(第1実施形態)
以下、本発明にかかる可変動弁機構の制御装置を具体化した第1実施形態について、図1〜図10を併せ参照して説明する。
図1に、エンジン1におけるシリンダヘッド2周りの断面構造を示す。
このエンジン1においては、シリンダヘッド2、シリンダブロック3、及びピストン5によって燃焼室6が区画され、この燃焼室6には吸気通路7及び排気通路8が接続されている。そして、吸気通路7と燃焼室6との間は吸気バルブ9の開閉動作によって連通・遮断され、排気通路8と燃焼室6との間は排気バルブ10の開閉動作によって連通・遮断される。
シリンダヘッド2には、吸気バルブ9及び排気バルブ10を駆動する吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12が設けられている。これら吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12は、エンジン1のクランクシャフトの回転が伝達されることによって回転される。また、吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12には、それぞれ吸気カム11a及び排気カム12aが設けられている。そして、これら吸気カム11a及び排気カム12aの吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12との一体回転を通じて、吸気バルブ9及び排気バルブ10が開閉動作される。
また、エンジン1には、吸気バルブ9及び排気バルブ10といった機関バルブのバルブ特性を可変とする可変動弁機構として、吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角を可変とする可変動弁機構14が吸気カム11aと吸気バルブ9との間に設けられている。この可変動弁機構14の駆動を通じて、例えば吸入空気量を多く必要とするエンジン運転状態になるほど、最大リフト量及び作用角が大となるように制御される。なお、上記作用角とは、吸気バルブ9が開弁されてから閉弁されるまでの間にエンジン1のクランクシャフトが回転する回転角のことであり、同吸気バルブ9の開弁期間に一致する値である。
次に、可変動弁機構14の構造について説明する。
同可変動弁機構14は、シリンダヘッド2に固定されて吸気カムシャフト11と平行に延びるパイプ状のロッカシャフト15、ロッカシャフト15に挿入された棒状のコントロールシャフト16、コントロールシャフト16の軸線を中心に揺動する入力アーム17、入力アーム17の揺動に基づき上記軸線を中心に揺動する出力アーム18等を備えている。
入力アーム17には、ローラ19が回転可能に取り付けられており、このローラ19は、コイルスプリング20によって吸気カム11a側に押し付けられている。また、出力アーム18は、その揺動時にロッカアーム21に押し付けられ、同ロッカアーム21を介して吸気バルブ9をリフトさせる。
このロッカアーム21の一端部はラッシュアジャスタ22によって支持され、同ロッカアーム21の他端部は吸気バルブ9に接触している。また、ロッカアーム21は吸気バルブ9のバルブスプリング24によって出力アーム18側に付勢されており、これによりロッカアーム21の一端部と他端部との間に回転可能に支持されたローラ23が出力アーム18に押し付けられている。従って、吸気カム11aの回転に基づき入力アーム17及び出力アーム18が揺動すると、出力アーム18がロッカアーム21を介して吸気バルブ9をリフトさせ、吸気バルブ9の開閉動作が行われる。
この可変動弁機構14では、パイプ状のロッカシャフト15内に配置されたコントロールシャフト16を軸方向に変位させることで、入力アーム17と出力アーム18との揺動方向についての相対位置を変更することが可能となっている。このように、入力アーム17と出力アーム18との揺動方向についての相対位置を変更すると、上記吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角が可変とされる。即ち、入力アーム17と出力アーム18とを揺動方向について互いに接近させるほど、吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角はともに小さくなっていく。逆に、入力アーム17と出力アーム18とを揺動方向について互いに離間させるほど、吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角はともに大きくなっていく。
次に、可変動弁機構14を駆動すべく上記コントロールシャフト16を軸方向に変位させるための駆動機構、及び、その駆動機構を駆動制御する制御装置について、図2を参照して説明する。
この図2に示すように、コントロールシャフト16の基端部(図中右端部)には、変換機構48を介してブラシレスモータ47が連結されている。この変換機構48は、ブラシレスモータ47の回転運動をコントロールシャフト16の軸方向への直線運動に変換するためのものである。そして、上記ブラシレスモータ47の所定の回転角範囲内での回転駆動、例えば同モータ47の10回転分の回転角範囲(0〜3600°)内での回転駆動を通じて、コントロールシャフト16が軸方向に変位させられ、可変動弁機構14が駆動される。
ちなみに、ブラシレスモータ47を正回転させると、コントロールシャフト16は先端(図中左端)側に変位し、入力アーム17と出力アーム18との揺動方向についての相対位置が互いに接近するように変更される。また、ブラシレスモータ47を逆回転させると、コントロールシャフト16は基端(図中右端)側に変位し、入力アーム17と出力アーム18との揺動方向についての相対位置が互いに離間するように変更される。こうしたブラシレスモータ47の回転駆動による入力アーム17及び出力アーム18の揺動方向についての相対位置の変更を通じて、吸気カム11aの回転により出力アーム18が揺動したときの吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角が可変とされる。
なお、ブラシレスモータ47は、同モータ47に供給される電圧のデューティ比(駆動デューティD)が可変制御されることにより、その回転速度や発生トルクは制御される。また、最大リフト量及び作用角といったバルブ特性を一定の状態に保持するときには、可変動弁機構14の可動部(入力アーム17、出力アーム18、コントロールシャフト16等)の変位を抑えるために保持デューティDHが印加される。
上記ブラシレスモータ47には、三つの電気角センサS1〜S3、及び二つの位置センサS4,S5が設けられている。
三つの電気角センサS1〜S3は、ブラシレスモータ47の回転時、同モータ47のロータと一体回転する4極の多極マグネットの磁気に応じて、図3(a)〜(c)に示されるようなパルス状の信号を互いに位相をずらした状態で出力するものである。そして、こうしたパルス信号の波形がえられるように、上記ロータに対する各電気角センサS1〜S3の周方向位置は定められている。なお、各電気角センサS1〜S3のうちの一つのセンサから出力されるパルス信号のエッジは、ブラシレスモータ47の45°回転毎に発生している。また、上記一つのセンサからのパルス信号は、他の2つのセンサからのパルス信号に対し、ブラシレスモータ47の30°回転分だけそれぞれ進み側及び遅れ側に位相がずれた状態となっている。
二つの位置センサS4,S5は、ブラシレスモータ47の回転時、同モータ47のロータと一体回転する48極の多極マグネットの磁気に応じて、図3(d)及び(e)に示されるようなパルス状の信号を出力するものである。そして、こうしたパルス信号の波形が得られるよう、上記ロータに対する各位置センサS4,S5の周方向位置が定められている。なお、各位置センサS4,S5の内の一方のセンサから出力するパルス信号のエッジは、ブラシレスモータ47の7.5°回転毎に発生している。また、上記一方のセンサからのパルス信号は、他方のセンサからのパルス信号に対し、ブラシレスモータ47の3.75°回転分だけ位相をずらした状態となっている。
従って、電気角センサS1〜S3からのパルス信号のエッジ間隔が15°であるのに対し、位置センサS4,S5からのパルス信号のエッジ間隔は3.75°と上記15°というエッジ間隔よりも短くなっている。更に、電気角センサS1〜S3からのパルス信号のエッジ発生から次回のエッジ発生までには、位置センサS4,S5からのパルス信号のエッジが4回発生するようになっている。
