JP4809213B2 - Invitroで構築されたMu転位複合体を用いて真核生物ゲノムに核酸を送達する方法 - Google Patents

Invitroで構築されたMu転位複合体を用いて真核生物ゲノムに核酸を送達する方法 Download PDF

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Description

本発明は、遺伝子工学、特に、MuファージのDNA転位複合体(DNA transposition complex of bacteriophage Mu)の用途に関する。具体的には、本発明は、真核細胞(eukaryotic cells)のための遺伝子導入システムであって、in vitroで構築されたMu転位複合体(in vitro assembled Mu transposition complexes)を標的細胞に導入するシステムを提供する。細胞内で、この複合体はトランスポゾン構築物(transposon construct)の細胞核酸への組込みを容易に仲介する。本発明はさらに、真核細胞のゲノムに挿入変異を生じさせるためのキットを提供する。このキットは、例えば、挿入変異体ライブラリーの構築に用いることができる。
分子生物学をうまく応用するためには、ほとんどすべての場合において、標的細胞に核酸を効率的に導入することが必須要件である。多様な種類の細胞に核酸を導入することにより、生体における遺伝子機能の研究や、外来遺伝子の発現や、細胞機能(例えばタンパク質の発現)の調節を行うための手段が提供される。安定に導入された挿入物は配列決定計画(sequencing projects)においてプライマーの結合部位としても用いることができる。原則として、核酸導入は一過性のもの(transient)と安定なもの(stable)に分類することができる。前者の場合、導入された遺伝物質は最終的には標的細胞から消失する。一過性遺伝子導入(Transient gene transfer)では、典型的に、宿主細胞中で複製しないプラスミド構築物(plasmid constructions)を用いる。哺乳類細胞中で複製するベクター分子はまれであり、実質的には、ウイルスレプリコンを含むものに限られる(つまり、プラスミドでは利用できない)。そのため、多くの場合、一過性導入法は哺乳類細胞に対する唯一の直接的な遺伝子導入法である。他の種類の細胞(例えば、細菌および下等真核生物(酵母など))に関しては、複製するプラスミドが利用可能であり、したがって、一過性発現は何らかの利点が想定される特定の状況(例えば、条件付き発現)においてのみ必要とされる。
多くの場合、安定な遺伝子導入が好ましい選択である。細菌および下等真核生物に関しては、細胞中で複製するプラスミドが利用可能である。したがって、これらのDNA分子は遺伝子送達ベヒクルとして用いることができる。しかし、これらのプラスミドのコピー数は、典型的に1または2を超えるので、導入された遺伝子の量が大幅に増加する。細菌と酵母に典型的に用いられるプラスミドは数十または数百コピーで存在する。通常の場合と比較して遺伝子量が増加すると、多くの実験系において、アーチファクト(artefactual)を含む実験結果、あるいは少なくとも偏った実験結果が生じる原因となり得る。したがって、(半数体ゲノム(haploid genome)ごとに)単一コピー遺伝子の導入が可能な状況を作ることが有益である。
一般的に、単一コピー遺伝子の安定導入は、導入されたDNAを標的細胞の染色体DNAに挿入することができれば達成し得る。従来、染色体DNAへの挿入は、種々の組換え反応を用いて達成されてきた。細菌においては、相同的組換えおよび部位特異的組換えの両者が広く用いられており、まだあまり特徴付けがされていない「非正統的」組換えが用いられる場合もある。方法の選択は、典型的には、ランダム変異と標的変異のどちらが要求されるかによる。これらの方法には、細菌種のうちの亜型に用いられる比較的特異的な(trivial)ものも含まれるが、汎用の方法がより望ましい。
組換え反応は、DNAを真核細胞の染色体DNA中に安定に導入するのに用いることもできる。相同組換え反応および部位特異的組換え反応は標的組込み(targeted integration)を生じ、「非正統的」組換えは非標的事象(non-targeted events)を生じる。転位による組換え(transpositional recombination)の利用は、パン酵母である Saccharomyces cerevisiae(Ji et al., 1993)および分裂酵母である Schizosaccharomyces pombe(Behrens et al., 2000)について報告されている。これらの方法はトランスポゾンがその細胞自身の内部から発生するin vivo での転位を用いる。これらの方法では、適切に修飾されたトランスポゾンを、所与の細胞中で産生されたトランスポザーゼタンパク質と組み合わせて用いる。細胞中でトランスポザーゼタンパク質が産生される類似のシステムが、その他の真核生物に関しても利用可能である。典型的な例としては、ショウジョウバエとゼブラフィッシュが挙げられる(Rubin and Spradling, 1982 および Raz et al., 1997)。
In vivo での転位機構の発現に基づく転位システムは、比較的容易に用いることがきるが、種々の理由により、遺伝子導入の最適な選択肢ではない。例えば、効率だけでなく宿主域にも制限がある場合や、標的部位の選択が最適でない場合がある。ウイルスシステム、特にレトロウイルス挿入法は、動物細胞ゲノムへの挿入を行なうために用いられてきた。この方法にも不都合な性質がいくつかある。例えば、ウイルスによってコードされたタンパク質への免疫応答が誘発される可能性がある。また、一般的に、安全で効率的なウイルスベクターを構築したり、用途に応じたパッケージング細胞系を構築することは、必ずしも容易ではない。したがって、真核細胞に関しても、汎用の非ウイルス性DNAランダム挿入法(random non-viral DNA insertion strategy)が望ましいと考えられる。In vitroで構築された転位複合体の細胞中への導入は1つの選択肢となりうる。In vitroで構築されたDNA転位複合体の利用は、最も用途の広い遺伝子導入システムの1つとなる可能性が高い。近年、細菌細胞に関するそのようなシステムが報告されており、そのシステムは転位によるDNA組換え(米国特許第6,159,736号および第6,294,385号)に基づく化学反応を利用する。効率的なシステムによって、細胞の様々な側面を研究するための種々の方法に用いることができる変異体のプールが提供されることが期待される。これら変異体のプールは全ゲノムに関する研究(即ち、機能的ゲノム学)に必須である。しかし、in vitroで構築されたDNA転位複合体が真核細胞に導入された場合、特にその複合体の構成成分が原核生物に由来する場合、該DNA転位複合体が真核細胞中で機能するかどうかを従来の知見から予想することは不可能である。原核細胞と真核細胞との違い、特に、後者における核膜の存在と、真核細胞のゲノムDNAがクロマチン構造中に収められていることが、原核細胞由来のシステム(prokaryotic system)が機能するのを妨げる可能性が考えられる。さらに、転位複合体の安定性および触媒活性を考慮すると、真核細胞中の条件は原核細胞のそれとは大きく異なる可能性が考えられる。さらに、その他の未知の制限システムが、入り込んでくるDNAに対抗し、構築された転位複合体が組込みのための機能を発揮する前に、非特異的プロテアーゼにより破壊されてしまうことも考えられる。たとえ転位反応によってトランスポゾンがゲノムに組込まれたとしても、その結果として生じる5bpの一本鎖領域(single stranded regions)(および、場合によっては4ntの隣接DNAフラップ(4-nt flanking DNA flaps))が、宿主によって修正される必要がある。したがって、真核細胞内の転位複合体の安定性と効率は、米国特許第6,159,736号および第6,294,385号に開示されている細菌細胞での結果から予想することができないのは明らかである。ゆえに、今日まで従来技術においては、in vitroで構築された転位複合体を高等生物(即ち真核生物)の細胞への核酸導入に一般的に用いることができるという旨は示されていない。
