図8に、従来の高耐圧電力用集積回路のスイッチングデバイス駆動回路の構成を示す。なお、図8に示す構成は、特開2002−352989号公報に開示されている。
図8において、電源PSの正極と負極(接地電位GND)との間に、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などのスイッチングデバイス12および13がトーテムポール接続され、ハーフブリッジ型インバータ回路を構成している。また、スイッチングデバイス12および13には、それぞれ、フリーホイールダイオードD1およびD2が逆並列接続されている。そして、スイッチングデバイス12とスイッチングデバイス13との接続点N1には負荷(モータなどの誘導性負荷)14が接続される構成となっている。
図8において、スイッチングデバイス12はスイッチングデバイス13との接続点N1の電位を基準電位として、この基準電位と電源PSが供給する電源電位との間でスイッチング動作するデバイスであり、高電位側スイッチングデバイスと呼称される。
また、スイッチングデバイス13は接地電位を基準電位として、この基準電位と接続点N1の電位との間でスイッチング動作するデバイスであり、低電位側スイッチングデバイスと呼称される。
従って、図8に示すスイッチングデバイス駆動回路は、高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDと、低電位側スイッチングデバイス駆動回路LDとに区別される。
高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDは、この駆動回路の電源となる高電位側電源10の正極と負極との間に直列接続されたNMOSトランジスタ24および25を有し、NMOSトランジスタ24および25を相補的にオン、オフさせることでスイッチングデバイス12をスイッチングする回路である。なお、高電位側電源10の負極は接続点N1に接続されている。また、NMOSトランジスタ24および25の接続点の電圧を高電位側出力電圧HOとする。
また、NMOSトランジスタ24および25は、外部に設けられたマイクロコンピュータなどから与えられる、接地電位を基準として発生されたHレベルとLレベルを持つデジタルの入力信号S1によって駆動される。高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDは前記入力信号S1と、論理否定ゲート3によって生成された入力信号S1の反転信号がパルス発生回路15に入力される。前記パルス発生回路15は、前記入力信号S1の立ち上がりに応答して1つのパルスを有する第1のパルス状信号を発生させる第1のワンショットパルス発生回路151と、前記入力信号の立ち下がりに応答して1つのパルスを有する第2のパルス状信号を発生させる第2のワンショットパルス発生回路152を有する。
さらに、高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDは、一定周期のクロック信号を発生するクロック信号発生回路16と、前記入力信号S1に基づき、前記クロック信号を第1及び第2の反復パルス信号として分配する反復パルス分配回路17を有する。
前記第1のパルス状信号と前記第1の反復パルス信号との論理和をとった第3の反復パルス信号と、同じく前記第2のパルス状信号と前記第2の反復パルス信号との論理和をとった第4の反復パルス信号はそれぞれ、レベルシフトトランジスタである高耐圧Nチャネル電界効果トランジスタ(HNMOSトランジスタと呼称する)4および5のゲート電極に入力される。
HNMOSトランジスタ4および5のドレイン電極はそれぞれレベルシフト抵抗29および30の一方端に接続されるとともに、論理否定ゲート6および7の入力にも接続される。
そして、論理否定ゲート6および7の出力はフィルタ回路8の入力に接続され、フィルタ回路8の出力はSRラッチ回路回路9のセット端子Sおよびリセット端子Rに接続されている。ここで、フィルタ回路8の一構成例を図9に示す。フィルタ回路8はSRラッチ回路9の誤動作を防止するための回路であり、セット端子Sおよびリセット端子SがともにHとなる信号を除去するように論理ゲートで構成されている。
SRラッチ回路9のQ出力はNMOSトランジスタ24のゲート電極に接続されるとともに、論理否定ゲート23の入力にも接続され、論理否定ゲート23の出力はNMOSトランジスタ25のゲート電極に接続されている。
なお、レベルシフト抵抗29および30の他方端はNMOSトランジスタ24のドレイン電極側、すなわち高電位側フローティング電源10の正極(この電位をVB電位と呼称)に接続されている。また、NMOSトランジスタ24のソース電極、すなわち高電位側フローティング電源10の負極(この電位をVS電位と呼称)は、ダイオード21および22のアノードに接続され、ダイオード21および22のカソードはそれぞれHNMOSトランジスタ4および5のドレイン電極に接続されている。
