以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態では、例えば被加熱物として表面に複数の凹凸を有した複雑な形状の歯車やねじ、ボルト、ナットなどの他、シャフトのような径寸法が異なり軸方向で凹凸となる筒状の部材、異なる材料が積層する複合部材などを加熱処理する誘導加熱装置を例示して説明するが、これに限らず、いずれの被加熱物をも対象とすることができる。また、低周波と高周波との異なる2つの周波数で電力を供給する構成について説明するが、これに限らず、所定の周波数のみあるいは3つ以上の周波数で電力を供給させる構成などにも適用できる。図1は、本発明の実施の形態に係る誘導加熱装置の概略構成を示す模式図である。図2は、整合回路部におけるインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。図3は、整合状態データベースの概略構成を示す模式図である。図4は、誘導加熱装置を構成する制御手段の概略構成を示す模式図である。図5は、粗整合判定用データの周波数および電圧の値を示すグラフであり、(A)は周波数のグラフを示し、(B)は電圧のグラフを示す。図6は、整合判定処理画面の概略構成を示す模式図である。図7〜図20は、整合状態が状態A〜状態L、状態ERR1、状態ERR2のメッセージ画面の概略構成を示す模式図である。
〔誘導加熱装置の構成〕
図1において、100は誘導加熱装置で、この誘導加熱装置100は、例えば商用交流電源eを利用して略同時期に異なる2種の周波数の電力で被加熱物201を誘導加熱して焼入れする装置である。そして、誘導加熱装置100は、被加熱物201を誘導加熱する誘導加熱コイル200と、この誘導加熱コイル200に異なる周波数の電力を供給して誘導加熱させる電力供給装置300と、誘導加熱装置100の運転状態を検出して運転状態を制御する電力供給制御装置としての制御装置400と、を備えている。
誘導加熱コイル200は、電力供給装置300に接続されている。そして、誘導加熱コイル200は、例えば等価インダクタンスL0が数十から数百nHのものが用いられ、電力供給装置300から異なる周波数の交流電力が供給されて被加熱物201を誘導加熱する。
電力供給装置300は、商用交流電力を異なる2種の周波数の交流電力に適宜変換し、誘導加熱コイル200へ供給する。この電力供給装置300は、発振回路部310と、整合回路部320と、を備えている。
発振回路部310は、例えば電圧形で、商用交流電源eから所定の異なる周波数すなわち高周波および低周波の電力を、所定のデューティ比で高速に切替出力する。この発振回路部310は、順変換回路部としてのコンバータ311と、逆変換回路部としてのインバータ312と、平滑コンデンサCfと、を備えている。
コンバータ311は、例えばサイリスタなどのスイッチング素子にて構成された三相ブリッジ回路などの各種のブリッジ整流回路が用いられる順変換回路で、商用交流電源eに接続されて商用交流電源eからの交流電力を、スイッチング素子の制御装置400によるオンオフ制御にて直流電力に変換する。この変換された直流電力は、蓄積電圧である充電電圧が例えば約100Vとなる容量を有する平滑コンデンサCfを介して直流電力におけるリップル分である電圧の交流成分が適宜平滑されてインバータ312へ出力される。インバータ312は、例えばMOS(Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子にてフルブリッジ形などに構成された電圧形の逆変換回路で、平滑コンデンサCfを介して入力される直流電力を、一定の周波数、例えば10kHz以上300kHz以下の電圧方形波の単相の交流電力に変換する。具体的には、インバータ312は、スイッチング素子の制御装置400によるオンオフ制御にて、供給される直流電力を交流電力に変換して出力する。
整合回路部320は、発振回路部310に接続され、低周波および高周波に対応した異なる2つの負荷共振周波数としての直列共振周波数を有し、発振回路部310から出力される高周波あるいは低周波の交流電力により、誘導加熱コイル200とにより直列共振し、被加熱物201を誘導加熱する。この整合回路部320は、整合変圧器321と、リアクトルL1と、第1のコンデンサ部322と、第2のコンデンサ部323と、電流変成器324と、を備えている。
整合変圧器321は、負荷共振インピーダンスとしての高周波および低周波の2つの共振周波負荷のインピーダンスである直列共振インピーダンスと、発振器出力インピーダンスである発振回路部310から出力される交流電力の出力インピーダンスとを整合させる。この整合変圧器321は、1次巻線321Aが発振回路部310のインバータ312の出力端子間に接続され、変換された交流電力が入力される。また、整合変圧器321は2次巻線321Bにタップ321Cを有し、このタップ321Cは高周波および低周波の2つの直列共振周波数に対応した2次巻線321Bの位置に設けられている。すなわち、整合変圧器321は、2次巻線321Bの図示しない引き出し線がそれぞれ接続される一対の出力端子S1,S2間の出力等価インピーダンスと、タップ321Cおよび出力端子S1間の出力等価インピーダンスと、を有している。また、整合変圧器321は、1次巻線321Aの所定の位置に接続される状態、すなわち2次巻線321Bとの巻数比Mを変更させて出力等価インピーダンスを変更させる状態に設けられたタップ321Dを有している。
この整合変圧器321における2次巻線321Bの両端の図示しない引き出し線が接続される一対の出力端子S1,S2間には、第2のコンデンサ部323および電流変成器324の1次巻線324Aの直列回路が接続されている。すなわち、整合変圧器321の出力等価インピーダンスが比較的に大きい2次巻線321Bの両端間に、インピーダンスが比較的に小さい第2のコンデンサ部323を接続する。また、整合変圧器321のタップ321Cと、第2のコンデンサ部323および電流変成器324の1次巻線324Aの接続点との間には、リアクトルL1および第1のコンデンサ部322の直列回路が接続されている。すなわち、整合変圧器321の出力等価インピーダンスが比較的に小さい2次巻線321Bの一方の出力端子S1およびタップ321C間に、インピーダンスが比較的に大きい第1のコンデンサ部322およびリアクトルL1の直列回路を接続する。
電流変成器324は、2次巻線324Bに誘導加熱コイル200が着脱可能に接続される。そして、この電流変成器324における2次巻線324Bの巻数比をNとし、誘導加熱コイル200の等価インダクタンスをL0とすると、誘導加熱コイル200が2次側に接続された電流変成器324の1次側には、N2L0の負荷コイル等価インダクタンスが生じる。また、電流変成器324は、1次巻線324Aの所定の位置に接続される状態に、すなわち巻数比Nを変更させる状態に設けられたタップ324Cを有している。
第1のコンデンサ部322は、コンデンサC11と、このコンデンサC11に並列に接続されタップ322AおよびコンデンサC12の直列回路と、を備えている。また、第2のコンデンサ部323は、コンデンサC21と、このコンデンサC21に並列に接続されタップ323AおよびコンデンサC22の直列回路と、を備えている。そして、第1のコンデンサ部322および第2のコンデンサ部323は、タップ322Aおよびタップ323Aの切り替えにより、合成静電容量がそれぞれ変更可能となっている。なお、第1のコンデンサ部322および第2のコンデンサ部323は、コンデンサC11およびコンデンサC21に並列に、タップおよびコンデンサの直列回路をさらに接続して合成静電容量をさらに変更可能な構成としてもよい。そして、第1のコンデンサ部322はコンデンサC11,C12の合成静電容量が例えば数十μFに構成され、第2のコンデンサ部323はコンデンサC21,C22の合成静電容量が例えば数μFに構成されている。すなわち、第1のコンデンサ部322は、第2のコンデンサ部323よりインピーダンスがはるかに大きく、例えば10〜20倍の大きさに設定されている。一方、リアクトルL1は、例えば数μHのものが用いられ、インダクタンスが負荷コイル等価インダクタンスN2L0より大きく、例えば4〜5倍程度に設定されている。
このように、整合回路部320には、リアクトルL1、第1のコンデンサ部322および負荷コイル等価インダクタンスN2L0により構成され低周波で直列共振する低周波直列共振回路325と、第2のコンデンサ部323および負荷コイル等価インダクタンスN2L0により構成され高周波で直列共振する高周波直列共振回路326と、が構成されている。すなわち、低周波直列共振回路325は、直列共振インピーダンスが低いため、大きなインピーダンス変換比を持つ2次巻線321Bの一方の出力端子S1およびタップ321C間に接続される。また、高周波直列共振回路326は、直列共振インピーダンスが高いため、小さいインピーダンス変換比を持つ2次巻線321Bの両端間の出力端子S1,S2間に接続される。
そして、整合回路部320は、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326により、低周波および高周波の異なる2つの直列共振周波数に対する異なる負荷共振インピーダンスとしての直列共振インピーダンスを有している。これら直列共振インピーダンスが、電流変成器324のタップ324Cの位置調整あるいは誘導加熱コイル200の巻数や大きさの調整により、整合変圧器321の出力等価インピーダンスと一致するように構成されている。すなわち、整合変圧器321の出力等価インピーダンスが小さくなるタップ321Cおよび出力端子S1間に直列共振インピーダンスが小さい低周波直列共振回路325が接続される状態とし、出力等価インピーダンスが大きくなる出力端子S1,S2間に直列共振インピーダンスが大きい高周波直列共振回路326が接続される状態となっている。また、第1のコンデンサ部322のタップ322Aや第2のコンデンサ部323のタップ323Aの位置調整による第1のコンデンサ部322や第2のコンデンサ部323の合成静電容量の調整、タップ324Cの位置調整、誘導加熱コイル200の巻数や大きさの調整により、低周波直列共振回路325や高周波直列共振回路326の直列共振周波数が変更可能に構成されている。
また、供給する電力の出力インピーダンスが直列共振インピーダンスと一致したとき、負荷に最大電力を供給できる。このため、例えば図2のグラフに示すように、整合回路部320におけるインピーダンスの周波数特性に基づいて、整合回路部320は出力インピーダンスと低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の直列共振インピーダンスとを整合変圧器321や電流変成器324にて整合させて効率よく最大電力を供給させる。なお、上述したように、第1のコンデンサ部322や第2のコンデンサ部323における合成静電容量の調整、あるいは負荷コイル等価インダクタンスN2L0の調整により、図2のグラフにおいてF1やF2として示すような直列共振周波数が適宜調整される。さらに、整合回路部320は、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の共振点における回路インピーダンスが交流電力の純抵抗となって周波数の平方根に比例するので、高周波直列共振回路326の直列共振インピーダンスは、低周波直列共振回路325の直列共振インピーダンスより、{(高周波の周波数)/(低周波の周波数)}の平方根に比例して大きくなっている。
制御装置400は、誘導加熱装置100の動作状態である誘導加熱処理の運転状況を検出し、運転条件を適宜設定し、設定された運転条件で誘導加熱装置100の運転状態を制御する装置である。この制御装置400は、図示しない操作手段と、報知手段としての運転内容表示手段である表示手段410と、対処報知情報記憶手段としてのメモリ420と、演算手段としての電力供給制御装置として機能し得る制御回路部としての制御手段430と、などを備えている。
操作手段は、例えば操作者による入力操作が可能な操作ボタンや操作つまみなどを備えている。そして、操作手段は、制御手段430に接続され、操作ボタンや操作つまみなどの入力操作に対応して所定の操作信号を制御手段430へ出力し、制御手段430に入力操作に基づく各種設定事項を入力設定させる。この制御手段430で設定される設定事項としては、加熱電力の設定や電力比率の設定などの誘導加熱の運転条件や、表示手段410における表示状態の設定などの制御装置400の動作設定などが例示できる。
表示手段410は、表示部411(例えば、図6参照)と、タッチパネル412と、を備えている。表示部411は、制御手段430に接続され、制御手段430の制御により画像データを表示領域411Aに画面表示させる。この画面表示させる画像データとしては、各種メニュー、誘導加熱の際に発振回路部310から供給する電力の周波数(以下、定格周波数と適宜称す)、インピーダンスや周波数の整合状態などの誘導加熱装置100の動作状態などの画像データが例示できる。タッチパネル412は、表示部411の表示領域411Aに臨んで操作者が接触操作可能に設けられている。そして、タッチパネル412は、制御手段430に接続され、操作者が表示領域411Aで表示される画像データに基づいて接触操作することで、その領域に関する信号を制御手段430へ出力し、接触操作の領域に対応する表示画面の設定事項を制御手段430で入力設定させる。
メモリ420は、制御手段430に接続され、制御手段430が適宜読出可能に各種情報を記憶する。この記憶する情報としては、例えば操作手段の入力操作で入力設定される設定事項やタッチパネル412により設定入力する設定事項、制御手段430で取得したり生成したりした各種情報の他、詳細は後述する整合判定処理画面500(図6参照)やメッセージ画面570A〜570N(図7ないし図20参照)のような表示手段410で画面表示させる各種フォームの画像データ、詳細は後述する粗整合判定処理において用いられる短絡フラグ、開放フラグ、連続同期フラグ、高周波共振フラグ、低周波共振フラグなどが例示できる。また、メモリ420は、例えば図3に示すような整合状態データベース421を適宜読み出し可能に記憶している。さらに、メモリ420は、誘導加熱装置100全体を動作制御するOS(Operating System)上に展開される各種プログラムなどを記憶している。このメモリ420としては、例えば停電などにより突然電源が落ちた際にも記憶が保持される構成のメモリ、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)メモリなどを用いることが望ましい。
