従って、本発明の目的は、LSIチップ/パッケージに適用可能で、高精度に温度計測が可能な温度センサ及び温度センサシステムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、小型で高空間分解能であり、LSIチップ/パッケージにおける微細領域の温度を計測可能な温度センサ及び温度センサシステムを提供することにある。
以下に、発明を実施するための最良の形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
上記課題を解決するために、本発明の温度センサは、光ファイバ(102)と、光ファイバ(102)の先端に設けられた光学材料層(112、305、412)とを具備する。
上記の温度センサにおいて、光学材料層(112、305、412)は、光ファイバ(102)を介して入射する光(110)を内部で多重反射した後、光ファイバ(102)へ反射する。
上記の温度センサにおいて、光学材料層(112、305、412)は、ファブリーペロー共振器構造を有する。
上記の温度センサにおいて、光学材料層(305)は、光ファイバ(102)の先端に直接形成されている。
上記の温度センサにおいて、光学材料層(112、412)は、光ファイバ(102)を介して入射する光(110)の入射方向に略直角であって光学材料層(112、412)を挟む二つの面に、それぞれ誘電体層(111/113、411/412)を有する。
上記の温度センサにおいて、光学材料層(112、305、412)は、ジルコン酸チタン酸鉛、ランタンが添加されたジルコン酸チタン酸鉛、ニオブ酸リチウム、二酸化チタンのうちから選択される一つの材料を主成分として含む。
上記の温度センサにおいて、光ファイバ(102)は、複数ある。複数の光ファイバ(102)の各々は、その先端に光学材料層(112、305、412)を具備する。
上記課題を解決するために、本発明の温度センサは、光ファイバ(102)と、光ファイバ(102)の先端に設けられた発光材料層(712)とを具備する。
上記の温度センサにおいて、発光材料層(712)は、発光材料(712)の温度に対応した発光量の光(210)を光ファイバ(102)へ出射する。
上記の温度センサにおいて、
発光材料層(712)は、光ファイバ(102)の先端に直接形成されている
温度センサ。
上記の温度センサにおいて、発光材料層(712)は、チタニア−シリカ混合材料、シリコン−シリカ混合材料、及びチタン−シリカ混合材料のうちから選択される一つの材料を主成分として含む。
上記課題を解決するために、本発明の温度センサシステムは、光出力部(100)と、温度センサ(103、303、403、800)と、検出部(119)と、算出部(130)とを具備する。光出力部(100)は、所定の波長範囲の光(110a)を出射する。温度センサ(103、303、403、800)は、光(110a)の入射に基づいて、反射光(110c)を出力し、上記のいずれか一項に記載されている。検出部(119)は、反射光(110c)に基づいて、共振波長を検出する。算出部(130)は、共振波長の変化に基づいて、温度センサ(103、303、403、800)での温度変化を算出する。
上記課題を解決するために、本発明の温度センサシステムは、温度センサ(703)と、検出部(120)と、算出部(140)とを具備する。温度センサ(703)は、温度に対応した発光量の光(210)を出力し、上記のいずれか一項に記載されている。検出部(120)は、光(210)に基づいて、発光量を検出する。算出部(140)は、発光量に基づいて、温度センサ(703)での温度を算出する。
上記課題を解決するために、本発明の温度センサの製造方法は、(a)光ファイバ(102)の端面を平滑化する工程と、(b)端面上にエアロゾルデポジション法により光学材料層(305、412)を製膜する工程と、(c)光学材料層(112、305、412)を熱処理する工程とを具備する。
上記の温度センサの製造方法において、(b)ステップは、(b1)端面上に第1誘電体層(411)を製膜する工程と、(b2)上部誘電体層(411)上に光学材料層(412)を製膜する工程と、(b3)光学材料層(412)上に第2誘電体層(413)を製膜する工程とを具備する。
上記課題を解決するために、本発明の温度センサの製造方法は、(d)光ファイバ(102)の端面を平滑化する工程と、(e)端面上にエアロゾルデポジション法により発光材料層(712)を製膜する工程と、(f)発光材料層(712)を熱処理する工程とを具備する。
