最初に本発明の原理について詳細に説明する。水道水を電気分解した際にアルカリ水、酸性水のpH値に影響を与える水質成分として炭酸塩がある。また、初期pH値もpHに影響を与えるが、水道水はほぼpH6〜8程度であり、炭酸塩が全く存在しない水で水素イオン、水酸化物イオン濃度は最も多くて10−6mol/Lである。一方炭酸塩量は最も少ない地域においても10−4mol/L程度存在しているため、電解水のpHに主要因としては、炭酸塩量と想定することができる。
通常水道水中には炭酸塩が含まれており、炭酸塩は水中で、H2CO3、HCO3 −、CO3 2−の3種類の形態で存在している。これら3種類の炭酸塩の存在率は、pHにより決まり、図2にpHと存在率の関係を示した。図2から分かるように中性付近ではHCO3 −の存在率が最も高く、pHが上がるに従ってCO3 2−の存在率が高くなり、pHが下がるに従ってH2CO3の存在率が高くなってくる。通常日本の水道水では、pHから推定して、CO3 2−の形ではほとんど存在していないと仮定できる。また、中性付近では、H2CO3も存在率はHCO3 −量と比較して少ないこと、酸性水側では、H2CO3量はpH性能に影響を与えないことから、HCO3 −がpHに影響を与える主な成分となる。そのため、HCO3 −量を考慮すれば規定電流、電圧、電力印加時に生成されるアルカリ水、酸性水のpHを正確に推定することができる。しかし、水道水の中でも原水が地下水である場合等は比較的H2CO3量が多いこともあるため、アルカリ水生成時には、H2CO3量を検知できると、より正確にpHを推定することができる。
始めに、HCO3 −量の検知方法について説明する。
水を電気分解すると、水道水中においては、副反応がほとんど起こらないと仮定して、陰極では(1)式の反応が、陽極では(2)式の反応が起こる。
この時、電解水中においては、炭酸塩の存在率がpHの変化とともに変わり、(3)式あるいは(4)式の反応を起こし、アルカリ水側においては、pHの上昇を妨げ、酸性水側においては、pHの低下を妨げている。
つまり、陽極側で生成したH+はpHを下げるが、同時にHCO3 −をH2CO3に変える(4)式の反応にも消費され、pHの低下が抑えられている。また、(4)式の反応が起こるということは、炭酸塩の形態が電荷のある形態から電荷の無い形態に変化させているということもできる。そのため、電気分解電流を徐々に上げていくと、酸性水中のH+イオン濃度は電流値の増加に伴って増加し、HCO3 −イオン濃度は逆に電流値の増加に伴って徐々に減少する。酸性水中において、低電流では水道水中に含まれるHCO3 −イオン量が、生成されるH+イオン量と比較して多いため、H+はほとんど(4)式の反応により消費され、総イオン量は徐々に減少する。ここで、以上の現象を酸性水の伝導度に着目してみる。伝導度とは、その水の電気の流れ易さを表しており、トータルイオン量と相関がある。上記現象においては、HCO3 −量とH+量のみ変化をしており、他のイオン量はほとんど変化していないため、HCO3 −量とH+量の特性はそのまま伝導度の特性として表れることになる。そのため、電流を上げていくと、酸性中において、H+イオンがHCO3 −イオン量と比較して多く生成され始めるため、総イオン量が増加していく。電気分解電流を徐々に上げていった時の酸性水伝導度は徐々に低下し、ある点で逆に上昇し始める変曲点を有する曲線となる。
また、通常日本の一般的な水道水においては、OH−やCO3 2−などのH+と反応するイオンはほとんど存在しない。つまり、この変曲点を検出するのに必要な電流値あるいは、電流値0での伝導度と、変曲点伝導度との伝導度差は、一般的な水道水においては原水のHCO3 −濃度を表していることになる。その結果、変曲点を検知することによって、pH性能に大きく寄与するHCO3 −量を直接に検知することができる。また、変曲点によって検知したHCO3 −量から規定電流、電圧、電力印加時の酸性水、アルカリ水のpHを正確に推定することができる。
また、前述した通り、日本の平均的な水道水においては、pHから推定して、炭酸塩のうちHCO3 −量がメインであるため、HCO3 −量を正確に検知し、その値に応じて印加電流を制御することで、大幅に精度を向上させることができる。また、酸性水においては、H2CO3量は性能に影響を及ぼさないため、HCO3 −量を検知するのみでほぼ精度良くpHを制御することができる。しかし、アルカリ水を吐水目的とする場合において、一部地域の水特に地下水を原水としている水に関しては、初期pHが若干低いため、HCO3 −と共にH2CO3も含まれており、pH制御の際の誤差要因となる。そのため、次にH2CO3量の検知方法について記述する。