Muファージは、DNA転位機構を用いて自己のゲノムを複製し、最もよく特徴付けられた可動遺伝因子のひとつである(Mizuuchi, 1992 および Chaconas et al., 1996)。本発明者らは、近年開発されたMuファージ由来のin vitro 転位システム(Haapa et al., 1999a)を本発明に用いた。転位の化学的工程はMu転位複合体の内部で生じる。Mu転位複合体は、まず、トランスポゾン末端の特異的結合部位に最初に結合する4つのMuAトランスポザーゼタンパク質(MuA transposase protein)分子から構築される。50bpのMu右末端DNAセグメントは、これらの結合部位を2個有する(この結合部位はそれぞれR1およびR2(それぞれ22bp)と呼ばれる(Savilahti et al., 1995))。MuAモノマーがそれぞれ2個ずつ結合しているトランスポゾンの両末端が合わさり、構造変化によって転位複合体が形成される。その後、Muの転位は、該転位複合体(即ち、「DNA転位複合体」または「トランスポソソーム(transpososome)」とも呼ばれるタンパク質−DNA複合体(Mizuuchi, 1992 および Savilahti et al., 1995))によって進行する。このような複合体の機能上のコア(functional core)は、四量体であるMuAトランスポザーゼタンパク質およびMuA結合部位を有するMu−トランスポゾン由来DNA末端セグメント(即ち、MuAに認識されたトランスポゾン末端配列)から構築されている。そのコア複合体(core complexes)が形成されると、二価の金属イオンに依存する条件下で、いかなる標的DNAとも反応し、そしてMu末端セグメントを標的に挿入することができる(Savilahti et al., 1995)。Mu転位の顕著な特徴は、5bpの標的部位の重複(target site duplication)が生じることである(Allet, 1979 および Kahmann and Kamp, 1979)。
最も単純なケースでは、MuAトランスポザーゼタンパク質および短い50bpのMu右末端(R−末端)断片のみが、転位複合体の構築と機能に必要とされる高分子成分である(Savilahti et al., 1995 および Savilahti and Mizuuchi, 1996)。同様に、2つのR−末端配列が、より長いDNA分子において逆方向末端反復配列として配置されている場合、転位複合体はトランスポゾン末端同士が対合する(synapsing)ことにより形成される。Mu DNAのin vitroでの転位反応における標的DNAは線状、開環状、またはスーパーコイル状でもよい(Haapa et al., 1999a)。
今日まで、Muのin vitroでの転位に基づく方法は、DNAの配列決定(Haapa et al., 1999a および Butterfield et al., 2002)、遺伝子ターゲティングのためのDNA構築物の作成(Vilen et al., 2001)およびプラスミドとウイルス(HIV)ゲノムDNA領域の機能分析(Haapa et al., 1999b および Laurent et al., 2000)などの種々の分子生物学の用途に効率的に用いられてきた。また、ジャガイモウイルスAおよびバクテリオファージ PRD1の全ウイルスゲノムに関する機能的ゲノム研究は、Muのin vitroでの転位に基づく手法を用いて行われている(Kekarainen et al., 2002 および Vilen et al., 2003)。さらに、ペンタペプチド挿入変異法(pentapeptide insertion mutagenesis method)が報告されている(Taira et al., 1999)。近年、細菌ゲノムのための挿入変異法であって、in vitroで構築された機能的トランスポソソームをエレクトロポレーションにより種々の細菌細胞に送達することによる方法が開発された(Lamberg et al., 2002)。
E. coli は、Muファージの自然宿主である。In vitroであらかじめ構築された転位複合体を細菌細胞中にエレクトロポレートし、それによってトランスポゾン構築物をゲノム中に組み込むことができるということが、E. coliを用いて初めて示された(Lamberg et al., 2002)。また、Muトランスポソソームは、トランスポゾンを、試験した3種の他のグラム陰性細菌、具体的には Salmonella enterica (以前は S. typhimurium として知られていた)、Erwinia carotovara および Yersinia enterocolitica に組み込むことができた(Lamberg et al., 2002)。上記4つの細菌種のそれぞれにおいて、組み込まれたトランスポゾンは、Mu転位の顕著な特徴である重複した5bpの標的部位で挟まれていた。よって、DNA転位化学反応(DNA transposition chemistry)によって組込みが生じたことが確認された。
発明の概要
本発明者らは、in vitroで構築されたMuファージDNA転位複合体を用いた真核細胞のための遺伝子導入システムを開発した。適切な選択可能なマーカーと目的遺伝子とを含み、MuAトランスポザーゼタンパク質の結合に必要なDNA配列因子に挟まれた線状DNA分子を作成する。このようなDNA分子をMuAタンパク質とインキューベートすることによりDNA転位複合体、即ちトランスポソソームを得る。このトランスポソソームは、エレクトロポレーションまたはその他の関連する方法により真核細胞中に送達することができる。本発明の方法はMuトランスポゾンの、真核生物への遺伝子送達ベヒクルとしての利用可能性を拡大する。
1つの態様においては、本発明は下記の工程を包含する、標的真核細胞の細胞核酸に核酸セグメントを組み込む方法を提供する。
MuAトランスポザーゼ(i)および該MuAトランスポザーゼにより認識され結合された一対のMu末端配列と、該一対のMu末端配列の間に挟まれた挿入配列とからなるトランスポゾンセグメント(ii)を含むMu転位複合体を、該トランスポゾンセグメントの細胞核酸への組込みを可能にする条件下で、標的真核細胞(eukaryotic target cell)中に送達する工程。
他の1つの態様においては、本発明は下記の工程を包含する、標的真核細胞のプールから挿入変異体ライブラリーを構築する方法を提供する。
a)MuAトランスポザーゼ(i)および該MuAトランスポザーゼにより認識され結合された一対のMu末端配列と、該一対のMu末端配列の間に挟まれた、選択可能なマーカーを含む挿入配列とからなるトランスポゾンセグメント(ii)を含むMu転位複合体を、該トランスポゾンセグメントの細胞核酸への組込みを可能にする条件下で、標的真核細胞中に送達する工程。
b)選択可能なマーカーを含有する細胞をスクリーニングする工程。
他の1つの態様においては、本発明は核酸セグメントを標的真核細胞の細胞核酸に組み込むためのキットを提供する。
「トランスポゾン」という用語は、本願明細書においては、トランスポザーゼまたはインテグラーゼ酵素によって認識され、転位可能な機能的核酸−タンパク質複合体(functional nucleic acid-protein complex)(即ちトランスポソソーム)の必須成分である核酸セグメントを指す。Muシステムにおいて転位可能な最小の核酸−タンパク質複合体は、4個のMuAトランスポザーゼタンパク質分子およびMuAと相互作用可能な1対のMu末端配列を有する1個のトランスポゾンからなる。
「トランスポザーゼ」という用語は、本願明細書においては、転位可能な機能的核酸−タンパク質複合体の必須成分であって、転位を媒介する酵素を指す。「トランスポザーゼ」という用語はまた、レトロトランスポゾン由来またはレトロウイルス由来のインテグラーゼも指す。
「転位」という表現は、本願明細書においては、トランスポゾンが、自己を標的核酸に挿入する反応を指す。転位反応における必須成分はトランスポゾン、トランスポザーゼまたはインテグラーゼ酵素、そして機能的転位複合体の形成に必要なその他の成分である。本発明の遺伝子送達方法および原料は、in vitroにおけるMu転位(Haapa et al., 1999ab および Savilahti et al., 1995)の原理を採用した。
「トランスポゾン末端配列」という用語は、本願明細書においては、トランスポゾンの両末端の保存されたヌクレオチド配列を指す。トランスポゾン末端配列は転位に関してトランスポゾンの識別に関与する。
「トランスポゾン結合配列」という用語は、本願明細書においては、トランスポゾン末端配列中に保存されたヌクレオチド配列であって、トランスポザーゼが転位を媒介する際に特異的に結合する配列を指す。
発明の詳細な説明
In vitroで構築された転位複合体は安定であるが、Mg2+または他の二価陽イオンを欠く条件下では触媒活性を示さない(Savilahti et al., 1995 および Savilahti and Mizuuchi, 1996)。転位複合体を細菌細胞へエレクトロポレートで導入した後、これらの複合体は、細胞中で機能性を保ち、Mg2+イオンと出会うことにより転位化学反応(transposition chemistry)に関して活性化され、トランスポゾンの宿主染色体DNA中への組込みを促進する(Lamberg et al., 2002)。In vitroであらかじめ構築されたトランスポソソームは、in vivoにおける組込み工程に特別な宿主補因子(host cofactors)を必要としない(Lamberg et al., 2002)。重要なのは、細胞中に一度導入されてゲノムに組み込まれると、挿入されたDNAはMuAを発現しない細胞中で安定した状態を保つことである(Lamberg et al., 2002)。
