JP4805234B2 - 経口固形医薬 - Google Patents

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Description

本発明は排尿障害治療用経口固形医薬に関するものである。詳しくは、活性成分として、α−アドレナリン受容体(以下、α−ARという)遮断作用を有する、式(I):
で表されるインドリン化合物(以下、KMD−3213という)、そのプロドラッグ、若しくはそれらの薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物
を含有する排尿障害治療用医薬であって、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)で、水を試験液とし、回転数を50回/分とする溶出試験における85%溶出時間が60分以下である経口固形医薬に関するものである。
本発明はまた、活性成分として、KMD−3213、そのプロドラッグ、若しくはそれらの薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物の他に、さらに、KMD−3213以外のα−アドレナリン受容体遮断薬、抗コリン薬、抗炎症薬および抗菌薬の群から選ばれる少なくとも1種を含有する排尿障害治療用医薬であって、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)で、水を試験液とし、回転数を50回/分とする溶出試験における85%溶出時間が60分以下である経口固形医薬に関するものである。
本発明はさらに、活性成分としてKMD−3213、そのプロドラッグ、若しくはそれらの薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物を含有する排尿障害治療用医薬であって、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)で、水を試験液とし、回転数を50回/分とする溶出試験における85%溶出時間が60分以下であり、且つ、KMD−3213以外のα−アドレナリン受容体遮断薬、抗コリン薬、抗炎症薬および抗菌薬の群から選ばれる少なくとも1種を活性成分として含有する医薬とを組み合わせて使用できる経口固形医薬およびその組み合わせによりなるキット医薬に関するものである。
本発明の排尿障害治療用経口固形医薬は、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)で、水を試験液とし、回転数を50回/分とする溶出試験における85%溶出時間(以下、T85%という)が60分以下であればよいが、試験液を日本薬局方崩壊試験法試験液第1液(以下、第1液という)とし、回転数を50回/分とする溶出試験におけるT85%も60分以下であることが望ましく、試験液を水または第1液とし、回転数を50回/分とする溶出試験のいずれにおいても、T85%が30分以下であるものがより望ましく、T85%が15分以下であるものが最も望ましい。
本発明の溶出試験において用いられる試験液の第1液とは、日本薬局方崩壊試験法の試験液第1液を意味し、塩化ナトリウム2.0gに塩酸7.0mlおよび水を加えて1000mlにした試験液である。
本発明の排尿障害治療用経口固形医薬に活性成分として含有されるKMD−3213は、選択的な尿道平滑筋収縮抑制作用を有し、強力な血圧低下作用または起立性低血圧を惹起することのない排尿困難治療剤として極めて有用な化合物であることが知られている。
これまで、KMD−3213またはその薬理学的に許容される塩またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物を包含する当該化合物を活性成分として含有する医薬品組成物については、KMD−3213を含む一般式で表されるインドリン化合物に関する特許出願明細書において、インドリン化合物全体を対象とした一般的な記載の中で、経口固形製剤の剤形が例示され、一般の製剤学的手法で調製できると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、本特許文献1にはKMD−3213を有効成分として含む製剤に関する具体的な記載は全くなされていない。
また、KMD−3213を含むα−AR遮断薬を有効成分として含有する下部尿路症治療剤に関する特許出願明細書において、医薬品組成物に関する一般的な記載の中で、経口固形製剤の剤形が例示され、医薬品添加物の例示と共に、公知方法によって製造できると記載されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、本特許文献2にも、KMD−3213を活性成分として含有する医薬品組成物に関する具体的な記載は全くなされていない。
KMD−3213は光に対して比較的不安定であり、また、医薬品添加物の種類によっては配合変化を起こして分解物を生じやすく、さらに、賦形剤として最も一般的な乳糖との相性も悪く、乳糖を使用した場合、良好な溶出特性が得られにくく、錠剤の硬度が低くなるなどの問題を有している。また、KMD−3213は付着性が強く、錠剤またはカプセル剤の製造において滑沢剤が不可欠である一方で、この滑沢剤添加による溶出時間の遅延を生じやすいなどの問題を有している。従って、KMD−3213若しくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物を含有する経口固形医薬は、通常の製造方法によっては、実用に供されうる製剤を製造することが困難である。
