JP4805474B2 - 炭素化フォームの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、炭素化フォームの製造方法に関し、更に詳細には、圧力損失が小さく、かつ被捕集物に合わせて任意に気泡径を制御し得る炭素化フォームを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に高温または薬剤使用といった特殊な条件下で使用され、耐熱性または耐薬品性が必要とされるフィルタには、熱硬化性樹脂発泡体等を炭化することで得られる、所謂炭素化フォームが好適に使用されていた。
【0003】
前記炭素化フォームは、その使用用途により該フォームの気泡径が制御可能な樹脂発泡体が用いられることが一般的であった。しかし前記樹脂発泡体は、炭化のために施す加熱により収縮してしまう等の欠点が指摘され、この欠点を解消すべく、特開平6−32677号公報に記載の如く、該樹脂発泡体に所要の樹脂を含浸させることで、該樹脂発泡体炭化時の形状補強を達成し、これにより収縮を回避する方法が提案されている。
【0004】
一方、前述のようなフィルタ用途としての使用を考えた場合、該フィルタの物性の一つである圧力損失が、使用時における要素の一つとして重要視される。この圧力損失が大きいと、ゴミ等の被捕集物の捕集効率が高まる一方で目詰まりを起こし易い、すなわちメンテナンス等を頻繁に行なう必要が生じ、実際の使用においては大きな問題となってしまう。
【0005】
またフィルタとしての捕集効率を考える場合、被捕集物の大きさに合わせて該フィルタの気泡径を制御する必要がある。しかし樹脂から得られる発泡体の場合、100μm程度の大きさが気孔径制御の下限値であり、これを下回る被捕集物に利用されるフィルタの場合には、圧力損失や設置スペースその他コスト等を犠牲にして二重・三重に該フィルタを設置することが一般的であり、効率的とはいえなかった。
【0006】
前述した圧力損失を小さく抑え、かつ被捕集物の大きさにより任意に気泡径を制御し得る樹脂原料として、メラミン樹脂が挙げられる。このメラミン樹脂から得られるメラミン発泡体の場合、該発泡体を構成する骨格が細く、かつ連通度が高いため、前記圧力損失が非常に小さくなる長所がある。また気泡径についても、80μm程度の小さな気泡を有する発泡体を制御下に製造可能であり、更に該発泡体に圧縮を施すことで更に微細な気泡とすることも可能であることが知られている。
【0007】
【発明が解決すべき課題】
しかし前記メラミン発泡体は、加熱により大きく収縮する、すなわち熱収縮率が大きく、加熱を施こすことで炭化する等の場合には、得られる炭素化フォームの大きさが、基となるメラミン発泡体の10%未満の体積となってしまい、最終的に得られる炭素化フォームの形状設計が困難である。
【0008】
また前述の如く骨格が細いため、得られる炭素化フォームにおいても同様に骨格が細く、このため機械的強度が極端に低く、非常に割れや欠損、粉落ちを生じ易く、所謂ハンドリング性が悪い。更にメラミン発泡体の気泡径を微細にすべく施される熱プレスにおいても、形状復元性が高いため該熱プレス後に元の形状に容易に戻ってしまい、所要の気泡径を保持し得ない欠点も指摘される。
【0009】
【発明の目的】
この発明は、前述した従来技術に係る炭素化フォームの製造方法に内在していた欠点に鑑み、これを好適に解決すべく提案されたものであって、基材として骨格の細いメラミン発泡体を使用し、該発泡体の内外表面に熱硬化性樹脂により被覆層を形成した後に、熱プレスおよび炭化を行なって炭素化フォームを製造することで、基本的に圧力損失が小さく、気泡径を数μmから数十μmの範囲で任意に制御し得ると共に、加熱による炭化時の収縮度合いを減少させて形状設計度の高い炭素化フォームを製造する方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の発明に係る炭素化フォームの製造方法は、
メラミン樹脂の発泡体を所要形状に成形した基材を準備し、
前記基材を形成する骨格の内表面および外表面に熱硬化性樹脂を全体的に付与し、該熱硬化性樹脂を熱硬化温度未満の温度で乾燥することで、該骨格の内外表面の全体に未硬化状態の熱硬化性樹脂からなる被覆層が形成された被覆発泡体とし、
前記被覆発泡体に対して、熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上の温度で熱プレスを施して所定倍率に圧縮することで、気泡径を100μm以下となるよう制御すると共に、前記被覆層をなす熱硬化性樹脂を硬化し、