In vitroで構築されたトランスポソソームを用いたMu転位システムが高等生物に関しても機能するかどうかを調べるために、本発明者らはトランスポゾン(抗生物質耐性マーカーをMu末端に連結した)を作成し、複合体を構築した。この複合体について、転位方法と酵母細胞またはマウス細胞にエレクトロポレートした後の標的部位の選択を試験した。上記のトランスポゾンは、重複した5bpの標的部位に挟まれてゲノムに組み込まれた。これは真正なDNA転位反応が生じたことを示している。このような結果は、驚くべきことに、真核細胞における条件下でMu DNAの組込みが可能であることを示す。注目すべきは、核膜、DNA結合タンパク質、あるいはDNAの修飾またはコンホメーションが、組込みを妨げなかったことである。さらに、Mu複合体の構造と触媒活性は、繰り返し行われた濃縮工程の後でさえも保持された。これは真核生物へのMu転位の方法の利用可能性を拡大する。このシステムの利点は、目的とする生物の転位機構の発現システムを作り出す必要がないことである。
本発明は、下記の工程を包含する、単離された標的真核細胞またはそのような細胞の一群(例えば、組織サンプルまたは組織培養物)の細胞核酸に核酸セグメントを組み込む方法を提供する。
In vitroで構築されたMu転位複合体であって、MuAトランスポザーゼ(i)および該MuAトランスポザーゼにより認識され結合された一対のMu末端配列と、該一対のMu末端配列の間に挟まれた挿入配列とからなるトランスポゾンセグメント(ii)を含むMu転位複合体を、該トランスポゾンセグメントの細胞核酸への組込みを可能にする条件下で、標的真核細胞中に送達する工程。
この方法に用いるために、Savilahti et al., 1995 および Savilahti and Mizuuchi, 1996に開示されているように、安定だがMg2+を欠く条件下では触媒活性のないMu転位複合体in vitroで構築することができる。原則として、Mg2+を含有しないものであれば、いかなる標準的な生理的緩衝液も上記の不活性Mu転位複合体の構築に好適である。しかし、in vitroトランスポソソーム構築反応液(in vitro transpososome assembly reaction)は、150mM Tris−HCL(pH6.0)、50%(v/v) グリセロール、0.025%(w/v) Triron X−100、150mM NaCl、0.1mM EDTA、55nM トランスポゾンDNA断片および245nM MuAを含むことが好ましい。上記反応液の体積は、例えば、20または80マイクロリットルである。上記反応液を約30℃で0.5〜4時間、好ましくは2時間インキュベートする。細胞へ送達するのに十分な量の転位複合体を得るために、構築反応を数回行い、その構築反応混合物(assembly reaction)を濃縮、脱塩する。酵母の形質転換には、転位複合体の最終濃度は構築反応混合物の少なくとも10倍であることが好ましく、マウス細胞のトランスフェクションには、少なくとも20倍であること好ましい。濃縮工程は遠心濾過ユニットを用いて行うことが好ましい。または、遠心分離または沈殿(例えば、PEGまたはその他の種類の沈殿剤を用いる)によって行うこともできる。
この方法においては、転位複合体の標的真核細胞中への送達を、該転位複合体の濃縮画分を用いて行なう。好ましい送達方法は、エレクトロポレーションである。Mu転位複合体の細菌細胞中へのエレクトロポレーションは Lamberg et al., 2002 に開示されている。しかし、Lamberg et al.の方法は、複合体を真核細胞へ導入するのには直接採用することはできない。本願実施例に示すように、Sands and Hasty (1997)に記載されるマウス胚幹(ES)細胞のエレクトロポレーションの手順は、本発明の方法において用いることができる。真核細胞に関する他の種々のDNA導入方法が知られており、当業者はそれらの方法を、本発明の方法を実施するために容易に用いることができる(例えば、「微生物のエレクトロポレーション プロトコール(Electroporation Protocols for Microorganisms)」、Jac A. Nickoloff 編、分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)、第47巻、Humana Press、ニュージャージー州トトワ、1995;「動物細胞のエレクトロポレーションと電気的細胞融合プロトコール(Animal Cell Electroporation and Electrofusion Protocols)」、Jac A. Nickoloff1 編、分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)、第48巻、Humana Press、ニュージャージー州トトワ、1995 および 「植物細胞のエレクトロポレーションと電気細胞融合プロトコール(Plant cell Electroporation and Electrofusion Protocols)、Jac A. Nickoloff 編、分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)、第55巻、Humana Press、ニュージャージー州トトワ、1995を参照されたい)。公知のDNA送達方法には、針や注射器を用いた直接注入、リポソームの利用、および種々のトランスフェクション促進添加剤の利用も含まれる。粒子衝撃法(particle bombardment)などの物理的方法も可能である。
標的細胞の細胞核酸への転位は、エレクトロポレーションの直後、その他の介入をせずとも起こると考えられる。しかし、転位を促進し、またエレクトロポレーションに起因するストレスを緩和するために、プレート培養、またはその他の後に続く工程の前に、該細胞を室温〜30℃で、10分間〜48時間、またはそれ以上、適切な培地でインキュベートすることもできる。標的細胞の細胞核酸に、単一の挿入が生じることが好ましい。
本発明の方法で用いる標的真核細胞はヒト細胞、動物(好ましくは哺乳類)細胞、植物細胞、真菌細胞または酵母細胞である。動物細胞は、マウス(Mus musculus)、ラット(Rattus norvegicus)、Xenopus、フグまたはゼブラフィッシュなどの脊椎動物の細胞、あるいはDrosophila melanogasterCaenorhabditis elegans などの無脊椎動物の細胞が好ましい。植物細胞は、Arabidopsis thaliana、タバコまたはイネの細胞が好ましい。酵母細胞は、Saccharomyces cerevisiae または Schizosaccharomyces pombeの細胞が好ましい。
Mu末端配列の間の挿入配列は、好ましくは、選択可能なマーカーと、遺伝子構築物またはプロモータートラップ構築物またはエンハンサートラップ構築物(gene or promoter trap or enhancer trap constructions)、ならびにタンパク質を発現している配列またはRNAを産生している配列を包含する。上記の構築物により、遺伝子標識、機能的ゲノム学または遺伝子治療において本発明の方法を用いることが可能となる。
上記の「選択可能なマーカー」という用語は、トランスポゾンによって細胞に導入される遺伝子であって、トランスポゾンを内包する細胞が所定の生育環境において生長または生存するための能力を改変し、該選択可能なマーカーを欠く類似の細胞との違いを出す遺伝子を指す。本発明で用いるトランスポゾンの核酸は、選択可能なポジティブマーカー(positive selectable marker)を含むことが好ましい。選択可能なポジティブマーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)は、該選択可能なポジティブマーカーを欠く場合には宿主の生長を阻害または殺してしまう作用物質の存在下で、宿主の生長と生存を可能にする産物をコードする。挿入配列は、さらにレポーター遺伝子を含んでもよく、該レポーター遺伝子は、免疫学的、化学的、生化学的、生物学的または機械的アッセイで、発現の検出および/または定量が可能な産物をコードするいかなる遺伝子でもよい。レポーター遺伝子の産物は、例えば、以下の属性のうちの1つを有する:蛍光性(例えば、緑色蛍光タンパク質)、酵素活性(例えば、ルシフェラーゼやlacZ/β-ガラクトシダーゼ)、毒性(例えば、リシン)または別の分子によって特異的に結合される能力(例えば、ビオチン)。真核細胞においてマーカーとレポーター遺伝を用いることは当業界では公知である。
In vitroで構築されたMu転移複合体を用いるシステム(in vitro Mu system)の標的部位の選択はランダム、またはほぼランダムであることが知られているため、本発明の方法の1つの好ましい態様では、核酸セグメントを、標的細胞の細胞核酸のランダムな位置またはほぼランダムな位置に組み込む。しかし、場合によっては転位のターゲティングは有益となりうる。したがって本発明の方法の他の1つの好ましい態様では、核酸セグメントを、標的細胞の細胞核酸の標的位置に組み込む。この方法は、転位複合体またはトランスポゾン中の両Mu末端の間のDNA領域に、核酸レベルまたはタンパク質レベルのターゲティングシグナルを付加することで達成できる。該ターゲティングシグナルは、特定のヌクレオチド配列に効率的に結合または会合し、それによってターゲティングを促進することが知られている核酸、タンパク質またはペプチドであることが好ましい。
本発明の方法の1つの具体的な態様では、修飾されたMuAトランスポザーゼを用いる。MuAトランスポザーゼは、例えば、欠失、挿入または点変異によって修飾することができる。修飾されたMuAトランスポザーゼは、未修飾のMuAとは異なる触媒活性または特異性を有していてもよい。
