JP4817172B2 - 被処理液のウィルス失活方法 - Google Patents

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Description

本発明は半導体製造分野、電力分野、医薬品製造分野、食品製造分野、その他の分野等で用いられる有価物を含有する被処理液中のウィルスを失活させる方法に関する。
水や溶液中に存在する不純物には塩素、有機物、濁度、ガス等多くの種類があるが、完全に除去しないと時間とともに増加する可能性がある点で、微生物やウィルスは特異的である。大腸菌に代表される微生物の大きさは一般的に0.2μm以上であるが、ウィルスは大きさが一般的に0.01μm以上であり、微生物と比較すると小さく、また生物と物質の中間的存在と言われている。ウィルスは人体や生物に害を及ぼす点では微生物と同様であり、溶液や水等から除去あるいは失活させる必要がある。
被処理液のウィルスを除去、失活させる方法としては、これまでに加熱による失活方法、薬品による失活方法、濾過や吸着により処理する方法、紫外線等の電磁放射線照射による失活方法等が知られている。
被処理液中のウィルスを加熱により失活させる方法は、例えば被処理液を約60〜80℃程度に加熱し1〜数時間維持する方法である。この加熱による方法はエネルギー消費が大きく、時間を要するため連続処理には不向きである。
被処理液中のウィルスを薬品により失活させる方法は、被処理液中に次亜塩素酸、オゾン等の酸化剤を添加することにより行う方法である。この方法では、添加剤がウィルス以外の物質と反応することにより、被処理液中にトリハロメタン等の有害物質が生成したり、また未知の物質が副生物として発生する可能性が高い。また、薬品を用いる点で装置が複雑になるという問題がある。
被処理液中のウィルスを濾過や吸着により除去する方法は、限外濾過膜や逆浸透膜により被処理液中のウィルスを分離除去する方法あるいはイオン交換体や合成吸着剤によりウィルスを吸着除去する方法がある。濾過により処理する方法はエネルギー消費が小さく有害物質の発生の可能性は無く大量処理に適しているが、ウィルス以外の物質、例えば被処理液が蛋白質、脂質および糖質などの生体分子由来の有価物を含有する場合には、当該有価物まで除去してしまうという問題がある。また、膜面の目詰まりによる処理量の低下が起こり、その回復に時間がかかり、場合によっては薬品による再生も必要となる。一方、吸着により処理する方法は、初期にはウィルスは吸着除去されるものの、通液時間の経過と共に吸着能が低下し、定期的に薬品による再生や交換作業を行う必要があるという問題がある。
一方、特開2002−126744号公報には、電解質を含む水溶液を電気再生式脱イオン純水器に通液するとともに、通液した電解質を含む水溶液に通電する電気再生式脱イオン純水器の殺菌法が開示されている。また、この電気再生式脱イオン純水器の殺菌法においては、水溶液中のカチオンについては1価のカチオンの方が2価のカチオンの場合よりも高い殺菌力を有し、アニオンについては、HPO 2−、SO 2−、HSO 2−、SO 2−の場合が、Cl、NO の場合に比べて高い殺菌力を有することが記載されている。
特開2002−126744号公報(請求項1)
しかしながら、特開2002−126744号公報の電気再生式脱イオン純水器の殺菌法は、装置の殺菌方法であって被処理液の殺菌方法ではなく、殺菌された処理水を連続して得られるものではない。また、この殺菌方法は生菌に対するものであり、ウィルスを失活させる方法ではない。そこで、特に医薬品製造分野、食品製造分野においては、有価物を含有する被処理液に対して、有価物を変質させることなく残存せしめ、ウィルスのみを連続的且つ効果的に失活させる簡易な方法が望まれていた。
すなわち、本発明の目的は、有価物を含有する被処理液に対して、有価物を変質させることなく残存せしめ、ウィルスのみを連続的に失活させる簡易な方法を提供することにある。
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、一対の陽極と陰極の間にカチオン交換膜とアニオン交換膜によって区切られ且つその両膜間にイオン交換体が充填された処理室を有する装置において、電圧を印加させながら、有価物を含有する被処理液を該処理室に流入させれば、簡易な方法で被処理液中のウィルスを連続的且つ効果的に失活させ有価物は変質させないこと等を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明(1)は、一対の陽極と陰極の間にカチオン交換膜とアニオン交換膜によって区切られ且つその両膜間にイオン交換体が充填された処理室を有する装置において、電圧を印加させながら、有価物を含有する被処理液を該処理室に流入することを特徴とする被処理液のウィルス失活方法を提供するものである。
