JP4802521B2 - マイクロリアクターを用いた接触水素化方法 - Google Patents

マイクロリアクターを用いた接触水素化方法 Download PDF

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Description

本発明は、還元されにくい不飽和有機化合物を、マイクロリアクターを用いて穏和な条件で効率的に接触水素化(還元)する方法に関する。
一般的に、ベンゼン環等の芳香族骨格を有する化合物や、アルキルニトリルなどの化合物等は還元されにくく、高温高圧の過酷な条件下であっても所望の還元生成物を高い収率で得ることができないのが実状である。
このような還元されにくい有機化合物を、簡便かつ高収率で還元できる方法が見出されれば、有機合成上極めて有用である。
ところで、近年、1mm以下のマイクロ流路を有する微小反応器として、マイクロリアクターが用いられてきている(例えば、非特許文献1)。このマイクロリアクターは、微小空間中で反応を行うことにより、微少量での合成が可能であり、温度制御を精密かつ効率よく行うことができ、さらに単位面積当たりの表面積が非常に大きく、レイノルズ数が小さいので層流が容易に達成できる等の特徴を有している。
しかしながら、これまでのところ、マイクロリアクターを用いて、上記のような還元されにくい有機化合物について接触水素化による還元反応を試みた報告例はない。
"Microreactors New Technology for Modern Chemistry "(Wolfgang Ehrfeld, Volker Hessel, Holger Loewe著、WILEY-VCH社 2000年発行)
本発明の目的は、還元されにくいとされる不飽和有機化合物を、マイクロリアクターを用いて効率的に還元する方法を提供することにある。具体的には、ベンゼン環等の芳香族骨格を有する有機化合物、アルキルニトリル化合物などの還元されにくい不飽和有機化合物等を、マイクロリアクター中で触媒の存在下、穏和な条件で効率的に接触水素化する方法を提供することにある。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、還元されにくい不飽和有機化合物を、マイクロリアクターを用いて接触水素化したところ、効率的に水素化反応が進行することを見出した。かかる知見に基づき、本発明者らは、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の接触水素化方法を提供する。
項1.還元されにくい不飽和有機化合物を接触水素化する方法であって、該還元されにくい不飽和有機化合物と水素源を混合した後、水素化触媒を含むマイクロリアクターを通過させて該還元されにくい不飽和有機化合物を水素化することを特徴とする方法。
項2.水素化触媒を含むマイクロリアクターが微粉末の水素化触媒が充填されてなるマイクロリアクターである項1に記載の方法。
項3.還元されにくい不飽和有機化合物が、芳香族化合物、アルキルニトリル化合物、ケトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、スルホニル化合物及び3又は4置換オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種である項1又は2に記載の方法。
項4.芳香族化合物が、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルカノイル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基、スルホ基、ニトロ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる置換基を有してもよい芳香族炭化水素である項3に記載の方法。
項5.芳香族化合物が、
Figure 0004802521
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、それぞれアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルカノイル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基、スルホ基、ニトロ基又はカルボキシル基、R10、R20、R30、R11、R21及びR31は、同一又は異なって、それぞれアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルカノイル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基、スルホ基、ニトロ基又はカルボキシル基、R12、R22、R13及びR23は、同一又は異なって、それぞれアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルカノイル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基、スルホ基、ニトロ基又はカルボキシル基を示す。)
で表される化合物である項4に記載の方法。
項6.アルキルニトリル化合物が、
R−CN
(式中、Rは置換基を有してもよいアルキル基を示す。)
で表される化合物である項3に記載の方法。
項7.水素源が、水素、ギ酸又はその塩、NaH2PO2及びNH2NH2からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1〜6のいずれかに記載の方法。
項8.水素化触媒が、パラジウム触媒、ニッケル触媒、白金触媒、ルテニウム触媒、レニウム触媒、銅触媒及びロジウム触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1〜7のいずれかに記載の方法。
項9.マイクロリアクターの流路の直径が1mm以下であり、水素化触媒の平均粒子径が0.1〜100μm程度であり、(水素化触媒の平均粒子径)/(マイクロリアクターの流路の直径)が0.1程度以下である請求項2に記載の方法。
本発明によれば、マイクロリアクターを用いることにより、還元されにくいとされる不飽和有機化合物を、穏和な条件で効率的に還元することができる。
以下、本発明について詳述する。