また、低電位側スイッチングデバイス駆動回路LDは、当該駆動回路の電源となる低電位側電源11の正極(この電位をVCCと呼称)と負極(接地電位)との間に直列に接続されたNMOSトランジスタ27および28を有し、NMOSトランジスタ27および28を相補的にオン、オフさせることでスイッチングデバイス13をスイッチングする回路である。ここで、NMOSトランジスタ27および28の接続点の電圧を低電位側出力電圧LOと呼称し、この低電位側出力電圧LOの電圧変化が制御信号S7となって、スイッチングデバイス13が制御される。なお、NMOSトランジスタ27は、外部から与えられる入力信号S0によって制御され、NMOSトランジスタ28は、入力信号S0をインバータ回路26で反転した信号によって制御されるように構成されている。
次に、図10に示すタイミングチャートを用いて、高耐圧電力用集積回路のスイッチングデバイス駆動回路の動作について説明する。
図10において、外部から与えられる入力信号S1のHレベルが高電位側スイッチングデバイス12をオンさせるオン指令を意味し、前記入力信号S1のLレベルが高電位側スイッチングデバイス12をオフさせるオフ指令を意味するものとする。
クロック信号発生回路16は自励発振であるため、入力信号S1とは非同期の反復パルスS10を出力する。反復パルスS10は次段の反復パルス分配回路17に入力され、反復パルス分配回路17は入力信号S1がHレベル、すなわちオン指令を出力している期間は第1の反復パルス信号S12のような反復パルス列を出力し、第2の反復パルス信号S13はLレベルに固定される。一方、入力信号S1がLレベル、すなわちオフ指令を出力している期間は第2の反復パルス信号S13のような反復パルス列を出力し、第1の反復パルス信号S12はLレベルに固定される。
また、入力信号S1の立ち上がりに同期して、第1のワンショットパルス発生回路151から第1のパルス状信号S22のような単一のパルスが出力される。同様に入力信号S1の立ち下がりに同期して、第2のワンショットパルス発生回路から第2のパルス状信号S23のような単一のパルスが出力される。
そして、前記第1のパルス状信号S22と前記第1の反復パルス信号S12の論理和をとった信号である第3の反復パルス信号S2が、論理和ゲート31からオン信号としてHNMOSトランジスタ4のゲート電極に入力され、HNMOSトランジスタ4を駆動する。同様に、前記第2のパルス状信号S23と前記第2の反復パルス信号S13の論理和をとった信号である第4の反復パルス信号S3が、論理和ゲート32からオフ信号としてHNMOSトランジスタ5のゲート電極に入力され、HNMOSトランジスタ5を駆動する。
なお、第1のワンショットパルス発生回路151の出力信号である第1のパルス状信号S22のパルスの立ち上がりは入力信号S1に同期して与えられる。そのため出力信号S22と出力信号S12との論理和となる第3の反復パルス信号S2(オン信号)は、入力信号S1の各周期において、最初のパルスの立ち上がりが必ず入力信号S1の立ち上がりに同期している。同様に、第2のワンショットパルス発生回路152の出力信号である第2のパルス状信号S23のパルスの立ち上がりは、入力信号S1に同期して与えられる。そのため出力信号S23と出力信号S13との論理和となる第4の反復パルス信号S3(オフ信号)は、入力信号S1の各周期において、最初のパルスの立ち上がりが必ず入力信号S1の立ち下がりに同期している。
HNMOSトランジスタ4のドレイン端子の電圧信号S21は、第3の反復パルス信号S2がHレベルの間はHNMOSトランジスタ4がオンしレベルシフト抵抗29にて電圧降下が発生するので、Lレベルになる。さらにこのHNMOSトランジスタ4のドレイン端子の電圧信号S21は次段の論理否定ゲート6によって波形成形され、第1のレベルシフト済み反復信号であるレベルシフト済みオン信号S4となる。同様に、HNMOSトランジスタ5のドレイン端子の電圧信号S31は、第4の反復パルス信号S3がHレベルの間はHNMOSトランジスタ5がオンしレベルシフト抵抗30にて電圧降下が発生するので、Lレベルになる。さらにこのHNMOSトランジスタ5のドレイン端子の電圧信号S31は次段の論理否定ゲート7によって波形成形され、第2のレベルシフト済み反復信号であるレベルシフト済みオフ信号S5となる。
前記レベルシフト済みオン信号S4およびレベルシフト済みオフ信号S5はともに次段のフィルタ回路8に入力される。レベルシフト済みオン信号S4、レベルシフト済みオフ信号S5が同時にHレベルとならない場合はそのまま素通りさせ、セット信号S41、リセット信号S51として次段のSRラッチ回路9のセット端子S、リセット端子Rのそれぞれに入力される。