上記課題を解決するために、本発明の温度センサの動作方法は、(a)光ファイバ(102)の先端に光学材料層(112、305、412)を設けた温度センサ(103、303、403)を、測定対象の回路(114)の動作前に、回路(114)上の測定点へ配置するステップと、(b)光ファイバ(102)を介して、所定の波長範囲の光を光学材料層(112、305、412)へ出射するステップと、(c)光学材料層(112、305、412)からの第1反射光における第1共振周波数を検出するステップと、(d)回路(114)の動作後に、光ファイバ(102)を介して、光を光学材料層(112、305、412)へ出射するステップと、(e)光学材料層(112、305、412)からの第2反射光における第2共振周波数を検出するステップと、(f)光学材料層(112、305、412)の屈折率の温度依存性(Δn/ΔT)と第1共振周波数と第2共振周波数とに基づいて、回路(114)の動作後における測定点での温度変化(ΔT)を算出するステップとを具備する。
上記の温度センサの動作方法において、(g)(d)ステップよりも前であって、回路(114)の動作前に、測定点の温度(T0)を測定するステップと、(h)(f)ステップよりも後に、測定された温度(T0)と温度変化(ΔT)とに基づいて、回路(114)の動作後における測定点での温度(T)を算出するステップとを更に具備する。
上記の温度センサの動作方法において、(i)回路(114)上の複数の測定点の各々において、(a)ステップ乃至(c)ステップを実施するステップと、(j)複数の測定点の各々について、(d)ステップ乃至(f)ステップを実施するステップと、(k)複数の測定点の各々における温度変化(ΔT)に基づいて、回路(114)の動作後における回路(114)の温度変化分布を求めるステップとを更に具備する。
上記の温度センサの動作方法において、(l)(j)ステップよりも前であって、回路(114)の動作前に、複数の測定点のうちの少なくとも一つの測定点の温度(T0)を測定するステップと、(m)複数の測定点の各々について、測定された温度(T0)と複数の測定点の各々における温度変化(ΔT)とに基づいて、回路(114)の動作後における温度(T)を算出するステップと、(n)複数の測定点の各々における温度(T)に基づいて、回路(114)の動作後における回路(114)の温度分布を求めるステップとを更に具備する。
上記の温度センサの動作方法において、温度センサ(103、403)の光学材料層(112、412)は、光の入射方向に略直角であって光学材料層(112、412)を挟む二つの面に、それぞれ誘電体層(111/113、411/412)を有する。
上記の温度センサの動作方法において、光学材料層(112、305、412)は、ジルコン酸チタン酸鉛、ランタンが添加されたジルコン酸チタン酸鉛、ニオブ酸リチウム、及び二酸化チタンのうちから選択される一つの材料を主成分として含む。
上記課題を解決するために、本発明の温度センサの動作方法は、(a)光ファイバ(102)の先端に発光材料層(712)を設けた温度センサ(703)を、測定対象の回路(114)上の測定点へ配置するステップと、(b)回路(114)の動作後に、光ファイバ(102)を介して、発光材料層(712)が発する所定の波長範囲の光を検出するステップと、(c)検出された光の発光量に基づいて、回路(114)の動作後における測定点での温度(T)を算出するステップとを具備する。
上記の温度センサの動作方法において、(d)回路(114)上の複数の測定点の各々において、(a)ステップ乃至(c)ステップを実施するステップと、(e)複数の測定点の各々における温度(T)に基づいて、回路(114)の動作後における回路(114)の温度分布を求めるステップとを更に具備する。
上記の温度センサの動作方法において、発光材料層(712)は、チタニア−シリカ混合材料、シリコン−シリカ混合材料、及びチタン−シリカ混合材料のうちから選択される一つの材料を主成分として含む。
本発明により、小型で高空間分解能であり、LSIチップ/パッケージのような微細領域の温度を計測可能であり、また、高精度に温度計測が可能な温度センサ及び温度センサシステムを得ることができる。
以下、本発明の温度センサ及び温度センサシステムの実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の温度センサ及び温度センサシステムの第1の実施の形態の構成について説明する。
図1は、本発明の温度センサ及び温度センサシステムの第1の実施の形態の構成を示す図である。図1(a)は温度センサシステムを、図1(b)は温度センサをそれぞれ示している。この温度センサシステム150は、光ファイバ101(101a、101b)、連続レーザ光源100、光サーキュレータ104、温度センサ103、光スペクトラムアナライザ119、情報処理装置130を具備する。