上記各センサS1〜S5やブラシレスモータ47の電力線は、可変動弁機構14の駆動制御、すなわちブラシレスモータ47の回転駆動制御を行うモータ用制御装置50に接続されている。
このモータ用制御装置50は、各種の演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時的に記憶される揮発性メモリであるRAM57、不揮発性メモリであるEEPROM58、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。そして、各位置センサS4、S5の信号に基づいてブラシレスモータ47の相対回転角が検出されるとともに、その検出される相対回転角と予め学習された基準位置とに基づいてブラシレスモータ47の絶対回転角が算出される。また、各電気角センサS1〜S3から出力されるパルス信号のパターンに応じてU相、V相、W相といった各通電相への電力供給の切り換えが行われ、これによりブラシレスモータ47が回転される。
このモータ用制御装置50と、エンジン1の各種制御を行うエンジン用制御装置51とは、通信線60で接続されている。
このエンジン用制御装置51も、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果が一時的に記憶されるRAM59、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
エンジン用制御装置51の入力ポートには、上記モータ用制御装置50からの各種信号が上記通信線60を介して入力されるほか、以下のような各種センサ及びスイッチなども接続されている。
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル操作量ACCP)を検出するアクセルセンサ52。
・エンジン1の吸気通路7に設けられたスロットルバルブの開度(スロットル開度TA)を検出するスロットルセンサ53。
・上記吸気通路7を介して燃焼室6に吸入される空気の量、すなわち吸入空気量GAを検出するエアフロメータ54。
・エンジン1の出力軸の回転に対応する信号を出力して機関回転速度NEの検出等に用いられるクランク角センサ55。
・自動車の運転者により切り換え操作され、現在の切換位置に対応した信号を出力するイグニッションスイッチ56。
このイグニッションスイッチ56がオンにされると、モータ用制御装置50やエンジン用制御装置51には、バッテリ70から電力が供給され、モータ用制御装置50とエンジン用制御装置51との間で上記通信線60を介した相互通信が開始されるともに、スタータモータが駆動されてエンジン1の始動が開始される。また、イグニッションスイッチ56がオフにされると、所定の処理がなされた後、モータ用制御装置50やエンジン用制御装置51への電力供給が遮断されて機関の運転は停止される。
上記エンジン用制御装置51は、上記各種センサ等から入力した検出信号や、モータ用制御装置50からの各種信号等に基づいて機関運転状態を把握する。そして、その把握した機関運転状態に基づいてブラシレスモータ47を駆動するべく、モータ用制御装置50に対して駆動指令値を出力する。そして、モータ用制御装置50は、その駆動指令値に基づいてブラシレスモータ47を駆動し、コントロールシャフト16が軸方向に変位されることにより、可変動弁機構14の駆動を通じた吸気バルブ9のバルブ特性制御が行われる。
吸気バルブ9のバルブ特性、すなわち吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角は、コントロールシャフト16の軸方向位置、言い換えればブラシレスモータ47の上記所定回転角範囲内での回転角に対応したものとなる。従って、吸気バルブ9のバルブ特性を精密に制御するには、ブラシレスモータ47の回転角を正確に検出し、その回転角が目標とするバルブ特性に対応する回転角となるようブラシレスモータ47を駆動することが重要になる。以下、そうした回転角の検出手順について、図3のタイミングチャート及び図4のフローチャートを併せ参照して説明する。
図3において、(a)〜(e)は、ブラシレスモータ47の回転時における同モータ47の回転角変化に対し、各センサS1〜S5からパルス信号がどのように出力されるかを示した波形図である。また、(f)〜(h)は、ブラシレスモータ47の回転時における同モータ47の回転角の変化に対し、電気角カウンタE、位置カウンタP、及びストロークカウンタSのカウンタ値がどのように推移するかを示している。
なお、上記電気角カウンタEは、ブラシレスモータ47を駆動すべく同モータ47の通電相を切り換える際に用いられるものである。また、上記位置カウンタPは、エンジン1を運転開始する際のイグニッションスイッチ56のオン操作(イグニッションオン)後、コントロールシャフト16が軸方向にどれだけ変位したか、言い換えればブラシレスモータ47の回転角がどれだけ変化したかを表すものである。更に、上記ストロークカウンタSは、コントロールシャフト16の位置が最大限に変位した状態を基準とする軸方向位置、言い換えればブラシレスモータ47の上記所定回転角範囲におけるコントロールシャフト16の上記変位状態に対応する端を基準とした同モータ47の回転角を表すものである。すなわちこのストロークカウンタSは、ブラシレスモータ47の回転角についてその絶対位置を表している。
図4に、上記電気角カウンタE、位置カウンタP、及びストロークカウンタSのカウンタ値を変化させるためのカウント処理についてその手順を示す。この処理は、モータ用制御装置50によって、位置センサS4,S5からのパルス信号のエッジ間隔に対応する時間間隔よりも短い間隔をもって周期的に実行される。
本処理が開始されると、まず、図3(a)〜(c)に示される各電気角センサS1〜S3からのパルス信号の出力パターンに基づき、図3(f)に示されるように電気角カウンタEのカウンタ値を変化させる(S101)。
具体的には、ブラシレスモータ47の正回転時(図中右向き)には、電気角センサS1〜S3からのパルス信号の出力パターンに応じて、「0」〜「m(この実施形態では5)」の範囲内の連続した各整数値が「0」→「1」→「2」→「3」→「4」→「5」→「0」といった順序で順方向に電気角カウンタEのカウンタ値として当てはめられる。また、ブラシレスモータ47の逆回転時(図中左向き)には、電気角センサS1〜S3からのパルス信号の出力パターンに応じて、「0」〜「m(5)」の範囲内の連続した各整数値が「5」→「4」→「3」→「2」→「1」→「0」→「5」といった順序で逆方向に電気角カウンタEのカウンタ値として当てはめられる。そして、この電気角カウンタEのカウンタ値に基づき、ブラシレスモータ47の通電相が切り換えられることで、同モータの正回転方向または逆回転方向への駆動が行われる。なお、この電気角カウンタEの値は、上記通信線60を介してエンジン用制御装置51に常時送信され、同エンジン用制御装置51のRAM59には同電気角カウンタEの最新値が記憶される。
続いて、各位置センサS4,S5からのパルス信号の出力パターンに基づき、位置カウンタPのカウンタ値が増減される(S102)。
より詳しくは、図5に示すように、各位置センサS4,S5のうち、一方のセンサからパルス信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとのいずれが生じているか、及び他方のセンサからハイ信号「H」とロー信号「L」とのいずれが出力されているかに応じて、位置カウンタPのカウンタ値に対し「+1」と「−1」とのいずれかが加算される。なお、この図5において、「↑」はパルス信号の立ち上がりエッジを表し、「↓」はパルス信号の立ち下がりエッジを表している。こうした処理を通じて得られる位置カウンタPのカウンタ値は、各位置センサS4,S5からのパルス信号のエッジを計数した値となる。