本発明の他の1つの態様は、下記の工程を包含する、標的真核細胞のプールから挿入変異体ライブラリーを構築する方法である。
a)In vitroで構築されたMu転位複合体であって、MuAトランスポザーゼ(i)および該MuAトランスポザーゼにより認識され結合された一対のMu末端配列と、該一対のMu末端配列の間に挟まれた、選択可能なマーカーを含む挿入配列とからなるトランスポゾンセグメント(ii)を含むMu転位複合体を、該トランスポゾンセグメントの細胞核酸への組込みを可能にする条件下で、標的真核細胞中に送達する工程。
b)選択可能なマーカーを含有する細胞をスクリーニングする工程。
上記の方法において、当業者は種々のスクリーニング技術を容易に利用することができる。スクリーニング工程は、例えば、配列分析、核酸ハイブリダイゼーション、プライマー伸長または抗体結合を含む方法によって行うことができる。これらの方法は当業界で周知である(例えば、分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、Ausubel et al.編、John Wiley & Sons、1992を参照)。本発明の方法に従って構築されたライブラリーは、転位後の遺伝子型の変化または表現型の変化に関するスクリーニングも行うことができる。
本発明のさらなる態様は、核酸セグメントを標的真核細胞の細胞核酸に組み込むためのキットである。該キットは真核細胞において選択可能なマーカーを有するトランスポゾンセグメントを含むMu転位複合体の濃縮画分を包含する。該複合体は、他のタンパク質や遺伝物質などを含まない実質的に純粋な調製物として提供されることが好ましい。
発明の背景を明らかにするため、特に、その実施に関するさらなる詳細を提供するために本願明細書で言及した出版物とその他の資料は、言及によってその内容が本願明細書に組み込まれているものである。以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
実施例
材料と方法
菌株、細胞系および培地
細菌の形質転換にEschericia coli DH5α を用いた。細菌をLB培地またはLB寒天プレートで37℃で生育した。プラスミドの選択と維持のために、次の濃度で抗生物質を用いた:アンピシリン 100〜150μg/ml、カナマイシン 10〜25μg/mlおよびクロラムフェニコール 10μg/ml。酵母の形質転換には、Saccharomyces cerevisiae FY1679株(MATa/MATα ura3-52/ura 3-52 his3Δ200/HIS3 leu2Δ1/LEU2 trp1Δ63/TRP1 GAL2/GAL2; Winston et al., 1995)およびその半数体の誘導体(haploid derivative)であるFY-3(MATa HIS LEU TRP ura3-52)を用いた。酵母は、YPD培地(1% 酵母抽出物、2% ペプトンおよび2% グルコース)または最小培地(0.67% 酵母ニトロゲンベースおよび2% グルコース)で生育した。形質転換体(transformants)の選択のため、酵母細胞を200μg/mlのG418(ジェネティシン(geneticin)、Sigma製)を含有するYPDプレート上で生育した。
マウスAB2.2−プライム胚幹(ES)細胞(AB2.2-Prime embryonic stem (ES) cells)(Lexicon Genetics, Inc.製)を増殖させるのに必要な手順は、Sands and Hasty (1997)に記載されている。端的に言うと、未分化のAB2.2−プライムES細胞を、15%ウシ胎児血清(Hyclone製)、2mM L−グルタミン(Gibco製)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Gibco製)、100μM β−メルカプトエタノールおよび非必須アミノ酸(Gibco製)、50U/ml ペニシリン、50μg/ml ストレプトマイシン(Gibco製)および1,000U/ml LIF(Chemicon製)を添加したDMEM(Gibco製)からなるES培地中の0.1% ゼラチン(Sigma製)被覆組織培養プレートで生育した。
HeLa S3細胞(ATCC # CCL-2.2)を10%ウシ胎児血清(Gibco Invitrogen製)、2mM L−グルタミン(Gibco Invitrogen製)、50U/ml ペニシリン(Gibco Invitrogen製)および50μg/ml ストレプトマイシン(Gibco Invitrogen製)を添加したMEMからなる細胞培地で生育した。
タンパク質と試薬
MuAトランスポザーゼ(MuA)、プロテイナーゼK、仔牛腸由来アルカリホスファターゼ(calf intestinal alkaline phosphatase)(CIP)およびCamR エントランスポゾン(Entranceposon)(TGS 鋳型生成システム(Template Generation System))はフィンランド国、エスポー、Finnzymesより入手した。制限酵素とプラスミドpUC19はNew England Biolabsより入手した。クレノウ酵素はPromegaより入手した。酵素は供給業者の推奨するものを用いた。ウシ血清アルブミンはSigmaより入手した。[α-32P]dCTP(1,000〜3,000 Ci/mmol)はAmersham Biosciencesより入手した。
KanMX4−Muトランスポゾンの構築
KanMX4 セレクターモジュール(kanMX4 selector module)(1.4kb)をpFA6-kanMX4(Wach et al., 1994)から、EcoRI + BglIIでの二重消化によって切断し、pUC ミニori領域(pUC miniorigin)とMu末端を含む0.75kbのベクターにライゲートし、kanMX4−MuプラスミドであるpHTH1を作成した。プラスミドDNAをPlasmid Maxi Kit(QIAGEN製)を用いて単離した。KanMX4 モジュール中に変異がないことを確認するために、ドナーDNAとしてCamR エントランスポゾン、そしてプライマー Muc1とMuc2を有する標的DNAとして、プラスミドpHTH1を用いてin vitroでの転位反応を行った後、挿入物の配列決定をした。
酵母構築物(yeast constructs)の配列決定のためのプライマーは、Muc1:5’GCTCTCCCCGTGGAGGTAAT-3’(配列番号1)およびMuc2:5’TTCCGTCACAGGTATTTATTCGGT-3’(配列番号2)である。
本発明者らはまた、アウトクローニング(outcloning)を容易にするために、両Mu末端の間に細菌のレプリコンを挟んでトランスポゾンを構築した。SphIを有するプラスミド pACYC184(Rose, 1988)からp15A レプリコンを切り出し、クレノウ酵素で平滑化し、EcoRI切断末端がふさがっているpHTH1にライゲートし、kanMX4−P15A−Muプラスミド、即ちpHTH4を作製した。
Mu/LoxP-Kan/Neo トランスポゾンの構築
細菌プロモーター、SV40 ori領域(origin of replication)、SV40初期プロモーター、カナマイシン/ネオマイシン耐性遺伝子および単純ヘルペスウイルス チミジンキナーゼ ポリアデニル化シグナル配列(Herpes simplex virus thymidine kinase polyadenylation signals)を含むネオマイシン耐性カセット(neomycin-resistance cassette)を、pIRES2-EGFPプラスミド(Clontech製)からPCRで作製した。LoxP部位とMu末端配列とを標準的なPCRに基づく手法で導入した後、構築物をBglII断片としてpUC19由来のベクターバックボーンにクローニングした。得られた構築物(pALH28)をDNA配列決定で確認した。
トランスポソソームの構築および濃縮
上記で構築したトランスポゾン(kanMX4−Mu(1.5kb)、kanMX4−p15A−Mu(2.3kb)およびMu/LoxP-Kan/Neo(2.1kb))を、BglIIでの消化により、それぞれのキャリアーであるプラスミド(pHTH1、pHTH4およびpALH28)から単離する。単離されたDNA断片を、公知の方法(Haapa et al., 1999a)でクロマトグラフィーによって精製した。
標準in vitro トランスポソソーム構築反応液(20μlまたは80μl)は、55nM トランスポゾンDNA断片、245nM MuA、150mM Tris−HCl(pH6.0)、50%(v/v) グリセロール、0.025%(w/v) Triton X−100、150mM NaCl、0.1mM EDTAを含んでいた。該反応液を30℃で2時間反応させた。反応を数回行い得られた反応混合物から、Centricon concentrator(Amicon)を用いて、製造者の説明書に従って複合体を濃縮、脱塩し、さらに水で1回洗浄した。酵母の形質転換のためには、転位複合体の最終濃度を約10倍とし、マウス細胞のトランスフェクションのためには、転位複合体の最終濃度を約20倍とする。