整合状態データベース421は、粗整合判定処理における整合状態の判定処理、後述する整合判定処理画面500(図6参照)やメッセージ画面570A〜570N(図7〜図20参照)の表示処理に利用されるデータベースである。この整合状態データベース421は、14個の対処報知情報としての整合状態関連情報421Aを記憶するテーブル構造に構築されている。そして、整合状態関連情報421Aは、整合状態情報421A1と、運転状態特定情報としての周波数差分情報421A2と、運転状態特定情報としてのインピーダンス差分情報421A3と、フラグ設定情報421A4と、ボタン位置情報421A5と、報知情報としてのメッセージ情報421A6と、が1つのデータ構造に関連付けられて構成されている。整合状態情報421A1は、整合状態を所定の識別情報、例えばアルファベットを用いて表すための情報である。周波数差分情報421A2は、整合状態情報421A1で表される整合状態に対応し後述する周波数差分の範囲を表す情報である。インピーダンス差分情報421A3は、整合状態に対応し後述するインピーダンス差分の範囲を表す情報である。フラグ設定情報421A4は、整合状態に対応してオンに設定されるフラグに関する情報である。例えば、状態Aに対応するものには連続同期フラグがオンされる旨が記録され、状態Jに対応するものには低周波共振フラグがオンされる旨が記録される。ボタン位置情報421A5は、整合判定処理画面500のグラフ領域555に整合状態に対応して表示させるメッセージボタン557A〜557Nの位置を表す情報である。メッセージ情報421A6は、整合状態や対処をメッセージ画面570A〜570Nに例えば文字列表示させるための情報である。なお、メッセージボタン557A〜557Iが本発明の記号情報に対応する。また、メッセージボタン557A〜557Nが本発明の運転内容情報に対応する。
制御手段430は、例えばCPU(Central Processing Unit)やいわゆるシーケンサであるプログラマブルコントローラ(Programmable Controller)などを備え、誘導加熱装置100の運転状態を検出・制御する。すなわち、制御手段430は、整合回路部320で直列共振させる低周波および高周波の同期を採って、発振回路部310を制御して所定の時間比率配分で低周波および高周波を高速に切替出力させる。この制御手段430は、運転制御部431と、演算部432と、を備えている。
運転制御部431は、操作手段からの操作信号に基づいて発振回路部310を制御し、運転状態である加熱電力や電力比率を制御する。そして、運転制御部431は、順変換制御手段431Aと、周波電力比率制御手段431Bと、低周波同期手段431Cと、高周波同期手段431Dと、などを備えている。
順変換制御手段431Aは、発振回路部310のコンバータ311に接続されている。この順変換制御手段431Aは、コンバータ311から出力される直流電力の出力値を検出し、操作手段から出力される加熱電力に関する設定事項の操作信号に基づいて、所定の出力値となる状態にコンバータ311を構成するスイッチング素子のオンオフ制御をする。具体的には、順変換制御手段431Aは、コンバータ311の出力側の電圧値を検出するとともに、コンバータ311の出力側に設けた直流電流センサなどの電流検出手段431A1にて電流値を検出する。そして、順変換制御手段431Aは、検出した電圧値および電流値と、操作手段からの操作信号で入力設定された加熱電力に関する設定事項とに基づいて、直流電圧および電流フィードバック制御などを実施し、コンバータ311から出力される直流電力の出力値を制御する。
周波電力比率制御手段431Bは、発振回路部310のインバータ312に接続されている。この周波電力比率制御手段431Bは、インバータ312から出力する低周波あるいは高周波の交流電力を、操作手段の入力操作に対応した電力比率に関する操作信号に基づいて、所定の電力比率すなわちデューティ比で、高速、例えば1msで切り替える状態に、インバータ312を構成するスイッチング素子のオンオフ制御をする。具体的には、周波電力比率制御手段431Bは、操作手段からの操作信号で入力設定された電力比率に関する設定事項に基づいて、低周波および高周波の1周期、例えば100ms内にそれぞれの交流電力を出力させる期間を設定し、インバータ312における低周波および高周波の切替および電力比率を制御する。また、周波電力比率制御手段431Bは、低周波および高周波を切り替えるタイミングに関する信号、例えばデューティ比に関する信号を順変換制御手段431Aへ出力する。このタイミングに関する信号を取得した順変換制御手段431Aは、コンバータ311から出力させる直流電力の出力値が低周波および高周波のタイミングでそれぞれ所定の出力値となるようにコンバータ311を制御する。
低周波同期手段431Cは、整合回路部320に接続されている。そして、低周波同期手段431Cは、整合回路部320の低周波直列共振回路325の周波電流を例えば低周波電流センサなどの低周波電流検出手段431C1で検出し、周波電力比率制御手段431Bへ所定の制御信号を出力する。この制御信号は、発振回路部310から出力する低周波の出力周波数が、図2のインピーダンスの周波数特性グラフ中でF1として示すような直列共振周波数となるように、周波電力比率制御手段431Bでインバータ312の発振周波数を制御させるための信号である。また、低周波同期手段431Cは、周波電流を検出できず、制御信号の出力を停止する休止期間に移行する際、検出する周波電流に関する同期情報である周波数情報を、メモリ420に記憶し、再び周波電流を検出して制御信号を出力する動作期間に移行する際、メモリ420に記憶した周波数情報を読み出し、周波数同期のための制御信号を出力する制御をする。
高周波同期手段431Dは、整合回路部320に接続されている。そして、高周波同期手段431Dは、整合回路部320の高周波直列共振回路326の周波電流を例えば高周波電流センサなどの高周波電流検出手段431D1で検出し、周波電力比率制御手段431Bへ所定の制御信号を出力する。この制御信号は、低周波同期手段431Cと同様に、周波電力比率制御手段431Bにて発振回路部310から出力する高周波の出力周波数が、図2のインピーダンスの周波数特性グラフ中でF2として示すような直列共振周波数となるように、インバータ312の発振周波数を制御させるための信号である。さらに、高周波同期手段431Dは、低周波同期手段431Cと同様に、周波電流を検出できず、制御信号の出力を停止する休止期間に移行する際、検出する周波電流に関する周波数情報をメモリ420に記憶し、再び周波電流を検出して制御信号を出力する動作期間に移行する際、メモリ420に記憶した周波数情報を読み出し、周波数同期のための制御信号を出力する制御をする。
また、制御手段430の演算部432は、運転状態を検出すなわちインピーダンスや周波数の整合状態を判定して適宜報知する処理をする。そして、演算部432は、状態認識手段としての粗整合判定処理手段432Aと、精密整合判定処理手段432Bと、報知制御手段としての表示制御手段432Cと、などを備えている。
粗整合判定処理手段432Aは、粗整合判定処理を実施する。そして、粗整合判定処理手段432Aは、周波数調整手段432A1と、データ収集手段432A2と、差分算出手段432A3と、を備えている。
周波数調整手段432A1は、発振回路部310のコンバータ311およびインバータ312に接続されている。この周波数調整手段432A1は、粗整合判定処理時において、放電により平滑コンデンサCfから出力される電力の周波数を、整合回路部320の直列共振周波数に略整合させる状態に制御する。具体的には、周波数調整手段432A1は、整合判定処理画面500の粗整合判定処理ボタン558が入力操作されて粗整合判定処理を開始する旨の要求に対応した操作信号を認識すると、操作者により誘導加熱時の電力の周波数として設定された定格周波数を例えば1.4倍した周波数を検索開始周波数として設定する。ここで、検索開始周波数としては、例えば、定格周波数をそのまま適用したり、定格周波数を2倍した周波数などを適用したりするなどしてもよく、適宜設定可能な構成としてもよい。さらに、周波数調整手段432A1は、コンバータ311およびインバータ312を制御し、コンバータ311で出力する直流電力を平滑コンデンサへ供給して蓄積すなわち充電させるとともにインバータ312へは供給されない蓄積状態である充電状態に制御する。すなわち、周波数調整手段432A1は、コンバータ311のスイッチング素子を適宜オンオフ制御するとともにインバータ312のスイッチング素子をオフして開路し、平滑コンデンサCfを例えば50ms間充電させる。そして、周波数調整手段432A1は、平滑コンデンサCfの充電後、コンバータ311からの直流電力の供給を遮断し、平滑コンデンサCfに充電された電力をインバータ312へ供給する検出状態に制御する。すなわち、周波数調整手段432A1は、コンバータ311のスイッチング素子をオフして開路するとともにインバータ312のスイッチング素子を適宜オンオフ制御し、平滑コンデンサCfの放電によりインバータ312から検索開始周波数の電力を整合回路部320へ出力させる。
さらに、周波数調整手段432A1は、整合回路部320にも接続され、整合回路部320へ電力を出力させると、整合回路部320の共振状態に基づいてインバータ312から出力される電力の周波数を調整する。すなわち、例えば定格周波数が低周波のものの場合、低周波直列共振回路325の低周波電流を所定間隔毎、例えば1ms毎に低周波電流検出手段431C1にて検出する。そして、この低周波電流の位相がインバータ312から出力させた電力の位相よりも遅れていることを認識すると、インバータ312から出力させた電力の周波数が低周波直列共振回路325の直列共振周波数よりも大きいと判断して周波数を下げる処理をする。また、低周波電流の位相が進んでいることを認識すると、インバータ312からの電力の周波数が低周波直列共振回路325の直列共振周波数よりも小さいと判断して周波数を上げる処理をする。なお、低周波電流の位相が略等しいことを認識すると、インバータ312からの電力の周波数が低周波直列共振回路325の直列共振周波数と略等しいと判断して周波数を変更しない。すなわち、このインバータ312からの交流電力の周波数が、低周波直列共振回路325の粗整合における直列共振周波数として擬似的に認識される。そして、周波数調整手段432A1は、平滑コンデンサCfの放電が終了するまで上述した周波数の調整処理を実施する。また、周波数調整手段432A1は、定格周波数が高周波のものの場合、高周波直列共振回路326の高周波電流を高周波電流検出手段431D1にて検出して、上述した処理と同様の処理によりインバータ312から出力する交流電力の周波数を調整する。なお、インバータ312から出力される交流電力の交流電圧が所定値未満になると、周波数の調整処理を適切に実施できないおそれがある。
データ収集手段432A2は、インバータ312から出力される電力の電圧および周波数と、同期フラグと、を粗整合判定用データとしてメモリ420に記憶、すなわち記録する処理をする。ここで、同期フラグは、「オン」の場合に周波数調整手段432A1で検出されインバータ312から出力される電力の周波数、および低周波直列共振回路325や高周波直列共振回路326の直列共振周波数が略同期している旨を表し、「オフ」の場合に略同期していない旨を表す。具体的には、データ収集手段432A2は、周波数調整手段432A1の制御によりインバータ312から電力が出力されると、この出力された電力の電圧および周波数を検出して、メモリ420に記録する。ここで、上述したように、平滑コンデンサCfの充電電圧は約100Vとなっているため、最初に記録する電圧値は約100Vとなる。さらに、周波数調整手段432A1により例えば低周波電流の位相の遅れまたは進みが所定範囲内であることが認識されると同期フラグを「オン」と設定して記録し、所定範囲外であることが認識されると同期フラグを「オフ」と設定して記録する。そして、データ収集手段432A2は、例えば2ms毎に上述した処理を実施して粗整合判定用データを順次記録し、例えば40個の粗整合判定用データを記録すると粗整合判定用データの収集処理を終了する。
差分算出手段432A3は、周波数差分およびインピーダンス差分を算出する。具体的には、差分算出手段432A3は、データ収集手段432A2で収集された粗整合判定用データの電圧が例えば30V未満であると判断すると、上述したように周波数調整手段432A1により周波数の調整処理が適切に実施されずに粗整合判定用データの信頼性が低いおそれがあり、無効であると認識する。そして、「オフ」に設定された有効フラグを、この粗整合判定用データに対応付けて記録する。また、差分算出手段432A3は、周波数が定格周波数の例えば0.8倍未満であると判断すると、有効フラグを「オフ」と設定して記録する。さらに、差分算出手段432A3は、粗整合判定用データの電圧が例えば30V以上でありかつ周波数が定格周波数の0.8倍以上であると判断すると、この粗整合判定用データが有効であると認識して、有効フラグを「オン」と設定して記録する。なお、粗整合判定用データの有効性の判断基準としては、上述したものに限らず適宜他の基準、すなわち電圧が例えば20V未満か否か、周波数が定格周波数の例えば0.5倍未満か否か、さらには電圧および周波数のうちのいずれか一方のみを基準とする構成とするなどしてもよい。
