JP4804615B2 - ビシクロヘプテン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、農薬、医薬の製造中間体、特に除草活性化合物の製造中間体として有用なビシクロヘプタン誘導体のシス異性体を、高選択的、高収率、かつ簡便に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式(3’)
【0003】
【化4】
【0004】
(式中、R1は水素原子又はC1〜C6アルキル基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立してC1〜C6アルコキシ基を表し、Xはハロゲン原子を表し、QはN、O若しくはS原子を1個〜4個含む、置換基を有してもよい5又は6員ヘテロ環基を表す。また、R2とR3が一緒になって、置換基を有していてもよいC2〜C3アルキレンジオキシ基を形成してもよい。)で表される化合物(以下、「ビシクロヘプテン誘導体」という。)は、農薬、医薬の製造中間体、特に除草活性化合物の製造中間体として有用である(例えば、WO97/41117号公報、WO98/31681号公報参照)。
【0005】
このビシクロヘプテン誘導体は、下記に示すように一般式(1)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物(以下、「シクロペンタジエン誘導体」という。)との、Diels−Alder反応によって製造することができる(WO00/03988号公報参照)。
【0006】
【化5】
【0007】
(式中、R1、R2、R3、X及びQは前記と同じ意味を表す。また、R1及びQが共にエンド位に付加したものを「シス異性体(Cis)」、R1がエキソ位にQがエンド位に付加した異性体を(Trans−1)、R1がエンド位にQがエキソ位に付加した異性体を(Trans−2)という。)
これらの立体異性体のうちで、農薬、医薬の製造中間体、特に上記WO97/41117号公報、WO98/31681号公報等に開示される除草活性化合物の製造中間体として有用なものはシス異性体である。したがって、上記反応においてはシス異性体を効率よく製造することが必要である。
【0008】
ところで、一般式(1)で表される化合物のごときエン類と、一般式(2)で表される化合物のごときジエン類とのDiels−Alder反応においては、一般的に、エン類の(Z)異性体からは6員環環式化合物のシス異性体が、(E)異性体からはトランス異性体が主として生成することが知られている。したがって、一般式(1)で表される化合物の(Z)異性体のみを用いれば、一般式(3)で表されるようなビシクロへプテンのシス異性体が効率よく得られることになる。
【0009】
しかしながら、一般式(1)で表される化合物は、一般式(1)においてQがエステル基やアルデヒド基であって、合成及び入手が容易である(E)異性体を主成分とする原料化合物から製造される。したがって、一般式(1)で表される化合物も(E)異性体を多く含む異性体混合物として得られるが、該異性体混合物から(Z)異性体を分離して反応に用いることは、煩雑な分離工程が必要である。そのため、従来のビシクロヘプタン誘導体の製造方法(WO00/03988号公報等)においては、一般式(1)で表される化合物の異性体混合物とシクロペンタジエン誘導体とを反応させて、ビシクロヘプテン誘導体を異性体混合物として得ており、除草活性化合物の製造中間体として有用なビシクロヘプテン誘導体のシス異性体を収率よく製造することが困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、(E)異性体を多く含む一般式(1)で表される化合物を出発原料として用い、高選択的、高収率、かつ簡便にビシクロヘプタン誘導体のシス異性体を工業的に有利に製造する方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明者らは、一般式(1)で表される化合物とシクロペンタジエン誘導体とのDiels−Alder反応を詳細に検討した。その結果、一般式(1)で表される化合物の異性体のうち、(Z)異性体の方が(E)異性体よりもシクロペンタジエン誘導体との反応性が高いことを見出し、その現象を利用することによって、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は第1に、異性体モル比が(Z)異性体:(E)異性体=0:100〜10:90である一般式(1)
【0013】
【化6】
【0014】
(式中、R1は水素原子又はC1〜C6アルキル基を表し、QはN、O若しくはS原子を1個〜4個含む、置換基を有してもよい飽和又は不飽和の5若しくは6員ヘテロ環基を表す。)で表される化合物の異性体混合物を光照射することにより光異性化させて、異性体モル比が(Z)異性体:(E)異性体=1:9〜6:4である一般式(1)で表される化合物の異性体混合物を得る第1の工程と、
