JP4807985B2 - 帯電ローラの製造方法 - Google Patents

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本発明は帯電ローラの製造方法(以下、単に「ローラ」および「製造方法」とも称する)に関し、詳しくは、複写機、プリンター等における静電潜像プロセスにおいて、感光体等を帯電させるに好適に用いられる帯電ローラの製造方法に関する。
従来、複写機、プリンター等の電子写真装置では、まず、感光体の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成する静電潜像プロセスにより静電潜像を得、次いで、トナーの付着によるトナー像の形成、紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法がとられている。
この場合、最初の感光体を帯電させる操作としては、従来、コロナ放電方式が一般に採用されていた。しかし、このコロナ放電方式は6〜10kVもの高電圧印加が必要とされるために、機械の安全保守の観点から好ましくなく、また、コロナ放電中にオゾン、NOx等の有害物質が発生するために、環境上の問題もあった。
このため、コロナ放電に比べて低い印加電圧で帯電を行うことができ、かつ、オゾン等の有害物質の発生を抑制することができる帯電方式への取り組みがなされており、新たな帯電方式として、電圧を印加した帯電用部材を感光体等の被帯電体に所定の圧力で接触させることにより被帯電体を帯電させる、接触方式による帯電方法が提案されている。
この接触帯電方式で使用される帯電部材としては、例えば、芯金(シャフト)の外周にゴムやウレタンフォーム等からなる導電性弾性層(基層)を形成し、さらに、表面の平滑性確保やトナーの付着防止のために、ウレタン、ナイロン等の樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液や水に溶解もしくは分散させた樹脂溶液をディッピング法やスプレー法などにより塗布してなる塗膜層を設けた多層構造の帯電ローラが知られている。また、基層と塗膜層との間の接着性の改良のために、これらの層の間に接着層を設ける技術もよく知られている。
一方、帯電ローラにおいて良好な帯電性能を得るためには抵抗値の調整が重要となることから、かかる多層構造の帯電ローラにおいて、所望の抵抗値を実現するための技術については、種々検討されてきている。例えば、特許文献1には、基層上に接着層を介して少なくとも二層以上の塗膜層を設けた帯電ローラにおいて、基層および接着層の抵抗値を夫々所定範囲としたことにより、良好な帯電性能を実現する技術が記載されている。また、特許文献2には、弾性体上に、抵抗調整層と表皮層とを具備する帯電部材における、抵抗調整層の改良に係る技術が記載されている。
特開2002−229305号公報(特許請求の範囲等) 特開2003−131474号公報(特許請求の範囲等)
従来一般に、帯電ローラの品質管理は、最終的な製品ローラにおける抵抗の調整により行われていた。しかしながら、上記のような多層構造を有するローラの場合、同じ製品ローラ抵抗が確保されている場合でも、実際のローラ品質に差が生じてしまい、バンディング(白黒画像ムラ)の発生やリーク画像の悪化等の不具合が発生する場合があり、問題となっていた。
そこで本発明の目的は、弾性層上に少なくとも2層の塗膜層を有する多層構造の帯電ロ
ーラを製造するにあたり、品質の安定した帯電ローラを得ることができる帯電ローラの製
造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、製品ローラの抵抗のみならず、製造途中におけるローラの中間品質をも管理することにより、最終的に得られる製品ローラにおいて安定した品質を確保することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の帯電ローラの製造方法は、被帯電体に当接させて、該被帯電体との間に電圧を印加することにより該被帯電体を帯電させる帯電ローラであって、弾性層上に、導電剤を含む下塗層および表層が順次設けられてなる帯電ローラの製造方法において、
前記下塗層中の導電剤の配合量を基材100重量部に対し10〜30重量部の範囲で、前記表層中の導電剤の配合量を基材100重量部に対し20〜30重量部の範囲で、それぞれ変更することにより、前記下塗層形成時の抵抗値Rおよび最終的なローラ抵抗値Rを、回転するローラに対しAC電圧Vpp=500V(f=380Hz)とDC電圧−200Vとを同時に印加した状態で、電流500〜1500μAの範囲において、該最終的なローラ抵抗値Rと下塗層形成時の抵抗値Rとの比R/Rが0.57<R/R<1.10の関係を満足するよう調整することを特徴とするものである。
本発明においては、前記下塗層の導電剤としてカーボン系導電剤またはイオン系導電剤
を用い、かつ、前記表層の導電剤としてカーボン系導電剤を用いることが好ましい。
本発明によれば、多層構造の帯電ローラを製造するにあたり、最終的なローラ抵抗値Rだけでなく、製造過程における中間抵抗として下塗層形成時の抵抗値R0についても上記のように調整することとしたことで、最終製品としての帯電ローラを安定した品質で得ることが可能となった。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、被帯電体に当接させて、被帯電体との間に電圧を印加することによりこれを帯電させる帯電ローラであって、弾性層上に、導電剤を含む下塗層および表層が順次設けられてなる帯電ローラの製造方法であり、下塗層形成時の抵抗値R0および最終的なローラ抵抗値R(以下、それぞれ「中間抵抗値R0」および「最終抵抗値R」と称する)を、下記のようにして調整する点に特徴を有する。
