JP4813239B2 - ポリエチレン樹脂組成物及びそれを用いた包装用フィルム - Google Patents

ポリエチレン樹脂組成物及びそれを用いた包装用フィルム Download PDF

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Description

本発明は、ポリエチレン樹脂組成物に関する。詳しくは、ダイロール方式等の自動充填機での液体や粘体用の包装材料のシール層として用いたときに、低温から高温まで幅広い温度範囲で高速液体充填を可能とするポリエチレン樹脂組成物及びそれを用いた包装用フィルムに関する。
従来より、液体及び粘体、並びに不溶物質として繊維、粉体等の固形状のものを含んだ液体、粘体等の包装には、基材上に必要に応じて種々の中間層を積層させ、さらにその上にシーラント層を積層させて得られる積層フィルムが使用されている。このような積層フィルムには、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、紙、アルミニウム箔等からなる表面基材層上に、シーラント層を設け、このシーラント層のヒートシール性を利用する包装用フィルムが知られている。
このシーラント層に使用される樹脂として、例えば、特定の物性を有するエチレン・C4-10α−オレフィンのランダム共重合体と高圧法低密度ポリエチレン(以下、HPLDと略称することがある)とのブレンド組成物が提案されている(参考文献1参照)。上記ランダム共重合体として、具体的には、Mg−Ti触媒で製造されたエチレン・4−メチル−1−ペンテンランダム共重合体が提案されているが、横シール部の発泡開始温度が低い欠点がある。
また、特定の温度上昇溶離分別(以下、TREFと略称することがある)特性を示すエチレン・C3-18α−オレフィン共重合体とHPLDとのブレンド組成物が提案されている(参考文献2参照)。上記共重合体として具体的には、メタロセン触媒で製造された線状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ヘキセン共重合体など)が提案されているが、内容物の充填時にシール部に該内容物が夾雑物としてシールされるため、ヒートシーラー部から受ける圧力と熱によって、シール部分で基材と中間層の剥離に基づく樹脂だまり(シーラント層および中間層部分がコブ状に盛り上った状態)生成によるシール不良が発生し、一方シーラーの圧力と温度を下げると、シーラント層の低温ヒートシール性およびホットタック性不足によるシール不良が発生し、シール強度の低下、耐圧強度の低下、異物介在による液漏れ等が発生し易く、その結果充填速度を高くすることができなかった。
また、特定の物性を有するエチレン・C4-10α−オレフィンのランダム共重合体とHPLDとのブレンド組成物が提案されている(参考文献3参照)。上記ランダム共重合体として具体的には、メタロセン触媒で製造された線状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体など)が提案されているが、上記参考文献2の場合と同様に、低温ヒートシール性およびホットタック性不足によるシール不良が発生しやすい欠点がある。ヒートシール性が不良である原因として、HPLDと混合されるべき線状低密度ポリエチレンが一種のみ使用されており、溶媒に対する溶解特性の異なる成分の分布が狭いことが挙げられる。
かかる問題点に鑑み、基材層に内層・中間層・外層からなる特定の3層構造フィルムを共押出した貼合用共押出多層フィルムが提案されている(参考文献4参照)。しかしこの積層フィルムは耐衝撃性に優れるとの利点を持つが、液体充填機で充填できないといった問題がある。参考文献4には内層にチーグラー系触媒を用いて製造された線状低密度ポリエチレンを配合する処方が示されているが、該線状低密度ポリエチレン中に高結晶性成分が相当量存在していることが、問題発生の原因と考えられる。
また、基材層に、線状低密度ポリエチレンとHPLDのブレンドからなる特定物性の中間層を設け、その外側に通常のシーラント層を設けた3層構造フィルムが提案されている(参考文献5参照)。しかしながら、この方法による積層フィルムは製袋品で高い破袋強度を有する利点を持つが、液体充填包装機での充填適性に劣るといった問題がある。前記同様に、溶媒に対する溶解特性の異なる成分の分布が狭いことが問題発生の原因と考えられる。
また、特定の熱的物性を有するエチレン・C3-10α−オレフィンのランダム共重合体を中間層及びシーラント層とし、かつ厚みを特定した3層構造の包装用積層体が提案されている(参考文献6参照)。このシーラント層として、該ランダム共重合体にHPLDを0〜70重量%配合してよい旨記載されているが、具体的な事例は示されていない。この積層フィルムは一定の条件下での高速液体充填適性が得られるという利点を持つが、幅広いシール温度での高速液体充填適性は得られないといった問題がある。前記同様に、溶媒に対する溶解特性の異なる成分の分布が狭いことが問題発生の原因と考えられる。
したがって、種々の内容物、基材の違いなどに対応させるために、充填装置の設定条件を調整する必要があるが、従来のものでは個々の包材での許容範囲が狭く、都度充填条件を探索する必要がある等の煩雑さが生じる問題は解決できていない。
特公平 2− 4425号公報 特開平 7− 26079号公報 特開平 8−269270号公報 特開平10−323948号公報 特開平11− 10809号公報 特開平11−254614号公報
本発明の目的は、前述の問題点に鑑み、液体、粘体の包装材料のシール層に用いた場合に、シール強度に優れ、かつ、低温から高温まで幅広い温度範囲で高速充填を可能とするポリエチレン系の樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成及び物性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体と高圧低密度ポリエチレンからなる樹脂組成物は押出ラミネート加工等により液体、粘体包装材料のシール層として用いた時に、上記の課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨とするところは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体と、高圧法低密度ポリエチレンとからなるポリエチレン樹脂組成物であって、該組成物が下記(A)〜(C)を満足することを特徴とするポリエチレン樹脂組成物に存する。
