JP4812034B2 - メタクリル酸製造用触媒の製造方法、メタクリル酸製造用触媒、およびメタクリル酸の製造方法 - Google Patents

メタクリル酸製造用触媒の製造方法、メタクリル酸製造用触媒、およびメタクリル酸の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リン、モリブデンを含むヘテロポリ酸系メタクリル酸製造用触媒の製造方法、メタクリル酸製造用触媒、およびメタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法に関する。
メタクロレインを気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に使用する触媒に関しては数多くの提案がなされている。これら提案は主として触媒を構成する元素およびその比率に関するものである。該気相接触酸化は発熱反応であるため、触媒層で蓄熱が起こる。蓄熱の結果生じる局所的異常高温帯域はホットスポットと呼ばれ、この部分の温度が高すぎると過度の酸化反応を生じるので目的生成物の収率は低下する。このため、該酸化反応の工業的実施において、ホットスポットの温度抑制は重大な問題であり、特に生産性を上げるために原料ガス中におけるメタクロレイン濃度を高めた場合、ホットスポットの温度が高くなる傾向があることから反応条件に関して大きな制約を強いられているのが現状である。
したがって、ホットスポット部の温度を抑えることは工業的に高収率でメタクリル酸を生産する上で非常に重要である。また、特にモリブデン含有固体酸化触媒を用いる場合、モリブデン成分が昇華しやすいことから、ホットスポットの発生を防止することは重要である。
ホットスポット部の温度を抑える方法として、これまでにいくつかの提案がなされている。例えば特許文献1には、触媒組成を変動させて調製した活性の異なる複数個の触媒を原料ガス入口側から出口側に向かって活性がより高くなるように充填し、この触媒層にメタクロレインおよび酸素を含む原料ガスを流通させる方法が開示されている。
特許文献2では、触媒の活性を均一にする方法として、アンモニア及び/または水蒸気を厳密に管理された濃度で含んだガス流通下300℃〜500℃の温度で熱処理するに際し、焼成温度までの昇温速度を10〜100℃/hとする方法が開示されている。また、特許文献3では、アンモニウム根を含むメタクリル酸製造用触媒成型物を充填した充填層内の焼成において充填層内の最大温度を180℃〜260℃に設定することが記載されている。その実施例では、触媒成型物を空気気流中で室温から220℃まで50℃/hの速度で昇温し、さらに230℃まで5℃/hの速度で昇温した後、230℃にて5時間保持し、空気気流中で250℃まで昇温し250℃にて3時間保持した後、窒素気流中、50℃/hの速度で435℃まで昇温し、435℃で3時間保持した後、さらに空気気流中で390℃にて3時間の順に焼成し、触媒を得る方法が記載されている。
しかし、これらの特許文献1及び2の方法ではホットスポット部の温度制御が十分でなく、過度な酸化反応が発生しないよう低い負荷で反応せざるを得なくなるため、メタクリル酸の収率が低くなるという問題があった。また、本発明者らの検討結果によれば特許文献4の方法では、230℃で約13.5時間とアンモニウムが脱離しやすい温度域で長時間にわたって温度を保持しており、触媒層全体が過度に活性が高くなる問題が発生する。すなわち、触媒層の活性が高くなりすぎることによって、反応初期の反応温度を高くすることができなくなり、そのため反応初期の収率が低下する問題があった。
特開平4−210937号公報 特開昭58−61833号公報 特開2003−10700号公報
本発明は、固定床管型反応器にてメタクロレインを固体酸化触媒の存在下に分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法において、ホットスポット部の温度を十分に抑制するメタクリル酸製造用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題は、触媒前駆体を300℃〜500℃最終熱処理して活性化する触媒の製造方法において、200℃〜265℃の昇温速度を10℃/hr未満で熱処理することにより達成される。
すなわち、本発明は、リン、モリブデンを含むヘテロポリ酸系メタクリル酸製造用触媒を製造する方法であって、触媒前駆体を300℃〜500℃で最終熱処理して活性化する触媒の製造方法において、200℃〜265℃の温度範囲を連続的に昇温速度10℃/hr未満で熱処理することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法である。
本発明の方法により製造された触媒を使用することにより固定床管型反応器にてメタクロレインを分子状酸素で気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に、ホットスポット部の温度を十分に抑制することができる。