特許文献1および特許文献2にはこれらの問題点についても、それを解決する方法についても全く報告も示唆もされていない。また、特許文献2には、塩酸タムスロシンまたはアルフゾシン塩酸塩を有効成分として含有するカプセル剤の製造方法が記載されているが、本発明の医薬組成物とは組成を全く異にするものであり、当該製造方法では本発明の医薬を得ることはできず、さらに、当該発明に基づいて当業者が本発明を成すことができるものではない。
特開平6−220015号公報(第12頁、第21欄) 特開2001−288115号公報(第3頁、第3〜4欄)
本発明の目的は、血圧に対する影響が少なく、排尿障害治療剤として極めて有用な、KMD−3213、そのプロドラッグ、若しくはそれらの薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物を活性成分として含有する医薬であって、活性成分の含有量の精度がよく、安定でしかも溶出特性が優れた、実用的な経口固形医薬を提供することである。
経口医薬では活性成分をいかに効率よく体内に吸収させるかが重要な問題になるが、一方で、常に一定の効果を発揮させることも重要である。このため、製造ロット間の均質性、すなわち、各製剤間で、生物学的同等性を確保することが求められる。薬局方には、一定水準の品質と生物学的同等性の管理基準として、固形製剤の崩壊性および溶出性の試験方法が規定されており、医薬品は、それらの試験に基づいて設定された規格に適合することが求められている。
最近では、溶出試験が有効性および安全性を予測する手段として重要視されるようになっており、特に難溶性薬剤では崩壊性よりも溶出性が意義のある品質特性と考えられている。
溶出試験は、生物学的同等性確保の点からできるだけ多くの試験条件で行う方が望ましいが、現実には多くの条件下での規格設定は困難であるため、生物学的非同等性を最も捉えやすい試験条件で試験される。溶出試験の試験液としては、生理学的変動範囲のpH試験液(pH1〜7)または水が用いられるが、通常、溶出速度が遅い、すなわち溶出性が悪い試験液の方が製剤間の差を検出しやすい。また、水はpHが変動しやすいという欠点をもつ一方で、処方、製法の差に鋭敏に反応しやすい試験液であり、水で試験できる場合はできるだけ水を使用することが、試験効率、経済性、環境面などから推奨されている。
KMD−3213は酸性の液には比較的溶解性が高いが、中性の水には難溶であることから、水における溶出試験が最も生物学的非同等性を捉えやすい条件といえる。従って、KMD−3213を有効成分として含有する経口固形製剤については、水における溶出特性が良好な製剤が求められる。本発明の医薬においては、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)で、水を試験液とし、回転数を50回/分とする溶出試験において少なくともT85%が60分以下であることが望ましく、T85%が30分以下であることがより望ましく、T85%が15分以下であることが最も望ましい。
また、経口固形製剤の場合、酸に対して不安定であることなどにより腸溶性製剤が求められるなどの特別の場合を除き、胃内での溶出性が良好であることが望まれるが、KMD−3213は酸に対して安定であるので、KMD−3213を有効成分として含有する経口固形製剤については、胃液に相当する第1液における溶出試験においても良好であることが望ましい。具体的には、第1液における溶出試験においても、水における溶出試験と同様に、少なくともT85%が60分以下であることが望ましく、T85%が30分以下であることがより望ましく、T85%が15分以下であることが最も望ましい。
医薬品において含有される活性成分は、一般的に、微量で強い作用効果を発揮するため、常に一定の効果を発揮させるためには、活性成分の含有量が一定であることは勿論のこと、保存における活性成分の含有量の低下を最小限に抑えることが重要であり、このために製剤ロット間での含有量のバラツキがなく、且つ、保存における安定性が高いことが求められる。
本発明の経口固形医薬に活性成分として含有されるKMD−3213は付着性が強く、また静電気を帯びやすく、特に、乾式法で製造する場合、製剤製造における粉砕、攪拌混合、造粒等の操作における物理的刺激により容易に帯電して、粉砕物、混合物または造粒物の流動性が低くなり、操作性が悪く、しかも充填量がばらついて活性成分含有量の精度が低くなる等の問題を生じやすい。
また、カプセル剤および錠剤の場合、操作性や充填精度などの面から、充填工程または打錠工程において滑沢剤が添加される。特に本発明の経口固形医薬に活性成分として含有されるKMD−3213は付着性が強いため、滑沢剤の添加が必須であるが、この滑沢剤添加によっても溶出時間の遅延を生じる。
さらに、本発明の経口固形医薬に活性成分として含有されるKMD−3213は光に対して比較的不安定なため取扱いに注意を要し、通常の製剤の場合、遮光包装での保存が必須であるが、不透明の遮光包装の場合、異物等の混入の判別が困難であり、さらに、実際に服用する患者は、遮光包装から取り出した状態で保管することも予想されるため、遮光包装の必要のない光安定性の高い製剤が望まれる。
本発明者らは、排尿障害治療剤として極めて有用な、KMD−3213、そのプロドラッグ、若しくはそれらの薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物を活性成分として含有する薬剤であって、含有量の精度がよく、水、または水および第1液における溶出特性が優れ、しかも、安定性が高い、経口固形医薬を開発すべく鋭意研究を行った。
その結果、賦形剤として一般的に用いられる乳糖は、溶出時間を遅延させる傾向があり、また、錠剤の硬度が低くなるなどの問題点が多く、賦形剤として乳糖を使用した場合、好適な製剤が得られにくいことを見出した。本発明者らは、賦形剤について鋭意検討を加えた結果、賦形剤としてD−マンニトールを使用することによって極めて良好な溶出特性が確保できることを見出した。