前述したようにアルカリ水側では(3)式の反応によりOH−が消費され、pHが低下するが、H2CO3が存在する水においては、さらに(5)式の反応が起こり、アルカリ水性能を低下させる。酸性水中においてはH+とH2CO3の反応は起こらないため、性能には影響を与えない。
アルカリ水伝導度に着目して、電気分解電流を徐々に上げていくと、アルカリ水側において、始めはH2CO3がHCO3 −となる(5)式の反応が起こり、引き続きHCO3 −がCO3 2−となる(3)式の反応が段階的に起きる。
いずれの場合も総イオン量は増加しているため、アルカリ水の伝導度は電流値を上げていくと徐々に上がる傾向が見られる。また、H2CO3からHCO3 −となる時には、イオン量が1増加し、HCO3 −がCO3 2−となる時にもイオン量は1増加し、また、炭酸塩とは反応せずにOH−が残存する場合も、イオン量として1増加する。そのためどのような水についてもアルカリ水中の総イオン量の変動はないことになる。しかし、伝導度として考えると、1個当たりのイオンが伝導度に与える影響度はイオン種によって異なり、OH−>CO3 2−>HCO3 −の順番となる。そのため、初期のH2CO3量、HCO3 −量に応じて、アルカリ水伝導度上昇量が変動する。
つまり、アルカリ水伝導度の上昇度は、HCO3 −量と、H2CO3量の総和を表していることとなり、前述したようにHCO3 −量が酸性水伝導度において検知できているため、酸性水伝導度の最小点と、アルカリ水伝導度の上昇度の両方からH2CO3量を推定することが可能となる。
さらに、アルカリ水伝導度の別の変化特性に着目すると、前述したように、アルカリ水中の伝導度は電流値を徐々に上げていくと、イオンの種類と伝導度の関係から、徐々に上昇する傾向がある。さらに詳細にみると、その電荷バランスから、屈曲点が現れる。但し屈曲点とは、上昇量が一旦小さくなり再び大きくなる点のことである。この屈曲点はH2CO3がOH−と反応してほぼ消費されるpH8程度で現れることが分かった。そのため屈曲点が現れる電流値は、H2CO3量に対応している。このため、屈曲点の再び上昇量が大きくなる点を検出することで、H2CO3量を推定することが可能となる。この場合、上昇量を見る場合と異なり、、H2CO3量を推定する際にHCO3 −量を用いないため、より正確にH2CO3量を求めることができる。以上のようにアルカリ水伝導度の変化特性を検出することで、HCO3 −だけでなく、H2CO3量を検知することが可能となり、その値から規定電流、電圧、電力印加時の酸性水、アルカリ水のpHを正確に推定することができる。
また、日本の一般的な水道水ではpH範囲が6.5〜8なので、HCO3 −濃度≒アルカリ度であり、H2CO3濃度≒酸度である。但し、アルカリ度とはJISK0101(1993)で規定された酸消費量、あるいは上水試験方法で規定された総アルカリ度のことであり、酸度とはJISK0101(1993)で規定されたアルカリ消費量あるいは、上水試験方法で規定された総酸度のことである。
ここで、実際にアルカリ度(HCO3 −濃度)、酸度(H2CO3濃度)を振った水を作成し、電解試験を行った結果を示す。実験条件は、総炭酸量は炭酸水素ナトリウム、pHは塩酸を用いて調整した水を用い、作成水を既存の電解槽(Pt/Ti電極)により電気分解を行い、その時吐水される酸性水、アルカリ水の伝導度の変化特性を調べた。また、流量は2L/mim〜5L/minまで振って試験を行った。伝導度センサは正電圧印加時に酸性水が流れる流路に設け、材質はSUSを用い、電極間距離2mm、電極面積12mm2とした。また、伝導度センサ間には1kHzの交流を印加し、その時の電圧値から伝導度を算出した。
図3には、酸性水生成時の電解槽間に印加する電流値と、酸性水の伝導度の関係をアルカリ度別に示した。この結果から、アルカリ度を徐々に高くしていくと、酸性水伝導度の変曲点は、電流値の高い側にシフトすると同時に、変曲点に達するまでの伝導度の低下量が大きくなっていることが分かる。そのため、図4に酸性水伝導度の変曲点における電流値とアルカリ度の関係を示した。この結果からも、同流量においては、アルカリ度と酸性水伝導度の最小点の位置に相関があることが分かった。そのため、伝導度の最小点のにおける電流値あるいは、電流値0での伝導度と伝導度の最小値との差の何れかをを検出することでpHに大きな影響を与えるアルカリ度を正確に検知することが可能となった。また、変曲点における電流値と流量の関係を見ると、流量が増加するほど、変曲点における電流値が大きくなるという直線的な比例関係が得られた。そのため流量センサで吐水時の流量を検知し、その流量と変曲点における電流値で正確にアルカリ度を推定することができる。またこの時、同アルカリ度において流量と変曲点における電流値の関係をあらかじめ保持しておく必要がある。