温度センサ103は、光ファイバ102、及び温度センサ本体105を備える。光ファイバ102は、コア106とクラッド107とを含む。コア106において、光サーキュレータ104からのレーザ光110を入射光110aとして温度センサ本体105へ出射し、温度センサ本体105からの反射光110cを光サーキュレータ104へ出射する。
温度センサ本体105は、光ファイバ102の先端に接着層108を介して接着されている。接着層108を用いず、光ファイバ102の先端に直接設けても良い。温度センサ本体105は、上部誘電体多層反射層111、下部誘電体多層反射層113、及び光学材料層112を備える。
光学材料層112は、光ファイバ102の先端に接着層108及び上部誘電体多層反射層111を介して接着された微小な温度測定素子である。光学材料層112は、切削、研磨が施され微小加工された結晶でも良いし、成膜装置により形成された膜であってもよい。光学材料層112は、温度変化(ΔT)に対する屈折率変化(Δn)の割合(Δn/ΔT)が既知の定数を有する物質であることが好ましい。Δn/ΔTの値は大きいことが望ましい。熱勾配に対して、より高感度な温度センサが実現できるからである。また、良好な光共振特性を有することが好ましい。良好な光共振特性とは、後述の光スペクトラムアナライザ119にて測定された共振波長におけるディップが鋭く、その半値幅が小さいような特性である。そのような光学材料層112としては、Pb(Zr0.6Ti0.4)03(ジルコン酸チタン酸鉛:以下、PZTと記す)、ランタン添加ジルコン酸チタン酸鉛、ニオブ酸リチウム、二酸化チタンが例示される。これらを主成分として、上記光共振特性改善のために少量のドーパントを添加したものであっても良い。主成分は、例えば、80%以上の成分であり、少量とは、例えば、0.1〜20%である。
上部誘電体他層反射膜111及び下部誘電体多層反射層113は、それぞれ光学材料層112の上面(光ファイバ102側)及び底面に設けられ、レーザ光を反射する。上部誘電体他層反射膜111及び下部誘電体多層反射層113を設けることで、より良好な光共振特性が実現され、より高感度な温度分布計測が実現できる。上部誘電体他層反射膜111及び下部誘電体多層反射層113は、SiO2/Ta2O5多層膜に例示される。
入射光110aは、上部誘電体多層反射層111を介して光学材料層112へ入射し、光学材料層112内で上部誘電体多層反射層111と下部誘電体多層反射層113との間で反射し(反射光110b)、その後、反射光110cとしてコア106へ送出される。
なお、光ファイバ102は、光サーキュレータ104に直接接続される必要は無く、例えば、光サーキュレータ104に接続された別の光ファイバ及びその別の光ファイバに接続されたカプラを介して、光サーキュレータ104に接続されていても良い。
連続レーザ光源100は、光ファイバ101aに接続され、当該光ファイバ101aへレーザ光110を出射する。光サーキュレータ104は、光ファイバ101a、101b及び102に接続されている。光ファイバ101aからのレーザ光110(入射光110a)を光ファイバ102へ出射する。温度センサ103は、レーザ光110(入射光110a)を反射し、反射光110cとして光ファイバ102へ出射する。光サーキュレータ104は、光ファイバ102からのレーザ光110(反射光110c)を光ファイバ101bへ出射する。光スペクトラムアナライザ119は、レーザ光110(反射光110c)を電気信号に変換し、レーザ光の波長と強度との間の関係を求め、共振波長を検出する。検出された共振波長は、情報処理装置130へ出力される。
情報処理装置130は、パーソナルコンピュータに例示され、光スペクトラムアナライザ119に接続されている。情報処理装置130は、内部の記憶装置(例示:HD)にプログラムとしての温度導出部131を備える。温度導出部131は、光スペクトラムアナライザ119から出力された共振波長を、内部の記憶装置(例示:HD)に格納する。そして、例えば、回路基板114の動作前後の共振波長の変化に基づいて、回路基板114の温度分布を算出する(後述)。本システムの原理(後述)上、温度センサ103の温度(=温度センサ103近傍の温度)に応じてその波長が変化する。そのため、測定対象の回路基板114上の温度センサ103の位置を変えることにより、回路基板114の温度分布が得られる。