本発明者らは、さらに製剤の製造方法について検討を加え、湿式法により顆粒を調製し、滑沢剤の添加量と混合時間を調整することにより、静電気の帯電による充填量のばらつきを生じることなく、安定でしかも溶出特性の優れた製剤が得られること、特にカプセル剤の場合は、固形の親水性あるいは界面活性作用を示す添加剤と滑沢剤とを特定の比率で混合して添加することにより溶出特性の優れた製剤が得られること、さらに、製剤の光安定性について、KMD−3213の光分解性に対して酸化チタンが極めて良好な防止効果を示し、酸化チタンを配合したカプセルまたは酸化チタンを配合したコーティング剤を用いることにより光安定性の高い製剤が得られること、等の知見を得、本発明を成すに至った。
活性成分として含有される化合物は比較的不安定であることが多く、固形製剤の製造に使用される各種医薬品添加物の種類によっては相互作用を起こし、変色あるいは分解等を生じる可能性があるため、使用できる医薬品添加物に制限があるが、その適否を予測することは困難である。
この事から先ず、本発明の医薬に活性成分として含有されるKMD−3213について、固形製剤の製造で使用される各種医薬品添加剤との相互作用について確認試験を行い、変色あるいは分解等を生じさせない医薬品添加剤を選別し、次いで、それらの組み合わせおよび製造上の適否についてさらに検討を行った。
先ず賦形剤について検討した結果、最も一般的に用いられる乳糖は、配合変化は起こさないものの溶出特性を低下させる傾向があり、さらには錠剤の硬度が低くなるなど、問題点が多く、好適な製剤を得ることが困難であった。この乳糖による溶出遅延は結晶セルロースを添加することによって改善できるものの、錠剤の硬度は改善されず、しかも結晶セルロースはKMD−3213と相互作用を起こして分解物が生じやすいなどの問題点があり、本発明の経口固形医薬においては不適である。本発明者はさらに検討を進め、賦形剤については、D−マンニトールが相互作用も少なく、製造上の問題もなく、極めて良好な溶出特性を確保でき、最も好適であることを見出した。
また、崩壊剤では、カルボキシメチルセルロースカルシウムおよびカルボキシメチルセルロースは配合変化が大きく不適であり、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分α化デンプンなどが好適である。デンプンとしては、例えばコーンスターチなど、部分α化デンプンとしては、例えば「スターチ1500(登録商標)」(日本カラコン株式会社製)、「PCS(登録商標)」(旭化成株式会社製)などを挙げることができる。
結合剤では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースはいずれもある程度配合変化を起こし、好適ではない。
滑沢剤では、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクはいずれも特に配合変化を起こさず、使用可能である。
界面活性剤では、マクロゴール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシエチレン[105]ポリオキシプロピレン[5]グリコールおよびクエン酸トリエチルなどは配合変化が大きく不適である。
以上のような知見に基づいて良好と考えられる添加剤を選定し、通常の方法により製剤を製造すべく検討を行った。まず、操作が簡便で工程も少ない乾式法で製造したところ、粉砕、混合または造粒工程において、粉砕物、混合物または造粒物が静電気を帯びて流動性が低下し、特にカプセル剤の充填工程における操作性が極めて悪く、しかも充填量のバラツキが大きくなり、充填精度が低くなることが判明した。
このような、カプセル剤の充填工程または錠剤の打錠工程における操作性や充填精度を向上させるために滑沢剤が使用される。KMD−3213は元々付着性が強く、さらに、乾式法の場合、上記のように静電気の帯電も加わり、混合物または造粒物の流動性がさらに低下するため、滑沢剤がより多く必要となるが、この滑沢剤は一般に撥水性のため溶出時間の遅延を引き起こす。
本発明者らは、上記のような知見の下に、添加剤の種類、組み合わせ、使用比率、製造方法等につき鋭意検討を加え、製造工程における操作性もよく、含有量の精度も高く、溶出特性に優れ、KMD−3213の作用を効果的に発揮させうる、極めて実用性の高い製剤を得ることができた。
先ず、滑沢剤による溶出時間の遅延は、滑沢剤の使用量を抑え、混合時間を短縮することによってある程度改善できること、具体的には、滑沢剤の使用量を約1%以下、好ましくは約0.6〜約0.8%に抑え、短時間で、好ましくは約3分〜約5分で混合することによって良好な溶出特性を保持することができることを見出した。そこで、乾式法を湿式法に換えて造粒し、滑沢剤の使用量を約1%以下とし、混合時間を約3分とすることによって、混合物の流動性も良好で、操作性もよく、充填精度の高い製剤を製造することができた。
しかしながら、本発明の医薬に活性成分として含有されるKMD−3213は付着性が強いため、特にカプセル剤については、滑沢剤を約1%以下に抑えた場合、スティッキングなどの充填障害を起こす可能性が高く、滑沢剤を約1%以下に抑えることには危険性が伴う。このことから、滑沢剤を約1%以上添加した場合でも溶出時間遅延を改善できる方法を見出すべくさらに検討した結果、固形の親水性または界面活性作用を示す添加剤を加えることにより溶出時間の遅延が顕著に抑えられ、良好な溶出特性を持つ製剤を製造できることを見出した。