SRラッチ回路9は、セット信号S41=Hレベル、リセット信号S51=Lレベルの時セットされ、Q出力S8=Hレベルとなる。その後、セット信号S41=Lレベル、リセット信号S51=LレベルとなってもSRラッチ回路9はQ出力を保持するため、Q出力S8=Hレベルを維持する。同様に、SRラッチ回路9は、セット信号S41=Lレベル、リセット信号S51=Hレベルの時リセットされ、Q出力S8=Lレベルとなる。その後、セット信号S41=Lレベル、リセット信号S51=LレベルとなってもSRラッチ回路9はQ出力を保持するため、Q出力S8=Lレベルを維持する。
なお、NMOSトランジスタ24および25を相補的にオン、オフさせることで得られる、スイッチングデバイス12の制御信号HOも、S8と同様の信号となる。すなわち、外部からの入力信号S1が高電位側出力信号HOとして復調されたことになる。
以上により、従来例の高耐圧電力用集積回路においては、入力信号S1に同期した高電位側出力信号HOを得るとともに、入力信号S1が定常状態の場合に発生したdV/dtによる誤動作からの速やかな復帰が可能となっている。
しかしながら、前記従来の高耐圧電力用集積回路においては、スイッチングデバイス12および13のオン、オフに伴いVS電位、VB電位が過渡的に変遷する場合に新たな不具合が発生することが判明した。以下図10に示した従来の高耐圧電力用集積回路のスイッチングデバイス駆動回路の動作を説明するタイミングチャート、図11に示すレベルシフト回路の回路構成、および図12に示す従来の高耐圧電力用集積回路のスイッチングデバイス駆動回路における不具合発生時のタイミングチャートにより説明する。
一例として、スイッチングデバイス12がオンしている状態からオフした状態になったときを考える。図8に示す負荷14は一般にモータなどのL負荷であるので、スイッチングデバイス12がオフしたときに、今まで接続点N1→負荷14→接地電位へと流れていた電流を流しつづけようとする働きがある。
つまり、接地電位→フリーホイールダイオードD2→負荷14→接地電位といった経路で電流が流れるため、フリーホイールダイオードD2がオンし接続点N1の電位は、接地電位よりフリーホイールダイオードD2の順方向電圧分だけ低い電位に向かって低下する。
一方高耐圧電力用集積回路のVS電位、VB電位についても接続点N1同様に低下する。VS電位は接続点N1に接続されているため接続点N1の電位と同様に低下する。VB電位はVS電位より高圧側フローティング電源10の電圧分だけ高い電位を保ちながら、VS電位と共に低下する。
しかし、VS電位は高耐圧電力用集積回路と接続点N1間における配線のL成分の影響などにより、接地電位(GND)よりも低い電位、すなわち負電位まで過渡的に低下する場合がある。VS電位が接地電位よりも高圧側フローティング電源10の電位差以下に低下した場合、VS電位のみならずVB電位までもが負電位に低下することになる。
このとき、高耐圧電力用集積回路内部、特にHNMOSトランジスタおよびレベルシフト抵抗周辺について考察する。HNMOSトランジスタ4,5のソース−ドレイン間にはソース側をアノード、ドレイン側をカソードとした寄生ダイオード41、51が存在する。VB電位が接地電位よりも低くなり、寄生ダイオードが順方向にバイアスされると、順方向電流Idが接地電位→寄生ダイオード41、51→レベルシフト抵抗29、30→VB電位となる高圧側フローティング電源10の正極側といった経路で流れる。
次にVS電位、VB電位の過渡的な負電位への変遷が終り、VB電位が接地電位より高くなるときを考える。VB電位が接地電位より高くなるので、前記寄生ダイオード41、51には逆バイアスが印加される。通常であれば、寄生ダイオードに逆バイアス電圧を印加しても逆方向電流は流れることはないが、直前まで寄生ダイオードには順方向電流が流れていたため、逆バイアス電圧が印加されるとリカバリー電流Irrがカソード→アノード方向に流れてしまう。
前記リカバリー電流Irrは、VB電位となる高圧側フローティング電源10の正極側→レベルシフト抵抗29、30→寄生ダイオード41、51→接地電位という経路で流れるため、レベルシフト抵抗に電圧降下が発生し、あたかもHNMOSトランジスタがオンしたかのように誤信号として伝達される。
ここで、前記リカバリー電流Irrは、HNMOSトランジスタ4,5のそれぞれの寄生ダイオード41、51に同じように流れるため、誤信号は電圧信号S21、電圧信号S31に同時に発生する。すなわち、前述の通りフィルタ回路8によってこの誤信号は除去されるため、SRラッチ回路9には伝達されず問題にはならない。