エレクトロコンピテントな細菌細胞と酵母細胞
標準的なクローニング用のエレクトロコンピテント細菌細胞を公知の方法(Lamberg et al., 2002)で調製して用いた。エレクトロコンピテントな S. cerevisiae細胞を以下のように生育した。一晩培養した定常期の培養物(overnight stationary phase culture)を新鮮なYPD(1% 酵母抽出物、2% ペプトンおよび2% グルコース)で1:10,000に希釈し、吸光度A600が0.7〜1.2になるまで生育した。細胞ペレットを遠心分離(5,000rpm)で回収し、1/4体積(1/4 volume)の0.1M リチウムアセテート、10mM ジチオスレイトール、10mM Tris−HCl(pH7.5)および1mM EDTA (LiAc/DTT/TE)に懸濁し、室温で1時間インキュベートした。再度ペレット化した細胞を氷水で洗浄し、遠心分離で再度回収した。続いて、再度回収したペレットを、最初の体積の1/10の体積(1/10 of the original volume)の氷冷した1M ソルビトールに再懸濁した。遠心分離の後、ペレットを氷冷した1M ソルビトールに懸濁し、最初の培養物濃度の〜200倍の濃度にした。細胞懸濁液を100μlずつエレクトロポレーションに用いた。受容能の状態(competence status)を判定するため、トランスポソソームまたはプラスミドDNAを細胞懸濁液に添加した混合物を氷上で5分間インキュベートした。その後該混合物を0.2cmのキュベットに移し、Bio-Rad Genepulser II を用いて、1.5kV(倍数体のFY1679)または2.0kV(半数体のFY-3)、25μF、200オームでパルスをかけてエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションを行った後、1mlのYPDを添加し、培養物を30℃で0〜4時間インキュベートした。続いて、細胞を200μg/mlのG418を含有するYPDプレートでプレート培養した。酵母株の受容能は、対照プラスミドであるpYC2/CT(URA3, CEN6/ARSH4, ampR, pUC ori、Invitrogen製)のエレクトロポレーションと最小プレート培地上でのプレート培養と比較して評価した。
マウスES細胞のトランスフェクションおよびコロニーの単離
マウスAB2.2−プライム胚幹(ES)細胞のエレクトロポレーションの手順は、Sands and Hasty (1997)に記載されている。端的に言うと、AB2.2−プライムES細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に11×106細胞/mlの濃度で回収した。2.2〜2.3μgのトランスポゾン複合体または線状化したDNA(linearized DNA)を0.4cmのエレクトロポレーション用キュベットに添加した。1回のエレクトロポレーション毎に、0.9mlのES細胞懸濁液(約10×106細胞)をトランスポソソームまたは線状DNAと混合した。Bio-Rad製Gene PulserとCapacitance Extenderとを用いて、250V、500μFでエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションの後、細胞を室温で10分間放置し、ゼラチン被覆プレートでプレート培養した。エレクトロポレートされたES細胞を、上記の条件で24〜48時間培養した。その後、トランスポゾン挿入物を選択するため、最終濃度150μg/mlとなるようにG418(Gibco製)を添加した。10日後、トランスフェクトされたES細胞のコロニーを選択してピックアップし、個々のコロニーを、96ウェルプレートまたは24ウェルプレートの別々のウェル中で、上記の条件を用いて培養した。
HeLa細胞のトランスフェクションおよびコロニーの単離
HeLa細胞を、基本的にATCCの説明書に従ってエレクトロポレートした。端的に言うと、HeLa細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に1.8×106細胞/mlの濃度で回収した。2〜2.3μgのトランスポゾン複合体または線状化したトランスポゾンDNAを0.4cmのエレクトロポレーション用キュベットに添加した。1回のエレクトロポレーション毎に、0.9mlのHeLa細胞懸濁液(約1.6×106細胞)をトランスポソソームまたは線状DNAと混合して用いた。Bio-Rad製Gene PulserとCapacitance Extenderとを用いて、250V、500μFでエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーションの後、細胞を室温で10分間放置した後プレート培養した。エレクトロポレートされたHeLa細胞を、上記の条件で60時間培養した。その後、トランスポゾン挿入物を選択するため、最終濃度400μg/mlとなるようにG418(Gibco Invitrogen製)を添加した。10〜11日後、トランスフェクトされたHeLa細胞のコロニーを選択してピックアップし、個々のコロニーを、まず96ウェルプレートの別々のウェル中で、次に24ウェルプレートまたは6ウェルプレート、そして10cmプレートに移し、上記の条件を用いて培養した。
ゲノムDNAの単離
酵母 ジェネティシン耐性酵母の各クローンのゲノムDNAを、QIAGEN製ゲノムDNA単離キット(Genomic DNA Isolation kit)を用いて、あるいはSherman et al., 1981に従って単離した。
マウスES細胞 ゲノムDNAを、Miller et al.(1988)によって開発された方法に実質的に従って、ES細胞から単離した。ES細胞を、24ウェルプレートの個々のウェル中の培養物から回収し、500μlのプロテイナーゼK消化用緩衝液(proteinase K digestion buffer)(10mM Tris−HCl(pH8.0)、400mM NaCl、10mM EDTA、0.5% SDSおよび200μg/ml プロテイナーゼK)に懸濁した。プロテイナーゼKによる処理を、55℃で8〜16時間行った。プロテイナーゼKによる処理に続き、150μlの6M NaClを添加し、マイクロ遠心機(microcentrifuge)(30分、13K)で遠心分離した。上清を回収し、エタノールで沈殿させてDNAペレットを得て、70% エタノールで洗浄し、風乾した。得られたDNAをTE(10mM TrisHCl(pH8.0)および1mM EDTA)緩衝液に溶解した。
HeLa細胞 ゲノムDNAを、Miller et al.(1988)によって開発された方法に実質的に従って、HeLa細胞から単離した。HeLa細胞を、3枚の10cmプレートから回収し、15mlのプロテイナーゼK消化用緩衝液(proteinase K digestion buffer)(10mM Tris−HCl(pH8.0)、400mM NaCl、10mM EDTA、0.5% SDSおよび200〜400μg/ml プロテイナーゼK)に懸濁した。プロテイナーゼKによる処理を、55℃で16〜48時間、あるいは全ての細胞が見えなくなるまで行う。RNアーゼを22〜50μg/ml添加し、37℃で8〜24時間インキュベートした。RNアーゼによる処理に続き、4.5mlの6M NaClを添加し、遠心分離(SS−34、11.6〜14K、20〜30分、4℃)を行った。上清を回収し、エタノールで沈殿させてDNAペレットを得て、70%エタノールで洗浄し、風乾した。得られたDNAをTE(10mM TrisHCl(pH8.0)および1mM EDTA)緩衝液に溶解した。
サザンブロット
酵母 DNAを適切な酵素で消化した。得られたDNA断片を、0.8%アガロースゲルで電気泳動し、ナイロンフィルター(Hybond N+ membrane)(Amersham製)にブロットした。[α-32P]dCTP−標識(ランダムプライムド(Random Primed)、Roche製)kanMX4(BglII-EcoRI断片)をプローブとして用いて、サザンハイブダイゼーションを行った。
マウスES細胞 DNAのサザンブロット ハイブリダイゼーションを標準的な方法(Sambrook, et al., 1989)で行った。10〜15μgの野生型およびトランスフェクトされたAB2.2−プライムES細胞DNAを種々の制限酵素で消化し、0.8%アガロースゲルで分離した。DNAをナイロンフィルター(Hybond N+、Amersham製)に転写し、UV(Stratalinker、Statagene製)で固定した。挿入されたDNAを[α-32P]dCTP−標識(RediprimeII、Amersham製)DNAプローブ(Mu/LoxP-Kan/Neo BamHI断片)で視覚化した。1.5×SSPE、10% PEG 6000、7% SDS、100μg/ml 変性ニシン精子DNAを含む液中で、ハイブリダイゼーションを65℃で16時間行った。ハイブリダイゼーションの後、フィルターを65℃で、2×SSCおよび0.5% SDS中で5分間、2回洗浄し、15分間、1回洗浄した。そして、0.1×SSCおよび0.1% SDS中で、65℃で10〜15分間、1回または2回洗浄した。フィルターをフジ製ホスホイメージャー用スクリーン(Fuji phosphoimager screen)に8〜16時間曝し、フジBASホスホイメージャー(FujiBAS phosphoimager)で処理した。