この添加剤の溶出時間遅延改善効果は滑沢剤との組み合わせによって異なり、例えば滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを使用した場合、ラウリル硫酸ナトリウムが最も好ましく、ショ糖脂肪酸エステル類、軽質無水ケイ酸、ポリオキシエチレン[105]ポリオキシプロピレン[5]グリコールなどでは効果が弱い。ラウリル硫酸ナトリウムは、ステアリン酸マグネシウム1部に対して約2〜約0.1部、好ましくは約0.5部の添加で十分な改善効果を発揮し、良好な溶出特性を維持することができる。
また、ラウリル硫酸ナトリウム添加による溶出時間遅延改善効果は添加方法によって大きく異なり、顆粒製造工程においてラウリル硫酸ナトリウムを水に溶解し、結合水と合わせて添加(以下、顆粒内添加という)すると、溶出試験開始直後(5分値)の溶出率が低くなる傾向がある。この立ち上がりの遅延を解消すべく検討した結果、ラウリル硫酸ナトリウムを、顆粒製造後滑沢剤と合わせて添加(以下、後末添加という)することにより解消できる事を見出した。
本発明の経口固形医薬に活性成分として含有されるKMD−3213は光に対して比較的不安定で、保存方法によっては経時的に活性成分の含有量が減少するため、保存及び取扱いに注意を要する。従って、通常の製剤の場合、遮光性の包装での保存が必須であるが、不透明の包装では異物等の混入の判別が困難で、不良品の検査に支障をきたす危険性が高く、さらに、実際に服用する患者は、遮光包装から取り出した状態で保管することも予想されるため、遮光包装の必要のない光安定性の高い製剤が望まれる。
このため、カプセルまたはコーティング剤に配合させるに好適な遮光性物質について検討した結果、遮光性物質としては酸化チタンが最も好適であり、酸化チタンを配合したカプセルまたは酸化チタンを配合したコーティング剤を使用することによって、極めて良好な、光安定性の高いカプセル剤または錠剤を製造できることを見出した。
光安定性は、各光分解物(類縁物質、以下類縁物質という)の量(%)および全類縁物質の総量(%)について各々上限規格を設定し、基準曝光量における類縁物質の生成量が設定規格以下であるかなどによって判定される。病院薬局の照明の基準は、JIS規格に、300〜750ルクス/時間とされている。照射時間は1日平均約8時間程度と考えられ、医薬品の保存期間は最大6ヶ月と考えられる事から、基準曝光量としては、光量を最大値の750ルクス/時間とし、1日の照射時間を約8時間とした時の、180日間の曝光に相当する約108万ルクス/時間の曝光量に、測定誤差を考慮した約120万ルクス/時間程度とされている。一方、医療用医薬品のガイドラインには、光安定性試験の曝光量として、総照度120万ルクス/時間以上とされている。従って、医療用医薬品の場合、この約120万ルクス/時間の曝光量での安定性試験において安定であることが求められる。
本発明の経口固形医薬に活性成分として含有されるKMD−3213については約6種の類縁物質が確認されているが、暫定的に規格を、その中の最大の類縁物質aが4%以下、それ以外の類縁物質b〜fが各々1%以下で、その他の微量の類縁物質を含めた全類縁物質の総量が5%以下と設定し、約120万ルクス/時間の曝光量で適合できる遮光性を有するカプセルまたはコーティング剤を製造すべく検討を行った。
その結果、遮光性物質として酸化チタンが最も好適であり、酸化チタンを配合したカプセルまたはコーティング剤を使用することにより光安定性の高い固形医薬を製造できることを見出した。
酸化チタンの配合量は多い程遮光性は高くなるが、特にカプセルの場合、配合量が多くなるとカプセルの強度が低下する。好適な配合量は、製剤の大きさなどにより適宜決定される。例えばカプセルの場合、約3%以上、好適には約3.4〜3.6%配合する事により好適な遮光性を発揮することができる。錠剤の場合は、錠剤の表面積、コーティング剤の量などにより決定されるが、概ね、錠剤の表面積に対して0.5mg/平方cm以上,好適には1.1mg/平方cm以上コーティングすることにより好適な遮光性を発揮することができる。
これまで、KMD−3213、若しくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物を活性成分として含有する医薬品組成物については、例えば、特許文献1または特許文献2のように、極めて一般的な記載がなされているにすぎず、具体的には全く報告されていない。
しかしながら、上記のとおり、活性成分としてKMD−3213、若しくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物を含有する経口固形医薬は、一般的な製造方法で調製した場合、問題点が多く、実用に供されうるものではない。特許文献1または特許文献2にはこれらの問題点についても、それを解決する方法についても全く報告も示唆もされていない。
本発明の経口固形医薬において活性成分として含有されるKMD−3213は公知の化合物であり、文献記載の方法、たとえば特許文献1記載の方法により製造することができる。
本発明の経口固形医薬において活性成分として含有されるKMD−3213の薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸との酸付加塩、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸などの有機酸との酸付加塩を挙げることができる。また、溶媒和物としては、水またはエチルアルコールなどとの溶媒和物を挙げることができる。