本発明の方法で製造されるメタクリル酸製造用触媒は、リン、モリブデンを含むヘテロポリ酸系複合酸化物であって、メタクロレインを分子状酸素により接触酸化してメタクリル酸を製造する触媒であり、下記式(1)で表される組成を有することが好ましい。
MoCu (1)
(式中、Mo、P、Cu、VおよびOはそれぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素を表し、Xは鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Yはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。ただし、a、b、c、d、e、fおよびgは各元素の原子比を表し、a=12のとき、0.1≦b≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦3、0≦e≦10、0.01≦f≦3であり、gは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。)
本発明の方法で製造されるメタクリル酸製造用触媒は、触媒前駆体を特定の温度範囲において昇温速度を制御して熱処理し、300℃〜500℃で最終熱処理して活性化する方法により製造される。
上記触媒前駆体の調製に用いる原料は特に限定されず、各元素の硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物、ハロゲン化物等を組み合わせて使用することができる。例えばモリブデン原料としてはパラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、塩化モリブデン等が使用できる。
上記触媒前駆体を調製する方法は特に限定されず、成分の著しい偏在を伴わない限り、従来からよく知られている蒸発乾固法、沈殿法、酸化物混合法等の種々の方法を用いることができる。
上記の調製方法により得られた触媒前駆体の形状及び成形方法については特に限定するものではなく、触媒の形状は、例えば球状、円柱状、円筒状、星型状等の任意の形状が挙げられる。触媒前駆体の粉体を成形して固体触媒を得るための手段としては、例えば打錠成型機、押出成形機、転動造粒機等の成形装置を使用した成形方法が挙げられる。なお、成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を添加してもよい。また、触媒前駆体を担持した担持成形体であってもよく、その場合の担体の種類としては、例えばシリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、マグネシア、チタニア等の担体が挙げられる。
このようにして得られた触媒前駆体は、空気等の酸素含有ガス流通下または不活性ガス流通下で、メタクリル酸の製造で使用される固定床管型反応器を用いて熱処理することが好ましいが、従来公知の焼成炉でも熱処理することができる。焼成炉を使用する場合のその形態は特に制限もなく、固定層方式、流動層方式、回転炉、静置炉などの各種の焼成炉を使用することが出来る。焼成炉の形状は円筒状であっても、多角筒状その他の不定形の断面形状を有するものであってもよく、各種形状の焼成炉を使用できる。
本発明において、固定床管型反応器を用いて触媒前駆体を熱処理する場合、触媒前駆体層とは、固定床管型反応器の反応管内において少なくとも触媒前駆体が含まれている空間部分を指す。すなわち、触媒前駆体だけが充填されている空間だけでなく、触媒前駆体が不活性担体等で希釈されている空間部分も触媒前駆体層とする。ただし、反応管両端部の何も充填されていない空間部分や不活性担体等だけが充填されている空間部分は、触媒前駆体が実質的に含まれないので触媒前駆体層には含まない。
本発明のメタクリル酸の製造で用いられる固定床管型反応器は特に限定されないが、工業的には内径10〜40mmの反応管を数千〜数万本備えた多管式反応器が好ましい。また、固定床管型反応器は熱媒浴を備えたものが好ましい。熱媒は特に限定されないが、例えば、硝酸カリウムおよび亜硝酸ナトリウムを含む塩溶融物が挙げられる。
上記固定床型反応器は、熱媒を加熱するヒータの出力を任意に制御できる構造であることが好ましく、熱処理開始前の温度から任意の熱処理目標温度まで温度を上昇させる昇温速度を任意に制御できる構造であることが好ましい。
熱媒は、予め予備のタンクで任意の温度に加熱しておき、この熱媒を固定床管型反応器の熱媒浴に供給する構造であることが好ましい。また供給された熱媒は、固定床管型反応器の熱媒浴の出口から再び予備のタンクに戻り、再び循環する構造となっていることが好ましい。
本発明における熱処理の温度は、上記固定床管型反応器を熱処理容器とした場合、熱媒浴への熱媒供給口における熱媒の実測温度とする。
触媒前駆体の熱処理は、用いる触媒原料、触媒組成、調製条件等によって異なるので一概に言えないが、空気等の酸素含有ガス流通下および/または不活性ガス流通下で行う。