なお、光スペクトラムアナライザ119がレーザ光の波長と強度との間の関係だけを求め、情報処理装置130が共振周波数を算出しても良い。更に、情報処理装置130の機能は、光スペクトルアナライザ119に含まれていても良い。また、光ファイバ101a、101b及び102の途中に、例えば、レーザ光110を増幅するファイバアンプを入れても良い。それにより、精度がより向上する。また、光ファイバ101a、101b及び102の長さ調節のためにカプラを介して光ファイバを追加しても良い。
次に、温度センサ103の製造方法について説明する。まず、適当な大きさの光学材料の結晶について、所定の大きさ切削し、表面を研磨し、その後、洗浄して、光学材料層112を得る。次に、光学材料層112の上面に上部誘電体多層膜反射層111を、下面に下部誘電体多層膜反射層113を製膜する。そして、上部誘電体多層膜反射層111及び下部誘電体多層膜反射層113を製膜された光学材料層112を、上部誘電体多層膜反射層111側で接着層108を用いて光ファイバ102の端部に接着する。
以上の製造方法により、温度センサ103が形成される。
次に、本発明の温度センサシステムによる温度分布計測の温度測定方法を説明する。図2は、本発明の温度センサシステムの第1の実施の形態における動作を示すフローチャートである。
まず、予備実験として回路基板114を動作させず、予め温度が既知の状態(例示:T0)で光学材料層112の光共振特性を測定する(ステップS31)。すなわち、測定前に、測定対象の回路基板114(例示:LSIパッケージ)上の所定の各測定点において、その測定点に温度センサ103の先端を固定し、そのときの光スペクトラムを計測する。このとき、各測定点と温度センサ103の先端との間隔は空いていても良いし(例示:0.5μm)、接触させても良い。
具体的には、以下のようにする。連続レーザー光源100からレーザ光110を出射する(ステップS11)。出射されるレーザ光110の波長域は、例えば1500nm〜1600nmである。各波長のレーザ光110は、光ファイバ110a、光サーキュレータ104及び光ファイバ102を通り温度センサ本体105に入射光110aとして入射する。光学材料層112の上面に施された上部誘電体多層反射層111によりレーザ光110は一部反射されるが、残りは光学材料層112に入射する。光学材料層112に入射したレーザ光110bは、上面に施された上部誘電体多層膜反射層111と底面に施された下部誘電体多層膜反射層113とにより多重反射しながら再び光ファイバ102に反射光110cとして戻る。反射光110cは、再び光サーキュレータ104を通った後、光ファイバ101bを介して光スペクトラムアナライザ119へ到達する。光スペクトラムアナライザ119は、到達したレーザ光110(反射光110c)を検出する(ステップS12)。
ここで、図3は、光スペクトラムアナライザ119により測定される光スペクトラムの一例を示す模式図である。縦軸は光パワーを示し、横軸はレーザ光の波長を示す。光スペクトラムアナライザ119に到達したレーザ光110(反射光110c)の光スペクトラムはピークとディップを繰り返すという特徴を有する。これは、光学材料層112がファブリーペロー共振器構造を有しているとみなせるからである。このディップの底における波長は共振波長λresであり、以下の式で表される。
λres=2・n(T)・l・cosθ/m (1)
ただし、n(T):光学材料の屈折率
T:光学材料の温度
l:光学材料の厚み、
θ:入射光の屈折角、
m:整数
屈折率n(T)が光学材料(光学材料層112)の温度Tの関数である。すなわち、共振波長λresが温度センサ103の光学材料層112の温度に対応し、温度センサ103の光学材料層112が回路基板114の近傍に固定されていることから、共振波長λresは回路基板114の温度に対応している(温度を測定している)ことになる。
図2を参照して、光スペクトラムアナライザ119は、この共振周波数λresを抽出する(ステップS13)。光スペクトラムアナライザ119は、回路基板114の動作前の共振波長を情報処理装置130へ出力する。情報処理装置130の温度導出部131は、その回路基板114の動作前の共振波長に関するデータを、内部の記憶装置(例示:ハードディスク装置、図示されず)に記憶する(ステップS14)。そして、温度センサ本体105をXY駆動装置(図示されず)により、回路基板114上を所定の間隔、及び移動パターンで移動することで、回路基板114上の全ての箇所(測定点)についてステップS11〜ステップS14の測定及び抽出を実行する(ステップS15)。
次に、回路基板114を動作させる(ステップS32)。