本発明は、還元されにくい不飽和有機化合物を、マイクロリアクター中で接触水素化して簡便かつ効率的に還元を行う方法である。具体的には、粉末状水素化触媒を充填したマイクロアクターを用いることにより、水素源(水素)による該不飽和有機化合物の還元反応を促進し、効率的に還元体を製造する方法であり、マイクロリアクターを用いた固体水素化触媒、溶液及び水素間の3相系(固−液−気)の還元反応を含む方法である。
本発明における還元されにくい不飽和有機化合物とは、通常のバルク還元反応では容易に水素化されにくい不飽和結合を有する有機化合物を意味し、例えば、芳香族化合物、アルキルニトリル化合物、ケトン化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、スルホニル化合物、3又は4置換オレフィン等が例示される。
前記芳香族化合物としては、広く芳香族性を有する化合物であれば特に限定はなく、芳香族炭化水素化合物はもちろん、芳香環上に酸素原子、硫黄原子、窒素原子などを含むヘテロ芳香族化合物であってもよい。特に、芳香族炭化水素化合物が挙げられ、該芳香族炭化水素化合物には、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルカノイル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基、スルホ基、ニトロ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。具体的には、
Figure 0004802521
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、それぞれアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルカノイル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基、スルホ基、ニトロ基又はカルボキシル基、R10、R20、R30、R11、R21及びR31は、同一又は異なって、それぞれアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルカノイル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基、スルホ基、ニトロ基又はカルボキシル基、R12、R22、R13及びR23は、同一又は異なって、それぞれアルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルカノイル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基、スルホ基、ニトロ基又はカルボキシル基を示す。)
である化合物が例示される。
上記式中、アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。アルカノイル基としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルカノイル基が挙げられる。アルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜20のアルケニル基が挙げられる。アルキニル基としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜20のアルキニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。なお、水酸基、アミノ基、カルボキシル基は、公知の保護基で保護されていても良く、また塩を形成していても良い。
なお、前記芳香族化合物は本発明の方法により還元されて、通常、飽和結合を有する化合物にまで還元される。置換基として、不飽和結合、ハロゲン原子、カルボニル基等の還元され得る基を有する場合は、これらの基が還元された置換基を有する化合物が得られる。
前記アルキルニトリル化合物としては、アルキル基とニトリル基を有する化合物であれば特に限定はなく、例えば一般式:R−CN(式中、Rは置換基を有してもよいアルキル基を示す。)で表される化合物が挙げられる。該アルキル基としては、広く直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20程度のアルキル基が挙げられ、置換基を有していてもよい。置換基としては、水素化反応に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該アルキルニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロパンニトリル、ブタンニトリル、ヘキサンニトリル、n−オクタンニトリル等が例示される。なお、該アルキルニトリル化合物のニトリル基(−CN)は、本発明の方法により還元されて、アミノメチル基(−CH2−NH2)に変換される。
前記ケトン化合物としては、ケトン基を有する化合物であれば特に限定はなく、例えば、一般式:RA−CO−RA’(式中、RA及びRA’は、同一又は異なって、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜20程度のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、及びハロゲン原子、アミノ基、スルホ基及びニトロ基からなる群から選ばれる置換基を示す。)で表される化合物が挙げられる。具体的には、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルビニルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロブタノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等が例示される。なお、該ケトン化合物のケトン基は還元されて水酸基或いはメチレン基に変換される。