ところが、従来例で説明したような、第1の反復パルス信号S12、または第2の反復パルス信号S13が常にHNMOSトランジスタ4、5のどちらかに入力されている場合は状況が異なってくる。
今考察しているのはスイッチングデバイス12がオフしたとき、すなわち、外部からの入力信号S1がHレベルからLレベルに変化したときである。つまり、オン指令である第3の反復パルス信号S2はLに固定され、オフ指令である第4の反復パルス信号S3のような反復パルス列が出力されている。
よって、VB電位が負電位となったタイミングで、HNMOSトランジスタ5がオンする場合が生じる。このとき、電流ImはオンしているHNMOSトランジスタ5のソース−ドレイン間を流れるため、寄生ダイオード51には順方向電流が流れない。次にVB電位が正電位に復帰したとき、第4の反復パルス信号S3がLレベルになるタイミングであったとすると、HNMOSトランジスタ5には電流が流れず、また、寄生ダイオード51にもリカバリー電流Irrはほとんど流れないため、レベルシフト抵抗30での電圧降下もほとんどない。
一方HNMOSトランジスタ4は常にオフしているので、前述のとおり、寄生ダイオード41に順方向電流が流れ、次いでリカバリー電流が流れ、レベルシフト抵抗29で電圧降下が発生する。すなわち、レベルシフト済みオン信号S4=Hレベル、レベルシフト済みオフ信号S5=Lレベルといったあたかも正常なオン指令であるような信号が発生するので、フィルタ回路8において除去できず、SRラッチ回路8のQ出力S8はHレベルになり、結果入力信号S1の指令に反し、スイッチングデバイス12がオンしてしまう。
第4の反復パルス信号S3がHNMOSトランジスタ5に印加されているので、最長でも反復パルスの1周期の時間後にはスイッチングデバイス12がオフし正常状態に復帰するが、最悪の場合、正常状態に復帰する際前述のメカニズムにより再度オンしてしまい、高電圧側出力信号HOがオンとオフを繰り返す発振状態となってしまう。
以上の現象は、スイッチングデバイス12がオフした際の不具合について説明したものであるが、スイッチングデバイス12がオンする際にも同様の問題点が考えられる。すなわち、スイッチングデバイス12がオンしVS電位、VB電位が過渡的に上昇すると、HNMOSトランジスタ4、5のドレイン−ソース電極間に存在する寄生容量にドレイン→ソース方向に変位電流が流れる。この変位電流は、レベルシフト抵抗29、30において電圧降下を発生させ後段に誤信号として伝達されるが、HNMOSトランジスタ5がオンしている場合、前記変位電流の流れる量がHNMOSトランジスタ4とHNMOSトランジスタ5で異なる。そのため、後段のフィルタ回路8によって誤信号が的確に除去できずにスイッチングデバイス12に誤動作を発生させる可能性がある。
この発明に係る半導体装置においては、直列に接続され、高電位の主電源電位と低電位の主電源電位との間に介挿された高電位側スイッチングデバイスおよび低電位側スイッチングデバイスの導通/非導通制御を行うものである。前記半導体装置は、前記高電位側スイッチングデバイスの導通/非導通を制御する制御部を含む高電位部と、前記低電位の主電源電位を基準として動作する低電位部に分けられる。前記低電位部にはクロック信号発生回路と、反復パルス分配回路と、第1および第2のワンショットパルス発生回路と、マスク信号発生回路を有する。また、低電位部と高電位部のインターフェースとしてレベルシフト回路を有している。前記クロック信号発生回路は一定周期のクロック信号を発生し、前記反復パルス分配回路は、外部から与えられる入力信号に基づいて、前記高電位側スイッチングデバイスの導通を示す第1状態および前記高電位側スイッチングデバイスの非導通を示す第2状態に対応して、前記クロック信号を第1および第2の反復パルス信号として分配する。また、前記第1のワンショットパルス発生回路は、前記入力信号が、前記第2状態から前記第1状態に遷移するのと同期し、1つのパルスを有する第1のパルス状信号を出力する。同様に前記第2のワンショットパルス発生回路は、前記入力信号が、前記第1状態から前記第2状態に遷移するのと同期し、1つのパルスを有する第2のパルス状信号を出力する。前記レベルシフト回路は、前記第1の反復パルス信号と前記第1のパルス状信号との論理和をとった第3の反復パルス信号および、前記第2の反復パルス信号と前記第2のパルス状信号との論理和をとった第4の反復パルス信号を、高電位側へとレベルシフトして、それぞれ第1および第2のレベルシフト済み反復信号を得る。また、前記マスク信号発生回路は、前記入力信号が、前記第2状態から前記第1状態に遷移した直後から、または前記第1状態から前記第2状態に遷移した直後から、一定期間前記第3および第4の反復パルス信号が前記レベルシフト回路へ伝達されないようにするためのマスク信号を出力する。前記高電位部に配設される前記制御部は、前記第1のレベルシフト済み反復信号に基づいて前記高電位側スイッチングデバイスを導通させ、前記第2のレベルシフト済み反復信号に基づいて前記高電位側スイッチングデバイスを非導通させる制御信号を出力する。