前記第1の工程で得られた異性体混合物と、前記一般式(1)で表される化合物の異性体混合物中に含まれる(Z)異性体に対して、0.5倍モル〜1.5倍モルの一般式(2)
【0015】
【化7】
【0016】
(式中、R2及びR3はそれぞれ独立してC1〜C6アルコキシ基を表し、Xはハロゲン原子を表す。また、R2とR3が一緒になって、置換基を有してもよいエチレンジオキシ、トリメチレンジオキシ基等のC2〜C3アルキレンジオキシ基を形成してもよい。)で表されるシクロペンタジエン誘導体とを、所定温度に加熱する第2の工程とを有する一般式(3)
【0017】
【化8】
【0018】
(式中、R1、R2、R3、X及びQは前記と同じ意味を表す。)で表されるビシクロヘプテン誘導体のシス異性体の製造方法を提供する。
【0019】
本発明は第2に、異性体モル比が(Z)異性体:(E)異性体=0:100〜10:90である前記一般式(1)で表される化合物の異性体混合物と、前記一般式(1)で表される化合物に対して、0.1倍モル〜1倍モルの前記一般式(2)で表されるシクロペンタジエン誘導体とを、光照射しながら所定温度に加熱することを特徴とする、前記一般式(3)で表されるビシクロヘプテン誘導体のシス異性体の製造方法を提供する。
前記第1及び第2の発明においては、光異性化反応の効率を高めるために、光増感剤の存在下に光照射を行うのが好ましい。
【0020】
第1の発明によれば、一般式(3)で表されるビシクロヘプテン誘導体のシス異性体を、高選択的、高収率、かつ簡便に製造することができる。
【0021】
また、第2の発明によれば、第1の発明のように2つの工程を経ることなく、目的とする一般式(3)で表されるビシクロヘプテン誘導体のシス異性体を高選択的、高収率、かつ簡便に製造することができる。
【発明の実施の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、一般式(1)で表される化合物であって、その異性体モル比が(Z)異性体:(E)異性体=0:100〜10:90である異性体混合物を出発原料とする。
先ず、一般式(1)で表される化合物を光照射して光異性化させる第1の工程について説明する。
【0023】
【化9】
【0024】
式中、R1は、水素原子、又はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル基等のC1〜C6アルキル基を表す。
【0025】
Qは、N、O若しくはS原子を1個〜4個含む、置換基を有してもよい飽和あるいは不飽和の5若しくは6員ヘテロ環基を表す。
【0026】
(A)5員飽和ヘテロ環基の具体例としては、
2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチエニル、3−テトラヒドロチエニル、
2−オキサゾリジニル、4−オキサゾリジニル、5−オキサゾリジニル、3−イソオキサゾリジニル、4−イソオキサゾリジニル、5−イソオキサゾリジニル、
2−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、5−チアゾリジニル、3−イソチアゾリジニル、4−イソチアゾリジニル、5−イソチアゾリジニル、
2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、
1,2,4−オキサジアゾリジン−3−イル、1,2,4−オキサジアゾリジン−5−イル、1,3,4−オキサジアゾリジン−2−イル、
1,2,4−チアジアゾリジン−3−イル、1,2,4−チアジアゾリジン−5−イル、1,3,4−チアジアゾリジン−2−イル、
1,3,4−トリアゾリジン−2−イル、
1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキソラン−4−イル、1,3−ジオキソラン−2−イル、1,3−ジオキソラン−4−イル、1,3−オキサチオラン−2−イル基等が挙げられ、
【0027】
(B)5員不飽和ヘテロ環基の具体例としては、
2−フリル、3−フリル、
2−チエニル、3−チエニル、2,3−ジヒドロフラン−2−イル、2,3−ジヒドロフラン−3−イル、2,3−ジヒドロフラン−4−イル、2,3−ジヒドロフラン−5−イル、2,5−ジヒドロフラン−2−イル、2,5−ジヒドロフラン−3−イル、
2,3−ジヒドロチオフェン−2−イル、2,3−ジヒドロチオフェン−3−イル、2,3−ジヒドロチオフェン−4−イル、2,3−ジヒドロチオフェン−5−イル、2,5−ジヒドロチオフェン−2−イル、2,5−ジヒドロチオフェン−3−イル、
【0028】
ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、
イミダゾール−2−イル、イミダゾール−4−イル、イミダゾール−5−イル、2−イミダゾリン−2−イル、2−イミダゾリン−4−イル、2−イミダゾリン−5−イル、
ピラゾール−3−イル、ピラゾール−4−イル、ピラゾール−5−イル、オキサゾール−2−イル、オキサゾール−3−イル、オキサゾール−4−イル、オキサゾール−5−イル、イソオキサゾール−3−イル、イソオキサゾール−4−イル、イソオキサゾール−5−イル、
1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,3−オキサジアゾール−4−イル、1,2,3−オキサジアゾール−5−イル、1,2,5−オキサジアゾール−3−イル、
【0029】
2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、
イソチアゾール−3−イル、イソチアゾール−4−イル、イソチアゾール−5−イル、
1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−イル、1,2,3−チアジアゾール−5−イル、1,2,5−チアジアゾール−3−イル、
1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,4−トリアゾール−5−イル、
1,3,4−トリアゾール−2−イル、1,2,3−トリアゾール−4−イル、
1,2,3−トリアゾール−5−イル、テトラゾール−5−イル、
2−ピロリン−1−イル、2−ピロリン−2−イル、2−ピロリン−3−イル、
2−ピロリン−4−イル、2−ピロリン−5−イル、
2−オキサゾリン−2−イル、2−オキサゾリン−4−イル、2−オキサゾリン−5−イル、3−オキサゾリン−2−イル、3−オキサゾリン−4−イル、3−オキサゾリン−5−イル、4−オキサゾリン−2−イル、4−オキサゾリン−4−イル、4−オキサゾリン−5−イル、
2−イソオキサゾリン−3−イル、2−イソオキサゾリン−4−イル、2−イソオキサゾリン−5−イル、
3−イソオキサゾリン−3−イル、3−イソオキサゾリン−4−イル、3−イソオキサゾリン−5−イル、
4−イソオキサゾリン−3−イル、4−イソオキサゾリン−4−イル、4−イソオキサゾリン−5−イル、
2−チアゾリン−2−イル、4−チアゾリン−4−イル、4−チアゾリン−5−イル、
2−イソチアゾリン−3−イル、2−イソチアゾリン−4−イル、2−イソチアゾリン−5−イル、
3−イソチアゾリン−3−イル、3−イソチアゾリン−4−イル、3−イソチアゾリン−5−イル、
4−イソチアゾリン−3−イル、4−イソチアゾリン−4−イル、4−イソチアゾリン−5−イル、
1−ピラゾリン−3−イル、1−ピラゾリン−4−イル、1−ピラゾリン−5−イル、
2−ピラゾリン−3−イル、2−ピラゾリン−4−イル、2−ピラゾリン−5−イル、
3−ピラゾリン−3−イル、3−ピラゾリン−4−イル、3−ピラゾリン−5−イル基等が挙げられ、
【0030】
(C)6員飽和ヘテロ環基の具体例としては、
2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、
2−ピペラジニル、
モルホリン−2−イル、モルホリン−3−イル、
5,6−ジヒドロ−4H−1,3−チアジン−2−イル、
2−テトラヒドロピラニル、3−テトラヒドロピラニル、4−テトラヒドロピラニル、
2−テトラヒドロチオピラニル、3−テトラヒドロチオピラニル、4−テトラヒドロチオピラニル基等が挙げられ、
【0031】
(D)6員不飽和ヘテロ環基の具体例としては、
2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、
3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、
5−ピリミジニル、
ピラジン−2−イル
2H−ピラン−3−イル、2H−チオピラン−3−イル基等が挙げられる。
【0032】
またこれらの基は、ヘテロ環の任意の位置に1又は2以上の同一若しくは異なる置換基を有してもよい。かかる置換基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル基等のC1〜C4アルキル基;クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル基等のC1〜C4ハロアルキル基;等を挙げることができる。
これらのうち、Qの好ましい具体例としては、次のQ−1〜Q−9
【0033】
【化10】
【0034】
で表される基が挙げられる。