前記カルボン酸化合物としては、カルボン酸基(−COOH)又はカルボン酸基から誘導される基を含む化合物であれば特に限定はなく、例えば一般式RB−COORB’(式中、RBは、置換基を有してもよい炭素数1〜20程度のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる置換基を示し、RB’は、置換基を有してもよい炭素数1〜20程度のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、及び水素原子からなる群から選ばれる置換基を示し、RB及びRB’は同一又は異なっていてもよい。)で表される化合物が挙げられる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、アクリル酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸等のカルボン酸類、或いは、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、ペンタン酸メチル、ヘキサン酸メチル、アクリル酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、安息香酸メチル等のカルボン酸エステル類等が例示される。なお、該カルボン酸化合物のカルボン酸は還元されて水酸基或いはメチレン基に変換される。
前記スルホン酸化合物としては、スルホン酸基(−SO3H)又はスルホン酸基から誘導される基を含む化合物であれば特に限定はなく、例えば一般式:RC−SO3H(式中、RCは、置換基を有してもよい炭素数1〜20程度のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる置換基を示す。)で表される化合物が挙げられる。具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸などが例示される。なお、該スルホン酸化合物のスルホン酸は還元されてメルカプタン(−SH)に変換される。
前記スルホニル化合物としては、スルホニル基(−SO2−)を含む化合物であれば特に限定はなく、例えば一般式:RD−SO2−RD’(式中、RD及びRD’は、同一又は異なって、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜20程度のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、及びハロゲン原子、及びアミノ基からなる群から選ばれる置換基を示す。)で表される化合物が挙げられる。具体的には、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルフェニルスルホンなどが例示される。なお、該スルホニル化合物のスルホニル基は還元されてスルフィド(−S−)に変換される。
前記3又は4置換オレフィンとしては、エチレンが有する4個の水素原子のうち3個又は4個が他の原子又は置換基で置換された化合物であれば特に限定はなく、その置換基としては、例えば炭素数1〜20程度のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、及びハロゲン原子、アミノ基、スルホ基、ニトロ基、カルボキシル基、エステル基、アルコキシ基等が例示される。
本発明でいうマイクロリアクターとは、化学反応を行うために使用される小型の3次元構造体であり、微細流路を有する微小反応器を意味する。かかる微小反応器であれば特に限定はない。この反応器は、近年注目を集めつつあるものであり、例えば、"Microreactors New Technology for Modern Chemistry "(Wolfgang Ehrfeld, Volker Hessel, Holger Loewe著、WILEY-VCH社 2000年発行)(非特許文献1)等に詳細に記載されている。本発明においては、これらのマイクロリアクターを広く用いることができる。
マイクロリアクターは、微小空間中で反応を行うことによって、微少量の合成が可能であり、温度制御を精密に効率よく行うことができ、更に、単位体積当たりの表面積が非常に大きく、レイノルズ数が小さいので層流が容易に達成できるという特徴を有している。
マイクロリアクターに導入される原料同士の混合手段は、上述の非特許文献1の43〜46頁等に記載されている種々のものを採用することができる。
上記マイクロリアクターの具体例としては、インスティテュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ社(Institut fur Mikrotechnik Mainz GmbH, Germany、以下、IMM社という場合がある)の刊行物に記載されたマイクロリアクター、セルラー・プロセス・ケミストリー社(Cellular Process Chemistry GmbH, Frankfurt/Main)のセレクト(Selecto;商標)、シトス(Cytos;商標)等を挙げることができる。その他、WO96/12540、WO96/12541、特表2001−521816号公報、特開2002−18271号公報、特開2002−58470号公報、特開2002−90357号公報、特開2002−102681号公報等に記載されたマイクロリアクター等を挙げることもできる。
また、本発明のマイクロリアクターの典型例としては、その流路の直径(内径)が1mm程度以下、好ましくは0.01〜1mm程度、より好ましくは0.1〜1mm程度のものが挙げられる。流路がかかる大きさであれば、リアクターの形状は特に限定されない。例えば、キャピラリー状、チューブ状、基板状に流路を形成したものなどが挙げられる。その流路の長さは、還元対象物、水素化反応の条件、触媒の種類などに応じて変化するが、通常、1〜100cm程度、好ましくは5〜50cm程度であればよい。
本発明のマイクロリアクターには、後述する水素化触媒が充填されている。具体的には、例えば、内径1mm以下のリアクター流路に、0.1〜100μm程度の微粉末状の水素化触媒が充填されてなる。前記の還元されにくい不飽和化合物の溶液と水素の混合物を、充填された該水素化触媒に接触させながらマイクロリアクターの微細流路を通過させることにより、該不飽和化合物が効率的に還元される。これにより、バルク還元では達成できない良好な収率で目的物である還元体を得ることができる。
本発明のマイクロリアクターの材質は、水素化反応に悪影響を与えない材料であれば特に限定はなく、例えば、ガラス、アルミニウム、SUS、プラスチック(特に、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック)等を適宜選択して用いることができる。
本発明のマイクロリアクター内で用いられる水素化触媒としては、パラジウム触媒、ニッケル触媒、白金触媒、ルテニウム触媒、レニウム触媒、銅触媒、ロジウム触媒又はこれらの混合触媒等があげられ、中でも反応性及び経済性の点から、パラジウム触媒、ニッケル触媒、白金触媒、ルテニウム触媒が好ましい。