また、差分算出手段432A3は、粗整合判定用データの記録開始から例えば20msが経過した際の電圧、すなわち記録開始から10番目の粗整合判定用データの電圧(以下、20msポイントの電圧と称す)があらかじめ設定された最低設定値よりも低いことを認識すると、誘導加熱コイル200が短絡しているおそれなどがあると認識して、その旨を示す短絡フラグを「オン」に設定する。さらに、最後に記録した粗整合判定用データの電圧、すなわち記録開始から40番目の粗整合判定用データの電圧(以下、最終ポイントの電圧と称す)があらかじめ設定された最高設定値よりも高いことを認識すると、誘導加熱コイル200が開放されたりしているおそれなどがあると認識して、その旨を示す開放フラグを「オン」に設定する。
そして、差分算出手段432A3は、有効フラグおよび同期フラグが「オン」に設定された粗整合判定用データ(以下、有効同期データと称す)が複数存在しない、すなわち1つだけ存在または1つも存在しないことを認識すると、有効フラグが「オン」に設定された粗整合判定用データ(以下、有効データと称す)のうち、周波数が1つ前の有効データのものと同じまたはそれよりも大きい有効データをfbポイントデータとして認識する処理をする。さらに、fbポイントデータの周波数が検索開始周波数近傍であることを認識すると、例えば低周波直列共振回路325の直列共振周波数が検索開始周波数近傍である旨を示す高周波側共振フラグを「オン」に設定する。また、検索開始周波数近傍でないと判断した場合、直列共振周波数が下限許容周波数、例えば定格周波数の0.6倍の周波数近傍である旨を示す低周波側共振フラグを「オン」に設定する。さらに、fbポイントが存在しないことを認識すると、低周波側共振フラグを「オン」に設定する。
また、差分算出手段432A3は、有効同期データが複数存在することを認識すると、これら有効同期データのうち、周波数が1つ前の有効同期データのものと同じまたはそれよりも大きい有効同期データをfaポイントデータとして認識する処理をする。そして、faポイントデータを認識できた場合、有効同期データが複数ある旨を示す連続同期フラグを「オン」に設定して、粗整合判定用データに基づいて、低周波直列共振回路325や高周波直列共振回路326の直列共振周波数および直列共振インピーダンスを算出する。また、faポイントデータを認識できない場合、有効フラグが「オン」の粗整合判定用データのうち、最後に記録した粗整合判定用データ(以下、同期最終データと称す)をfaポイントデータとして認識する。そして、連続同期フラグを「オン」に設定して、低周波直列共振回路325や高周波直列共振回路326の直列共振周波数および直列共振インピーダンスを算出する。
具体的には、差分算出手段432A3は、周波数が最初に最も低くなっている粗整合判定用データを検索し、この検索した粗整合判定用データの電圧を認識するとともに、この粗整合判定用データの1つ前の粗整合判定用データの電圧を認識する。例えば粗整合判定用データの周波数が図5(A)のようなグラフで示され、かつ、電圧が図5(B)のようなグラフで示される場合、周波数が最初に最も低くなっている記録開始からの経過時間がt2のときの粗整合判定用データを検索して、この粗整合判定用データの電圧がV2である旨を認識するとともに、1つ前となる経過時間がt1のときの粗整合判定用データの電圧がV1である旨を認識する。そして、以下に示す数1に基づいて、直列共振インピーダンスZを算出する。
(数1)
Z=(t2−t1)/(logV1−logV2)×1/C
Z:直列共振インピーダンス〔Ω〕
t1:記録開始から経過時間がt2の粗整合判定用データに対して1つ前の粗整合判定用データの記録開始からの経過時間〔秒〕
t2:周波数が最初に最も低くなっている粗整合判定用データの記録開始からの経過時間〔秒〕
V1:t1における粗整合判定用データの電圧値〔V〕
V2:t2における粗整合判定用データの電圧値〔V〕
C:平滑コンデンサCfの容量
さらに、差分算出手段432A3は、例えば経過時間がt1,t2のときの粗整合判定用データにおける周波数の平均値を、低周波直列共振回路325や高周波直列共振回路326の直列共振周波数として算出する。なお、直列共振周波数の算出方法としては、経過時間がt1の粗整合判定用データに対して1つ前の粗整合判定用データの周波数をさらに加えて平均する方法を用いてもよいし、経過時間がt2の粗整合判定用データの周波数をそのまま直列共振周波数として認識する方法を用いてもよい。
そして、差分算出手段432A3は、これら算出した直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数に基づいて、整合状態を判定する。具体的には、差分算出手段432A3は、例えば低周波直列共振回路325の直列共振周波数から定格周波数を減じて定格周波数で除した値を周波数差分として算出する。さらに、発振回路部310の出力インピーダンスを定格インピーダンスとして認識して、例えば低周波直列共振回路325の直列共振インピーダンスから定格インピーダンスを減じて定格インピーダンスで除した値をインピーダンス差分として算出する。
精密整合判定処理手段432Bは、発振回路部310のコンバータ311およびインバータ312に接続され、精密整合判定処理を実施する。具体的には、精密整合判定処理手段432Bは、整合判定処理画面500の精密整合判定処理ボタン564が入力操作されて精密整合判定処理を開始する旨の要求に関する操作信号を認識すると、コンバータ311およびインバータ312を制御して、コンバータ311から出力される直流電力をインバータ312に供給しインバータ312から交流電力を整合回路部320へ供給させる動作状態に制御する。すなわち、精密整合判定処理手段432Bは、コンバータ311およびインバータ312の各スイッチング素子をオンオフ制御し、商用交流電源eからの商用交流電力を定格周波数で整合回路部320へ出力させ、直列共振インピーダンスや直列共振周波数などの整合状態を判断する。
表示制御手段432Cは、粗整合判定処理や精密整合判定処理の結果を、例えば図6に示すような整合判定処理画面500として表示手段410の表示領域411Aに表示させる。具体的には、表示制御手段432Cは、操作者による例えば図示しないメニュー画面から低周波の周波数に対応する粗整合判定処理を実施する旨の要求に関する操作信号を認識すると、整合判定処理画面500をメモリ420にあらかじめ記憶されたフォームにしたがって表示させる。さらに、表示制御手段432Cは、粗整合判定処理あるいは精密整合判定処理の結果に基づいて、整合判定処理画面500の表示内容を適宜変更して表示手段410に画面表示させる。
ここで、整合判定処理画面500は、画面モード領域510と、切換ボタン領域520と、動作状態領域530と、定格値領域540と、粗整合判定領域550と、精密整合判定領域560と、を備えている。なお、以下において、低周波の周波数に対応する整合判定処理画面500を例示して説明するが、高周波に対応する整合判定処理画面500も同様の構成を有している。
画面モード領域510は、整合判定処理画面500の画面表示領域における左上側に設けられ、整合判定処理画面500のモードが表示される領域である。この画面モード領域510には、整合判定処理画面500のモードが低周波の周波数に対応するF1モードである旨を表す「低周波F1整合チェック」の文字列が表示されるモード内容表示領域511が設けられている。なお、高周波の周波数に対応するF2モードの場合、モード内容表示領域511には、「高周波F2整合チェック」の文字列が表示される。
切換ボタン領域520は、整合判定処理画面500の画面表示領域における画面モード領域510の右側に設けられ、整合判定処理画面500を他の画面に切り替える際にタッチパネル412で入力操作されるコマンドボタンが表示される領域である。具体的には、切換ボタン領域520には、整合判定処理画面500をF2モードに切り換える際に接触されるモード切替コマンドボタン521と、粗整合判定用データを表示させる際にタッチパネル412で入力操作されるデータ詳細コマンドボタン522と、整合状態の整合判定処理で取得した粗整合判定用データなどを削除するなどのリセット処理をタッチパネル412で入力操作されるリセットコマンドボタン523と、各種メニューを表示させる際に入力操作されるメニューコマンドボタン524と、が並列に設けられている。
動作状態領域530は、整合判定処理画面500の画面表示領域における画面モード領域510の下側に設けられ、誘導加熱装置100の各種動作状態が表示される領域である。具体的には、動作状態領域530には、商用交流電源eの状態に関する主電源情報を表示する主電源表示領域531と、運転状態に関する運転情報を表示する運転状態表示領域532と、モードに対応する周波数に関するモード周波数情報を表示するモード周波数表示領域533と、が並列に設けられている。
定格値領域540は、整合判定処理画面500の画面表示領域における動作状態領域530の下側に設けられ、発振回路部310の各種定格値が表示される領域である。具体的には、定格値領域540には、発振回路部310から出力される低周波の電力の周波数が定格周波数として表示される定格周波数表示領域541と、発振回路部310の出力インピーダンスが定格インピーダンスとして表示される定格インピーダンス表示領域542と、が並列に設けられている。
粗整合判定領域550は、整合判定処理画面500の画面表示領域における切換ボタン領域520の下側に設けられ、粗整合判定処理に関する各種情報が表示される領域である。そして、粗整合判定領域550の表示領域における右上側には、粗整合判定処理が実施可能か否かに関する粗整合判定処理情報が表示される粗整合判定処理表示領域551が設けられている。また、粗整合判定領域550の表示領域における粗整合判定処理表示領域551の下側には、粗整合判定処理により算出された低周波直列共振回路325の直列共振周波数を表示する粗整合共振周波数表示領域552と、低周波直列共振回路325の直列共振インピーダンスが測定負荷インピーダンスとして表示される粗整合測定負荷インピーダンス表示領域553と、が並列に設けられている。なお、これら粗整合共振周波数表示領域552および粗整合測定負荷インピーダンス表示領域553は、粗整合判定処理により直列共振周波数や直列共振インピーダンスの算出処理が実施されていない場合、それぞれ直列共振周波数および測定負荷インピーダンスの値を表示しない。さらに、粗整合判定領域550の表示領域における粗整合測定負荷インピーダンス表示領域553の上側には、粗整合判定処理で直列共振インピーダンスの算出処理が実施されていない場合に「Z0不明」の文字列が表示される算出不可能表示領域554が設けられている。
また、粗整合判定領域550における粗整合共振周波数表示領域552および粗整合測定負荷インピーダンス表示領域553の下側には、グラフ領域555が設けられている。このグラフ領域555の表示領域における略中央には、横軸および縦軸でそれぞれ周波数差分およびインピーダンス差分を表す2次元の運転内容情報としても機能する座標平面領域556が表示される。この座標平面領域556で表される周波数差分の範囲は例えば−20%以上かつ+20%未満に設定され、座標平面領域556には状態A〜状態Iの周波数差分およびインピーダンス差分に対応する例えば9つの領域が設けられている。
そして、座標平面領域556における状態A〜状態Iに略対応する領域としては、連続同期フラグが「オン」に設定され整合状態が状態A〜状態Iであると判定された場合、整合状態データベース421などに基づいてその旨を表す略正方形状に表示されるメッセージボタン557A〜557Iである。具体的には、差分算出手段432A3で算出された周波数差分およびインピーダンス差分に対応する周波数差分情報421A2およびインピーダンス差分情報421A3を有する整合状態関連情報421Aが検索され、この検索された整合状態関連情報421Aのボタン位置情報421A5に基づく位置に対応した領域のメッセージボタン557A〜557Iが表示される。例えば、周波数差分およびインピーダンス差分がともに+5%の場合、整合状態が状態Eであると判定され、メッセージボタン557Eが座標平面領域556の略中央に表示される。
また、グラフ領域555の画面表示領域における座標平面領域556の左上側には、低周波共振フラグが「オン」に設定され整合状態が状態Jと判定された場合、略正方形状に表示されるメッセージボタン557Jが設けられている。さらに、グラフ領域555の画面表示領域における座標平面領域556の右上側には、連続同期フラグが「オン」に設定され整合状態が状態Kと判定された場合、すなわち差分算出手段432A3で算出された周波数差分が+20%以上の場合、略正方形状に表示されるメッセージボタン557Kが設けられている。また、このメッセージボタン557Kに隣接して、高周波共振フラグが「オン」に設定され整合状態が状態Lと判定された場合、略正方形状に表示されるメッセージボタン557Lが設けられている。さらに、座標平面領域556の画面表示領域における右側には、短絡フラグが「オン」に設定され整合状態が状態ERR1と判定された場合、略長方形状に表示されるメッセージボタン557Mが設けられている。そして、このメッセージボタン557Mに隣接して、開放フラグが「オン」に設定され整合状態が状態ERR2と判定された場合、略長方形状に表示されるメッセージボタン557Nが設けられている。
すなわち、グラフ領域555には、粗整合判定処理の結果に基づいて、メッセージボタン557A〜557Mのうちのいずれか1つが表示される。そして、メッセージボタン557A〜557Iのうちのいずれか1つのみが座標平面領域556とともに表示されることにより、整合状態が2次元のグラフとして表現される。