続いて、動作により回路基板114の温度が高くなった状態で、光学材料層112の光共振特性を測定する(ステップS33)。すなわち、測定対象の回路基板114上の所定の各測定点において、その測定点に温度センサ103の先端を固定し、上記(ステップS31)と同様に光スペクトラムを計測する。
具体的には、以下のようにする。連続レーザー光源100からレーザ光110を出射する(ステップS21)。出射されるレーザ光110の波長域は、ステップ31と同じである。各波長のレーザ光110は、光サーキュレータ104経由で温度センサ本体105に入射し、温度センサ本体105内で反射され、光サーキュレータ経由で光スペクトラムアナライザ119へ到達する。光スペクトラムアナライザ119は、到達したレーザ光110(反射光110c)を検出する(ステップS22)。光スペクトラムアナライザ119は、検出した光スペクトラムにおいて共振周波数λresを抽出する(ステップS23)。光スペクトラムアナライザ119は、回路基板114の動作開始後の共振波長を情報処理装置130へ出力する。情報処理装置130の温度導出部131は、その回路基板114の動作開始後の共振波長に関するデータを記憶装置に記憶する(ステップS24)。温度導出部131は、回路基板114上のその測定点に関し、ある共振波長λresについて、回路基板114の動作前の値と動作開始後の値とを比較し、当該共振波長λresのシフト量Δλresを求める。そのシフト量Δに基づいて、式(1)を用いて屈折率差のシフト量Δnを求める。光学材料におけるΔn/ΔTが一定であれば、そのシフト量Δnに基づいて、回路基板114の動作前の温度T0からの温度差ΔTを導くことが出来る(ステップS25)。温度Tの絶対値を知りたいときには、回路基板114の動作前の温度T0を、予め別の手法(例示:熱電対)で計測し、情報処理装置130内に格納しておけばよい。以上により、回路基板114上のある測定点において、温度差ΔT(又は温度の絶対値T)を求めることができる。そして、温度センサ本体105をXY駆動装置(図示されず)により、回路基板114上を所定の間隔、及び移動パターンで移動することで、全ての箇所(測定点)についてステップS21〜ステップS25の測定及び抽出を実行する(ステップS26)。
このように、順次温度センサ103の先端(温度センサ本体105)の位置を、回路基板114に対して相対的に移動させることにより、各位置における温度の違いに対応した共振波長λresのシフト量Δλresが計測される。それに基づいて、上記方法により、各位置における回路基板114の動作前の温度T0からの温度差ΔTが求まる。それにより、回路基板114の温度分布が得られる
図1においては、光源に連続レーザ光源100を用いている。しかし、本発明はそれに限定されるものではなく、所定の範囲の波長を有する光を発せられるものであれば良い。例えば、白色光源である。
本発明の温度センサ103は、その測定子(温度センサ本体105)が従来の温度センサに比べて極めて微小である。そのため、微小領域での熱勾配に対して高感度な測定が可能である。したがって、LSIチップ/パッケージ近傍で精密な温度分布が計測できる結果、パッケージ熱設計に有効な情報を低コストでかつ迅速に得ることができる。
本発明の温度センサ103は、良好な光共振特性を有する光学材料を用い、光ファイバ102端面上に形成された光学材料層112を備えている。本発明の温度センサシステム150は、その温度センサ103と光学装置(119)とを備えている。そして、温度センサ103の光学材料層112からの反射光について、その光共振特性の温度変化を光学装置(119)でモニタすることで、光ファイバ102の先端ほどの微小領域の温度を計測することができる。すなわち、本発明の温度センサ103を適用した温度センサシステム150は、微細LSIチップや高密度LSIパッケージでの温度測定に適用することが可能である。
上記実施の形態では、回路基板114を固定し、温度センサ本体105をXY駆動装置(図示されず)で移動している。しかし、温度センサ本体105を固定し、回路基板114をXY駆動装置により、温度センサ本体105対して所定の間隔、及び移動パターンで移動しても良い。
また、温度センサ103を予め稠密に並べた形で設けることも可能である。図4は、本発明の第1の実施の形態の温度センサ103を複数本束ねて形成された温度センサ800の一例を示す図である。下部誘電体多層膜反射層113の側から見た図である。温度センサ800は、一次元的に並んだ複数の温度センサ103が、更に、二次元的に最密充填になるように(千鳥状、蜂の巣状)に束ねられている。そして、各温度センサシステム150の光スペクトラムアナライザ119からのデータを一台の情報処理装置130で処理するようにする。温度センサ103をこのように束ねた温度センサ800を用いて温度分布を測定することで、従来より極めて短時間で、走査させずに高分解能な温度変化の二次元分布を得ることが可能となる。