また、本発明(2)は、前記有価物が、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、糖質、脂肪酸、中性脂肪若しくは脂質又はこれらの2種以上の混合物である前記被処理液のウィルス失活方法を提供するものである。
また、本発明(3)は、前記被処理液中の塩類のカチオン中、一価カチオンの濃度を二価カチオンの濃度より質量百分率として高くするか、あるいは該被処理液中の塩類のアニオン中、塩化物イオンの濃度を質量百分率として最も高くすることを特徴とする前記被処理液のウィルス失活方法を提供するものである。
また、本発明(4)は、前記被処理液中のナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの中でナトリウムの濃度が質量百分率として最も高い前記被処理液のウィルス失活方法を提供するものである。
また、本発明(7)は、被処理液の処理室出口水の導電率が10μS/cm以下である前記被処理液のウィルス失活方法を提供するものである。
また、本発明(8)は、前記イオン交換体がイオン交換樹脂であり且つアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混床である前記被処理液のウィルス失活方法を提供するものである。
本発明によれば、有価物を含有する被処理液に対して、有価物を変質させることなく残存せしめ、ウィルスのみを連続的且つ効果的に失活させることができる。特に、一価のカチオンや塩化物イオンは、電位差によるイオン交換体間での移動速度がそれぞれ二価のカチオンや他のアニオンより速いため、イオン交換体表面において急激なpHの変化が起こりやすくなり、ウィルス失活に利用される割合が高くなる。これにより、ウィルスの表層構造が破壊させたり、あるいはウィルスの蛋白質を変質させ易くなるため、被処理液中のウィルスを連続的且つ効果的に失活させることができる。また、被処理液中に含まれる蛋白質等の有価物は、通常は非荷電体であり、また荷電体であっても単位分子量当りの電荷は一般のイオンに比べて非常に小さいため、ほとんどイオン交換体に吸着されず、実質的に変質することなく装置から流出する。また、処理室内の圧力Pと通液室内の圧力Pの差ΔP(P−P)が0.01MPa以上であれば、通液室から処理室へイオン交換膜のピンホールを通過してくるウィルスの混入を防止することができる。更に、被処理液の処理室出口水の導電率が10μS/cm以下であれば、処理室出口液中のウィルス数をほぼ1PFU/ml以下とすることができる。
本発明のウィルス失活方法において用いる有価物を含有する被処理液としては、特に制限されず、例えば、医薬品製造プロセス、食品製造プロセス等の各種製造プロセスにおける有価物を含有する溶液、該各種製造プロセスに供給する供給水、人や家畜が飲用する水、飼料に用いる水、風呂やシャワーで利用する水などが挙げられる。
被処理液に含まれる有価物としては、例えばウィルス混入が危惧される生体分子由来の有価物やバイオテクノロジーを応用して生産された有価物が挙げられ、具体的にはアミノ酸、ペプチド、蛋白質(酵素、糖蛋白質やリポ蛋白質等の複合蛋白質を含む)、オリゴ糖類や多糖類などの糖質、脂肪酸、中性脂肪、リン脂質、糖脂質およびステロイドなどの脂質である。これらの有価物は2種以上が混合したものであってもよい。従来の限外濾過膜や逆浸透膜により被処理液中のウィルスを分離除去する方法においては、被処理液中にこれら有価物を含有する場合は該有価物も分離除去されるため、適用できないものであった。一方、本発明のウィルス失活方法では、有価物は分離除去されることはないため、これら有価物が限外濾過膜や逆浸透膜を透過しない大きさのものである場合、特に本発明の方法が有用なものとなる。
被処理液中のウィルスの量としては、特に制限されず、例えば10〜1010PFU/mlである。PFU(plaque formation unit)は形成プラーク数を示す。被処理液中のウィルスを定量する方法としては、公知の方法を適用することができ、例えば被処理液を滅菌用生理食塩水で適当な段階まで希釈し、各希釈段階の希釈液を寒天培地に滴下してウイルスを培養し、形成プラーク数を算出する方法が挙げられる。
本発明のウィルス失活方法において用いる装置としては、例えば図1に示すように、一対の陽極11と陰極12の間にカチオン交換膜13とアニオン交換膜14によって区切られ且つその両膜間にカチオン交換樹脂16aとアニオン交換樹脂16bの混合樹脂16が充填された処理室15と、アニオン交換膜14と陽極11間およびカチオン交換膜13と陰極12間に通液室17をそれぞれ有する装置10が挙げられる。電圧を印加した状態において、被処理液18が装置10の処理室15に流入し、処理室15から流出した液が処理液19となる。また、通液室内に供給される液としては、特に制限されず、被処理液の一部を使用するものであっても、別途の供給液であってもよい。