ここで、ブラシレスモータ47の正回転中であれば、位置カウンタPは、図3(d)及び(e)に示される位置センサS4,S5からのパルス信号のエッジ毎に「1」ずつ加算されてゆき、図3(g)中の右方向に変化してゆく。また、ブラシレスモータ47の逆回転中であれば、位置カウンタPは、上記エッジ毎に「1」ずつ減算されてゆき、図3(g)中の左方向に変化してゆく。なお、この位置カウンタPは、モータ用制御装置50のRAM57に記憶されるとともに、上記通信線60を介してエンジン用制御装置51に送信され、同エンジン用制御装置51のRAM59には同位置カウンタPの最新値が記憶される。また、イグニッションスイッチ56のオフ操作(イグニッションオフ)がなされたときには、位置カウンタPは、「0」にリセットされる。従って、位置カウンタPのカウンタ値は、上述したように、イグニッションオン後にコントロールシャフト16が軸方向にどれだけ変位したか、言い換えればブラシレスモータ47の回転角がどれだけ変化したかを表すものとなる。
そして、位置カウンタPに対して学習値Prの正負を反転させた値(「−Pr」)を加算して得られる値がストロークカウンタSのカウンタ値として設定される(S103)。これにより、図3(g)に示すように変化する位置カウンタPに応じて、図3(h)に示すようにストロークカウンタSは変化する。
なお、上記学習値Prは、コントロールシャフト16をその移動範囲における変位端まで変位させたときの位置カウンタPのカウンタ値であり、ブラシレスモータ47の回転角検出に際しての基準位置となる値であって、所定の条件下で学習が行われてモータ用制御装置50のEEPROM58に記憶される。そして、このようにして得られる学習値Prの正負を反転した値を位置カウンタPのカウンタ値に加算して得られる値であるストロークカウンタSのカウンタ値は、コントロールシャフト16が最大限に変位された状態を基準とする同シャフト16の軸方向位置を表すものになる。このことは、言い換えれば、ストロークカウンタSのカウンタ値は、コントロールシャフト16をその移動範囲における変位端まで変位させたときのブラシレスモータ47の回転位置を基準とした同ブラシレスモータ47の回転角についてその絶対位置を表すものになる。
モータ用制御装置50は、上記ストロークカウンタSのカウンタ値に基づき、ブラシレスモータ47の回転角を検出する。そして、このモータ用制御装置50は、可変動弁機構14を駆動して吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角といったバルブ特性を制御する際、上記のように検出されたブラシレスモータ47の回転角が、エンジン用制御装置51によって指示された目標バルブ特性に対応する回転角となるようにブラシレスモータ47を駆動する。これにより、吸気バルブ9のバルブ特性は、目標とする特性に向けて精密に制御される。なお、上記可変動弁機構14によるバルブ特性の変更に際しては、吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角が同期して変化する。従って、本実施形態では、目標バルブ特性として作用角の目標値を設定するようにしているが、最大リフト量の目標値を設定するようにしてもよい。
ところで、モータ用制御装置50に電力を供給する電力線等の一時的な接触不良等により、同モータ用制御装置50に供給される電圧が一時的に低下する、いわゆる瞬断が発生すると、同モータ用制御装置50はブラシレスモータ47の駆動制御を行うことができなくなる。このようにブラシレスモータ47の駆動制御を行うことができないときにエンジン1が稼働していると、機械的ながたつきや吸気バルブ9を付勢するバルブスプリング24からの反力等に起因して可変動弁機構14の可動部である上記入力アーム17や出力アーム18、あるいはコントロールシャフト16が移動する。そして、それら可動部の移動に伴ってバルブ特性の実値(実際の値)、換言すればブラシレスモータ47の回転角は変化することがある。
ここで、上記瞬断による電圧低下が発生すると、それまでに計数された位置カウンタPのカウンタ値、すなわちブラシレスモータ47の回転角についてその変化履歴が反映された値がRAM57から消失してしまう。また、電圧低下中には、位置カウンタPの計数そのものが不可能になるため、上述したように電圧低下中にバルブ特性の実値が変化しても、換言すればブラシレスモータ47の回転角が変化してもそうした変化を検出することができなくなる。従って、その後、モータ用制御装置50に対して電圧が復帰することで位置カウンタPの計数を再開することができるようになっても、電圧復帰後の位置カウンタPには、瞬断の発生前までにおける回転角の変化履歴及び電圧低下中の回転角変化が反映されない。そのため、モータ用制御装置50に対して電圧が復帰した後に検出されるバルブ特性は実値からずれてしまっており、同バルブ特性を正確に検出することができない。
そこで、モータ用制御装置50は、瞬断によって消失された位置カウンタPが、電圧復帰時において、ブラシレスモータ47の実際の回転角に対応した値となるように復元する処理を行う。
はじめに、瞬断の発生時点から電圧が復帰する時点までの間、すなわち電圧低下中に変化した回転角の算出と電圧復帰時の位置カウンタPの復元とについて、その概要を、図6示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、同図6では、位置カウンタPのカウンタ値が例えば「29」であるときに瞬断が発生し、瞬断による電圧低下中において、モータの回転角が逆回転方向(図中左側)に、例えば図6にあって矢印aで示される変化量「−13」だけ変化したことにより、電圧復帰時において実際の回転角は「16」になっている場合を例に挙げて説明する。
こうした場合には、以下に示す[1]及び[2]の処理が行われることにより、電圧低下中に変化した回転角の算出及び位置カウンタPの復元が行われる。
[1]瞬断の発生直前における電気角カウンタEのカウンタ値である瞬断時電気角カウンタEs、及びその瞬断発生後の最初の電圧復帰時における電気角カウンタEのカウンタ値である電圧復帰時電気角カウンタErに基づき、電圧低下中におけるバルブ特性の実値の変化量を位置カウンタPのカウンタ値の変化に置き換えた変化量相当値Xを算出する。なお、ここで用いられる電圧復帰時電気角カウンタErについては、電圧が復帰した時点で直ちに得ることができる。これは、電気角カウンタEのカウンタ値は電気角センサS1〜S3の出力パターンに応じて変化するものであって、電圧復帰直後であっても上記出力パターンに応じて直ちに決定されるためである。
[2]モータ用制御装置50への電圧復帰時に上記変化量相当値X(同図6に示した一例では「13」)が算出された後、瞬断の発生直前における位置カウンタPのカウンタ値である瞬断時位置カウンタPs(「29」)から変化量相当値X(「13」)を減算した値(「16」)を、電圧復帰直後の位置カウンタPのカウンタ値として設定する。
こうした[1]及び[2]の処理が実行されることで、電圧復帰時の位置カウンタPは、電圧復帰時におけるブラシレスモータ47の実際の回転角に対応した値となり、電圧復帰時のバルブ特性の実値に合わせて復元される。そして、その復元された位置カウンタPに対して各位置センサS4,S5の信号に基づいたカウンタ値の増減が行われることにより、電圧復帰後においても、ブラシレスモータ47の実際の回転角に対応した位置カウンタPの算出を行うことができ、これによりバルブ特性の検出も、その実値の変化に合わせて正確に行われるようになる。
上記変化量相当値Xは、次式(1)に基づいて算出される。
X=(Es−Er)・n+(Psをnで割った余り) …(1)
この式(1)で用いられる「n」は、電気角センサS1〜S3からのパルス信号のエッジ間において位置センサS4,S5から出力されるパルス信号のエッジ数を表しており、この実施形態では「4」になっている。そして、式(1)の「(Es−Er)・4」という項は、瞬断の発生直前における電気角カウンタEのカウンタ値(瞬断時電気角カウンタEs)と、その後の最初の電圧復帰時における電気角カウンタEのカウンタ値(電圧復帰時電気角カウンタEs)との差分を、位置カウンタPのカウンタ値の変化に置き換えた値になる。なお、上記瞬断時位置カウンタPsが電気角センサS1〜S3からのパルス信号のエッジ発生時の値、例えば「28」という値になっていれば、「(Es−Er)・4」という項をそのまま変化量相当値Xとして用いることが可能である。