温度センサ800は、単に一次元的に一列に並んだ複数の温度センサ103だけであっても良い。その場合、束ねた方向に対して垂直な方向へ、狭ピッチで走査させることにより、従来より短時間で高分解能な温度変化の二次元分布を得ることができる。
また、温度センサシステム150は一つで、温度センサとして温度センサ800を用いても良い。その場合、光サーキュレータ104と温度センサ800との間に、レーザ光が入射する温度センサ800内の温度センサ103を連続的に切り替えるレーザ切替部(図示されず)を設ける。このようにすることで、一つの温度センサシステム150で連続的に高分解能な温度変化の二次元分布を測定することも可能となる。
また、温度センサ103は、光ファイバ102の先端に光学材料層112が接着層108を介して接着された形態となっている。しかし、温度センサはこのような形態に限定されるものではない。例えば、図5に示すような構成でも良い。図5は、本発明の温度センサの第1の実施の形態の構成の他の一例を示す図である。温度センサ403は、光ファイバ102の先端に直接に形成された温度センサ本体405を有している。温度センサ本体405は、上部誘電体多層膜反射層411、光学材料層412及び下部誘電体多層膜反射層413がこの順に直接形成されている。光学材料層412はファブリーペロー共振器構造を有しているとみなせる。この場合、接着層がない分、感度や精度が向上する。
上記温度センサ403の製造方法について説明する。図6は、本発明の温度センサの第1の実施の形態の他の製造方法を示すフローチャートである。
まず、エアロゾルデポジション法による成膜に用いる基板を準備する(ステップS01)。基板は、光ファイバ102を用いる。成膜面は、光ファイバ102の端面である。光ファイバ102の端部に平滑化処理及び平滑化処理を行う。更に、光ファイバ102の端面に、上部誘電体多層膜反射層111をスパッタ法で形成する。材料はSiO2/Ta2O5多層膜であり、膜厚は1.3μmである。
次に、エアロゾルデポジション法により、光学材料層112の成膜を行う(ステップS02)。エアロゾルデポジション装置は、1μm以上の膜厚の光学膜(光学材料層)を成膜することができる。当該装置により光ファイバ102先端に形成された光学膜(光学材料層)は、極めて良好な光共振特性を有する。エアロゾルデポジション法による成膜条件は、以下のとおりである。光学材料層112の成膜の膜厚は6000nmとした。原料粉末はPb(Zr0.6Ti0.4)03(以下、「PZT」と記す)、キャリヤガスは酸素をそれぞれ用いた。基板(光ファイバ102の端面)に対するノズルの入射角を10度、ガス流量を12リットル/分、ノズル−基板間距離を5mm、成膜速度を0.8μm/min、加振器の振動数を250rpmとして成膜する。エアロゾルデポジション法は、まず、超微粒子(原料粉末)をエアロゾル発生器に充填する。次に、キャリアガス(例示:窒素、空気)をエアロゾル発生器に導入して超微粒子を均一に分散させたエアロゾルを作り出す。続いて、そのエアロゾルを成膜室に搬送してノズルから基板に向かって噴射し堆積させる。これにより、所望の膜が成膜される。このとき、超微粒子(脆性材料)は機械的衝撃力が付加されて基板に到達するので、基板上で粉砕されながら、堆積する。
その後、熱処理を行う(ステップS03)。すなわち、まず、成膜後、光学材料層112を大気中で、600℃、15分間程度熱処理する。この熱処理により、光学材料層112の所望の光学特性を発現させる。
熱処理後、所定の後処理を行う(ステップS04)。すなわち、熱処理後、光学材料層112の膜の表面の凹凸を除去するために、膜厚5400nmまで研磨し、平坦化し、洗浄した。その後、光学材料層112の表面に、下部誘電体多層膜反射層113をスパッタ法で形成した。材料はSiO2/Ta2O5多層膜であり、膜厚は2.7μmである。
以上の製造方法により、温度センサ103が形成される。
また、図7に示すような構成でも良い。図7は、本発明の温度センサの第1の実施の形態の構成の更に他の一例を示す図である。温度センサ303は、光ファイバ102の先端に直接形成された温度センサ本体305を有する。温度センサ本体305は、光学材料層である。温度センサ本体305=光学材料層はファブリーペロー共振器構造を有しているとみなせる。この場合、接着層がない分、感度や精度が向上する。また、製造工程が減るので、製造コストを低く抑えることができる。製造方法としては、図6に記載の製造方法において、上部誘電体多層膜反射層111及び下部誘電体多層膜反射層113の製膜を行わないことで製造できる。