また、装置10は、複数の処理室を有し、処理室間に通液室を有するものであってもよい。具体的には、陽極と陰極の間にカチオン交換膜とアニオン交換膜を交互に配し、両膜の間に処理室と通液室を交互に形成した装置、及び一側のカチオン交換膜、他側のアニオン交換膜及び当該カチオン交換膜と当該アニオン交換膜の間に位置する中間イオン交換膜で区画される2つの小処理室にイオン交換体を充填して処理室を構成し、前記カチオン交換膜、アニオン交換膜を介して処理室の両側に通液室を設け、これらの処理室及び通液室を陽極と陰極の間に配置して形成される装置が挙げられる。処理室が、中間イオン交換膜で区画される2つの小処理室を有する装置の場合、被処理液は、一方の小処理室(第1小処理室)に流入し、第1小処理室の流出液が他方の小処理室(第2小処理室)に流入し、第2小処理室の流出液が処理液となる。
カチオン交換膜とアニオン交換膜間に充填されるイオン交換体としては、特に制限されないが、イオン交換体がイオン交換樹脂であり且つアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混床であることが、(処理液が処理室内を通過する間、イオン交換樹脂表面のpHによる影響を受ける回数が多くなり、ウィルス失活効果が向上する点で好ましい。アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混床は、処理室内に少なくとも一部に形成されていればよい。また、処理室が中間イオン交換膜で区画される2つの小処理室を有する装置の場合、1つの小処理室の一部又は全部がアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混床であることが好ましい。
本発明の被処理液のウィルス失活方法は、前記装置において、電圧を印加させながら、被処理液を該処理室に流入し処理する。ウィルス失活の作用については、必ずしも明確ではないが、次のように推察される。すなわち、ウィルスは極めて小さい物質であるため、被処理液中、微粒子の如く存在し、静電的にイオン交換体に弱く吸着されつつ流下する。そこで電位差が与えられると静電効果が高まり、イオン交換体に吸着する率が増加すると同時に、イオン交換体が電気的に再生される。その結果、イオン交換体が固体の酸、アルカリとして作用し、吸着したウィルスの表層構造が破壊されるか、あるいはウィルスの蛋白質を変質させる。
本発明において、被処理液中の塩類のカチオン中、一価カチオンの濃度が二価カチオンの濃度より質量百分率として高く、特に被処理液中のナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの中でナトリウムイオンの濃度が質量百分率として最も高いことが好ましい。被処理液中のナトリウムイオンの濃度としては、特に制限されないが、通常0.001〜1000mg/lである。
また、本発明は、被処理液中の塩類のアニオン中、塩化物イオンの濃度が質量百分率として最も高いことが、ウィルス失活効果を高めることができる点で好ましい。塩化物イオン以外のアニオンとしては、HPO 2−、SO 2−、HSO 2−、SO 2−、NO が挙げられる。被処理液中の塩化物イオンの濃度としては、特に制限されないが、通常0.001〜1000mg/lである。
また、本発明は、被処理液中の塩類のカチオン中、一価カチオンの濃度を二価カチオンの濃度より質量百分率として高くし、且つ被処理液中の塩類のアニオン中、塩化物イオンの濃度を質量百分率として最も高くすることが、ウィルス失活効果を更に高めることができる点で好ましい。被処理液中の塩類のカチオン中、一価カチオンの濃度を二価カチオンの濃度より高く調整する方法、あるいは塩類のアニオン中、塩化物イオンの濃度を質量百分率として最も高く調整する方法としては、例えば被処理液に塩化ナトリウムを添加する方法、被処理液をイオン交換により軟化処理する方法、及び被処理液を逆浸透膜で処理する方法などが挙げられる。
本発明においては、一価カチオンや塩化物イオンは、電位差によるイオン交換体間での移動速度がそれぞれ二価カチオンや他のアニオンより速いため、イオン交換体表面においてウィルス失活に利用される割合が高くなる。これにより、ウィルスの表層構造が破壊され易くなり、あるいはウィルスの蛋白質を変質させ易くなる。
本発明のウィルス失活方法で用いる前記装置は、処理室内の圧力Pと通液室内の圧力Pの差ΔP(P−P)が0.01MPa以上、特に0.02MPa以上であることが好ましい。処理室内に供給される被処理液及び通液室内に供給される液体の供給圧力は、ポンプの駆動圧の調整、あるいは圧力調整弁を用いる調整など公知の方法で調整される。処理室内の圧力Pと通液室内の圧力Pの差ΔPが0.01MPa以上、好ましくは0.02MPa以上であれば、通液室から処理室へイオン交換膜のピンホールを通過してくるウィルスの混入を防止することができる。
また、被処理液の処理室出口液の導電率は10μS/cm以下であることが好ましい。被処理液の処理室出口液の導電率と処理室出口液中に存在するウィルス数とはほぼ比例関係にあるため、当該導電率をウィルス失活の目安とすることができる。すなわち、処理室出口液の導電率が10μS/cm以下であれば、処理室出口液中のウィルス数はほぼ1PFU/ml以下とすることができる。
