JP4801633B2 - 軸受およびこれを備えた回転機械 - Google Patents
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Description
上記特許文献1では、基材として炭素鋼が用いられているが、Cu合金が用いられる場合がある。
さらに、本発明者等が鋭意検討したところ、基材にCu合金を用い、かつ表面層にSn合金であるホワイトメタルを用いた場合には、CuとSnとの拡散により、CuとSnの金属間化合物が形成され、しかも、100℃以下とされた例えば50℃〜60℃程度の使用温度範囲であっても、軸受の使用中にCuとSnの金属間化合物が成長することが判明した。この金属間化合物は、硬くて脆いため、これを起点として応力集中が発生し、表面層が基材から剥離してしまう。
なお、100℃以下で発生し成長するCuとSnの金属間化合物としては、例えばCu3Sn(ε相)やCu6Sn5(η相)が挙げられる。
すなわち、本発明にかかる軸受は、Cu合金とされた基材上に、Sn合金とされた表面層が形成された軸受において、前記基材と前記表面層との間には、Fe又はFe合金とされた中間結合層が形成されていることを特徴とする。
また、SnとFeは、CuとSnに比べて、金属間化合物の成長速度が遅い。したがって、Cu合金とされた基材とSn合金とされた表面層との間に、Fe又はFe合金とされた中間結合層を設けることによって、SnとFeに比べて成長速度が速いCuとSnの金属間化合物の生成を抑制することができる。
以上の通り、CuとSnの金属間化合物の生成を抑えることができるので、CuとSnの金属間化合物を起因とする表面層の剥離を回避することができる。
なお、本発明は、基材と中間結合層との間、及び、中間結合層と表面層との間に、他の層が介在していることを妨げるものではない。例えば、中間結合層と表面層との間に、密着性の向上を目的としてSnめっき層を形成しても良い。もちろん、基材と中間結合層、及び、中間結合層と表面層をそれぞれ直接接合しても良い。
表面層としては、潤滑性、耐摩耗性等の観点から、ホワイトメタルが好適である。ホワイトメタルとしては、典型的には、JIS H5401に規定されたものが用いられる。
中間結合層のめっき厚さとしては、5〜20μmとされる。めっき厚さが5μm未満では、基材のCuと表面層のSnの拡散を有効にブロックすることができない。20μmを越えると、製造コストが増大する点で好ましくない。
なお、ε相やη相の成長は、100℃以下の80℃、さらには50℃〜60℃の温度範囲であっても継続する。
なお、回転機械としては、好適には蒸気タービンが挙げられる。また、軸受は、蒸気タービンのスラスト軸受に用いると好適である。
Fe又はFe合金とされた中間結合層を設けることによって、CuとSnの金属間化合物の生成を抑えることができるので、CuとSnの金属間化合物を起因とする表面層の剥離を回避することができる。これにより、基材と表面層との結合状態が長く継続することとなり、軸受としての耐久性が向上する。
また、回転機械の軸受として本発明の軸受を備えることにより、軸受の長寿命化に伴い回転機械の長寿命化が実現される。また、軸受のメンテナンス回数を低減でき、かつ軸受のメンテナンス期間を長期化できるので、回転機械のランニングコストを低減することができる。
図1には、本発明の一実施形態にかかる軸受の部分縦断面図が示されている。この軸受は、蒸気タービン(回転機械)のスラスト軸受に用いられて好適なものである。蒸気タービンのスラスト軸受に用いられた場合、軸受の摺動部の温度は、潤滑油(例えばISO規格のVG32)の存在下で、100℃以下、主として50℃〜60℃とされる。
図1に示されているように、軸受は、基材1と、回転軸に対して摺動接触する表面層2と、基材1と表面層2との間に設けられた中間結合層3とを備えている。
表面層2は、ホワイトメタルとされている。ホワイトメタルは、JIS H5401にて規定された材料(例えばWJ2)が用いられる。
先ず、ステップS1にて、基材となるCr含有Cu合金の表面をアルカリ洗浄液で脱脂洗浄する。
次に、ステップS2にて、硫酸と過酸化水素水の混合液に浸漬し、表面を活性化させた後、水洗する。
そして、ステップS3にて、塩化物浴めっき液を用いて電気めっき法により、10μm厚のFeの中間結合を形成する。
そして、ステップS4にて、水洗し、乾燥させる。
