JP4811970B2 - 難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびその発泡成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に関し、さらに詳しくはポリオレフィン系樹脂に難燃性付与剤として表面処理された無機物質を含有する難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびその発泡成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に難燃性を付与する方法として、有機系難燃剤、特にハロゲン系難燃剤が広く利用されており、これらの難燃剤を樹脂中に予め練り込む等して、難燃剤を含むポリオレフィン系樹脂から発泡粒子を得、これを型内成形して得られる発泡成形体に難燃性を付与するものがある。例えば、ハロゲン系有機系難燃剤を使用するものとして、例えば特開平10−147661号、特開平7−309967号等がある。難燃性を付与した発泡成形体を得る場合、比較的少ない添加量で難燃性を付与できるハロゲン系有機系難燃剤は発泡成形工程が行い易く、また、難燃剤を添加しない発泡成形体と比較して物性低下も少ないなどの利点がある。
【0003】
しかしながら、これら従来から使用されているハロゲン系難燃剤を使用して難燃性を付与した発泡成形体は、火炎との接触により容易に溶融し溶融液化物を生成する。この溶融液化物はすでに難燃効果は殆どんなく着火した溶融液化物が落下し周辺に存在する可燃物に着火する危険性がある。さらにハロゲン系難燃剤は着火時にハロゲンガスが発生する危険性がある。
【0004】
この問題を解決する方法として、他の難燃剤による難燃性付与が必要となり、その一般的手法としてはリン系難燃剤の添加、あるいは無機物の添加などの方法が考えられる。しかし、リン系難燃剤は難燃効果が低く、またハロゲン系難燃剤ほどではないがやはり着火した溶融液化物の発生は抑えられない。一方、無機物の添加については、燃焼時にも見かけ上樹脂の流動化を抑えることができるために着火した溶融液化物の発生を防ぐことができ、また、コスト面や燃焼時にハロゲンガスの発生がないという面からも有利である。
【0005】
しかし、無機物の添加により難燃性を付与することを発泡成形体に応用することには問題がある。すなわち、無機物により難燃性を得るには相当に多い配合割合での無機物の添加が必要であり、その結果、樹脂特性を阻害し製品物性を低下させる虞れがある。特に、難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡成形体を得るためには非発泡性である無機物の配合比率が高いことから、気泡が破泡し易く、その結果、発泡粒子が収縮し、良好な発泡体が得られ難いという問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の点に鑑み、本発明は燃焼持に有害なハロゲンガスなどの発生がなく、着火した溶融液化物の滴下を伴わない無機物質を難燃剤として使用し型内成形性が良好な難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびその発泡成形体を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、難燃性を付与するに十分な量の無機物質を使用しても発泡体の気泡を破泡させず型内成形性に優れた発泡粒子を得るべく、鋭意検討した結果、表面処理剤で表面処理された無機物を使用し、かつ発泡粒子に特定の高温吸熱ピーク熱量を持たせることにより良好な発泡成形体を得ることができると共に、燃焼時の溶融液化物の滴下がない難燃性の極めて高い発泡粒子が得られることを見出し、さらに、難燃助剤としてある種のシリコーン組成物を添加することにより、成形時の成形温度範囲を広くすることが見出され、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリオレフィン系樹脂(i)20重量%〜70重量%、表面処理剤で表面処理された無機物質(ii)30重量%〜80重量%(ただし、成分(i)と成分(ii)との合計は100重量%である)を主成分とする樹脂組成物からなる難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、かつ該発泡粒子の高温吸熱ピーク熱量が2〜20J/gであり、該ポリオレフィン系樹脂が、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体、直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1種または2種以上の混合物であり、該無機物質が無機水酸化物であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に関する。
【0009】
本発明は、表面処理剤が高級脂肪酸、有機珪素化合物、アルミニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤の少なくとも1種である上記記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に関する。