上記式中、nは0、1又は2であり、R’は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル基等のC1〜C4アルキル基;クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル基等のC1〜C4ハロアルキル基;等を表す。
【0035】
前記一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記(a)〜(e)に示す文献に記載された方法に従って製造することができる。
(a) Chim.Ind.(Milan).,59(1)56(1977):3−(1−プロペニル)−1H−ピロールの製造
(b)Zh.Organ.Khim.,2,417(1996):5−(1−プロペニル)−イソオキサゾールの製造
(c)J.Org.Chem.,62,3671(1997):3−(1−プロペニル)−2−イソオキサゾリンの製造
(d)Heterocycles.,22(11),2475(1984):4−(1−プロペニル)ピリジンの製造
(e)Heterocycles.,29(1),103(1989):5−(1−プロペニル)−オキサゾールの製造
【0036】
上記一般式(1)で表される化合物の光異性化は、紫外線、可視光等を用いることができるが、好ましくは波長300nm〜700nmの近紫外線、可視光である。その光源としては、白熱球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等を用いることができる。また照射時間は通常5時間〜30時間、好ましくは10時間〜20時間である。また、光異性化の温度には特に制限はないが、通常、室温〜100℃である。
【0037】
上記光異性化においては、光化学平衡状態が存在すると考えられる。そのため、(E)異性体のすべてを(Z)異性体に異性化することはできない。一般的には、照射光の強度を強くすると、光化学平衡状態に到達するのが早くなり、また照射時間を長くすると、より光化学平衡状態に近くなる。照射光強度及び照射時間は適宜選択することができるが、本発明においては、(Z)異性体:(E)異性体=1:9〜6:4とした異性体混合物をそのまま次の反応に供することが出来る。
【0038】
また、この光異性化反応においては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン等の芳香族ケトン類等の、光増感剤を添加するとより円滑に反応が進行する。光増感剤の添加量は、一般式(1)で表される化合物1モル対して、0.001モル〜0.1モルが好ましい。
【0039】
この光異性化反応は無溶媒で行うことができるが、溶媒を用いて行うこともできる。用いられる溶媒としては、一般式(1)で表される化合物を溶解し、かつ、光に安定なものであれば特に制限ない。
用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族系炭化水素類;
エタノール、n−プロピルアルコール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含イオウ炭化水素;アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、あるいは二種以上の混合溶液として使用することができる。
【0040】
一般式(1)で表される化合物の異性体の存在比(異性体モル比)は、ガスクロマトグラフィーや1H−NMR等の分析手段により測定することができる。
一般式(1)で表される化合物の異性体混合物は、そのまま、あるいは溶媒を減圧留去して、次の反応に用いることができる。
【0041】
次に、得られた異性体混合物とシクロペンタジエン誘導体(2)とを反応させ、ビシクロヘプテン誘導体のシス異性体(3)を製造する第2の工程について説明する。
【0042】
【化11】
【0043】
一般式(2)で表されるシクロペンタジエン誘導体において、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子等が挙げられる。また、Xはすべてが同一のハロゲン原子であっても、それぞれ異なるハロゲン原子であってもよい。
R2及びR3はそれぞれ独立して、C1〜C6アルコキシ基を表す。C1〜C6アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ基等が挙げられる。また、R2とR3が一緒になって、エチレンジオキシ、トリメチレンジオキシ基等のC2〜C3アルキレンジオキシ基を形成してもよい。
さらに、前記C2〜C3アルキレンジオキシ基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル基等の置換基を有していてもよい。
これらの中でも、Xがすべて塩素原子であり、R2及びR3がメトキシ基、エトキシ基等の低級アルコキシ基である化合物が好ましい。