なお、図5及び図7のいずれの温度センサにおいても、図4のように二次元的に配列された複数の温度センサであっても良いし、単に一次元的に並んだ複数の温度センサだけであっても良い。このように複数の温度センサを用いて温度分布を測定することで、従来の場合より極めて短時間で、走査させずに高分解能な温度変化の二次元分布を得ることが可能となる。
(実施例)
次に、実施例について説明する。
本実施例では、温度センサとして、図7のような光ファイバ102の先端に直接温度センサ本体(光学材料層)305が形成された温度センサ303を用いた。温度センサ本体305は、超微粒子脆性材料に機械的衝撃力を負荷して粉砕、接合させ成形体を形成するエアロゾルデポジション法により形成した。膜厚は1200nmである。Pb(Zr0.6Ti0.4)03(PZT)を原料粉末とし、キャリヤガスは酸素、ノズルと基板の入射角は10度、ガス流量12リットル/分、ノズル基板間距離は5mm、成膜速度は0.8μm/min、加振器の振動数は250rpmで成膜した。成膜後、大気中で、600℃、15分間程度熱処理することで光学膜の透明度を向上させた。熱処理後、膜表面の凹凸を除去するために、膜厚1000nmまで研磨し、平坦化した。
温度センサ303を図1に示した温度センサシステム105に組み込み、まず回路基板114のマイクロストリップ線路上で温度計測を行った。用いた線路は幅1mmのストリップ導体を有し、その特性インピーダンスは50Ωであり整合終端されている。線路をホットプレート上に固定し、ホットプレートの設定温度を変えながら計測を行った。
図8は、光スペクトラムアナライザ119により測定される光スペクトラムの測定結果を示すグラフである。縦軸は光パワーを示し、横軸はレーザ光の波長を示す。温度センサ303の先端(PZT膜表面)を線路表面に設置し、ホットプレートの設定温度を20℃、100℃としたときのそれぞれの光スペクトラムを示している。設定温度を20℃、100℃のいずれの場合にも、良好な共振特性(共振波長におけるディップが鋭く、その半値幅が小さい)が得られることが確認された。また、20℃と100℃という温度の相違による共振波長のシフトが確認された。すなわち、温度が高くなることにより、共振波長が長くなることが確認された。
図9は、測定対象であるLSIチップ内の計測領域114の構成を示す図である。計測領域114の中央部にはロジック回路を有する回路領域114bが存在し、チップ縦方向に幅10μmの電源/グランド配線を有する配線領域114aが存在する。測定時、ロジック回路には50MHzのクロック信号を供給し、ロジック回路を25MHzで動作させた。図10は、LSIチップ上で計測された温度分布を示す図である。計測領域の温度分布を濃淡で示している。その温度分布は最大値で規格化してある。図に示すように、微細な温度分布が観測されており、本結果から本発明の温度センサシステムにより精密な温度分布計測が可能であることが分かる。
本発明の温度センサ及び温度センサシステムは、光ファイバの先端の微小な測定子(光学材料層)を用いて温度測定を行うので、小型で高空間分解能であり、LSIチップ/パッケージにおける微細領域の温度を計測可能である。すなわち、LSIチップ/パッケージに適用可能で、高精度に温度計測が可能である。
(第2の実施の形態)
本発明の温度センサ及び温度センサシステムの第2の実施の形態の構成について説明する。
図11は、本発明の温度センサ及び温度センサシステムの第2の実施の形態の構成を示す図である。図11(a)は温度センサシステムを、図11(b)は温度センサをそれぞれ示している。この温度センサシステム160は、温度センサ703、光パワーメータ120、情報処理装置140を具備する。
温度センサ703は、光ファイバ102、及び温度センサ本体705を備える。温度センサ本体705は、発光材料を用いた発光材料層を含み、光ファイバ102の先端に直接形成(製膜)された微小な温度測定素子である。発光材料層(温度センサ本体705)は、所定の波長の光を、温度に対応した強度(発光量)で発光する。発行材料層としては、セラミックス発光材料であるチタニア−シリカ混合材料、シリコン−シリカ混合材料、及びチタン−シリカ混合材料、あるいはこれらを主成分に含み特性向上のためのドーパントが添加されたものが例示される。チタニア−シリカ混合材料のような材料は、発光特性の温度依存性が既知であるため、同材料の発光量から同材料の温度が分かる。光ファイバ102は、コア106とクラッド107とを含む。コア106において、温度センサ本体705からの光210を光パワーメータ120へ供給する。