前記被覆発泡体を無酸素雰囲気中で加熱し炭化させることで3次元連通気泡構造とし、引張強度を少なくとも0.1MPa以上となるようにしたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る炭素化フォームの製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0015】
本願の発明者は、発泡体からなる基材に対して、所要樹脂を付与・乾燥させ、炭化させることで得られる炭素化フォームの該基材として、メラミン樹脂を原料とするメラミン発泡体を、該樹脂として熱硬化性樹脂を夫々用いることで、圧力損失が非常に小さく、かつ100μm以下に制御し得る気泡径を有する炭素化フォームが得られることを知見したものである。
【0016】
本発明の好適な実施例に係る炭素化フォーム10の基となる被覆発泡体16は、図1に示す如く、メラミン樹脂の発泡体(以下、メラミン発泡体と云う)を材質とする基材12と、この基材12の所要の内外表面、すなわち該発泡体を形成する骨格の内表面および外表面を被覆する所要の熱硬化性樹脂からなる被覆層14から構成される。そして前記炭素化フォーム10は、被覆発泡体16に無酸素雰囲気(後述)下で熱処理を施して炭化することで得られる。また前記被覆発泡体16の炭化に先立ち、熱プレスを施すことで該被覆発泡体16を所定の大きさに圧縮することで、該被覆発泡体16内部に形成されている気泡の径を任意に制御し得る。なお本発明で云う「無酸素雰囲気」とは、例えばアルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気、還元雰囲気または酸素が存在しても、加熱により燃焼が促進されず炭化体が得られる程度の雰囲気を云う。
【0017】
前記基材12の材質としてはメラミン発泡体が採用されているが、該メラミン発泡体を採用することで、図3に示す如く、▲1▼非常に細い骨格故の小さい圧力損失(図3(a,b,cおよびd)参照)、▲2▼プレスしても気泡が潰されることなく、該骨格がより複雑に絡み合って幾何学的に更に微細気泡が形成される(図3(bおよびc)参照)、▲3▼加熱した際に骨格表面に造膜がなされず気泡の連通状態を維持したまま炭化が可能、すなわち連通度が低下しない(図3(a,bおよびc)参照)、といった特徴がある。
【0018】
前記被覆層14は、前記基材12の内外表面を被覆することで、以下の作用を発現して物性を改善・変化させるものである。▲1▼および▲2▼については熱による炭化前の被覆発泡体16に係る内容であり、▲3▼および▲4▼については最終的に得られる炭素化フォームに係る内容となっている。
▲1▼前記被覆発泡体16に熱プレスを施すことで、所望の気泡径とすべく圧縮を行なうが、この際、メラミン発泡体からなる基材12だけでは該熱プレス後に元の大きさ・形状に復元してしまう。そこで前記被覆層14を付与し、熱プレスを施す際の処理温度を該被覆層14を形成する熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上として、該熱プレス後の形状を保持し得るようにする。なおこの際の復元の度合いを示す復元率は小さいほどよいが、3%前後以下であれば大きな影響を及ぼさないことが経験的に知られている。
▲2▼前記基材12はメラミン樹脂を原料としたメラミン発泡体であるが、該発泡体は炭化を行なう際の加熱で大きく収縮する、すなわち熱収縮率が大きく、前記被覆発泡体16から炭素化フォーム10を作製した際の形状設計が非常に困難である。そこで前記被覆層14を付与し、炭化の際の加熱による熱収縮を抑制させる。なおこの熱収縮の度合いを示す体積収縮率は、大きすぎると前述の如く形状設計が困難となり、小さすぎると本来収縮すべき基材12に機械的な歪みが生じてしまうので、30〜50%程度の範囲に設定することが好ましい。
▲3▼前記基材12を内部構造は非常に細い骨格から構成されており、機械的強度が乏しく欠損し易い。そこで前記被覆層14を付与することで、骨格を補強して機械的強度を向上させる。
▲4▼前記被覆層14は基材12の骨格表面に付与されるため、該基材12の気泡径をより小さくする。
すなわち、▲1▼〜▲3▼については前述した基材12の材質であるメラミン発泡体の長所の裏返しである欠点をなくす作用を果たしている。
【0019】