(A)オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)〜(iv)を満たす。
(i)溶出温度が40℃以下の溶出物(S1)の割合が45〜65重量%
(ii)溶出温度が40〜60℃の溶出物(S2)の割合が10〜30重量%
(iii)溶出温度が60〜80℃の溶出物(S3)の割合が10〜35重量%
(iv)溶出温度が80℃以上の溶出物(S4)の割合が0〜2%重量
(B)密度が0.88〜0.94g/cm3
(C)190℃におけるメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分
また、本発明の他の要旨は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体60〜95重量%、高圧法低密度ポリエチレン5〜40重量%及びスリップ剤などの配合剤0〜5重量%を配合することを特徴とする下記(A)〜(C)を満足するポリエチレン樹脂組成物の製造方法に存する。
(A)オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)〜(iv)を満たす。
(i)溶出温度が40℃以下の溶出物(S1)の割合が45〜65重量%
(ii)溶出温度が40〜60℃の溶出物(S2)の割合が10〜30重量%
(iii)溶出温度が60〜80℃の溶出物(S3)の割合が10〜35重量%
(iv)溶出温度が80℃以上の溶出物(S4)の割合が0〜2%重量
(B)密度が0.88〜0.94g/cm3
(C)190℃におけるメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分
また、本発明の他の要旨は、上記のポリエチレン樹脂組成物をヒートシール層として用いた包装用フィルムに存する。
また、本発明の他の要旨は、上記のポリエチレン樹脂組成物を押出ラミネート加工によってヒートシール層として積層されてなる包装用フィルムに存する。
液体、粘体の包装材料のヒートシール層に用いた場合に低温から高温まで幅広い温度範囲で高速充填を可能とする樹脂組成物が提供される。従って、押出ラミネート加工によって有用な包装用フィルムを製造でき、それを用いた包装材料はシール強度や耐圧強度に優れる。
(エチレン・α−オレフィン共重合体)
エチレン・α−オレフィン共重合体は本発明のポリエチレン樹脂組成物の主要成分として使用される。該共重合体は、エチレンとα−オレフィンとのランダム共重合体であり、コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数4〜8の1−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。かかるエチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等が特に好ましい。
コモノマーとして用いられる上記α−オレフィンは1種類に限られず、ターポリマーのように2種類以上用いた多元系共重合体も好ましい。具体例としては、エチレン・プロピレン・1−ブテン3元共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン3元共重合体等が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分とするものが好ましく、エチレン含有量が50〜99重量%、より好ましくは60〜97重量%、さらに好ましくは70〜95重量%の範囲から選択される。従って、α−オレフィン含有量は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%の範囲から選択される。なお、エチレン含有量は、下記に示す13C−NMRスペクトル分析によって決定されるものである。
オルトジクロロベンゼンに溶解した試料(濃度:300mg/2mL)の、ヘキサメチルジシロキサンを標準物質として、温度120℃、周波数100MHz、スペクトル幅20000Hz、パルス繰り返し時間10秒、フリップ角40度の条件で測定。
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法)
本発明に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を用いる重合により容易に製造することができる。メタロセン触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。
(i)メタロセン化合物は、例えば、特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭59−23011号、特開昭60−35006号、特開昭60−35007号、特開昭60−35008号、特開昭60−35009号、特開昭61−130314号、特開平3−163088号公報等、EP公開420,436、米国特許5,055,438、国際公開WO91/04257、国際公開WO92/07123等に開示されている。
更に具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。上記において、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物の混合物を使用することもできる。
メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられる。
(ii)本発明において用いられる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ等が挙げられる。