HeLa細胞 サザンブロット ハイブリダイゼーションを標準的な方法(Sambrook, et al., 1989)で行った。10μgの野生型およびトランスフェクトされたHeLa細胞DNAをNheI + SpeIで消化し、0.8%アガロースゲルで分離した。DNAをナイロンフィルター(Hybond N+、Amersham製)に転写し、UV(Stratalinker、Statagene製)で固定した。挿入されたトランスポゾンDNAを[α-32P]dCTP−標識(RediprimeII、Amersham製)DNAプローブ(Mu/LoxP-Kan/Neo トランスポゾン)で視覚化した。1.5×SSPE、10% PEG 6000、7% SDS、100μg/ml 変性ニシン精子DNAを含む液中で、ハイブリダイゼーションを65℃で16時間行った。ハイブリダイゼーションの後、フィルターを、2×SSCおよび0.5% SDS中で、65℃で20〜40分間、3回洗浄し、0.1×SSCおよび0.1% SDS中で、65℃で20〜40分間、3回洗浄した。フィルターをフジ製ホスホイメージャー用スクリーンに8〜16時間曝し、フジBASホスホイメージャーで処理した。
標的部位の重複(target site duplication)の判定
クローニング 酵母ゲノムDNAをBamHI + BglII、SalI+ XhoIまたはPvuIIで消化し、染色体DNA隣接領域(chromosomal DNA flanks)に挿入されたトランスポゾンを有する断片を作製する。次いでこれらの断片をBamHI、SalIまたはSmaIでそれぞれ開裂させたpUC19にクローニングして、カナマイシン耐性およびアンピシリン耐性についての選択性を与えた。別な方法としては、kanMX4-p15AでトランスフェクトしたクローンをBamHI + BglIIで開裂させ、ライゲート、エレクトロポレートし、トランスポゾンを有する断片によって生じる耐性により選択する。トランスポゾン境界領域のDNA配列(DNA sequences of transposon borders)を、トランスポゾン特異的プライマーであるSeq AおよびSeq MXを用いて、これらのプラスミドから判定した。SGD(Saccharomyces Genome Database)サーバー(http://genome-www.stanford.edu/Saccharomyces/)またはSDSCバイオロジーワークベンチ(SDSC Biology WorkBench)サーバー(http://workbench.sdsc.edu/)でのBLASTサーチを用いて、遺伝子位置(Genomic locations)を同定した。
クローニングされた酵母挿入物の末端の配列を決定するためのプライマーは、Seq A: 5’ATCAGCGGCCGCGATCC-3’(配列番号:3)およびSeq MX 4: 5'’(配列番号:4)である。
PCR増幅 2μgの酵母ゲノムDNAをBamHI + BglIIまたはNheI + SpeIで消化した。2μM アダプタープライマー1(WAP-1)を、相補的な2μM アダプタープライマー2(WAP-2*)、3(WAP-3*)または4(WAP-4*)と共にアニーリングすることによって部分的に二本鎖構造を有する特異的アダプターを作製した。WAP-2*、WAP-3*およびWAP-4*プライマーの3’OH基を第一級アミン基でブロッキングし、5’末端をリン酸化する。BamHI + BglIIによって生じた制限断片(200ng)を、プライマーであるWAP-1とWAP-2*とをアニーリングすることによって作製した22ngのアダプターにライゲートし、一方、NheI + SpeIによって生じた制限断片をWAP-1とWAP-3*とをアニーリングすることによって作製した22ngのアダプターにライゲートした。ライゲーション反応物の1/5を鋳型として用いて20μlでPCR増幅を行い、プライマーであるWalker-1およびTEFterm-1またはWalker-1およびTEFprom-1を有する、アダプターとトランスポゾンとに挟まれたDNA断片を増幅した。PCRの条件は、94℃、1分間、55℃、1分間、72℃、4分を30サイクル行なった。2μlの100倍希釈した一次PCR産物(primary PCR products)を鋳型として用いて、その際、BamHI + BglII断片から得たPCR産物に対してはWalker-2およびTEFterm-2あるいはWalker-2およびTEFprom-2をプライマーとして用い、そしてNheI + SpeI断片から得たPCR産物に対してはWalker-3およびTEFterm-2あるいはWalker-3およびTEFprom-2をプライマーとして用いて、ネスティッドPCR(Nested PCR)を50μlで行った。PCRの条件は上記と同様である。配列決定プライマーであるMu-2を用いて、増幅したネスティッドPCR産物の配列決定をした。
1μgのマウスゲノムDNAをBglII + BclI または NheI + SpeIで消化した。部分的に二本鎖構造を有する特異的アダプターを酵母の場合と同様に作製した。BclI + BglIIによって生じた制限断片(400ng)を、プライマーであるWAP-1とWAP-2*とをアニーリングすることによって作製した44ngのアダプターにライゲートし、一方、NheI + SpeIによって生じた制限断片(200ng)を、プライマーであるWAP-1およびWAP-3*をアニーリングすることによって作製した22ngのアダプターにライゲートした。それぞれ、ライゲーション反応物の1/4または1/5を鋳型として用いて20μlでPCR増幅を行い、プライマーであるWalker-1およびHSP430またはWalker-1およびHSP431を有する、アダプターとトランスポゾンに挟まれたDNA断片を増幅した。PCRの条件は、94℃、1分間、55℃、1分間、72℃、4分を30サイクル行なった。2μlの80倍または100倍希釈した一次PCR産物を鋳型として用い、その際、BclI + BglII断片から得たPCR産物に対してはWalker-2およびHSP429あるいはWalker-2およびHSP432をプライマーとして用い、そしてNheI + SpeI断片から得たPCR産物に対してはWalker-3およびHSP429あるいはWalker-3およびHSP432をプライマーとして用いて、ネスティッドPCRを50μlで行った。PCRの条件は上記と同様である。配列決定プライマーであるMu-2を用いて、増幅したネスティッドPCR産物の配列決定をした。
PCRに基づく検出のためのプライマー:
WAP-1 CTAATACCACTCACATAGGGCGGCCGCCCGGGC (配列番号:5)
WAP-2* GATCGCCCGGGCG-NH2 (配列番号:6)
WAP-3* CTAGGCCCGGGCG-NH2 (配列番号:7)
WAP-4* AATTGCCCGGGCG-NH2 (配列番号:8)
Walker-1 CTAATACCACTCACATAGGG (配列番号:9)
Walker-2 GGGCGGCCGCCCGGGCGATC (配列番号:10)
Walker-3 GGGCGGCCGCCCGGGCCTAG (配列番号:11)
Walker-4 GGGCGGCCGCCCGGGCAATT (配列番号:12)
TEFterm-1 CTGTCGATTCGATACTAACG (配列番号:13)
TEFterm-2 CTCTAGATGATCAGCGGCCGCGATCCG (配列番号:14)
TEFprom-1 TGTCAAGGAGGGTATTCTGG (配列番号:15)
TEFprom-2 GGTGACCCGGCGGGGACGAGGC (配列番号:16)
Mu-2 GATCCGTTTTCGCATTTATCGTG (配列番号:17)
HSP429 GGCCGCATCGATAAGCTTGGGCTGCAGG (配列番号:18)
HSP430 ACATTGGGTGGAAACATTCC (配列番号:19)
HSP431 CCAAGTTCGGGTGAAGGC (配列番号:20)
HSP432 CCCCGGGCGAGTCTAGGGCCGC (配列番号:21)
HeLa細胞 HeLa細胞ゲノムDNAをBamHI + BclIで消化し、染色体DNA隣接領域(chromosomal DNA flanks)に挿入されたトランスポゾンを有する断片を作製する。次いでこれらの断片を、BamHIで開裂させたpUC19にクローニングして、カナマイシン耐性およびアンピシリン耐性についての選択性を与えた。トランスポゾン境界領域のDNA配列を、トランスポゾン特異的プライマーであるHSP430およびHSP431を用いて、これらのプラスミドから判定した。ヒトゲノムアセンブリであるNCBI 34に基づく、アンサンブル ヒトゲノム ブラウザ リリース 20.34c.1(Ensembl Human Genome Browser Release 20.34c.1)のSSAHAサーチを用いて、遺伝子位置を同定した。
結果
トランスポゾン構築物(Transposon construction)とその細胞への導入