また、各メッセージボタン557A〜557Iは、インピーダンス差分に対応した色で表示される。例えば、状態A,D,Gに対応するものが水色で、状態B,E,Hに対応するものが緑色で、状態C,F,Iに対応するものが朱色で、それぞれ表示される。さらに、各メッセージボタン557J〜557Nは、各メッセージボタン557A〜557Iとは異なる色、例えばそれぞれ紺色、赤紫色、橙色、赤色、青色で表示される。また、座標平面領域556におけるインピーダンス差分が−10%以上かつ+10%、または、周波数差分が−2%以上かつ+10%未満である旨を表す略十字状の十字領域556A、すなわちメッセージボタン557B,557D,557E,557F,557Hを囲む十字領域556Aは、座標平面領域556の十字領域556A以外の領域および各メッセージボタン557A〜557Nとは異なる色、例えば薄紫色で表示される。
さらに、粗整合判定領域550の画面表示領域におけるグラフ領域555の下側には、略長方形状に表示される粗整合判定処理ボタン558が設けられている。この粗整合判定処理ボタン558には、例えば低周波の周波数に対する粗整合判定処理のスタンバイ状態の際に「低周波側整合開始」の文字列が、粗整合判定処理の実施中に「低周波側整合チェック中」の文字列が、重畳されて表示される。
精密整合判定領域560は、整合判定処理画面500の画面表示領域における定格値領域540の下側に設けられ、精密整合判定処理に関する各種情報が表示される領域である。この精密整合判定領域560の画面表示領域における上側には、粗整合判定処理により整合状態が状態Dまたは状態Eと判定された場合に精密整合判定処理が実施可能である旨の「精密測定可」の文字列が、状態Dおよび状態E以外であると判定された場合に精密整合判定処理が実施不可能である旨の「精密測定不可」の文字列が、精密整合判定処理情報として表示される精密整合判定処理表示領域561が設けられている。また、精密整合判定領域560の画面表示領域における精密整合判定処理表示領域561の下側には、精密整合判定処理により算出された低周波直列共振回路325の直列共振周波数を表示する精密整合共振周波数表示領域562と、低周波直列共振回路325の直列共振インピーダンスが測定負荷インピーダンスとして表示される精密整合測定負荷インピーダンス情報563と、が並列に設けられている。さらに、精密整合判定領域560の画面表示領域における精密整合測定負荷インピーダンス情報563の下側には、略長方形状に表示される精密整合判定処理ボタン564が設けられている。この精密整合判定処理ボタン564には、粗整合判定処理ボタン558と同様の文字列が重畳されて適宜表示される。
また、制御手段430の表示制御手段432Cは、タッチパネル412における整合判定処理画面500のメッセージボタン557A〜557Mに対応する領域が接触操作されたことを認識すると、このメッセージボタン557A〜557Mに対応する整合状態やその整合状態に対処する対処方法などに関する図6〜図20に示すようなメッセージ画面570A〜570Nを、メモリ420にあらかじめ記憶されたフォームにしたがって表示させる。具体的には、表示制御手段432Cは、タッチパネル412から操作者により接触された領域に関する信号を取得して、この接触された領域がメッセージボタン557A〜557Mを表示させている領域であることを認識すると、この領域に対応するボタン位置情報421A5を整合状態データベース421から検索する。そして、この検索したボタン位置情報421A5に対応するメッセージ情報421A6に基づいて、メッセージ画面570A〜570Nを表示させる。
ここで、メッセージ画面570A〜570Nは、このメッセージ画面570A〜570Nの画面表示領域における左側に設けられたメッセージ領域571A〜571Nを備えている。そして、メッセージ画面570A〜570Nの画面表示領域におけるメッセージ領域571A〜571Nの上側には、整合状態を文字列で表示する整合状態文字列表示領域572A〜572Nが設けられている。また、メッセージ画面570A〜570Nの画面表示領域における整合状態文字列表示領域572A〜572Nの下側には、整合状態の簡易的な状況を運転簡易情報として文字列で表示する簡易状況文字列表示領域573A〜573Nが設けられている。さらに、メッセージ画面570A〜570Nの画面表示領域における簡易状況文字列表示領域573A〜573Nの下側には、整合状態の対処方法を対処情報として文字列で表示する対処文字列表示領域574A〜574Nが設けられている。
なお、対処文字列表示領域574A〜574Nで表現される「トランスタップ」は、整合変圧器321のタップ321Dや電流変成器324のタップ324Cを意味する。そして、「トランスタップを増加させる」とは、例えばタップ324Cの位置調整により巻数比Nを増加させる処理を意味する。また、対処文字列表示領域574A〜574Nで表現される「コンデンサ」は、第1のコンデンサ部322や第2のコンデンサ部323に対応する。そして、「コンデンサを増加させる」とは、例えば第1のコンデンサ部322の合成静電容量を増加させる処理を意味する。さらに、対処文字列表示領域574A〜574Nで表現される「負荷コイル」は、誘導加熱コイル200を意味する。
また、メッセージ画面570A〜570Nの画面表示領域における対処文字列表示領域574A〜574Mの下側には、整合状態や対処方法以外の追記、例えば精密整合判定処理を実施可能か否かなどを文字列で表示する追記文字列表示領域575A〜575Mが設けられている。さらに、メッセージ領域571A〜571Nの画面表示領域における右下側には、略長方形状に表示されるクリアボタン576A〜576Nが設けられている。また、メッセージ領域571A〜571Nの画面表示領域におけるクリアボタン576Nの左側には、略長方形状に表示される方法表示ボタン577Nが設けられている。
そして、表示制御手段432Cは、タッチパネル412におけるメッセージ画面570A〜570Nのクリアボタン576A〜576Nに対応する領域が接触操作されたことを認識すると、メッセージ画面570A〜570Nの表示を終了させて整合判定処理画面500を表示させる。また、方法表示ボタン577Nに対応する領域が接触操作されたことを認識すると、メッセージ画面570Nの表示を終了させて、状態ERR2の具体的な対処方法を表示させる処理をする。
〔誘導加熱装置の動作〕
次に、誘導加熱装置100の動作として、粗整合判定処理について図面を参照して説明する。図21は、粗整合判定処理を示すフローチャートである。図22は、粗整合判定用データの収集処理を示すフローチャートである。図23は、整合状態の判定処理を示すフローチャートである。図24は、粗整合判定処理の結果表示処理を示すフローチャートである。
まず、あらかじめ誘導加熱コイル200が装着されて被加熱物201が所定の位置に配置された誘導加熱装置100に電源を投入する。そして、誘導加熱する被加熱物201に応じて操作者が操作手段を適宜入力操作することで、加熱電力および電力比率が設定入力される。すなわち、入力操作により操作手段から出力される操作信号のうち、加熱電力に関する操作信号が制御手段430の順変換制御手段431Aに入力され、電力比率に関する操作信号が制御手段430の周波電力比率制御手段431Bに入力されて、誘導加熱処理のための運転条件が設定入力される。
そして、誘導加熱装置100は、制御手段430の表示制御手段432Cにて、操作者により例えば低周波の周波数に対応する粗整合判定処理を実施する旨の入力操作が実施されたことを認識すると、整合判定処理画面500を表示させる。さらに、制御手段430は、粗整合判定処理手段432Aの周波数調整手段432A1にて、粗整合判定処理を開始する旨の要求を認識すると、図21に示すように、データ収集手段432A2とともに、粗整合判定用データの収集処理を実施する(ステップS101)。このステップS101における粗整合判定用データの収集処理の後、粗整合判定処理手段432Aは、差分算出手段432A3にて、整合状態の判定処理を実施する(ステップS102)。さらに、ステップS102における整合状態の判定処理の後、表示制御手段432Cは、整合判定処理画面500の表示処理を実施する(ステップS103)。
このステップS103における整合判定処理画面500の表示処理の後、制御手段430の表示制御手段432Cは、メッセージボタン557A〜557Nのうちのいずれか1つが選択されたか否かを判断する(ステップS104)。そして、ステップS104において、メッセージボタン557A〜557Nが選択されていないと判断した場合、例えば精密整合判定処理を開始する旨の入力操作を粗整合判定処理を終了する旨の入力操作として認識したか否かを判断する(ステップS105)。このステップS105において、粗整合判定処理を終了する旨の要求を認識したと判断した場合、粗整合判定処理を終了する。一方、ステップS105において、粗整合判定処理を終了する旨の要求を認識していないと判断した場合、ステップS104の処理を実施する。
また、表示制御手段432Cは、ステップS104において、メッセージボタン557A〜557Nが選択されたと判断した場合、この選択されたメッセージボタン557A〜557Nに対応するメッセージ画面570A〜570Nを表示させる(ステップS106)。この後、クリアボタン576A〜576Nの選択によるメッセージ画面570A〜570Nの表示を終了する旨の要求を認識したか否かを判断する(ステップS107)。このステップS107において、表示を終了する旨の要求を認識していないと判断した場合、ステップS107の処理を実施する。また、ステップS107において、表示を終了する旨の要求を認識したと判断した場合、整合判定処理画面500を表示させて(ステップS108)、ステップS105の処理を実施する。
一方、ステップS101における粗整合判定用データの収集処理では、制御手段430は、周波数調整手段432A1にて、図22に示すように、検索開始周波数を設定し(ステップS201)、コンバータ311およびインバータ312のオンオフ制御にて平滑コンデンサCfを充電する(ステップS202)。そして、周波数調整手段432A1は、平滑コンデンサCfを充電後、コンバータ311およびインバータ312のオンオフ制御にて平滑コンデンサCfを放電させ、この放電により検索開始周波数の電力をインバータ312から整合回路部320へ出力させる(ステップS203)。この後、制御手段430は、周波数調整手段432A1で整合回路部320における共振状態に基づいて周波数を調整する処理とともに、データ収集手段432A2で2ms毎に40個の粗整合判定用データを記録する処理をして(ステップS204)、粗整合判定用データの収集処理を終了する。
また、ステップS102における整合状態の判定処理では、差分算出手段432A3は、図23に示すように、各粗整合判定用データに対して有効フラグを設定して(ステップS301)、20msポイントの電圧が最低設定値よりも低いか否かを判断する(ステップS302)。このステップS302において、最低設定値より低いと判断した場合、短絡フラグを「オン」に設定して(ステップS303)、処理を終了する。一方、ステップS302において、最低設定値より高いと判断した場合、最終ポイントの電圧が最高設定値よりも高いか否かを判断する(ステップS304)。そして、ステップS304において、最高設定値よりも高いと判断した場合、開放フラグをオンに設定して(ステップS305)、処理を終了する。
一方、ステップS304において、最高設定値よりも低いと判断した場合、有効同期データが複数存在するか否かを判断する(ステップS306)。このステップS306において、有効同期データが複数存在していると判断した場合、有効同期データにfaポイントデータが存在しているか否かを判断する(ステップS307)。そして、ステップS307において、faポイントデータが存在していると判断した場合、連続同期フラグをオンに設定して(ステップS308)、粗整合判定用データに基づいて直列共振周波数および直列共振インピーダンスを算出する(ステップS309)。この後、この周波数差分およびインピーダンス差分を算出して(ステップS310)、処理を終了する。また、ステップS307において、faポイントデータが存在していないと判断した場合、同期最終データをfaポイントデータとして認識して(ステップS311)、ステップS308の処理を実施する。
そして、ステップS306において、有効同期データが複数存在していないと判断した場合、有効データにfbポイントデータが存在しているか否かを判断する(ステップS312)。このステップS312において、fbポイントデータが存在していると判断した場合、このfbポイントデータの周波数が検索開始周波数近傍か否かを判断する(ステップS313)。そして、ステップS313において、検索開始周波数近傍であると判断した場合、高周波共振フラグをオンに設定して(ステップS314)、処理を終了する。一方、ステップS313において、検索開始周波数近傍でないと判断した場合、低周波共振フラグをオンに設定して(ステップS315)、処理を終了する。また、ステップS312において、fbポイントデータが存在していないと判断した場合も、ステップS315の処理を実施する。
さらに、粗整合判定処理の結果表示処理では、表示制御手段432Cは、図24に示すように、整合判定処理画面500を表示させ(ステップS401)、短絡フラグがオンに設定されているか否かを判断する(ステップS402)。このステップS402において、オンに設定されていると判断した場合、状態ERR1のメッセージボタン557Mを表示させる(ステップS403)。そして、ステップS403の処理を実施した場合、または、ステップS402においてオフに設定されていると判断した場合、開放フラグがオンに設定されているか否かを判断する(ステップS404)。このステップS404において、オンに設定されていると判断した場合、状態ERR2のメッセージボタン557Nを表示させる(ステップS405)。
また、ステップS405の処理を実施した場合、または、ステップS404においてオフに設定されていると判断した場合、連続同期フラグがオンに設定されているか否かを判断する(ステップS406)。このステップS406において、オンに設定されていると判断した場合、周波数差分およびインピーダンス差分に基づいて整合状態が状態A〜状態I、状態Kのうちのいずれかである旨を認識して、この認識した整合状態に対応するメッセージボタン557A〜557I、557Kのうちのいずれか1つを表示させる(ステップS407)。さらに、差分算出手段432A3で算出された直列共振周波数および直列共振インピーダンスを、粗整合共振周波数表示領域552および粗整合測定負荷インピーダンス表示領域553として表示させる(ステップS408)。