本発明の経口固形医薬、例えば、カプセル剤は以下のようにして製造することができる。すなわち、KMD−3213、若しくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物に、賦形剤、好ましくはD−マンニトールを加え、さらに必要に応じて適当な結合剤および崩壊剤を加え、適当な濃度の結合剤の水溶液を加えて練合し、必要に応じ篩過して顆粒を製し、これに滑沢剤、好ましくは0.5〜2.0%のステアリン酸マグネシウム、および固形の親水性または界面活性作用を示す添加剤、好ましくはラウリル硫酸ナトリウムを、使用比率10:1〜10:20、さらに好ましくは10:5〜10:10、なおさらに好ましくは10:5の割合で加えて混合し、適当なカプセル、好ましくは酸化チタンを約3%以上、さらに好ましくは約3.4〜3.6%配合したカプセルに充填して製造する。
また、錠剤は以下のようにして製造することができる。すなわち、カプセル剤と同様にして顆粒を製し、これに滑沢剤、好ましくはステアリン酸マグネシウムを、使用量1%以下、好ましくは約0.6〜約0.8%、さらに好ましくは約0.7%加えて混合し、一般的な方法により打錠して素錠を製造する。さらに、適当な溶媒に、フィルムコーティング剤、遮光剤、好ましくは酸化チタン、および可塑剤を加え、また必要に応じて適当な滑沢剤、凝集防止剤、着色剤を加えて溶解または分散させてコーティング溶液を製し、これを素錠に噴霧コーティングして製造する。酸化チタンの量は、錠剤の表面積に対して0.5mg/平方cm以上,好適には1.1mg/平方cm以上であれば十分である。
KMD−3213は、α−AR遮断作用を有し、しかも血圧に対する影響が少なく、前立腺肥大症等に起因する排尿障害の治療剤として極めて有用な化合物である。また、α−AR遮断作用を有する塩酸プラゾシンや塩酸タムスロシンが膀胱頸部硬化症、慢性前立腺炎、神経因性膀胱などの排尿障害に有効であることも報告されている。
従って、KMD−3213は、前立腺肥大症、尿道狭窄、尿道結石や腫瘍など(以下、前立腺肥大症等という)の尿道の器質的閉塞に伴う排尿障害はいうまでもなく、排尿支配神経の異常に伴う排尿障害およびその何れにも該当しない、膀胱頸部硬化症、慢性前立腺炎、不安定膀胱などの尿道の機能的閉塞に伴う排尿障害の治療剤として期待できる。
排尿支配神経の異常に伴う排尿障害とは、脳血管障害や脳腫瘍などの脳障害、脊髄損傷などの脊髄障害、糖尿病、腰部脊柱管狭窄症などの末梢神経障害などによる尿道または膀胱の支配神経の不調によって生じる排尿障害であり、男女共通に生じ、神経因性膀胱と総称される。
また、尿道の器質的障害及び排尿支配神経の異常がなく、尿道の機能的閉塞に伴う排尿障害とは、上記の膀胱頸部硬化症、慢性前立腺炎、不安定膀胱のほか、排尿困難症、膀胱頸部閉塞症、尿道症候群、排尿筋−括約筋協調不全、慢性膀胱炎、前立腺痛、ヒンマン(Hinman)症候群、ファウラー症候群、心因性排尿障害、薬剤性排尿障害、加齢による排尿障害などであり、下部尿路症と総称される。
本発明の医薬は前記したように、活性成分の含有量の精度が高く、しかも溶出特性に優れており、KMD−3213の作用を効果的に発揮させることができる。従って、本発明の医薬は、尿道の器質的閉塞に伴う排尿障害の前立腺肥大症等、排尿支配神経の異常に伴う排尿障害の神経因性膀胱または尿道の機能的閉塞に伴う排尿障害の下部尿路症の治療剤として極めて有用である。
本発明の上記医薬を実際の治療に使用する場合、活性成分の投与量は、患者の性別、年齢、体重、疾患の程度等によって適宜決定されるが、概ね成人1日あたり、1〜50mg、好ましくは4〜20mgの範囲で投与する。
本発明の医薬には、活性成分として、KMD−3213、若しくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物の他に、さらにKMD−3213以外のα−AR遮断薬、抗コリン薬、抗炎症薬および抗菌薬の群から選ばれる少なくとも1種を含有させてもよい。
本発明の医薬はさらに、KMD−3213以外のα−AR遮断薬、抗コリン薬、抗炎症薬および抗菌薬の群から選ばれる少なくとも1種を活性成分として含有する医薬と組み合わせて使用してもよい。
このような場合、活性成分として含有させるKMD−3213、若しくはその薬理学的に許容される塩、またはそれらの薬理学的に許容される溶媒和物およびKMD−3213以外のα−AR遮断薬、抗コリン薬、抗炎症薬および抗菌薬の使用量を適宜低減してもよい。
本発明の内容を以下の試験例および実施例によりさらに詳細に説明する。
試験例1
配合変化確認試験
KMD−3213および経口固形製剤の製造に用いられる各種医薬品添加物について、使用量の多い賦形剤、崩壊剤および結合剤は1:1、使用量の少ないその他の添加剤は10:1の比率で混合し、下記(1)及び(2)の保存条件で保存した後、配合変化を確認した。なお、分解物は下記HPLC分析方法により定量し、変色は肉眼観察で行った。
保存条件
(1)温度60℃、相対湿度80%、3週間
(2)温度40℃、相対湿度75%、4ヶ月間
HPLC分析方法
KMD−3213 5mgに相当する混合末を採り、メタノール10mLに溶かし、振とう器を用いて10分間振とうした。この液4mLを採り、メタノールを加えて5mLとした液を、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液を試料溶液とした。
試料溶液5μLにつき、次の条件でHPLC測定を行ない、溶媒ピークを除いた総ピーク面積に対する各類縁物質ピーク面積の百分率を求めた。
HPLC測定条件
測定波長:225nm
カラム:Capcell Pack C18 UG120(株式会社資生堂)
カラム温度:約25℃
移動相:リン酸2水素カリウム6.8gとリン酸1水素2ナトリウム・12水塩17.9gに水を加えて全量を1000mLとした液と、アセトニトリルとの7:3の混合溶液。
液量:1.0mL/分
測定時間:40分
結果は、(1)の保存条件での結果が表1に示すとおりであり、(2)の保存条件での結果が表2に示すとおりである。