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムハライド;アルキルアルミニウムセスキハライド;アルキルアルミニウムジハライド;アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。
係るエチレン系共重合体は、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製「アフィニティー」、日本ポリエチレン社製「カーネル」「ハーモレックス」等が挙げられる。エチレン系共重合体は、1種又は2種以上混合して使用することができる。特に後記するように、密度又はMFRを異にする2種以上のエチレン・α−オレフィン共重合体を併用することにより、ポリエチレン樹脂組成物の物性を制御する態様は好ましい。メタロセン触媒によるエチレン系共重合体は結晶性分布が狭いので種々の共重合体をブレンドすることによりTREF物性の制御がより容易になるからである。
エチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を使用して製造することが好ましいが、チタン、ハロゲンを含むいわゆるチーグラー触媒を用いて製造することもできる。この場合には、後記するTREF特性中、S4(エチレン含有量が100重量%に近い高結晶性成分)が生成し易い。チーグラー触媒を用いて製造したエチレン・α−オレフィン共重合体中のS4含有量が所定値を外れるような場合には、分取によってS4成分を除去すればよい。物性の異なるエチレン・α−オレフィン共重合体を併用する場合、その手法は、共重合体同士のブレンドでもよく、多段重合でもよい。メタロセン触媒とチーグラー触媒を混合使用することもできる。エチレン・α−オレフィン共重合体のQ値としては、3.0以下、特に2.5以下のものが好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量としては、50000〜80000、特に55000〜75000程度が望ましい。重量平均分子量がこれより小さいと材料強度が低下してヒートシール性が悪化する。また重量平均分子量がこれより大きいと押出ラミネート加工時の押出負荷や高速加工性が悪化する。
(高圧法低密度ポリエチレン)
本発明のポリエチレン樹脂組成物を構成するもう一つの成分は高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)である。詳しくは、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンとも呼称される。高圧法低密度ポリエチレンは溶融弾性が高く、特に押出ラミネート加工時のネックインの改良に多く用いられる。本発明における高圧法低密度ポリエチレンの物性としては特に規定されないが、MFRが0.2〜80g/10分、特に0.5〜50g/10分、密度が0.900〜0.935g/cm3、特に0.91〜0.93g/cm3のものが好ましい。
(ポリエチレン樹脂組成物の製法)
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、前記したエチレン・C3-20α−オレフィン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンからなるものである。好ましくは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体60〜95重量%、より好ましくは65〜90重量%、高圧法低密度ポリエチレン5〜40重量%、より好ましくは10〜35重量%を配合することにより製造できる。
密度又はMFRを異にする2種以上のエチレン・α−オレフィン共重合体を併用することにより、ポリエチレン樹脂組成物の物性を制御する態様は好ましい。密度又はMFRを異にするメタロセン系ポリエチレン系共重合体を2種併用する場合、例えば、密度0.86〜0.89g/cm3の共重合体を35〜70重量%、密度0.89〜0.91g/cm3の共重合体を5〜35重量%とし、これに密度0.91〜0.93g/cm3の高圧法低密度ポリエチレンを5〜40重量%配合する態様は好ましい。
本発明のポリエチレン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、結晶造核剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、スリップ剤、過酸化物、有機又は無機充填剤、蛍光増白剤、顔料等を含んでいてもよい。
(ポリエチレン樹脂組成物の物性)
本発明の樹脂組成物が具備すべき不可欠な物性は、下記の(A)〜(C)である。以下、これについて順次説明する。
(A)温度上昇溶離分別(TREF)特性、
(B)密度特性
(C)メルトフローレート(MFR)特性
(A)温度上昇溶離分別(TREF)特性
本発明におけるポリエチレン樹脂組成物は、オルトジクロロベンゼンを溶媒とするTREFによって得られる溶出曲線から導き出される特定の結晶性分布を有することが必要である。本発明で特徴とするところは、下記の(i)〜(iv)の4点である。
(i)溶出温度が40℃以下の溶出物(S1)の割合が45〜65重量%
(ii)溶出温度が40〜60℃の溶出物(S2)の割合が10〜30重量%
(iii)溶出温度が60〜80℃の溶出物(S3)の割合が10〜35重量%
(iv)溶出温度が80℃以上の溶出物(S4)の割合が0〜2%重量
(i)溶出温度が40℃以下の溶出物(S1)は、低い結晶領域の成分である。本発明においては低温シール性を左右する因子となる。S1は、ポリエチレン樹脂組成物中の含有量として、45〜65重量%、好ましくは50〜65重量%、より好ましくは55〜60重量%である。S1が上記範囲より高いとべたつきが生じたり、滑り性が悪化したり、また高温シール領域での結晶化が遅く、発泡が生じ易い。また、S1が上記範囲より低いと低温でのシール性が劣る。S1は、エチレン・α−オレフィン共重合体において、エチレン含量が80〜60重量%程度(密度が0.86〜0.89g/cm3程度に相当する。)の成分によって構成されるものであり、かかる成分の増減によりS1を変化させることができる。またS1は、その重量平均分子量(Mw1)が好ましくは50000〜70000であり、より好ましくは55000〜65000である。