この発明は、高耐圧電力用集積回路が高電位側スイッチングデバイスの導通を示す第1状態から前記高電位側スイッチングデバイスの非導通を示す第2状態への遷移、または前記第2状態から前記第1状態への遷移に伴い発生する過渡的な電圧ノイズに曝された場合においても、2つのレベルシフト用高耐圧NMOSのオン/オフ状態を必ず同一状態にすることで誤信号を的確に除去し、誤動作の発生を抑制することができる。
実施の形態1
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における高耐圧電力用集積回路のスイッチングデバイス駆動回路を示す。図8に示した従来例の回路構成に、マスク信号発生回路18、論理積ゲート33、34を追加した構成となっている。
図1において、電源PSの正極と負極(接地電位GND)との間に、IGBTなどのスイッチングデバイス12および13がトーテムポール接続され、ハーフブリッジ型インバータ回路を構成している。また、スイッチングデバイス12および13には、それぞれ、フリーホイールダイオードD1およびD2が逆並列接続されている。そして、スイッチングデバイス12とスイッチングデバイス13との接続点N1には負荷(モータなどの誘導性負荷)14が接続される構成となっている。
図1において、スイッチングデバイス12はスイッチングデバイス13との接続点N1の電位を基準電位として、この基準電位と電源PSが供給する電源電位との間でスイッチング動作するデバイスであり、高電位側スイッチングデバイスと呼称される。
また、スイッチングデバイス13は接地電位を基準電位として、この基準電位と接続点N1の電位との間でスイッチング動作するデバイスであり、低電位側スイッチングデバイスと呼称される。
従って、図1に示すスイッチングデバイス駆動回路は、高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDと、低電位側スイッチングデバイス駆動回路LDとに区別される。
高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDは、この駆動回路の電源となる高電位側電源10の正極と負極との間に直列接続されたNMOSトランジスタ24および25を有し、NMOSトランジスタ24および25を相補的にオン、オフさせることでスイッチングデバイス12をスイッチングする回路である。なお、高電位側電源10の負極は接続点N1に接続されている。また、NMOSトランジスタ24および25の接続点の電圧を高電位側出力電圧HOとする。
また、NMOSトランジスタ24および25は、外部に設けられたマイクロコンピュータなどから与えられる、接地電位を基準として発生されたHレベルとLレベルを持つデジタルの入力信号S1によって駆動される。高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDは前記入力信号S1と、論理否定ゲート3によって生成された入力信号S1の反転信号がパルス発生回路15に入力される。前記パルス発生回路15は、前記入力信号S1の立ち上がりに応答して1つのパルスを有する第1のパルス状信号を発生させる第1のワンショットパルス発生回路151と、前記入力信号の立ち下がりに応答して1つのパルスを有する第2のパルス状信号を発生させる第2のワンショットパルス発生回路152を有する。
さらに、高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDは、一定周期のクロック信号を発生するクロック信号発生回路16と、前記入力信号S1に基づき、前記クロック信号を第1及び第2の反復パルス信号として分配する反復パルス分配回路17を有する。
前記第1のパルス状信号S22と前記第1の反復パルス信号S12は論理和ゲート31に入力され、前記論理和ゲート31の出力は第3の反復パルス信号S2となる。同じく前記第2のパルス状信号S23と前記第2の反復パルス信号S13は論理和ゲート32に入力され、前記論理和ゲート32の出力は第4の反復パルス信号S3となる。
また、高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDは、マスク信号発生回路18を有する。前記マスク信号発生回路18には、前記第1のパルス状信号S22および前記第2のパルス状信号S22が入力される。前記マスク信号発生回路18から出力される第1のマスク信号S32は前記第3の反復パルス信号S2と共に論理積ゲート33に入力され、同様に前記マスク信号発生回路18から出力される第2のマスク信号S33は前記第4の反復パルス信号S3と共に論理積ゲート34に入力される。前記論理積ゲート33の出力である第5の反復パルス信号S42および前記論理積ゲート34の出力である第6の反復パルス信号S43は、それぞれHNMOSトランジスタ4および5のゲート電極に入力される。