表1および表2に示すとおり、賦形剤ではD−マンニトールが最も好ましく、結晶セルロースは配合変化を起こし不適であった。崩壊剤ではデンプン(コーンスターチ)が最も好ましく、カルボキシメチルセルロースカルシウムおよびカルボキシメチルセルロースは配合変化が大きく不適であった。結合剤のヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースはいずれもある程度配合変化を起こし、あまり良好な結果でなかった。界面活性剤のマクロゴール、ポリオキシエチレン[105]ポリオキシプロピレン[5]グリコールおよびクエン酸トリエチルなどは配合変化が大きく不適であった。
試験例2
ステアリン酸マグネシウムの混合時間と溶出時間遅延作用確認試験
賦形剤としてD−マンニトールを、崩壊剤として部分α化デンプン「スターチ1500(登録商標)」(日本カラコン株式会社製)をそれぞれ選択し、滑沢剤のステアリン酸マグネシウムを約1%添加したときの、混合時間と溶出時間遅延との相関について確認した。
表3に示す処方によりカプセル剤を製造し、以下の溶出試験方法により、溶出時間を測定した。
溶出試験方法
被験製剤1個をシンカーに入れて容器の中央底部に沈め、試験液に精製水500mLを用い、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)により、回転数50回/分で試験を行い、試験開始後5分、10分、15分、20分および30分後に溶出液5mLを採取し、直ちに同容量の試験液を補充した。採取した溶出液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、最初のろ液4mLを除いた残りのろ液1mLを試料溶液とした。
別に、KMD−3213標準品約0.01gを精密に量り、精製水に溶解し、正確に100mLとした。この液8mLを正確に量り、精製水を加えて正確に100mLとし、標準液とした。
試料溶液および標準液100μLにつき下記条件で液体クロマトグラフ測定を行い、試料溶液および標準液のKMD−3213のピーク面積から溶出率を算出した。なお、溶出率は、各製剤について無作為に6個抽出して試験を行い、その平均を取った。
HPLC測定条件
測定波長:270nm
カラム:Inertsil ODS−3(ジーエルサイエンス株式会社)
カラム温度:約25℃
移動相:リン酸2水素ナトリウム2水塩3.9gおよび希リン酸水溶液(1→20)2.5mLに水を加えて全量1000mLとした液と、アセトニトリルとの5:2混合溶液
液量:1.0mL/分
なお、ステアリン酸マグネシウムを添加した処方(処方B)については、混合時間1分(処方B・1分)、3分(処方B・3分)および7分(処方B・7分)の時点でそれぞれ混合物を取り出し、カプセルに充填した。また、カプセル充填は手充填により行った。
試験結果は図1に示すとおりである。図1に示すとおり、処方B・1分でも多少の溶出時間の遅延が認められ、処方B・3分ではかなりの溶出時間の遅延が認められた。
試験例3
ステアリン酸マグネシウムの溶出時間遅延に対する各種添加剤の作用確認試験
各種添加剤について、カプセル剤における、滑沢剤のステアリン酸マグネシウム約1%添加による溶出時間遅延に対する改善作用の確認試験を行った。試験例2における処方Bに、ステアリン酸マグネシウムと同量の各種添加物を加えた処方(表4)によりカプセル剤を製造し、試験例2と同様の溶出試験方法により、溶出時間を測定した。
なお、各添加剤は、顆粒製造後、ステアリン酸マグネシウムと合わせて添加する後末添加法によった。また、混合時間は5分とした。
試験結果は図2に示すとおり、ラウリル硫酸ナトリウム(処方C)のみがステアリン酸マグネシウム添加による溶出時間遅延を殆ど解消し、ステアリン酸マグネシウム無添加(処方A)とほぼ同等の溶出特性を示した。
試験例4
ステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウム配合比率と溶出特性確認試験
ステアリン酸マグネシウム添加による溶出時間遅延に対し良好な改善効果を示したラウリル硫酸ナトリウムについて、配合比率と溶出特性改善効果の相関を確認した。表5に示す処方によりカプセル剤を製造し、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)により、水における溶出時間を測定した。以下の溶出試験方法により、溶出時間を測定した。なお、HPLC測定条件は試験例2と同じである。
溶出試験方法
被験製剤1個をシンカーに入れて容器の中央底部に沈め、試験液に精製水900mLを用い、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)により、回転数50回/分で試験を行い、試験開始後5分、10分、15分、20分および30分後に溶出液5mLを採取し、直ちに同容量の試験液を補充した。採取した溶出液を遠心分離(3000回/分、5分以上)した後,その上澄みに濃塩酸10μLを加え試料溶液とした。
別に、KMD−3213標準品約0.01gを精密に量り、0.1N塩酸に溶かし、正確に100mLとした。この液2mLを正確に量り、0.1N塩酸を加えて正確に100mLとし、標準液とした。
なお、各添加剤は、顆粒製造後、ステアリン酸マグネシウムと合わせて添加する後末添加法とし、混合時間は5分とした。
また、溶出率は、各製剤について無作為に6個抽出して試験を行い、その平均を取った。
試験結果は図3に示すとおり、ステアリン酸マグネシウムに対しラウリル硫酸ナトリウム約10%添加(処方I)で良好な溶出特性改善効果を発揮し、溶出時間遅延を殆ど解消できた。
実施例1
KMD−3213 2.0mg含有カプセル剤