(ii)溶出温度が40〜60℃の溶出物(S2)は、S1に比べて相対的に結晶性が高い成分となる。S2の存在により、ヒートシール時の結晶化速度が速くなり、その結果シール外観がきれいになる。S2は、ポリエチレン樹脂組成物中の含有量として、10〜30重量%、好ましくは15〜30重量%、より好ましくは20〜30重量%である。但しS2が上記範囲より高いと低温シール性が悪化する。また、S2が上記範囲より低いとシール後退が生じ、包装製品の外観が損なわれたり、高温で発泡が生じ、外観を損なう。S2は、エチレン・α−オレフィン共重合体において、エチレン含量が80〜90重量%程度(密度が0.89〜0.91g/cm3程度に相当する。)の成分によって構成されるものであり、かかる成分の増減によりS2を変化させることができる。またS2は、その重量平均分子量(Mw2)が好ましくは60000〜80000であり、より好ましくは65000〜75000ある。
上記S2の重量平均分子量(Mw2)とS1の重量平均分子量(Mw1)の比(Mw2/Mw1)が1〜2であることが好ましく、より好ましくは1〜1.5である。Mw2/Mw1が上記範囲より高いと低温シール時にシール後退が生じやすく、Mw2/Mw1が上記範囲より低いと高温シール時に発泡が生じやすいので好ましくない。なお、平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によったが、詳細は後記する。
(iii)溶出温度が60〜80℃の溶出物(S3)は、S1、S2に比べて更に結晶性の高い成分である。本発明においては耐熱性、押出ラミネート加工性を左右する因子となる。S3は、ポリエチレン樹脂組成物中の含有量として、10〜35重量%、好ましくは15〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%である。但し、S3が上記範囲より高いと低温シール性が悪化し、上記範囲より低いと押出ラミネート加工時のネックインが悪化し、加工が困難になる。S3は高圧法低密度ポリエチレンの溶出温度がこの領域であるため、かかる成分の増減によりS3を変化させることができる。またS3は、その重量平均分子量が好ましくは150000〜220000であり、より好ましくは170000〜210000である。
(iv)溶出温度が80℃以上の溶出物(S4)は、上記S3(高圧法低密度ポリエチレン)よりも更に結晶性の高い成分である。本発明においては耐熱性、低温シール性阻害性を左右する因子となる。S4は、ポリエチレン樹脂組成物中の含有量として、0〜2重量%、好ましくは0〜1重量%、より好ましくは0重量%である。即ち、S4は実質的に存在しないことが最も好ましい。S4が上記範囲より高いと低温シール性が悪化するので好ましくない。S4は、エチレン・α−オレフィン共重合体において、エチレン含量が95〜100重量%程度の成分によって構成されるものであり、かかる成分の増減によりS4を変化させることができる。またS4は、その重量平均分子量について特に制約されない。
尚、TREFのデータはおおむね加成性が成り立つので、本発明の樹脂組成物を数種の共重合体の混合により製造する場合は、個々の共重合体や高圧法低密度ポリエチレンのTREFデータに基づいて所望のTREFパターンとなる混合比を予測したうえで、混合成分の割合を微増減させることもできる。
(TREFの測定方法)
次にTREF測定の具体的な方法について説明する。カラム温度の降下速度は、試料に含まれる結晶性成分の各温度における結晶化に必要な速度に、また、カラム温度の上昇速度は、各温度における溶出成分の溶解が完了し得る速度に調整する必要があり、このようなカラム温度の冷却速度及び昇温速度は、予備実験をして決定する。測定条件は次の通り。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
溶出温度
0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140の各温度(℃)
(TREFのデータ解析)
TREF測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムは、装置付属のデータ処理プログラムにより処理され、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。
[図1]において、実線は、実施例1で得られたポリエチレン樹脂組成物に係る微分溶出曲線を、また破線は積分溶出曲線である。32℃及び66℃付近に二山の溶出量ピークを有しており、溶媒に対する溶解特性の異なる成分の分布が広いことが了解される。その上に、溶出温度が80℃を超える領域における溶出成分が極めて少ないことが特徴である。また、同様に[図2]〜[図5]は実施例2〜5についての溶出曲線を、[図6]〜[図12]は比較例1〜7についての溶出曲線をそれぞれ示す。
[図7]は、比較例2で得られたポリエチレン樹脂組成物に係る溶出曲線である。31℃付近に極めて大きな溶出量ピークを有している他、46℃及び66℃付近に小さな溶出量ピークを有し、かつ溶出温度が80℃を超える領域における溶出成分もかなり存在することが特徴である。
(B)密度特性
ポリエチレン樹脂組成物の密度が0.88〜0.94g/cm3、特に0.88〜0.91g/cm3であることが好ましい。密度が上記範囲より高いと低温ヒートシール性に劣る。密度が上記範囲より低いと高温でシールした際に発泡しやすいので好ましくない。なお、密度の測定はJIS−K6922−2:1997付属書(23℃)に準拠して行った。
(C)メルトフローレート(MFR)特性