触媒前駆体の熱処理における流通ガスの空間速度(以下、SVと略記する。)は、熱処理に用いる装置、炉の大きさに合わせて自由に決めることができるが、100〜30000h-1が適当であり、特に300〜10000h-1の範囲が好ましい。この範囲より低い空間速度では、流通ガスの下流域において触媒の活性が充分に発現しない恐れがある。またこの範囲より高い空間速度では、触媒そのものを崩壊、粉化させてしまう恐れがある。
また、焼成ガスを流通させる方向は、特に限定するものではないが、熱処理終了後に、反応ガスを流通させるときの方向と逆の方向に流通させておくことが好ましい。反応ガスの流通方向と逆の方向に流通させることによって、反応時における触媒の反応ガス入り側部分において、過度に活性が高くなることを予防することができる。
上記触媒前駆体の熱処理温度は、最終的に300℃〜500℃にまで高められるが、本発明では上記熱処理工程において、熱処理開始前の温度から任意の最終熱処理温度までのうち、特定の温度範囲において昇温速度を制御する。すなわち、200℃〜265℃の温度範囲において、昇温速度を10℃/hr未満とする。上記の温度域は、触媒前駆体中のアンモニウム根が脱離する温度域であり、この温度域での昇温速度を10℃/hr未満とすることによって、アンモニウム根の急激な脱離を抑制することができ、触媒前駆体中の残アンモニウム量の斑が低減されることによって、活性が均一な触媒層となり、ホットスポットの発生を抑制することができると推測される。
200℃〜265℃の温度範囲の昇温方法としては、連続的に昇温することが必要である。すなわち、200℃〜265℃の温度範囲において、昇温を一時的に停止して任意の温度で保持するといった操作は行わない。例えば、特許文献3では、室温から220℃に昇温した後、昇温操作を停止して220℃で22時間保持している。このような操作を行うことによって、特許文献3では触媒中のアンモニウム根の脱離が進行して、最終的にアンモニウム根が残存しなくなる。このような触媒は、反応初期の活性が高くなりすぎることによって、初期の反応負荷を上げられなくなるため、結果的に初期の収率が低くなることがある。
一方、本発明では触媒中のアンモニウム根を完全に脱離させることなく、あくまでも触媒中のアンモニウム根をゆっくりと脱離させ、触媒中の残アンモニウム根に斑がないように熱処理されると推測される。
昇温速度の下限は、残アンモニウム根をある程度残存させることが重要であるとの点から1℃/hr以上が好ましく、3℃/hr以上であることがよりより好ましい。
熱処理開始前の温度は特に限定されないが、10〜200℃の範囲が好ましい。また熱処理開始前の温度から、上記の特定の温度範囲の下限温度までの昇温速度は、特に限定するものではないが、5℃/hr以上、50℃/hr以下であることが好ましい。
200℃〜265℃の範囲を10℃/hr未満の昇温速度で昇温が終了した後から、最終熱処理温度に到達するまでの昇温速度は特に限定されないが、熱処理時間を短縮する観点から10〜500℃/hrが好ましい。
本発明において、固定床管型反応器を用いずに、ガラス配管やステンレス配管等に充填して任意に過熱した上記条件の流通ガスを流通させて熱処理を行い、熱処理後の触媒を抜き取って反応管に充填し、反応を行っても良い。その際の、最終熱処理温度までの昇温方法としては、ガラス配管やステンレス配管等の周囲に熱媒槽を設けて、熱媒の温度を制御することによって熱処理を行うことが好ましい。
本発明のメタクリル酸の製造に際して、原料ガス中のメタクロレインの濃度は特に限定されるものではないが、通常1〜20容量%が適当であり、特に3〜10容量%が好ましい。原料メタクロレインは水、低級飽和アルデヒド等の不純物を少量含んでいてもよく、これらの不純物は反応に実質的な悪影響を与えない。
酸素源としては空気を用いるのが経済的であるが、必要ならば純酸素で富化した空気も用い得る。原料ガス中の酸素濃度はメタクロレインに対するモル比で規定され、この値は0.3〜4、特に0.4〜2.5が好ましい。原料ガスは窒素、水蒸気、炭酸ガス等の不活性ガスを加えて希釈してもよい。反応圧力は常圧から数気圧までがよい。反応温度は230〜450℃の範囲で選ぶことができるが、特に、250〜400℃が好ましい。
反応器の反応温度は、固定床管型反応器の熱媒浴への熱媒供給口における熱媒の実測温度とする。本発明でメタクリル酸を製造するときは、メタクロレインの転化率が一定となるように反応温度を制御する。すなわち、メタクロレインの転化率を一定に保つように、触媒の活性が低下してきたときは反応温度を上昇させて転化率を一定に保つように操作する。
また、ホットスポットの分布を測定する方法としては、ΔTを指標とする。ΔTは、「触媒層の温度−反応温度」で求める。触媒層の温度は、多管型反応器内部の各部の反応管における触媒層温度を満遍なく測定できるように、反応器の断面方向と縦方向複数本の熱電対を分散して配置することが好ましい。また、反応管の断面において、熱電対が中央に位置するように設置することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例および比較例中の「部」は質量部を意味する。触媒前駆体組成は触媒前駆体成分の原料仕込み量から求めた。反応器の熱媒としては硝酸カリウム50質量%および亜硝酸ナトリウム50質量%からなる塩溶融物を用いた。