本発明においては、上記中間抵抗値R0および最終抵抗値Rを、回転するローラに対しAC電圧Vpp=500V(f=380Hz)とDC電圧−200Vとを同時に印加した状態で、電流500〜1500μAの範囲において調整することが必要であり、かつ、最終抵抗値Rと中間抵抗値R0との比R0/Rが0.57<R0/R<1.10の関係を満足するよう調整を行うことが必要である。中間抵抗値R0および最終抵抗値Rの調整を、かかる電圧・電流条件の下で、上記比R0/Rを満足するよう行うことにより、製品ローラの品質のばらつきを抑えて、画像不良の発生のない高品質の帯電ローラを安定的に得ることが可能となった。この理由は明確ではないが、最終的な製品ローラ抵抗のみを所定範囲内で調整しても、下塗層までのローラ抵抗にばらつきがあると、これが製品ローラ品質にも影響を及ぼし、所望の品質範囲を逸脱する場合があるものと考えられる。従って本発明においては、下塗層までのローラの中間抵抗についても、上記電流・電圧条件の下に最終抵抗との関係において管理することとしたことで、製品ローラの品質をより厳密に管理することが可能となり、結果として製品ローラの品質の安定化を図ることが可能となったものと考えられる。
本発明の製造方法においては、抵抗の調整に関して上記条件を満足するものであれば、それ以外の点については特に制限されるものではなく、常法に従い行うことができる。また、帯電ローラの材料についても特に制限されるものではないが、例えば、以下のようなものを用いることができる。
ローラの軸をなすシャフトとしては、特に制限されるものではなく、従来用いられている金属またはプラスチック製のシャフトを適宜用いることができ、また、帯電ローラの形態や帯電ローラが用いられる帯電装置の機構などによっては、省略することも可能である。
弾性層の基材としては、特に限定されず、ゴムあるいは樹脂、またはこれらの発泡体(フォーム)で形成することができ、具体的には、例えば、ポリウレタン、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等を基材ゴムとするゴム組成物が挙げられる。中でも特にポリウレタンが好ましく、より好ましくは発泡倍率が1.5〜50倍のポリウレタンフォームを用いる。なお、この場合のフォーム密度は、0.05〜0.9g/cm3程度が適当である。
弾性層の抵抗値を調整するために添加する導電剤としては、特に限定されず、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウム塩の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等のハロゲン化ベンジル塩等の第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤、各種ベタイン等の両性イオン界面活性剤、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等の非イオン性帯電防止剤等の帯電防止剤、LiCF3SO3、NaCl4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaCl等のLi+、Na+、K+等の周期律表第1族の金属塩、あるいはNH4 +塩等の電解質、また、Ca(ClO42等のCa2+、Ba2+等の周期律表第2族の金属塩、およびこれらの帯電防止剤が、少なくとも1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級ないし二級アミン基等のイソシアネートと反応する活性水素を有する基を持ったものが挙げられる。更には、それら等と1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールとその誘導体等の錯体あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のモノオールとの錯体等のイオン系導電剤、またはケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト等のカーボン系導電剤、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属および金属酸化物、ポリアニリンポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。
弾性層の抵抗値は、特に制限されるものではないが、通常、102〜1012Ω・cm、特には、104〜105Ω・cm程度とすることができる。このような抵抗値を得るための導電剤の配合量としては、2.5〜10重量%、特には、3.0〜5.0重量%程度である。
下塗層は、所望に応じ適切な樹脂を用いて形成することができ、かかる樹脂としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ウレタン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができるが、これらには制限されない。
本発明においては、上記所望の中間抵抗値R0を得るために、下塗層中に上記導電剤を適宜配合して抵抗を調整することが必要であるが、かかる導電剤としては、上記したもののうち、カーボン系導電剤またはイオン系導電剤を好適に用いることができる。その配合量としては、特に制限されるものではないが、基材樹脂100重量部に対し1〜40重量部、好適には10〜30重量部程度であり、これにより、芯金の外周に弾性層および下塗層を形成した状態での中間抵抗値R0を102〜1012Ω、特には104〜105Ω程度とすることができる。
また、表層は、トナー付着防止や表面平滑性確保等の目的に応じた材料構成とすることが好ましく、特に、帯電ローラの表面平滑性や感光体等との低密着性などの観点から、フッ素樹脂が好適に用いられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等が挙げられ、これらを溶液中で重合させたものや重合後の樹脂を有機溶剤に溶解させた溶剤系フッ素樹脂等が用いられる。