ここで、図2に基づいて前記マスク信号発生回路18の構成の一例について説明する。図2に示すようにマスク信号発生回路18は第3、第4のワンショットパルス発生回路181、182を有している。この第3、第4ワンショットパルス発生回路181、182は前述の第1、第2のワンショットパルス発生回路151、152と同一の回路構成である。前記第1のパルス状信号S22は論理否定ゲート183を介して第3のワンショットパルス発生回路181に入力され、さらに第3のワンショットパルス発生回路181の出力は論理ゲート184を介して第1のマスク信号S32として出力される。同様に、前記第2のパルス状信号S23は論理否定ゲート185を介して第4のワンショットパルス発生回路182に入力され、さらに第4のワンショットパルス発生回路182の出力は論理ゲート186を介して第2のマスク信号S33として出力される。
さらに、前記第1のマスク信号S32は前記第3の反復パルス信号と共に論理積ゲート33に入力され、前記論理積ゲート33の出力信号S42(オン指令)がHNMOSトランジスタ4のゲート電極に入力され、HNMOSトランジスタ4を駆動する。同様に前記第2のマスク信号S33は前記第4の反復パルス信号と共に論理積ゲート34に入力され、前記論理積ゲート34の出力信号S43(オフ指令)がHNMOSトランジスタ5のゲート電極に入力され、HNMOSトランジスタ5を駆動する。
HNMOSトランジスタ4および5のドレイン電極はそれぞれレベルシフト抵抗29および30の一方端に接続されるとともに、論理否定ゲート6および7の入力にも接続される。
そして、論理否定ゲート6および7の出力S4、S5はフィルタ回路8の入力に接続され、フィルタ回路8の出力S41、S51はそれぞれSRラッチ回路回路9のセット端子Sおよびリセット端子Rに接続されている。ここで、フィルタ回路8の一構成例を図9に示す。フィルタ回路8はSRラッチ回路9の誤動作を防止するための回路であり、セット端子Sおよびリセット端子SがともにHとなる信号を除去するように論理ゲートで構成されている。
SRラッチ回路9のQ出力S8はNMOSトランジスタ24のゲート電極に接続されるとともに、論理否定ゲート23の入力にも接続され、論理否定ゲート23の出力はNMOSトランジスタ25のゲート電極に接続されている。
なお、レベルシフト抵抗29および30の他方端はNMOSトランジスタ24のドレイン電極側、すなわち高電位側フローティング電源10の正極(VB電位)に接続されている。また、NMOSトランジスタ24のソース電極、すなわち高電位側フローティング電源10の負極(VS電位)は、ダイオード21および22のアノードに接続され、ダイオード21および22のカソードはそれぞれHNMOSトランジスタ4および5のドレイン電極に接続されている。
また、低電位側スイッチングデバイス駆動回路LDは、当該駆動回路の電源となる低電位側電源11の正極(VCC)と負極(接地電位)との間に直列に接続されたNMOSトランジスタ27および28を有し、NMOSトランジスタ27および28を相補的にオン、オフさせることでスイッチングデバイス13をスイッチングする回路である。ここで、NMOSトランジスタ27および28の接続点の電圧を低電位側出力電圧LOと呼称し、この低電位側出力電圧LOの電圧変化が制御信号S7となって、スイッチングデバイス13が制御される。なお、NMOSトランジスタ27は、外部から与えられる入力信号S0によって制御され、NMOSトランジスタ28は、入力信号S0をインバータ回路26で反転した信号によって制御されるように構成されている。
次に図3に示すタイミングチャートを用いて、本実施の形態1における高電位側スイッチングデバイス駆動回路HDの動作について説明する。
図3において、外部から与えられる入力信号S1のHレベルが高電位側スイッチングデバイス12をオンさせるオン指令を意味し、前記入力信号のLレベルが高電位側スイッチングデバイス12をオフさせるオフ指令を意味するものとする。
クロック信号発生回路16は自励発振であるため、入力信号S1とは非同期の反復パルスS10を出力する。反復パルスS10は次段の反復パルス分配回路17に入力され、反復パルス分配回路17は入力信号S1がHレベル、すなわちオン指令を出力している期間は第1の反復パルス信号S12のような反復パルス列を出力し、第2の反復パルス信号S13はLレベルに固定される。一方、入力信号S1がLレベル、すなわちオフ指令を出力している期間は第2の反復パルス信号S13のような反復パルス列を出力し、第1の反復パルス信号S12はLレベルに固定される。