一方、瞬断時位置カウンタPsが電気角センサS1〜S3からのパルス信号のエッジ発生時の値(「28」等)でない場合、その値からのずれ分だけ「(Es−Er)・4」という項も正確な変化量相当値Xからずれた状態になる。例えば、先の図6に示した一例のように、瞬断時位置カウンタPsが「29」である場合、「(Es−Er)・4」という項は、「28」からの瞬断時位置カウンタPsのずれ分である「1」だけ正確な変化量相当値Xからずれた状態になる。この正確な変化量相当値Xからの「(Es−Er)・4」という項のずれ分は、瞬断時位置カウンタPsを上記エッジ数nである「4」で割った余りと一致する。従って、上記式(1)に示されるように、「(Es−Er)・4」という項に上記余りを加算して変化量相当値Xを算出することで、当該変化量相当値Xを正確に求めることができる。
次に、[1]及び[2]の処理を行う位置カウンタ復元処理について、その処理手順を図7に示す。なお、この位置カウンタ復元処理は、瞬断発生後、モータ用制御装置50に対して電圧が復帰した時点で実行される。
本処理が開始されると、まず、上記通信線60を介してエンジン用制御装置51から、上記瞬断時位置カウンタPs及び瞬断時電気角カウンタEsを受信する(S200)。これら瞬断時位置カウンタPs及び瞬断時電気角カウンタEsは、瞬断の発生直前にモータ用制御装置50からエンジン用制御装置51に対して送信された位置カウンタP及び電気角カウンタEの各カウンタ値であって、同エンジン用制御装置51のRAM59に記憶されていた値が、モータ用制御装置50に読み込まれる。
そして、瞬断時位置カウンタPs、瞬断時電気角カウンタEs、及び上記電圧復帰時電気角カウンタErに基づき、上記[1]の処理による変化量相当値Xの算出(S210)、及び上記[2]の処理による位置カウンタPの復元(S220)が順次行われて、本処理は終了される。
こうした位置カウンタ復元処理が行われることにより、モータ用制御装置50に対する電圧低下の発生、及びその電圧低下中におけるバルブ特性の実値変化が起きたとしても、電圧復帰後におけるバルブ特性の検出は正確に行われる。
ところで、ブラシレスモータ47の通電相を切り換えるために算出される電気角カウンタEのカウンタ値は、上述したように周期的に変更される値である。すなわち「0」→「1」→「2」→「3」→「4」→「5」といった順に周期的に変更される値である。そのため、上記位置カウンタ復元処理において、電圧復帰時に得られる電圧復帰時電気角カウンタErのカウンタ値は、瞬断の発生直前に検出された瞬断時電気角カウンタEsから1周期以内のカウンタ値である場合と、1周期を超えた後のカウンタ値である場合とがあり、後者の場合には、上記変化量相当値Xが誤って算出されてしまう。このように変化量相当値Xが誤って算出されてしまうと、電圧復帰時に算出される位置カウンタPも誤って算出されてしまい、その電圧復帰後に検出される回転角は実際の回転角からずれてしまうようになるため、検出されるバルブ特性も実値からずれてしまう。
そこで、本実施形態では、エンジン1の稼働中にあって、モータ用制御装置50に対し電圧低下が発生している時間(電圧低下時間)を計測することで、バルブ特性の実値が変化する可能性があるにもかかわらず、そうした実値の変化を検出することができない状態になっている時間を計測するようにしている。そしてその計測される時間が、上記電気角カウンタが1周期分変化するのに要する時間(以下、1周期時間という)に相当する判定時間を超える場合には、モータ用制御装置50への電圧復帰後において検出されるバルブ特性がその実値からずれる状態にあると判定するようにしている。そして、そのようにずれてしまうと判定されるときには、モータ用制御装置50への電圧復帰がなされた後で上記学習値Prを学習することにより、その学習以降に検出されるバルブ特性が実値と一致するようにしている。
ここで、モータ用制御装置50に対する電圧低下中にあって、電気角カウンタEの1周期時間は、その電圧低下中のバルブ特性の実値変化速度(単位時間当たりの実値変化量)に応じて変化する。そこで、そうした電圧低下中において、バルブ特性の実値変化速度が高くなると判断することができるとき、すなわち電気角カウンタの1周期時間が短くなると判断することができるときには、上記判定時間を短くするようにしている。このように判定時間を可変設定することにより、電気角カウンタの1周期時間が変化しても、その変化に合わせて同判定時間は適切に設定され、これによりずれの判定に要する時間を適切に設定することも可能になる。
また、上記判定値の可変設定は、次のようにして行うようにしている。すなわち、モータ用制御装置50に対する電圧低下中において、バルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化するときには、そうでないときと比較して、すなわちバルブ特性の実値が不規則に変化するときと比較して、実値の変化傾向には方向性があるため、その実値変化速度は速くなる。そこで、バルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化するときには、そうでないときと比較して、上記判定時間を短くするようにしており、これによりバルブ特性の実値変化の態様に合わせてずれの判定に要する時間が適切に設定される。
以下、上述した処理を行うずれ判定処理について説明する。
図8に、そのずれ判定処理の手順を示す。なお、このずれ判定処理は、エンジン用制御装置51によって所定周期毎に繰り返し実行される。また、この処理は、前記判定手段を構成する。
本処理が開始されるとまず、現在の機関回転速度NEが予め設定された判定値A以上となっているか否かが判定される(S300)。この判定値Aとしては、エンジン1が稼働していることを判定することのできる値が適宜設定されている。
そして、機関回転速度NEが判定値Aに満たない場合には(S300:NO)、エンジン1が稼働していないと判定されて、本処理は一旦終了される。
一方、機関回転速度NEが判定値A以上である場合には(S300:YES)、モータ用制御装置50において電圧低下が発生しているか否かが判定される(S310)。ここでは、以下のようにして電圧低下の発生が判定される。
すなわち、モータ用制御装置50とエンジン用制御装置51とは上記通信線60を介して相互通信を行うようにしている。ここで、モータ用制御装置50への電力供給が行われていないときには、モータ用制御装置50からエンジン用制御装置51への通信が途絶するため、それらの相互通信の途絶をもってモータ用制御装置50に対する電圧低下が発生していると判定することができる。そこで、相互通信が途絶していることを示す通信途絶フラグTFが用意されており、エンジン用制御装置51は、相互通信がなされている場合に、この通信途絶フラグTFを「OFF」にする一方、相互通信が途絶しているときには同通信途絶フラグTFを「ON」にする。そして、ステップS310において、通信途絶フラグTFが「ON」となっている場合には、モータ用制御装置50に対して電圧低下が発生していると判定される。ちなみに、エンジン用制御装置51は、通信途絶フラグTFが「ON」から「OFF」に変更されると、モータ用制御装置50に対して電圧が復帰したと判断する。
このステップS310にて、電圧低下が発生していないと判定される場合には(S310:NO)、後述する瞬断カウンタCが「0」にリセットされて(S400)、本処理は一旦終了される。
一方、ステップS310にて、電圧低下が発生していると判定される場合には(S310:YES)、瞬断カウンタCの値が更新される(S320)。この瞬断カウンタCの初期値は「0」であり、ステップS310にて肯定判定されるたびに、その値は増分値i(例えば「1」など)ずつ増大される。従って、この瞬断カウンタCの値は、エンジン1の稼働中にあって、モータ用制御装置50に対し電圧低下が発生している時間(電圧低下時間)を示すものになる。換言すれば、バルブ特性の実値が変化する可能性があるにもかかわらず、そうした実値の変化を検出することができない状態になっている時間を示す値になっている。
次に、電圧低下の発生直前に目標バルブ特性が、換言すれば目標作用角が変更されていたか否かが判定される(S330)。このステップS320の判定処理は、次の理由に基づき行われる。