【0010】
また、本発明は、上記ポリオレフィン系樹脂と上記無機物質とを主成分とする樹脂組成物100重量部に対して、難燃助剤としてシリコ−ン組成物1〜10重量部添加することを特徴とする上記記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に関する。
【0011】
さらに、本発明は、上記の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなる難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡成形体に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂(i)20重量%〜70重量%、表面処理剤で表面処理された無機物質(ii)30重量%〜80重量%(ただし、成分(i)と成分(ii)との合計は100重量%である)を主成分とする樹脂組成物からなる難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、かつ該発泡粒子の高温吸熱ピーク熱量が1〜30J/gである難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に関する。
【0013】
本発明において、難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の基材樹脂を構成する上記ポリオレフィン系樹脂は、上記樹脂組成物中20重量%〜70重量%で使用される。ポリオレフィン系樹脂の割合が20重量%を下回る場合には良好な発泡粒子は勿論、発泡成形体を得ることができない。一方、70重量%を上回る場合には、目的とする難燃化を達成することが困難となり、難燃性を付与した発泡成形体を得ることができない。気泡膜の破泡がなく良好な発泡粒子の製造、発泡成形体の収縮がなく寸法精度が高く、外観が良好であり、難燃性に優れた発泡成形体を得るには、特に30重量%〜65重量%が好ましく、更に好ましくは、40重量%〜60重量%である。
【0014】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を構成するポリオレフィン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、プロピレン単独重合体のポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体、が挙げられる。またこれらの他にエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のオレフィン系モノマーとこれらオレフィン系モノマーと共重合し得るスチレン等のモノマーとの共重合体も使用することができる。
【0015】
上記のポリオレフィン系樹脂は、緩衝性、圧縮歪回復性が良好であり、さらに剛性の点から、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体が好ましい。
【0016】
上記ポリオレフィン系樹脂は、過酸化物や放射線により架橋したものも用いてもよく、無架橋のまま用いてもよいが、生産工程が簡易でリサイクルの可能な無架橋のものを用いるのが好ましい。
【0017】
上記ポリオレフィン系樹脂は、1種または2種以上の混合物として使用することができる。また必要に応じて、他の熱可塑性樹脂、例えばポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン等を所望に応じて混合することができる。この場合ポリオレフィン系樹脂が少なくとも70重量%,好ましくは85重量%以上含有するように調製することが好ましい。
【0018】
本発明に使用される難燃性能を付与する無機物質としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の無機炭酸塩、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム等の無機亜硫酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の無機硫酸塩、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の無機酸化物、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩、その他タルク、クレー、カオリン、ゼオライト等の粘土または天然鉱物が例示される。
【0019】
これらの無機物質は、30重量%〜80重量%の範囲で使用されるが、80重量%を超える多量の使用は樹脂との混合性、また発泡粒子の特性が損なわれる虞れがある。一方、30重量%より少ない使用量では、所期の目的とする難燃効果が得られない。したがって、無機物質の添加量は35重量%〜70重量%が好ましく、さらには40重量%〜60重量%がより好ましい。
【0020】