パラジウム触媒としては、例えばパラジウムカーボン、パラジウムアルミナ、パラジウムシリカ、パラジウムシリカアルミナ、ゼオライト担持パラジウムなどが挙げられる。ニッケル触媒としては、例えばニッケル珪藻土、スポンジニッケル、ニッケルアルミナ、ニッケルシリカ、ニッケルカーボンなどが挙げられる。白金触媒としては、例えば白金シリカ、白金シリカアルミナ、ゼオライト担持白金などが挙げられる。ルテニウム触媒としては、例えばルテニウムカーボン、ルテニウムアルミナ、ルテニウムシリカ、ルテニウムシリカアルミナ、ゼオライト担持ルテニウムなどが挙げられる。
水素化触媒は、マイクロリアクターの微細流路に充填できる微粉末が好ましく、その平均粒子径は、通常、0.1〜100μm程度、特に1〜50μm程度が好適である。微細流路に充填する場合には、触媒表面積の増大及び反応器への触媒充填の容易さの観点から、(触媒の平均粒子径)/(流路の直径)を0.1程度以下、特に0.07以下とすることが好ましく、一方で、流体の圧力損失を考慮すると、(触媒の平均粒子径)/(流路の直径)を0.0001程度以上、特に0.001以上とすることが好ましい。
水素化触媒は、直接リアクター内に充填してもよく、或いは、水素化触媒を担体に担持したものをリアクター内に充填してもよい。水素化触媒を担持し得る担体としては、チタニア、シリカ、アルミナ、ジルコニア、活性炭等が例示される。水素化触媒を触媒に担持する方法は、沈殿法、か焼法、含浸法、イオン交換法等の公知の方法を採用することができる。水素化触媒が担持された担体を用いる場合、その平均粒子径は、水素化触媒そのものを用いる場合の上記平均粒子径の範囲にあることが好ましい。
水素化触媒をリアクター内に充填する方法は特に限定されず、公知の方法を採用できるが、例えば、前記水素化触媒を、該触媒が溶解しない溶媒に分散させ、0.01〜10ml/分、好ましくは0.05〜0.5ml/分の流速で加圧・振動させながらマイクロリアクター内に充填することが好ましい。
水素化触媒のマイクロリアクター内への充填密度は、通常、0.05〜5g/ml程度、好ましくは0.1〜0.5g/mlであり、水素化触媒の比表面積は1〜2000m2/g程度、好ましくは50〜1500m2/gである。
本発明で用いられる水素源としては、水素、ギ酸(又はその塩)、NaH2PO2及びNH2NH2等が例示され、好ましくは水素である。
本発明で用いられる溶媒は、還元されにくい不飽和有機化合物(以下「基質」とも呼ぶ)及び水素源がともに溶解し易く、その溶媒自身が水素化されないものである。もちろん、基質の種類に応じて溶媒を適宜選択すればよく、例えば、エーテル系溶媒(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等)、炭化水素系溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)等が挙げられる。或いは、これらの混合溶媒であってもよい。
以下、本発明の方法を、例えば、図1を用いて説明する。
まず、基質を溶媒に溶解して溶液を調製する。溶液の濃度は、該基質の溶媒に対する溶解度にもよるが、通常、1〜100重量%程度、特に1〜50重量%程度であればよい。
得られた溶液は、送液ポンプによりミキサーに送られ、水素源と混合される。ここで、ミキサーとしては、T字型ミキサー等の公知のミキサーを採用することができる。特に、水素源として水素を用いた場合、ミキサーでは気−液混合となるため、混合時に微小流を発生し効率的に混合できるマイクロミキサーを採用するのが好ましい。マイクロミキサーとは、2種以上の被混合物を微小流とし、これら微小流を衝突させて混合させることにより混合効率を高めることを目的とする混合装置である。このマイクロミキサーを用いると、効率的かつ均質に基質と水素源を混合できるため、マイクロリアクター内での水素化反応の反応性が向上する。なお、マイクロミキサーの具体例としては、IMM社のマイクロミキサーを例示できる。
水素源として水素を用いた場合、ミキサーにおける水素と基質の混合比(モル比)は、反応条件により適宜選択できるが、例えば、水素:基質=0.1:1〜10000:1程度、好ましくは1:1〜100:1程度であればよい。水素の量が少なすぎると還元反応が不十分となり、多すぎると生産性が悪くなる。
また、上記の混合物は、該基質がリアクター内に0.5〜60分程度滞留するように、その流速を適宜選択すればよい。
ミキサーで混合された混合物は、そのままマイクロリアクター内に導入される。リアクター内における反応条件は、還元されにくい不飽和有機化合物(基質)の種類に応じて適宜選択して設定できる。例えば、リアクター内の反応圧力は、常圧でも加圧でよく、通常0.1〜20MPa程度であればよい。また、リアクター内の反応温度は、通常10〜300℃程度であればよい。
具体的には、ベンゼン環を有する芳香族化合物の水素化では、通常、圧力0.1〜20MPa程度で、温度20〜300℃程度であればよい。
より具体的には、ビフェニル、フェナントレン、ナフタレン等の官能基を有しない芳香族化合物の水素化を行うにあたり、ニッケル触媒(特に、ニッケル珪藻土、スポンジニッケル)を用いる場合には、10〜20MPa程度、50〜250℃程度が好ましく、パラジウム触媒(特に、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ)、ルテニウム触媒(特に、ルテニウムカーボン、ルテニウムアルミナ)、白金触媒もしくはロジウム触媒を用いる場合には、0.5〜20MPa程度、50〜200℃程度が好ましい。
また、ビフェノール、p−クレゾール、ナフトール等の水酸基を有する芳香族化合物(以後、水酸基含有芳香族化合物という。)の水素化を行うにあたり、ニッケル触媒(特に、ニッケル珪藻土、スポンジニッケル)を用いる場合には、10〜20MPa程度、100〜250℃程度が好ましく、パラジウム触媒(特に、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ)、ルテニウム触媒(特に、ルテニウムカーボン、ルテニウムアルミナ)、白金触媒やロジウム触媒を用いる場合には、0.5〜3MPa程度、50〜200℃程度が好ましい。