本発明の被処理液のウィルス失活方法によれば、簡易な方法により被処理液中の有価物を変質させることなく残存せしめ、ウィルスのみを連続的且つ効果的に失活させることができる。また、本発明のウィルス失活方法により得られた処理液中では、ウィルスが失活し且つ有価物は変質することなく残存しているため、食品、医製薬、飼料などに直接あるいはその生産プロセスとして利用する酵素蛋白、医療用途の治療薬、又は診断薬としての用途がある。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
下記実験装置及び運転条件において、図1に準ずる構成の装置を使用し、処理室及び通液室にそれぞれ通液して、7日間の連続運転を行った。そして、処理液中に含まれるウィルス数と有価物である酵素の活性を測定した。運転開始後5日目と7日目の結果を表1に示した。なお、処理液導電率を測定した結果、0.5μS/cmであった。
・ 被処理液;純水に塩類としてNaCl、KCl、CaCl2及びMgCl2を添加し、また酵素蛋白デキストラーゼ(三共製)を6mg/L添加し、さらにウィルスとしてF+RNA phage Qβを108PFU/ml含有したもの(被処理液A)
・ 被処理液の水質;表2に示す
・ 装置の処理室;幅200mm、高さ300mm、厚み8mm、処理室数12室
・ イオン交換膜;カチオン交換膜(ネオセプタC66-10F)、アニオン交換膜(ネオセプタAHA);共にアストム社製
・ イオン交換樹脂;カチオン交換樹脂(IRA210B)とアニオン交換樹脂(IRA402BL)の混床(体積比1:1);共にロームアンドハース社製
・ 被処理液の通液速度;100L/時
・ 処理室内の圧力PDと通液室内の圧力PCの差ΔP;0.02MPa
・ 電流密度;0.2A/dm2
(ウィルス検定方法)
試料液又は採取液を滅菌用生理食塩水で適当な段階まで希釈し、各希釈段階の希釈液を2層寒天プラーク形成法により、ウィルスの形成プラーク数を測定した。
(活性測定方法)
処理液に含まれる酵素活性の測定はデキストランを糖化させ、発生したブドウ糖量を測定する方法で行い、添加酵素活性100に対する相対活性値で示した。
比較例1
無通電で5日間の運転を行った以外は、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、運転当初から5日間は無通電運転、5日目から2日間は通電運転とした。運転開始後無通電の5日目とその後2日間通電した7日目の結果を表1に示した。
Figure 0004817172
表1の結果から明らかなように、通電した実施例1では、明らかに有価物である酵素の活性が維持されたままの状態でウィルスの数は減少していた。一方、比較例1では、5日目、7日目ともに有価物である酵素の活性が維持されていたものの、無通電状態であった5日目はウィルスの数はほとんど減少していなかった。その後2日間通電した7日目では、ウィルス失活効果が認められることから、通電によるウィルス失活効果が大きいことが判る。
被処理液Aの代わりに、被処理液Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。被処理液Bは含有するイオンの組成のみが被処理液Aと異なる。被処理液Bの組成は表2に示した。その結果を表3に示した。なお、表3には実施例1の結果も併記した。
被処理液Aの代わりに、被処理液Cを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。被処理液Cは含有するイオンの組成のみが被処理液Aと異なる。被処理液Cの組成は表2に示した。その結果を表3に示した。
Figure 0004817172
Figure 0004817172
表3の結果から明らかなように、被処理液の塩類のカチオン中、二価カチオンの濃度が高い実施例2及び実施例3ではウィルス失活効果が小さかった。一方、被処理液の塩類のカチオン中、一価カチオンであるナトリウムの濃度が高い実施例1では、明らかに有価物である酵素の活性が維持されたままの状態でウィルスの数は減少していた。その理由は必ずしも明らかではないが、一価カチオンと二価カチオンでは、一価カチオンの方が電位によるイオン交換樹脂間での移動速度が速く、イオン交換樹脂表面において急激なpHの変化が起こりやすくなり、ウィルス失活に利用される割合が高くなると推定される。一価カチオンの中でもとりわけナトリウムイオンはカリウムイオン等と比べて分子量が小さく、前記移動速度はより早いため、ウィルス失活効果はより一層高くなると推定される。
被処理液Aの代わりに、被処理液Dを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。被処理液Dの溶液中のイオンの組成は表4に示した。その結果を表5に示した。