190℃におけるメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分、好ましくは2〜50g/10分、より好ましくは4〜20g/10分である。MFRが上記範囲より低いと樹脂を溶融押出する際の押出負荷が高くなり、また成形時フィルム表面の肌荒れが発生するので好ましくない。MFRが上記範囲を超えるとヒートシール時のホットタック性が低下したり、包装材料とした際の強度が下がるので好ましくない。なお、MFRの測定はJIS−K6922−2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して行った。
(D)スウェル比(SR)特性
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、そのスウェル比(SR)が好ましくは1.5以上、より好ましくは1.55以上のものである。SRが上記範囲未満では押出ラミネート加工時のネックインが大きくなり易く、加工が困難となるので好ましくない。SRの上限は特にないが、2.0未満程度が好ましい。SRが2.0を越えると高速での加工性が悪化しやすい。なお、SRの測定条件は下記の通りである。
装置:タカラ工業社製メルトインデクサー
ノズル:L=8/D=2.095mm
温度:240℃
押出量:3g/分(73秒-1に相当)
径測定:押出ストランドをノズル下1cmのところでエタノールに受け、冷却し、径をノギスで測定する。測定径とノズル径(2.095mm)との比からSRを算出する。
(分子量の測定)
分子量の測定はクロス分別クロマトグラフ(CFC)で行った。CFCは、結晶性分別を行う昇温溶離分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る。このCFCを用いた分析は次のようにして行われる。まずポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHT(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン)を含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器によりクロマトグラムが得られる。その間TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。測定条件の詳細は下記の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:
0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140の各温度
赤外検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器
測定波長3.42μm
(データの解析方法)
TREF測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムは、装置付属のデータ処理プログラムにより処理され、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。
また、各クロマトグラムから、次の手順により分子量分布が求められる。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量(M)への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式
[η]=K×Mα
において、K及びαとして以下の数値を用いる。
K=3.92×10-4、α=0.733
なお、第1溶出温度でのクロマトグラムでは、溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合があるが、その際は[図13]のようにベースラインを引き分子量分布を求める区間を定める。
(積層フィルムの製造)
本発明のポリエチレン樹脂組成物を基材上に積層することで包装用のフィルムとすることができる。詳しくは、基材の一方の側に本発明の樹脂組成物からなる層をヒートシール層として積層した包装材料である。積層体を構成する基材層としては、紙、アルミニウム箔、セロファン、織布、不織布、高分子重合体のフィルム、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等のフィルムを挙げることができる。更に上記フィルム1種類単独でも、2種類以上の複合使用でも良く、また、基材の種類によっては延伸加工を行ったものでも良い。特に一軸、又は二軸延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエチエンテレフタレートフィルム、延伸ポリスチレンフィルムなども用いられる。更に、上記基材上にポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコールなどをコーティングしたものや、アルミ、アルミナやシリカ、又はアルミナ及びシリカの混合物を蒸着した基材を用いてもよい。液体や粘体の包装材料としては二軸延伸ナイロンフィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、又はそれら基材上にシリカやアルミナを蒸着したものが多く用いられている。
基材の表面にヒートシール層を設ける方法は、特に制限されず公知の方法に従って実施することができる。例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出法、サンドイッチラミネート法、共押出法等がある。ドライラミネーション等に使用するヒートシール層用フィルムは、上記エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂を用いてカレンダー法、空冷インフレーション法、水冷インフレーション法、Tダイ成形法など任意の方法で製造することができる。また、押出法の場合は、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法(接着層を設けない共押出、接着層を設ける共押出、接着樹脂を配合する共押出等を含む)等の方法がある。本発明の樹脂組成物からなる積層フィルムで液体、粘体の包装材料を作る方法としては、タンデム押出ラミネート法が多く用いられている。これは押出ラミネート法にて基材上に1層目として中間層を、更に2層目としてシーラント層というように2種類の樹脂層を逐次積層する方法であり、生産性と品質の面で好適である。