Mu転位システムが真核生物にも機能するかどうかを調べるため、本発明者らは、Tn903由来kanR遺伝子およびAshbya gossypiiのTEF遺伝子の翻訳調節配列をMu末端の間に含有するkanMX4−Muトランスポゾンを構築し(図1)、その際、細菌p15AレプリコンをMu末端の間にさらに有するものと有さないものを構築した(図2A)。本発明者らは、MuAタンパク質をkanMX4−Muトランスポゾンと共にインキュベートすることによるMuトランスポソソームの構築を研究し、アガロースゲル電気泳動によって安定なタンパク質−DNA複合体を検出した(図3)。kanMX4−MuトランスポゾンとkanMX−p15A−Muトランスポゾンを用いた反応では、いくつかのタンパク質−DNA複合体のバンドが得られたが、該バンドは、SDSの存在下でサンプルをロードした場合には消失した。これは、該複合体においては、非共有結合性のタンパク質−DNA相互作用のみが関与していることを示している。構築反応液の一部を、MuAトランスポザーゼと共に、またはMuAトランスポザーゼなしで、Saccharomyces cerevisiae 細胞中にエレクトロポレートし、該酵母をジェネティシン耐性について評価した。酵母株の受容能を、対照プラスミドであるpYC2/CTのエレクトロポレーションと比較して評価した。トランスポソソームの酵母へのエレクトロポレーションの効率は、プラスミドの場合の効率より、約3桁低い(表1)。この結果は、細菌に関する過去の結果(Lamberg et al., 2002)と一致する。検出可能なタンパク質−DNA複合体を含むサンプルのみがジェネティシン耐性コロニーを形成した。
マウスの実験用として、本発明者らは、細菌プロモーターおよび真核細胞プロモーター、カナマイシン/ネオマイシン耐性遺伝子および単純ヘルペスウイルス チミジンキナーゼ ポリアデニル化シグナル配列を含むMu/loxP-Kan/Neoトランスポゾンを構築した(図2B)。トランスポソソームを用いたマウスES細胞へのトランスフェクションにより、DNA1μgあたり1,720個のG418耐性コロニーを得、線状の対照DNA(linear control)では、DNA1μgあたり330個のコロニーを得た。したがって、トランスポソソームを用いたトランスフェクションによって、DNA 1μgあたり、5倍を越える耐性コロニーが得られた。DNAを導入しなかった対照細胞は耐性コロニーを形成しなかった。
HeLa細胞に関しては、トランスポソソームを用いたトランスフェクションによって、DNA1μgあたり約103個の耐性コロニーを得、線状の対照DNAでは、DNA1μgあたり約101個の耐性コロニーを得た。したがって、トランスフェクタントの生成において、トランスポソソームは極めて効率的であった。トランスポゾンを導入しなかった対照細胞は耐性コロニーを形成しなかった。
トランスポゾンのゲノムへの組込み
サザンブロット分析法を用いて、トランスポゾンDNAがジェネティシン耐性コロニーのゲノムDNA中に挿入されているかどうかを調べることができる。真正なMu転位の場合、トランスポゾンを切断しない酵素によるゲノムDNAの消化によって、トランスポゾンプローブとハイブリダイズする1個の断片が得られ、また、トランスポゾンを1回切断する酵素による消化によって2個の断片が得られる。17個のkanMX4−Muトランスポゾン組込み酵母クローンからゲノムDNAを単離し、トランスポゾン配列を切断しないBamHI + BglIIで消化、あるいはトランスポゾン配列を1回切断するHindIIIで消化し、kanMX4断片をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションで分析した。15個の単離物(isolates)は、BamHI + BglIIで消化すると、明確だがゲル移動度(gel mobility)の異なる単一のバンドを示し(図4A)、HindIIIで消化すると2本のバンド(図4B)を示した。受容株であるFY1679由来の対照DNAはこの分析において検出可能なバンドを示さなかった。2個の単離物(G5およびG14)は、BamHI + BglIIで消化した後、いくつかのハイブリダイズする断片を生じ、これは、複数のトランスポゾンの組込みの可能性を示唆している。しかし、複数のトランスポゾンが組込みまれている場合、BamHI + BglIIでの消化後には検出される断片量の倍増が予想されるが、これらの2つの単離物をHindIIIで消化した後、断片の量は倍増せず、3個の断片が得られた。単離物G5およびG14のHindIII断片の大きさ(4.3、2.4および1.3kb)およびBamHI + BglII消化におけるバンドパターンは、トランスポゾンが酵母の2μプラスミドに組込まれたことを示す(これを確認するためには、下記の配列決定の結果を参照されたい)。半数体FY-3株の17個のG418−耐性単離物由来のゲノムDNAを、XhoI + SalI(トランスポゾンを切断しない)およびPstI(トランスポゾンを1回切断する)で消化した後、同様の方法で分析した。13個の単離物は、XhoI + SalIで消化した後1つのバンドを示し、PstIで消化した後は2つのバンドを示し、これは単一の組込みを示す。4個の単離物は、F1679株の単離物G5およびG14と類似のバンドパターンを示し、これは2μプラスミドへの組込みを示す(結果は示さない)。これらのデータは試験したクローンの大部分において、トランスポゾンDNAの単一コピーが酵母染色体中に組込まれたことを示す。その他のクローンにおいては、エピソーム内に単一の組込みが検出された。
7個のマウスES細胞クローンをサザンブロット法により分析した。該クローンの染色体DNAを、トランスポゾンのほぼ全体をゲノムから切り離すBamHIで消化した。試験した全てのクローンは、対照として用いたBamHI消化pALH28と同じ位置にバンドを示した。バンドの強度は、試験した全てのクローンおよびゲノムサンプルと同じ分子量の対照DNAについて類似していた。これは、各ゲノム中にトランスポゾンが1コピーのみ組込まれたことを示す。
HeLa細胞について、サザンブロット分析法を用いて、G418耐性コロニーのゲノム中にトランスポゾンが挿入されたことを確認した。トランスポゾンを切断しない制限酵素を用いてゲノムDNAを消化すると、トランスポゾンプローブとハイブリダイズする1つの断片が生じる。7個のHeLa細胞トランスフェクタントクローンをサザンブロット法で分析した結果を、図6に示す。該クローンの染色体DNAをトランスポゾンを切断しないNheI + SpeIで消化した。各クローンから単一のバンドが検出され、これはそれぞれのゲノムにトランスポゾンDNAの単一コピーが組込まれたことを示す。
染色体における挿入の位置
酵母 Muトランスポゾンは標的DNAにほぼランダムに組込まれる(Haapa-Paananen et al., 2002)。トランスポゾンの挿入位置と分布を調べるために、本発明者らは100個以上の酵母形質転換体(yeast transformants)からトランスポゾン−ゲノムDNA境界領域(transposon-genomic DNA borders)をクローニングし、トランスポゾン特異的プライマー(Seq A + Seq MX4)を用いてトランスポゾンの両側の挿入部位の配列決定を行った。挿入部位の正確なマッピングは、BLASTを用いてSGDデータベースと比較することにより可能であった。本発明者らは、酵母の全ゲノム配列決定(Winston et al., 1995)に用いられたFY1679株を用いて、正しいマッピングを確実なものとした。酵母の16本の染色体上の140個の組込みの全分布を図5Aに示す。全ての染色体は少なくとも1回ヒットした。ORFおよび遺伝子間領域の両方にトランスポゾンの挿入が見られた(表2)。ゲノムへの組込みのリストを表3に示す。半数体ゲノムにおいては、必須遺伝子上の組込みは、細胞が生存不能になってしまうため当然行われなかった。XII染色体上には、まさにトランスポゾン組込みの「ホットスポット」があるように見えるが、これはアーチファクトである。なぜなら、この「ホットスポット」は、リボソームRNAをコードする、およそ9kbの領域にあるからである(図5B)。この座はXII染色体中で、一列に並んで(tandemly)100〜200回繰り返される。この領域においては、組込みはランダムに分布している。図5Aの染色体は、SGDに従って描かれたが、SGDは1〜2MbのDNAからなる酵母ゲノムにおいて実際には100〜200コピー存在するこの繰り返し領域が2コピーしか示されていない(酵母ゲノムの配列決定が系統的に行われた時に、rDNA反復配列は2個しか配列決定されなかった)。tRNA遺伝子から1kb未満の距離で確認された挿入は9個だけであり、これは、Mu−トランスポゾンの組込みがTy1〜Ty4エレメントの組込みとは異なることを示す。染色体の末端に最も近い組込みは6.3kbであり、テロメアを好むTy5エレメントとの違いを示した。挿入の平均間隔は135kbであり、ライブラリーとして全ゲノムをカバーするとはいいがたいものであった。しかし、その分布は、挿入がランダムであることを十分示していた。