また、入力信号S1の立ち上がりに同期して、第1のワンショットパルス発生回路151から第1のパルス状信号S22のような単一のパルスが出力される。同様に入力信号S1の立ち下がりに同期して、第2のワンショットパルス発生回路から第2のパルス状信号S23のような単一のパルスが出力される。
ここで第1のパルス状信号S22の立ち下がりに同期し、第1のマスク信号S32としてLレベルのパルス状信号を一定期間出力する。同様に第2のパルス状信号S23の立ち下がりに同期し、第2のマスク信号S33としてLレベルのパルス状信号を一定期間出力する。
そして、パルス発生回路15からの第1のパルス状信号S22とパルス分配回路17からの第1の反復パルス信号S12の論理和をとった信号である第3の反復パルス信号S2が、論理和ゲート31から出力される。さらに第3の反復パルス信号S2と前記第1のマスク信号S32と論理積をとった出力信号S42が、論理積ゲート33からオン信号としてHNMOSトランジスタ4のゲート電極に入力され、HNMOSトランジスタ4を駆動する。破線で示すパルスP1は論理積ゲート33で遮断され、出力されない。同様に、パルス発生回路15からの第2のパルス状信号S23とパルス分配回路17からの第2の反復パルス信号S13の論理和をとった信号である第4の反復パルス信号S3が、論理和ゲート32から出力される。さらに、第4の反復パルス信号S3と前記第2のマスク信号S33と論理積をとった出力信号S43が、論理積ゲート34からオフ信号としてHNMOSトランジスタ5のゲート電極に入力され、HNMOSトランジスタ5を駆動する。破線で示すパルスP2は論理積ゲート34で遮断され、出力されない。
ここで、前記出力信号S42(オン信号)および出力信号S43(オフ信号)を見ると、オン信号、オフ信号の反復パルス列において最初のパルスが立ち下がった後から、前記第1、第2のマスク信号S32、S33のパルス幅の期間だけLレベルとなっている。
すなわち、入力信号によるオフ指令からオン指令に遷移した際、あるいはオフ指令からオン指令に遷移した際の最初のパルスが発せられた後は、一定期間必ずHNMOSトランジスタ4,5に入力される出力信号S42(オン信号)、出力信号S43(オフ信号)はともにLレベルとなる。
これにより、高電位側スイッチングデバイスの導通、非導通に伴い、HNMOSトランジスタ4、5のドレイン−ソース間にdV/dtあるいは負電位が印加される際、HNMOSトランジスタ4、5はともにオフとなっているので、寄生容量に流れる変位電流、あるいは寄生ダイオードに流れるリカバリー電流はHNMOSトランジスタ4、5で同時かつ同レベルとなる。
前記変位電流、リカバリー電流による誤信号は第1のレベルシフト済み反復信号であるレベルシフト済みオン信号S4および、第2のレベルシフト済み反復信号であるレベルシフト済みオフ信号S5に重畳されるが、前記のとおり誤信号はレベルシフト済みオン信号S4、レベルシフト済みオフ信号S5において同時に発生するため後段のフィルタ回路8で除去され、破線で示すパルスQ1、Q2はSRラッチ回路9に入力されるセット信号S41、リセット信号S51には現れない。
SRラッチ回路9は、セット信号S41=Hレベル、リセット信号S51=Lレベルの時セットされ、Q出力S8=Hレベルとなる。その後、セット信号S41=Lレベル、リセット信号S51=LレベルとなってもSRラッチ回路9はQ出力を保持するため、Q出力S8=Hレベルを維持する。同様に、SRラッチ回路9は、セット信号S41=Lレベル、リセット信号S51=Hレベルの時リセットされ、Q出力S8=Lレベルとなる。その後、セット信号S41=Lレベル、リセット信号S51=LレベルとなってもSRラッチ回路9はQ出力を保持するため、Q出力S8=Lレベルを維持する。
なお、NMOSトランジスタ24および25を相補的にオン、オフさせることで得られる、スイッチングデバイス12の制御信号HOも、S8と同様の信号となる。すなわち、外部からの入力信号S1が高電位側出力制御信号HOとして復調されたことになる。
以上により、本実施の形態1による高耐圧電力用集積回路においては、入力信号S1に同期した高電位側出力制御信号HOを得るとともに、入力信号S1が定常状態の場合に発生したdV/dtによる誤動作からの速やかな復帰が可能となるのみならず、従来例で示した変位電流およびリカバリー電流による誤動作をも無くすことが出来、より信頼性の高い高耐圧電力用集積回路を提供することができる。
図4および図5により、実施の形態1の変形例について高耐圧電力用集積回路のスイッチングデバイス駆動回路の構成と動作を説明する。