但し、最小点とアルカリ度の相関が得られるのは、ある電流値での伝導度が安定した時に測定した、電流対伝導度曲線において確認されている。そのため、SCAN時間間隔によっては、電流値0での伝導度が最小点になってしまうこともあるが、ここで言う最小点とは、あくまで変曲点を検出するための代用特性であり、SCAN時間間隔や他の因子によって、変曲点以外の点が最小点となってしまっても、アルカリ度検出には変曲点を用いるのが原則である。
また、図5に同アルカリ度において、縦軸にアルカリ水伝導度の変化特性の上昇度と、横軸に酸度をプロットしたグラフを示した。但しアルカリ水伝導度の変化特性の上昇度とは、アルカリ水伝導度の変化特性が通常電流の2乗の式で近似されることから、2乗の係数をアルカリ水伝導度の上昇度として代表させている。もちろんアルカリ水伝導度の上昇度を表す値であれば他の値を用いても良い。この結果、アルカリ水伝導度の上昇度と酸度にはアルカリ度が等しい時には相関があることが確認された。また、アルカリ水伝導度の上昇度は流量に対して、反比例で変化し、アルカリ度と同様に、伝導度検出時の流量を検知し、流量補正を行うことで、どのような流量においても酸度を算出できることが確認された。また、アルカリ水伝導度の上昇度と流量の関係を見ると、流量が増加するほど、上昇度が小さくなる、反比例の関係が得られた。そのため、アルカリ度と同様に流量センサで吐水時の流量を検知し、その流量と上昇度で正確に酸度を推定することができる。またこの時、同アルカリ度、酸度において流量と変曲点における電流値の関係をあらかじめ保持しておく必要がある。
さらに図6には、屈曲点における再び上昇量が増加する点と酸度の関係を示した。このように、酸度を徐々に高くすると、屈曲点における再び上昇量が増加する電流値が電流値の高い側にシフトすることが分かる。同様に、アルカリ水伝導度の屈曲点における電流値と流量の関係を見ると流量が増加するほど、屈曲点における電流値が高い側にシフトする比例の関係が得られた。そのため、流量センサで吐水時の流量を検知し、その流量と屈曲点における電流値によって正確に酸度を推定することができる。またこの時、同酸度において流量と屈曲点における電流値の関係をあらかじめ保持しておく必要がある。
図7は、本発明の第一の実施形態について示した図である。図7において10は飲料用のアルカリイオン水生成器であり、1は電解槽、11は浄化用の中空糸、12は浄化用の活性炭、13は水道水を供給する給水口、14は酸性水が吐水される酸性水吐水口、15はアルカリ水が吐水されるアルカリ水吐水口である。また、図示されていないマイコン等の制御手段を有し、その制御手段は、電解槽、伝導度センサと接続されており、以下に説明する制御フローの制御を行っている。さらに制御手段はメモリ等の記憶手段を有し、検出データを記憶することが可能である。このようなイオン水生成装置においては、飲料用のアルカリ水を生成することが主目的であるため、活性炭12、中空糸11等の浄化機能部が前段に設けられており、そこを通過後の水を電解し、主にアルカリ水を採水する。
また、第一の実施形態における電解槽について詳細に説明する。図1において、1は電解槽、2は電解槽用直流電源、3は伝導度センサ用電極、4は伝導度センサ用交流電源、5は酸性水吐水流路、6はアルカリ水吐水流路、7は給水流路である。電解槽1は酸性水とアルカリ水を分離可能な構成となっており、電極間に正電圧を印加すれば酸性水吐水流路から酸性水が吐水され、アルカリ水吐水流路からアルカリ水が吐水される。また、逆電圧を印加すれば逆極性の水がそれぞれの流路から吐水される。
この時伝導度センサ用電極3を酸性水吐水流路5に設け、正電圧を印加時の酸性水を検出可能となっている。また、伝導度センサ用電極3には交流電流が印加可能な構成となっている。また、伝導度センサ用の電極は、電解槽と別体として、流路に設ける方法や、電解槽と一体とした構成とすることができる。電解槽と別体とした場合、メンテナンス性を向上させるために利用者が取りはずすことが可能な構成とすることが望ましい。この時、アルカリ水と酸性水を分離する構成は電極間に隔膜を設け、強制的に分離する方式と、隔膜を設けず、水の流れと構造によって分離する方式のどちらでも良い。また、電解槽の電極材質は特に限定されるものではないが、飲料用のアルカリ水や、洗顔用の酸性水を得ることが目的である場合は、PtメッキあるいはPt焼き付けのTi電極が良く用いられており、殺菌を目的とする酸性水の生成が目的である場合は、殺菌成分である次亜塩素酸を多く発生させる必要があるため、Pt/IrメッキあるいはPt/Ir焼き付けのTi電極が良く用いられている。