【0044】
この反応は、例えば、Tetrahedron.,42,1741(1986),J.Org.Chem.,26,2066(1961)等に記載された方法と同様にして行うことができる。
【0045】
この反応は、室温〜250℃、好ましくは70℃〜200℃、より好ましくは100〜130℃で行われる。また、反応温度を連続的に変化させることも可能である。また、例えば、最初110℃〜115℃で数時間保持した後、125℃〜135℃まで昇温し、そのままさらに数時間保持する等の反応温度を数段階に分けて行うこともできる。これにより、副生成物であるトランス体の生成を抑えることができる。
【0046】
上記反応は、第1の工程で得られた反応液に所定量のシクロペンタジエン誘導体を添加して、所定温度に加熱することにより行う。シクロペンタジエン誘導体の使用量は、第1の工程により得られた反応液に含まれる一般式(1)で表される化合物の(Z)異性体1モルに対し、0.1モル〜10モル、好ましくは0.5モル〜1モルである。
【0047】
この反応は、通常無溶媒で行われるが、溶媒を用いて行うこともできる。用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;エタノール、n−プロピルアルコール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含イオウ炭化水素類;アセトニトリル等が挙げられるが、これらは単独で、あるいは二種以上を混合して使用することが出来る。
【0048】
また、ヒドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジル、トリ−p−ニトロフェニルメチル等の重合防止剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基を添加することにより、反応をより円滑に行うことができる。重合防止剤、塩基の使用量は、一般式(1)で表される化合物1モルに対して0.0001モル〜0.1モルである。
【0049】
この反応は、一般式(1)で表される(Z)及び(E)異性体のうち、(Z)異性体がシクロペンタジエン誘導体と反応しやすい(反応速度が速い、又は反応性が高い)ということを利用したものである。即ち、第1の工程で得られる反応液には、10モル%〜60モル%の一般式(1)で表される化合物の(Z)異性体と、40モル%〜90モル%の(E)異性体が含まれているが、そこへ、(Z)異性体の存在量に見合うだけのシクロペンタジエン誘導体を添加し、加熱すると、(Z)異性体がシクロペンタジエン誘導体と優先的に反応して、ビシクロヘプテン誘導体のシス異性体を高収率、高選択的に与えるというものである。また、この反応は連続的におこなうことができるため、簡便であり、工業的に有利である。
【0050】
反応液には目的物のほかに反応に使用されなかった(E)異性体が含まれるが、未反応の(E)異性体は、光異性化反応に再利用することができる。
【0051】
以上のようにして、光異性化反応とDiels−Alder反応とを連続的に2つの工程で行わせることにより、ビシクロヘプテン誘導体のシス異性体を高選択的、高収率、かつ簡便に製造することができる。
【0052】
また、本発明においては、以上の反応を1つの工程で行わせることも可能である。即ち、異性体モル比が(Z)異性体:(E)異性体=0:100〜10:90である一般式(1)で表される化合物の異性体混合物と所定量の一般式(2)で表されるシクロペンタジエン誘導体とを、光照射下に所定温度に加熱することにより、ビシクロヘプテン誘導体のシス異性体を製造することもできる。
【0053】
シクロペンタジエン誘導体の使用量は、一般式(1)で表される化合物1モルに対して、0.1モル〜10モル、好ましくは0.1モル〜1モルである。より好ましくは、一般式(1)で表される化合物の光異性化の光化学平衡状態における(Z)異性体と(E)異性体の存在量を予め求めておき、その存在量に基づく(Z)異性体の量に見合うだけのシクロペンタジエン誘導体を添加し、加熱する。
【0054】
この反応は、室温〜250℃、好ましくは70℃〜200℃、より好ましくは100〜130℃で行われる。また、反応中に反応温度を変化させることも可能である。また、最初110℃〜115℃で数保持した後、125℃〜135℃まで昇温し、そのままさらに数5時間保持する等の反応温度を数段階に変化させて行わせることもできる。これにより、副生成物であるトランス体の生成を抑えることができる。
【0055】
この反応における光照射の条件や反応溶媒等は、前記第1の発明と同様にして行うことができる。また、前記第1の反応と同様、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン等の芳香族ケトン類等の光増感剤を添加すると、より円滑に反応が進行するので好ましい。