本発明において難燃性能に優れた無機物質としては、熱分解の際、吸熱分解する無機水酸化物であり、ポリオレフィン系樹脂の熱分解温度付近で吸熱分解を起こす無機物質で、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムから選ばれる1種または2種以上の混合物が特に好ましい。さらに水酸化マグネシウムは樹脂との混合における加工温度での安定性と、ポリオレフィン系樹脂、特にポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の熱分解温度と水酸化マグネシウムの分解温度が近いことからより好ましいものである。
【0021】
本発明に使用される無機物質の粒径は、0.1μm〜10μmの範囲のものが用いられ、さらに0.1μm〜5μmの範囲にあるものが好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあるものがより好ましい。粒径が10μmを超える大きさの無機物質を使用すると発泡粒子の気泡を破泡する虞れがあり、収縮や成形加工不良の要因となり好ましくない。一方、粒径が0.1μmよりも小さい無機物質は微細過ぎて基材樹脂と均一に混合を行うことが困難であったり、部分的に凝集したり、また混合操作に長時間を要する虞れがある。
【0022】
本発明における無機物質の表面処理剤としては、高級脂肪酸、有機珪素化合物、チタネート系またはアルミニウム系のカップリング剤が挙げられる。高級脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、などの炭素数10〜30の飽和高級脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸などの炭素数10〜30の不飽和高級脂肪酸が挙げられる。
【0023】
有機珪素化合物としては、シラン系カップリング剤とシラン系カップリング剤以外の有機珪素化合物が挙げられる。シラン系カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が例示され、チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアリックチタネート、テトラオクタジシルチタネート等が例示され、アルミニウム系カップリング剤として、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が例示される。また、上記シラン系カップリング剤以外の有機珪素化合物としては、メチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどが例示される。
【0024】
これらの表面処理剤は、無機物質に対して通常0.5重量%〜5重量%を含有する。0.5重量%よりも少ない場合は、その効果が小さく所期の目的が達成されず、5重量%を超える量では多量に含有しても格別効果に変わりはなく、むしろ無機物質がべとついたりし、取り扱い難くなり好ましくない。これら表面処理剤のうち、高級脂肪酸がポリオレフィン系樹脂とのなじみがよく、発泡時の気泡の連続気泡化を妨げる効果がありより好ましいものである。
【0025】
本発明の無機物質の表面処理は、前記した表面処理剤で行う以外に酸変性樹脂で無機物質の表面を被覆する方法も挙げられる。
【0026】
酸変性樹脂としては、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等の無水マレイン酸変性されたポリオレフィン系樹脂や、無水マレイン酸変性されたスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体等の無水マレイン酸変性スチレン含有熱可塑性エラストマーや、オキサゾリン変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0027】
以上のような方法により無機物質の表面処理を行うことにより、本発明の基材樹脂であるポリオレフィン系樹脂に対する分散性が向上し、本発明の目的とする難燃効果を十分に発揮し得る多量の無機物質を添加することができる。本発明において表面処理にされた無機物質は、上記した高級脂肪酸、珪素化合物、あるいはチタネート系、またはアルミニウム系カップリング剤によって処理されたものが生産性、経済性等の点から好ましい。
【0028】
さらに、本発明においては難燃助剤として、シリコーン組成物が使用されることが好ましい。シリコーン組成物は基材樹脂であるポリオレフィン系樹脂と無機物質とを主成分とする樹脂組成物100重量部に対して、1重量部〜10重量部添加される。添加量が1重量部未満では、難燃性が向上せず、一方、10重量部を超える量を添加しても難燃性の向上はなくコストが高くなり経済的にも好ましくない。
【0029】
本発明において、シリコーン組成物を添加することにより難燃性をより高めることができ、その結果、無機物質の添加量を減量することが可能となり、発泡時の連続気泡化を抑制でき、発泡温度範囲を広げることができ、また成形温度範囲も広げることができるなど好ましいものである。したがって、本発明においては表面処理された無機物質とシリコーン組成物とを併用することが特に好ましい態様である。
【0030】