前記被覆層14を形成する物質としては、前述の作用を果たす必要があるため、(A)前記基材12が熱収縮等を起こさない温度域で、該基材12の内外表面に付与し得るよう液状とし得るものであること。
(B)前記基材12が熱収縮を起こさない温度域で、熱硬化を起こす、すなわち熱硬化温度を有する樹脂であること。
(C)前記基材12の材質であるメラミン発泡体よりも熱収縮率が小さいまたは同等であること。
といった条件を達成する必要がある。このような条件を併有する樹脂としては、フェノール樹脂またはメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0020】
前述した▲1▼〜▲4▼の記載の各物性については、前記被覆層14を形成する熱硬化性樹脂の目付量を変化させることで夫々達成が可能であり、該物性と目付量(付与時ではなく乾燥時)との関係を以下に記す。
【0021】
前述の▲1▼に関する復元率3%以下については、前記熱硬化性樹脂を乾燥時目付量として0.005g/cm3程度以上付与して被覆層14を形成すれば、また▲2▼に関する熱収縮率30〜50%については、0.005〜0.02g/cm3の範囲で該被覆層14を形成すれば達成される。
【0022】
前述の最終的に得られる炭素化フォーム10に係る▲3▼および▲4▼については、製品として発現すべき物性の一部である。すなわち前記炭素化フォーム10の取り扱い時の欠損等を回避し、ハンドリング性を高める機械的強度およびフォームとして使用された場合の被捕集物の大きさに合わせて捕集効率を向上させるため、任意に制御し得る気泡径である。前記機械的強度の指標として、取り扱い時の力の加わり方を考慮し、引張強度を採用した。
【0023】
前記▲3▼に係る引張強度としては、基本的に強い方が好適であるが、本発明の炭素化フォームから測定された(後述)0.1MPa程度の値をであれば、通常取り扱い時に欠損等が生じないことを確認した。前記基材12の内外表面に前記熱硬化性樹脂を乾燥時の目付量として0.005g/cm3以上付与して被覆層14を形成すれば、この引張強度を達成し得る。
【0024】
前記▲4▼に係る気泡径は、前記熱硬化性樹脂の乾燥時の目付量が0.001g/cm3増加する毎に最終的に得られる炭素化フォーム10の気泡径が1〜2μm程度小さくなる。従って、例えば前記熱硬化性樹脂の乾燥時の目付量が0.01g/cm3程度であれば、気泡径は10〜20μm程度小さくなる。殊に目付量が増加するに従い、前述の熱収縮により気孔径の小さくなる度合いは減少する。これを前記被覆層14の形成される膜厚に置き換えると、乾燥目付量で0.001g/cm3当たり1μm程度であると概算される。なおこの気泡径については、後述する熱プレス工程S3でのプレスにより大きく変化するものであるので、主として該熱プレス工程S3での圧縮率が重要であり、前述の熱収縮率により、気泡径も全体収縮に伴って小さくなる点にも留意する必要がある。
【0025】
また実施例に係る炭素化フォーム10の製造方法は、図2に示す如く、基材作製工程S1、被覆層形成工程S2、熱プレス工程S3、炭化工程S4および仕上工程S5からなる。
【0026】
前記基材12としては、メラミン樹脂を原料として発泡させた多孔質のメラミン発泡体が使用される。前記メラミン発泡体は、主原料であるメラミンに対して、ホルムアルデヒドと、発泡剤、触媒および乳化剤等の添加剤とを配合・充分に混合し、所要形状に発泡成形後に硬化させることで得られる。また気泡率等の物性において、使用されるに充分な数値を満足しているものであれば、市販のメラミン発泡体であっても基材12として採用し得る。
【0027】
前記メラミンおよびホルムアルデヒドに代えて、予め別工程で作製されたメラミン−ホルムアルデヒド前縮合体を用いるようにしてもよい。前記前縮合体として好適に使用されるものの数平均分子量は、200〜1200、殊に200〜400程度である。この場合、縮合に必要とされる時間を短縮させて、製造効率を向上し得る。前記メラミン−ホルムアルデヒド前縮合体を作製する際のメラミンとホルムアルデヒドとのモル比は、メラミン:ホルムアルデヒド=1:1.5〜1:4、殊に1:2〜1:3.5の範囲が好適である。
【0028】
