JP4816004B2 - ホールスラスタ及び宇宙航行体 - Google Patents
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Description
特許文献1はこのような問題に対処するものであるが、外部ポールピースに付加された磁気回路による質量増加が大きいと供に、外部ポールピースを放熱面として使用できないため、大推力化には適さないという問題があった。
上記環状ギャップに配設され開放端を有する環状チャネルと、
上記環状チャネル底面に設けられたアノードディストリビュータと、
上記アノードディストリビュータに推進剤を供給する推進剤分配用リングプレートと、
推進剤導入孔を有しリング状の溝が形成され、上記環状チャネルに熱的に接続されたプレナムリングと、
上記内部磁気コイルと上記環状チャネルの間に配置され、上記内部磁気コイルの周囲を取り囲む多層の熱シールドと、
上記プレナムリングと接した円板状のヒートスプレッタと、
上記ヒートスプレッタに接した伝熱支柱と、
上記伝熱支柱に固定され、上記環状チャネルの開放端の外側に所定の距離を有して周囲を囲む壁面を有し、当該壁面の一部に開口部を有した円筒状のプルームシールドと、
上記環状チャネル外壁に接し、上記プルームシールドに接続された熱良導性の伝熱リングと、
上記プルームシールドの開口部から電子を放出する外部電子源と、
を備えたものである。
上記内部磁気コアと外部磁気コアの間隙に配置され、開放端を有した環状チャネルと、
上記環状チャネル内に配設され推進剤を放散するアノードディストリビュータと、
上記環状チャネルの開放端の外側周囲を囲むように配置され、環状チャネルと熱的に接続されたプルームシールドと、
上記環状チャネルと熱的に接続されたヒートスプレッタと、
上記環状チャネルと上記内部磁気コアの間に配置された熱シールドと、
上記プルームシールドと上記ヒートスプレッタとを熱的に接続する伝熱部材と、
を備えたものであっても良い。
さらに、スラスタ自体にプルームシールドを有しているので、プルームシールドを宇宙航行体に取り付ける場合と比較して、インテグレーションやシステム設計が容易となるという効果がある。
以下、図を用いて、この発明に係る実施の形態1について説明する。
図1〜図3は、実施の形態1によるホールスラスタの構成を示している。図に記載するホールスラスタ1は、各種の部品からなるが、ここではこの発明の要旨とする部分のみを説明する。
図1はホールスラスタ1の外観を示す斜視図、図2は図1のAA線を中心として外部磁気コア7の中心線を面内に含む半断面図、図3は図1のAA線を中心として伝熱用支柱17の中心線を面内に含む半断面図である。
アノードディストリビュータ12は、断面が凸状のリングで内部は空洞であり、そのリングの内側側面及び外側側面には、各側面に沿って環状に複数の孔13が開いている。アノードディストリビュータ12の上流側(図2ではアノードディストリビュータ12の下面側)には、円周上に多数の孔200の開いた推進剤分配用のリングプレート14が設けられており、孔13と孔200とは互いに連通している。リングプレート14の上流側(図2ではリングプレート14の下面側)に、リング状の溝201を有したプレナムリング15が接している。プレナムリング15は、溝201の底面に、一箇所の推進剤の導入孔202を有している。
伝熱用支柱17にはフランジを有する凹形円筒状のプルームシールド18が接続されている。プルームシールド18はプラズマに対する耐性を有すると供に高い輻射率を有する材料、例えばグラファイト、から成る。
更に、伝熱用支柱17には、フランジを有する凸形円筒状の高い熱伝導率を有し、かつ、高い輻射率を有する伝熱リング19が熱的に接続されている。円筒状の伝熱リング19は外部チャネル11の外壁面と接するように配置されている。図2,3の例では、プルームシールド18の上面に伝熱リング19が接して、プルームシールド18が伝熱用支柱17に支持され、伝熱リング19とプルームシールド18が締結用のねじで、伝熱用支柱17に共に固定されている。
尚、伝熱リング19の上面にプルームシールド18が接して、伝熱リング19が伝熱用支柱17に支持され、プルームシールド18と伝熱リング19が締結用のねじで、伝熱用支柱17に共に固定されていても良く、さらに、プルームシールド18と伝熱リング19とが一体成型されていても良い。要するに、プルームシールド18、伝熱リング19、及び伝熱用支柱17が、互いに熱的に密接に接続されていれば良い。尚、伝熱用支柱17は、外部ポールピース4に対して熱絶縁されていれば良く、熱絶縁体を介在して接触していても良い。
電子源20を動作させ、電子が供給できる状態としておき、内部電磁コイル8及び外部電磁コイル9に通電し、磁場を発生させる。アノードディストリビュータ12の孔13から、キセノンやクリプトン等の電離電圧が低いイオン化ガスを環状チャネル2に供給する。ここで、アノードディストリビュータ12に300V程度の正の高電圧を印加すると、電子源20とアノードディストリビュータ12間に放電が発生し、電子はチャネル内で磁界Bと電界EのE×B方向に力を受け、周方向に運動する。これがいわゆるホール電流である。