伝導度センサの構成としては、電気分解を起こさせることが目的ではなく、水の伝導度を検知することが目的であるため、印加電圧は数V程度と低く設定し、流れる電流も数μAから数百μA程度で十分である。この時交流を印加することによって、伝導度センサ用電極においては、電気分解反応は起こらないため、腐食の心配はなく、材質はSUS、鉄等の安価な材料で十分である。また、通常の電解槽に用いられているPt/Ti電極を用いるのでも良い。また、流れる電流が非常に少ないことから、電極面積も数mm2から数十mm2程度の小さいもので十分である。
本発明の第一の実施形態の制御フローについて図9を用いて詳細に説明する。イオン水生成装置において、pHを利用者が選択可能である場合は、利用者は目標pH決定後蛇口を開き、吐水が開始される。その時イオン水使用モードであるかないかを判断する。イオン水使用モードでないと判断されると、伝導度の検出を行う工程である、伝導度検出サブルーチンへ移行する。イオン水使用モードの判断基準については後で記載する。伝導度検出サブルーチンにおいて、酸性水の伝導度を検出すると、水質判定サブルーチンへ移行する。水質判定サブルーチンは伝導度検出サブルーチンにおいて検出された伝導度を元にアルカリ度Aを算出する。水質判定サブルーチン終了後、蛇口が閉じられれば制御を終了し、閉じられなければ、次はイオン水使用モードであると判定される。イオン水使用モードにおいては、pH推定サブルーチンにり、pH推定サブルーチンが終了すると、利用者が蛇口を閉じるまで、電解吐水を続け、蛇口が閉じられると同時に電解を停止し制御が終了する。
また、イオン水使用モードであるかないかの判断方法は一律に決まっていないが、一日の始めの吐水時に伝導度検出工程を行う方法や、使用開始時にのみ伝導度検出を行う方法、利用の度に伝導度検出を行う方法等がある。基本的には、頻度を多くすればする程、精度の向上が望めるが、捨て水が増えてしまう可能性もあるため、一日1回程度が望ましいと思われる。その場合、一日の始めのみ伝導度の検出を行いそこで算出されたアルカリ度を一日利用することとなる。また、飲料用のイオン水生成装置においては、浄化部により殺菌用の次亜塩素酸を除去しているため、長時間放置すると、配管中あるいは浄化部に細菌が繁殖するため、通常数秒〜数十秒程度初流水を排水する必要がある。また、浄化部を加熱などにより有機物を飛ばし再生させ、寿命を長く維持するように制御を行っている装置もある。そのような装置においては、再生後初めての吐水時には、浄化部周辺に再生時に溶出した有機物が残存しており、それらの有機物が混ざった水は飲料には適さないため、排水を一定時間行う必要がある。以上のような理由から、飲料用の水は初流水を排水するため、そのような排水を利用して、伝導度の検出を行うのでも良い。
次に本発明の第一の実施形態の伝導度検出サブルーチンについて図10のフローチャートを用いて説明する。但し、伝導度や、電流値などを記憶するRAM、ROM等メモリを記憶手段として保持している。規定電流I1を印加し、タイマをスタートさせ、時間T1が経過した時の伝導度S1をメモリに記憶する。このような工程を複数回繰り返し、複数の電流値を印加した時のそれぞれの伝導度を検出し、n回目の伝導度Snを検出し、メモリに記憶した時点で伝導度検出サブルーチンを終了する。但し、測定する伝導度の数には特に規定はないが、次工程において、伝導度の最小値を判定する必要があるため、少なくとも3点は必要である。
また、この時、新たに電流を印加してから規定時間T1経過後に伝導度Sを検出するのは、電流値を変えた直後は、水質が安定していないため、伝導度がまだ安定しておらず、安定後の伝導度を測定する目的である。また、伝導度が安定する時間は、電解槽から、伝導度センサまでの距離と流量が関係あり、通常使用の2〜5L/min程度で、電解槽からほとんど距離がないといった条件においては、数秒程度で十分である。
さらに精度を上げるためには、一つの伝導度Snを検知する時は、誤差因子を消すために、複数回伝導度を検出し、その平均を取るのが望ましく、その量が多い程誤差が小さくなる。また、測定した点から最小点を判定するだけでなく、測定した点から最小点を予測することによっても、さらに精度を上げることが可能となる。さらに、より精度良く図るためには、印加電流には電流値0あるいは非常に0に近い値が含まれているのが望ましい。