本発明においてこのような作用効果を有するシリコーン組成物としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルシリコーンオイル、エポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシ変性、アルコール変性、エーテル変性等のシリコーンオイルで無機物質を被覆したシリコーンオイル被覆物や、前記したシリコーンオイルを加熱硬化させたシリコーンゴムが無機物質を被覆してなるシリコーンゴム被覆物や、ジメチルポリシロキサンゴム、メチルビニルポリシロキサンゴム等のシリコーンゴムや、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、エチルシリコーン樹脂等のシリコーン樹脂が挙げられる。上記シリコーン組成物としては、樹脂組成物への分散性を考慮して粒径1〜100μmの粒状のものが好ましい。上記のなかでも難燃性の向上と分散性のバランスに優れたシコーンゴム被覆物が好ましい。
【0031】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、前記ポリオレフィン系樹脂、難燃性能を付与する無機物質および必要に応じて、難燃助剤を含有する樹脂組成物から構成される発泡粒子である。この本発明の発泡粒子は、示差走査熱量計による測定(DSC法)で2つの融解ピークを有し、該融解ピークのうち高温側の融解ピーク熱量、すなわち高温吸熱ピーク熱量(単に、「高温ピーク熱量」という)が2〜20J/gである。該高温ピーク熱量が小さすぎる場合は、発泡粒子が連続気泡化するために収縮が大きく、スチームによる型内成形が不可能となる。一方,高温ピーク熱量が大きすぎる場合は、発泡性が極端に悪くなり発泡粒子が得られない。特に連続気泡化がなく、発泡性により優れる点から高温ピーク熱量は、好ましくは2.5〜15J/gである。
【0032】
上記高温ピーク熱量は、発泡粒子を得る工程において、昇温速度の調整または発泡前の保持時間、保持温度の調整を行うことにより所望の高温ピーク熱量を得ることができる。発泡粒子の高温ピーク熱量は、60℃、24時間乾燥した発泡粒子1〜8mgを、示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で220℃まで昇温して得られた図1に示すDSC曲線における高温側吸熱ピークbの面積に相当し次のようにして求められる。すなわち、まず、図1に示すDSC曲線上の80℃に相当する点αと、DSC曲線上の発泡粒子の融解終了温度(TE)に相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。次に基材樹脂の融解時の吸熱に相当する低温側吸熱ピークaと、基材樹脂の融解時の吸熱に相当する高温側吸熱ピークbとの谷部に当たるDSC曲線上の点γを通りグラフ縦軸に対して平行な直線を引き、前記点αと点βとを結んだ前記直線(α−β)との交点をδとする。こようにして求めた点δと点βとを結ぶ直線、点γと点δとを結ぶ直線、および点δと点βの間のDSC曲線とによって囲まれる部分(斜線で示す)の面積が高温ピーク熱量に相当する。
【0033】
本発明における発泡粒子の発泡倍率は、特に規定されないが、1.2倍〜30倍が好ましい。発泡倍率が30倍より大きい場合は、発泡粒子の表面積が大きくなり難燃効果が低下する虞れがある。一方、発泡倍率が1.2倍より低い場合には発泡成形体の特徴である軽量性が失われる虞れがある。上記の点から1.5倍〜20倍が好ましく、更に1.5倍〜15倍が好ましい。
【0034】
本発明において、発泡粒子の発泡倍率は下記式(1)により求められる。
【0035】
【数1】
【0036】
上記式における樹脂組成物の密度(g/cm3)は、樹脂粒子の重量(g)と体積(cm3)とから算出される。なお、樹脂組成物の密度は、発泡粒子から直接求めることもできる。この場合は、例えば、所定量の発泡粒子を200℃の熱板で押圧して厚さ2mmのシートを作製し、このシートから長さ50mm×幅20mmの短冊状の試料片を切りだし、該試料片10枚を1サンプルとして重量(g)を測定する。次に上記の1サンプルを、200mlのメスシリンダーに100mlの水を収容した水に水没させて上昇した水の目盛を読み取りサンプルの体積(cm3)を得、サンプルの重量(g)を体積(cm3)で除して、樹脂組成物の密度(g/cm3)を求めることもできる。
【0037】
また、発泡粒子の見かけ密度は、発泡粒子群から約1000個の発泡粒子をサンプリングし、60℃、24時間乾燥した後、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した後、このサンプルの重量W(g)を秤量し、次いでサンプルをメスシリンダー内の23℃の水中に沈め、水位上昇分よりサンプルの真の体積L(cm3)を求め、下記式(2)より求める。
【0038】
【数2】
発泡粒子の見かけ密度(g/cm3)=W/L (2)
【0039】