そして、ステップS5にて、Feの中間結合層上に、接着層を形成するためにSnめっきを行う。
次に、ステップS6にて、Snめっき層上に、置注ぎによりホワイトメタルを供給し、冷却させて表面層を形成する。
ステップS7にて、表面層を除去加工し、所定の厚さに整える。
本発明に対応した本発明材、従来材、及び比較材の試験片を作成し、せん断強度試験を行った。
本発明材は、上記実施形態と同様に、基材1にCr含有Cu合金、表面層にホワイトメタル、中間結合層にFeの電気めっき層(厚さ10μm)を用いた。
従来材は、上記本発明材に対して中間結合層を除去した構成とした。
比較材は、上記本発明材の中間結合層のFeめっき層に代えて、Niめっき層(厚さ10μm)を用いた。
本発明材、従来材、及び比較材に共通して用いられる基材と、表面層としてのホワイトメタル(JIS H5401のWJ2)の化学組成は以下の通りである。
(1)本発明材
上記実施形態にて図2を用いて説明した製造方法に従って作成した。
先ず、基材となるCr含有Cu合金(表1参照)を機械加工により、30mm×220mm×7mmの大きさに仕上げた(ステップS10)。
そして、図2のステップS1に従い、市販のアルカリ洗浄液で脱脂洗浄した(ステップS11)。
次に、図2のステップS2に従い、硫酸と過酸化水素水の混合液に浸漬し、表面を活性化させた後、水洗した(ステップS12)。
そして、図2のステップS3に従い、塩化物浴めっき液を用いて電気めっき法により、10μm厚のFeの中間結合を形成した(ステップS13)。
このときに用いためっき液の組成およびめっき条件は、以下の通りである。
<めっき液組成>
FeSO4・7H20------------250g/L
FeCl2・4H20------------100g/L
Na2SO4------------------100g/L
<めっき条件>
液温度--------------------------50℃
電流密度------------------------10A/dm2
陽極-----------------------------鉄板(50mm×250mm×10mm)
pH-------------------------------1.5
そして、図2のステップS5に従い、Feの中間結合層上に、Snめっきを行った(ステップS15)。
このSnめっきは、1次めっきとして300℃の浴湯に浸漬させ、続いて、2次めっきとして270℃の浴湯に浸漬させることにより行った。
このときに、ホワイトメタルの凝固位置が最表面となるように、ホワイトメタル側からバーナによって加熱するとともに、基材側から水冷によって冷却した。
従来材は、本発明材のFeめっき工程であるステップS13を省略した以外は、同一の工程で作成した。
比較材は、本発明材のFeめっき工程であるステップS13に代えて、Niめっき工程を行った。それ以外の工程については、本発明材と同様とした。
Niめっき工程では、無光沢Niめっき液を用いて電気めっき法により、10μm厚のNiの中間結合層を形成した。このときに用いためっき液の組成およびめっき条件は、以下の通りである。
<めっき液組成>
NiSO4・7H20-----------240g/L
NiCl2・6H20------------45g/L
ホウ酸---------------------30g/L
<めっき条件>
液温度--------------------------50℃
電流密度------------------------5A/dm2
陽極-----------------------------Ni板(50mm×250mm×10mm)
pH-------------------------------4
上述の通り作成した本発明材、従来材および比較材のそれぞれに対して、せん断試験を行った。
せん断試験に先立ち、本発明材、従来材および比較材のそれぞれについて、図3に示すように、機械加工を行い、同一形状の試験片とした。各試験片の幅Bは25±0.05mm、長さLは63±0.1、基材11の厚さtは5mm、表面層12の厚さHは2mmとした。また、試験片の一端には、直径4mmの孔部15を形成した。この孔部15は、後述する加熱試験にて試験片を吊り下げる際に用いられる。さらに、各試験片は、図4に示すように、表面層12の除去を行い、幅Wが3mmとされた帯状の表面層12aのみを残すように加工した。帯状の表面層12aは、図4(b)に示すように、基材11に対して直角に立ち上がるように加工されている。