また、伝導度検出時に電解槽に印加する電流値は、特に限定されないが、0.1〜5A程度が好ましい。それは、通常全国の水質のアルカリ度は100ppm以下がほとんどであり、また、図4のアルカリ度と変曲点の位置との関係の結果は4L/minで測定された結果であり、家庭で利用されるイオン水生成装置においては、通常5L/minぐらいまでが標準的であることから、最大電流が5A程度でほとんどの水質における変曲点を検出することができるからである。但し、イオン水生成装置の特性や、家庭用であるか業務用であるかなどによって構成や、大きさ、必要流量等が異なるため、さらに高い電流値での伝導度まで測定する必要がある場合、あるいは小さくても良い場合など様々である。そのため、伝導度検出時に電解槽に印加する電流値は上記範囲に一律に決まるわけではない。また、印加する電流値の間隔についても特に限定されないが、細かく検出すればするほど精度は上がるが、その分時間がかかるため、0.1〜1A程度が好ましい。
次に本発明の第一の実施形態における水質判定サブルーチンについて説明する。第一の実施形態における水質判定サブルーチンは4つの態様が例示される。先ず、第一の水質判定サブルーチンについて図11のフローチャートを用いて説明する。伝導度検出サブルーチンで検出し、メモリした伝導度S1〜Snの中で最小の値をSminとする。このSminをSxとして、この伝導度が検出された時に印加した電流値Ixを判定する。その後Ixから流量補正をしてアルカリ度Aを算出し、算出されたアルカリ度Aをメモリに記憶して、水質判定サブルーチンを終了する。より詳細には、あらかじめ、Ixと流量の相関関係を保持しており、その関係からIxの流量補正を行う。さらに流量補正されたIxとアルカリ度の相関関係をあらかじめ保持していれば、アルカリ度Aを算出することが可能である。
また、本実施例においては、Sminが検出時に印加した電流値Ixからアルカリ度を算出しているが、前述したように、電流値0における伝導度S0と伝導度の最小値Sminとの差、S0−Sminとも相関があるため、そちらからアルカリ度を算出しても良い。その場合、S0−Sminとアルカリ度Aの相関関係をあらかじめ保持している必要がある。
次に本発明の第一の実施形態における第二の水質判定サブルーチンの制御フローを図12のフローチャートを用いて説明する。1つ目の制御方法においては、検出した伝導度の中で最小の値をSminとしているが、実際には、測定精度や、測定間隔により実際のSminを正確に判定できない場合がある。そこで、数点の伝導度の変化から、最小となる点を推定する方法について説明する。伝導度検出サブルーチンによる検出された伝導度S1からSnにより、S(I)の曲線を推定する。推定された曲線から、変曲点を推定しその時の電流値Ixを判定する。Ixが判定されると、1つ目の水質判定サブルーチンと同様に流量補正をしてアルカリ度Aを算出し、その値をメモリに記憶し、水質判定サブルーチンを終了する。この方法にすることで、測定間隔を比較的広くとっても正確に伝導度の最小を取る電流値Ixを判定することができる。
また、やはりこの場合も、Ixからアルカリ度を算出しても良いし、電流値0における伝導度と伝導度の最小値との差からアルカリ度を算出しても良い。
次に第一の実施形態における第三の水質判定サブルーチンの制御フローを図13のフローチャートを用いて説明する。本制御は、水質判定サブルーチンにおいてより精度高く水質を判定する方法である。水質判定サブルーチンが開始すると、酸性水伝導度検出サブルーチンにおいて検出されたS1〜Snにおいて、Sminを判定し、SminをSxと決定する。さらに伝導度Sxが検出された時の印加電流Ixを判定する。ここでIxが0でない時は、酸性水伝導度の変曲点を検出できていることから、第一の実施形態の水質判定サブルーチンと同様にIxから流量補正をしてアルカリ度Aを算出する。さらに算出されたアルカリ度Aはメモリに記憶され、水質判定サブルーチンが終了する。また、Ix=0であった時は、伝導度の最小値が0であり電流値を徐々に上げていくとそれに応じて酸性水伝導度も徐々に上がっていくため、通常アルカリ度は0であると判定される。しかし、実際には伝導度検出のために印加した最小の電流値と0との間の電流値がIxをとる可能性があるため、誤差を無くすために追加で伝導度の検出を行う。伝導度検出のために印加した電流I1〜Inから0を除いた電流値の最小値Iminを判定する。最小電流値Iminよりも低い電流値Imを印加し、時間T1経過後の伝導度Smを検出する。その後、2次検知フラッグ=1が立つ。その後、Smを加えてS1〜Sn、Smにおいて最小値判定を行う。その場合もIx=0であるとすると2次検知フラッグに1が立っているため、Imの検出が2回目であると判定され、炭酸塩濃度が非常に少なく、アルカリ度A≒0と算出され、その結果がメモリされる。また、2回目以降最小点が0でなくなるまで繰り返すのでも良いし、最高何回までかを仮設定しておくのでも良い。以上のように変曲点が最初の伝導度検出サブルーチンの工程においてうまく検出できなかった時に再度検出を行うことで、アルカリ度検知の精度を向上させることができる。