すなわち、電圧低下の発生直前に目標バルブ特性が変更されていたときには、その発生直前においてバルブ特性を変更するために可変動弁機構14が駆動されていたことになる。このように可変動弁機構14が駆動されている最中に、モータ用制御装置50に対して電圧低下が発生したときには、その発生と同時に可変動弁機構14の可動部(入力アーム17、出力アーム18、コントロールシャフト16等)やブラシレスモータ47内のロータが直ちに停止するわけではない。すなわち、その電圧低下の発生後、可動部やロータの慣性が消えるまでは、それら可動部やロータは動き続ける。そのため、電圧低下の発生直前において目標バルブ特性が変更されていたときには、その変更された目標値の方向に向けて電圧低下中のバルブ特性の実値は変化する、すなわちバルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化すると判断することができる。例えば、電圧低下の発生直前において目標作用角が小さくなるように変更されていたときには、電圧低下中のバルブ特性の実値は作用角が小さくなる方向に向けて変化する。そこで、ステップS330では、電圧低下の発生直前において目標バルブ特性が変更されていたか否かを判定することで、電圧低下中におけるバルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化すると判定するようにしており、これにより、電圧低下中においてバルブ特性の実値が特定の方向性を持って変化するか否かが適切に判定される。
そしてステップS330において、電圧低下の発生直前に目標バルブ特性が変更されていないと判定される場合には(S330:NO)、上記判定時間、ここでは電気角カウンタEの1周期時間に相当するずれ判定値Zとして、第1のずれ判定値Zaが設定される(S340)。
一方、ステップS330において、電圧低下の発生直前に目標バルブ特性が変更されていたと判定される場合には(S330:YES)、電圧低下中におけるバルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化すると判断することができる。そのため、上記第1のずれ判定値Zaよりも小さい値に設定されている第2のずれ判定値Zbがずれ判定値Zとして設定される(S350)。なお、上記ステップS330〜ステップS350の処理は、上記判定時間変更手段を構成する。
こうしてずれ判定値Zが設定されると、次に、瞬断カウンタCがずれ判定値Zを超えているか否かが判定される(S360)。そして、瞬断カウンタCがずれ判定値Z以下である場合には(S360:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、瞬断カウンタCがずれ判定値Zを超えている場合には(S360:YES)、電気角カウンタEの1周期時間よりも電圧低下時間が長くなっているため、モータ用制御装置50への電圧復帰時に上記位置カウンタ復元処理を行っても、バルブ特性を正確に検出することができず、電圧復帰後に検出されるバルブ特性は実値からずれると判断される。そのため、ずれ判定フラグFZが「OFF」から「ON」に変更される(S370)。そしてこのようにずれ判定フラグFZが「ON」に設定されると、上記位置カウンタ復元処理の実行禁止指令がモータ用制御装置50に送信されるとともに(S380)、上記学習値Prを学習させるための学習要求もモータ用制御装置50に送信されて(S390)、本処理は終了される。
なお、上記ステップS390にて、モータ用制御装置50に対し、学習要求が出力されると、同モータ用制御装置50は、電圧が復帰した後、図9に示す基準位置学習処理を実行する。この基準位置学習処理では、上記学習要求がある場合に(S500:YES)、コントロールシャフト16が変位端に向けて変位される(S510)。より詳細には、吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角が最大となる変位端に向けてコントロールシャフト16が変位される。そして、コントロールシャフト16が変位端に達すると(S420:YES)、そのときの位置カウンタPのカウンタ値が上記学習値Prとして記憶され(S530)、本処理は終了される。このようにモータ用制御装置50への電圧復帰時に位置カウンタPのカウンタ値を正確に復元することができないときには、コントロールシャフト16の基準位置を示す学習値Prの学習が行われることにより、この学習以降に検出されるバルブ特性がその実値と一致するようになり、これにより検出されるバルブ特性と実値とのずれが修正される。ちなみに、上記ステップS510では、吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角が大きくなる側の変位端に向けてコントロールシャフト16が変位されるため、このままではエンジン1の吸入空気量が増大してしまう。そこで、この基準位置学習処理の実行中においては、吸気通路に設けられたスロットルバルブ(図示略)の開度が調整されることにより、エンジン1の吸入空気量は機関運転状態に応じたものに調量される。
図10に、機関回転速度NEが上記判定値A以上となっており、エンジン1が稼働中となっている状態において、上記ずれ判定処理が実行されたときの一例を示す。
この図10に示すように、例えば、機関運転状態が変化して目標バルブ特性である目標作用角が小さくされると(時刻t1)、ブラシレスモータ47の回転状態は、停止状態から正回転状態に変更される。このときには、ブラシレスモータ47の駆動デューティDが、保持デューティDHよりも大きいデューティに変更される。こうしたブラシレスモータ47の駆動制御により、作用角の実値は、目標作用角の変化に合わせて小さくなっていく。
そして、時刻t2において、モータ用制御装置50に対して瞬断が発生し、供給される電圧が低下すると、ブラシレスモータ47の駆動デューティDは「0」になる。ここで、目標作用角が変更されていた直後に電圧低下が発生したときには、その発生と同時に可変動弁機構14の可動部やブラシレスモータ47内のロータは直ちに停止するわけではなく、それらの慣性が消えるまでは動き続ける。そのため、瞬断の発生後も作用角の実値は小さくなる方向に変化し続け、可動部やロータの慣性が消失した時点で、作用角の実値の変化は停止する(時刻t4)。
他方、上記時刻t2において、モータ用制御装置50に対する電圧低下が発生すると、上記通信途絶フラグTFは、「OFF」から「ON」に変更されて、エンジン用制御装置51では、モータ用制御装置50の電圧低下が検出され、瞬断カウンタCの計測が開始される。
そして、瞬断カウンタCが上記ずれ判定値Zを超えると(時刻t3)、ずれ判定フラグFZは「OFF」から「ON」に変更される。ここで、電圧低下の発生直前に目標作用角が変更されていたため、モータ用制御装置50に対する電圧低下中にあって、その電圧低下中のバルブ特性の実値変化速度は高くなり、電気角カウンタの1周期時間は短くなる。こうした1周期時間の変化に合わせて、上記ずれ判定値Zには、第1のずれ判定値Zaよりも小さい第2のずれ判定値Zbが設定される。そのため、ずれ判定値Zとして第1のずれ判定値Zaが設定される場合と比較して、より早い時期に瞬断カウンタCはずれ判定値Zを超えるようになり、これにより1周期時間の短縮に合わせてずれ判定フラグFZの「ON」設定もより早期に行われる。
そして、モータ用制御装置50に対し電圧が復帰すると(時刻t5)、ずれ判定フラグFZが「ON」になっているため、同モータ用制御装置50によって上記基準位置学習処理が実行される。
なお、図10では、吸気バルブ9の作用角が小さくなるように目標バルブ特性が変更されていた場合を例に挙げたが、作用角が大きくなるように目標バルブ特性が変更されていた場合も同様な原理に基づいてずれ判定フラグFZは設定される。
以上説明した本実施形態によれば、次の効果を得ることができるようになる。
(1)エンジン1の稼働中にあってモータ用制御装置50に対する電圧低下時間を計測するようにしており、これによりバルブ特性の実値が変化する可能性があるにもかかわらず、そうした実値の変化を検出することができない状態になっている時間を計測するようにしている。そして、その計測される時間が所定の判定時間を超えたときには、モータ用制御装置50への電圧復帰後に検出されるバルブ特性が実値からずれる状態にあると判定するようにしている。従って、各位置センサS4,S5からのパルス信号を計数した位置カウンタPのカウンタ値に基づいてバルブ特性を検出する場合にあって、検出されるバルブ特性が実値からからずれる状態を好適に判定することができるようになる。