そして、ステップS408の処理を実施した場合、または、ステップS406においてオフに設定されていると判断した場合、高周波共振フラグがオンに設定されているか否かを判断する(ステップS409)。このステップS409において、オンに設定されていると判断した場合、状態Lのメッセージボタン557Lを表示させる(ステップS410)。さらに、ステップS410の処理を実施した場合、または、ステップS409においてオフに設定されていると判断した場合、低周波共振フラグがオンに設定されているか否かを判断する(ステップS411)。このステップS411において、オフに設定されていると判断した場合、処理を終了する。一方、ステップS411において、オンに設定されていると判断した場合、状態Jのメッセージボタン557Jを表示させて(ステップS412)、処理を終了する。
〔誘導加熱装置の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態では、制御装置400により、商用交流電力を所定の直流電力に変換して出力するコンバータ311と、このコンバータ311で変換された直流電力を所定の周波数の交流電力に変換して出力するインバータ312と、コンバータ311で変換された直流電力を平滑してインバータ312へ供給する平滑コンデンサCfとを備え、インバータ312から供給される所定の周波数の交流電力に対応し誘導加熱コイル200とにより低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326を構成する整合回路部320へ所定の交流電力を供給させて誘導加熱コイルを作用すなわち被加熱物201を誘導加熱させる発振回路部310の動作を、適宜制御している。すなわち、制御装置400により、コンバータ311から平滑コンデンサCfおよびインバータ312へ直流電力を供給し、整合回路部320へ所定の周波数の交流電力を供給させる動作状態と、コンバータ311から平滑コンデンサCfへ直流電力を供給して充電させるとともに、整合回路部320へ交流電力が供給されないようにインバータ312を制御する充電状態と、コンバータ311から平滑コンデンサCfへの直流電力の供給を遮断するとともに、インバータ312を介して平滑コンデンサCfに充電された電力を整合回路部320へ供給させる状態にインバータ312を制御してインバータ312へ供給させる検出状態と、に制御している。このため、例えば、誘導加熱コイル200を作用させる交流電力の供給条件に合った高効率の誘導加熱コイル200の作用を実施させる電力供給装置300における低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化の判断のために、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326を動作させる電力として、直流電力を平滑する平滑コンデンサCfの構成を利用、すなわち低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326における負荷共振周波数である直列共振周波数の検出のために平滑コンデンサCfに充電される電力を利用しているので、簡単な構成で誘導加熱コイルにて効率よく誘導加熱させる低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が容易にできる。特に、低周波および高周波の異なる交流電力を供給して誘導加熱させる複雑な構成でも、容易に適用できる。
そして、発振回路部310の平滑コンデンサCfとして、コンバータ311から出力される直流電力を平滑する平滑コンデンサとし、発振回路部310のインバータ312として電圧形の構成としている。このため、整合回路部320へ所定の異なる交流電力を供給させる発振回路部310として、商用交流電力を誘導加熱コイル200で誘導加熱させる所定の周波数の交流電力に変換させる直流電力の平滑、および、異なる所定の交流電力への変換・出力と、誘導加熱コイル200を効率よく作用させるための低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化のために、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326を動作させる電力の供給とを、簡単な構成で容易に得ることができる。
また、制御手段430による発振回路部310の動作制御として、複数のスイッチング素子にてブリッジ構造に構成したコンバータ311のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子にてブリッジ構造に構成されたインバータ312のスイッチング素子と、を適宜オンオフ制御して動作状態としたり、コンバータ311のスイッチング素子を適宜オンオフ制御するとともに、インバータ312の全てのスイッチング素子をオフして開路し充電状態としたり、コンバータ311の全てのスイッチング素子をオフして開路するとともにインバータ312のスイッチング素子を適宜オンオフ制御して検出状態としている。このため、電力の供給状態を切り替えるスイッチ素子やスイッチ回路などを別途設けることなく、商用交流電力を所定の周波数の交流電力に変換して整合回路部320へ供給する発振回路部310のコンバータ311およびインバータ312を構成する各スイッチング素子を適宜オンオフさせる制御にて実施でき、構成の簡略化が容易にでき、装置の小型化や製造性の向上、コストの低減などが容易に図れる。また、既存の電力供給装置300に制御装置400を接続して同様に動作させることも容易にでき、汎用性も容易に向上できる。
さらに、制御手段430にて発振回路部310を検出状態に制御した状態で、制御手段430の粗整合判定処理手段432Aにより粗整合判定処理を実施している。すなわち、平滑コンデンサCfからの電力で誘導加熱コイル200と低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326を構成する整合回路部320における低周波および高周波に対応した直列共振周波数および直列共振インピーダンスをそれぞれ検出している。このため、誘導加熱コイル200で誘導加熱させる低周波および高周波の周波数の交流電力の供給条件である定格周波数および定格インピーダンスに合った高効率の誘導加熱コイル200による誘導加熱を実施させる低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化の判断が容易にでき、低周波および高周波の周波数の交流電力で誘導加熱コイル200による効率的な誘導加熱を実施できる低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が容易にできる。特に、検出結果を表示制御手段432Cにより表示手段410で直列共振周波数を画面表示にて操作者に報知させる制御をしている。このため、容易に操作者が低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の状態が容易に認識でき、効率的な誘導加熱を実施できる低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築がより容易にできる。
そして、粗整合判定処理手段432Aによる粗整合判定処理すなわち直列共振周波数の検出として、平滑コンデンサCfからの電力を整合回路部320に供給した際の整合回路部320における電流波形の位相と同一の位相となる波形の交流電力にインバータ312で直流電力を変換させ、このインバータ312で出力する交流電力の周波数を直列共振周波数としている。このため、誘導加熱コイル200と整合回路部320とにて構成される低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の直列共振周波数を容易に検出することができ、効率的な誘導加熱を実施するための低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が容易にできる。
さらに、粗整合判定処理手段432Aによる粗整合判定処理すなわち直列共振周波数の検出として、検出状態における平滑コンデンサCfからの電力を整合回路部320に供給する際に、インバータ312を制御して、入力操作により設定入力され誘導加熱を実施させるための電力の供給条件における定格周波数の周波数より高い周波数の交流電力から順次低い周波数の交流電力に低減して整合回路部320に順次供給させるとともに、これら異なる周波数の交流電力の供給時における交流電力の周波数と電圧値とを1つのデータ構造に関連付けた粗整合判定用データを生成させ、これら粗整合判定用データにおける交流電力の周波数が図5に示すように最小となるt2における粗整合判定用データと、この粗整合判定用データの1つ前に生成したt1における粗整合判定用データとの交流電力の周波数の平均値を演算し、この演算した周波数を直列共振周波数としている。このため、平滑コンデンサCfで充電される微少の電力でも、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326における比較的に高い精度の直列共振周波数を容易に検出でき、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化判断が容易にでき、効率的な誘導加熱を実施するための低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が容易にできる。
そして、直列共振周波数としては、粗整合判定用データにおける交流電力の周波数が図5に示すように最小となるt2における粗整合判定用データと、この粗整合判定用データの1つ前に生成したt1における粗整合判定用データとの交流電力の周波数の平均値を演算し、この演算した周波数を直列共振周波数としている。このため、平滑コンデンサCfで充電される微少の電力でも、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326における比較的に高い精度の直列共振周波数を容易に検出でき、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化判断が容易にでき、効率的な誘導加熱を実施するための低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が容易にできる。
また、直列共振インピーダンスとしては、同様にt2における粗整合判定用データと、この粗整合判定用データの1つ前に生成したt1における粗整合判定用データとに基づいて、上述した数1に基づいて演算している。このため、平滑コンデンサCfで充電される微少の電力でも、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326における比較的に高い精度の直列共振インピーダンスを容易に検出でき、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化判断を容易にできる。
さらに、直列共振周波数および直列共振インピーダンスのうちの少なくともいずれか一方の検出に際して、粗整合判定用データのうち、交流電力の周波数および平滑コンデンサCfに蓄積された電力の電圧値がそれぞれ所定の閾値以上となる粗整合判定用整合データに基づいて検出する。このため、平滑コンデンサCfの放電による電圧値の低下に伴って所定の閾値より小さい周波数や電圧値の粗整合判定用データの信頼性が低下するので、信頼性の高いに所定の閾値以上の粗整合判定用データに基づいて検出することで、より適切な低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化判断ができる。
そして、表示制御手段432Cにより、検出した直列共振周波数を定格周波数と対比される状態に表示手段410で画面表示にて報知させる制御をしている。このため、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化が容易に判断でき、効率的な誘導加熱を実施するための低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が容易にできる。
また、粗整合判定処理手段432Aによる粗整合判定処理に際して、平滑コンデンサCfからの電力により整合回路部320における直列共振インピーダンスをも検出している。このため、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化がより容易に判断でき、効率的な誘導加熱を実施するための低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が容易にできる。さらには、直列共振インピーダンスをも表示手段410で画面表示により報知させる制御をしているため、操作者に容易に共振回路構成の状態を認知させることができる。
そして、表示制御手段432Cにより、検出した直列共振周波数および直列共振インピーダンスと、設定入力された定格周波数および定格インピーダンスと、の差分を、表示手段410で画面表示により報知させる制御をしている。このため、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326における各直列共振周波数および各直列共振インピーダンスにより、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成の適正化がより容易に判断でき、効率的な誘導加熱を実施するための低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が容易にできる。