光パワーメータ120は、温度センサ703からの光210(温度センサ本体705の発光)を電気信号に変換し、その発光量を検出する。検出された発光量は、情報処理装置140へ出力される。
なお、光ファイバ102は、光パワーメータ120に直接接続される必要は無く、例えば、光パワーメータ120に接続された別の光ファイバ及びその別の光ファイバに接続されたカプラを介して、光パワーメータ120に接続されていても良い。
情報処理装置140は、パーソナルコンピュータに例示され、光パワーメータ120に接続されている。情報処理装置140は、内部の記憶装置(例示:ハードディスク装置)に、プログラムとしての温度導出部141及び発光量と温度との関係を示すテーブル(図示されず)を備える。温度導出部141は、光パワーメータ120から出力された発光量に基づいて、テーブルを参照して温度を算出する。本システムの原理上、温度センサ703近傍の温度に応じてその発光量が変化する。そのため、測定対象の回路基板114上の温度センサ703の位置を変えることにより温度分布が得られる。
なお、情報処理装置130の機能は、光パワーメータ120に含まれていても良い。また、光ファイバ102の長さ調節のためにカプラを介して光ファイバを追加しても良い。
次に、温度センサ103の製造方法について説明する。
まず、エアロゾルデポジション法による成膜に用いる基板を準備する。基板は、光ファイバ102を用いる。成膜面は、光ファイバ102の端面である。光ファイバ102の端部に平滑化処理及び平滑化処理を行う。次に、エアロゾルデポジション法により、温度センサ本体705の発光材料層の成膜を行う。エアロゾルデポジション法による成膜条件は、以下のとおりである。光学材料層112の成膜の膜厚は6000nmとした。原料粉末はチタニア−シリカ混合材料、キャリヤガスは酸素をそれぞれ用いた。基板(光ファイバ102の端面)に対するノズルの入射角を10度、ガス流量を12リットル/分、ノズル−基板間距離を5mm、成膜速度を0.8μm/min、加振器の振動数を250rpmとして成膜する。エアロゾルデポジション法は、まず、超微粒子(原料粉末)をエアロゾル発生器に充填する。次に、キャリアガス(例示:窒素、空気)をエアロゾル発生器に導入して超微粒子を均一に分散させたエアロゾルを作り出す。続いて、そのエアロゾルを成膜室に搬送してノズルから基板に向かって噴射し堆積させる。これにより、所望の膜が成膜される。成膜後、発光材料層を大気中で、600℃、15分間程度熱処理することにより、発光材料層の所望の光学特性を発現させた。熱処理後、発光材料層の膜の表面の凹凸を除去するために、膜厚5400nmまで研磨し、平坦化し、洗浄する。
以上の製造方法により、温度センサ703が形成される。
次に、本発明の温度センサシステムによる温度分布計測の温度測定方法を説明する。図12は、本発明の温度センサシステムの第2の実施の形態における動作を示すフローチャートである。
まず、回路基板114上の所定の各測定点において固定した上で、測定対象の回路基板114を動作させる(ステップS41)。測定対象の回路基板114が動作により発熱した状態になると、温度センサ703の先端(光学材料層705)が発光し始める。そして、光パワーメータ120は、測定点に配置された光学材料層705の発光量を検出し、その発光量を情報処理装置130へ出力する(ステップS42)。情報処理装置130の温度導出部141は、その発光量に関するデータを記憶装置に記憶する。温度導出部141は、その発光量に基づいて、予め格納された発光量と温度との関係を示すテーブルを参照して、発光材料層705の温度すなわち回路基板の測定点の温度を算出する(ステップS43)。以上により、回路基板114上のある測定点における、温度Tを求めることができる。そして、温度センサ703をXY駆動装置(図示されず)により、回路基板114上を所定の間隔、及び移動パターンで移動することで、全ての箇所(測定点)についてステップS42〜ステップS43の測定及び抽出を実行する(ステップS44)。
本発明の温度センサ及び温度センサシステムは、光ファイバの先端の微小な測定子(発光材料層)を用いて温度測定を行うので、小型で高空間分解能であり、LSIチップ/パッケージにおける微細領域の温度を計測可能である。すなわち、LSIチップ/パッケージに適用可能で、高精度に温度計測が可能である。