なお、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、前記のポリオレフィン系樹脂からなる基材樹脂、表面処理された無機物質からなる難燃剤、および難燃助剤を含有するが、さらに必要に応じて、他の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、着色剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等それ自体公知の従来使用される添加剤を添加することもできる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、押出機によりポリオレフィン系樹脂、難燃性を付与する無機物質、さらに必要に応じて添加される難燃助剤等の添加剤を溶融混合し、押出機先端の細孔より押出し、押出直後またはストランド状で冷却した後、ペレタイザーでペレット化して使用することができる。溶融混合する前に、上記ポリオレフィン系樹脂、無機物質、添加剤等を予め混合することもできる。また、本発明の樹脂組成物は、予め混練機によって溶融混合したものをさらに溶融混合することもできる。混練機としては、例えば、バンバリーミキサー、加圧式ニーダー、ロール式混練などのバッチ式混練機、あるいは単軸押出機、二軸押出機などの連続式混練押出機等が使用される。生産性、分散性、混練性等の点からポリオレフィン系樹脂、無機物質、さらに必要に応じて難燃助剤等の添加剤を予め混合してから二軸式押出混練機を用いてペレット化することが好ましい。なお、ペレットの重量は、生産性、取り扱い等の点から1〜8mgが好ましい。
【0041】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造するには、上記の無機物質および必要に応じて難燃助剤を含有する樹脂組成物をペレット化して得られるペレットを、オートクレーブのような密閉容器内に充填し発泡剤と共に分散媒中に分散させて所定温度まで昇温し、次いで密閉容器から分散媒とともに大気圧下に放出する公知の方法を採用することができる。分散媒は、上記ペレットを溶解させないものであればよく、このような分散媒としては、例えば、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノールなどが挙げられるが、通常は水が使用される。
【0042】
本発明の上記樹脂組成物からなるペレットから発泡粒子を製造するに際して、密閉容器内でペレットを分散媒に分散させるに当たり、加熱によりペレット同士が相互に融着するのを防止するために、融着防止剤を分散媒中に添加することができる。融着防止剤としては、分散媒に溶解せず加熱により溶融しないものであれば有機物質、無機物質を問わずいずれでも使用することができるが、一般的には無機系の融着防止剤が使用される。無機系の融着防止剤としては、マイカ、カオリン、タルク、燐酸三カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等それ自体公知のものが例示される。融着防止剤は分散媒に分散させる樹脂粒子100重量部に対して0.1重量部〜2重量部の割合で使用されることが好ましい。
【0043】
また融着防止剤を使用した場合、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤や、硫酸、硝酸、塩酸などの強酸や、硫酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなどの強酸塩または強酸塩の水和物などを添加することが望ましい。このような分散助剤は樹脂粒子100重量部当たり、0.0001重量部〜0.2重量部程度が分散媒中に添加される。
【0044】
本発明の発泡粒子の製造に使用される発泡剤としては、例えば、揮発性有機発泡剤、無機ガス発泡剤が挙げられる。これらのうち、オゾン層の破壊の虞れがなく、安価な無機ガス系発泡剤が好ましい。無機ガス系の発泡剤としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素などが挙げられる。また、発泡剤として水を使用することができるが、この場合水は、例えば、樹脂粒子を発泡させる際に、樹脂粒子を分散させるための分散媒として使用される水を利用すればよく、さらに積極的に水を発泡剤として利用するためには吸水性樹脂等を含む樹脂粒子を使用することもできる。
【0045】
無機ガス系発泡剤は、容器内空間部の圧力が0.098MPa(G)〜4.9MPa(G)、さらには0.294MPa(G)〜3.92MPa(G)となるように容器内に供給することが好ましい。無機ガス系発泡剤は容器内、例えば、樹脂粒子を水に分散させた密閉容器内に供給した後、撹拌しながら加熱下に保持することにより樹脂粒子内に含浸させることができるが、発泡粒子の密度のバラツキを防止するために、樹脂粒子の発泡工程において樹脂粒子を容器内から大気圧下に放出する間、容器内温度や容器内圧力等を放出開始時と同一の条件下に保持することが好ましい。
【0046】
上記のようにして得られた発泡粒子は、大気圧下で熟成し、次いで必要に応じて加圧処理により発泡粒子に内圧を付与した後、後述する型内に充填してスチームなどで加熱することにより、発泡粒子相互が融着した所望形状の発泡成形体とすることができる。発泡粒子相互の融着性、発泡成形体の表面平滑性を良好にするために発泡粒子に内圧を付与することが好ましく、発泡粒子に内圧を付与する場合、型内成形時の二次発泡と発泡粒子間の融着性を考慮し、内圧は0.05MPa(G)〜0.3MPa(G)とすることが望ましい。