また前記メラミン−ホルムアルデヒド前縮合体を好適に作製する単量体としては、前記メラミンおよびホルムアルデヒドの一部を他の単量体に置き換えてもよい。前記メラミンに対応する単量体としては、アルキル置換メラミン、尿素、ウレタン、カルボン酸アミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルフリルアミド、スルホン酸アミド、脂肪族アミンまたはフェノール或いはその誘導体等が、前記ホルムアルデヒドに対応する単量体としては、アセトアルデヒド、トリメチロールアセトアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフロール、グリオキザール、フタルアルデヒドまたはテレフタルアルデヒド等が挙げられ、これら他の単量体に置換することで、基材12となるメラミン発泡体の硬度を任意に制御し得る効果が期待できる。
【0029】
前記添加剤として添加される発泡剤としては、ペンタン、トリクロロフルオロメタンまたはトリクロロトリフルオロエタン等が使用され、触媒としては通常蟻酸が、乳化剤としてはアルキルスルホン酸ナトリウムの如き陰イオン界面活性剤等が使用される。
【0030】
前記基材製造工程S1における発泡・硬化は、具体的には、フリーライズ、所謂スラブ成形や、所要型に前記原料を注入し、クランプ等により密閉させて加熱、或いは電子線、マイクロ波または高周波の照射等、従来公知の適宜手段により該原料を発熱・発泡成形し、硬化させる方法が採用される。殊に前記マイクロ波の照射による発泡は、前記原料全体を均一に加熱し得る、すなわち均一な発泡構造を形成し得るため好適に採用されるが、その際には、該マイクロ波照射時の電力消費量を原料1kgに対して500〜1200kW、好適には600〜800kWの範囲内に設定する。これは電力消費量が過小であると、充分に発泡せず、また過多であると発泡時の原料圧力が非常に高くなり、原料が飛散して形状保持不能または爆発といった事態が発生する可能性が考えられるためである。
【0031】
次いで実施される被覆層形成工程S2は、前記基材作製工程S1で作製された基材12の内外表面、すなわち骨格に対して前述の作用([0017]参照)を発現する被覆層14を形成する段階である。具体的には前述の熱硬化性樹脂を所定の方法により付与することで形成される。
【0032】
前記熱硬化性樹脂を付与する具体的な方法としては、含浸、スプレーコーティング、ロールコーティングまたはフローコーティング等の従来公知の何れの方法であっても採用可能である。なお付与に先立ち、前記熱硬化性樹脂を希釈化する等の前処理を施して付与性を高めてもよい。殊に前記基材12の内外表面に対して均一に付与が可能で、かつ目付量が容易に制御可能な含浸が好適である。そして前記基材12上に付与された熱硬化性樹脂は、該熱硬化性樹脂の熱硬化温度以下の温度で乾燥される。この乾燥を行なわないと、次の熱プレス工程S3において、熱硬化性樹脂が該熱プレスを行なう圧縮機等の圧縮面に付着してしまい、前記基材12上に被覆層14を形成しないことがあるので注意が必要である。また乾燥温度についても、前記被覆層14を形成する熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上で行なうと該被覆層14が完全に硬化してしまい、次の熱プレス工程S3の圧縮時に破壊されてしまうため注意が必要である。
【0033】
ここまでに施された基材作製工程S1および被覆層形成工程S2により、前記基材12から、炭素化フォーム10を製造する基となる被覆発泡体16を得ることができる。
【0034】
次に施される熱プレス工程S3は、前記熱硬化性樹脂からなる被覆層14の熱硬化温度以上の温度を得られた被覆発泡体16に掛けながら所定倍率にプレスする工程である。この本工程S3でのプレスの倍率により、最終的に得られる炭素化フォーム10の気泡径がほぼ決定される。この気泡径は前記プレス倍率に伴って変化するものであり、基本的に該プレス倍率が2倍の時には該気泡径は半分に、10倍の時には1/10程度に圧縮される。なお前述のプレスは、製造工程によるが基本的にフォームの高さ方向を縮める向きに施されるので、前記気泡径の収縮も該方向で顕著に表れ、該プレス方向に関係のない方向では大きな収縮が見られない。
【0035】
前記炭化工程S4は、所定倍率で圧縮の完了した被覆発泡体16をアルゴンガス等の還元雰囲気下で1,000℃程度に加熱し、炭化させる工程である。前記還元雰囲気以外に真空中または不活性ガス中での実施でも問題はない。加熱温度については殊に制限はないが、炭素の昇華抑制と製造コスト等との点から3,000℃を下回る温度域での実施が好適である。またこの温度域内であれば、温度が高いほど前記炭素の結晶化が促進され、その結果より高い引張強度が達成される。
【0036】