積層フィルム全体の厚み及び各層の厚み並びに厚み比については特に制限はなく、内容物や用途等に応じて適宜決定すればよいが、具体的には、積層フィルム全体の厚みは40〜120μm、基材層の厚みは10〜40μm、シーラント層の厚みは10〜40μm程度が好ましい。中間層を設ける場合は、該中間層の厚みは20〜40μm程度が好ましい。また、積層の際は、基材表面の接着性をよくするために、予め基材上にコロナ放電処理、オゾン処理、フレーム処理等の表面処理を行うことができる。さらに、接着性増強等のために、予め基材上にアンカーコート剤を塗布してから積層するのが好ましい。アンカーコート剤としては、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系等のものが挙げられる。
このようにして得られる本発明の積層フィルムは、種々の包装材、例えば食品包装材、医療用包装材、エンジンオイルなどの工業材料包装材等として用いることができる。特に、液体、繊維、粉体等の固形状の不溶物を含む液体、粘体等の流体を内容物として収容するための包装材として好適に用いられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において使用したエチレン・α−オレフィン共重合体は、以下に示す方法で製造した。物性値を[表1]にまとめた。
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体の製造
(1−1)触媒の調製は、特表平7−508545号公報に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等倍モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
(1−2)重合
<PE−1>
内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を内圧130MPaに保ち、原料ガスとしてエチレンと1−ヘキセンとの混合物を、1−ヘキセンの組成が74重量%となるように40kg/時の割合で連続的に供給した。また、上記触媒溶液を連続的に供給し、重合温度が137℃を維持するようにその供給量を調整した。1時間あたりのポリマー生産量は約3.4kgであった。得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE−1)の物性を測定したところ、1−ヘキセン含有量25重量%、MFR10g/10分、密度0.880g/cm3、Q値2.3であった。PE−1のTREF溶出曲線は32℃に単一ピークを有する比較的シャープな形状であった。
<PE−2>
エチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が60重量%となるように、また、重合温度が147℃を維持するように触媒供給量を調整した以外は、PE−1と同様に実施した。1時間あたりのポリマー生産量は約2.4kgであった。得られたPE−2は、1−ヘキセン含有量14重量%、MFR4g/10分、密度0.900g/cm3、Q値2.3であった。PE−2のTREF溶出曲線は59℃に単一ピークを有する比較的シャープな形状であった。
<PE−3>
エチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が64重量%となるように、また、重合温度が160℃を維持するように触媒供給量を調整した以外は、PE−1と同様に実施した。1時間あたりのポリマー生産量は約3.6kgであった。得られたPE−2は、1−ヘキセン含有量15重量%、MFR17g/10分、密度0.900g/cm3、Q値2.3であった。PE−3のTREF溶出曲線は47℃に単一ピークを有する比較的シャープな形状であった。
<PE−4>
市販のエチレン・1−ヘキセン共重合体(日本ポリエチレン社製ハーモレクスNC585A、メタロセン触媒使用)を使用した。 PE−4は1−ヘキセン含有量5.2重量%、MFR6g/10分、密度0.930g/cm3、Q値2.6であった。PE−4のTREF溶出曲線は、83℃のメインピークと90℃のサブピークを有する二山の形状であった。
<PE−5>
市販のエチレン・1−オクテン共重合体(デュポンダウエラストマー社製エンゲージEG8200、メタロセン触媒使用)を使用した。PE−5は、1−オクテン含有量24.8重量%、MFR5g/10分、密度0.870g/cm3、Q値2.4であった。PE−5のTREF溶出曲線は28℃に単一ピークを有する比較的シャープな形状であった。
<LDPE>
市販の高圧法低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製ノバテックLD LC604)を使用した。LDPEは、MFR8g/10分、密度0.918g/cm3であった。LDPEのTREF溶出曲線は67℃に単一ピークを有するシャープな形状であった。
以下の実施例及び比較例におけるフィルムの評価方法は次の通りである。
(1)押出ラミネート加工による包装用フィルムの作成
口径90mmφの押出機に装着したTダイスから押し出される樹脂の温度が300℃になるように設定した押出しラミネート装置を用い、冷却ロール表面温度25℃、ダイス幅600mm、ダイリップ開度0.7mmで引き取り加工速度が100m/分の場合に被覆厚みが25μmになるように押出量を調整して溶融押出した。一方、幅500mm、厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ社製エンブレムONM)を基材層として、その上に、イソシアネート系アンカーコート剤(日本曹達製チタボンドT120溶液)をボウズロールにて塗工しながら、またラミネート部にてオゾン吹きつけを行いながら中間層材料として日本ポリエチレン社製カーネルKC574(MFR;9g/10分、密度;0.911g/cm3)を引き取り速度100m/分、被覆厚み25μmで押出しラミネート加工を行った。さらにこの中間層の上に同じ押出ラミネート装置を用い、本発明によるポリエチレン樹脂組成物を押出樹脂温度280℃、引き取り速度100m/分、被覆厚み25μmで押出ラミネート加工を行い、積層を行った。加工後の積層フィルムを45℃のオーブン内にて24時間のエージングを行い、その後幅130mmにスリットすることで評価用の包装フィルムを得た。