・ 被処理液D;純水に塩類としてNaCl、NaNO3、Na2SO4及びNa2HPO4を添加し、また酵素蛋白デキストラーゼ(三共製)を6mg/L添加し、さらにウィルスとしてF+RNA phage Qβを108PFU/ml含有したもの。
被処理液Dの代わりに、被処理液Eを用いた以外は、実施例4と同様の方法で行った。被処理液Eは含有するイオンの組成のみが被処理液Dと異なる。被処理液Eの組成は表4に示した。その結果を表5に示した。
被処理液Dの代わりに、被処理液Fを用いた以外は、実施例4と同様の方法で行った。被処理液Fは含有するイオンの組成のみが被処理液Dと異なる。被処理液Fの組成は表4に示した。その結果を表5に示した。
被処理液Dの代わりに、被処理液Gを用いた以外は、実施例4と同様の方法で行った。被処理液Gは含有するイオンの組成のみが被処理液Dと異なる。被処理液Gの組成は表4に示した。その結果を表5に示した。
Figure 0004817172
Figure 0004817172
表5の結果から明らかなように、実施例5〜7はウィルス失活の効果が小さかったのに対し、被処理液の塩類のアニオン中、塩化物イオンの濃度が最も高い実施例4では、明らかに有価物である酵素の活性が維持されたままの状態でウィルスの数は減少していた。その理由は必ずしも明らかではないが、塩化物イオンとその他のアニオンでは、塩化物イオンの方が電位によるイオン交換樹脂間での移動速度が速く、イオン交換樹脂表面において急激なpHの変化が起こりやすくなり、ウィルス失活に利用される割合が高くなると推定される。また、塩化物イオンは他のアニオンと比べて分子量が小さく、前記移動速度はより早いため、ウィルス失活効果はより一層高くなる推定される。
カチオン交換樹脂(IR120B)とアニオン交換樹脂(IRA402BL)の混合床に代えて、上流側よりカチオン交換樹脂の単床、アニオン交換樹脂の単床及びカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合床(体積比1:1)の3層とした以外は実施例1と同様の方法で行った。これら3層は上流側から順に全体に占める体積比が1:1:2とし、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂のそれぞれの使用量は実施例1と同じとした。その結果を表6に示した。なお、表6には実施例1の結果も併記した。
図1に準ずる装置の構成に代えて、処理室が中間のイオン交換膜で2つの小処理室に区画された構造の装置としたこと、2つの小処理室において、被処理水が最初に流入する第1小処理室(陽極側)をアニオン交換樹脂の単床とし、第1小処理室の流出水が流入する第2小処理室(陰極側)をカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合床(体積比1:1)とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂のそれぞれの使用量は実施例1と同じとした。その結果を表6に示した。
カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合床に代えて、上流側よりアニオン交換樹脂の単床及びカチオン交換樹脂の単床の2層とした以外は実施例1と同様の方法で行った。これら2層は上流側から順に全体に占める体積比は1:1とし、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂のそれぞれの使用量は実施例1と同じとした。その結果を表6に示した。
カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合床に代えて、上流側よりアニオン交換樹脂の単床、カチオン交換樹脂の単床、アニオン交換樹脂の単床、カチオン交換樹脂の単床の4層とした以外は実施例1と同様の方法で行った。これら4層は上流側から順に全体に占める体積比は1:1:1:1とし、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂のそれぞれの使用量は実施例1と同じとした。その結果を表6に示した。
Figure 0004817172
表6の結果から明らかなように、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂のそれぞれの使用量が同じ樹脂を単床の層状構造にした場合と、混合床を有する構造にした場合とでは、混合床を有する構造にした場合の方がウィルスの数は著しく少ない。なお、表6の全ての場合において、有価物である酵素の活性は処理液中で保持されていた。
処理液の導電率と処理液に含まれるウィルス数との関係を求めるため、塩化ナトリウムの添加量を変えることによって被処理液の導電率及び電流密度を表7に示すように変化させて4日間の連続運転を行った(実施例12〜17)以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表7に示した。
Figure 0004817172
(実施例18)