なお、加工後の基材11の表面及び裏面の中心線平均粗さは6.3とした。
オイル21は、軸受として用いる際に使用される潤滑油として、ISO規格のVG32を用いた。
加熱試験は、オイル温度160℃で100時間とされた加速条件の下で行われた。
せん断試験装置は、基台30上に対向して立設された2つのブロック31,32を備えている。ブロック31,32間の離間距離は、基材11の厚さtよりも0.1〜0.15mm大きい寸法とされている。各ブロック31,32の対向する面の中心線平均粗さは6.3とされている。
せん断試験は、ブロック31,32の間に、試験片Tを上方から挿入し、一方のブロック31の上端に表面層12aを係止させた状態で開始する。そして、上方から下方に向けて試験片Tの上端に対して荷重Pを加え、表面層12aが破壊するまで荷重Pを増大させる。試験片Tのせん断強さは、荷重Pの最大値と、試験開始前の表面層12aの接着面積(すなわちW3mm×B25mm)とから算出した。
この試験結果から明らかなように、本発明材は、加熱後であっても、加熱前よりも若干低下するものの、ほぼ同等のせん断強さを維持していることが分かる。これに対して、従来材は、加熱前は本発明材よりもせん断強さが大きいが、加熱後はせん断強さが本発明材よりも大幅に低下していることが分かる。比較例については、加熱前は本発明材と同等のせん断強さを有しているが、加熱後はせん断強さが本発明材よりも大幅に低下していることが分かる。
CuとFeは、CuとSnのように金属間化合物を生成することがない。したがって、Cu合金とされた基材1とSn合金のホワイトメタルとされた表面層2との間に、Feめっきとされた中間結合層3を設けることによって、CuとSnとの金属間化合物の生成を回避することができる。
また、SnとFeは、CuとSnに比べて、金属間化合物の生成速度が遅い。したがって、Cu合金とされた基材1とSn合金のホワイトメタルとされた表面層2との間に、Feめっきとされた中間結合層3を設けることによって、SnとFeに比べて生成速度が速いCuとSnの金属間化合物の生成を抑制することができる。また、本実施形態のように、中間結合層3と表面層2との間に接着層としてのSnめっき層を設ける場合にも更に効果的である。
このように、中間結合層3によって、CuとSnの金属間化合物の生成を抑えることができるので、CuとSnの金属間化合物を起因とする表面層2の剥離を回避することができる。
また、本実施形態では、中間結合層3として純Feを用いることとしたが、Feを主成分とするFe合金であってもよく、例えばMgを含有するFe合金としてもよい。
また、本実施形態では、中間結合層3のFeめっき層を形成する際に電気めっき法を用いることとしたが、遠心鋳造法を用いることとしても良い。遠心鋳造法によれば、めっき層中に存在する比重が高い不純物を遠心力によって集積させ、これを除去することにより高品質のめっき層を得ることができる。
2 表面層
3 中間結合層
Claims (5)
- Cu合金とされた基材上に、Sn合金とされた表面層が形成された軸受において、
前記基材と前記表面層との間には、Fe又はFe合金とされた中間結合層が形成されており、
前記中間結合層の膜厚が10μm以上20μm以下であることを特徴とする軸受。 - 前記基材は、Cr含有Cu合金とされ、
前記表面層は、ホワイトメタルとされていることを特徴とする請求項1記載の軸受。 - 前記中間結合層は、電気めっき法によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受。
- 使用温度が100℃以下とされることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の軸受。
- 請求項1から4のいずれかに記載された軸受を備えていることを特徴とする回転機械。
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JP2007165197A JP4801633B2 (ja) | 2007-06-22 | 2007-06-22 | 軸受およびこれを備えた回転機械 |
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