(2)モータ用制御装置50に対する電圧低下中において、バルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化するときには、そうでないときと比較して、すなわちバルブ特性の実値が不規則に変化するときと比較して、実値の変化傾向には方向性があるため、実値変化速度は速くなり、実値の変化量がある程度にまで大きくなる時間は短くなる。従って、バルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化するときには、そうでないときと比較して、上記判定時間を短くすることが可能であり、これによりずれの発生をより早期に検出することも可能になる。こうした点を考慮し、電圧低下中においてバルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化するときには、そうでないときと比較して、上記判定時間を短くするようにしており、これにより、バルブ特性の実値変化の態様に合わせてずれの判定に要する時間を適切に設定することができるようになる。
(3)電圧低下の発生直前においてバルブ特性の目標値が変更されていたときに、電圧低下中におけるバルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化すると判定するようにしている。これにより、電圧低下中においてバルブ特性の実値が特定の方向性を持って変化するか否かを適切に判定することができるようになる。
(4)モータ用制御装置50とエンジン用制御装置51とを通信線60で接続し、相互通信させるようにしている。そして、その相互通信が途絶している場合に、モータ用制御装置50に対する電圧低下が発生していると判定するようにしている。従って、モータ用制御装置50への電力供給状態を適切に判定することができるようになる。
(5)モータ用制御装置50に対する電圧低下の発生直前における電気角カウンタのカウンタ値Es、及び電圧復帰時における電気角カウンタEのカウンタ値Erに基づき、バルブ特性の実値の変化量を上記位置カウンタPのカウンタ値の変化に置き換えた値である変化量相当値Xを算出する位置カウンタ復元処理を行うようにしている。従って、その電圧低下中に変化したバルブ特性の実値に対応する位置カウンタPの変化量を求めることができるようになる。
(6)上記位置カウンタ復元処理で算出される変化量相当値Xは、上記式(1):「X=(Es−Er)・n+(Pgをnで割った余り)」という式に基づき算出される。この式(1)の「(Es−Er)・4」という項は、瞬断の発生直前における電気角カウンタEのカウンタ値(瞬断時電気角カウンタEs)と、その後の最初の電圧復帰時における電気角カウンタEのカウンタ値(電圧復帰時電気角カウンタEs)との差分を、位置カウンタPのカウンタ値の変化に置き換えた値になる。ここで、電圧低下の発生直前における位置カウンタPのカウンタ値(瞬断時位置カウンタPs)が電気角センサS1〜S3からのパルス信号のエッジ発生時の値でない場合、その値からのずれ分だけ「(Es−Er)・4」という項も正確な変化量相当値Xからずれた状態になる。この正確な変化量相当値Xからの「(Es−Er)・4」という項のずれ分は、上記瞬断時位置カウンタPsを上記エッジ数n(=4)で割った余りと一致する。従って、上記式(1)に示されるように、「(Es−Er)・4」という項に上記余りを加算して変化量相当値Xを算出することで、当該変化量相当値Xを正確に求めることができるようになる。
(7)上記位置カウンタ復元処理では、モータ用制御装置50に対する電圧低下の発生直前における電気角カウンタEのカウンタ値、及び電圧復帰時における電気角カウンタEのカウンタ値に基づいて上記変化量相当値Xを算出するようにしている。ここで、ブラシレスモータ47の通電相を切り換えるために算出される電気角カウンタEのカウンタ値は周期的に変更される値である。そのため、電圧復帰時に得られた電気角カウンタEのカウンタ値は、電圧低下の発生直前の電気角カウンタEのカウンタ値から1周期以内のカウンタ値である場合と、1周期を超えた後のカウンタ値である場合とがあり、後者の場合には、上記変化量相当値Xが誤って算出されてしまう。
この点、本実施形態では、上記ずれ判定処理における判定時間を、電気角カウンタEが1周期分変化するのに要する時間に設定するようにしている。そのため、電圧復帰時に得られた電気角カウンタEのカウンタ値が、電圧低下の発生直前における電気角カウンタEのカウンタ値から1周期以内のカウンタ値である場合には、上記位置カウンタ復元処理によって、電圧低下中に変化したバルブ特性の実値に対応する位置カウンタPの変化量が適切に求められる。一方、電圧復帰時に得られた電気角カウンタEのカウンタ値が、電圧低下の発生直前における電気角カウンタEのカウンタ値から1周期を超えた後のカウンタ値である場合には、電圧低下中の上記位置カウンタPの変化量を求めることができず、検出されるバルブ特性が実値からずれる状態にあることが上記ずれ判定処理によって判定される。従って、位置カウンタ復元処理による上記変化量相当値Xの算出が適切に行えず、検出されるバルブ特性が実値からずれる場合に、そうしたずれの発生を適切に検出することができるようになる。
また、モータ用制御装置50に対する電圧低下中にあって、電気角カウンタEが1周期分変化するのに要する時間は、その電圧低下中のバルブ特性の実値変化速度に応じて変化する。この点、本実施形態では、モータ用制御装置50に対する電圧低下中において、バルブ特性の実値変化速度が高くなるとき、換言すれば電気角カウンタEが1周期分変化するのに要する時間が短くなるときには、上記判定時間が短くされる。そのため、電気角カウンタEが1周期分変化するのに要する時間が変化しても、その変化に合わせて上記判定時間も適切に設定され、これによりずれの判定に要する時間を適切に設定することも可能になる。
(8)上記変化量相当値Xを求めることで、電圧低下中の位置カウンタPの変化量、すなわち電圧低下中のバルブ特性の実値変化量を求めることができる。そこで、本実施形態では、電圧低下の発生直前に検出された位置カウンタPのカウンタ値(瞬断時位置カウンタPs)をエンジン用制御装置51のRAM59に記憶するようにしている。そして、モータ用制御装置50への電圧復帰時においては、その記憶しておいた瞬断時位置カウンタPsのカウンタ値と上記変化量相当値Xとに基づき、電圧復帰時における位置カウンタPのカウンタ値を復元するようにしている。これにより、電圧復帰時の位置カウンタPのカウンタ値を、その電圧復帰時のバルブ特性の実値に合わせて復元することができるようになり、電圧の復帰後においてもバルブ特性の検出を正確に行うことが可能になる。
(9)上記モータ用制御装置50への電力復帰後に検出されるバルブ特性が実値からずれる状態にあると判定された場合には、次の処理を行うようにしている。すなわち、ブラシレスモータ47を駆動して同モータの回転角を上記所定の回転角範囲の端まで変化させ、そのときの位置カウンタPのカウンタ値を基準位置として記憶する基準位置学習を、モータ用制御装置50への電力供給が復帰した後に行うようにしている。これにより、検出される回転角と実際の回転角とのずれを修正することができるようになる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、モータ用制御装置50に対する電圧低下中において、バルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化する否かを、同電圧低下の発生直前においてバルブ特性の目標値が変更されていたか否かに基づいて判定するようにした。一方、本実施形態では、ブラシレスモータ47の電力供給量に基づいてそうした判定を行うようにしており、この点のみが第1実施形態とは異なっている。そこで以下では、その相違点を中心に、本実施形態にかかる制御装置を説明する。