【0047】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、加熱および冷却が可能な開閉し密閉できる型内に充填し、飽和水蒸気圧0.10〜0.59MPa(G)のスチームを供給して加熱して発泡粒子を膨張させて型内で発泡粒子同士を相互に融着させ、次いで、冷却後型内から取り出す通常のバッチ式成形法などを採用することにより型内発泡成形体を製造することができる。また、発泡成形体は、必要に応じて、発泡粒子に内圧を付与した後、通路内の上下に沿って連続的に移動するベルト間に連続的に供給し、水蒸気加熱帯域を通過させて発泡粒子を膨張させ発泡粒子同士を相互に融着させ、その後冷却帯域を通過させて冷却し、得られた発泡成形体を通路内から取り出し、適宜の長さに順次切断する連続式成形法(例えば、特開平9−104026号、特開平9−104027号、および特開平10―180888号などに記載の方法)により製造することもできる。尚、発泡粒子に内圧を付与する場合には、密閉容器に発泡粒子を入れ、該容器内に加圧空気を供給した状態でて適当な時間放置して発泡粒子内に加圧空気を浸透させればよい。
【0048】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子から上記のような方法により製造される型内発泡成形体は、通常、発泡倍率が1.2倍〜50倍のものであるが、成形体の圧縮強度等の物性、表面の平滑性等の点から、発泡倍率は1.5倍〜35倍であることが好ましく、さらには1.5倍〜25倍であることが好ましい。
【0049】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子から上記のような方法により製造される型内発泡成形体は、燃焼時に有害なハロゲンガスを発生せず、溶融液化物の滴下がない難燃性に優れた発泡成形体である。
【0050】
【実施例】
次に、本発明の実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。
以下の表2および表3における発泡成形体の難燃性、燃焼性、外観および発泡倍率は下記方法により行った。
【0051】
発泡成形体の酸素指数は、JIS K7201(1976)に記載の酸素指数法による高分子材料の燃焼試験法により測定した。酸素指数の測定にはスガ試験機株式会社製の難燃性試験機(ON−1D型)を使用した。
【0052】
なお、試験片の作製方法は、(厚さ)10mm×(幅)200mm×(長さ)250mmサイズの発泡成形体よりサイズ(厚さ)10mm×(幅)10mm×(長さ)150mmの試験片を切り取った。
試験片は、温度23℃、湿度50%において24時間放置して測定に供した。点火器の熱源の種類は、液化石油ガス(LPG)を使用し、試験片を試験機内の所定の位置に自立させて行った。試験場所の温度は23℃、湿度50%で行った。
【0053】
発泡成形体の外観評価は以下の基準で行った。
○………表面に凹凸、収縮による皺が殆どない。
△………部分的に表面に凹凸、収縮による皺がある。
×………表面全体に凹凸、収縮による皺がある。
【0054】
発泡成形体の難燃性の評価は、発泡成形体を(厚さ)10mm×(幅)50mm×(長さ)150mmに切りだし、UL94(1992)発泡材料水平燃焼試験に記載の方法で行った。以下の基準で評価した。
×………溶融液化物が滴下し、標識綿が着火したもの
○………溶融液化物が滴下し、標識綿が着火しないもの
◎………溶融液化物の滴下がないもの
【0055】
発泡成形体の発泡倍率は、体積50cm3以上の発泡成形体のサンプルを、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した後、成形体サンプルの外形寸法より算出される体積(cm3)を、その発泡成形体のサンプル重量(g)で除した値の発泡成形体の見かけ密度と、前記した樹脂粒子の重量と体積より求められる樹脂組成物の密度とより下記式(3)により求めた。
【0056】
【数3】
【0057】
実施例、比較例に使用したポリオレフィン系樹脂、表面処理された無機物質、難燃助剤、および比較のために用いたハロゲン系難燃剤を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
上記表1において、
(1)ポリオレフィン系樹脂(P−1)は、エチレン成分2.5重量%を含有し、融点146℃の無架橋プロピレン−エチレンランダム共重合体。
(2)無機物質(A−1)は、味の素ファインテクノ株式会社製「ポリセーフMG−6」。
(3)無機物質(A−2)、(A−3)は、協和化学工業株式会社製「キスマ5A」、「キスマ5LA」(粒径は各々0.6〜1.0μm)。
(4)ハロゲン系難燃剤(B−1)は、帝人化成株式会社製「FG−3100」。
(5)難燃剤(C−1)は、日本精鉱株式会社製「PATOX M」。
(6)難燃助剤(C−2)は、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製
「DC4−7081」(粒径約100μm)。
【0060】
実施例1〜7、比較例1〜4