最終的に施される仕上工程S5では、前記炭素化フォーム10に対して、所定形状への研磨および所定の検査が施される工程であり、この工程S5を経ることで最終製品たる炭素化フォーム10が完成する。
【0037】
本発明の炭素化フォームは、そのままフォームとして利用も可能であるが、この他、例えば所定の機能を付与するフォーム基材や、所定の触媒を付与する高温耐熱性および耐薬品性を有する触媒担体等としても好適に利用し得る。
【0038】
【実験例】
以下に実施例に係る炭素化フォームの製造方法と、この方法により得られた炭素化フォームの諸物性の評価についての実験例を示すが、本発明に係る炭素化フォームおよびその製造方法は、この実験例に限定されるものではない。
【0039】
基本的に基材として市販メラミン発泡体を使用して、被覆層形成工程S2における熱硬化性樹脂の目付量および熱プレス工程S3におけるプレス倍率を変えて実験例1〜3に係る炭素化フォーム試験片を3つ作製した。前述した被覆層形成工程S2を施して得られる被覆発泡体の被覆層の乾燥目付量およびプレス倍率と、この被覆発泡体に前述した熱プレス工程S3を施して得られる熱プレス済みの被覆発泡体の復元率および気泡径と、更に炭化工程S4を施して得られる炭素化フォームの線収縮率、気泡径、圧力損失、機械的強度としての引張強度および取り扱い時の欠損、粉落ち等の状態を示すハンドリング性とについて下記の表1に記す。また各気泡径の記載には、基材による気泡径および被覆層の層厚を併記した。従って実際に目視し得る気泡径は、基材による気泡径−(被覆層の層厚×2)として表示している。
【0040】
なお前記各工程の詳細、使用したメラミン発泡体および使用した熱可塑性樹脂は以下の通りである。
・熱プレス工程S3条件:加熱245±5℃、時間120秒
・炭化工程S4条件:アルゴン雰囲気下、温度1,000℃、時間2時間
・使用メラミン発泡体:汎用のメラミン発泡体(BASF製)
寸法15×15×2、気泡径270μm
・熱硬化性樹脂:商品名 PE-602;大日本インキ化学工業製
【0041】
【表1】
【0042】
(比較例)
また前述の各実験例についての比較として、以下の各比較における比較例1〜3に係る試験片を夫々作製し、関連する各物性値を前述の各実験例に従って測定、表1に示した。
【0043】
比較例1:復元率を比較するための比較例であり、基材に対して被覆層を形成することなく熱プレス工程S3を施す前後の寸法を計測して該復元率を算出した。
比較例2:線収縮率および機械的強度を比較するための比較例であり、基材に対して被覆層を形成することなく2倍のプレス倍率条件で炭化工程S4を施す前後の寸法を計測して該線収縮率を算出し、該炭化工程S4を施した後の機械的強度としての引張強度を測定した。
比較例3:圧力損失を比較するための比較例であり、骨格の細いメラミン発泡体からなる基材に変えて、発泡体として一般的なウレタン発泡体(商品名 MF-100;株式会社イノアックコーポレーション製(寸法50×50×60))を使用し、この基材に対して熱硬化性樹脂としてのフェノール樹脂(商品名 フェノライト5900;大日本インキ化学工業製)をエタノールを溶媒として60wt%で希釈し、目付量0.3〜0.4g/cm3となるように付与し、温度130℃、1時間の条件で乾燥させ、アルゴン雰囲気下において、温度1,000℃、2時間の条件で加熱し炭化を行なった。
【0044】
(結果)
先ず各実験例の測定された物性値をまとめると、熱プレス後の復元率および炭化後の線収縮率は熱硬化性樹脂の付与量に反比例し、夫々該熱硬化性樹脂の乾燥時目付量が0.005g/cm3以上で充分な効果が確認された。また炭素化フォームとなった際の気泡径は、基本的に熱プレスによるプレス倍率に伴って変化し、圧力損失については該気泡径の減少に伴って、増大することが確認された。更に引張強度については比較例2に係る数値が測定下限以下であるのに対して、各実験例に係る試験体の数値は何れも0.1MPa程度あり、通常の取り扱いにおいて、欠損、粉落ち等は確認されず良好なハンドリング性が確認された。
【0045】
各実験例の測定された物性値と各比較例における物性値とを比較すると、比較例1および比較例2からは、熱硬化性樹脂の付与による熱プレス時の復元率と炭化後の線収縮率とが夫々大きく抑制され、フォームとしての形状設計等が容易になっていることが確認される。また比較例2から、ハンドリング性の大きな向上が、更に比較例3から、基材としてメラミン発泡体を使用した効果、すなわち骨格が細く圧力損失が極度に小さくなっていることが確認された。