先の図10に示すように、モータ用制御装置50に対する電圧低下の発生直前に、ブラシレスモータ47への電力供給量が変更されていたとき、換言すれば駆動デューティDが変更されていたときには、その発生直前においてバルブ特性を変更するために可変動弁機構14は駆動されていたことになる。このように可変動弁機構14が駆動されている最中に、モータ用制御装置50に対して電圧低下が発生したときには、上述したように、その電圧低下の発生後、可変動弁機構14の可動部やブラシレスモータ47のロータはそれらの慣性が消えるまで動き続ける。そのため、電圧低下の発生直前においてブラシレスモータ47への電力供給量が変更されていたときには、電圧低下の発生直前に駆動されていた可変動弁機構14の駆動方向に向けて電圧低下中のバルブ特性の実値は変化し、当該実値は特定の方向性をもって変化すると判断することができる。そこで、本実施形態では、モータ用制御装置50に対する電圧低下の発生直前において、駆動デューティDが変更されていたときに、その電圧低下中におけるバルブ特性の実値は特定の方向性をもって変化すると判定するようにしている。
この第2実施形態は、先の図8に示したステップS330の処理を、図11に示すステップS600の処理に変更することで実施される。
すなわち、機関回転速度NEが判定値A以上であって(図8のS300:YES)、モータ用制御装置50において電圧低下が発生しており(図8のS310:YES)、瞬断カウンタCの更新が行われると(図8のS320)、電圧低下の発生直前に駆動デューティDが変更されていたか否かが判定される(図11のS600)。このステップS600では、電圧低下の発生直前における駆動デューティDが保持デューティDHとは異なる値になっていた場合に、駆動デューティDが変更されていたと判定される。
そして、ステップS600にて、駆動デューティDが変更されていないと判定される場合には(S600:NO)、上記ずれ判定値Zとして上記第1のずれ判定値Zaが設定される(S340)。一方、ステップS600にて、駆動デューティDが変更されていると判定される場合には(S600:YES)、上記ずれ判定値Zとして上記第2のずれ判定値Zaが設定される(S350)。こうしてずれ判定値Zが設定されると、先の図8に示したステップS360以降の処理が行われる。
このようにして実施される第2実施形態によっても、電圧低下中においてバルブ特性の実値が特定の方向性を持って変化するか否かを適切に判定することができるようになる。(第3実施形態)
上記第1実施形態では、モータ用制御装置50に対する電圧低下中において、バルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化する否かを、同電圧低下の発生直前においてバルブ特性の目標値が変更されていたか否かに基づいて判定するようにした。一方、本実施形態では、電圧低下の発生直前における機関回転速度NEに基づいてそうした判定を行うようにしており、この点のみが第1実施形態とは異なっている。そこで以下では、その相違点を中心に、本実施形態にかかる制御装置を説明する。
上述したように、エンジン1の稼働中にあってブラシレスモータ47の駆動制御ができないときには、吸気バルブ9を付勢するバルブスプリング24からの反力に起因して可変動弁機構14の可動部が移動し、この可動部の移動に伴ってバルブ特性の実値は変化することがある。ここで、機関回転速度が比較的高い領域にあるときには、可変動弁機構14に作用するバルブスプリングの反力についてその単位時間当たりの作用回数が増大する等の理由により、その反力によって移動する上記可動部の移動方向に向けて上記バルブ特性の実値は変化しやすくなる。例えば、上記可変動弁機構14においては、上記入力アーム17と上記出力アーム18とがその揺動方向について互いに接近するようになり、最大リフト量や作用角はともに小さくなる方向に変化しやすくなる。そのため、電圧低下の発生直前における機関回転速度が比較的高い領域にあったときには、バルブスプリング24の反力よって移動する上記可動部の移動方向に向けて電圧低下中のバルブ特性の実値は変化し、当該実値は特定の方向性をもって変化すると判断することができる。そこで、本実施形態では、電圧低下の発生直前における機関回転速度NEが所定の回転速度判定値Bよりも高い速度領域にあったときに、電圧低下中におけるバルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化すると判定するようにしている。
この第3実施形態は、先の図8に示したステップS330の処理を、図12に示すステップS700の処理に変更することで実施される。
すなわち、機関回転速度NEが判定値A以上であって(図8のS300:YES)、モータ用制御装置50において電圧低下が発生しており(図8のS310:YES)、瞬断カウンタCの更新が行われると(図8のS320)、電圧低下の発生直前における機関回転速度NEが回転速度判定値B以上であったか否かが判定される(図12のS700)。この回転速度判定値Bには、モータ用制御装置50に対する電圧低下中に、バルブ特性の実値が上述した方向性をもって変化するような機関回転速度が予め設定されている。
そして、ステップS700にて、機関回転速度NEが回転速度判定値B未満であると判定される場合には(S700:NO)、上記ずれ判定値Zとして上記第1のずれ判定値Zaが設定される(S340)。一方、ステップS700にて、機関回転速度NEが回転速度判定値B以上であると判定される場合には(S700:YES)、電圧低下の発生直前における機関回転速度が、上述したような比較的高い領域にあったと判定され、上記ずれ判定値Zとして上記第2のずれ判定値Zaが設定される(S350)。こうしてずれ判定値Zが設定されると、先の図8に示したステップS360以降の処理が行われる。
このようにして実施される第3実施形態によっても、電圧低下中においてバルブ特性の実値が特定の方向性を持って変化するか否かを適切に判定することができるようになる。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・バルブ特性の目標値について、モータ用制御装置50に対する電圧低下の発生直前における変更量が大きいときほど、可変動弁機構14の可動部やブラシレスモータ47のロータについてその駆動量は大きくされており、それらの慣性も大きくなる。従って、バルブ特性の目標値についてその変更量が大きいときほど、上記電圧低下中におけるバルブ特性の実値の変化量は大きくなる。そこで、図13に示すように、第1実施形態で説明した第2のずれ判定値Zbを、同電圧低下の発生直前におけるバルブ特性の目標値の変更量、例えば目標作用角の変更量が大きいほど小さくなるように可変設定するようにしてもよい。換言すれば、モータ用制御装置50に対する電圧復帰後に検出されるバルブ特性が実値からずれる状態にあるか否かを判定する判定時間について、これを電圧低下の発生直前におけるバルブ特性の目標値の変更量が大きいほど短くなるように可変設定するようにしてもよい。この場合には、上記ずれの判定に要する時間をさらに適切に設定することができるようになる。
・ブラシレスモータ47への電力供給量について、モータ用制御装置50に対する電圧低下の発生直前における変更量が大きいときほど、可変動弁機構14の可動部やブラシレスモータ47のロータについてその駆動量は大きくされており、それらの慣性も大きくなる。従って、上記電力供給量の変更量が大きいときほど、電圧低下中におけるバルブ特性の実値の変化量は大きくなる。そこで、図14に示すように、第2の実施形態で説明した第2のずれ判定値Zbを、同電圧低下の発生直前における電力供給量の変更量、例えば駆動デューティDの変更量が大きいほど、小さくなるように可変設定するようにしてもよい。換言すれば、モータ用制御装置50に対する電圧復帰後に検出されるバルブ特性が実値からずれる状態にあるか否かを判定する判定時間について、これを電圧低下の発生直前における電力供給量の変更量が大きいほど短くなるように可変設定するようにしてもよい。この場合にも、上記ずれの判定に要する時間をさらに適切に設定することができるようになる。
・モータ用制御装置50に対する電圧低下の発生直前において、機関回転速度NEが高いときほど、上記反力によって移動する上記可動部の移動量は大きくなる。従って、電圧低下の発生直前における機関回転速度NEが高いときほど、電圧低下中におけるバルブ特性の実値の変化量は大きくなる。そこで、図15に示すように、第3の実施形態で説明した第2のずれ判定値Zbを、同電圧低下の発生直前における機関回転速度NEが高いほど、小さくなるように可変設定するようにしてもよい。換言すれば、モータ用制御装置50に対する電圧復帰後に検出されるバルブ特性が実値からずれる状態にあるか否かを判定する判定時間について、これを電圧低下の発生直前における機関回転速度NEが高いほど短くなるように可変設定するようにしてもよい。この場合にも、上記ずれの判定に要する時間をさらに適切に設定することができるようになる。