さらに、直列共振周波数および直列共振インピーダンスと、設定入力された定格周波数および定格インピーダンスとの差分の報知として、周波数とインピーダンスとの2軸による座標平面領域556で表示させている。このため、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成状態が一目瞭然で、適正化の判断がより容易にできる。さらに、座標平面領域556上でメッセージボタン557A〜557Nとして適正化状態が表示されるので、操作者による低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成状態のより容易な判断を提供できる。
そしてさらに、表示制御手段432Cにより、定格周波数および定格インピーダンスと低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326における各直列共振周波数および各直列共振インピーダンスとの差分の大きさに対応して、直列共振周波数を定格周波数に近づける、すなわち効率よく誘導加熱を実施するための対処方法に関する対処情報を表示手段410で画面表示にて報知する制御をしている。このため、効率よく誘導加熱を実施させるための低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が対処情報に基づいて操作者にて容易に認識させることができ、操作者に高度な誘導加熱に関する知識や技能などを要求せずとも、効率的な誘導加熱を実施するための低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構築が容易にできる。さらには、誘導加熱の条件の変更などに対応した効率的な設定も対処情報に基づいて容易で迅速にでき、処理効率の向上や汎用性の向上などが容易に得られる。
そして、誘導加熱装置100は、制御手段430の粗整合判定処理手段432Aにて、整合回路部320における直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態を認識する。そして、表示制御手段432Cにて、粗整合判定処理手段432Aで認識された整合回路部320の直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態の対処方法を文字列で表す対処文字列表示領域574A〜574Nのうちいずれか1つを表示させている。このため、直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態の対処を表示手段410で表示させることができ、誘導加熱処理を熟知していない操作者であっても適切に対処できる。したがって、誘導加熱に関する情報を適切に報知できる。
また、整合回路部320の直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態を認識すると、この状態を表すメッセージボタン557A〜557Nのうちいずれか1つと、座標平面領域556と、を表示させる。そして、メッセージボタン557A〜557Nが選択された旨の入力操作を認識すると、このメッセージボタン557A〜557Nに対応する対処文字列表示領域574A〜574Nのうちいずれか1つを表示させている。このため、メッセージボタン557A〜557Nや座標平面領域556の表示により操作者に直列共振インピーダンスや直列共振周波数などの装置状態を認識させることができるとともに、操作者の意志により必要に応じて対処文字列表示領域574A〜574Nで対処方法を文字列表示でき、誘導加熱に関する情報をより適切に報知できる。
さらに、誘導加熱装置100の運転状態として、整合回路部320の直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態を認識して、メッセージボタン557A〜557Nや座標平面領域556を表示させている。このため、例えば作業回数が比較的多い被加熱物201や誘導加熱コイル200の変更作業などの際に特性が変化する整合回路部320の直列共振インピーダンスや直列共振周波数の状態やその対処を適宜報知できるので、発振回路部310の動作状態やその対処を報知する構成と比べて、利便性を向上できる。また、直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態を座標平面領域556上で表すことができるので、それぞれの状態を2つの数値で表示させる構成と比べて、利用者に運転状態を認識させやすくできる。さらに、それぞれの状態を2つの数値で表示させる構成と比べて、簡単な表示で運転状態を認識させることができる。
また、メッセージボタン557A〜557Nが選択された旨の入力操作を認識すると、メッセージボタン557A〜557Nおよび座標平面領域556の表示を終了させて、対処文字列表示領域574A〜574Nを表示手段410に表示させている。このため、対処文字列表示領域574A〜574Nの表示により、例えば騒音が大きい場所であっても操作者に対処方法を認識させることができ、誘導加熱に関する情報をさらに適切に報知できる。また、複数の表示手段410を設けることなく、メッセージボタン557A〜557N、座標平面領域556、対処文字列表示領域574A〜574Nを操作者に表示により認識させることができ、構成を簡略にできる。さらに、メッセージボタン557A〜557Nおよび座標平面領域556と、対処文字列表示領域574A〜574Nと、のうちいずれか一方のみを表示させるので、両方を同時に表示させる構成と比べて一度に表示される情報の数を低減でき、操作者に各種情報を良好に認識させることができる。
そして、対処文字列表示領域574A〜574Nとともに、直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態を簡易的に文字列で示す簡易状況文字列表示領域573A〜573Nを表示させている。このため、1つの表示画面の表示で操作者に直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態と、対処方法と、を認識させることができ、利便性を向上できる。また、直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態を簡易的に文字列で示す簡易状況文字列表示領域573A〜573Nを表示させるため、これらの状態を具体的に表す例えば値を表示させる構成と比べて一度に表示される情報の数を低減でき、操作者に各種情報を良好に認識させることができる。
さらに、対処文字列表示領域574A〜574Nと、簡易状況文字列表示領域573A〜573Nと、を異なる表示形態で表示させている。このため、表示形態の差異により1つの表示画面で表示されている情報が対処または負荷共振インピーダンスなどの状態に関するものかを表すことができ、各種情報の内容の識別を容易にさせることができ、利便性をより向上できる。
また、対処文字列表示領域574A〜574Nや簡易状況文字列表示領域573A〜573Nの表示形態の設定として、表示色を設定する制御をしている。このため、一般的に識別が容易な色に関する設定を変更することにより、操作者に各種情報の内容をより適切に認識させることができる。
さらに、表示手段410にタッチパネル412を設けている。そして、タッチパネル412におけるメッセージボタン557A〜557Nに対応する領域が接触された旨を認識すると、このメッセージボタン557A〜557Nに対応する対処文字列表示領域574A〜574Nを表示させている。このため、操作者にメッセージボタン557A〜557Nに対応する領域を指で直接接触させるだけでよく、例えばキーボードやマウスなどの操作によりメッセージボタン557A〜557Nを選択する構成と比べて簡単な操作で選択させることができる。
また、複数の整合状態関連情報421Aを有する整合状態データベース421をメモリ420に記憶させている。そして、周波数差分に対応する周波数差分情報421A2およびインピーダンス差分に対応するインピーダンス差分情報421A3を有する整合状態関連情報421Aをメモリ420から検索し、この検索した整合状態関連情報421Aのメッセージ情報421A6に基づいて対処文字列表示領域574A〜574Nを表示させている。このため、周波数差分およびインピーダンス差分に対応する整合状態関連情報421Aを検索するだけの簡単な構成で対処文字列表示領域574A〜574Nを表示させることができ、処理負荷の低減を図ることができる。また、メモリ420に記憶されたメッセージ情報421A6の内容を変更するだけの簡単な方法で対処内容を適宜変更でき、利便性をさらに向上できる。
さらに、定格周波数および定格インピーダンスと低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326における各直列共振周波数および各直列共振インピーダンスとの差分が所定範囲内、すなわちメッセージボタン557D,557Eの状態では、精密整合処理を実施可能としている。すなわち、検出した直列共振周波数に基づいてコンバータ311からの直流電力により整合回路部320における直列共振周波数を検出する動作を可能としている。このため、平滑コンデンサCfからの電力で検出した整合回路部320の直列共振周波数が定格周波数と大差がない場合、低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326がある程度の適正性で構築されていると判断できるので、コンバータ311からの直流電力でより正確な整合回路部320の直列共振周波数を検出して低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の適正性の判断をしても、装置が損傷するなどの不都合を生じず、コンバータ311からの直流電力で低周波直列共振回路325および高周波直列共振回路326の構成のより適正な設定判断ができ、誘導加熱をより効率よく実施させるための設定が容易にできる。
そして、発振回路部310および整合回路部320を備えた電力供給装置300、および、誘導加熱コイル200を備えた誘導加熱装置100に適用している。このため、効率よく誘導加熱するための設定が容易にできるとともに、誘導加熱を効率よく実施できる。
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
コンバータ311およびインバータ312のスイッチング素子のオンオフ制御にて動作状態、充電状態、検出状態に切り替える動作について例示したが、例えばコンバータ311およびインバータ312の間に、動作切替のためのスイッチング素子やスイッチ回路などスイッチ部を設け、このスイッチ部の動作を制御手段430にて適宜制御して動作切替を実施する構成としてもよい。
また、電力供給装置300に誘導加熱コイル200を接続して誘導加熱させる作用を例示したが、本発明の誘導負荷として例えば電動機など、いずれの誘導負荷を対象とすることができる。
そして、例えば、整合回路部320の直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態を認識した際に、メッセージボタン557A〜557Nや座標平面領域556を表示させずに対処文字列表示領域574A〜574Nを表示させる構成、すなわち整合判定処理画面500を表示させずにメッセージ画面570A〜570Nを表示させる構成としてもよい。このような構成にすれば、整合判定処理画面500を表示させる機能を設ける必要がなく、構成を簡略にできる。
そして、メッセージボタン557A〜557Nや座標平面領域556を表示させずに、メッセージ画面570A〜570Nを表示させるための専用のボタンを表示させ、このボタンが選択された際にメッセージ画面570A〜570Nを表示させる構成としてもよい。このような構成にすれば、メッセージボタン557A〜557Nの表示位置を設定する機能を設ける必要がなく、構成を簡略にできる。なお、例えば粗整合共振周波数表示領域552に対応する領域が選択された際に直列共振周波数の状態の対処に関する情報のみを表示させ、粗整合測定負荷インピーダンス表示領域553に対応する領域が選択された際に直列共振インピーダンスの状態の対処に関する情報のみを表示させる構成としてもよい。
また、表示手段410に整合判定処理画面500のみを表示させるとともに、メッセージ画面570A〜570Nのみを表示させる他の表示手段410を設ける構成としてもよい。さらに、整合判定処理画面500およびメッセージ画面570A〜570Nを1つの画面表示で表示させる構成としてもよい。このような構成にすれば、誘導加熱に関するより多くの情報を操作者に認識させることができ、利便性を向上できる。
そして、メッセージ画面570A〜570Nに、簡易状況文字列表示領域573A〜573Nを表示させない構成としてもよい。このような構成にすれば、メッセージ画面570A〜570Nに表示される情報の量を減らすことができ、メッセージ画面570A〜570Nの簡略化や表示処理負荷の低減を図ることができる。また、操作者に対処に関する情報をより容易に認識させることができる。
さらに、対処文字列表示領域574A〜574Nおよび簡易状況文字列表示領域573A〜573Nを同じ表示色で表示させる構成としてもよい。このような構成にすれば、表示手段410で表示可能な色の数を減らすことができ、表示手段410の構成の簡略化や表示処理負荷の低減を図ることができる。
また、対処文字列表示領域574A〜574Nおよび簡易状況文字列表示領域573A〜573Nの表示の大きさや明るさあるいは点滅速度を異なる状態に設定する構成にしてもよい。これらのような構成にしても、表示形態の差異により1つの表示画面で表示されている情報が対処または直列共振インピーダンスなどの状態に関するものかを表すことができ、各種情報の内容の識別を容易にさせることができる。
さらに、表示手段410にタッチパネル412を設けずに、例えばキーボードやマウスなどの入力操作によりメッセージボタン557A〜557Nが選択された旨を認識する構成としてもよい。このような構成にすれば、表示手段410の構成を簡略にできる。