また、アルキルニトリル化合物の水素化を行うにあたり、ニッケル触媒(特に、ニッケル珪藻土、スポンジニッケル)を用いる場合には、10〜20MPa程度、20〜250℃程度が好ましく、パラジウム触媒(特に、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ)やルテニウム触媒(特に、ルテニウムカーボン、ルテニウムアルミナ)を用いる場合には、1〜3MPa程度、20〜150℃程度が好ましい。
また、アセトフェノンのようなケトン化合物の水素化を行うにあたり、ニッケル触媒(特に、スポンジニッケル)を用いる場合には、10〜20MPa程度、100〜250℃程度が好ましく、パラジウム触媒(特に、パラジウムカーボン)やルテニウム触媒(特に、ルテニウムカーボン)を用いる場合には、0.1〜10MPa程度、20〜200℃程度が好ましい。
3又は4置換オレフィンの水素化を行うにあたり、ニッケル触媒(特に、ニッケル珪藻土、スポンジニッケル)を用いる場合には、5〜20MPa程度、50〜250℃程度、が好ましく、パラジウム触媒(特に、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ)やルテニウム触媒(特に、ルテニウムカーボン、ルテニウムアルミナ)を用いる場合には、1〜5MPa程度、20〜150℃程度が好ましい。
より具体的には、例えば、ビフェニル誘導体(例えば、4,4’−ビスヒドロキシビフェニル)を、マイクロリアクターを用いて水素還元する場合、パラジウム触媒を用いて、圧力が1〜3MPa程度、温度が100〜140℃程度、リアクター内の滞留時間が0.5〜10分程度であれば、2つのベンゼン環が水素化(還元)された化合物を24〜95%程度の高収率で得ることができる。オートクレーブ等を用いたバッチ処理では、このような穏和な条件で所望の還元体を高収率で得ることは困難である。
また、他の例として、ベンゼン又はナフタレン誘導体(例えば、クレゾール、アセトフェノン、ナフトール等)を、マイクロリアクターを用いて水素還元する場合、パラジウム触媒を用いて、圧力が0.7〜3MPa程度、温度が100〜140℃程度、リアクター内の滞留時間が0.5〜10分程度であれば、ベンゼン環が水素化(還元)された化合物を15〜99%程度の高収率で得ることができる。オートクレーブ等を用いたバッチ処理では、このような穏和な条件で所望の還元体を高収率で得ることは困難である。
また、他の例として、アルキルニトリル(例えば、n−オクタンニトリル)を、マイクロリアクターを用いて水素還元する場合、パラジウム触媒を用いて、圧力が1〜3MPa程度、温度が80〜140℃程度、リアクター内の滞留時間が0.5〜10分程度であれば、アミンに水素化(還元)された化合物を30〜60%程度の高収率で得ることができる。バッチ処理では、このような穏和な条件で所望のアミンを好収率で得ることは困難である。
反応後、反応混合物を回収し、公知の方法により所望の水素化物(還元体)を精製単離すればよい。
なお、当該マイクロリアクターに、リアクター内の圧力を一定にするために圧力調節弁(例えば、商品名:バックプレッシャーレギュレーターP−787,Upchurch Scientific製)を用いた場合には、目的物の収率を向上させることができるため好ましい。また、水素ガスの供給速度を一定にするために、ガス流量調整機(例えば、商品名:マスフローコントローラー5850S、Brooks製)を用いた場合には、反応の再現性を向上できるため好ましい。
なお、本発明のマイクロリアクターを用いて大量に合成する場合には、ナンバーリングアップという手法を用いることができる。ナンバーリングアップ法とは、複数のリアクターを用いて反応を行い、単位時間当たりの生産性を向上させるための方法である。具体的には、例えば、前記水素化触媒を充填したマイクロリアクターを複数並列に接続する方法や、直径1mm以下の微細流路を複数構成する容器に水素化触媒を充填したリアクターを用いる方法などが挙げられる。具体的には、図2のようなナンバーリングアップ法を採用すればよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1(ビフェノールの水素化反応)
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー ケムキャット(株)製)0.07gを充填した内径1mm、長さ25cmのカラムをリアクターとして用いた。ビフェノール(A)のTHF溶液(1.25wt/wt%)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、1MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、ビフェノール溶液の送液速度を0.038ml/minに(滞留時間:5分)、反応温度を100℃に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のビフェノールが40.6%残存し、片側の芳香環が水素化された(B),(C)がそれぞれ30.7%、4.7%生成し、両方の芳香環が水素化された(D)が24.0%生成した。
Figure 0004802521
実施例2〜5
反応圧力、温度、送液速度を変えた以外は、実施例1と同様の方法でビフェノールの水素化反応を行った。反応結果については表1に示した。
比較例1
内容積15mlのオートクレーブにビフェノールのTHF溶液(1.25wt/wt%)6g、5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー ケムキャット(株)製)0.07gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、0.6MPaの水素を導入した。反応温度100℃に達したところで圧力を1MPaとし、5分間反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のビフェノールが98.2%残存し、片側の芳香環が水素化された(B),(C)がそれぞれ1.6%、0.1%生成した。
比較例2〜6
反応温度、反応圧力、反応時間を変えた以外は、比較例1と同様の方法でビフェノールの水素化反応を行った。反応結果を表1に示した。
Figure 0004802521
実施例6(2−ナフトールの水素化反応)