・第2実施形態では、モータ用制御装置50に対する電圧低下の発生直前における駆動デューティDが保持デューティDHとは異なる値になっていた場合に、駆動デューティDが変更されていたと判定するようにした。この他、駆動デューティDを常にサンプリングしておき、電圧低下の発生直前に駆動デューティDが変化していたときには、駆動デューティDが変更されていたと判定するようにしてもよい。
・第2実施形態では、ブラシレスモータ47の電力供給量を示す値として、駆動デューティDを用いるようにしたが、この他、ブラシレスモータ47に供給される電圧や電流値を用いるようにしてもよい。
・上記各実施形態では、ずれ判定値Zとして電気角カウンタEの1周期時間に相当する値を設定するようにした。しかし、必ずしもそうした値にする必要はなく、少なくともその1周期時間以上の値を設定するようにすればよい。この場合にも、上記位置カウンタ復元処理の実行によって復元される位置カウンタPのカウンタ値が誤って算出されてしまい、モータ用制御装置50に対する電圧復帰後に検出されるバルブ特性が実値からからずれてしまう状態を判定することが可能である。
・上記各実施形態では、上記位置カウンタ復元処理を行う可変動弁機構の制御装置において上記ずれ判定処理を行う場合について説明したが、同位置カウンタ復元処理を行わない場合にも上記ずれ判定処理は適用可能である。この場合にも、エンジン1の稼働中にあってモータ用制御装置50に対する電圧低下時間が上記瞬断カウンタCによって計測されることにより、バルブ特性の実値が変化する可能性があるにもかかわらず、そうした実値の変化を検出することができない状態になっている時間が計測される。そして、その計測される時間が所定の判定時間、即ち上記ずれ判定値Zを超えたときには、モータ用制御装置50への電圧復帰後に検出されるバルブ特性が実値からずれる状態にあると判定される。従って、この場合にも、各位置センサS4,S4からのパルス信号を計数した位置カウンタPのカウンタ値に基づいてバルブ特性を検出する場合にあって、検出されるバルブ特性が実値からからずれる状態を好適に判定することができる。
また、モータ用制御装置50に対する電圧低下中において、バルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化するときには、そうでないときと比較して、すなわちバルブ特性の実値が不規則に変化するときと比較して、実値の変化傾向には方向性があるため、実値変化速度は速くなり、実値の変化量がある程度にまで大きくなる時間は短くなる。従って、バルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化するときには、そうでないときと比較して、上記判定時間を短くすることが可能であり、これによりずれの発生をより早期に検出することも可能になる。この点、上記ずれ判定処理では、そうした電圧低下中においてバルブ特性の実値が特定の方向性をもって変化するときには、そうでないときと比較して、上記判定時間が短くされるため、これによりバルブ特性の実値変化の態様に合わせてずれの判定に要する時間を適切に設定することができるようになる。なお、この場合にあっては、上記判定時間に相当する上記第1のずれ判定値Za及び第2のずれ判定値Zbは、電気角カウンタEの1周期時間に相当する時間とは異なる値、例えばモータ用制御装置50への電圧復帰後に検出されるバルブ特性が実値からずれる状態にあると判定するのに適した時間に相当する値が設定される。
なお、このように位置カウンタ算出処理を行わない場合には、ブラシレスモータ47以外のモータで駆動される可変動弁機構の制御装置においても、上記ずれ判定処理を実施することができる。
・上記ずれ判定処理をエンジン用制御装置51で行うようにしたが、ずれ判定処理専用の演算装置を設けるようにしてもよい。
・モータ用制御装置50に対する電圧低下時間を瞬断カウンタCで計測するようにしたが、この他の方法でそうした時間を計測するようにしてもよい。例えば、タイマなどを使用して電圧低下時間を実際に計測し、その計測された時間を上記ずれ判定値Zに相当する判定時間と比較するようにしてもよい。
・モータ用制御装置50に電力が供給されているか否かを、モータ用制御装置50とエンジン用制御装置51との相互通信が途絶しているか否かに基づいて判定するようにしたが、この他の態様で判定するようにしてもよい。
・電気角カウンタEを「0」〜「m」の範囲内の連続した各整数値がカウンタ値として当てはめられるものとし、上記「m」を「5」に設定したが、その値は適宜変更することができる。この場合、電気角センサの数や位置、及び、それら電気角センサの検出対象である多極マグネットの極数が適宜変更される。
・電気角センサS1〜S3からのパルス信号のエッジ間において位置センサS4,S5から出力されるパルス信号のエッジ数nを「4」に設定したが、その値についてはブラシレスモータ47の回転角検出精度を確保し得る位置センサS4,S5からのパルス信号のエッジ間隔に対応する値であればよく、「2」以上の整数値に適宜変更可能である。このようにエッジ数nを変更する際には、位置カウンタの数や位置、及び、それら位置センサの検出対象である多極マグネットの極数が適宜変更される。
・ブラシレスモータ47と一体回転する多極マグネットの磁気に応じてパルス信号を出力する位置センサS4,S5を設ける代わりに、ブラシレスモータ47の回転に伴いパルス信号を出力する他のセンサ、例えば光学式のセンサを設けるようにしてもよい。この場合、ブラシレスモータ47と一体回転するスリット付きの円板の厚さ方向側方にそれぞれ発光素子と受光素子を備える光学式のセンサを周方向に複数設け、ブラシレスモータ47の回転時に当該各センサからパルス信号を出力させるようにしてもよい。また、この場合の各センサからのパルス信号の出力パターンについては、スリット付きの円板におけるスリットのパターン、及び光学式のセンサの数や位置によって調整可能である。
・上記基準位置学習処理において、吸気バルブ9の最大リフト量及び作用角が最小となる変位端に向けてコントロールシャフト16を変位させる。そして、コントロールシャフト16がその変位端に到達したときの位置カウンタPのカウンタ値を学習値Prとして記憶するようにしてもよい。なお、この場合には、エンジン1の吸入空気量が大きく減少して機関運転状態が大きく変化してしまうおそれがあるため、この変形例には、例えば減速時の燃料カット実行中に行うことが望ましい。
・上記実施形態では、可変動弁機構14にて吸気バルブ9のバルブ特性を変更するようにしたが、排気バルブ10のバルブ特性を変更する場合、あるいは吸気バルブ9及び排気バルブ10のバルブ特性を変更する場合にも同様に適用することができる。
・上記実施形態で説明した可変動弁機構14は一例であり、他の構成で吸気バルブ9や排気バルブ10といった機関バルブのバルブ特性(例えば、開時期、閉時期、開弁期間、あるいは最大リフト量等)を可変とする可変動弁機構であっても、本発明は同様に適用することができる。
1…エンジン、2…シリンダヘッド、3…シリンダブロック、5…ピストン、6…燃焼室、7…吸気通路、8…排気通路、9…吸気バルブ、10…排気バルブ、11…吸気カムシャフト、11a…吸気カム、12…排気カムシャフト、12a…排気カム、14…可変動弁機構、15…ロッカシャフト、16…コントロールシャフト、17…入力アーム、18…出力アーム、19…ローラ、20…コイルスプリング、21…ロッカアーム、22…ラッシュアジャスタ、23…ローラ、24…バルブスプリング、47…ブラシレスモータ、48…変換機構、51…エンジン用制御装置、50…モータ用制御装置(制御手段)、52…アクセルセンサ、53…スロットルセンサ、54…エアフロメータ、55…クランク角センサ、56…イグニッションスイッチ、57…RAM、58…EEPROM、59…RAM、60…通信線、70…バッテリ、S1〜S3:電気角センサ、S4,S5:位置センサ。