マウス 配列決定されたトランスポゾン−ゲノムDNA境界領域を、アンサンブル マウスゲノムサーバー(Ensembl Mouse Genome Server)を用いて、マウスゲノムアセンブリ v 3(Mouse Genome Assembly v 3)と比較した。クローン RGC57は、第3染色体に組込まれたトランスポゾンを有し、該トランスポゾンはENSMUSESTG00000010433およびENSMUSESTG00000010426の両者の最後のイントロンに位置する59433906〜59433910の部分が重複していた。配列決定により、組込まれたトランスポゾンの両側にこの5bpの配列の存在(標的部位の重複)が示された。
HeLa細胞 本発明者らは、3個のトランスフェクタントからトランスポゾン−ゲノムDNA境界領域をクローニングし、トランスポゾン特異的プライマー(HSP430およびHSP431)を用いて、トランスポゾンの両側の挿入部位の配列決定を行った。これらの組込みについて表5に示す。これら3個のトランスフェクタントは全て重複した5bpの標的部位をトランスポゾンの両側に有する、完全なトランスポゾン末端を有していた。
酵母2μプラスミドへのトランスポゾンの組込み
大方のS. cerevisiae株は内因性の2μプラスミドを有する。この酵母2μプラスミドは、S. cerevisiae中に、60〜100コピー/細胞で染色体外に存在する、6,318bpの環状種である。該プラスミドの分子は、標準的なヌクレオソームフェージング(standard nucleosome phasing)によって、ミニ染色体として核の中に存在する(Livingston and Hahne, 1979;Nelson and Fangman, 1979;およびTaketo et al., 1980)。
倍数体のFY1679株については、131個のクローンのうち、23個(17.6%)のクローンにおいて、トランスポゾンが2μプラスミド中に組込まれており、108個(82.4%)のクローンにおいて、トランスポゾンが染色体中に組込まれていた。半数体のFY-3株については、49個のクローンのうち、4個(8.2%)において、トランスポゾンが2μプラスミド中に組込まれており、45個(91.8%)においてトランスポゾンが染色体中に組込まれていた。
トランスポゾン標的部位
真正なMu転位は、組込まれたトランスポゾンを挟む重複した5bpの標的部位を生成する(Haapa et al., 1999b)。FY1679株では、121個のクローン(122個中;99.2%)において、また、半数体のFY-3株では、42個のクローン(46個中;91.3%)において、トランスポゾンは重複した標的部位で挟まれており、この結果により組込みの大部分がDNA転位化学反応によるものであることが確認された。5bpの重複したコンセンサス配列(5’-N-Y-G/C-R-N-3’)が、in vivo および in vitroの転位反応の両方で観察されたが、最も好ましい五量体は5’-C-Y-G/C-R-G-3’である(Mizuuchi and Mizuuchi, 1993; Haapa-Paananen et at., 2002 および Butterfield et al., 2002)。この研究において、重複した五量体におけるヌクレオチドの分布は、過去の結果と一致するものであった(表4)。
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四量体であるMuAトランスポザーゼおよびミニMuトランスポゾン(mini-Mu transposon)からなるin vitroで構築されたMu転位複合体による、ミニMuトランスポゾン(Mini-Mu transposon)の、酵母染色体またはプラスミドDNAへのin vivoでの組込み。 本研究において用いる、適切な制限部位を有するMuトランスポゾンの概略図。図2A:2つの酵母トランスポゾンは、50bpのMu右末端配列の間に組込まれたTEF プロモーター(PTEF)、kan マーカー遺伝子およびTEF ターミネーター(TTEF)を含む。kanMX4−p15A−Muトランスポゾンは、さらにp15Aレプリコンを含む。短い矢印は、アウトクローンされた隣接配列(out-cloned flanking sequences)の配列決定に用いるプライマーの結合部位を表す。末端のBglII部位を用いてトランスポゾンをベクタープラスミドバックボーンから切り出す。図2B:マウスES細胞のトランスフェクションに用いるMu/LoxP-Kan/Neoトランスポゾン。該トランスポゾンは、2つのMu右末端配列と2つのLoxP配列に挟まれたkan/neoマーカー遺伝子を含む。kan/neoマーカーは、「材料と方法」の項目で説明したように原核生物と真核生物のプロモーターとターミネーターを含む。 アガロースゲル電気泳動で分析した、KanMX4−Mu(1.5kb)およびKanMX4−p15A−Mu(2.3kb)を基質(substrate)として有するMu転位複合体の形成。基質DNAをMuAと共にまたはMuAなしでインキュベートし、その反応産物をSDSの存在下または非存在下で分析した。サンプルを87mg/mlのへパリンおよび87mg/mlのBSAを含有する2%アガロースゲル上で電気泳動した。 酵母ゲノム中への挿入物のサザンブロット分析。転位複合体を酵母細胞へエレクトロポレートして得た17個のジェネティシン耐性 F1679 クローンのゲノムDNAをBamHI + Bgl II(図4A)またはHindIII(図4B)で消化し、kanMX4 DNAをプローブとして用いて検出した。レーン1〜17:トランスポゾン挿入変異体(transposon insertion mutants)、C:負の対照として、原株であるS. cerevisiae FY1679受容株のゲノムDNA、P:正の対照として、kanMX4−Muトランスポゾンを含む線状化したプラスミドDNA、M:分子量マーカー。プラスミド断片の大きさを左側に示す。 酵母染色体上のkanMX4−Mu組込み部位の分布(図5A)および第12染色体上のrDNA繰返し領域(図5B)。図5A中の楕円は各染色体の動原体を示す。倍数体のFY1679株中の組込み部位をバーで示し、半数体のFY-3株中の組込み部位を塗りつぶした円の付いたバーで示す。酵母ゲノムDNAを示す線の上部には、kan遺伝子を含みワトソン鎖方向に挿入されたトランスポゾンが示されており、線の下部には、クリック鎖方向に挿入されたトランスポゾンが示されている。 トランスポゾン複合体を用いてトランスフェクトしたHeLaクローンのサザンブロット分析。レーン1: 次のバンドを有するマーカー(10kb、8kb、6kb、5kb、4kb、3kbおよび2.5kb。)。 レーン2: HeLaゲノムDNA。 レーン3: 精製したMu/LoxP-Kan/Neoトランスポゾン(約2.1kb)と混合したHeLaゲノムDNA。 以下のレーン4〜10はHeLAクローンである。レーン4: RGC13、レーン5: RGC14、レーン6: RGC15、レーン7: RGC16、レーン8: RGC23、レーン9: RGC24、レーン10: RGC26。
配列番号1〜21:
人工的な配列の説明: オリゴヌクレオチドプライマー

Claims (8)

  1. 下記の工程を包含する、単離された標的哺乳類細胞の核内染色体DNAに核酸セグメントを組み込む方法。
    In vitroで構築されたMu転位複合体であって、MuAトランスポザーゼ(i)および該MuAトランスポザーゼにより認識され結合された一対のMu末端配列と、該一対のMu末端配列の間に挟まれた挿入配列とからなるトランスポゾンセグメント(ii)を含むMu転位複合体を標的哺乳類細胞中にエレクトロポレーションにより送達して、該トランスポゾンセグメントを標的細胞の核内染色体DNAへ転位により組み込む工程。
  2. 該核酸セグメントを、標的細胞の核内染色体DNAのランダムな位置またはほぼランダムな位置に組み込むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 該標的細胞がヒト細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 該標的細胞がマウス細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 該挿入配列が、哺乳類細胞において選択可能なマーカーを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 該Mu転位複合体の標的細胞中への送達を、該Mu転位複合体の濃縮画分を用いて行なうことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 該標的細胞を、核内染色体DNAへの転位を促進する条件下でインキュベートする工程をさらに包含する請求項1に記載の方法。
  8. 下記の工程を包含する、標的哺乳類細胞のプールから挿入変異体ライブラリーを構築する方法。
    a)In vitroで構築されたMu転位複合体であって、MuAトランスポザーゼ(i)および該MuAトランスポザーゼにより認識され結合された一対のMu末端配列と、該一対のMu末端配列の間に挟まれた、選択可能なマーカーを含む挿入配列とからなるトランスポゾンセグメント(ii)を含むMu転位複合体を標的哺乳類細胞中にエレクトロポレーションにより送達して、該トランスポゾンセグメントを標的細胞の核内染色体DNAへ転位により組み込む工程。
    b)選択可能なマーカーを含有する細胞をスクリーニングする工程。
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