KMD−3213 2.0部、D−マンニトール 134.4部、部分α化デンプン「PCS(登録商標)」(旭化成株式会社製) 26.0部および部分α化デンプン「スターチ1500(登録商標)」(日本カラコン株式会社製) 9.0部の混合物をよく混合し、これに適量の水を加えて練合し、造粒した。造粒物を流動層造粒乾燥機により、給気60℃で排気40℃まで乾燥し、篩過して顆粒を製した。これにステアリン酸マグネシウム 1.8部およびラウリル硫酸ナトリウム 1.8部の混合物を添加し、5分間混合し、カプセルに充填して、1カプセル中2.0mgのKMD−3213を含有するカプセル剤を製した。
実施例2
KMD−3213 4.0mg含有カプセル剤
KMD−3213 4.0部、D−マンニトール 132.4部、部分α化デンプン「PCS(登録商標)」(旭化成株式会社製) 26.0部および部分α化デンプン「スターチ1500(登録商標)」(日本カラコン株式会社製) 9.0部の混合物をよく混合し、これに適量の水を加えて練合し、造粒した。造粒物を流動層造粒乾燥機により、給気60℃で排気40℃まで乾燥し、篩過して顆粒を製した。これにステアリン酸マグネシウム 1.8部およびラウリル硫酸ナトリウム 1.8部の混合物を添加し、5分間混合し、カプセルに充填して、1カプセル中4.0mgのKMD−3213を含有するカプセル剤を製した。
実施例3
KMD−3213 4.0mg含有錠剤
KMD−3213 4.0部、D−マンニトール 117.0部、コーンスターチ 7.0部および低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(「L−HPC(登録商標)」、信越化学株式会社製) 7.0部の混合物をよく混合し、これに約12%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液(ヒドロキシプロピルセルロース 4.0部、水 約30部)を加えて練合し、造粒した。造粒物を流動層造粒乾燥機により、給気60℃で排気40℃まで乾燥し、乾燥後粉砕、整粒し、篩過して顆粒を製した。これにステアリン酸マグネシウム 1.0部を添加し、3分間混合し、打錠して素錠を製し、コーティング剤でコーティングして1錠中4.0mgのKMD−3213を含有する錠剤を製した。
試験例5
溶出時間確認試験
実施例1〜3の製剤について、以下の溶出試験方法により、溶出時間を測定した。なお、HPLC測定条件は試験例2と同じである。
溶出試験方法
被験製剤1個を、錠剤の場合はそのまま、カプセル剤の場合はシンカーに入れて容器の中央底部に沈め、試験液に精製水900mLを用い、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)により、回転数50回/分で試験を行い、試験開始後5分、10分、15分、20分および30分後に溶出液5mLを採取し、直ちに同容量の試験液を補充した。採取した溶出液を遠心分離(3000回/分,5分以上)した後,その上澄みに濃塩酸10μLを加え試料溶液とした。
別に、KMD−3213標準品約0.01gを精密に量り、0.1N塩酸に溶かし、正確に100mLとした。実施例1の製剤(2mg製剤)については、この液2mLを正確に量り、実施例2および3の製剤(4mg製剤)については、この液4mLを正確に量り、それぞれ0.1N塩酸を加えて正確に100mLとし、標準液とした。
試料溶液および標準液100μLにつき下記条件でHPLC測定を行い、試料溶液および標準液のKMD−3213のピーク面積から溶出率を算出した。なお、溶出率は、各製剤について無作為に6個抽出して試験を行い、その平均を取った。
HPLC測定条件
測定波長:270nm
カラム:Inertsil ODS−3(ジーエルサイエンス株式会社)
カラム温度:約25℃
移動相:リン酸2水素ナトリウム2水塩3.9gおよび希リン酸水溶液(1→20)2.5mLに水を加えて全量1000mLとし、この液とアセトニトリルとの5:2混合溶液
液量:1.0mL/分
結果は図4に示すとおり、実施例1〜3の全ての製剤において、撹拌時間10分で90%以上の溶出率を示し、T85%は10分以下であった。
試験例6
酸化チタン配合カプセルの光安定性試験
酸化チタン1.2%配合カプセル(カプセルA)、酸化チタン2.4%配合カプセル(カプセルB)および酸化チタン3.6%配合カプセル(カプセルC)を用い、実施例1記載の方法に従ってそれぞれのカプセルに充填したカプセル剤について光安定性試験を行った。対照として、酸化チタン1.2%配合カプセル(カプセルA)のPTP包装品をアルミ袋に入れて遮光したものを同様に試験した。
各カプセル剤について、試験開始前、約67.2万ルクス/時間の曝光後および約120万ルクス/時間の曝光後、内容物を取り出し、外観観測および光分解物(類縁物質)の定量を行った。なお、光分解物は下記HPLC分析方法により定量し、変色は肉眼観察で行った。
光分解物(類縁物質)定量試験
被験製剤5カプセルをとり、カプセルの内容物を50mLのメスフラスコに入れた。また内容物を取出したカプセルは移動相で2回洗浄し、この時の洗浄した液は内容物を入れたメスフラスコに入れた。メスフラスコ容量の約3分の2まで移動相を加え、15分間振とうを行った後、移動相で50mLとした。この液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、最初のろ液2〜3mLを除き、次のろ液を試料溶液とした。試料溶液25μLにつき、次の条件でHPLC測定を行ない、自動積分法により各ピークの面積を求め、KMD−3213ピーク面積に対する個々の類縁物質ピーク面積の百分率を算出した。
HPLC測定条件
測定波長:225nm
カラム:Inertsil ODS−3(ジーエルサイエンス株式会社)
カラム温度:約25℃
移動相:リン酸2水素ナトリウム2水塩3.9gおよび希リン酸水溶液(1→20)2.5mLに水を加えて全量1000mLとし、この液とアセトニトリルとの5:2混合溶液