図1に示した実施の形態1においては、第1のマスク信号S32および第2のマスク信号S33によって第3の反復パルス信号S2および第4の反復パルス信号S3をマスクするために、別途論理積ゲート33および34を必要としていた。
しかしながら、図4に示した変形例のように、第1のマスク信号S32および第2のマスク信号S33を反復パルス分配回路17における論理積ゲート171、172に入力しても本発明の目的を実現することができる。なぜならば、本発明が解決しようとする問題点は、入力信号S1と非同期である第1、第2の反復パルス信号S12、S13が、高電位側スイッチングデバイスの導通直後、あるいは非導通直後にHNMOSトランジスタ4、5に入力されるため発生するからである。
すなわち、反復パルス分配回路17において、あらかじめ問題となる反復パルス(図5に破線で示したP3、P4)をマスクしても全く同じ効果を得ることが出来るばかりでなく、別途論理積ゲートを必要とすることもないので、高耐圧電力用集積回路の回路規模を縮小することが出来、低コスト化を実現する。
実施の形態2
図6は、この発明を実施するための実施の形態2における高耐圧電力用集積回路のスイッチングデバイス駆動回路を示す。なお、図6について、図1に示した実施の形態1とその変形例である図4に示した回路構成と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図6において、入力信号S1がマスク信号発生回路19に入力され、マスク信号発生回路19から出力される第3のマスク信号S19は、実施の形態1の変形例である図4に示す回路構成と同様に、反復パルス分配回路17における論理積ゲート171および172に入力されている。
さらに、マスク信号発生回路19は、2つの論理否定ゲート191、193と容量素子192で構成される遅延回路と、排他的論理和否定ゲート194にて構成される第5のワンショットパルス発生回路を備えている。入力信号S1は、前記排他的論理和否定194ゲートの一方の入力端子に入力されるとともに、論理否定ゲート191、193を介し前記排他的論理和否定ゲート194の他方の入力端子に入力される。また、前記容量素子192の一方の端子は、前記論理否定ゲート191の出力と前記論理否定ゲート192の入力の接続点に接続され、他方の端子は接地される。
上記の構成により、マスク信号発生回路19の出力である第3のマスク信号S19は、入力信号S1の立ち上がりに同期した一定期間Lレベルとなる第1のパルスと、入力信号S1の立ち下がりに同期した一定期間Lレベルとなる第2のパルスとして発生する。このため、上記第3のマスク信号S19におけるLレベル期間は、実施の形態1における第1、第2のマスク信号のLレベルよりも長く(具体的には第1、第2のワンショットパルス発生回路の出力S22、S23のパルス幅だけ)設定する必要がある。
次に、図7に示すタイミングチャートを用いて、本実施の形態2における高耐圧電力用集積回路のスイッチングデバイス駆動回路の動作について説明する。同図に示したとおり、第3のマスク信号S19は、入力信号S1の立ち上がり、立ち下がりに同期し、一定期間Lレベルとなるパルスを出力する。この第3のマスク信号により、入力信号がオン指令からオフ指令に遷移した直後、およびオフ指令からオン指令に遷移した直後から一定期間、第1の反復パルス信号S12および第2の反復パルス信号S13のHNMOSトランジスタ4、5への伝達を遮断するので、破線で示したパルスP5及びP6は出力されない。これにより実施の形態1またはその変形例と同様の効果を得ることができる。すなわち、高電位側スイッチングデバイスの導通、非導通に伴いレベルシフト済みオン信号S4およびレベルシフト済みオフ信号S5に同時に誤信号が重畳するため、該誤信号はフィルタ回路8で除去される。よって、破線で示したパルスQ5、Q6は出力されることなく高電位側スイッチングデバイス12の誤動作を防止できる。
以上により、本実施の形態2による高耐圧電力用集積回路のスイッチングデバイス駆動回路においては、より簡単な構成で、入力信号S1に同期した高圧側出力信号HOを得るとともに、入力信号S1が定常状態の場合に発生したdV/dtによる誤動作からの速やかな復帰が可能となるのみならず、従来例で示した変位電流およびリカバリー電流による誤動作をも無くすことが出来、より信頼性の高い高耐圧電力用集積回路を提供することができる。
以上、本発明の具体的な実施の形態を説明したが、本発明はこれに限らず種々の改変が可能である。例えば、実施の形態1およびその変形例において、第2のマスク信号のみ生成する回路構成も本発明に含まれる。また、本発明の実施の形態はハーフブリッジ型インバータ回路の駆動回路について説明したが、例えばHブリッジ型インバータ回路や三相フルブリッジ型インバータ回路の駆動回路に適用することも当業者にとっては容易に創到可能であるので、本発明の範囲に含まれる。