表1に示したポリオレフィン系樹脂、表面処理された無機物質、必要に応じて難燃助剤を、表2に示した割合量を使用し、予め混合してから二軸式押出混練機により混練し押出してペレット化して難燃性樹脂粒子とした。得られた難燃性樹脂粒子を密閉可能な容器(オートクレーブ)に充填し、分散媒である水に分散させた。この際、融着防止剤として水酸化アルミニウムを1.0重量部、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.05重量部添加した。次いで、容器内に空気(発泡剤)を導入して表2に示した圧力(MPa(G))とし、表2に示した温度に加熱し撹拌しながらこの温度で加圧下に15分間保持した後、その温度に維持して大気中に放出して発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の物性を表2に示す。
【0061】
得られた発泡粒子を表3に示した粒子内圧として、成形用の型内に充填し、スチームを導入し温度150℃で加熱して成形体を得た。得られた成形体の物性を表3に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
表から分るように、シリコーン組成物を添加することにより基材樹脂と無機物質の配合量が同一であり、密度が同じ場合、型内成形温度範囲を広くとることができ発泡温度を低くすることができる(実施例2,5)。また、発泡粒子の発泡倍率が低いにも関わらず、型内成形の際のスチーム圧力がシリコーン組成物を添加しない場合と同程度でも良好な発泡成形体が得られる(実施例3,6)。このことからシリコーン組成物を添加することにより樹脂組成物の伸びがよくなり低い発泡倍率の発泡粒子の場合でも融着が可能である。
【0065】
【発明の効果】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は燃焼時に有害なハロゲンガスなどの発生がなく、しかも着火した溶融液化物の滴下がない難燃性に優れたものであり、型内成形性も良好な発泡粒子を提供することができる。
さらに、本発明においては、表面処理した無機物質とシリコーン組成物を難燃助剤として併用することにより、目的とする難燃性を維持して無機物質の添加量を低減することができ、発泡に際して発泡温度範囲および型内成形時の成形温度範囲を広げることができ、発泡粒子を得る際の発泡操作、型内成形における成形操作を容易にする等の優れた効果を有し工業的に極めて意義のあるものである。
本発明の発泡成形体は、燃焼時に有害なハロゲンガスなどの発生がなく、しかも、着火した溶融液化物の滴下がない難燃性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発泡粒子の示差走査熱量計により測定されるDSC曲線を示す。
【符号の説明】
aは、基材樹脂の融解時の吸熱に相当する低温側吸熱ピーク。
bは、基材樹脂の融解時の吸熱に相当する高温側吸熱ピーク。
αは、DSC曲線上の80℃に相当する点。
βは、DSC曲線上の発泡粒子の融解終了温度に相当する点。
γは、DSC曲線上の固有吸熱ピークと固有吸熱ピークの谷部。
Claims (5)
- ポリオレフィン系樹脂(i)20重量%〜70重量%、表面処理剤で表面処理された無機物質(ii)30重量%〜80重量%(ただし、成分(i)と成分(ii)との合計は100重量%である)を主成分とする樹脂組成物からなる難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、かつ該発泡粒子の高温吸熱ピーク熱量が2〜20J/gであり、該ポリオレフィン系樹脂が、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン三元共重合体、直鎖状低密度ポリエチレンから選択される1種または2種以上の混合物であり、該無機物質が無機水酸化物であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
- 表面処理剤が高級脂肪酸、有機珪素化合物、アルミニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、の少なくとも1種である請求項1記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
- 無機水酸化物が、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムから選ばれる1種または2種以上の混合物である請求項1記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
- 上記ポリオレフィン系樹脂と上記無機物質とを主成分とする樹脂組成物100重量部に対して、難燃助剤としてシリコーン組成物1重量部〜10重量部添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載された難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなる難燃性ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体。
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