次に第一の実施形態における第四の水質判定サブルーチンの制御フローを図14のフローチャートを用いて説明する。本制御は、水質判定サブルーチンにおいてより精度高く水質を判定する方法である。水質判定サブルーチンが開始すると、酸性水伝導度検出サブルーチンにおいて検出されたS1〜Snにおいて、Sminを判定し、SminをSxと決定する。また伝導度を検出する際に電解槽に印加した電流値の中で最も高い電流値Imaxを判定する。さらに、伝導度Sxが検出された時の印加電流Ixを判定する。ここでIx=Imaxでない時は、酸性水伝導度の変曲点を検出できていることから、第一の実施形態の水質判定サブルーチンと同様にIxから流量補正をしてアルカリ度Aを算出する。さらに算出されたアルカリ度Aはメモリに記憶され、水質判定サブルーチンが終了する。しかし、Ix=Imaxである時は、酸性水側の伝導度が徐々に低下し、上がるところまで達していないため、変曲点の位置を判定することができない。そのため、Imaxより高い電流値Imを印加し、T1経過後の酸性水伝導度Smを検出し、2次検知フラッグに1が立つ。その後、S0〜SnにSmを追加して最小値判定を行い、やはりImax=Ixである時は、2次検知フラッグに1が立っているため、Imax=Ixとして流量補正をして、アルカリ度Aを算出する。また、2回目の判定でImax≠Ixであった時は、やはりIxから流量補正をして、アルカリ度Aを算出する。また、Imax≠Ixとなるまで判定を続けても良いし、最高何回までかを設定しておくのでも良い。いずれにしても、アルカリ度Aを算出と、算出されたアルカリ度Aはメモリに記憶されて水質判定サブルーチンが終了する。以上のように変曲点が最初の伝導度検出サブルーチンの工程においてうまく検出できなかった時に再度検出を行うことで、アルカリ度検知の精度を向上させることができる。
次に本発明の第一の実施形態における、pH推定サブルーチンの制御フローを図15のフローチャートを用いて説明する。pH推定サブルーチンが始まると、吐水流量Qを検知する。次に目標pHと流量Qから印加電流Iが算出され、算出された電流Iを電解槽に印加する。その後、アルカリ度A、印加電流IからpHを推定する。推定されたpHと目標pHとの差が規定値以上、例えば0.3より小さければ、目標pHとの誤差が少ないとして、推定されたpHを表示し、利用者が確認できるようにする。逆に目標pHと推定pHとの差が規定値以上、例えば0.3以上である時には、印加電流を補正し、再度pHを推定する。このような工程を繰り返し、目標pHと推定されたpHが規定値未満となるまで補正を行うのが望ましい。また、特に補正を行なっていないpHをそのまま表示しても良いし、目標pHと表示されたpHがずれている場合に、利用者が手動で補正できるようにしても良い。
次に本発明の第一の実施形態における、pH推定サブルーチンの他の態様の制御フローを図16のフローチャートを用いて説明する。pH推定サブルーチンが始めると、流量Qを検知し、電流を印加していない時の伝導度S0を検知する。次に、目標pH、アルカリ度A、流量Qから印加電流Iを算出する。この時、あらかじめアルカリ度Aと目標pHに達するのに必要な電流値の関係を調べておき、その関係式を保持することで、必要印加電流を算出する。その後、算出された電流値を電解水生成用電解槽の電極間に印加し、その時の伝導度Sを検出する。ここで、アルカリ度Aと、S0−S、流量QからpHを推定する。基本的には、電解水伝導度の1点測定や、供給水伝導度と、電解水伝導度との差においては、pHは一つに決まらないが、あらかじめ、アルカリ度が推定できているため、印加電流からpHを推定することができる。さらに、推定されたpHと目標pHとの差が0.3以上であると、吐水されている電解水の目標pHとの差が大きいため、印加電流を補正し、再度伝導度Sを検出する。このような工程を、目標pHと推定pHとの差が規定値未満、例えば0.3未満となるまで繰り返し、0.3未満となったところで利用者にpHを表示する。この場合も特に補正を行わなっていないpHを表示しても良く、利用者が手動で補正できるようにしても良い。