【0046】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る炭素化フォームの製造方法によれば、基材として骨格の細いメラミン発泡体を使用し、該発泡体の内外表面に熱硬化性樹脂により被覆層を形成した後に、熱プレスおよび炭化を行なって炭素化フォームを製造するようにしたので、基本的に圧力損失が小さく、気泡径を数μmから数十μmの範囲で任意に制御し得ると共に、良好なハンドリング性も達成し、製造における各工程の加熱による収縮度合いを減少させて形状設計度の高い炭素化フォームを得ることができる。
また、被覆発泡体に熱プレスを施すことで、所望の気泡径とすべく圧縮を行なうに際し、メラミン発泡体からなる基材だけでは該熱プレス後に元の大きさ・形状に復元してしまうが、基材を形成する骨材の内外表面に被覆層を付与し、熱プレスを施す際の処理温度を該被覆層を形成する熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上とすることで、該被覆層が硬化して熱プレス後の形状を保持することができる。
また、基材となるメラミン発泡体の熱収縮率は大きく、メラミン発泡体からなる基材だけでは炭化を行なう際の加熱で大きく収縮してしまうが、基材を形成する骨材の内外表面に被覆層を付与し、該被覆層を炭化する前に熱プレスにより硬化することで、炭化の際の加熱による基材の熱収縮を抑制することができる。
また、メラミン発泡体からなる基材の内部構造は非常に細い骨格から構成されており、機械的強度が乏しく欠損し易いが、該骨格の内外表面に被覆層を付与することで、骨格を補強して機械的強度を向上させることができる。
また、基材を形成する骨格の内外表面に被覆層を付与することで、該基材の気泡径をより小さくすることができる。
更にまた、熱硬化性樹脂を熱硬化温度未満の温度で乾燥することで、熱プレスに際して熱硬化性樹脂が該熱プレスを行なう圧縮機等の圧縮面に付着してしまったり、被覆層が破壊されてしまうのを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る炭素化フォームを示す内部の構造図である。
【図2】実施例に係る炭素化フォームを製造する工程を示すフローチャート図である。
【図3】典型的な炭素化フォーム(図3(a))と、該フォームをプレス倍率2倍および10倍で熱プレスを施して炭化させた炭素化フォーム(図3(bおよびc))と、基材としてメラミン発泡体の代わりにウレタン発泡体を使用した炭素化フォーム(図3(d))の骨格の様子および構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
12 基材
14 被覆層
16 被覆発泡体
Claims (5)
- メラミン樹脂の発泡体を所要形状に成形した基材(12)を準備し、
前記基材(12)を形成する骨格の内表面および外表面に熱硬化性樹脂を全体的に付与し、該熱硬化性樹脂を熱硬化温度未満の温度で乾燥することで、該骨格の内外表面の全体に未硬化状態の熱硬化性樹脂からなる被覆層(14)が形成された被覆発泡体(16)とし、
前記被覆発泡体(16)に対して、熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上の温度で熱プレスを施して所定倍率に圧縮することで、気泡径を100μm以下となるよう制御すると共に、前記被覆層(14)をなす熱硬化性樹脂を硬化し、
前記被覆発泡体(16)を無酸素雰囲気中で加熱し炭化させることで3次元連通気泡構造とし、引張強度を少なくとも0.1MPa以上となるようにした
ことを特徴とする炭素化フォームの製造方法。 - 前記被覆層(14)は、前記熱硬化性樹脂を含浸することで形成される請求項1記載の炭素化フォームの製造方法。
- 前記被覆層(14)を形成する熱硬化性樹脂の乾燥時目付量を0.005g/cm 3 以上とした請求項1または2記載の炭素化フォームの製造方法。
- 前記被覆層(14)を形成する熱硬化性樹脂の乾燥時目付量を0.005〜0.02g/cm 3 の範囲とした請求項1〜3の何れか一項に記載の炭素化フォームの製造方法。
- 前記被覆層(14)を形成する熱硬化性樹脂として、前記基材(12)が熱収縮しない温度域で熱硬化すると共に、熱収縮率が基材(12)の熱収縮率以下のものを用いるようにした請求項1〜4の何れか一項に記載の炭素化フォームの製造方法。
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