【0056】
反応は無溶媒で行うことができるが、溶媒を用いて行うこともできる。用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族系炭化水素類;エタノール、n−プロピルアルコール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含イオウ炭化水素;アセトニトリル等が挙げられるが、これらは単独で、あるいは二種以上を混合して使用してもよい
【0057】
また、ヒドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジル、トリ−p−ニトロフェニルメチル等の重合防止剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基の添加するのも、反応をより円滑に行わせる上で好ましい。
【0058】
以上のような方法により、1つの工程でビシクロヘプテン誘導体のシス異性体を高選択的、高収率、かつ、簡便に製造することができる。
【0059】
この反応においては、(E)異性体を多く含む一般式(1)で表される化合物を光異性化すると同時に、光異性化して生成した(Z)異性体が系内に存在するシクロペンタジエン誘導体と選択的に反応して、目的とするビシクロヘプテン誘導体のシス異性体を得るものである。
【0060】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明は下記実施例に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、一般式(1)〜(3)で表される化合物、溶媒の種類、用いる塩基の種類等を自由に変更することができる。
【0061】
(実施例1)
Cis−1,2,3,4−テトラクロロ−6−メチル−7,7−ジメトキシ−5−(2−オキサゾリン−3−イル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンの製造
【0062】
【化12】
【0063】
(Z)異性体を3モル%含む(E)−3−(1−プロペニル)−2−イソオキサゾリン111gをトルエン890mlに溶解させ、光増感剤としてベンゾフェノン9gを添加した。この溶液に、窒素気流下、高圧水銀ランプ(400W)にて10時間光照射した。反応液からトルエンを減圧留去することにより、(Z)異性体:(E)異性体=30:70(モル比)からなる異性体混合物111gを得た。なお、異性体の存在量は、ガスクロマトグラフィーにより測定して求めた。
【0064】
次いで、上記で得た異性体混合物111gに、1,1−ジメトキシ−2,3,4,5−テトラクロロシクロペンタジエン52.8g(0.2モル)を加え、110℃〜115℃で5時間、125℃〜130℃にて8時間反応させた。得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、Cis−1,2,3,4−テトラクロロ−6−メチル−7,7−ジメトキシ−5−(2−イソオキサゾリン−3−イル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンが、収率95%(シクロペンタジエン基準)で得られたことがわかった。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、農薬、医薬の製造中間体、特に除草活性化合物の製造中間体として有用なビシクロヘプタン誘導体のシス異性体を、高収率、高選択的、かつ簡便に製造することができる。
Claims (3)
- 異性体モル比が(Z)異性体:(E)異性体=0:100〜10:90である一般式(1)
前記第1の工程で得られた異性体混合物と、前記一般式(1)で表される化合物の異性体混合物中に含まれる(Z)異性体に対して、0.5倍モル〜1.5倍モルの一般式(2)
で表されるシクロペンタジエン誘導体とを、所定温度に加熱する第2の工程とを有する、一般式(3)
で表されるビシクロヘプテン誘導体のシス異性体の製造方法。 - 異性体モル比が(Z)異性体:(E)異性体=0:100〜10:90である前記一般式(1)で表される化合物の異性体混合物と、前記一般式(1)で表される化合物に対して、0.1倍モル〜1倍モルの前記一般式(2)で表されるシクロペンタジエン誘導体とを、光照射しながら所定温度に加熱することを特徴とする、前記一般式(3)で表されるビシクロヘプテン誘導体のシス異性体の製造方法。
- 光増感剤の存在下に光照射を行う
請求項1又は2に記載の一般式(3)で表されるビシクロヘプテン誘導体のシス異性体の製造方法。
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