そして、報知手段としての図示しない音声出力手段を設け、対処文字列表示領域574A〜574Nの内容を音声にて出力させる構成としてもよい。このような構成にすれば、対処の内容を表示により報知する構成と比べてより広い範囲への報知が可能となり、誘導加熱に関する情報をさらに適切に報知できる。なお、対処文字列表示領域574A〜574Nの内容を表示および音声にて報知する構成としてもよい。さらに、例えば簡易状況文字列表示領域573A〜573Nの内容を音声で出力させる構成としてもよい。そして、簡易状況文字列表示領域573A〜573Nの内容を音声で出力させる構成の場合、簡易状況文字列表示領域573A〜573Nおよび対処文字列表示領域574A〜574Nのそれぞれの内容を表す音声の出力形態を異なる形態に設定する構成としてもよい。例えば一方を男性の音声で、他方を女性の音声で出力する構成としてもよい。このような構成にすれば、音声の出力形態の差異により出力されている情報が対処または直列共振インピーダンスなどの状態に関するものかを表すことができ、各種情報の内容の識別を容易にさせることができる。
また、整合回路部320の直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態を認識した際に、メッセージ情報421A6を生成して対処文字列表示領域574A〜574Nを表示させる構成としてもよい。このような構成にすれば、整合状態関連情報421Aにメッセージ情報421A6を組み込む必要がなく、整合状態関連情報421Aの構成を簡略にできる。
さらに、粗整合判定処理手段432Aおよび表示制御手段432Cなど、制御手段430の構成の一部を制御手段430から独立させて例えばCPUやマイクロコンピュータなどの素子などに設ける構成としてもよい。このような構成にすれば、CPUなどの素子を取り付けるだけの簡単な構成で、誘導加熱装置100に誘導加熱時の運転状態を良好に表示させることができ、利用拡大を容易に図ることができる。
そして、制御手段430を、プログラムで構成してもよい。このような構成にすれば、プログラムをインストールするだけで誘導加熱に関する情報を適切に報知できる機能を設けることができ、利用拡大をより容易に図ることができる。
また、制御手段430で実施される処理のプログラムを記録媒体に記録する構成としてもよい。このような構成にすれば、記録媒体を配布することにより、例えばインターネットなどのネットワークを介してプログラムを配布する構成と比べて簡単な構成で利用拡大をさらに容易に図れる。
そして、本発明として、例えば図25および図26に示すような誘導加熱装置600に適用してもよい。なお、誘導加熱装置100と同様の構成については、同一名称や同一符号を付し、説明を簡略化または省略する。
この図25に示す誘導加熱装置600は、2つの商用交流電源eを利用して略同時期に異なる2種の周波数の電力を出力させて被加熱物201を誘導加熱する。そして、誘導加熱装置600は、誘導加熱コイル200と、誘導加熱コイル200に異なる2種の周波数の交流電力を供給する電力供給装置610と、を備えている。電力供給装置610は、第1の変圧器611と、誘導加熱コイル200に所定の周波数、例えば周波数が50kHz以上1MHz以下の高周波の交流電力を供給して誘導加熱させる第1の共振手段620と、誘導加熱コイル200に第1の共振手段620の周波数より低い周波数、例えば1kHz以上50kHz以下の中周波の交流電力を供給して誘導加熱させる第2の共振手段630と、表示手段410、粗整合判定処理において用いられる各フラグや整合状態データベース421を記憶するメモリ420および制御手段641を有する制御装置640と、を備えている。
第1の変圧器611は、第1の共振手段620および第2の共振手段630に接続されるとともに誘導加熱コイル200に接続され、所定の周波数の交流電力を誘導加熱コイル200に供給する。この第1の変圧器611は、例えば自己インダクタンスが小さいもので、2次巻線611Bを構成する直列に接続された分割巻線である第1分割巻線612Aと、分割巻線である第2分割巻線612Bとがそれぞれ1回巻きで、これら第1分割巻線612Aおよび第2分割巻線612Bの合成されたインダクタンスの値と、誘導加熱コイル200のインダクタンスの値とが略同一となる状態に設定されたものである。そして、第1の変圧器611は、2次巻線611Bの両端となる第1分割巻線612Aおよび第2分割巻線612Bの直列回路の両端が誘導加熱コイル200に接続されている。すなわち、第1分割巻線612Aの一端側と、第2の分割巻線612Bの他端側との間に誘導加熱コイル200が接続されている。
第1の共振手段620は、第1の発振手段621と、第2の変圧器622と、第1のコンデンサ部623と、を備えている。第1のコンデンサ部623は、コンデンサC31と、このコンデンサC31にタップ623Aを介して並列に適宜接続されるコンデンサC32と、コンデンサC31にタップ623Bを介して並列に適宜接続されるコンデンサC33と、を備えている。また、第1の発振手段621は、順変換回路部である第1のコンバータ621Aと、逆変換回路部である第1のインバータ621Cと、平滑手段としての第1の平滑コンデンサCf1と、を備えている。第1のコンバータ621Aは、商用交流電源eに接続されて商用交流電源eの交流電力を直流電力に変換する。この変換した直流電力は、充電電圧が例えば約100Vとなる容量を有する第1の平滑コンデンサCf1を介して適宜平滑され、第1のインバータ621Cへ出力される。第1のインバータ621Cは、第1の平滑コンデンサCf1を介して入力される直流電力を所定の周波数である上述した高周波の交流電力に変換する。また、第1のインバータ621Cの出力端子間には、第2の変圧器622の1次巻線622Aが直列に接続されている。この第2の変圧器622は、1次巻線622Aの所定の位置に接続される状態に設けられたタップ622Cを有している。そして、第2の変圧器622は、高周波の交流電力を所定のインピーダンスに変換する。この第2の変圧器622は、第1のコンデンサ部623と、第1の変圧器611と、誘導加熱コイル200とにて直列共振回路を構成する。
そして、第1の共振手段620は、第2の変圧器622の2次巻線622Bの出力端子間に、第1のコンデンサ部623および第1の変圧器611の1次巻線611Aの直列回路が直列に接続されて構成される。また、第1のコンデンサ部623は、第2の変圧器622の2次巻線622Bの出力端と誘導加熱コイル200の等価インダクタンスとにより直列共振する第1の直列共振回路を構成する。すなわち、第1のコンデンサ部623は、第1のインバータ621Cから出力され第2の変圧器622を介して供給される所定の高周波の交流電力により直列共振状態となり、誘導加熱コイル200にて被加熱物201を誘導加熱させる。なお、第1の変圧器611は、1次巻線611Aの所定の位置に接続されるタップ611Cを介して第1のコンデンサ部623に接続されている。そして、第1の変圧器611のタップ611Cや第2の変圧器622のタップ622Cの位置調整、あるいは、誘導加熱コイル200の巻数や大きさの調整により、第1の直列共振回路の負荷共振インピーダンスとしての直列共振インピーダンスが変更可能に構成されている。また、第1のコンデンサ部623のタップ623A,623Bの位置調整による第1のコンデンサ部623の合成静電容量の調整、タップ611Cの位置調整、誘導加熱コイル200の巻数や大きさの調整により、第1の直列共振回路の負荷共振周波数としての直列共振周波数が変更可能に構成されている。
また、第1のコンデンサ部623は、第1の変圧器611および誘導加熱コイル200の無効電力を補償するとともに、第1の変圧器611で第2の共振手段630から帰還される交流電力の中周波成分を減衰する。そして、第1の共振手段620は、上述したように、周波数が50kHz以上1MHz以下の高周波の交流電力を第1の変圧器611を介して誘導加熱コイル200に供給し、第1のコンデンサ部623で直列共振により、被加熱物201を誘導加熱させる。ここで、周波数が50kHzより低くなると、特に歯車などの被加熱面が凹凸の被加熱物201の良好な焼入れが得られなくなるおそれがある。一方、1MHzより高くなると、良好な誘導加熱が得られにくくなるおそれがある。このため、第1の共振手段620で供給する周波数は、50kHz以上1MHz以下の範囲に設定することが好ましい。
第2の共振手段630は、第2の発振手段631と、第3の変圧器632と、第2のコンデンサ部633と、第4の変圧器634と、バイパス回路635と、を備えている。また、第2の発振手段631は、第1の共振手段620と同様に、順変換回路部としての第2のコンバータ631Aと、平滑手段としての第2の平滑コンデンサCf2と、逆変換回路部としての第2のインバータ631Cと、を備えている。第2のコンバータ631Aは、商用交流電源eに接続されて商用交流電源eの交流電力を直流電力に変換する。この変換した直流電力は、充電電圧が例えば約100Vとなる容量を有する第2の平滑コンデンサCf2を介して適宜平滑され、第2のインバータ631Cへ出力される。第2のインバータ631Cは、第2の平滑コンデンサCf2を介して入力される直流電力を所定の周波数である上述した中周波の交流電力に変換する。また、第2のインバータ631Cの出力端子間には、第3の変圧器632の1次巻線632Aが直列に接続されている。この第3の変圧器632は、1次巻線632Aの所定の位置に接続される状態に設けられたタップ632Cを有している。そして、第3の変圧器632は、中周波の交流電力を所定のインピーダンスに変換する。この第3の変圧器632は、第2のコンデンサ部633と、誘導加熱コイル200とにて直列共振回路を構成する。また、第4の変圧器634は、低周波の交流電力を所定のインピーダンスに変換する。
そして、第2の共振手段630は、第3の変圧器632の2次巻線632Bの出力端子間に、第2のコンデンサ部633と、第4の変圧器634の1次巻線634Aとの直列回路が接続されている。第2のコンデンサ部633は、コンデンサC41と、このコンデンサC41にタップ633Aを介して並列に適宜接続されるコンデンサC42と、を備えている。また、第2のコンデンサ部633は、第3の変圧器632の2次巻線632Bの出力端と第4の変圧器634の1次巻線634Aとの間の回路における線路であるブスバ637のインダクタンスと、誘導加熱コイル200の等価インダクタンスとにより直列共振する第2の直列共振回路を構成する。なお、第4の変圧器634は、1次巻線634Aの所定の位置に接続されるタップ634Cを介して第2のコンデンサ部633に接続されている。そして、第4の変圧器634のタップ634Cや第3の変圧器632のタップ632Cの位置調整、あるいは、誘導加熱コイル200の巻数や大きさの調整により、第2の直列共振回路の負荷共振インピーダンスとしての直列共振インピーダンスが変更可能に構成されている。また、第2のコンデンサ部633のタップ633Aの位置調整による第2のコンデンサ部633の合成静電容量の調整、タップ634Cの位置調整、誘導加熱コイル200の巻数や大きさの調整により、第2の直列共振回路の負荷共振周波数としての直列共振周波数が変更可能に構成されている。
また、第4の変圧器634の2次巻線634Bは、両端が第1の変圧器611の2次巻線611Bにおける第1分割巻線612Aおよび第2分割巻線612Bの接続点に接続、すなわち2次巻線634Bが第1分割巻線612Aおよび第2分割巻線612B間に直列に接続されている。なお、ブスバ637は、その浮遊インダクタンスにより、第1の共振手段620からの高周波の帰還を阻止、すなわち高周波電流が第2のインバータ631Cに侵入することを抑制する。
さらに、バイパス回路635は、直列に接続された分割コンデンサである第1分割コンデンサC50Aおよび第2分割コンデンサC50Bのバイパスコンデンサとしてのバイパス直列回路C50を備えている。なお、第1分割コンデンサC50Aおよび第2分割コンデンサC50Bは、同等規格のものである。また、バイパス直列回路C50は、第1分割コンデンサC50Aおよび第2分割コンデンサC50Bの接続点が接地されている。そして、バイパス回路635は、バイパス直列回路C50の両端が、第1の変圧器611の第1分割巻線612Aおよび第2分割巻線612Bの接続点に接続、すなわち第1分割巻線612Aおよび第2分割巻線612B間に直列で、第4の変圧器634の2次巻線634Bに対して並列に、ブスバであるリアクトルとしての導体L2にて接続されている。すなわち、バイパス回路635は、バイパス直列回路C50およびこのバイパス直列回路C50に直列状に接続される導体L2を備え、導体L2によりバイパス直列回路C50が第1の変圧器611の2次巻線611Bに接続されて、第1の共振手段620からの高周波成分をバイパスする。そして、導体L2は、バイパス直列回路C50とにより直列共振回路を構成し、第1の共振手段620から帰還される高周波成分を減衰させる。この導体L2は、例えば銅板にて所定寸法の同一平板状に形成された一対の導電板である第1の導電板L2Aおよび第2の導電板L2Bが所定の間隙で平面が対向する状態に対向配置されて構成されている。この導体L2の浮遊インダクタンスLは、第1の導電板L2Aおよび第2の導電板L2Bの長さ寸法l〔mm〕、幅寸法W〔mm〕、厚さ寸法D〔mm〕、間隙である板間ギャップG〔mm〕とすると、以下の数3で示される。
(数3)
L=1.26×10-3×l×(G/W)〔μH/mm〕
そして、導体L2の板間ギャップGは、第1の共振手段620からの高周波成分でバイパス直列回路C50と導体L2との直列共振点となる導体L2のインダクタンスLとなる状態に設定される。例えば、第1の共振手段620で供給する高周波の交流電力の周波数f1が200kHz、バイパス直列回路C50の静電容量である第1分割コンデンサC50Aおよび第2分割コンデンサC50Bの合成静電容量Cが50μFである場合、第1の導電板L2Aおよび第2の導電板L2Bの長さ寸法lが500mm、幅寸法Wが300mmとすると、導体L2のインダクタンスLは、以下で示す数4により演算される。