尚、図2では内部ポールピース3がN極、外部ポールピース4がS極となるように磁界Bを記しているが、磁界の方向は逆でも構わない。周方向に飛行する電子はイオン化ガスと衝突電離を起こし、プラズマが持続的に生成する。プラズマ中のイオンは磁力線に拘束された電子により形成される電界でチャネル外部に静電加速される。その際、イオンが形成する空間電位により電子源20から電子が供給され、スラスタ自体の電気的中性が保たれる。
ホールスラスタから発生するイオンエネルギープロファイルは、推力軸方向に対して30°を越える角度を有するイオンであっても、200〜300eVのエネルギーを有するイオンが存在する。このイオンは以下の要因で発生する。
環状チャネルの中心からシールド壁位置までの距離をL、ホールスラスタ1のプルーム角度の半頂角(すなわち、遮蔽したい角度)をθとすると、プルームシールド18のシールド部高さHは、図2に示すように、H=Ltan(π/2−θ)とするのが好適である。
尚、プルームシールド18の高さHは、H≧Ltan(π/2−θ)を満足するように適宜設定しても良く、要するに、ホールスラスタ1から発散されるプルームの見込み角度(発散角度)2θ内に太陽電池パネルが存在しなければ良い。また、展開ラジエータ等の衛星に搭載された他の構造体が、ホールスラスタ1から発散されるプルームの見込み角度(発散角度)2θ外に配置されるように、同様にしてプルームシールド18の高さHを設定しても良い。
また、プルームシールド18に設けられた切り欠き18bから、僅かにプルームが漏れる可能性があるので、電子源20は太陽電池パドルと対向しない位置に配置する。例えば、図4(b)のホールスラスタ1の下方側に配置すると良い。
スラスタ効率は、ホールスラスタのプルームの推力軸方向速度による運動エネルギーに対する投入電力で定義される。スラスタ効率の典型値は50%であり、長時間の定常運転には投入電力の半分を排熱する必要がある。例えば投入電力が4.5kWの場合、2.25kWの排熱が必要となる。発熱源は環状チャネル2に生成するプラズマ24であり、チャネル壁が加熱され、スラスタ内部に熱が散逸していくため、連続動作には熱流束の制御が肝要である。ホールスラスタ1を構成する部品の内、耐熱温度から判断して温度的に最も厳しくなるのは内部電磁コイル8の電線である。内部電磁コイル電線には耐熱電線であるセラミック線やポリイミド線が使用される。セラミック線の耐熱温度は400〜600℃である。しかし、機械的特性として脆く、地上での用途には使用できるが、宇宙機の打ち上げ時の機械環境で破損する虞がある。一方、ポリイミド線の耐熱温度は200〜400℃である。機械的特性に優れるのみならず耐放射線性も高く、宇宙用材料として相応しい。定常時、この温度以下となるように排熱する必要がある。
伝熱リング19に伝わった熱はプルームシールド18に伝わり、伝熱リング19自体及びプルームシールド18から深宇宙に向けて輻射放熱する。これらは伝熱支柱17に支持されており、外部ポールピース4に伝導伝熱することは無い。また外部ポールピース4は電磁軟鉄等の金属磁性体で構成されるため、輻射率が小さく(研磨鉄の場合0.14以下)、輻射伝熱し難くキュリー点近く迄温度上昇することは無い。従って、ポールピース間ギャップの磁束密度の低下は殆ど問題とならない。
ヒートスプレッタは外周部で高い熱伝導率を有する伝熱支柱17と接触している。伝熱支柱は外部ポールピース4に設けた切欠きもしくはスルーホールを通り、外部ポールピース4と接触することなく、プルームシールド18と伝熱リング19を支持する。チャネル壁10、11を上流方向に伝わる熱流束はヒートスプレッタ16で面方向に熱が拡散し、伝熱支柱17に達する。
尚、ヒートスプレッタの厚さ方向の熱伝導率は低いため、リターンヨーク5への熱の流入は抑制され、熱絶縁される。更に、ヒートスプレッタ16に拡散した熱は伝熱支柱17を伝わり、伝熱リング19やプルームシールド18に至り、輻射放熱される。
また、伝熱リング19と外部チャネル11を締結具で接続しても良い。外部チャネルとして、例えば、窒化ボロン−窒化アルミの複合焼結体等のマシナブルセラミックを使用すればネジ加工が可能であり、伝熱リングとの接触を密接にすることができる。この場合も外部チャネルからプルームシールド18への熱流束の増加、すなわち効果的な排熱が期待できる。