次に、、第一の実施形態における変形例を図8に示した。図8において、20は酸性水生成装置であり、21は食塩添加機構である。酸性水生成装置においては、殺菌目的で使用されることが多く、食塩を添加する構成であることが多い。給水された供給水は食塩添加機構21により、食塩が規定量溶け込んだ食塩水となり、電解槽1により電解され、アルカリ水と、次亜塩素酸が混入した酸性水が生成する。このような次亜塩素酸が混入した酸性水は殺菌能が強いため、手洗い、厨房の殺菌、食品の殺菌等に用いられる。また、酸性水のアストリンゼン効果を利用して、洗顔を目的とした酸性水生成装置もある。また、飲料用にアルカリ水、洗顔用に酸性水と両方に対応したような構成でも良い。本研究においては、吐水目的がアルカリ水であっても酸性水であってもその両方であっても良く、浄化部があっても食塩を添加するものでも良く、何れの場合においても、pHを精度良く推定することが可能である。
次に本発明の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態においては、第一の実施形態と酸性水伝導度を検出する点は同様であるが、さらにアルカリ水の伝導度を検出することで、酸度の影響を加味して制御を行うことが可能となり精度をより向上させることが可能である。構成においては、第一の実施の形態とほぼ同様で良いが、酸性水吐水流路にのみ伝導度センサを設けると酸性水伝導度とアルカリ水伝導度を同時に測定することができないが、正電圧印加時に酸性水伝導度を、逆電圧印加時にアルカリ水伝導度を測定することで、センサが一つで酸性水、アルカリ水の伝導度を共に測定することができる。また、酸性水吐水流路と、アルカリ水吐水流路双方に、伝導度センサを設けるのでも良く、その場合は、酸性水、アルカリ水を同時に測定することが可能となるため、測定時間を短時間化することが可能となる。ここで、第二の実施形態の制御フローについて図17のフローチャートを用いて説明する。利用者が目標pHを決定して蛇口を開くと吐水が開始し、イオン水使用モードであるかないかを判断する。この時、イオン水使用モードでないと判断すると、酸性水伝導度検出サブルーチンに入り、酸性水伝導度を検出し、さらにアルカリ水伝導度検出サブルーチンに入り、アルカリ水伝導度を検出する。その後、水質判定サブルーチンにおいて、検出されたアルカリ水伝導度と酸性水伝導度からアルカリ度Aと酸度Pを推定し、メモリに記憶する。ここまでの工程で、利用者が蛇口を閉じると制御を終了させるが、利用者が吐水を継続すると、イオン水使用モードに移行する。イオン水使用モードにおいては、流量Qを検知し、目標pHと流量Qから算出される規定電流を印加する。その後pH推定サブルーチンにより、pHが推定され、利用者が吐水を終了すると同時に制御を終了する。
また、第二の実施形態において、酸性水伝導度検出サブルーチンは、第一の実施形態の同様である。そのため、次に第二の実施形態におけるアルカリ水伝導度検出サブルーチンの制御フローについて図18のフローチャートを用いて説明する。アルカリ水伝導度検出サブルーチンに入ると、酸性水伝導度検出時とは逆の電圧が印加されるようにポールチェンジを行う。その後、電流値I1を印加し、T1時間経過後、アルカリ水伝導度S1’を検出しメモリに記憶する。同様の工程をn回繰り返し、アルカリ水伝導度S1’〜Sn’まで測定する。また、この時電流値0での伝導度S0’を検知すると、その後の水質判定の精度が向上ため、検出するのがより望ましい。
次にアルカリ水伝導度検出サブルーチンの他の態様について図19のフローチャートを用いて説明する。アルカリ水伝導度検出サブルーチンに入ると電流値0での伝導度S0’を検出し、検出したS0’により印加電流I1を決定する。その後、I1を印加し、T1経過後のアルカリ水伝導度S1’を検出してメモリする。このS0’は原水の伝導度を表しており、つまり電流の流れ易さを表している。このS0’から印加する電流値I1を決定する。例えば最大電力50Wであるとすると、S0’が大きく電流が流れ易い時は50W印加しても5A流れ、S0’が小さい場合には、同じ50Wを印加しても2Aしか流れないといった現象が見られる。伝導度を検出する時の電流値が大きいほど、検出精度は上がるため、最大電力に最も近くなるような電流を印加するのが望ましい。
次に第二の実施形態における水質判定サブルーチンの制御フローについて図20のフローチャートを用いて説明する。始めに酸性水伝導度S1〜Snから酸性水伝導度の最小値Sminを判定する。SminをSxとしてSx検出時の電流値Ixを判定する。前述したように酸性水伝導度の最小値の位置はアルカリ度Aを表しているため、Ixから流量補正をしてアルカリ度Aを算出する。次に、アルカリ水伝導度S0〜Snから検出電流値と伝導度の関係式S(I)’を求める。S(I)’においてIの2乗の係数をαとし、αを流量補正することで、酸度Pを算出する。酸度Sが算出された後、アルカリ度Aと酸度Sをメモリに記憶して水質判定サブルーチンを終了する。