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー ケムキャット(株)製)0.07gを充填した内径1mm、長さ25cmのカラムをリアクターとして用いた。2−ナフトールのTHF溶液(3wt/wt%)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、1MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、2−ナフトール溶液の送液速度を0.038ml/minに(滞留時間:5分)、反応温度を120℃に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料の2−ナフトールが1.3%残存し、片側の芳香環が水素化されたテトラリン化合物(1,2,3,4−テトラヒドロ−2−ナフトール(64.3%)及び5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフトール(8.2%)の混合物)が72.5%生成し、両方の芳香環が水素化されたデカリン化合物(デカヒドロ−2−ナフトール)が25.4%生成した。
比較例7
内容積15mlのオートクレーブに2−ナフトールのTHF溶液(3wt/wt%)6g、5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー ケムキャット(株)製)0.07gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、0.6MPaの水素を導入した。反応温度120℃に達したところで圧力を1MPaとし、5分間反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料の2−ナフトールが97.5%残存し、片側の芳香環が水素化されたテトラリン化合物が2.4%生成し、両方の芳香環が水素化されたデカリン化合物は全く生成しなかった。
実施例7(n−オクタンニトリルの水素化反応)
5%Pd/C粉末(平均粒径20μm;エヌ・イー ケムキャット(株)製)0.07gを充填した内径1mm、長さ25cmのカラムをリアクターとして用いた。n−オクタンニトリルのTHF溶液(0.15mol/l)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、1MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、n−オクタンニトリル溶液の送液速度を0.038ml/minに(滞留時間:4分)、反応温度を100℃に設定した。
反応生成物を1H-NMRにより分析した。その結果、n−オクチルアミンが44%生成し、原料のn−オクタンニトリルが56%残存した。
比較例8
内容積15mlのオートクレーブにn−オクタンニトリルのTHF溶液(0.15mol/l)6g、5%Pd/C粉末(平均粒径20μm;エヌ・イー ケムキャット(株)製)0.07gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、2.0MPaの水素を導入した。反応温度90℃に達したところで圧力を2.5MPaとし、5分間反応を行った。
反応生成物を1H-NMRにより分析した。その結果、原料のn−オクタンニトリルが100%残存し、反応は全く進行していなかった。
実施例8(アセトフェノンの水素化反応)
5%Ru/C粉末(平均粒径20μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.07gを充填した内径1mm、長さ25cmのリアクターに、アセトフェノンの2−プロパノール溶液(3wt/wt%)と水素ガスをIMM社のマイクロミキサーを用いて混合し、1MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、アセトフェノン溶液の送液速度を0.038ml/minに(滞留時間:1.6分)、反応温度を50℃に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料が6%残存し、1-フェニルエタノールが76%、1−シクロヘキシルエタノールが18%生成した。
実施例9
IMM社のマイクロミキサーの代わりにT字型ミキサーを使用した以外は、実施例8と同様の方法でアセトフェノンの水素化反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料が35%残存し、1-フェニルエタノールが50%、1−シクロヘキシルエタノールが15%生成した。
実施例10(p−クレゾールの水素化反応)
基質をp−クレゾールに変更し、反応圧力を2.5MPa、反応温度を140℃とした以外は、実施例6と同様に反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した結果、原料のp−クレゾール(1)が18%残存し、メチルシクロヘキサノン(2)が80%、メチルシクロヘキサノール(3)が1%生成した。
実施例11
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー ケムキャット(株)製)0.05gを充填した内径0.75mm、長さ25cmのチューブをリアクターとして用いた。p−クレゾールのTHF溶液(3wt/wt%)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、0.7MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、ビフェノール溶液の送液速度を0.029ml/minに(滞留時間5分)、反応温度を135℃に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のp−クレゾール(1)が消失し、メチルシクロヘキサノン(2)が97%、メチルシクロヘキサノール(3)が3%生成した。
実施例12
反応圧力を2.5MPaとし、反応温度を135℃に変えた以外は、実施例10と同様にp-クレゾールの水素化反応を行った。反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した結果、原料のp-クレゾール(1)が3%残存し、p-メチルシクロヘキサノン(2)が95%、p-メチルシクロヘキサノール(3)が2%生成した。
実施例13
反応温度を120℃に変えた以外は、実施例12と同様の方法で反応を行った。反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した結果、原料のp-クレゾール(1)が67%残存し、p-メチルシクロヘキサノン(2)が33%生成した。