触媒層の温度は、反応管の断面において中央に位置するよう熱電対を設置して測定した。また、多管型反応器内部の各部の反応管における触媒層の温度を満遍なく測定できるように、反応器の断面方向と縦方向で36箇所に熱電対を分散して配置し、各部の温度を測定した。原料ガスおよび反応生成ガスの分析はガスクロマトグラフィーにより行った。
熱媒浴の温度制御は、熱媒浴温度をフィードバックして、熱媒浴内に設置したヒータの出力を制御する機構を用いて、任意に設定した昇温速度に合わせてヒータの出力を自動的に制御できるものを用いた。熱処理温度は、固定床管型反応器の熱媒浴への熱媒供給口における熱媒の実測温度とした。反応は、メタクロレインの転化率が75%となるように、前記熱媒供給口における熱媒の実測温度をフィードバックして制御することで行う。反応温度は、固定床管型反応器の熱媒浴への熱媒供給口における熱媒の実測温度とする。
ホットスポットは触媒層のΔT(触媒層の温度−反応温度)により検出した。
ホットスポットの抑制効果は、反応が落ち着いてくる反応開始後5日目において、36箇所測定したΔTの最高値から平均値を減算した数値と、各ΔTの標準偏差によって判断した。ホットスポットは、局所的に反応が進んで発熱することであるから、上記の数値を計測することによってホットスポットの抑制効果を確認することができる。ホットスポット抑制効果の判断基準として、ΔTの最高値から平均値を減算した数値については12℃以下、且つ、各ΔTの標準偏差が6以下であれば、反応条件に関して大きな制約を強いることなく反応させることが可能でホットスポット抑制効果ありと判断した。
[実施例1]
パラモリブデン酸アンモニウム100部、メタバナジン酸アンモニウム2.8部および硝酸セシウム9.2部を純水300部に溶解した。これを攪拌しながら、85質量%リン酸8.2部を純水10部に溶解した溶液およびテルル酸1.1部を純水10部に溶解した溶液を加え、攪拌しながら95℃に昇温した。次いで硝酸銅3.4部、硝酸第二鉄7.6部、硝酸亜鉛1.4部および硝酸マグネシウム1.8部を純水80部に溶解した溶液を加えた。更にこの混合液を100℃で15分間攪拌し、得られたスラリーを噴霧乾燥機を用いて乾燥した。
得られた乾燥物100部に対してグラファイト2部を添加混合し、打錠成形機により外径5mm、内径2mm、長さ3mmのリング状に成形し、触媒前駆体1を得た。触媒前駆体1の組成は、酸素を除いた原子比で、Mo121.5Cu0.30.5Fe0.4Te0.1Mg0.15Zn0.1Csであった。
熱媒浴を備えた内径25.4mmの鋼鉄製固定床管型反応器の原料ガス入口側に触媒前駆体1を620mlと外径5mmのアルミナ球130mlを混合したものを充填し、出口側に触媒前駆体1を750ml充填した。このときの触媒前駆体層の長さは3005mmであった。
触媒前駆体を充填後、後段処理で反応ガスを供給する方向と逆の方向にSV1000h-1の空気を流通させた状態で、熱処理温度を室温25℃から200℃まで10℃/hrの昇温速度で昇温し、200℃から265℃の範囲を5℃/hrで昇温した。その後、265℃から377℃までの範囲を再び10℃/hrで昇温し、377℃となったところで昇温を止め、377℃で12時間保持した。377℃で12時間保持した後、熱処理温度を260℃まで25℃/hrの降温速度で下げた。
この後、反応管に流していた空気を一旦停止し、反応管にメタクロレイン5%、酸素12%、水蒸気10%および窒素73%からなる原料混合ガスを、反応温度290℃、接触時間4.5秒にて通過させて反応を開始した。その後、メタクロレインの転化率が75%となるまで反応温度を上昇した。反応管に原料ガスを流し始めてから5日目における各ΔTの最高値から平均値を減算した数値は10.64℃であり、各ΔTの標準偏差は5.43であった。
[比較例1]
触媒前駆体を充填後、熱処理温度を200℃から265℃の範囲を10℃/hrの昇温速度で昇温した以外は実施例1と同様に酸化反応を実施した。その結果、反応管に原料ガスを流し始めてから5日目における各ΔTの最高値から平均値を減算した数値は17.67℃であり、各ΔTの標準偏差は6.44となった。
[実施例2]
触媒前駆体を充填後、熱処理温度を室温25℃から200℃まで8.5℃/hrの昇温速度で昇温し、200℃から265℃の範囲を5℃/hrの昇温速度で昇温し、その後、265℃から377℃までの範囲を再び9℃/hrで昇温し、377℃となったところで昇温を止め、377℃で12時間保持した以外は実施例1と同様にして酸化反応を実施した。その結果、反応管に原料ガスを流し始めてから5日目における各ΔTの最高値から平均値を減算した数値は11.14℃であり、各ΔTの標準偏差は5.05であった。
[比較例2]