流速:KMD−3213の保持時間を約7分に調整。
面積測定範囲:約30分間
結果は図5および表6に示すとおり、カプセルA(酸化チタン1.2%配合)では、約67.2万ルクス/時間の曝光量でも外観および類縁物質総量において設定規格に適合せず、カプセルB(酸化チタン2.4%配合)では、約120万ルクス/時間の曝光量で設定規格限界乃至は不適合であり、カプセルC(酸化チタン3.6%配合)では、120万ルクス/時間の曝光量でも外観および類縁物質総量共に安定で、設定規格に適合した。
本発明の経口固形医薬は、製造工程における操作性や含有量のバラツキなどの製造上の問題がなく、しかも溶出特性の優れた、実用性の高い排尿障害治療用経口固形製剤である。本発明の経口固形医薬は、カプセル剤または錠剤の充填工程あるいは打錠工程における操作性がよく、充填精度が高く、活性成分の含有量が一定であり、また、安定性もよく、活性成分の含有量の変化も少なく、さらには、最も難溶で、生物学的非同等性が最も捉えやすい水における、溶出試験において、一定で良好な溶出特性を示す、極めて優れた排尿障
害治療用経口固形製剤である。
図1は、ステアリン酸マグネシウムの混合時間と溶出時間遅延作用を示す図である。図中、−●−は処方A、−○−は混合時間1分の処方B(処方B・1分)、−□−は混合時間3分の処方B(処方B・3分)、−◇−は混合時間7分の処方B(処方B・7分)であり、また、縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は時間(分)を示す。 図2は、ステアリン酸マグネシウムの溶出時間遅延に対する各種添加剤の作用を示す図である。図中、−●−は処方A、−□−は処方B、−○−は処方C、−■−は処方D、−◆−は処方E、−△−は処方F、−◇−は処方Gであり、また、縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は時間(分)を示す。 図3は、ステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの配合比率と溶出特性の関係を示す図である。図中、−●−は処方H、−□−は処方I、−▲−は処方J、−○−は処方K、−◆−は処方Lであり、また、縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は時間(分)を示す。 図4は、実施例1〜3の各製剤の溶出特性を示す図である。図中、−○−は実施例1の製剤、−●−は実施例2の製剤、−△−は実施例3の製剤であり、縦軸は溶出率(%)を示し、横軸は時間(分)を示す。 図5は、酸化チタン配合カプセルにおける酸化チタン配合量と光安定性の関係を示す図である。図中、−●−は対照(遮光容器保存)、−△−はカプセルA(酸化チタン1.2%配合)、−■−はカプセルB(酸化チタン2.4%配合)、−○−はカプセルC(酸化チタン3.6%配合)であり、また、縦軸は全類縁物質総量(%)を示し、横軸は曝光量(千ルクス/時間)を示す。

Claims (6)

  1. (1)a)活性成分として式:
    で表される化合物、b)D−マンニトール、c)コーンスターチ、d)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、およびe)ヒドロキシプロピルセルロースを含有する造粒物と、(2)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクから選択される滑沢剤とを含有する素錠を遮光性コーティング剤でコーティングしてなる錠剤であって、該錠剤は、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)で精製水900mLを試験液とし、回転数を50回/分とする溶出試験における85%溶出時間が15分以下であり、遮光性コーティング剤として酸化チタンが錠剤の表面積に対して0.5mg/cm 以上の量でコーティングされることを特徴とする錠剤。
  2. 酸化チタンが錠剤の表面積に対して1.1mg/cm 以上の量でコーティングされる、請求項1記載の錠剤。
  3. 滑沢剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項記載の錠剤。
  4. 排尿障害を改善するために使用される、請求項1〜のいずれか一項記載の錠剤。
  5. (1)a)活性成分として式:
    で表される化合物、b)D−マンニトール、c)コーンスターチ、d)低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの混合物を、e)ヒドロキシプロピルセルロースの結合液を用いて湿式造粒する工程、
    (2)工程(1)で得られる造粒物と、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクから選択される滑沢剤を混合、圧縮成形する工程、および
    (3)工程(2)で得られた素錠を、遮光性コーティング剤として酸化チタンを錠剤の表面積に対して0.5mg/cm 以上の量でコーティングする工程を包含する、錠剤の製造方法であって、該錠剤が、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)で精製水900mLを試験液とし、回転数を50回/分とする溶出試験において、85%溶出時間が15分以下であることを特徴とする錠剤の製造方法。
  6. 素錠をコーティングする工程が、錠剤の表面積に対して1.1mg/cm 以上の酸化チタンを用いて行われる、請求項5記載の錠剤の製造方法。
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