実施例14
反応圧力を1MPa、反応温度を120℃に変えた以外は、実施例11と同様の方法で反応を行った。反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した結果、原料のp-クレゾール(1)が0%残存し、p-メチルシクロヘキサノン(2)が99%、p-メチルシクロヘキサノール(3)が1%生成した。
比較例9
内容積15mlのオートクレーブにp−クレゾールのTHF溶液(3wt/wt%)6g、5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー ケムキャット(株)製)0.07gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、0.6MPaの水素を導入した。反応温度135℃に達したところで圧力を2.5MPaとし、5分間反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のp−クレゾール(1)が98%残存し、メチルシクロヘキサノン(2)が2%生成した。
比較例10
反応圧力を2.5MPa、反応温度を120℃、反応時間を5分にした以外は、比較例9と同様の方法でp-クレゾールの水素化反応を実施した。その結果、原料のp-クレゾール(1)が100%残存した。
比較例11
反応時間を120分にした以外は、比較例10と同様の方法でp-クレゾールの水素化反応を実施した。その結果、原料のp-クレゾール(1)が91%残存し、p-メチルシクロヘキサノン(2)が8%、p-メチルシクロヘキサノール(3)が1%生成した。
実施例10〜14及び比較例9〜11の結果を表2に示す。
Figure 0004802521
実施例15
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.07gを充填した内径0.5mm、長さ25cmのカラムをフローリアクターとして用いた。p-クレゾールのTHF溶液(3wt/wt%)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、1.5MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、p-クレゾール溶液の送液速度を0.021ml/minに(滞留時間:5分)、反応温度を60℃に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のp-クレゾールが63%残存し、メチルシクロヘキサノンが36%生成した。
実施例16(トルエンの水素化反応)
5%Ru/C粉末(平均粒径20μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.05gを充填した内径1mm、長さ15cmのカラムをフローリアクターとして用いた。トルエンのデカリン溶液(0.033mol/l)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、1MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、トルエン溶液の送液速度を0.038ml/minに(滞留時間:1.6分)、反応温度を50℃に設定した。
反応生成物を1H-NMR,ガスクロマトグラフにより分析した。その結果、メチルシクロヘキサンが98%生成した。
比較例12
内容積50mlのオートクレーブにトルエンのデカリン溶液(0.033mol/l)15ml、5%Ru/C粉末(平均粒径20μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.025gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、1MPaの水素を導入した。反応器を加熱して温度が50℃に達したところで攪拌を始め1.6分間反応を行った。
反応生成物を1H-NMR,ガスクロマトグラフにより分析した。その結果、メチルシクロヘキサンは12%しか生成せず、原料のトルエンが88%残存した。
実施例17(ビフェニルの水素化反応)
5%Pd/C粉末(平均粒径20μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.07gを充填した内径1mm、長さ25cmのカラムをフローリアクターとして用いた。ビフェニルのデカリン溶液(0.033mol/l)と水素ガスをT字型のミキサーで混合し、2.5MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、トルエン溶液の送液速度を0.038ml/minに(滞留時間:5分)、反応温度を80℃に設定した。
反応生成物を1H-NMR,ガスクロマトグラフにより分析した。その結果、フェニルシクロヘキサンが61%、ビシクロヘキサンが39%生成した。
比較例13
内容積50mlのオートクレーブにビフェニルのデカリン溶液(0.033mol/l)15ml、5%Pd/C粉末(平均粒径20μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.025gを入れた。反応器内を3回水素置換した後、2.5MPaの水素を導入した。反応器を加熱して温度が80℃に達したところで攪拌を始め、5分間反応を行った。
反応生成物を1H-NMR,ガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のビフェニルが86%残存し、フェニルシクロヘキサンが12%、ビシクロヘキサンが2%生成した。
実施例18(フェナントレンの水素化反応)
反応基質をフェナントレンに変更した以外は、実施例17と同様に反応を行った。反応生成物を1H-NMR,ガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のフェナントレンが28%残存し、9,10-ジヒドロフェナントレンが72%生成した。
比較例14
反応基質をフェナントレンに変更した以外は、比較例13と同様に反応を行った。反応生成物を1H-NMR,ガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料のフェナントレンが93%残存し、9,10-ジヒドロフェナントレンが7%生成した。
実施例19