(数4)
L=1/(ω2×C)
=0.0127μH
ω:2π×f1
C:(C50A×C50B)/(C50A+C50B)
C50A:第1分割コンデンサC50Aの静電容量
C50B:第2分割コンデンサC50Bの静電容量
したがって、例えば、長さ寸法lが500mmで幅寸法Wが300mmの第1の導電板L2Aおよび第2の導電板L2Bの板間ギャップGは、以下で示す数5により演算される。
(数5)
G=L×W/(1.26×10-3×l)
=0.0127×300/(1.26×10-3×500)
=6〔mm〕
そして、第2の共振手段630は、周波数が1kHz以上50kHz以下の中周波の交流電力を誘導加熱コイル200に供給し、第2のコンデンサ部633の直列共振により、被加熱物201を誘導加熱させる。ここで、周波数が1kHzより低くなると、良好な誘導加熱が得られにくくなるおそれがある。一方、50kHzより高くなると、被加熱物201の内部に亘る良好な誘導加熱が得られなくなるおそれがある。このことから、第2の共振手段630にて供給する周波数は、1kHz以上50kHz以下が好ましい。
なお、第1の発振手段621および第2の発振手段631にて、本発明の発振回路部が構成されている。また、第1の変圧器611、第2の変圧器622、第1のコンデンサ部623、第3の変圧器632、第2のコンデンサ部633、第4の変圧器634にて、本発明の整合回路部が構成されている。
制御手段641は、図26に示すように、図1ないし図24に示す実施の形態における運転制御部431に対応する誘導加熱制御手段641Aと、状態認識手段としての粗整合判定処理手段641Bと、精密整合判定処理手段641Cと、報知制御手段としての表示制御手段641Dと、を備えている。
誘導加熱制御手段641Aは、第1の共振手段620で所定の高周波の交流電力を、操作者により設定された出力割合で電流値が一定となる状態に電流一定制御で誘導加熱コイル200に供給させる。さらに、誘導加熱制御手段641Aは、第2の共振手段630で所定の中周波の交流電力を、同様に電流一定制御で設定された出力割合の交流電力を誘導加熱コイル200に供給させる。これら高周波の交流電力および中周波の交流電力は、それぞれ独立して供給可能であるとともに、高周波および中周波が適宜重畳する状態に供給可能となっている。
粗整合判定処理手段641Bは、第1の発振手段621および第1の直列共振回路の粗整合判定処理や、第2の発振手段631および第2の直列共振回路の粗整合判定処理を実施する。そして、粗整合判定処理手段641Bは、周波数調整手段641BAと、データ収集手段641BBと、差分算出手段641BCと、を備えている。
周波数調整手段641BAは、第1の発振手段621および第2の発振手段631に接続、具体的には第1のコンバータ621Aと、第1のインバータ621Cと、第2のコンバータ631Aと、第2のインバータ631Cと、に接続されている。この周波数調整手段641BAは、上述の実施の形態と同様に、スイッチング素子のオンオフ制御にて検索開始周波数を設定するとともに平滑コンデンサCf1を充電する。そして、平滑コンデンサCf1の放電により第1のインバータ621Cから検索開始周波数の電力を出力させる。さらに、第1の直列共振回路の電流を、第1のコンデンサ部623および第1の変圧器611の接続点に接続された高周波電流検出手段624にて検出し、第1のインバータ621Cから出力させた電力との位相差に基づいて、粗整合判定処理時における第1のインバータ621Cからの電力の周波数を制御する。また、周波数調整手段641BAは、上述した処理と同様の処理を実施して、第2の直列共振回路の電流を、第2のコンデンサ部633および第4の変圧器634の接続点に接続された低周波電流検出手段636にて検出し、第2のインバータ631Cから出力させた電力との位相差に基づいて、粗整合判定処理時における第2のインバータ631Cからの電力の周波数を制御する。
データ収集手段641BBは、第1の発振手段621および第2の発振手段631に接続されている。そして、データ収集手段641BBは、上述した誘導加熱装置100のデータ収集手段432A2と同様の処理を実施して、粗整合判定用データを順次記録する。差分算出手段641BCは、上述した誘導加熱装置100の差分算出手段432A3と同様の処理を実施して、第1の直列共振回路や第2の直列共振回路の直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数をそれぞれ算出する。
精密整合判定処理手段641Cは、第1の発振手段621および第2の発振手段631に接続され、上述した誘導加熱装置100の精密整合判定処理手段432Bと同様の処理を実施して、精密整合判定処理を実施する。表示制御手段641Dは、第1の発振手段621および第1の直列共振回路の整合状態や、第2の発振手段631および第2の直列共振回路の整合状態を表す整合判定処理画面500やメッセージ画面570A〜570Nを表示手段410に表示させる。ここで、対処文字列表示領域574A〜574Nで表現される「トランスタップ」は、第1の変圧器611のタップ611C、第2の変圧器622のタップ622C、第3の変圧器632のタップ632C、第4の変圧器634のタップ634Cを表す。また、「コンデンサ」は、第1のコンデンサ部623や第2のコンデンサ部633を表す。さらに、「負荷コイル」は、誘導加熱コイル200を表す。
このような構成にすれば、2つの商用交流電源eを利用して2種の異なる周波数の電力を出力させることにより被加熱物201を誘導加熱する誘導加熱装置600、すなわち複数の発振回路部となる第1の発振手段621および第2の発振手段631で異なる周波数の交流電力を供給させて誘導加熱させる構成においても、動作状態、充電状態、直列共振周波数を検出する検出状態に適宜切り替えて交流電力の供給状態を制御することで、第1の発振手段621および第2の発振手段631からそれぞれ出力される交流電力の周波数に対応した共振回路を構成する第1の直列共振回路や第2の直列共振回路の設定が容易にできる。
そして、検出状態での粗整合判定処理で検出した直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数の状態およびその対処を表示手段410で表示させることにより、誘導加熱処理を熟知していない操作者であっても適切に対処でき、誘導加熱に関する情報を適切に報知できる。また、上述した誘導加熱装置100と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、本発明の報知制御装置を例えば図27に示すような誘導加熱装置700に適用してもよい。なお、誘導加熱装置100,600と同様の構成については、同一名称や同一符号を付し、説明を簡略化または省略する。
この図27に示す誘導加熱装置700は、1つの商用交流電源eを利用して1種の周波数の電力を出力させて被加熱物201を誘導加熱する。そして、誘導加熱装置700は、誘導加熱コイル200と、誘導加熱コイル200に交流電力を供給する電力供給装置800と、を備えている。また、電力供給装置800は、第1の変圧器810と、誘導加熱コイル200に所定の周波数、例えば周波数が10kHz以上30kHz以下の中周波の交流電力を供給して誘導加熱させる共振手段820と、表示手段410、粗整合判定処理において用いられる各フラグや整合状態データベース421を記憶するメモリ420、および、共振手段820から交流電力を適宜供給させる制御手段830を備えた演算装置840と、を備えている。
第1の変圧器810は、共振手段820に接続されるとともに誘導加熱コイル200に接続され、所定の周波数の交流電力を誘導加熱コイル200に供給する。この第1の変圧器810には、2次巻線812に誘導加熱コイル200が接続されている。
共振手段820は、発振回路部としての発振手段821と、第2の変圧器822と、コンデンサ部823と、を備えている。なお、第1の変圧器810、第2の変圧器822、コンデンサ部823にて、本発明の整合回路部が構成されている。コンデンサ部823は、コンデンサC61と、このコンデンサC61にタップ823Aを介して並列に適宜接続されるコンデンサC62と、コンデンサC61にタップ823Bを介して並列に適宜接続されるコンデンサC63と、を備えている。また、発振手段821は、順変換回路部としてのコンバータ821Aと、逆変換回路部としてのインバータ821Cと、平滑手段としての平滑コンデンサCfと、を備えている。コンバータ821Aは、商用交流電源eに接続されて商用交流電源eの交流電力を直流電力に変換する。インバータ821Cは、平滑コンデンサCfを介して入力される直流電力を所定の周波数である上述した高周波の交流電力に変換する。また、インバータ821Cの出力端子間には、第2の変圧器822の1次巻線822Aが直列に接続されている。この第2の変圧器822は、1次巻線822Aの所定の位置に接続される状態に設けられたタップ822Cを有している。そして、第2の変圧器822は、コンデンサ部823と、誘導加熱コイル200とにて直列共振回路を構成する。
また、共振手段820は、第2の変圧器822の2次巻線822Bの出力端子間に、コンデンサ部823および第1の変圧器810の1次巻線811の直列回路が直列に接続されて構成される。また、コンデンサ部823は、第2の変圧器822の2次巻線822Bの出力端と誘導加熱コイル200の等価インダクタンスとにより直列共振する直列共振回路を構成する。すなわち、コンデンサ部823は、インバータ821Cから出力され第2の変圧器822を介して供給される所定の周波の交流電力により直列共振状態となり、誘導加熱コイル200にて被加熱物201を誘導加熱させる。なお、第1の変圧器810は、1次巻線811の所定の位置に接続されるタップ811Aを介してコンデンサ部823に接続されている。そして、第1の変圧器810のタップ811Aや第2の変圧器822のタップ822Cの位置調整、あるいは、誘導加熱コイル200の巻数や大きさの調整により、直列共振回路の直列共振インピーダンスが変更可能に構成されている。また、コンデンサ部823のタップ823A,823Bの位置調整によるコンデンサ部823の合成静電容量の調整、タップ811Aの位置調整、誘導加熱コイル200の巻数や大きさの調整により、第2の直列共振回路の負荷共振周波数としての直列共振周波数が変更可能に構成されている。
制御手段830は、上述した図25および図26に示す実施の形態における制御手段641と同様に、誘導加熱制御手段831と、粗整合判定処理手段832と、精密整合判定処理手段833と、報知制御手段としての表示制御手段834と、を備えている。誘導加熱制御手段831は、共振手段820で所定の周波の交流電力を誘導加熱コイル200に供給させる。粗整合判定処理手段832は、発振手段821および直列共振回路の粗整合判定処理を実施する。そして、粗整合判定処理手段832は、周波数調整手段832Aと、データ収集手段832Bと、差分算出手段832Cと、を備えている。
周波数調整手段832Aは、上述したように、検索開始周波数を設定するとともにコンバータ821Aおよびインバータ821Cをオンオフ制御して平滑コンデンサCfを充電する。そして、平滑コンデンサCfの放電によりインバータ821Cから検索開始周波数の電力を出力させる。さらに、直列共振回路の電流をコンデンサ部823および第1の変圧器810の接続点に接続された電流検出手段824にて検出し、インバータ821Cから出力させた電力との位相差に基づいて、粗整合判定処理時におけるインバータ821Cからの電力の周波数を制御する。データ収集手段832Bは、上述したように、粗整合判定用データを順次記録する。差分算出手段832Cは、上述したように、直列共振回路の直列共振インピーダンスおよび直列共振周波数を算出する。
精密整合判定処理手段833は、上述したように、精密整合判定処理を実施する。表示制御手段834は、発振手段821および直列共振回路の整合状態を表す整合判定処理画面500やメッセージ画面570A〜570Nを表示手段410に表示させる。ここで、対処文字列表示領域574A〜574Nで表現される「トランスタップ」は、第1の変圧器810のタップ811A、第2の変圧器822のタップ822Cを表す。また、「コンデンサ」は、コンデンサ部823を表す。さらに、「負荷コイル」は、誘導加熱コイル200を表す。
このような構成にすれば、1つの商用交流電源eを利用して1種の周波数の電力を出力させることにより被加熱物201を誘導加熱する誘導加熱装置700においても同様に、簡単な構成で効率よく誘導加熱するための共振回路の構築が容易にできる。
なお、誘導加熱装置600,700に、誘導加熱装置100の他の実施の形態として例示した構成を適用してもよい。
さらには、例えば図25および図26に示す構成において、第1の発振手段621と第2の発振手段631が双方とも電圧形であることから、第1のコンバータ621Aおよび第2のコンバータ631Aと第1の平滑コンデンサCf1および第2の平滑コンデンサCf2を共通化した構成としてもよい。また、図25および図26に示す構成において、第1の発振手段621と第2の発振手段631との少なくともいずれか一方を電流形としてもよい。
さらには、共振回路としては、直列共振する構成に限らず、並列共振する構成、直並列共振する構成など、いずれの共振回路を対象とすることができる。
そして、上記各実施の形態では、検出状態で検出した直列共振周波数および直列共振インピーダンスを報知して説明したが、例えば直列共振周波数および直列共振インピーダンスが定格周波数および定格インピーダンスに近似する状態に、各種タップ321C,321D,322A,323A,324C,611C,622C,623A,623B,632C,633A,634C,811A,822C,823A,823Bなどを切替制御するなど、各整合回路部320を制御して、自動的に効率よく誘導加熱できる構成とするなどしてもよい。