表層についても、上記所望の最終抵抗値Rを得るために、上記導電剤を適宜配合して抵抗を調整することが必要であるが、かかる導電剤としては、カーボン系導電剤を用いることが好適である。その配合量としては、特に制限されるものではないが、基材100重量部に対し10〜30重量部、好適には20〜30重量部程度であり、これにより、芯金の外周に弾性層、下塗層および表層を形成した状態での最終抵抗値Rを102〜1012Ω、特には104〜105Ω程度とすることができる。
また、下塗層および表層には、増粘剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の適宜添加剤を所望に応じて適量添加することができ、この場合添加剤は無機系、有機系のいずれであってもよい。
下塗層および表層の総厚みは、特に制限されるものではないが、弾性層の柔軟性を損なわないために薄層とすることが好ましく、具体的には、50〜450μm程度とする。
尚、下塗層および表層の形成方法としては、特に制限はないが、これら各層を形成する各成分を含む塗料を調製し、この塗料をディッピング法やスプレー法により順次塗布する方法を好ましく用いることができる。
なお、帯電ローラの表面に凹凸があると、この凹部内にトナーが詰まって画像不良の原因となることがあるため、部材表面はできるだけ平滑であることが好ましく、好適には、JIS10点平均粗さRzで6μm以下、特に3μm以下、更には2μm以下とする。
本発明により得られる帯電ローラは、上述したように、転写体等の被帯電体に当接した状態にて配設され、被帯電体と帯電ローラとの間に電圧を印加することにより被帯電体を帯電させるものである。この場合、帯電ローラと被帯電体との間に印加する電圧は、直流電圧であっても交流電圧であってもよく、特に制限されないが、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加して帯電を行うようにすることが好ましく、これにより被帯電体をより均一に帯電させることができる。また、帯電ローラと被帯電体との間の接触圧力は、50〜2000g、特には100〜1000gとすることが好ましく、これにより良好な帯電を確実に得ることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
弾性層上に1層の下塗層と表層とを備える帯電ローラを、夫々、下塗層および表層の体積抵抗値を変えて作製した。具体的には、良導電性のシャフトにポリウレタン発泡体を弾性層として被覆したものに、アクリル変性エマルジョン(AE322、JSR社製)に導電剤としてのカーボンブラックを分散させた塗料を下塗層として被覆し、さらに、フッ素樹脂(LF200、旭硝子(株)製)に導電剤としてのカーボンブラックを分散させたものを表層として塗布して、帯電ローラを得た。
各実施例および比較例の帯電ローラにつき、電流値を下記の表1に示すように夫々変えて測定した下塗層までの抵抗値(中間抵抗値)R0、最終的なローラ抵抗値(最終抵抗値)Rおよび比R0/Rを、同表中に示す。ここで、電流値の測定方法について、以下詳述する。電流値の測定には図1に示す測定装置を用い、各帯電ローラの芯金と表面全域に高電圧を印加して行った。具体的には、電極ローラ1上に、両軸端に所定の荷重をかけた帯電ローラ10を載置し、電極ローラ1を所定の回転数で回転させながら、AC電圧Vpp=500V(f=380Hz)とDC電圧−200Vとを同時に印加して、電圧印加後、電極ローラ3回転目以降において、検出されたDC電流値の最小値を測定した。試験環境は温度20〜25℃、湿度46〜60%であり、各帯電ローラは試験前に2時間以上試験環境に放置しておいた。また、電極ローラ1は外径φ30mm、回転数60rpmであり、帯電ローラ10に負荷した荷重は両軸端に各500gであった。なお、図中の符号2は電源を、符号3はパルス発信機を、夫々示す。得られた各帯電ローラを実機に装着して画像出しを行い、バンディングおよびリーク不良の発生の有無につき評価を行った。その結果を、下記の表中に併記する。
Figure 0004807985
*1)表層の基材樹脂100重量部に対するカーボンブラック添加部数を示す。
上記表1に示すように、中間抵抗値R0および最終抵抗値Rのそれぞれを、回転するローラに対しAC電圧Vpp=500V(f=380Hz)とDC電圧−200Vとを同時に印加した状態で、電流500〜1500μAの範囲において、これらの比R0/Rが0.57<R0/R<1.10の関係を満足するよう調整して作製した実施例の帯電ローラにおいては、バンディング不良やリーク不良の発生がなく、安定的に高品質が得られていることが確かめられた。
実施例で用いた電流測定装置を示す概略図である。
符号の説明
1 電極ローラ
2 電源
3 パルス発信機
10 帯電ローラ

Claims (2)

  1. 被帯電体に当接させて、該被帯電体との間に電圧を印加することにより該被帯電体を帯電させる帯電ローラであって、弾性層上に、導電剤を含む下塗層および表層が順次設けられてなる帯電ローラの製造方法において、
    前記下塗層中の導電剤の配合量を基材100重量部に対し10〜30重量部の範囲で、前記表層中の導電剤の配合量を基材100重量部に対し20〜30重量部の範囲で、それぞれ変更することにより、前記下塗層形成時の抵抗値R および最終的なローラ抵抗値Rを、回転するローラに対しAC電圧Vpp=500V(f=380Hz)とDC電圧−200Vとを同時に印加した状態で、電流500〜1500μAの範囲において、該最終的なローラ抵抗値Rと下塗層形成時の抵抗値R との比R /Rが0.57<R/R<1.10の関係を満足するよう調整することを特徴とする帯電ローラの製造方法
  2. 前記下塗層の導電剤としてカーボン系導電剤またはイオン系導電剤を用い、かつ、前記表層の導電剤としてカーボン系導電剤を用いる請求項1記載の帯電ローラの製造方法
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