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.07gをメタノールに分散させ、GLサイエンス製のパッカー(CP-50)中に入れ、日本精密科学製のミニケミカルポンプSP-Y-2500を接続した。1.75ml/minの流速で内径1mm、長さ25cmのカラムにバイブレータを用いてカラム振動させながら触媒を充填した。これをフローリアクターとして用いた。
接続したカラムの出口にUpchurch Scientific製のバックプレッシャーレギュレーターP-787(圧力0.7MPa)を接続した以外は、実施例10と同条件でp−クレゾールの水素化反応を行い、原料のp-クレゾールが13%、p-メチルシクロヘキサノンが85%、p-メチルシクロヘキサノールが2%得られた。
実施例20
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.07gをメタノールに分散させ、GLサイエンス製のパッカー(CP-50)中に入れ、日本精密科学製のミニケミカルポンプSP-Y-2500を接続した。1.75ml/minの流速で内径1mm、長さ25cmのカラムにバイブレータを用いてカラム振動させながら触媒を充填した。これをフローリアクターとして用いた。
リアクターの出口にUpchurch Scientific製のバックプレッシャーレギュレーターP-788(圧力1.7MPa)を接続した以外は、実施例13と同様の方法でp-クレゾールの水素化反応を行った。その結果、原料のp-クレゾールが17%、p-メチルシクロヘキサノンが82%、p-メチルシクロヘキサノールが1%得られた。
実施例21
5%Pd/C粉末(平均粒径37μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.07gをメタノールに分散させ、GLサイエンス製のパッカー(CP-50)中に入れ、日本精密科学製のミニケミカルポンプSP-Y-2500を接続した。1.75ml/minの流速で内径1mm、長さ25cmのカラムにバイブレータを用いてカラム振動させながら触媒を充填した。これをフローリアクターとして用いた。
Brooks 製のマスフローコントローラー(5850S) を用いて水素流量を1ml/minに調整した以外は、実施例12と同様にして反応を行った。同じ条件で5回再実験を行ったが、p-メチルシクロヘキサノンの収率は94〜96%で、水素流量をコントロールすることで再現性よく反応を行うことができた。
実施例22(3置換オレフィンの水素化反応)
基質を2−メチル2−ブテンに変更し、反応圧力を1MPa、反応温度を100℃とした以外は、実施例6と同様に反応を行った。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した結果、原料の2−メチルー2−ブテンが10%残存し、2−メチルブタンが90%生成した。
比較例15(アセトフェノンの水素化反応;内径1cm)
0.5%Ru/C(粒径2.0〜4.75μm;エヌ・イー・ケムキャット(株)製)7.5gを充填した内径1cm、長さ12cmのリアクターに、アセトフェノンの2−プロパノール溶液(3wt/wt%)と水素ガスを混合し、1MPaの圧力でフローリアクターに導入した。なお、アセトフェノン溶液の送液速度を3.9ml/minに(滞留時間:2.4分)、水素の流量を20l/hに、反応温度を50℃に設定した。
反応生成物をガスクロマトグラフにより分析した。その結果、原料の転化率が18.2%であった。(原料が81.8%残存し、1−フェニルエタノールが14.7%、1−シクロヘキシルエタノールが1.8%生成した)。
本発明のマイクロリアクターを用いた水素化反応の模式図を示す。 本発明のマイクロリアクターを用いたナンバーリングアップ法の模式図を示す。

Claims (3)

  1. 元されにくい不飽和有機化合物と水素源を混合した後、水素化触媒を含むマイクロリアクターを通過させて該還元されにくい不飽和有機化合物を水素化する接触水素化方法であって、
    前記還元されにくい不飽和有機化合物が、
    Figure 0004802521
    (式中、R 1 、R 2 及びR 3 は、同一又は異なって、それぞれ水素原子、アルキル基、水酸基、アルケニル基、アルキニル基又はフェニル基を示し、R 10 、R 20 、R 30 、R 11 、R 21 及びR 31 は、同一又は異なって、それぞれ水素原子、アルキル基、水酸基、アルケニル基又はアルキニル基を示し、R 12 、R 22 、R 13 及びR 23 は、同一又は異なって、それぞれ水素原子、アルキル基、水酸基、アルケニル基、アルキニル基又はフェニル基を示す。)で表される化合物又はフェナントレンである芳香族化合物、一般式:R−CN(式中、Rは置換基を有してもよいアルキル基を示す。)で表されるアルキルニトリル化合物、一般式:R A −CO−R A’ (式中、R A 及びR A’ は、同一又は異なって、それぞれ置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基及びフェニル基からなる群から選ばれる置換基を示す。)で表されるケトン化合物、ならびにエチレンが有する4個の水素原子のうち3個又は4個が他の原子又は置換基で置換された化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、かつ、
    前記水素化触媒を含むマイクロリアクターが、マイクロリアクターの流路が微粉末の水素化触媒で充填されてなるものであり、該水素化触媒が、パラジウム触媒及びルテニウム触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、該マイクロリアクターの流路の直径が0.01〜1mmであり、該水素化触媒の平均粒子径が0.1〜100μmであり、(水素化触媒の平均粒子径)/(マイクロリアクターの流路の直径)が0.0001〜0.1であることを特徴とする方法
  2. 前記水素化触媒のマイクロリアクター内への充填密度が、0.05〜5g/mlである、請求項1に記載の方法。
  3. 水素源が、水素、ギ酸又はその塩、NaH2PO2及びNH2NH2からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の方法。
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