環状チャネル2内に生成したプラズマが安定に維持している際、プラズマ中心部よりも境界面であるチャネル壁10、11近傍の方が低電位である。それは電子の移動度がイオンより速いため、プラズマが安定に存在するために電子の拡散を抑えるような空間電位が発生することによる。プラズマ中のイオンはほぼ均等にチャネル壁10、11に入射する。イオンが入射すると、チャネル壁面を構成する中性原子が等方位に弾き飛ばされる。チャネル壁から叩き出された中性原子は電荷を有していないため、静電力等を受けない。また、周囲圧力が低いため、他原子やイオンと衝突せず、直線方向に飛行する。ホールスラスタの場合、ポールピース間ギャップが環状チャネルの出口近傍に配置されるため、径方向磁場は環状チャネルの出口近傍が強く、チャネル出口付近のプラズマ密度が高い。推力軸に対して最も大きな角度を有するスパッタリング原子はチャネル出口から発生する。発生したスパッタリング原子の内、推力軸に対する角度が遮蔽角度θ以上のものはプルームシールドに衝突し、トラップされる。尚、キセノンイオンのグラファイトに対するスパッタ収量は、エネルギー200eV〜300eVで、0.04〜0.08であり、材料中最も低い。このため、プルームシールド18には、グラファイト等の低密度の材料を用いるのが好適である。
尚、プルームシールドはグラファイト等の低密度の材料で製作できるため、プルームシールドのみ大型化してもスラスタ全体に対する質量の増加は軽微である。その結果、連続動作の制約となっていた内部電磁コイル被覆の温度上昇を耐熱温度内に抑えることができ、長時間動作できる高電力大推力ホールスラスタを実現できる。
Claims (10)
- 内部ポールピース、
上記内部ポールピースに接続された内部磁気コア、
上記内部ポールピース外側に配置された外部ポールピース、
上記外部ポールピースに接続された外部磁気コア、
上記内部ポールピースと外部ポールピースに対向配置されて上記内部磁気コアと外部磁気コアを接続するリターンヨーク、
上記内部磁気コアの周囲に配置された内部磁気コイル、
及び、上記外部磁気コアの周囲に配置された外部磁気コイルとから成り、
上記内部ポールピースと外部ポールピースの間に環状ギャップを有した磁気回路と、
上記環状ギャップに配設され開放端を有する環状チャネルと、
上記環状チャネル底面に設けられたアノードディストリビュータと、
上記アノードディストリビュータに推進剤を供給する推進剤分配用リングプレートと、
推進剤導入孔を有しリング状の溝が形成され、上記環状チャネルに熱的に接続されたプレナムリングと、
上記内部磁気コイルと上記環状チャネルの間に配置され、上記内部磁気コイルの周囲を取り囲む多層の熱シールドと、
上記プレナムリングと接した円板状のヒートスプレッタと、
上記ヒートスプレッタに接した伝熱支柱と、
上記伝熱支柱に固定され、上記環状チャネルの開放端の外側に所定の距離を有して周囲を囲む壁面を有し、当該壁面の一部に開口部を有した円筒状のプルームシールドと、
上記環状チャネル外壁に接し、上記プルームシールドに接続された熱良導性の伝熱リングと、
上記プルームシールドの開口部から電子を放出する外部電子源と、
を備えたホールスラスタ。 - 上記ヒートスプレッタは上記リターンヨークに対し熱絶縁されたことを特徴とする請求項1記載のホールスラスタ。
- 上記リターンヨークは上記伝熱支柱に対し熱絶縁されたことを特徴とする請求項1記載のホールスラスタ。
- 上記環状チャネル中心軸と上記プルームシールド側面間の距離をLとし、上記ホールスラスタからの所望のプルームの発散角度の半頂角をθとした場合、プルームシールド高さがLtan((π/2)−θ)で与えられることを特徴とする請求項1記載のホールスラスタ。
- 上記環状チャネル外壁と上記伝熱リングを、締結具によって固定したことを特徴とする請求項1記載のホールスラスタ。
- 上記ヒートスプレッタの外周部に熱的に接続された円筒ラジエータを備えたことを特徴とする請求項1記載のホールスラスタ。
- 内部磁気コア、外部磁気コアを有する磁気回路と、
上記内部磁気コアと外部磁気コアの間隙に配置され、開放端を有した環状チャネルと、
上記環状チャネル内に配設され推進剤を放散するアノードディストリビュータと、
上記環状チャネルの開放端の外側周囲を囲むように配置され、環状チャネルと熱的に接続されたプルームシールドと、
上記環状チャネルと熱的に接続されたヒートスプレッタと、
上記環状チャネルと上記内部磁気コアの間に配置された熱シールドと、
上記プルームシールドと上記ヒートスプレッタとを熱的に接続する伝熱部材と、
を備えたことを特徴とするホールスラスタ。 - 上記請求項1〜7のいずれか記載のホールスラスタを搭載した宇宙航行体。
- 上記ホールスラスタからのプルームの発散角度内に、太陽電池パネル又は構体表面が非存在となるように配置された請求項8記載の宇宙航行体。
- 磁気回路、上記磁気回路内に配置され推進剤を放散する開放端を有した環状チャネル、上記環状チャネル内に配設され推進剤を放散するアノードディストリビュータ、及び当該環状チャネルの開放端の外側周囲を囲むように配置され、当該環状チャネルと熱的に接続されたプルームシールドを備えたホールスラスタと、
上記ホールスラスタから発散するプルームの発散角度により見込まれる角度範囲外に配置された太陽電池パネルと、
を備えた宇宙航行体。
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