触媒前駆体を充填後、熱処理温度を200℃から265℃の範囲を25℃/hrの昇温速度で昇温した以外は実施例1と同様に酸化反応を実施した。その結果、反応管に原料ガスを流し始めてから5日目における各ΔTの最高値から平均値を減算した数値は18.21℃であり、各ΔTの標準偏差は7.82となった。
[実施例3]
触媒前駆体を充填後、熱処理温度を室温25℃から200℃までを10℃/hrの昇温速度で昇温し、200℃から265℃の範囲を8℃/hrの昇温速度で昇温し、その後、265℃から377℃までの範囲を再び10℃/hrで昇温し、377℃となったところで昇温を止め、377℃で12時間保持した以外は実施例1と同様にして酸化反応を実施した。その結果、反応管に原料ガスを流し始めてから5日目における各ΔTの最高値から平均値を減算した数値は11.59℃であり、各ΔTの標準偏差は5.64であった。
[実施例4]
触媒前駆体を充填後、熱処理温度を室温25℃から200℃まで10℃/hrの昇温速度で昇温し、200℃から265℃の範囲を3℃/hrの昇温速度で昇温し、その後、265℃から377℃までの範囲を再び10℃/hrで昇温し、377℃となったところで昇温を止め、377℃で12時間保持した以外は実施例1と同様にして酸化反応を実施した。その結果、反応管に原料ガスを流し始めてから5日目における各ΔTの最高値から平均値を減算した数値は11.24℃であり、各ΔTの標準偏差は5.13であった。
[比較例3]
触媒前駆体を充填後、熱処理温度を200℃から265℃の範囲を10℃/hrの昇温速度で昇温し、その後、265℃から377℃までの範囲を再び25℃/hrで昇温した以外は実施例3と同様に酸化反応を実施した。その結果、反応管に原料ガスを流し始めてから5日目における各ΔTの最高値から平均値を減算した数値は18.25℃であり、各ΔTの標準偏差は6.52となった。
[比較例4]
触媒前駆体を充填後、熱処理温度を室温から220℃まで50℃/hrで昇温し、次いで220℃から230℃の間を5℃/hrで昇温して5時間保持し、さらにその後、250℃まで50℃/hrで昇温して3時間保持し、さらに435℃まで50℃/hrで昇温して3時間保持し、その後435℃から390℃まで温度を下げて3時間保持した以外は実施例1と同様にして酸化反応を実施した。その結果、反応管に原料ガスを流し始めてから5日目における各ΔTの最高値から平均値を減算した数値は16.36℃であり、各ΔTの標準偏差は7.16となった。
実施例1〜4、比較例1〜4の各ΔTの最高値から平均値を減算した数値、各ΔTの標準偏差及び200℃から265℃の範囲の昇温速度を表1にまとめて示す。

Figure 0004812034

Claims (3)

  1. リン、モリブデンを含むヘテロポリ酸系メタクリル酸製造用触媒を製造する方法であって、触媒前駆体を300℃〜500℃で最終熱処理して活性化する触媒の製造方法において、200℃〜265℃の温度範囲を連続的に昇温速度10℃/hr未満で熱処理することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
  2. 請求項1記載の方法で製造された、リン、モリブデンを含むヘテロポリ酸系メタクリル酸製造用触媒が、次の式(1)で表される組成を有することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒。
    MoCu (1)
    (式中、Mo、P、Cu、VおよびOはそれぞれモリブデン、リン、銅、バナジウムおよび酸素を表し、Xは鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、クロム、タングステン、マンガン、銀、ホウ素、ケイ素、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、インジウム、イオウ、セレン、テルル、ランタンおよびセリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Yはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。ただし、a、b、c、d、e、fおよびgは各元素の原子比を表し、a=12のとき、0.1≦b≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦3、0≦e≦10、0.01≦f≦3であり、gは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比である。)
  3. 請求項2記載のメタクリル酸合成用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化することを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
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