(2)押出ラミネート加工性評価
上記のポリエチレン樹脂組成物の押出ラミネート加工時に、ダイスの幅と得られた製品の幅の差をネックインとし、加工性の尺度とした。ネックインが小さいほど加工性が優れる。
(3)液体充填適性の評価
粘性体自動充填包装機(小松製作所社製、SKL−1000)を用いて、次の条件で液体を充填し、充填速度、袋の耐圧強度、外観を評価した。
[充填条件]
シール温度:(縦)190℃、(横)130℃〜190℃
包装形態:三方シール
袋寸法:幅65mm×縦80mmピッチ
充填物:水 26℃
充填量:約15cc
充填速度:20〜25m/分
[低温充填適性(最低耐圧温度)の判定基準]
種々の温度、充填速度で充填を行い、耐圧テスター(小松製作所社製)にて充填後の袋に100kgの荷重を3分間掛け、耐圧試験を行い、破袋、又は洩れの発生しない最低温度で評価した。最低耐圧温度は低い方が望ましい。
[高温充填適性(発泡開始温度)評価]
種々の温度、充填速度で充填を行い、横シール部が発泡し始める最低温度で評価した。発泡開始温度は高い方が望ましい。
[実施例1]
エチレン・α−オレフィン共重合体としてPE−1 65重量%、PE−2 10重量%、PE−4 1重量%、高圧法低密度ポリエチレンとして、ノバテックLD LC604(日本ポリエチレン社製、密度0.918g/cm3、MFR8g/10分)24重量%を用いた。上記樹脂と脂肪族アミド系スリップ剤0.05部をブレンダーにて良くブレンドし、溶融押出してペレットとし、ポリエチレン樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性を表2に示す。次に押出ラミネート加工とこれに続く後処理により、評価用の包装用フィルムを得、押出ラミネート加工時のネックインを評価した。更に液体充填装置による充填評価を行い、最低耐圧温度と発泡開始温度を評価した。これらの結果を表2に示す。TREF曲線はPE−1に基づく32℃のピークと、LDPEに基づく66℃のピークが大きく観察され、他にPE−2に基づく59℃の小さなピークが認められた。
[実施例2]
エチレン・α−オレフィン共重合体としてPE−1 45重量%、PE−2 30重量%、高圧法低密度ポリエチレンとして、ノバテックLD LC604 25重量%を用いた。それ以外は実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。TREF曲線は、実施例1と比較して、主にPE−1とPE−2の量が変化したことに伴い、32℃にピークを有する成分と59℃にピークを有する成分の溶出量が変化した。
[実施例3]
エチレン・α−オレフィン共重合体としてPE−1 60重量%、PE−2 30重量%、高圧法低密度ポリエチレンとして、ノバテックLD LC604 10重量%を用いた。それ以外は実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。TREF曲線は、実施例1と比較して、主にPE−2とLDPEの量が変化したことに伴い、59℃にピークを有する成分と67℃にピークを有する成分の溶出量が変化した。
[実施例4]
エチレン・α−オレフィン共重合体としてPE−1の代わりに、PE−5を用い、それ以外は実施例2と同様にして評価した結果を表2に示す。TREF曲線は、実施例1と比較して、PE−1に相当する32℃にピークを有する成分が消失し、28℃にピークを有する成分が現れた。
[実施例5]
エチレン・α−オレフィン共重合体としてPE−1 57重量%、PE−2 28重量%、高圧法低密度ポリエチレンとして、ノバテックLD LC604 15重量%を用いた。それ以外は実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。TREF曲線は、実施例2と比較して、主にPE−1とLDPEの量が変化したことに伴い、32℃にピークを有する成分と67℃にピークを有する成分の溶出量が変化した。
[比較例1]
エチレン・α−オレフィン共重合体としてPE−1 50重量%、PE−2 25重量%、PE−4 5重量%、高圧法低密度ポリエチレンとして、ノバテックLD LC604 20重量%を用いた。それ以外は実施例1と同様にして評価した結果を表3に示す。TREF曲線は、実施例1と比較して、増加したPE−4の量に応じて83℃にピークを有する成分が増加した。これによりS4の割合が範囲外のものとなり、20m/分で充填した際の最低耐圧温度が悪化した。
[比較例2]
エチレン・α−オレフィン共重合体としてPE−1 70重量%、PE−3 20重量%、PE−4 5重量%、高圧法低密度ポリエチレンとして、ノバテックLD LC604 5重量%を用いた。それ以外は実施例1と同様にして評価した結果を表3に示す。TREF曲線は、実施例1と比較して、増加したPE−4の量に応じて83℃にピークを有する成分が増加し、減少したLDPEの量に応じて67℃にピークを有する成分が減少した。これによりS4、S3の割合が範囲外のものとなり、25m/分で充填した際の発泡開始温度が悪化した。
[比較例3]
エチレン・α−オレフィン共重合体としてPE−1 60重量%、高圧法低密度ポリエチレンとして、ノバテックLD LC604 40重量%を用いた。それ以外は実施例1と同様にして評価した結果を表3に示す。TREF曲線は、実施例3と比較して、主にPE−2とLDPEの量が変化したことに伴い、59℃にピークを有する成分と67℃にピークを有する成分の溶出量が変化した。特にS2成分が減少したことにより、最低耐圧温度、発泡開始温度ともに悪化した。
[比較例4]
