冷却接続を有することが可能である。しかし缶状の放射シールドは、放射シールドで包囲された領域と放射シールドの外側の領域との間でガス移送が必要である場合には有用性に劣る。
図13a及び13bは熱シールドの断面図を示す。熱シールドは、放射シールドの内部と外部の領域間でガス交換を達成可能である。図13aにおいて、放射シールドは同心円シリンダ805, 806を有し、両者は高い放射反射性外表面を備えた金属製とする。両シリンダは複数の孔807, 808を有する。内部シリンダ806内の孔807は、外部シリンダ805内の孔808に対して回転方向にオフセットして配置される。孔の幅、両シリンダ805, 806の間隔、及び両シリンダにおける孔の間のオフセット角度は、外部シリンダ805の外側から内部シリンダ806の内側を直視できないよう選択される。従って、外部シリンダ805の孔を通るいかなる放射も、内部シリンダ806の残存材料部分上に衝突する。
図13bの実施形態は複数のスラブ809を有する。スラブ809は円柱状に配置され、各スラブは、シリンダ軸811から半径方向に0度及び90度とは異なる角度で傾斜する。またこの実施形態において、スラブ809に包囲された円柱状領域の外側から内側への放射の直視は、ほぼないか、又は最小限である。
図13a及び図13bの両実施形態において、孔807, 808又はスラブ809の間を介して、熱シールドの内側から熱シールドの外側へ、又は反対方向へガスが流動可能であり、同時に熱シールドにより包囲された領域の外側から領域内への放射熱伝達は、熱シールドにより強く低減される。
上述の開示は、以下のように要約可能である。
ガス電界イオン源を作動するプロセスのいくつかの実施形態において、ガス電界イオン源は、イオン源にいかなる電圧が印加される前に最初に加熱可能であり、不所望ないかなる原子及び分子を脱離する。作動時のガス電界イオン源は極低温(例えば90 Kelvin未満)に冷却されるため、これにより大量の原子及び分子を除去する。加熱は例えば数秒といった短時間とすることが可能であるが、例えば500ケルビン又はそれを上回る数百ケルビンの温度とされたい。
ガス電界イオン源を作動するプロセスのいくつかの実施形態において、ガス電界イオン源は、最適動作電圧で源が作動することが要求されていない場合には、エミッタチップと引出電極との間に印加される最大許容電圧で作動可能である。この「スタンドバイ電圧」を典型的に、エミッタチップの電界蒸発を引き起こす電圧のすぐ下の電圧とすることが可能である。これにより、吸着原子の分極を最大限とし、従って吸着原子の移動性を最小化する役割を果たすことが可能である。その結果、吸着原子がエミッタチップの頂点部に向かって移動する機会を低減する。
いくつかの実施形態においては、ガス電界イオン源が不所望な原子による影響を最も受け易くなる可能性がある。そのため、ガス電界イオン源は極低温の冷却面により包囲可能であり、さもなければイオン源のガス電界のエミッタに到達可能である、いかなる吸着原子の熱的脱離の可能性を最小化する。
ガス電界イオン源を作動するプロセスのいくつかの実施形態において、極低温の冷却面は定期的に加熱又は光刺激可能であり、吸着原子又は分子を脱離する。加熱プロセスの間、ガス電界イオン源は、エミッタチップと引出電極との間の電圧を強く低減することで閉鎖されるべきである。
ガス電界イオン源を作動するプロセスのいくつかの実施形態において、準備ステップとして、真空容器及びガス送出系は高温まで加熱可能であり、脱ガスを促進し、表面及び容積汚染を動態化する。これは、他の揮発ガスと組み合わせた部分真空下で実施可能である。
ガス電界イオン源を作動するプロセスのいくつかの実施形態において、準備ステップとして、真空容器及びガス送出系は電界研磨可能であり、表面積を最小化する。
ガス電界イオン源のいくつかの実施形態において、ガン領域は、例えば市販のSAESゲッタ剤等の化学的ゲッタ剤を装備可能であり、不所望なガス種に対して高い排気性能を提供する。この化学的ゲッタ剤は、所望のガス種が希ガスである場合に非常に効果的である。なぜなら、希ガスはポンプにより排気されないためである。化学的ゲッタ剤は又、ポンプにより水素を排気するために非常に効果的である。なぜならこのガス種は、極低温法によってはポンプにより効果的に排気されないためである。ゲッタ剤が化学的に活性である場合、ガス電界イオン源は通常加熱され、ガス電界イオン源は無力化可能である。
ガス電界イオン源のいくつかの実施形態において、ガス送出管は極低温トラップを通過可能であり、不純物の凝結を引き起こす。いくつかの実施形態において、ガス送出系のこうした部分は弁を有することが可能であり、パージを可能にする。
ガス電界イオン源のいくつかの実施形態において、ガス送出系は浄化器を有することが可能である。浄化器は加熱されるか又は加熱されない化学的ゲッタ剤を含み、不所望ないかなる原子又は分子を化学的にトラップする。
ガス電界イオン源のいくつかの実施形態において、ガス送出系はバイパスを有し、不所望な原子及び分子を含む内容物は最終ガン領域以外の容器内にパージ可能である。
ガス電界イオン源のいくつかの実施形態において、ガス電界イオン源の領域はイオンポンプを装備可能であり、不所望なガス原子をポンプにより排気する。またイオンポンプは、所望されるガスが搬送される場合には無力化可能であり、ガス供給のスタンドバイの間には有効化可能である。
ガス電界イオン源のいくつかの実施形態において、真空容器はSAESゲッタ剤に類似する非蒸発性ゲッタ剤のコンフォーマルコーティングを装備可能である。
ガス電界イオン源のいくつかの実施形態において、真空容器は、チタンサブリメーションポンプのような水素ポンプゲッタを装備可能である。
ガス電界イオン源を作動するプロセスのいくつかの実施形態において、ガス電界イオン源は、コンディションを促進させるか又は表面を準備させるための間に作動可能である。コンディション調整下で、イオン源はエネルギッシュで高次に分極された中性原子のボンバードを介し、吸着ガス原子をパージ可能である。またコンディション調整の間、ガス電界イオン源の作動中にイオンビームがその上に衝突可能である引出電極、サプレッサ電極、レンズ電極及び他の表面は、吸着原子又は化学的に付着した原子を除去し、洗浄可能である。コンディショニングステップは、プロセスの加速が所望される場合、より重いガス種により実行可能である。
上述の記載においては、異なる発明の態様の特徴を組み合わせて開示している。本発明の範囲はこうした特徴の組合せに限定されることを意図しておらず、もっぱら以下の請求項により規定されると理解されたい。