詳細にはアルカリ水伝導度と電流値との関係式S(I)’は電流値の2乗と良い相関がありIの二乗の傾きαはアルカリ水伝導度の上昇度を表している。アルカリ水伝導度の上昇度は前述したように同アルカリ度における酸度を表している。そのため、アルカリ度一定でのαは酸度と相関があると言える。この時あらかじめαと流量の相関関係を保持しており、その関係からαの流量補正を行うことができる。さらにあらかじめ流量補正されたαと酸度Sの関係をアルカリ度A毎に保持していることで、酸度Sを算出することができる。
第二の実施形態における水質判定サブルーチンの制御フローの他の態様を図21のフローチャートを用いて説明する。Sminからアルカリ度Aを算出する工程は、1つ目の制御フローと同様である。その後、アルカリ水伝導度検出サブルーチンにおける2つ目の制御フローを行った場合、伝導度はS1’の一つのみであるため、S1’−S0’を算出する。算出されたS1’−S0’と、S1’の検出電流I1’により流量補正をして酸度Pを検出する。酸度Pが検出されるとアルカリ度A、酸度Pをメモリに記憶して、水質判定サブルーチンが終了する。
詳細にはS1’−S0’は検出電流Iが同じである場合やはりアルカリ水伝導度の上昇度を表しており、アルカリ度一定での酸度を表している。流量とS1’−S0’の関係をあらかじめ保持しており、その関係からS1’−S0’を流量補正することができる。そのため、アルカリ度A、検出電流I1’毎に流量補正されたS1’−S0’と酸度との相関を保持していることで、アルカリ度AとS1’−S0’を算出すれば、酸度Pを算出することができる。第二の実施形態においては、アルカリ度Aの算出方法は1通りであったが、第一の実施形態のように曲線を推定してから、最小値を判定する方法でも良い。以上のようにアルカリ水伝導度の上昇度から酸度を考慮に入れた制御をすることが可能となる。
第二の実施形態における水質判定サブルーチンの他の態様を図22のフローチャートを用いて説明する。Sminからアルカリ度Aを算出する工程は、1つ目の制御フローと同様である。その後、アルカリ水伝導度を複数点検出し、屈曲点つまり、アルカリ水伝導度の上昇量が一時低下し、再び上昇量が増加する点を検出する。屈曲点の検出方法としては、伝導度を測定する電解電流を徐々に上げていった際に前回検出伝導度と今回検出伝導度の差を判定し、その差が規定値以上となった電流値Iyを判定する。また、この場合、今回伝導度/前回伝導度が規定値以上となった電流値Iyとして判定するのでも良い。
次に第二の実施形態におけるpH推定サブルーチンについて説明する。基本的には、第一の実施形態と同様で良いが、酸度Pという水質情報が加わるため、pH推定時には印加電流毎に、アルカリ度、酸度、pHの3次元のグラフを保持している必要がある。
また、上記実施形態においては、酸性水伝導度により、規定電流印加時のpHを算出するように制御を行っているが、規定電圧印加時や規定電力印加時のpHを算出するように制御を行っても良い。その場合は、あらかじめ規定電圧あるいは電力とpHの関係を調べておけば良い。
本発明の第五の実施形態を、添付図面により詳細に説明する。図23において、30はトラップ構造を有する流路である。排水流路をトラップ構造とすることで、通水終了後も水が溜まるような構成となっている。そのため、伝導度計測途中に利用者が通水を終了した場合においても、トラップ部分に水が溜まり、止水時に印加している電流までは、伝導度を測定可能となり、次回通水時に最初から伝導度を測定する必要が無くなり、伝導度測定の効率を上げることができる。さらに、トラップ構造とすることで、通水時においても水の片流れ等が無く、電極を確実に水没させることができる。この場合、トラップ構造としなくても、下から上へ吐水する形態にするのでも良い。
また、通常伝導度センサへは伝導度の測定時にのみ電圧を印加する必要があるが、その他の時に電圧を印加している必要性は無い。逆に常に電圧印加時間が長くなることによって、電極センサの寿命が短くなってしまう可能性がある。そのため、伝導度検出時のみ電圧を印加するのが望ましい。また、伝導度検出時のみだけでなく、より精度を上げるために、通常使用時も伝導度を検出するのがより望ましい。その際には、例えば流量センサと対応させ、流量が規定流量以上となると、自動的に電圧を印加するような制御を行うのが望ましい。