エチレン・α−オレフィン共重合体としてPE−1 30重量%、PE−2 40重量%、高圧法低密度ポリエチレンとして、ノバテックLD LC604 30重量%を用いた。それ以外は実施例1と同様にして評価した結果を表3に示す。TREF曲線は、実施例2と比較して、主にPE−1とPE−2の量が変化したことに伴い、32℃にピークを有する成分と59℃にピークを有する成分の溶出量が変化した。特にS1成分が減少したことにより、最低耐圧温度が悪化した。
[比較例5]
ヒートシール層用原料樹脂組成物として市販されているモアテック0818D(出光石油化学製、チーグラーLLDPE、密度0.908g/cm3、MFR8g/10分)を単独で用いた。それ以外は実施例1と同様にして評価した結果を表3に示す。TREF曲線は、低温側にショルダーを有する65℃のメインピークと、92℃のサブピークを有するものであった。S1が過少、S3、S4が過大のため最低耐圧温度が悪化した。
[比較例6]
ヒートシール層用原料樹脂組成物として市販されているアフィニティPT1450(ダウ・ケミカル製、メタロセンLLDPE、密度0.905g/cm3、MFR8g/10分)を単独で用いた。それ以外は実施例1と同様にして評価した結果を表3に示す。TREF曲線は、61℃に比較的シャープな単一ピークを有するものであった。S1が過少、S2、S3が過大のため最低耐圧温度が悪化した。
[比較例7]
PE−2を30重量%使用する代わりにモアテック0818D 30重量%を用いる以外は実施例3と同様にして評価した結果を表3に示す。TREF曲線は、モアテック0818Dに足りない成分であったS1成分が補充された形となったが、モアテック0818Dに由来するS4成分が過大に含まれるため、最低耐圧温度が悪化した。
ポリエチレン樹脂組成物(実施例1)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(実施例2)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(実施例3)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(実施例4)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(実施例5)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(比較例1)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(比較例2)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(比較例3)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(比較例4)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(比較例5)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(比較例6)の溶出曲線である。 ポリエチレン樹脂組成物(比較例7)の溶出曲線である。 クロス分別クロマトグラフ(CFC)のベースライン図である。

Claims (6)

  1. ダイロール方式の自動充填機に用いる包装用フィルムであって、少なくとも、基材上にヒートシール層を積層した積層体からなり、該ヒートシール層を構成するポリエチレン樹脂組成物が、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体60〜95重量%と、高圧法低密度ポリエチレン5〜40重量%を配合してなるポリエチレン樹脂組成物であって、該エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体は複数の共重合体から構成され、かつ該組成物が下記
    (A)〜(C)を満足するポリエチレン樹脂組成物であることを特徴とする包装用フィルム。
    (A)オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)〜(iv)を満たす。
    (i)溶出温度が40℃以下の溶出物(S1)の割合が45〜65重量%
    (ii)溶出温度が40〜60℃の溶出物(S2)の割合が10〜30重量%
    (iii)溶出温度が60〜80℃の溶出物(S3)の割合が10〜35重量%
    (iv)溶出温度が80℃以上の溶出物(S4)の割合が0〜2%重量
    (B)密度が0.88〜0.94g/cm3
    (C)190℃におけるメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分
  2. エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体がメタロセン触媒を用いて製造されることを特徴とする請求項1に記載の包装用フィルム。
  3. クロス分別クロマトグラフ(CFC)により求めた溶出温度が40〜60℃の溶出物(S2)の重量平均分子量Mw2と、溶出温度が40℃以下の溶出物(S1)の重量平均分子量Mw1の比(Mw2/Mw1)が1〜2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用フィルム。
  4. 240℃、73秒-1の条件で測定したスウェル比(SR)が1.5以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装用フィルム。
  5. エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体として、密度又はMFRを異にする少なくとも2種以上の共重合体を使用することを特徴とする請求項1に記載の包装用フィルム。
  6. エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体として、密度0.86〜0.89g/cm3の共重合体35〜70重量%と密度0.89超〜0.91g/cm3の共重合体5〜35重量%とを使用する請求項5に記載の包装用フィルム。
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