運転期間を7日間に代えて運転期間を2日間とした以外は実施例1と同様の方法で行った。そして、処理水中に含まれるウィルスの数を測定すると共に、酵素活性を測定した。その結果を表8に示した。
比較例2
実施例18と同様の被処理液を、細孔径0.1μmの精密濾過膜(MF膜)(三菱レイヨン社製)で処理し、その処理水中に含まれるウィルスの数を測定すると共に、酵素活性を測定した。その結果を表8に示した。
比較例3
実施例18と同様の被処理液を、分画分子量13,000の限外濾過膜(UF膜)(旭化成社製)で処理し、その処理水液に含まれるウィルスの数を測定すると共に、酵素活性を測定した。その結果を表8に示した。
比較例13
実施例18と同様の被処理液を、逆浸透膜ES10(RO膜)(日東電工社製)で処理し、その処理液中に含まれるウィルスの数を測定すると共に、酵素活性を測定した。その結果を表8に示した。
Figure 0004817172
表8から明らかなように、実施例18においては有価物である酵素を含有する被処理液を処理しても、酵素を変質させることなく、ウィルスを失活させることができた。一方、比較例2の精密濾過膜(MF膜)では酵素及ウィルスを共に透過させてしまい、比較例3の限外濾過膜(UF膜)及び比較例4の逆浸透膜(RO膜)では酵素及びウィルスが共に除去された。
(実施例19)
処理室内の圧力PDと通液室内の圧力PCの差ΔP(PD-PC)の影響を見るために、PD及びPCを表9に示す値とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。なお、イオン交換膜は予め0.1μm程度のピンホール1個が形成されたものを使用した。また、処理室の出口水の導電率も測定した。その結果を表9に示した。なお、表9には実施例1の結果も併記した。圧力の単位は「MPa」である。
Figure 0004817172
表9の結果らか明らかなように、処理室内の圧力PDと通液室内の圧力PCの差ΔP(PD-PC)が同じか、マイナスとなる状態では、ウィルス失活効果が小さかった(実施例20〜22)。ΔPが0.02MPa以上の実施例1と19では顕著なウィルス失活効果が認められたことから、大きさ0.01μmのウィルスが通液室からイオン交換膜を通って処理室に流入したものと推察される。実施例及び比較例共に水質面で大きな影響が出なかったのは、水質を決定する不純物イオンがピンホールを透過しても、本装置の脱塩機能により再び処理室から通液室へ移動するためと推察される。すなわち、水質のみを指標とする場合と異なり、処理液のウィルス失活を確保するためには処理室は隣接室よりも圧力を少なくとも0.02MPa以上高くする必要があることがわかる。
本発明のウィルス失活方法において用いる装置の簡略図である。
符号の説明
10 装置
11 陽極
12 陰極
13 カチオン交換膜
14 アニオン交換膜
15 処理室
16a カチオン交換樹脂
16b アニオン交換樹脂
17 通液室
18 被処理液
19 処理液

Claims (6)

  1. 一対の陽極と陰極の間にカチオン交換膜とアニオン交換膜によって区切られ且つその両膜間にイオン交換体が充填された処理室を有する装置において、電圧を印加させながら、有価物を含有する被処理液を該処理室に流入することを特徴とする被処理液のウィルス失活方法。
  2. 前記有価物が、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、糖質、脂肪酸、中性脂肪若しくは脂質又はこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載の被処理液のウィルス失活方法。
  3. 前記被処理液中の塩類のカチオン中、一価カチオンの濃度を二価カチオンの濃度より質量百分率として高くするか、あるいは該被処理液中の塩類のアニオン中、塩化物イオンの濃度を質量百分率として最も高くすることを特徴とする請求項1又は2記載の被処理液のウィルス失活方法。
  4. 前記被処理液中のナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの中でナトリウムイオンの濃度が質量百分率として最も高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の被処理液のウィルス失活方法
  5. 被処理液の処理室出口水の導電率が10μS/cm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の被処理液のウィルス失活方法。
  6. 前記イオン交換体がイオン交換樹脂であり且つアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混床であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の被処理液のウィルス失活方法。
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